説明

パターン形成装置およびパターン形成方法

【課題】基板表面に塗布液を塗布して硬化させることにより基板表面に所定のパターンを形成するパターン形成技術において、パターンのさらなる微細化・高アスペクト化を可能とする技術を提供する。
【解決手段】吐出ノズル523から基板Wに吐出される隔壁形成用塗布液の側面部に対して集中的に、ライトガイド533の下端に設けたレンズ534で収束された光を照射する。塗布液の側面部が他の部分に先んじて硬化することで、表面張力によって表面が丸くなったり塗布液が広がるのを抑制することができるため、薄く均一で側面部が急峻に立ち上がる隔壁Bを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板表面に塗布液を塗布して硬化させることにより、基板表面に所定のパターンを形成するパターン形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面に所定のパターンを形成する技術として、光硬化性材料を含む塗布液をパターン形状に塗布し、これに光(例えばUV光)を照射して硬化させる技術がある。例えば、本願出願人が先に開示した特許文献1に記載の技術では、平面表示装置用の隔壁形成にこの技術を用いている。より詳しくは、この技術では、基板に対し相対移動するノズルから光硬化性樹脂を含む塗布液を基板表面に塗布するとともにこれにUV光を照射し硬化させて、発光素子アレイを形成するための隔壁を形成している。また、本願出願人が先に開示した特許文献2には、このような技術が光電変換デバイス(具体的には太陽電池)の表面に配線パターンを形成するのに適用可能であることが開示されている。すなわち、基板表面のうち配線パターンを形成すべき領域の両側に隔壁をそれぞれ形成し、それらの間に配線材料を含む塗布液を塗布することで所定の配線パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−184303号公報(例えば、図3)
【特許文献2】特開2010−278225号公報(例えば、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では配線パターンのさらなる微細化・高アスペクト化が求められている。特許文献1に記載の技術においてこのような要求に応えるためには、基板表面の配線パターンを形成すべき領域に臨む隔壁の側面をより急峻なものとする必要がある。しかしながら、そのための具体的な技術については、これまでのところ確立されるに至っていない。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に塗布液を塗布して硬化させることにより基板表面に所定のパターンを形成するパターン形成技術において、パターンのさらなる微細化・高アスペクト化を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかるパターン形成装置は、基板の表面に所定のパターンを形成するパターン形成装置であって、上記目的を達成するため、光硬化性材料を含む隔壁形成用塗布液を前記基板表面に向けて吐出するとともに前記基板表面に対し相対移動して、前記基板表面のうち前記パターンを形成すべきパターン形成領域に隣接する隔壁形成領域に前記隔壁形成用塗布液を塗布する塗布手段と、光を出射するとともに前記基板表面に対し前記塗布手段と一体的に相対移動して、前記隔壁形成領域に光を照射して前記隔壁形成領域に塗布された前記隔壁形成用塗布液を光硬化させる光照射手段とを備え、前記隔壁形成領域のうち前記パターン形成領域との境界に接する境界領域における前記光照射手段による露光量が、前記隔壁形成領域のうち前記境界領域を挟んで前記パターン形成領域と反対側の非境界領域における前記光照射手段による露光量よりも大きいことを特徴としている。
【0007】
このように構成された発明では、露光量の違いに起因して、基板表面の隔壁形成領域に塗布された隔壁形成用塗布液の光硬化の進行度合いが均一でない。すなわち、隔壁形成領域のうちパターン形成領域との境界に接する境界領域では露光量が比較的大きいため、隔壁形成用塗布液の光硬化が速く進行する。これに対して、パターン形成領域との境界からより離れた非境界領域では、露光量が比較的小さいため隔壁形成用塗布液の光硬化は遅い。言い換えれば、隔壁形成用塗布液の光硬化の進行が境界領域で速く進む一方で非境界領域では遅く進むように、隔壁形成領域への露光量が設定されている。
【0008】
このようにすることで、次のような効果が得られる。まず、塗布液に対する露光量が概ね均一となるようにした場合を考えると、基板表面に塗布された塗布液では、その表面全体がほぼ同じタイミングで硬化するが、表面全体が表面張力によって互いに引っ張り合うため硬化後の表面が丸く滑らかな状態となってしまい、隔壁として良好な急峻な側面を得にくい。これに対して、本発明では、パターン形成領域の外縁に臨む境界領域で隔壁用塗布液の硬化が急速に進行する一方で、より離れた非境界領域では流動性の高い状態がより長期間維持される。このため、境界領域では塗布直後の形状を維持しつつ隔壁用塗布液の表面を硬化させることが可能であり、より急峻な側面を得ることができる。これにより、この発明では、従来技術よりもパターンの微細化・高アスペクト化を図ることが可能となっている。
【0009】
この発明においては、例えば、隔壁形成領域に対する光照射手段による露光量が、パターン形成領域との境界において最大であり、パターン形成領域との境界から離れるにつれて低下するようにしてもよい。このようにすると、隔壁用塗布液の硬化はパターン形成領域との境界において最も速く、該境界から離れるにつれて遅くなる。そのため、上記効果をより確実に得ることができる。
【0010】
具体的には、例えば、光照射手段は、光を出射する光源と、該光源から出射される光を基板表面に向けて収束させる収束部とを備え、基板表面において収束部の光軸がパターン形成領域と隔壁形成領域との境界またはパターン形成領域内を通るようにすることができる。基板表面に照射される光の強度は光軸上で最も高く光軸から離れるにつれて低下するので、光軸がパターン形成領域と隔壁形成領域との境界またはパターン形成領域内を通るようにすることで、隔壁形成領域ではパターン形成領域との境界における光の強度が最も高く、該境界から離れるにつれて低下することとなる。
【0011】
また、例えば、塗布手段は、パターン形成領域とそれぞれ隣接し該パターン形成領域を挟む両側の隔壁形成領域に隔壁形成用塗布液を塗布するようにしてもよい。こうすることで、パターン形成領域の両側を挟むように急峻な隔壁が形成されるので、それらの隔壁に挟まれた領域にパターン形成を良好に行うことができる。
【0012】
また、この発明にかかるパターン形成装置では、例えば、隔壁形成領域に塗布された隔壁形成用塗布液が光硬化してなる隔壁に囲まれたパターン形成領域に、パターン形成材料を含むパターン形成用塗布液を塗布するパターン形成手段を備えるようにしてもよい。上記したように、本発明によればパターン形成領域に臨む側面が急峻な隔壁を形成することができるので、こうして形成された隔壁に隔壁に挟まれた領域(パターン形成領域)にパターン形成材料を含む塗布液を塗布することにより、微細なまたはアスペクト比の高いパターンを良好に形成することができる。
【0013】
また、例えば、境界領域における光照射手段による露光量が、隔壁形成用塗布液を光硬化させるために必要最小限の最小露光量以上である一方、非境界領域の少なくとも一部における光照射手段による露光量が最小露光量よりも小さくなるようにしてもよい。このような構成では、境界領域では隔壁形成用塗布液の光硬化が確実に生じる一方で、非境界領域では隔壁形成用塗布液の硬化に長い時間がかかる、または不完全な硬化となるため、上記した急峻な側面を形成するという効果がより確実に得られる。
【0014】
本発明にかかるパターン形成装置では、例えば、塗布手段は、各々が隔壁形成用塗布液を連続的に吐出する複数のノズルを有し、該複数のノズルが一体的に基板表面に対し相対移動するように構成されてもよい。このようないわゆるノズルスキャン方式の塗布技術によれば、互いに平行なストライプ状の隔壁を多数同時に形成することができ、また微細なパターン形成も可能である。このような技術を適用することで、微細でアスペクト比の高いパターンを短時間に効率よく形成することが可能となる。
【0015】
また、この発明にかかるパターン形成方法は、基板の表面に所定のパターンを形成するパターン形成方法であって、上記目的を達成するため、前記基板表面のうち前記パターンを形成すべきパターン形成領域に隣接する隔壁形成領域に光硬化性材料を含む隔壁形成用塗布液を塗布するとともに、前記隔壁形成領域に塗布された前記隔壁形成用塗布液に光を照射して光硬化させることで、前記パターン形成領域の外縁に沿って前記パターン形成領域を挟む隔壁を形成する隔壁形成工程と、前記隔壁によって挟まれた前記パターン形成領域に、パターン形成材料を含むパターン形成用塗布液を塗布して前記パターンを形成するパターン形成工程とを備え、前記隔壁形成工程では、前記隔壁形成領域のうち前記パターン形成領域との境界に接する境界領域における露光量が、前記隔壁形成領域のうち前記境界領域を挟んで前記パターン形成領域と反対側の非境界領域における露光量よりも大きいことを特徴としている。
【0016】
このように構成された発明においても、上記した理由により、パターン形成領域の外縁に沿って急峻な側面を有する隔壁を形成することが可能である。そして、こうして形成された隔壁に挟まれたパターン形成領域にパターン形成用塗布液を塗布してパターン形成を行うことにより、上記したパターン形成装置と同様に、パターンの微細化・高アスペクト化を図ることが可能である。
【0017】
この場合において、隔壁形成工程では、例えば基板表面のうちパターン形成領域を除く表面全体を隔壁形成領域として、該隔壁形成領域の全体に隔壁形成用塗布液を塗布するようにしてもよい。このようにすると、パターン形成領域を除く基板表面全体に隔壁形成用塗布液が塗布され、これが硬化すれば基板表面を覆う保護膜として作用する。すなわち、この発明では、パターン形成のための隔壁を兼ねる基板保護膜を形成することができる。そして、形成される隔壁はパターン形成領域に臨む側面が急峻であるため、パターンの微細化・高アスペクト化を図ることが可能である。
【0018】
さらに、隔壁形成用塗布液は、光硬化後において可視光に対する透過性を有するものであってもよい。このような発明は、光電デバイスを形成するための技術に対して特に好適に適用することが可能である。例えば表面に光電変換面を有する基板にパターン形成を行う場合に適用した場合、入射光を妨げることなく光電変換面を保護し、しかもパターン形成時には隔壁として良好に機能する膜を基板表面に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかるパターン形成装置およびパターン形成方法では、基板表面のパターン形成領域に接する境界領域に塗布された隔壁形成用塗布液については光硬化が比較的速く進む一方、パターン形成領域から離れた領域では隔壁形成用塗布液の硬化が遅い。そのため、パターン形成領域に臨む隔壁形成用塗布液の側面を急峻な状態で硬化させることができるので、パターン形成領域に形成されるパターンの微細化・高アスペクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明にかかるパターン形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】シリンジポンプの構造を示す図である。
【図3】第2ヘッド部に設けられた吐出ノズルの構造を示す図である。
【図4】この装置によるパターン形成の概要を示す図である。
【図5】図1のパターン形成装置を用いた太陽電池製造プロセスの例を示すフローチャートである。
【図6】塗布により形成される隔壁の形状を例示する図である。
【図7】本実施形態における隔壁形成の原理を説明するための図である。
【図8】本実施形態が所期の作用効果を奏するための条件の一例を示す図である。
【図9】本実施形態が所期の作用効果を奏するための条件の他の例を示す図である。
【図10】複数の隔壁を形成する場合の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はこの発明にかかるパターン形成装置の一実施形態を示す図である。このパターン形成装置1は、例えば表面に光電変換層を形成された単結晶シリコンウエハなどの基板W上に導電性を有する電極配線パターンを形成し、例えば太陽電池として利用される光電変換デバイスを製造する装置である。この装置1は、例えば光電変換デバイスの光入射面に集電電極パターンを形成するという用途に好適に使用することができる。
【0022】
このパターン形成装置1では、基台11上にステージ移動機構2が設けられ、基板Wを保持するステージ3がステージ移動機構2により図1に示すX−Y平面内で移動可能となっている。基台11にはステージ3を跨ぐようにして2組のフレーム121,122が固定され、フレーム121には第1ヘッド部5、フレーム122には第2ヘッド部7がそれぞれ取り付けられる。第2ヘッド部7は、第1ヘッド部5に対して(+X)方向に離隔配置されており、両者の間隔は基板WのX方向長さより広く設定される。
【0023】
ステージ移動機構2は、下段からステージ3をX方向に移動させるX方向移動機構21、Y方向に移動させるY方向移動機構22、および、Z方向を向く軸を中心に回転させるθ回転機構23を有する。X方向移動機構21は、モータ211にボールねじ212が接続され、さらに、Y方向移動機構22に固定されたナット213がボールねじ212に取り付けられた構造となっている。ボールねじ212の上方にはガイドレール214が固定され、モータ211が回転すると、ナット213とともにY方向移動機構22がガイドレール214に沿ってX方向に滑らかに移動する。
【0024】
Y方向移動機構22もモータ221、ボールねじ機構およびガイドレール224を有し、モータ221が回転するとボールねじ機構によりθ回転機構23がガイドレール224に沿ってY方向に移動する。θ回転機構23はモータ231によりステージ3をZ方向を向く軸を中心に回転させる。以上の構成により、第1および第2ヘッド部5,7の基板Wに対する相対的な移動方向および向きが変更可能とされる。ステージ移動機構2の各モータは、装置各部の動作を制御する制御部6により制御される。
【0025】
さらに、θ回転機構23とステージ3との間には、ステージ昇降機構24が設けられている。ステージ昇降機構24は、制御部6からの制御指令に応じてステージ3を昇降させ、基板Wを指定された高さ(Z方向位置)に位置決めする。ステージ昇降機構24としては、例えばソレノイドや圧電素子などのアクチュエータによるもの、ギヤによるもの、楔の噛み合わせによるものなどを用いることができる。
【0026】
第1ヘッド部5のベース51には、内部空間に液状の隔壁形成用塗布液を貯留するとともに該塗布液を基板W上に吐出するシリンジポンプ52、および、基板Wに向けてUV光(紫外線)を照射する光照射部53が取り付けられている。シリンジポンプ52の構造については後に詳しく説明する。
【0027】
光照射部53は、光ファイバ531を介して紫外線を発生する光源ユニット532に接続される。図示を省略しているが、光源ユニット532はその光出射部に開閉自在のシャッターを有しており、その開閉および開度によって出射光のオン・オフおよび光量を制御することができる。光源ユニット532は制御部6により制御されている。
【0028】
図2はシリンジポンプの構造を示す図である。より具体的には、図2(a)は第1ヘッド部5に設けられたシリンジポンプ52の内部構造を示す側面図であり、また図2(b)はシリンジポンプ52下面に設けられた吐出ノズルの構造を示す図である。シリンジポンプ52の筐体521の内部は、上端が上方に向かって開口し、下端が筐体521の下面522に設けられた吐出ノズル523に連通する空洞となっている。該空洞の上端の開口部から、制御部6からの制御指令に応じて上下動するプランジャ524が挿入されている。
【0029】
こうして筐体521の内壁とプランジャ524とで形成される筐体521の内部空間SPに、後述する隔壁形成用の塗布液が貯留されており、制御部6からの制御指令によってプランジャ524が押し下げられると、内部空間SPに連通する吐出ノズル523の下端で下向きに開口する吐出口525から塗布液が連続的に吐出される。すなわち、このパターン形成装置1は、ノズルディスペンス法を採用した塗布装置である。
【0030】
図2(b)に示すように、シリンジポンプ52の下面522には、複数の吐出ノズル523がY方向に近接配置されている。各吐出ノズル523の吐出口525の開口形状はY方向に長い矩形であり、X方向の開口サイズが例えば20μmないし100μm、Y方向の開口サイズはこれより大きく例えば2mmである。図2(a)に示すように、各吐出ノズル523はシリンジポンプ52の下面522から斜め下方に向けて突出している。後述するように、このパターン形成装置1では、ステージ3に載置した基板WをX方向に移動させながら吐出口525から塗布液を吐出させるので、上記形状を有する吐出口525から吐出される塗布液は、基板W上に比較的幅広く、かつ薄く塗布されることになる。
【0031】
図1に戻って、第2ヘッド部7の構造について説明する。第2ヘッド部7には、ベース71および該ベース71にシリンジポンプ72が設けられている。シリンジポンプ72の構成および機能は、第1ヘッド部5に設けられたシリンジポンプ52と基本的に同じである。ただし、後述するように、内部に貯留される液体はパターン形成用の塗布液である。また、以下に説明するように、シリンジポンプ72の下端に設けられた吐出ノズル723の構造が第1ヘッド部5とは相違している。
【0032】
図3は第2ヘッド部に設けられた吐出ノズルの構造を示す図である。より詳しくは、シリンジポンプ72の下面722に設けられた吐出ノズル723の構造を示す図である。図3に示すように、第2ヘッド部7における吐出ノズル723は、シリンジポンプ筐体の下面722にY方向に等間隔に離隔して複数設けられている。また、各吐出ノズル723先端の開口部725は第1ヘッド部5の吐出ノズル523の吐出口525よりも小さく、1辺が20μm程度の矩形である。また、各吐出口725のY方向における位置は、第1ヘッド部5において互いに隣接する2つの吐出ノズル523,523の吐出口525,525のちょうど中間となっている。
【0033】
図4はこの装置によるパターン形成の概要を示す図である。このパターン形成装置1によるパターン形成では、図4(a)に示すように、基板W上にまず第1ヘッド部5から隔壁形成材料を含む塗布液を塗布しこれを硬化させることで、微小な隙間を空けて互いに平行に延びる複数の隔壁パターンBを形成する。そして、こうして形成された隔壁パターンBの隙間に第2ヘッド部7から配線パターン形成材料を含む塗布液を流し込むことによって、互いに平行な複数の細い配線パターンEを形成する。
【0034】
これにより、図4(b)に示すように、基板Wの表面各所は配線パターンEまたは隔壁パターンBのいずれかによって覆われる。基板Wが太陽電池用基板であるとき、こうして形成された配線パターンEは光電変換により生成された電荷を集電する集電用電極として機能する。このような目的においては、各々の配線パターンEは、入射光を遮蔽しないように基板Wに接する幅が小さく、かつ電気抵抗を小さくするために高さが大きい、つまりアスペクト比が高いものであることが望ましい。配線パターンEは互いに隣接する隔壁B間の隙間に形成されるので、隔壁パターンBの間隔を適宜に設定することで微細なパターン幅(例えば20μm〜50μm程度)を実現可能である。
【0035】
一方、隔壁パターンBは上記した通り細い配線パターンEを形成する際に隔壁として機能するほか、配線パターン形成後は基板W表面の保護膜として機能する。基板Wが太陽電池用基板であるときには、入射光を効率よく光電変換面に到達させるために、隔壁パターンBは薄く(例えば20μmないし100μm程度)、また可視光に対する透過性を有するものであることが望ましい。なお、図4(b)においては隔壁パターンBと配線パターンEとの基板W表面からの高さを同一としているがこれに限定されるものではなく、それぞれの高さは異なっていてもよい。
【0036】
図5は図1のパターン形成装置を用いた太陽電池製造プロセスの例を示すフローチャートである。最初に、光電変換面に反射防止膜を形成した基板Wをパターン形成装置1に搬入し、初期位置(図1に示す位置)に位置決めされたステージ3に載置する(ステップS101)。続いて、ステージ3を(+X)方向に移動開始させるとともに、第1ヘッド部5のシリンジポンプ52を動作させて、吐出ノズル523から隔壁形成用塗布液を吐出させて基板Wに塗布する(ステップS102)。すなわち、この実施形態では、ノズルスキャン方式により隔壁形成用塗布液を塗布する。隔壁形成用塗布液としては、隔壁の材料となる光硬化性樹脂および溶剤を含み、かつ硬化後に可視光に対する透過性を有する任意のものを用いることができる。
【0037】
なお、以下の説明においては、図4(a)および(b)に示すように、基板W表面のうち配線パターンEを形成すべき領域Reを「配線形成領域」と称する一方、隔壁パターンBを形成すべき領域Rbを「隔壁形成領域」と称することとする。
【0038】
図6は塗布により形成される隔壁の形状を例示する図である。図6(a)に示すように、理想的な隔壁Biは、その断面形状が薄い矩形である、つまり基板W表面からの高さHiが小さく均一であり、しかも側面Siが基板Wから急峻に立ち上がっているものである。しかしながら、薄く均一な膜を作るためには塗布液として比較的低粘度のものが必要であり、これを基板Wに塗布した場合、図6(b)に示すように表面張力によって塗布液P1の表面が丸まってしまい、基板W表面からの立ち上がりも緩やかとなって急峻な側面が得られない。また、側面を急峻なものとするため、図6(c)に示すように厚みを増大させると、配線パターン形成後の保護膜として理想的な状態から大きく離れてしまう。
【0039】
この問題を解消するため、この実施形態では、基本的には図6(b)に示す例と同様に比較的低粘度の塗布液を基板Wの隔壁形成領域Rbに塗布することで薄く均一な隔壁を形成する一方、次に説明するように、隔壁形成領域Rbに塗布された隔壁形成用塗布液のうち、配線形成領域Reに近い境界領域に集中的に光照射を行い(図5のステップS103)、この部分の塗布液を他の部分に先んじて硬化させるようにしている。
【0040】
図7は本実施形態における隔壁形成の原理を説明するための図である。図7(a)に示すように、本実施形態のパターン形成装置1の第1ヘッド部5では、吐出ノズル523のそれぞれに対して、該ノズル523を挟むように1対のライトガイド533,533が設けられており、これら複数のライトガイド533が一体として光出射部53を構成している。各ライトガイド533の下端には、光ファイバ531を通して案内される光源ユニット532からの光を収束させつつ基板W表面に向けて出射させるためのレンズ534が設けられている。1対のライトガイド533,533は吐出ノズル523の吐出口525に対して(+X)方向に僅かにずれた位置に設けられている。
【0041】
このため、図7(a)および(b)に示すように、基板Wに対し(−X)方向に相対移動する吐出ノズル523から基板W表面に向けて吐出され隔壁形成領域Rbに塗布された直後の隔壁形成用塗布液Pbの両側面部Sp、特に基板W表面と接する部分に対して、ライトガイド533からの光Lが集中的に照射される。これにより、塗布液Pbの側面部Spのみが塗布直後の形状をほぼ維持した状態で硬化し、こうして硬化した側面部Spが、未硬化の塗布液がさらに外側に流れ広がるのを防止する。側面部Spの硬化が不完全な状態においては未硬化の塗布液Pbが外側に向かって広がろうとするが、この力は側面部Spの表面を外側、つまり配線形成領域Reに向かって押し広げる方向に作用する。その一方で、配線形成領域Reとの境界において基板W表面と接する塗布液では既に硬化が始まっているため、塗布液Pbが配線形成領域Reまで侵入することはなく、塗布液が広がろうとする力は硬化し始めた側面部Pbを基板W表面に対してより屹立させるように作用する。
【0042】
一方、両側面部Sp以外では、ライトガイド533から出射される光Lがあまり届かないため、塗布液Pbは塗布直後の低粘度の状態を維持している。このため、両側面部Sp以外では重力によるレベリングによって塗布液Pbの表面はほぼ水平となる。これにより、この実施形態では、図6(a)に示した理想形状に近い隔壁パターンを形成することが可能となっている。
【0043】
言い換えると、この実施形態は、隔壁形成領域Rbから外側へ流れ広がろうとする塗布液Pbを、該塗布液を硬化させるに十分な強度の照射光の仮想的な壁によって閉じ込め、これにより薄く均一で、かつ配線形成領域Reの外縁に接する側面部Spが急峻に立ち上がる理想的な隔壁Bを得ようとするものであるということができる。
【0044】
これに対し、隔壁形成領域Rbに塗布された塗布液Pbに対しほぼ一様な光を照射した場合を考えると、塗布後の塗布液Pbの表面は表面張力によって丸くなり、しかも該表面の硬化がほぼ一様に進むことから、このような丸い表面形状のまま硬化してしまうことになる。このため、図6(b)に示すように、厚さが均一でなく、しかも側面部が緩やかに立ち上がる隔壁が形成されてしまう。すなわち、このような方法では図6(b)に例示した問題が解決されない。
【0045】
図8は本実施形態が所期の作用効果を奏するための条件の一例を示す図である。1対のライトガイド533,533から照射される光の基板W表面における光強度は、同図に示すように、レンズ534の光軸Ao上において最大であり、これから離れるにつれて漸減する。本実施形態において、薄く平坦で、かつ側面部が急峻に立ち上がる隔壁Bを形成することができる第1の例は、図8に示すように、隔壁形成領域Rbと配線形成領域Reとの境界上における照射光の光強度Idが、隔壁形成領域Rbのうち配線形成領域Reとの境界から離れた非境界領域Rnにおける光強度よりも高いというケースである。
【0046】
こうすることにより、隔壁形成領域Rbのうち配線形成領域Reとの境界に近い境界領域Rdでは塗布液に対する露光量(光強度と照射時間との積)が、非境界領域Rnにおける露光量よりも大きくなる。これにより、境界領域Rdでは塗布液の硬化が非境界領域Rnよりも速くなり、上記した薄く平坦で、かつ側面部が急峻に立ち上がる隔壁Bを形成することができるという作用効果が得られる。隔壁形成領域Rbのうち配線形成領域Reとの境界における露光量と、非境界領域Rnにおける露光量との差が大きいほど、上記した効果は顕著なものとなる。
【0047】
また、境界領域Rdにおける露光量が、塗布液Pbを光硬化させるために必要最小限の最小露光量(これに対応する光強度を「最小光強度Imin」と称する)以上である限りにおいて、非境界領域Rnにおける露光量は最小露光量に満たなくても構わない。これは、配線形成用塗布液を流し込むための隔壁として機能させるためには塗布液Pbのうち配線形成領域Reに臨む側面部Spが硬化していれば足り、それ以外の部分は必ずしも硬化している必要はなく、また塗布後時間をおくことにより、あるいは後述するように後工程において加熱処理を行うことにより、事後的に未硬化部分を硬化させることが可能であるからである。
【0048】
なお、隔壁形成領域Rbにおける「境界領域Rd」と「非境界領域Rn」とは概念上の区分であって、形成された隔壁Bにおいて明確に両領域を区分することができるというものではない。少なくとも、隔壁形成領域Rbと配線形成領域Reとの境界上における照射光の光強度Idよりも低い強度で光を照射される領域が隔壁形成領域Rb内に存在する、ということが上記作用効果を得るための要件であることを、図8は意味している。このことから例えば、隔壁形成領域Rbのうち、隔壁形成領域Rbと配線形成領域Reとの境界上における照射光の光強度Id以上の光強度が照射される領域を「境界領域Rd」、光強度がこれより低い領域を「非境界領域Rn」と定義することができる。
【0049】
このような要件を満たすように光照射を行うことにより、基板Wの隔壁形成領域Rbに塗布された隔壁形成用塗布液Pbは、その境界領域Rdにおいて急速に硬化が進む一方、非境界領域Rnでは硬化が遅い、または硬化しない。図8下段においては、塗布液Pbのうち光照射(図2のステップS103)によって直ちに硬化するであろう部分にドットを付して示している。これにより、薄く平坦で、かつ側面部が急峻に立ち上がる隔壁Bを形成することができる。
【0050】
図8に示した例では、レンズ534の光軸Aoは基板W表面上において配線形成領域Reとの境界から少し内側に入った隔壁形成領域Rb内を通っており、この位置において照射光の光強度および塗布液に対する露光量が最大となっている。しかしながら、上記効果を得るための光強度の分布はこれに限定されるものではない。
【0051】
図9は本実施形態が所期の作用効果を奏するための条件の他の例を示す図である。上記した通り、本実施形態により薄く平坦で側面部が急峻に立ち上がる隔壁Bを形成するための要件は、「隔壁形成領域Rbと配線形成領域Reとの境界上における塗布液への露光量が塗布液Pbを硬化させるのに十分なものであり、かつ該境界から離れた領域において露光量がより少ない部分が存在する」ことである。
【0052】
この要件を満たす限りにおいて、例えば図9(a)に示すように、レンズ534の光軸Aoが基板W表面上で隔壁形成領域Rbと配線形成領域Reとの境界を通っていたり、図9(b)に示すように該境界から少し外側の配線形成領域Re内を通っていても構わない。これらのケースではいずれも、隔壁形成領域Rbにおいて配線形成領域Reとの境界に近いほど光強度が高く、境界から離れるにつれて光強度は漸減する。これらの場合でも、隔壁形成領域Rbと配線形成領域Reとの境界上における光強度Idが最小光強度Imin以上であれば該境界に近い部分での塗布液の硬化が進行する。その一方、境界から離れた領域では照射光強度が弱いために硬化が遅くあるいは進まず、これにより上記した効果を得ることが可能である。これらのケースにおいては例えば、隔壁形成領域Rbのうち最小光強度Imin以上の光強度が得られる領域を境界領域Rb、これに満たない領域を非境界領域Rnとみなすことができる。
【0053】
なお、上記の説明では、1つの吐出ノズル523から吐出される塗布液Pbにより形成される1つの隔壁Bについて述べてきたが、図4に示したように、また後述するように、実際のデバイス製造においては基板W上に複数の隔壁Bが互いに微小な隙間を隔てて平行に形成され、この隙間に配線形成用塗布液が流し込まれることにより配線パターンEが形成される。このような微小な隙間を隔てて複数の隔壁Bを形成する場合においては、上記した1つの隔壁Bを形成するための構成を複数組並べることによって実現することも可能であり、また次のようにすることも可能である。
【0054】
図10は複数の隔壁を形成する場合の構成例を示す図である。この例では、上記例と同様に、隔壁形成用塗布液を吐出する吐出ノズル(図示省略)の両側にライトガイド573を設ける。ここで、ライトガイド573は、Y方向に隣接して配置される2つの吐出ノズルのほぼ中間位置に設けられ、各ライトガイド573に設けられたレンズ574の光軸Axは、基板W表面において2つの隔壁形成領域Rbに挟まれた配線形成領域Reのほぼ中間を通るように構成されている。
【0055】
このような構成によれば、配線形成領域Reのほぼ中央において照射光の光強度が最大となり、配線形成領域のRbの中央部から隔壁形成領域Rbに向かって光強度が漸減している。そして、該配線形成領域Rbとこれを挟む2つの隔壁形成領域Rbとの境界におけるライトガイド573からの出射光の光強度Idが、塗布液Pbを光硬化させるのに必要な最小光強度Iminよりも高くなるように、ライトガイド573からの出射光量が設定される。
【0056】
これにより、各隔壁形成領域Rbについて見れば、図9(b)と同様に、配線形成領域Reとの境界において光強度が最大であり、該境界から離れるにつれて光強度が低下するという状況となっている。このため、前述した例と同様に、薄く均一で、かつ側面部が急峻に立ち上がる隔壁Bを形成することが可能である。そして、隣接する2つの隔壁B1,B2の互いに向かい合う側面S1,S2を1つのライトガイド573により同時に形成することが可能となる。
【0057】
このことは単に装置構成を簡素化するという効果のみならず、次のような効果ももたらす。すなわち、配線パターンのさらなる微細化を図るためには、隣接する隔壁間の間隔を狭くする必要がある。図7に例示したように、1つの吐出ノズル523の両側にそれぞれライトガイド533を設ける構成では、吐出ノズル間の間隔を縮小するためには各ライトガイドをより小さく形成する必要があり、装置コストの上昇や光強度の低下などの問題を生じうる。
【0058】
一方、図10の構成によれば、このような問題を生じることなく吐出ノズル間の間隔を縮小させることができる。また、塗布液の広がりを仮想的な光の壁で食い止めるとの思想に基づけば、基板Wに向けて照射する光の強度やその収束のさせ方によって隔壁間の間隔を制御することが可能であり、微細な配線パターンを塗布液の吐出量の変動等の影響を受けずに制御性よく行うことが可能となる。
【0059】
図5に戻って、太陽電池製造プロセスの説明を続ける。こうして形成された互いに平行な複数の隔壁Bによって挟まれた配線形成領域Reに対して、第2ヘッド部の吐出ノズル723から配線形成材料を含む塗布液を流し込むことによって、基板W上に配線パターンEを形成する(ステップS104)。このとき、形成すべき配線パターンEの高さが隔壁B以下である場合には、隔壁Bによって塗布液の広がりが防止されるため、塗布液への光硬化性材料の添加および光照射を必要としない。もちろん、これらを行うことによって、隔壁よりも高い配線パターンを形成することも可能である。
【0060】
塗布液としては、導電性ペースト、すなわち電極の材料たる例えば銀粉末などの導電性粒子と、有機溶剤および粘度調整剤としての例えばエチルセルロースを含む有機ビヒクルとを含有するものを用いることができる。
【0061】
上記のようにして隔壁パターンおよび配線パターンが形成された基板Wをパターン形成装置1から搬出して図示しない加熱処理装置に移動させ(ステップS105)、該基板Wに対して所定の条件で加熱処理を行う(ステップS106)。これにより、パターンを完全に硬化させるとともに、配線パターンEと基板Wとの導通を確保する(ファイヤースルー)。このときの加熱温度としては例えば200℃とすることができる。なお、このように加熱温度を比較的低く抑えることで隔壁パターンの損傷を防止し該パターンを基板Wに対する保護膜として残存させる方法、および、適当な雰囲気中で高温加熱することで隔壁パターンを分解除去する方法のいずれを採用してもよい。
【0062】
以上のように、この実施形態のパターン形成装置1においては、太陽電池用の基板Wの表面に、互いに微小な隙間を設けて複数の隔壁Bを形成し、こうしてできた隙間に配線形成用塗布液を流し込んで硬化させることにより、基板Wに微細な配線パターンEを形成する。隔壁Bは、互いに近接配置させた複数の吐出ノズル523から隔壁形成材料を含む塗布液を基板Wに吐出させるとともに、塗布された塗布液に光を照射し、光硬化性材料を含む塗布液を光硬化させることによって形成される。
【0063】
この場合において、光照射は塗布された塗布液Pbの側面、特に基板W上の配線形成領域Reと隔壁形成領域Rbとが接する境界部分に対して集中的に行われる。これにより、隔壁形成領域Rbに塗布された塗布された塗布液Pbでは、配線形成領域Reに臨む側面部Spがまず他の部分に先んじて硬化する。一方、境界から離れた部分では塗布液の流動性の高い状態がより維持される。
【0064】
これにより、塗布液が周囲に流れ広がったり表面張力で表面が丸くなってしまうという問題が抑制され、この実施形態では、薄く均一で、しかも側面部が基板W表面から急峻に立ち上がった隔壁Bを形成することができる。このような隔壁Bの構造は、隔壁Bで囲まれた配線形成領域Reに配線形成材料を含む塗布液を流し込んで微細かつアスペクト比の高い配線を形成するための隔壁として極めて有効なものである。
【0065】
なお、上記実施形態の説明においては、基板W上における光強度に基づいて所期の作用効果を得るための条件を議論しているが、本質的には塗布液の硬化の度合いに影響を与えるのは「露光量」である。この実施形態では、ライトガイド533が基板W表面に対して一定速度で相対移動することから各位置における照射時間は一定であるため、本来は露光量で考慮すべき問題を照射光の光強度によって検討することができる。より一般的には、光強度と照射時間とを勘案した露光量に基づいて、照射光の強度や照射時間を適宜に設定すればよい。
【0066】
以上説明したように、この実施形態においては、第1ヘッド部5に設けられたシリンジポンプ52が本発明の「塗布手段」として機能しており、各吐出ノズル523が本発明の「ノズル」として機能している。また、光源ユニット532が本発明の「光源」として機能する一方、ライトガイド533、特にその下端に設けられたレンズ534が本発明の「収束部」として機能しており、これらが一体的に本発明の「光照射手段」として機能している。
【0067】
また、この実施形態においては、配線パターンEが本発明の「パターン」に相当しており、配線形成領域Reが本発明の「パターン形成領域」に相当している。そして、第2ヘッド部7に設けられたシリンジポンプ72が本発明の「パターン形成手段」として機能している。一方、隔壁形成領域Rbが本発明の「境界領域」および「非境界領域」を含む本発明の「隔壁形成領域」に相当している。
【0068】
また、本実施形態にかかる太陽電池製造プロセスは本発明の「パターン形成方法」を具現化した一の態様であり、ステップS102およびS103が本発明の「隔壁形成工程」に相当する一方、ステップS104が本発明の「パターン形成工程」に相当している。
【0069】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では基板Wに向けて出射される光の光軸をほぼ鉛直下向きとしているが、これに限定されるものではなく、例えば塗布液の側面に対して斜め上方から光が入射するように、照射方向を設定してもよい。このようにすることで、塗布液の側面に入射する単位面積当たりの光量を大きくして、塗布液の側面をより効率よく硬化させることができる。
【0070】
また、例えば上記実施形態では、基板Wに塗布された隔壁形成用塗布液Pbの側面部に集中的に光を照射するためにレンズ534により光を収束させているが、光を収束させる構成は必須ではない。また、レンズによる集光によって光の照射域を制限するのに代えて、不要な方向への光放射を規制する遮蔽手段を適宜設けて照射域を制限するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、隔壁形成領域Rbの非境界領域Rnに塗布された塗布液については光照射による硬化をさせず、後の加熱処理によって硬化させているが、非境界領域Rnについては境界領域Rdよりも遅れて塗布液を硬化させることによって本発明の目的を達成することが可能である。したがって、上記に限定されず、例えば側面部Spを選択的に光硬化させた後で、塗布液全体に光を照射して硬化させるようにしてもよい。この場合の光照射は、配線形成用塗布液の塗布後であってもよく、このとき配線形成用塗布液にも光硬化性材料を添加しておけば、当該光照射によってパターン全体を硬化させることが可能である。
【0072】
また、上記実施形態では基板全体を配線パターンEおよび隔壁パターンBにより覆っているが、公知の太陽電池構造のように各配線パターンEに交わるバス電極を形成するために、該バス電極を形成すべき位置を除いて上記パターンを形成するようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、基板Wへの隔壁パターンBの形成と、隔壁パターンが形成された基板Wへの配線パターンEの形成とを単一のパターン形成装置1で一連の処理として実行しているが、これらは個別の装置により実行されてもよい。また、配線パターン形成用のシリンジポンプを隔壁形成用のシリンジポンプと同一のヘッド部に搭載し、隔壁の形成と配線パターンの形成とを僅かな時間差で連続的に行うようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では基板Wの片面にのみ配線を形成しているが、基板Wの両面に配線を形成する場合にも、本発明を適用することが可能である。
【0075】
また、上記実施形態ではシリコン基板上に電極配線パターンを形成して太陽電池としての光電変換デバイスを製造しているが、基板はシリコンに限定されるものではない。例えば、ガラス基板上に形成された薄膜太陽電池や、太陽電池以外のデバイスにパターンを形成する際にも、本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
この発明は、基板上に所定のパターンを形成するパターン形成技術に適用可能であり、特に基板全体を覆うように配線パターンと隔壁パターンとを形成する場合に好適に適用することができる。また、隔壁を光透過性のあるものとすることで、各種の光学デバイスの製造に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 パターン形成装置
52 シリンジポンプ(塗布手段)
72 シリンジポンプ(パターン形成手段)
523 吐出ノズル(ノズル)
532 光源ユニット(光源、光照射手段)
533 ライトガイド(光照射手段)
534 レンズ(収束部、光照射手段)
B 隔壁パターン(隔壁)
E 配線パターン(パターン)
Rb 隔壁形成領域
Rd 境界領域(隔壁形成領域)
Re 配線形成領域(パターン形成領域)
Rn 非境界領域(隔壁形成領域)
S102,S103 隔壁形成工程
S104 パターン形成工程
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に所定のパターンを形成するパターン形成装置において、
光硬化性材料を含む隔壁形成用塗布液を前記基板表面に向けて吐出するとともに前記基板表面に対し相対移動して、前記基板表面のうち前記パターンを形成すべきパターン形成領域に隣接する隔壁形成領域に前記隔壁形成用塗布液を塗布する塗布手段と、
光を出射するとともに前記基板表面に対し前記塗布手段と一体的に相対移動して、前記隔壁形成領域に光を照射して前記隔壁形成領域に塗布された前記隔壁形成用塗布液を光硬化させる光照射手段と
を備え、
前記隔壁形成領域のうち前記パターン形成領域との境界に接する境界領域における前記光照射手段による露光量が、前記隔壁形成領域のうち前記境界領域を挟んで前記パターン形成領域と反対側の非境界領域における前記光照射手段による露光量よりも大きい
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
前記隔壁形成領域に対する前記光照射手段による露光量が、前記パターン形成領域との境界において最大であり、前記パターン形成領域との境界から離れるにつれて低下する請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
前記光照射手段は、光を出射する光源と、該光源から出射される光を前記基板表面に向けて収束させる収束部とを備え、
前記基板表面において前記収束部の光軸が前記パターン形成領域と前記隔壁形成領域との境界または前記パターン形成領域内を通る請求項2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
前記塗布手段は、前記パターン形成領域とそれぞれ隣接し該パターン形成領域を挟む両側の前記隔壁形成領域に前記隔壁形成用塗布液を塗布する請求項1ないし3のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記隔壁形成領域に塗布された前記隔壁形成用塗布液が光硬化してなる隔壁に囲まれた前記パターン形成領域に、パターン形成材料を含むパターン形成用塗布液を塗布するパターン形成手段を備える請求項1ないし4のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項6】
前記境界領域における前記光照射手段による露光量が、前記隔壁形成用塗布液を光硬化させるために必要最小限の最小露光量以上である一方、前記非境界領域の少なくとも一部における前記光照射手段による露光量が前記最小露光量よりも小さい請求項1ないし5のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項7】
前記塗布手段は、各々が前記隔壁形成用塗布液を連続的に吐出する複数のノズルを有し、該複数のノズルが一体的に前記基板表面に対し相対移動する請求項1ないし6のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項8】
基板の表面に所定のパターンを形成するパターン形成方法において、
前記基板表面のうち前記パターンを形成すべきパターン形成領域に隣接する隔壁形成領域に光硬化性材料を含む隔壁形成用塗布液を塗布するとともに、前記隔壁形成領域に塗布された前記隔壁形成用塗布液に光を照射して光硬化させることで、前記パターン形成領域の外縁に沿って前記パターン形成領域を挟む隔壁を形成する隔壁形成工程と、
前記隔壁によって挟まれた前記パターン形成領域に、パターン形成材料を含むパターン形成用塗布液を塗布して前記パターンを形成するパターン形成工程と
を備え、
前記隔壁形成工程では、前記隔壁形成領域のうち前記パターン形成領域との境界に接する境界領域における露光量が、前記隔壁形成領域のうち前記境界領域を挟んで前記パターン形成領域と反対側の非境界領域における露光量よりも大きい
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
前記隔壁形成工程では、前記基板表面のうち前記パターン形成領域を除く表面全体を前記隔壁形成領域として、該隔壁形成領域の全体に前記隔壁形成用塗布液を塗布する請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記隔壁形成用塗布液は、光硬化後において可視光に対する透過性を有する請求項9に記載のパターン形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−248712(P2012−248712A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119950(P2011−119950)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】