パターン形成装置及びパターン形成方法
【課題】基板にパターンを安価に形成できるパターン形成装置及びパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】パターン形成装置1は、周方向に沿う露光面21を有する感光ドラム2と、感光ドラム2の中心軸を中心として当該感光ドラム2を回転させる回転手段3と、露光面21にトナーが誘着される誘着領域、及び、当該トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手段8と、誘着領域にトナーTを誘着させる誘着手段9と、露光面21における所定の部位での感光ドラム2の接線に沿って基板PLを移動させる移動手段4と、露光面21に誘着されたトナーTを基板PLに付着させて、当該基板PLにパターンを形成するパターン形成手段10と、を備える。
【解決手段】パターン形成装置1は、周方向に沿う露光面21を有する感光ドラム2と、感光ドラム2の中心軸を中心として当該感光ドラム2を回転させる回転手段3と、露光面21にトナーが誘着される誘着領域、及び、当該トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手段8と、誘着領域にトナーTを誘着させる誘着手段9と、露光面21における所定の部位での感光ドラム2の接線に沿って基板PLを移動させる移動手段4と、露光面21に誘着されたトナーTを基板PLに付着させて、当該基板PLにパターンを形成するパターン形成手段10と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成装置及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左目用画像及び右目用画像を形成して、視差により立体視可能な画像を表示する画像表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の画像表示装置は、それぞれ異なる画像を表示する第1画素及び第2画素が交互に複数配列された表示パネルと、視差バリアとを有する。
【0003】
これらのうち、視差バリアは、表示パネルから出射された光を遮断する遮光部(マスク部)と、当該光を透過させる複数の透過部(開口部)とを有する。そして、当該視差バリアは、第1画素により形成される第1画像を第1視方向に向けると共に、第2画素により形成される第2画像を第2視方向に向けることで、当該第1画像及び第2画像を分離し、それぞれ異なる方向に表示する障壁として機能する。具体的に、視差バリアは、第1画像としての右目用画像を観察者の右目に入射させ、第2画像としての左目用画像を観察者の左目に入射させて、観察者がこれら右目用画像及び左目用画像を右目及び左目によりそれぞれ個別に視認することで、視差により立体画像が観察されることとなる。
【0004】
ところで、このような視差バリアは、微細な画素に対して精度よく透過部を形成する必要があるため、縮小投影型露光装置により製造される場合がある。この縮小投影型露光装置は、バリアパターンが形成されたレチクル(フォトマスク)を介した光を投影レンズにより縮小し、縮小された光をフォトレジストが塗布された大きな基板の複数箇所に照射して露光する。そして、露光されたフォトレジストを溶かすことで、基板における複数箇所にパターンが形成され、これらバリアパターンの形成箇所を切り出すことで、視差バリアが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3096613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の縮小投影型露光装置を用いる場合には、形成されるパターンに応じたレチクルを用意する必要がある他、大きな基板からパターンが形成された領域を切り出す工程が必要になるなど、製造工程も複雑であり、製造コストが高額となりやすい。更に、縮小投影型露光装置は非常に高価であるため、視差バリアの製造コストを更に押し上げる。このため、例えば、視差バリアのバリアパターンを評価するサンプルを製造する場合でも、縮小投影型露光装置を用いると、当該サンプルの製造工程が複雑である他、高コストとなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、基板にパターンを安価に形成できるパターン形成装置及びパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、本発明のパターン形成装置は、基板にパターンを形成するパターン形成装置であって、周方向に沿う露光面を有する感光ドラムと、前記感光ドラムの中心軸を中心として当該感光ドラムを回転させる回転手段と、前記露光面にトナーが誘着される誘着領域、及び、トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手段と、前記誘着領域にトナーを誘着させる誘着手段と、前記露光面における所定位置での前記感光ドラムの接線に沿って前記基板を移動させる移動手段と、前記露光面に誘着されたトナーを前記基板に付着させて、当該基板に前記パターンを形成するパターン形成手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、感光ドラムの露光面に形成された誘着領域にトナーが誘着され、当該露光面における所定位置での感光ドラムの接線に沿って移動される基板に、当該トナーが付着されて、パターンが形成される。このようなパターン形成装置は、レーザープリンターの構成を利用して製造できるので、前述の縮小投影型露光装置のような高額な設備を必要としない。この他、パターン形成に際して、縮小投影型露光装置で使用されるレチクルが必要なく、また、大きな基板からパターンが形成された領域を切り出す工程も省略できる。従って、安価かつ簡易にパターンを基板に形成できる。更に、当該縮小投影型露光装置を用いる場合に比べ、パターン形成に要する時間を短縮できる。
【0010】
本発明では、前記露光面を帯電させる帯電手段を備え、前記基板は、透光性を有し、前記露光面との間に所定の隙間を介して配置され、前記領域形成手段は、前記帯電手段により帯電された前記露光面に光を照射することで除電した前記非誘着領域と、除電されない前記誘着領域とを前記露光面に形成し、前記パターン形成手段は、前記誘着領域に対して、前記基板における前記露光面に対向する側とは反対側から当該基板を介して光を照射して除電し、当該誘着領域から遊離させたトナーを前記基板に付着させて前記パターンを形成することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、誘着領域に誘着されたトナーは、パターン形成手段により光が照射されることで露光面から遊離し、当該露光面との間に所定の隙間を介して配置された基板に付着する。これによれば、露光面と基板とが接触することがないので、当該露光面と基板とのずれを抑制できる。従って、基板上にパターンを適切に形成できる。
【0012】
本発明では、前記領域形成手段は、前記誘着領域及び前記非誘着領域により構成され、かつ、前記パターンを鏡像反転させた潜像を前記露光面に描画することが好ましい。
本発明によれば、領域形成手段により、形成されるパターンを鏡像反転させた潜像が露光面に描画されるので、当該潜像における誘着領域にトナーが誘着される。この潜像に対してパターン形成手段が光を照射することで、当該潜像における誘着領域に誘着されたトナーが遊離して基板に付着するので、パターン形成手段は、当該潜像に光を照射すれば、基板にパターンが形成される。従って、パターン形成手段による光照射の構成を簡略化できる。
【0013】
本発明では、前記回転手段により回転される前記感光ドラムの前記露光面の移動速度は、前記移動手段により移動される前記基板の移動速度より高いことが好ましい。
なお、露光面の移動速度は、感光ドラムの単位時間当たりの回転数と、当該感光ドラムの円周(露光面における回転方向の寸法)とにより求められる。
本発明によれば、露光面の移動速度が、基板の移動速度より高いことにより、基板にトナーが付着されて形成されるパターンは、露光面に形成された潜像を当該露光面の移動方向に縮小したパターンとなる。これによれば、基板に精度よくパターンを形成できる他、微細なパターンを基板上に形成することも可能となる。
【0014】
本発明では、前記領域形成手段は、前記感光ドラムの中心軸に沿って前記非誘着領域が形成される列と、前記誘着領域が形成される列とが、前記感光ドラムの回転方向に沿って交互に配列された前記潜像を描画することが好ましい。
ここで、パターン形成手段が光を照射して露光面を除電し、当該露光面から標的のトナーを遊離させるときに、当該標的のトナーに隣接する他のトナーの電荷によって、標的のトナーが露光面から遊離しづらくなる可能性が考えられる。
これに対し、本発明では、非誘着領域によって形成されてトナーが誘着されない列と、誘着領域が形成されてトナーが誘着されうる列とが、感光ドラムの回転方向(すなわち、露光面の移動方向)に交互に配列された潜像が描画される。これによれば、他のトナーの電荷によって標的のトナーが遊離しづらくなることを抑制できる。従って、基板に確実にトナーを付着させることができ、当該基板に対するパターンの形成を適切に行うことができる。
【0015】
或いは、本発明では、前記領域形成手段は、前記誘着領域と前記非誘着領域とが前記感光ドラムの中心軸に沿う方向に交互に配列された第1列と、前記誘着領域の位置と前記非誘着領域の位置とが反転された第2列とを、前記感光ドラムの回転方向に沿って交互に形成し、前記パターン形成手段は、前記感光ドラムの中心軸に沿う方向に沿って光を照射して、前記第1列及び前記第2列に形成された前記誘着領域から、前記パターンに応じた位置の誘着領域を選択して除電することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、トナーが誘着される誘着領域の端縁のうち、露光面の移動方向の端縁と、感光ドラムの中心軸に沿う方向の端縁とは、トナーが誘着されない非誘着領域に接する。これによれば、前述のように、パターン形成手段による光の照射によって遊離させる標的のトナーが他のトナーによって遊離しづらくなることを抑制できる。
そして、パターン形成手段が、第1列及び第2列に含まれる誘着領域のうち、基板上に形成されるパターンに応じた位置の誘着領域に光を照射してトナーを遊離させるので、当該基板上にパターンを適切に形成できる。
【0017】
本発明では、前記回転手段により回転される前記感光ドラムの前記露光面の移動速度は、前記移動手段により移動される前記基板の移動速度より高いことが好ましい。
本発明によれば、回転する感光ドラムの露光面から遊離されて基板上に付着されたトナーのうち、第1列の誘着領域に誘着されていたトナーと、第2列の誘着領域に誘着されていたトナーとのずれを小さくできる。従って、適切なパターンを基板上に形成できる。
【0018】
また、本発明のパターン形成方法は、基板にパターンを形成するパターン形成方法であって、周方向に沿う露光面を有する感光ドラムを、当該感光ドラムの中心軸を中心として回転させる回転手順と、前記露光面における所定位置での前記感光ドラムの接線に沿って前記基板を移動させる移動手順と、前記露光面にトナーが誘着される誘着領域と、トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手順と、前記誘着領域にトナーを誘着させる誘着手順と、前記露光面に誘着されたトナーを前記基板に付着させて、前記パターンを形成する形成手順と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、前述のパターン形成装置と同様の効果を奏することができ、基板にパターンを安価かつ簡易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパターン形成装置の構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態における基板に形成されるパターンの一例を示す図。
【図3】前記実施形態における潜像の一部を拡大して示す図。
【図4】前記実施形態における入力手段及び制御手段を示すブロック図。
【図5】前記実施形態におけるパターン形成方法を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2実施形態に係るパターン形成装置が形成する潜像を示す図。
【図7】前記実施形態における基板に形成されるパターンの一例を示す図。
【図8】前記実施形態におけるレーザー光が照射される誘着領域の位置及び照射順を示す模式図。
【図9】本発明の第3実施形態に係るパターン形成装置が形成する潜像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るパターン形成装置1の構成を示す模式図である。
本実施形態に係るパターン形成装置1は、ガラス及び樹脂等の透光性を有する基板PLの対象面PL1(後述する露光面21に対向する面)に所定のパターンを形成するものであり、本実施形態では、視差により立体視可能な画像を表示する画像表示装置に用いられる視差バリアのバリアパターンを当該対象面PL1に形成するものである。
このパターン形成装置1は、図1に示すように、感光ドラム2、回転手段3、移動手段4、回収手段5、除電手段6、帯電手段7、領域形成手段8、誘着手段9及びパターン形成手段10を備える。
【0021】
〔感光ドラム及び回転手段の構成〕
感光ドラム2は、周方向に沿う露光面21を有する円筒体である。この露光面21は、暗所では絶縁体の性質を有し、光が入射された位置が導体となって電荷を放出する。
回転手段3は、感光ドラム2を支持するとともに、感光ドラム2の中心軸を中心として当該感光ドラム2をA方向に回転させる。このような回転手段3は、後述する制御手段12の制御下で駆動し、例えば、モーターにより構成できる。
【0022】
〔移動手段及び回収手段の構成〕
移動手段4は、露光面21との間に所定の隙間を介してパターン形成対象の基板PLを支持するとともに、当該基板PLを感光ドラム2の接線方向に沿って移動させるものである。この移動手段4による基板PLの移動方向(B方向)は、露光面21上の所定位置(基板PLに最も近接する位置)における当該露光面21の移動方向とは反対方向である。なお、この露光面21の移動方向は、当該所定位置における回転接線方向であり、詳しくは、当該所定位置における接線に沿う方向のうち、感光ドラム2の回転方向先端側を向く方向である。
【0023】
このような移動手段4は、本実施形態では、ローラー41〜44を有する。
これらのうち、ローラー41,42は、基板PLを挟持するとともに、後述する制御手段12の制御下で駆動するモーターにより回転して、当該基板PLを移動させる。
また、ローラー43,44は、定着ローラーであり、基板PLを挟持するとともに、当該基板PLの移動に伴って回転して、基板PLに付着されたトナーTを定着させる。
回収手段5は、露光面21から遊離されなかった余分なトナーTを当該露光面21から回収する。
【0024】
〔除電手段及び帯電手段の構成〕
除電手段6、帯電手段7、領域形成手段8、誘着手段9及びパターン形成手段10は、回転手段3により回転される感光ドラム2の外周面に沿って配置され、回転手段3による感光ドラム2の回転、及び、移動手段4による基板PLの移動とともに機能する。
これらのうち、除電手段6は、露光面21に近接して設けられ、回収手段5によりトナーTが回収された露光面21を除電する。
帯電手段7は、除電手段6により除電された露光面21を、後述する誘着手段9によって供給されるトナーTが誘着されるように帯電させる。
【0025】
〔領域形成手段の構成〕
領域形成手段8は、帯電手段7により帯電された露光面21にレーザー光を照射して、当該露光面21の少なくとも一部を除電し、当該露光面21に、基板PLに形成されるパターンに基づく潜像を描画する。この領域形成手段8によってレーザー光が照射された露光面21の領域は除電されるので、当該レーザー光が照射されずに帯電手段7により帯電されたままの帯電領域が、トナーTが誘着される誘着領域AA(図3参照)となり、一方、レーザー光が照射されて除電された除電領域が、トナーが誘着されない非誘着領域NA(図3参照)となる。このような領域形成手段8により描画される潜像は、基板PLに形成されるパターンを鏡像反転させ、更に、露光面21の移動速度及び基板PLの移動速度の比に基づいて、当該露光面21の移動方向(A方向)に拡大したものである。
【0026】
図2は、基板PLに形成されるパターンの一例であるパターンPT1の一部を拡大して示す図である。また、図3は、図2に示したパターンPT1を基板PLに形成する際に領域形成手段8により露光面21に描画される潜像PT2の一部を拡大して示す図である。なお、図2における斜線部分(後述する遮光部PT11)は、基板PLにおいてトナーTが定着される部分であり、図3における斜線部分は、領域形成手段8によりレーザー光が照射されて除電される非誘着領域NAである。この図3においては、見易さを考慮して、一部の列C1,C2、並びに、一部の誘着領域AA及び非誘着領域NAにのみ符号を付す。
例えば、図2に示すパターンPT1を基板PLに形成する場合には、領域形成手段8は、図3に示すように、当該パターンPT1を鏡像反転させたパターンに応じた潜像PT2を露光面21に描画する。この潜像PT2は、本実施形態では、回転手段3による露光面21の移動速度が、移動手段4による基板PLの移動速度の2倍に設定されているため、パターンPT1を露光面21の移動方向(A方向)に2倍拡大し、更に鏡像反転させたものである。
【0027】
このような領域形成手段8は、潜像PT2を描画する際に、感光ドラム2の軸方向(露光面21において当該露光面21の移動方向に直交する方向であり、C方向)に沿って直径1μmのレーザー光のスポットを露光面21上で移動させることで、レーザー光を1列ごとに照射する。
この際、領域形成手段8は、図3に示すように、レーザー光を照射して除電される列C1を、除電されない列C2間に介装して潜像PT2を描画する。すなわち、潜像PT2は、レーザー光が照射されることで除電されてトナーTが誘着されない非誘着領域NAにより形成される列C1(1列全てに斜線が設定された列C1)と、トナーTが誘着される誘着領域AAが形成されうる列C2(形成されるパターンによっては誘着されない場合もある)とが、露光面21の移動方向(感光ドラム2の回転方向)であるA方向に沿って交互に配列されて描画される。換言すると、描画された潜像PT2においてトナーTが誘着されうる列C2は、トナーTが誘着されない列C1に挟まれる。
なお、本実施形態では、領域形成手段8は、露光面21にレーザー光を照射する構成としたが、これに限らず、LED(Light Emitting Diode)等の固体光源から出射される光を照射する構成としてもよい。
【0028】
〔誘着手段の構成〕
誘着手段9は、図1に示すように、露光面21にトナーT(本実施形態では、黒色トナーT)を誘着させる。このトナーTには、磁性を有するキャリアー(搬送体)が含まれており、当該トナーTは、露光面21における帯電領域(すなわち誘着領域AA)に誘着する性質を有する。このため、図3に示した潜像PT2における白地の部分にトナーTが誘着する。なお、本実施形態では、粒子の直径が1〜2μmであるトナーTが採用されている。
【0029】
〔パターン形成手段の構成〕
パターン形成手段10は、露光面21にレーザー光を照射して露光面21を除電することで、当該露光面21上のトナーTを遊離させて基板PLに付着させる。すなわち、露光面21に描画され、かつ、トナーTが誘着された潜像(例えば、潜像PT2)を基板PLに転写して、当該基板PLにパターン(例えば、パターンPT1)を形成する。
この際、パターン形成手段10は、基板PLの裏面側(露光面21に対向する側とは反対側)から、当該基板PLを介してレーザー光を露光面21に照射する。なお、パターン形成手段10は、領域形成手段8と同様の構成を有しており、レーザー光のスポットは直径1μmであり、当該スポットの移動方向は、感光ドラム2の回転軸に沿うC方向に設定されている。
【0030】
ここで、潜像PT2は、前述のように、誘着領域AAが形成されトナーTが誘着されうる列と、誘着領域AAが形成されずトナーTが誘着されない列とが交互に配列されて形成されている。このため、パターン形成手段10により、トナーが誘着された列にレーザー光が照射されて当該トナーTが遊離する際に、他の列のトナーTの電荷により、標的となるトナーTの遊離が阻害されることが防止される。
また、本実施形態では、回転手段3による露光面21の移動速度は、移動手段4による基板PLの移動速度の2倍であり、潜像PT2は、パターンPT1を露光面21の移動方向に2倍拡大したパターンを鏡像反転したものである。このため、基板PLには、潜像PT2が鏡像反転され、更に、露光面21の移動方向に沿って1/2に縮小されたパターン(パターンPT1)が転写されることとなる。これにより、パターンPT1が精度よく基板PL上に形成される。
このようにして基板PL上に付着されたトナーTは、前述の移動手段4を構成するローラー43,44により、基板PL上に定着される。
【0031】
〔入力手段の構成〕
図4は、入力手段11及び制御手段12を示すブロック図である。
パターン形成装置1は、上記構成2〜10に加えて、図4に示すように、入力手段11及び制御手段12を備える。
このうち、入力手段11は、図示を省略するが、パターン形成装置1を操作するためのキーボード及びポインティングデバイス等の操作装置を備える。また、入力手段11は、基板PLに形成するパターンの画像データを取得する画像取得装置を備える。このような画像取得装置として、スキャナーや、当該画像が含まれるファイルを記憶する記憶装置と通信する通信手段が挙げられる。そして、入力手段11は、操作装置に対する入力操作に応じた操作信号を制御手段に出力する他、取得された画像データを制御手段に出力する。
【0032】
〔制御手段の構成〕
制御手段12は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の回路素子が実装された回路基板として構成され、パターン形成装置1全体を制御する。この制御手段12は、当該ROMに記憶されたプログラム及びデータをCPUが処理することにより、画像処理部121、回転制御部122、移動制御部123、領域形成制御部124及びパターン形成制御部125として示される機能を実現する。
【0033】
画像処理部121は、入力手段11から入力されるパターンの画像データを処理し、当該画像データに基づいて、領域形成手段8により露光面21に描画される潜像の画像データを生成する。
回転制御部122及び移動制御部123は、それぞれ、回転手段3及び移動手段4の駆動を制御する。これら回転制御部122及び移動制御部123は、回転手段3による露光面21の移動速度(感光ドラム2の単位時間当たりの回転数と、感光ドラム2の回転方向における露光面21の寸法とを乗算した速度)が、移動手段4による基板PLの移動速度の2倍となるように、これら回転手段3及び移動手段4の駆動を制御する。
領域形成制御部124は、画像処理部121により生成された潜像の画像データに基づいて、当該潜像を露光面21に描画するように、領域形成手段8の動作を制御する。
パターン形成制御部125は、パターン形成手段10の動作を制御して、トナーTが誘着した露光面21にレーザー光を照射させて、当該トナーTを基板PLの対象面PL1に付着させる。
【0034】
〔パターン形成方法〕
図5は、パターン形成装置1を用いて実施されるパターン形成方法を示すフローチャートである。
パターン形成装置1は、以下に示すパターン形成方法を実施することで、基板PLに所定のパターン(例えば、パターンPT1)を形成する。
このパターン形成方法では、図5に示すように、まず、制御手段12の回転制御部122が、回転手段3により感光ドラム2をA方向に回転させるとともに(手順S1)、移動制御部123が、移動手段4により基板PLをB方向に移動させる(手順S2)。
【0035】
これら手順S1,S2の実施に伴い、除電手段6が露光面21を除電し(手順S3)、帯電手段7が、除電された露光面21を帯電させる(手順S4)。
そして、領域形成制御部124が、領域形成手段8により、帯電された露光面21にレーザー光を照射して、画像処理部121により生成された画像データに応じた潜像(例えば、潜像PT2)を当該露光面21に描画して、非誘着領域NA及び誘着領域AAを形成する(手順S5)。この潜像における誘着領域AAに、誘着手段9がトナーTを誘着させる(手順S6)。
【0036】
次に、パターン形成制御部125が、パターン形成手段10により、露光面21に描画された潜像の列C2ごとにレーザー光を照射してトナーTを遊離させ、当該トナーTを基板PLの対象面PL1に付着させて、対象面PL1に潜像の列C2を転写する(手順S7)。この後、回収手段5が、余分なトナーTを露光面21から除去する(手順S8)。また、対象面PL1上のトナーTは、ローラー43,44により定着される。
以上の手順S3〜S7が、感光ドラム2が回転し、かつ、基板PLが移動している間、同時に、かつ、繰り返し実施されることで、パターンが基板PL上に形成される。
【0037】
〔パターンの構成〕
本実施形態では、基板PLは、前述のように、右目用画像を右目用画素により形成し、かつ、左目用画像を左目用画素により形成して、視差により立体視可能な画像を表示する立体画像表示装置の視差バリアとして構成される。この視差バリアは、右目用画像と左目用画像とを分離して、当該右目用画像及び左目用画像をそれぞれ観察者の右目及び左目に入射させるものである。
このような基板PLに形成されるパターンPT1には、図2に示すように、定着されたトナーTにより形成される遮光部PT11と、右目用画像及び左目用画像を透過させて、それぞれ右目及び左目に入射させる複数の透過部PT12とが形成されている。これら透過部PT12は、立体画像表示装置に設定された視点上の一方の目(例えば、右目)と、当該一方の目により視認されるべき画像を表示する画素(例えば、右目用画素)とを結ぶ仮想の直線上に形成される。これら透過部PT12により、右目用画素は左目ではほぼ視認されずに右目で視認可能となり、左目用画素は右目ではほぼ視認されずに左目で視認可能となる。
【0038】
ここで、各透過部が、互いに縦横に交互に配列された右目用画素及び左目用画素の配列方向のうちの行方向に沿う2つの短辺と、列方向に沿う2つの長辺とを有する長方形状である場合、当該透過部を透過する光の分布は樽型となる。そして、透過部の各長辺略中央付近から外側に漏出される光は、クロストーク(左右の画像の分離が不完全で二重像が視認されること)の要因となりやすい。
これに対し、各透過部PT12は、上記行方向に沿う2つの短辺と、上記列方向に沿う2つの略円弧状の長辺とを有し、当該各長辺の中央部分が互いに近接するボビン型の形状である。このような形状により、透過部の各長辺略中央付近から外側への光の漏出が遮光部PT11により抑制され、クロストークの発生を抑制できる。
【0039】
以上説明した本実施形態に係るパターン形成装置1によれば、以下の効果がある。
A方向に回転される感光ドラム2の露光面21には、誘着領域AA及び非誘着領域NAにより構成され、かつ、基板PLに形成されるパターンに基づく潜像が領域形成手段8により描画され、当該潜像の形成位置には、誘着手段9によりトナーTが誘着される。そして、トナーTが誘着された誘着領域AAに、パターン形成手段10による光が照射されることで当該トナーTが遊離して、移動手段4によりB方向に移動する基板PLに付着することで、当該基板PLにパターンが形成される。
これによれば、パターン形成装置1にレーザープリンターの構成を利用できるので、縮小投影型露光装置のような高額な設備を必要とせずに、基板PLにパターンを形成できる。この他、当該パターンの形成に際して、縮小投影型露光装置で使用されるレチクルを用意する必要もなく、また、大きな基板からパターンが形成された領域を切断する処理も省略できる。従って、安価かつ簡易にパターンを基板PLに形成できる。更に、縮小投影型露光装置を用いる場合に比べ、パターン形成に要する時間を短縮できる。
【0040】
誘着領域AAに誘着されたトナーTは、パターン形成手段10によりレーザー光が照射されることで電荷が失われて露光面21から遊離し、当該露光面21との間に所定の隙間を介して配置された基板PLに付着する。これによれば、露光面21と基板PLとが接触しないので、感光ドラム2の回転及び基板PLの移動による露光面21と基板PLとのずれの発生を抑制でき、より精密にパターンを基板PLに形成できる。
【0041】
領域形成手段8が、形成されるパターンを鏡像反転させたパターンに応じた潜像を、誘着領域AA及び非誘着領域NAにより描画するので、当該誘着領域AAにトナーTが誘着される。この潜像に対してパターン形成手段10が列ごとに光を照射することで、当該潜像における誘着領域AAに誘着されたトナーTが遊離して基板PLに付着する。これによれば、パターン形成手段10は、当該潜像に光を照射すれば、基板PLにパターンが形成されることとなるので、パターン形成手段10によるレーザー光の照射時に、どの誘着領域AAにレーザー光を照射してトナーTを遊離させるべきかの判定処理を省略できる。従って、パターン形成手段10による光照射の構成を簡略化でき、パターン形成制御部125の処理を簡略化できる。
【0042】
回転手段3によって回転される感光ドラム2の露光面21の移動速度は、移動手段4によって移動される基板PLの移動速度より高く設定されている。これによれば、基板PLにトナーTが付着されて形成されるパターンは、露光面21に形成された潜像を当該露光面21の移動方向(A方向)に縮小したパターンとなる。これによれば、基板PLにトナーTを密に付着させることができ、当該基板PLに精度よくパターンを形成できる。
【0043】
領域形成手段8は、レーザー光が照射されることで除電されてトナーが誘着されない列C1(非誘着領域NAからなる列C1)と、誘着領域AAが形成されてトナーが誘着されうる列C2とが、露光面21の移動方向(A方向)に沿って交互に配列された潜像を描画する。これによれば、パターン形成手段10によりレーザー光を照射して露光面21から標的のトナーTを遊離させる際に、他のトナーTの電荷によって当該標的のトナーTが遊離しづらくなることを抑制できる。従って、基板PLに対するパターンの形成を適切に行うことができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態に係るパターン形成装置は、パターン形成装置1とは、基板PL上にパターンPT1を形成する工程が異なる。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係るパターン形成装置は、パターン形成装置1と同様の構成を有する。
このうち、領域形成手段8は、帯電された露光面21にレーザー光を照射して除電することでトナーTが付着されない非誘着領域NAと、トナーTが付着される誘着領域AAとが交互に配列された潜像PT4を形成する。
【0046】
図6は、本実施形態に係るパターン形成装置の領域形成手段8が形成する潜像を示す図である。なお、図6においては、見易さを考慮して、誘着領域AA及び非誘着領域NAのうち一部について符号を付す。
具体的に、領域形成手段8は、図6に示すように、感光ドラム2の中心軸に沿う方向であるC方向に沿ってレーザー光を照射して、当該C方向に沿って非誘着領域NAが形成されトナーTが誘着されない列CA1と、当該C方向に沿って非誘着領域NAと誘着領域AAとが交互に配列される列CA2とを、当該感光ドラム2の回転方向(露光面21の移動方向)であるA方向に沿って交互に形成する。この際、領域形成手段8は、互いに隣り合う2つの列CA2のうち、一方の列CA2における誘着領域AA及び非誘着領域NAの位置を、他方の列CA2とは反転させる。このため、図6において隣り合う2つの列CA2のうち、左側の列CA2と右側の列CA2とは、誘着領域AAの位置と非誘着領域NAの位置とが逆になっている。これら隣り合う2つの列CA2のうち、一方が本発明の第1列であり、他方が本発明の第2列に相当する。
【0047】
なお、誘着領域AAの寸法及び非誘着領域NAの寸法(隣り合う誘着領域AA間の寸法)は、パターン形成手段10により照射されるレーザースポットの直径、或いは、トナーTの粒子の直径に応じた寸法に設定されている。このため、本実施形態では、誘着領域AAの寸法と当該スポットの直径(1μm)とは略同じであり、トナーTの粒子も1μmに設定されている。
【0048】
パターン形成手段10は、C方向にレーザー光のスポットを移動させて露光面21に当該レーザー光を照射して、トナーTが誘着された誘着領域AAのうち、基板PLに形成するパターンに応じた位置の誘着領域AAを除電し、当該誘着領域AAに誘着されたトナーTを遊離させる。これにより、基板PL上にトナーTが付着され、基板PL上にパターンが形成される。この際、誘着領域AAは、非誘着領域NAにより囲まれているので、レーザー光の照射によって遊離される誘着領域AAのトナーTが、露光面21から遊離しやすい。
【0049】
図7は、基板PL上に形成されるパターンPT3の一例を示す図である。また、図8は、トナーTが誘着された誘着領域AAのうち、パターン形成手段10によりレーザー光が照射される誘着領域AAの位置、及び、当該レーザー光の照射順を示す模式図である。なお、図8におけるレーザー光の照射順を示す数字と、図7における数字とは対応している。
例えば、図7に示す「N」字様のパターンPT3を基板PL上に形成する場合、パターン形成手段10は、図8に示すように、露光面21がA方向に移動して、列CA2(CA21〜CA30)のうち列CA21がレーザー光の照射列となった際に、当該列CA21に配列された誘着領域AAのうち「1」と付された誘着領域AAにレーザー光を照射する。
【0050】
また、露光面21が更に移動して、列CA22がレーザー光の照射列となると、パターン形成手段10は、当該列CA22の誘着領域AAのうち「2」と付された誘着領域AAにレーザー光を照射する。これにより、図7に示す「N」字様のパターンPT3における左側の直線部分(縦線部分)に応じて、基板PL上にトナーTが付着される。
なお、このように、形成されるパターンにおいて同じ直線(上記縦線部分)を形成するトナーTを付着させる場合には、基板PLの移動を停止させてもよい。
【0051】
そして、パターン形成手段10は、露光面21が更に移動して、列CA24,CA25,CA28〜CA30がそれぞれレーザー光の照射列となった際に、当該各列CA24,CA25,CA28〜CA30の誘着領域AAのうち「3」〜「7」と付された誘着領域AAにレーザー光を照射する。これにより、図7に示す「N」字様のパターンPT3における斜線部分及び右側の直線部分に応じて、基板PL上にトナーTが付着される。
このようにして、基板PL上に「N」字様のパターンPT3が形成される。
なお、上記列CA23、CA26,CA27のように、レーザー光が照射されない列が存在するのは、例えば列CA21,C22の誘着領域AAにより形成されるパターンPT3の左側の列(直線部分)のように、パターンにおける1つの列が2つの列CA2により形成されるので、当該パターンの形状によってはトナーTを基板PLに付着させる必要のない列CA2が存在するためである。
【0052】
以上説明した本実施形態に係るパターン形成装置1Aによれば、前述のパターン形成装置1と同様の効果を奏することができる他、以下の効果を奏することができる。
すなわち、誘着領域AAにおけるA方向及びC方向の端縁は、トナーTが誘着されない非誘着領域NAに接している。これによれば、基板PLに付着させる標的のトナーが他のトナーによって誘着領域AAから遊離しづらくなることを抑制できる。
また、パターン形成手段10が、列CA2(例えば列CA21)と、当該列CA2とは誘着領域AA及び非誘着領域NAの位置とが反転した列CA2(例えば列CA22)とに含まれる誘着領域AAのうち、基板PLに形成されるパターンに応じた位置の誘着領域AAに光を照射してトナーTを遊離させる。これにより、基板PLにパターンを適切に形成できる。
【0053】
ここで、感光ドラム2の回転速度(露光面21の移動速度)が、基板PLの移動速度以下である場合には、前述の「N」字様のパターンPT3における縦線部分に付着するトナーTのうち、列CA21の誘着領域AAに誘着されていたトナーTと、列CA22の誘着領域AAに誘着されていたトナーTとのB方向のずれが大きくなる。これに対し、感光ドラム2の回転速度が基板PLの移動速度より高いので、当該ずれを小さくできる。従って、適切なパターンを基板上に形成できる。
なお、前述のように、形成されるパターンにおいて同一の直線部分を形成する際に、基板PLの移動を停止させる構成である場合には、感光ドラム2の回転速度が、基板PLの移動速度より高いことにより、パターン形成に要する時間を短縮できる。
【0054】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態に係るパターン形成装置は、前述のパターン形成装置1と同様の構成を有する。しかしながら、当該パターン形成装置では、パターン形成速度を向上するために、領域形成手段8が、感光ドラム2の回転に伴って移動する露光面21の移動方向に対して交差する方向に沿って誘着領域AA及び非誘着領域NAを有する列を形成し、パターン形成手段10が、当該列の形成方向に沿ってレーザー光を照射する。この点で、本実施形態に係るパターン形成装置と、パターン形成装置1とは相違する。
【0055】
図9は、本実施形態に係るパターン形成装置の領域形成手段8が形成する潜像の一部を示す図である。なお、図9においては、見易さを考慮して、誘着領域AA及び非誘着領域NAのうち一部について符号を付す。
具体的に、領域形成手段8は、図9に示すように、A方向に移動する露光面21にレーザー光を照射して、非誘着領域NAにより形成される列CA1と、誘着領域AA及び非誘着領域NAが交互に配列された列CA2とを、A方向及びC方向に対してそれぞれ交差する方向に沿い、更に、当該列CA1と列CA2とがA方向に沿って交互に配列された潜像PT5を露光面21に形成する。また、前述と同様に、列CA2を介して互いに隣り合う2つの列CA2のうち、一方における誘着領域AA及び非誘着領域NAの位置と、他方における誘着領域AA及び非誘着領域NAの位置とは逆になっている。
【0056】
パターン形成手段10は、C方向に沿ってレーザー光を照射するが、この際の感光ドラム2の回転は停止されていない。このため、A方向に移動する露光面21において列CA2の中心線L1に沿ってレーザー光が照射される。このような列CA2の中心線L1とC方向に沿う直線L2との交差角θは、C方向に沿って移動するレーザー光のスポットにより除電された1つの列CA2の誘着領域AAから遊離したトナーTにより基板PL上に形成されるトナーTの列が、当該基板PL上でB方向に対して直交する方向に沿って形成されるように設定されている。換言すると、当該交差角θは、感光ドラム2の回転速度(露光面21の移動速度)に応じて設定される。
【0057】
このようなパターン形成手段10が、各列CA2のうちレーザー光の照射列における誘着領域AAにレーザー光を照射することで、基板PL上にトナーTからなる所望のパターンを形成できる。例えば、パターン形成手段10が、図9において数字が付された誘着領域AAに対してレーザー光を照射することにより、基板PL上には、図7に示した「N」字様のパターンPT4が形成される。
【0058】
以上説明した本実施形態に係るパターン形成装置によれば、前述のパターン形成装置と同様の効果を奏することができる他、以下の効果がある。
すなわち、領域形成手段8により、露光面21において列CA1,CA2がA方向及びC方向のそれぞれに対して交差する方向に沿って形成されるので、パターン形成手段10が、C方向に沿ってレーザー光を移動させる際に、露光面21を移動させたまま、列CA2の中心線L1に沿って当該レーザー光を確実に照射できる。従って、感光ドラム2の回転速度、及び、当該回転速度に基づいて設定される前述の交差角θを最適化することにより、パターンの形成効率を向上できる。
【0059】
また、非誘着領域NAにより構成される列CA1がレーザー光の照射列となっている間に、1つの列CA2にレーザー光を照射したパターン形成手段10が、当該レーザー光の照射位置を初期位置に戻すことができる。この点においても、露光面21を移動させたままで、誘着領域AA及び非誘着領域NAが配列された列CA2に対して、レーザー光を適切に照射することができ、基板PL上にパターンを効率よく形成できる。
【0060】
なお、本実施形態では、前述の第2実施形態で示した潜像と同様の潜像を領域形成手段8が形成した。しかしながら、前述の第1実施形態と同様に、基板PLに形成されるパターンを鏡像反転させたパターンに応じた潜像を、A方向及びC方向に対してそれぞれ交差する方向に沿って、領域形成手段8が形成してもよい。この場合、パターン形成手段10が、トナーTが誘着した当該潜像に対してレーザー光を照射することで、基板PLに当該パターンを形成できる。
【0061】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、パターン形成装置は、視差により立体視可能な画像を表示する立体画像表示装置に採用される視差バリアのバリアパターンを基板PLに形成するパターン形成装置として構成したが、本発明はこれに限らない。例えば、所定波長の光を透過する粒子を付着させることで所定のパターンが形成されたカラーフィルターを製造してもよく、同様に、偏光フィルターを製造してもよい。更に、それぞれ異なる性質を有する粒子を付着させて、基板PL上に複数の層を形成してもよい。加えて、基板PLに形成されるパターンは、適宜選択可能である。
【0062】
前記各実施形態では、基板PLは、感光ドラム2の露光面21との間に所定の隙間を介して配置されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、露光面21と基板PLとが接触し、当該露光面21に誘着されたトナーが基板PLの対象面PL1に付着されることでパターンが形成されるように、パターン形成装置を構成してもよい。
【0063】
前記各実施形態では、パターン形成手段10によりレーザー光が照射される部位、すなわち、露光面21における基板PLに最も近い部位での当該露光面21の回転接線方向と、移動手段4により移動される基板PLの移動方向とは、互いに反対方向であるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該回転接線方向と、基板PLの移動方向とが同じ方向となるように、移動手段4が基板PLを移動させる構成としてもよい。
【0064】
前記各実施形態では、回転手段3による露光面21の移動速度は、移動手段4による基板PLの移動速度より高い(速い)としたが、本発明はこれに限らない。すなわち、露光面21の移動速度が、基板PLの移動速度より低くてもよく、或いは、それぞれが同じであってもよい。
【0065】
前記第1実施形態では、領域形成手段8は、トナーTが付着されうる列と、トナーTが付着されない列とが、露光面21の移動方向(感光ドラム2の回転方向)に沿って交互に配列された潜像を形成するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該トナーTが付着されない列を形成せずに、領域形成手段8が潜像を形成する構成としてもよい。
【0066】
また、前記第2実施形態では、領域形成手段8は、誘着領域AA及び非誘着領域NAが感光ドラム2の中心軸に沿う方向であるC方向に交互に配列された列CA2と、非誘着領域NAが当該C方向に沿って形成された列CA1とを、感光ドラム2の回転方向に沿って露光面21に形成するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、誘着領域AAと非誘着領域NAとが当該中心軸に沿って交互に形成された列と、当該列とは誘着領域AAの位置と非誘着領域NAの位置とが反転した列とが、感光ドラム2の回転方向に沿って露光面21に形成されていれば、列CA1がなくても、誘着領域AAに誘着されたトナーTの遊離性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、基板にパターンを形成するパターン形成装置及びパターン形成装置に利用でき、特に、基板にバリアパターンを形成して視差バリアを製造するパターン形成装置及びパターン形成方法として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1…パターン形成装置、2…感光ドラム、3…回転手段、4…移動手段、7…帯電手段、8…領域形成手段、9…誘着手段、10…パターン形成手段、21…露光面、AA…誘着領域、C1…列(非誘着領域が形成される列)、C2…列(誘着領域が形成される列)、CA2(CA21〜CA30)…列、NA…非誘着領域、PL…基板、PT1,PT3…パターン、PT2,PT4,PT5…潜像、T…トナー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成装置及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左目用画像及び右目用画像を形成して、視差により立体視可能な画像を表示する画像表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の画像表示装置は、それぞれ異なる画像を表示する第1画素及び第2画素が交互に複数配列された表示パネルと、視差バリアとを有する。
【0003】
これらのうち、視差バリアは、表示パネルから出射された光を遮断する遮光部(マスク部)と、当該光を透過させる複数の透過部(開口部)とを有する。そして、当該視差バリアは、第1画素により形成される第1画像を第1視方向に向けると共に、第2画素により形成される第2画像を第2視方向に向けることで、当該第1画像及び第2画像を分離し、それぞれ異なる方向に表示する障壁として機能する。具体的に、視差バリアは、第1画像としての右目用画像を観察者の右目に入射させ、第2画像としての左目用画像を観察者の左目に入射させて、観察者がこれら右目用画像及び左目用画像を右目及び左目によりそれぞれ個別に視認することで、視差により立体画像が観察されることとなる。
【0004】
ところで、このような視差バリアは、微細な画素に対して精度よく透過部を形成する必要があるため、縮小投影型露光装置により製造される場合がある。この縮小投影型露光装置は、バリアパターンが形成されたレチクル(フォトマスク)を介した光を投影レンズにより縮小し、縮小された光をフォトレジストが塗布された大きな基板の複数箇所に照射して露光する。そして、露光されたフォトレジストを溶かすことで、基板における複数箇所にパターンが形成され、これらバリアパターンの形成箇所を切り出すことで、視差バリアが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3096613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の縮小投影型露光装置を用いる場合には、形成されるパターンに応じたレチクルを用意する必要がある他、大きな基板からパターンが形成された領域を切り出す工程が必要になるなど、製造工程も複雑であり、製造コストが高額となりやすい。更に、縮小投影型露光装置は非常に高価であるため、視差バリアの製造コストを更に押し上げる。このため、例えば、視差バリアのバリアパターンを評価するサンプルを製造する場合でも、縮小投影型露光装置を用いると、当該サンプルの製造工程が複雑である他、高コストとなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、基板にパターンを安価に形成できるパターン形成装置及びパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、本発明のパターン形成装置は、基板にパターンを形成するパターン形成装置であって、周方向に沿う露光面を有する感光ドラムと、前記感光ドラムの中心軸を中心として当該感光ドラムを回転させる回転手段と、前記露光面にトナーが誘着される誘着領域、及び、トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手段と、前記誘着領域にトナーを誘着させる誘着手段と、前記露光面における所定位置での前記感光ドラムの接線に沿って前記基板を移動させる移動手段と、前記露光面に誘着されたトナーを前記基板に付着させて、当該基板に前記パターンを形成するパターン形成手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、感光ドラムの露光面に形成された誘着領域にトナーが誘着され、当該露光面における所定位置での感光ドラムの接線に沿って移動される基板に、当該トナーが付着されて、パターンが形成される。このようなパターン形成装置は、レーザープリンターの構成を利用して製造できるので、前述の縮小投影型露光装置のような高額な設備を必要としない。この他、パターン形成に際して、縮小投影型露光装置で使用されるレチクルが必要なく、また、大きな基板からパターンが形成された領域を切り出す工程も省略できる。従って、安価かつ簡易にパターンを基板に形成できる。更に、当該縮小投影型露光装置を用いる場合に比べ、パターン形成に要する時間を短縮できる。
【0010】
本発明では、前記露光面を帯電させる帯電手段を備え、前記基板は、透光性を有し、前記露光面との間に所定の隙間を介して配置され、前記領域形成手段は、前記帯電手段により帯電された前記露光面に光を照射することで除電した前記非誘着領域と、除電されない前記誘着領域とを前記露光面に形成し、前記パターン形成手段は、前記誘着領域に対して、前記基板における前記露光面に対向する側とは反対側から当該基板を介して光を照射して除電し、当該誘着領域から遊離させたトナーを前記基板に付着させて前記パターンを形成することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、誘着領域に誘着されたトナーは、パターン形成手段により光が照射されることで露光面から遊離し、当該露光面との間に所定の隙間を介して配置された基板に付着する。これによれば、露光面と基板とが接触することがないので、当該露光面と基板とのずれを抑制できる。従って、基板上にパターンを適切に形成できる。
【0012】
本発明では、前記領域形成手段は、前記誘着領域及び前記非誘着領域により構成され、かつ、前記パターンを鏡像反転させた潜像を前記露光面に描画することが好ましい。
本発明によれば、領域形成手段により、形成されるパターンを鏡像反転させた潜像が露光面に描画されるので、当該潜像における誘着領域にトナーが誘着される。この潜像に対してパターン形成手段が光を照射することで、当該潜像における誘着領域に誘着されたトナーが遊離して基板に付着するので、パターン形成手段は、当該潜像に光を照射すれば、基板にパターンが形成される。従って、パターン形成手段による光照射の構成を簡略化できる。
【0013】
本発明では、前記回転手段により回転される前記感光ドラムの前記露光面の移動速度は、前記移動手段により移動される前記基板の移動速度より高いことが好ましい。
なお、露光面の移動速度は、感光ドラムの単位時間当たりの回転数と、当該感光ドラムの円周(露光面における回転方向の寸法)とにより求められる。
本発明によれば、露光面の移動速度が、基板の移動速度より高いことにより、基板にトナーが付着されて形成されるパターンは、露光面に形成された潜像を当該露光面の移動方向に縮小したパターンとなる。これによれば、基板に精度よくパターンを形成できる他、微細なパターンを基板上に形成することも可能となる。
【0014】
本発明では、前記領域形成手段は、前記感光ドラムの中心軸に沿って前記非誘着領域が形成される列と、前記誘着領域が形成される列とが、前記感光ドラムの回転方向に沿って交互に配列された前記潜像を描画することが好ましい。
ここで、パターン形成手段が光を照射して露光面を除電し、当該露光面から標的のトナーを遊離させるときに、当該標的のトナーに隣接する他のトナーの電荷によって、標的のトナーが露光面から遊離しづらくなる可能性が考えられる。
これに対し、本発明では、非誘着領域によって形成されてトナーが誘着されない列と、誘着領域が形成されてトナーが誘着されうる列とが、感光ドラムの回転方向(すなわち、露光面の移動方向)に交互に配列された潜像が描画される。これによれば、他のトナーの電荷によって標的のトナーが遊離しづらくなることを抑制できる。従って、基板に確実にトナーを付着させることができ、当該基板に対するパターンの形成を適切に行うことができる。
【0015】
或いは、本発明では、前記領域形成手段は、前記誘着領域と前記非誘着領域とが前記感光ドラムの中心軸に沿う方向に交互に配列された第1列と、前記誘着領域の位置と前記非誘着領域の位置とが反転された第2列とを、前記感光ドラムの回転方向に沿って交互に形成し、前記パターン形成手段は、前記感光ドラムの中心軸に沿う方向に沿って光を照射して、前記第1列及び前記第2列に形成された前記誘着領域から、前記パターンに応じた位置の誘着領域を選択して除電することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、トナーが誘着される誘着領域の端縁のうち、露光面の移動方向の端縁と、感光ドラムの中心軸に沿う方向の端縁とは、トナーが誘着されない非誘着領域に接する。これによれば、前述のように、パターン形成手段による光の照射によって遊離させる標的のトナーが他のトナーによって遊離しづらくなることを抑制できる。
そして、パターン形成手段が、第1列及び第2列に含まれる誘着領域のうち、基板上に形成されるパターンに応じた位置の誘着領域に光を照射してトナーを遊離させるので、当該基板上にパターンを適切に形成できる。
【0017】
本発明では、前記回転手段により回転される前記感光ドラムの前記露光面の移動速度は、前記移動手段により移動される前記基板の移動速度より高いことが好ましい。
本発明によれば、回転する感光ドラムの露光面から遊離されて基板上に付着されたトナーのうち、第1列の誘着領域に誘着されていたトナーと、第2列の誘着領域に誘着されていたトナーとのずれを小さくできる。従って、適切なパターンを基板上に形成できる。
【0018】
また、本発明のパターン形成方法は、基板にパターンを形成するパターン形成方法であって、周方向に沿う露光面を有する感光ドラムを、当該感光ドラムの中心軸を中心として回転させる回転手順と、前記露光面における所定位置での前記感光ドラムの接線に沿って前記基板を移動させる移動手順と、前記露光面にトナーが誘着される誘着領域と、トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手順と、前記誘着領域にトナーを誘着させる誘着手順と、前記露光面に誘着されたトナーを前記基板に付着させて、前記パターンを形成する形成手順と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、前述のパターン形成装置と同様の効果を奏することができ、基板にパターンを安価かつ簡易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパターン形成装置の構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態における基板に形成されるパターンの一例を示す図。
【図3】前記実施形態における潜像の一部を拡大して示す図。
【図4】前記実施形態における入力手段及び制御手段を示すブロック図。
【図5】前記実施形態におけるパターン形成方法を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2実施形態に係るパターン形成装置が形成する潜像を示す図。
【図7】前記実施形態における基板に形成されるパターンの一例を示す図。
【図8】前記実施形態におけるレーザー光が照射される誘着領域の位置及び照射順を示す模式図。
【図9】本発明の第3実施形態に係るパターン形成装置が形成する潜像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るパターン形成装置1の構成を示す模式図である。
本実施形態に係るパターン形成装置1は、ガラス及び樹脂等の透光性を有する基板PLの対象面PL1(後述する露光面21に対向する面)に所定のパターンを形成するものであり、本実施形態では、視差により立体視可能な画像を表示する画像表示装置に用いられる視差バリアのバリアパターンを当該対象面PL1に形成するものである。
このパターン形成装置1は、図1に示すように、感光ドラム2、回転手段3、移動手段4、回収手段5、除電手段6、帯電手段7、領域形成手段8、誘着手段9及びパターン形成手段10を備える。
【0021】
〔感光ドラム及び回転手段の構成〕
感光ドラム2は、周方向に沿う露光面21を有する円筒体である。この露光面21は、暗所では絶縁体の性質を有し、光が入射された位置が導体となって電荷を放出する。
回転手段3は、感光ドラム2を支持するとともに、感光ドラム2の中心軸を中心として当該感光ドラム2をA方向に回転させる。このような回転手段3は、後述する制御手段12の制御下で駆動し、例えば、モーターにより構成できる。
【0022】
〔移動手段及び回収手段の構成〕
移動手段4は、露光面21との間に所定の隙間を介してパターン形成対象の基板PLを支持するとともに、当該基板PLを感光ドラム2の接線方向に沿って移動させるものである。この移動手段4による基板PLの移動方向(B方向)は、露光面21上の所定位置(基板PLに最も近接する位置)における当該露光面21の移動方向とは反対方向である。なお、この露光面21の移動方向は、当該所定位置における回転接線方向であり、詳しくは、当該所定位置における接線に沿う方向のうち、感光ドラム2の回転方向先端側を向く方向である。
【0023】
このような移動手段4は、本実施形態では、ローラー41〜44を有する。
これらのうち、ローラー41,42は、基板PLを挟持するとともに、後述する制御手段12の制御下で駆動するモーターにより回転して、当該基板PLを移動させる。
また、ローラー43,44は、定着ローラーであり、基板PLを挟持するとともに、当該基板PLの移動に伴って回転して、基板PLに付着されたトナーTを定着させる。
回収手段5は、露光面21から遊離されなかった余分なトナーTを当該露光面21から回収する。
【0024】
〔除電手段及び帯電手段の構成〕
除電手段6、帯電手段7、領域形成手段8、誘着手段9及びパターン形成手段10は、回転手段3により回転される感光ドラム2の外周面に沿って配置され、回転手段3による感光ドラム2の回転、及び、移動手段4による基板PLの移動とともに機能する。
これらのうち、除電手段6は、露光面21に近接して設けられ、回収手段5によりトナーTが回収された露光面21を除電する。
帯電手段7は、除電手段6により除電された露光面21を、後述する誘着手段9によって供給されるトナーTが誘着されるように帯電させる。
【0025】
〔領域形成手段の構成〕
領域形成手段8は、帯電手段7により帯電された露光面21にレーザー光を照射して、当該露光面21の少なくとも一部を除電し、当該露光面21に、基板PLに形成されるパターンに基づく潜像を描画する。この領域形成手段8によってレーザー光が照射された露光面21の領域は除電されるので、当該レーザー光が照射されずに帯電手段7により帯電されたままの帯電領域が、トナーTが誘着される誘着領域AA(図3参照)となり、一方、レーザー光が照射されて除電された除電領域が、トナーが誘着されない非誘着領域NA(図3参照)となる。このような領域形成手段8により描画される潜像は、基板PLに形成されるパターンを鏡像反転させ、更に、露光面21の移動速度及び基板PLの移動速度の比に基づいて、当該露光面21の移動方向(A方向)に拡大したものである。
【0026】
図2は、基板PLに形成されるパターンの一例であるパターンPT1の一部を拡大して示す図である。また、図3は、図2に示したパターンPT1を基板PLに形成する際に領域形成手段8により露光面21に描画される潜像PT2の一部を拡大して示す図である。なお、図2における斜線部分(後述する遮光部PT11)は、基板PLにおいてトナーTが定着される部分であり、図3における斜線部分は、領域形成手段8によりレーザー光が照射されて除電される非誘着領域NAである。この図3においては、見易さを考慮して、一部の列C1,C2、並びに、一部の誘着領域AA及び非誘着領域NAにのみ符号を付す。
例えば、図2に示すパターンPT1を基板PLに形成する場合には、領域形成手段8は、図3に示すように、当該パターンPT1を鏡像反転させたパターンに応じた潜像PT2を露光面21に描画する。この潜像PT2は、本実施形態では、回転手段3による露光面21の移動速度が、移動手段4による基板PLの移動速度の2倍に設定されているため、パターンPT1を露光面21の移動方向(A方向)に2倍拡大し、更に鏡像反転させたものである。
【0027】
このような領域形成手段8は、潜像PT2を描画する際に、感光ドラム2の軸方向(露光面21において当該露光面21の移動方向に直交する方向であり、C方向)に沿って直径1μmのレーザー光のスポットを露光面21上で移動させることで、レーザー光を1列ごとに照射する。
この際、領域形成手段8は、図3に示すように、レーザー光を照射して除電される列C1を、除電されない列C2間に介装して潜像PT2を描画する。すなわち、潜像PT2は、レーザー光が照射されることで除電されてトナーTが誘着されない非誘着領域NAにより形成される列C1(1列全てに斜線が設定された列C1)と、トナーTが誘着される誘着領域AAが形成されうる列C2(形成されるパターンによっては誘着されない場合もある)とが、露光面21の移動方向(感光ドラム2の回転方向)であるA方向に沿って交互に配列されて描画される。換言すると、描画された潜像PT2においてトナーTが誘着されうる列C2は、トナーTが誘着されない列C1に挟まれる。
なお、本実施形態では、領域形成手段8は、露光面21にレーザー光を照射する構成としたが、これに限らず、LED(Light Emitting Diode)等の固体光源から出射される光を照射する構成としてもよい。
【0028】
〔誘着手段の構成〕
誘着手段9は、図1に示すように、露光面21にトナーT(本実施形態では、黒色トナーT)を誘着させる。このトナーTには、磁性を有するキャリアー(搬送体)が含まれており、当該トナーTは、露光面21における帯電領域(すなわち誘着領域AA)に誘着する性質を有する。このため、図3に示した潜像PT2における白地の部分にトナーTが誘着する。なお、本実施形態では、粒子の直径が1〜2μmであるトナーTが採用されている。
【0029】
〔パターン形成手段の構成〕
パターン形成手段10は、露光面21にレーザー光を照射して露光面21を除電することで、当該露光面21上のトナーTを遊離させて基板PLに付着させる。すなわち、露光面21に描画され、かつ、トナーTが誘着された潜像(例えば、潜像PT2)を基板PLに転写して、当該基板PLにパターン(例えば、パターンPT1)を形成する。
この際、パターン形成手段10は、基板PLの裏面側(露光面21に対向する側とは反対側)から、当該基板PLを介してレーザー光を露光面21に照射する。なお、パターン形成手段10は、領域形成手段8と同様の構成を有しており、レーザー光のスポットは直径1μmであり、当該スポットの移動方向は、感光ドラム2の回転軸に沿うC方向に設定されている。
【0030】
ここで、潜像PT2は、前述のように、誘着領域AAが形成されトナーTが誘着されうる列と、誘着領域AAが形成されずトナーTが誘着されない列とが交互に配列されて形成されている。このため、パターン形成手段10により、トナーが誘着された列にレーザー光が照射されて当該トナーTが遊離する際に、他の列のトナーTの電荷により、標的となるトナーTの遊離が阻害されることが防止される。
また、本実施形態では、回転手段3による露光面21の移動速度は、移動手段4による基板PLの移動速度の2倍であり、潜像PT2は、パターンPT1を露光面21の移動方向に2倍拡大したパターンを鏡像反転したものである。このため、基板PLには、潜像PT2が鏡像反転され、更に、露光面21の移動方向に沿って1/2に縮小されたパターン(パターンPT1)が転写されることとなる。これにより、パターンPT1が精度よく基板PL上に形成される。
このようにして基板PL上に付着されたトナーTは、前述の移動手段4を構成するローラー43,44により、基板PL上に定着される。
【0031】
〔入力手段の構成〕
図4は、入力手段11及び制御手段12を示すブロック図である。
パターン形成装置1は、上記構成2〜10に加えて、図4に示すように、入力手段11及び制御手段12を備える。
このうち、入力手段11は、図示を省略するが、パターン形成装置1を操作するためのキーボード及びポインティングデバイス等の操作装置を備える。また、入力手段11は、基板PLに形成するパターンの画像データを取得する画像取得装置を備える。このような画像取得装置として、スキャナーや、当該画像が含まれるファイルを記憶する記憶装置と通信する通信手段が挙げられる。そして、入力手段11は、操作装置に対する入力操作に応じた操作信号を制御手段に出力する他、取得された画像データを制御手段に出力する。
【0032】
〔制御手段の構成〕
制御手段12は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の回路素子が実装された回路基板として構成され、パターン形成装置1全体を制御する。この制御手段12は、当該ROMに記憶されたプログラム及びデータをCPUが処理することにより、画像処理部121、回転制御部122、移動制御部123、領域形成制御部124及びパターン形成制御部125として示される機能を実現する。
【0033】
画像処理部121は、入力手段11から入力されるパターンの画像データを処理し、当該画像データに基づいて、領域形成手段8により露光面21に描画される潜像の画像データを生成する。
回転制御部122及び移動制御部123は、それぞれ、回転手段3及び移動手段4の駆動を制御する。これら回転制御部122及び移動制御部123は、回転手段3による露光面21の移動速度(感光ドラム2の単位時間当たりの回転数と、感光ドラム2の回転方向における露光面21の寸法とを乗算した速度)が、移動手段4による基板PLの移動速度の2倍となるように、これら回転手段3及び移動手段4の駆動を制御する。
領域形成制御部124は、画像処理部121により生成された潜像の画像データに基づいて、当該潜像を露光面21に描画するように、領域形成手段8の動作を制御する。
パターン形成制御部125は、パターン形成手段10の動作を制御して、トナーTが誘着した露光面21にレーザー光を照射させて、当該トナーTを基板PLの対象面PL1に付着させる。
【0034】
〔パターン形成方法〕
図5は、パターン形成装置1を用いて実施されるパターン形成方法を示すフローチャートである。
パターン形成装置1は、以下に示すパターン形成方法を実施することで、基板PLに所定のパターン(例えば、パターンPT1)を形成する。
このパターン形成方法では、図5に示すように、まず、制御手段12の回転制御部122が、回転手段3により感光ドラム2をA方向に回転させるとともに(手順S1)、移動制御部123が、移動手段4により基板PLをB方向に移動させる(手順S2)。
【0035】
これら手順S1,S2の実施に伴い、除電手段6が露光面21を除電し(手順S3)、帯電手段7が、除電された露光面21を帯電させる(手順S4)。
そして、領域形成制御部124が、領域形成手段8により、帯電された露光面21にレーザー光を照射して、画像処理部121により生成された画像データに応じた潜像(例えば、潜像PT2)を当該露光面21に描画して、非誘着領域NA及び誘着領域AAを形成する(手順S5)。この潜像における誘着領域AAに、誘着手段9がトナーTを誘着させる(手順S6)。
【0036】
次に、パターン形成制御部125が、パターン形成手段10により、露光面21に描画された潜像の列C2ごとにレーザー光を照射してトナーTを遊離させ、当該トナーTを基板PLの対象面PL1に付着させて、対象面PL1に潜像の列C2を転写する(手順S7)。この後、回収手段5が、余分なトナーTを露光面21から除去する(手順S8)。また、対象面PL1上のトナーTは、ローラー43,44により定着される。
以上の手順S3〜S7が、感光ドラム2が回転し、かつ、基板PLが移動している間、同時に、かつ、繰り返し実施されることで、パターンが基板PL上に形成される。
【0037】
〔パターンの構成〕
本実施形態では、基板PLは、前述のように、右目用画像を右目用画素により形成し、かつ、左目用画像を左目用画素により形成して、視差により立体視可能な画像を表示する立体画像表示装置の視差バリアとして構成される。この視差バリアは、右目用画像と左目用画像とを分離して、当該右目用画像及び左目用画像をそれぞれ観察者の右目及び左目に入射させるものである。
このような基板PLに形成されるパターンPT1には、図2に示すように、定着されたトナーTにより形成される遮光部PT11と、右目用画像及び左目用画像を透過させて、それぞれ右目及び左目に入射させる複数の透過部PT12とが形成されている。これら透過部PT12は、立体画像表示装置に設定された視点上の一方の目(例えば、右目)と、当該一方の目により視認されるべき画像を表示する画素(例えば、右目用画素)とを結ぶ仮想の直線上に形成される。これら透過部PT12により、右目用画素は左目ではほぼ視認されずに右目で視認可能となり、左目用画素は右目ではほぼ視認されずに左目で視認可能となる。
【0038】
ここで、各透過部が、互いに縦横に交互に配列された右目用画素及び左目用画素の配列方向のうちの行方向に沿う2つの短辺と、列方向に沿う2つの長辺とを有する長方形状である場合、当該透過部を透過する光の分布は樽型となる。そして、透過部の各長辺略中央付近から外側に漏出される光は、クロストーク(左右の画像の分離が不完全で二重像が視認されること)の要因となりやすい。
これに対し、各透過部PT12は、上記行方向に沿う2つの短辺と、上記列方向に沿う2つの略円弧状の長辺とを有し、当該各長辺の中央部分が互いに近接するボビン型の形状である。このような形状により、透過部の各長辺略中央付近から外側への光の漏出が遮光部PT11により抑制され、クロストークの発生を抑制できる。
【0039】
以上説明した本実施形態に係るパターン形成装置1によれば、以下の効果がある。
A方向に回転される感光ドラム2の露光面21には、誘着領域AA及び非誘着領域NAにより構成され、かつ、基板PLに形成されるパターンに基づく潜像が領域形成手段8により描画され、当該潜像の形成位置には、誘着手段9によりトナーTが誘着される。そして、トナーTが誘着された誘着領域AAに、パターン形成手段10による光が照射されることで当該トナーTが遊離して、移動手段4によりB方向に移動する基板PLに付着することで、当該基板PLにパターンが形成される。
これによれば、パターン形成装置1にレーザープリンターの構成を利用できるので、縮小投影型露光装置のような高額な設備を必要とせずに、基板PLにパターンを形成できる。この他、当該パターンの形成に際して、縮小投影型露光装置で使用されるレチクルを用意する必要もなく、また、大きな基板からパターンが形成された領域を切断する処理も省略できる。従って、安価かつ簡易にパターンを基板PLに形成できる。更に、縮小投影型露光装置を用いる場合に比べ、パターン形成に要する時間を短縮できる。
【0040】
誘着領域AAに誘着されたトナーTは、パターン形成手段10によりレーザー光が照射されることで電荷が失われて露光面21から遊離し、当該露光面21との間に所定の隙間を介して配置された基板PLに付着する。これによれば、露光面21と基板PLとが接触しないので、感光ドラム2の回転及び基板PLの移動による露光面21と基板PLとのずれの発生を抑制でき、より精密にパターンを基板PLに形成できる。
【0041】
領域形成手段8が、形成されるパターンを鏡像反転させたパターンに応じた潜像を、誘着領域AA及び非誘着領域NAにより描画するので、当該誘着領域AAにトナーTが誘着される。この潜像に対してパターン形成手段10が列ごとに光を照射することで、当該潜像における誘着領域AAに誘着されたトナーTが遊離して基板PLに付着する。これによれば、パターン形成手段10は、当該潜像に光を照射すれば、基板PLにパターンが形成されることとなるので、パターン形成手段10によるレーザー光の照射時に、どの誘着領域AAにレーザー光を照射してトナーTを遊離させるべきかの判定処理を省略できる。従って、パターン形成手段10による光照射の構成を簡略化でき、パターン形成制御部125の処理を簡略化できる。
【0042】
回転手段3によって回転される感光ドラム2の露光面21の移動速度は、移動手段4によって移動される基板PLの移動速度より高く設定されている。これによれば、基板PLにトナーTが付着されて形成されるパターンは、露光面21に形成された潜像を当該露光面21の移動方向(A方向)に縮小したパターンとなる。これによれば、基板PLにトナーTを密に付着させることができ、当該基板PLに精度よくパターンを形成できる。
【0043】
領域形成手段8は、レーザー光が照射されることで除電されてトナーが誘着されない列C1(非誘着領域NAからなる列C1)と、誘着領域AAが形成されてトナーが誘着されうる列C2とが、露光面21の移動方向(A方向)に沿って交互に配列された潜像を描画する。これによれば、パターン形成手段10によりレーザー光を照射して露光面21から標的のトナーTを遊離させる際に、他のトナーTの電荷によって当該標的のトナーTが遊離しづらくなることを抑制できる。従って、基板PLに対するパターンの形成を適切に行うことができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態に係るパターン形成装置は、パターン形成装置1とは、基板PL上にパターンPT1を形成する工程が異なる。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係るパターン形成装置は、パターン形成装置1と同様の構成を有する。
このうち、領域形成手段8は、帯電された露光面21にレーザー光を照射して除電することでトナーTが付着されない非誘着領域NAと、トナーTが付着される誘着領域AAとが交互に配列された潜像PT4を形成する。
【0046】
図6は、本実施形態に係るパターン形成装置の領域形成手段8が形成する潜像を示す図である。なお、図6においては、見易さを考慮して、誘着領域AA及び非誘着領域NAのうち一部について符号を付す。
具体的に、領域形成手段8は、図6に示すように、感光ドラム2の中心軸に沿う方向であるC方向に沿ってレーザー光を照射して、当該C方向に沿って非誘着領域NAが形成されトナーTが誘着されない列CA1と、当該C方向に沿って非誘着領域NAと誘着領域AAとが交互に配列される列CA2とを、当該感光ドラム2の回転方向(露光面21の移動方向)であるA方向に沿って交互に形成する。この際、領域形成手段8は、互いに隣り合う2つの列CA2のうち、一方の列CA2における誘着領域AA及び非誘着領域NAの位置を、他方の列CA2とは反転させる。このため、図6において隣り合う2つの列CA2のうち、左側の列CA2と右側の列CA2とは、誘着領域AAの位置と非誘着領域NAの位置とが逆になっている。これら隣り合う2つの列CA2のうち、一方が本発明の第1列であり、他方が本発明の第2列に相当する。
【0047】
なお、誘着領域AAの寸法及び非誘着領域NAの寸法(隣り合う誘着領域AA間の寸法)は、パターン形成手段10により照射されるレーザースポットの直径、或いは、トナーTの粒子の直径に応じた寸法に設定されている。このため、本実施形態では、誘着領域AAの寸法と当該スポットの直径(1μm)とは略同じであり、トナーTの粒子も1μmに設定されている。
【0048】
パターン形成手段10は、C方向にレーザー光のスポットを移動させて露光面21に当該レーザー光を照射して、トナーTが誘着された誘着領域AAのうち、基板PLに形成するパターンに応じた位置の誘着領域AAを除電し、当該誘着領域AAに誘着されたトナーTを遊離させる。これにより、基板PL上にトナーTが付着され、基板PL上にパターンが形成される。この際、誘着領域AAは、非誘着領域NAにより囲まれているので、レーザー光の照射によって遊離される誘着領域AAのトナーTが、露光面21から遊離しやすい。
【0049】
図7は、基板PL上に形成されるパターンPT3の一例を示す図である。また、図8は、トナーTが誘着された誘着領域AAのうち、パターン形成手段10によりレーザー光が照射される誘着領域AAの位置、及び、当該レーザー光の照射順を示す模式図である。なお、図8におけるレーザー光の照射順を示す数字と、図7における数字とは対応している。
例えば、図7に示す「N」字様のパターンPT3を基板PL上に形成する場合、パターン形成手段10は、図8に示すように、露光面21がA方向に移動して、列CA2(CA21〜CA30)のうち列CA21がレーザー光の照射列となった際に、当該列CA21に配列された誘着領域AAのうち「1」と付された誘着領域AAにレーザー光を照射する。
【0050】
また、露光面21が更に移動して、列CA22がレーザー光の照射列となると、パターン形成手段10は、当該列CA22の誘着領域AAのうち「2」と付された誘着領域AAにレーザー光を照射する。これにより、図7に示す「N」字様のパターンPT3における左側の直線部分(縦線部分)に応じて、基板PL上にトナーTが付着される。
なお、このように、形成されるパターンにおいて同じ直線(上記縦線部分)を形成するトナーTを付着させる場合には、基板PLの移動を停止させてもよい。
【0051】
そして、パターン形成手段10は、露光面21が更に移動して、列CA24,CA25,CA28〜CA30がそれぞれレーザー光の照射列となった際に、当該各列CA24,CA25,CA28〜CA30の誘着領域AAのうち「3」〜「7」と付された誘着領域AAにレーザー光を照射する。これにより、図7に示す「N」字様のパターンPT3における斜線部分及び右側の直線部分に応じて、基板PL上にトナーTが付着される。
このようにして、基板PL上に「N」字様のパターンPT3が形成される。
なお、上記列CA23、CA26,CA27のように、レーザー光が照射されない列が存在するのは、例えば列CA21,C22の誘着領域AAにより形成されるパターンPT3の左側の列(直線部分)のように、パターンにおける1つの列が2つの列CA2により形成されるので、当該パターンの形状によってはトナーTを基板PLに付着させる必要のない列CA2が存在するためである。
【0052】
以上説明した本実施形態に係るパターン形成装置1Aによれば、前述のパターン形成装置1と同様の効果を奏することができる他、以下の効果を奏することができる。
すなわち、誘着領域AAにおけるA方向及びC方向の端縁は、トナーTが誘着されない非誘着領域NAに接している。これによれば、基板PLに付着させる標的のトナーが他のトナーによって誘着領域AAから遊離しづらくなることを抑制できる。
また、パターン形成手段10が、列CA2(例えば列CA21)と、当該列CA2とは誘着領域AA及び非誘着領域NAの位置とが反転した列CA2(例えば列CA22)とに含まれる誘着領域AAのうち、基板PLに形成されるパターンに応じた位置の誘着領域AAに光を照射してトナーTを遊離させる。これにより、基板PLにパターンを適切に形成できる。
【0053】
ここで、感光ドラム2の回転速度(露光面21の移動速度)が、基板PLの移動速度以下である場合には、前述の「N」字様のパターンPT3における縦線部分に付着するトナーTのうち、列CA21の誘着領域AAに誘着されていたトナーTと、列CA22の誘着領域AAに誘着されていたトナーTとのB方向のずれが大きくなる。これに対し、感光ドラム2の回転速度が基板PLの移動速度より高いので、当該ずれを小さくできる。従って、適切なパターンを基板上に形成できる。
なお、前述のように、形成されるパターンにおいて同一の直線部分を形成する際に、基板PLの移動を停止させる構成である場合には、感光ドラム2の回転速度が、基板PLの移動速度より高いことにより、パターン形成に要する時間を短縮できる。
【0054】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態に係るパターン形成装置は、前述のパターン形成装置1と同様の構成を有する。しかしながら、当該パターン形成装置では、パターン形成速度を向上するために、領域形成手段8が、感光ドラム2の回転に伴って移動する露光面21の移動方向に対して交差する方向に沿って誘着領域AA及び非誘着領域NAを有する列を形成し、パターン形成手段10が、当該列の形成方向に沿ってレーザー光を照射する。この点で、本実施形態に係るパターン形成装置と、パターン形成装置1とは相違する。
【0055】
図9は、本実施形態に係るパターン形成装置の領域形成手段8が形成する潜像の一部を示す図である。なお、図9においては、見易さを考慮して、誘着領域AA及び非誘着領域NAのうち一部について符号を付す。
具体的に、領域形成手段8は、図9に示すように、A方向に移動する露光面21にレーザー光を照射して、非誘着領域NAにより形成される列CA1と、誘着領域AA及び非誘着領域NAが交互に配列された列CA2とを、A方向及びC方向に対してそれぞれ交差する方向に沿い、更に、当該列CA1と列CA2とがA方向に沿って交互に配列された潜像PT5を露光面21に形成する。また、前述と同様に、列CA2を介して互いに隣り合う2つの列CA2のうち、一方における誘着領域AA及び非誘着領域NAの位置と、他方における誘着領域AA及び非誘着領域NAの位置とは逆になっている。
【0056】
パターン形成手段10は、C方向に沿ってレーザー光を照射するが、この際の感光ドラム2の回転は停止されていない。このため、A方向に移動する露光面21において列CA2の中心線L1に沿ってレーザー光が照射される。このような列CA2の中心線L1とC方向に沿う直線L2との交差角θは、C方向に沿って移動するレーザー光のスポットにより除電された1つの列CA2の誘着領域AAから遊離したトナーTにより基板PL上に形成されるトナーTの列が、当該基板PL上でB方向に対して直交する方向に沿って形成されるように設定されている。換言すると、当該交差角θは、感光ドラム2の回転速度(露光面21の移動速度)に応じて設定される。
【0057】
このようなパターン形成手段10が、各列CA2のうちレーザー光の照射列における誘着領域AAにレーザー光を照射することで、基板PL上にトナーTからなる所望のパターンを形成できる。例えば、パターン形成手段10が、図9において数字が付された誘着領域AAに対してレーザー光を照射することにより、基板PL上には、図7に示した「N」字様のパターンPT4が形成される。
【0058】
以上説明した本実施形態に係るパターン形成装置によれば、前述のパターン形成装置と同様の効果を奏することができる他、以下の効果がある。
すなわち、領域形成手段8により、露光面21において列CA1,CA2がA方向及びC方向のそれぞれに対して交差する方向に沿って形成されるので、パターン形成手段10が、C方向に沿ってレーザー光を移動させる際に、露光面21を移動させたまま、列CA2の中心線L1に沿って当該レーザー光を確実に照射できる。従って、感光ドラム2の回転速度、及び、当該回転速度に基づいて設定される前述の交差角θを最適化することにより、パターンの形成効率を向上できる。
【0059】
また、非誘着領域NAにより構成される列CA1がレーザー光の照射列となっている間に、1つの列CA2にレーザー光を照射したパターン形成手段10が、当該レーザー光の照射位置を初期位置に戻すことができる。この点においても、露光面21を移動させたままで、誘着領域AA及び非誘着領域NAが配列された列CA2に対して、レーザー光を適切に照射することができ、基板PL上にパターンを効率よく形成できる。
【0060】
なお、本実施形態では、前述の第2実施形態で示した潜像と同様の潜像を領域形成手段8が形成した。しかしながら、前述の第1実施形態と同様に、基板PLに形成されるパターンを鏡像反転させたパターンに応じた潜像を、A方向及びC方向に対してそれぞれ交差する方向に沿って、領域形成手段8が形成してもよい。この場合、パターン形成手段10が、トナーTが誘着した当該潜像に対してレーザー光を照射することで、基板PLに当該パターンを形成できる。
【0061】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、パターン形成装置は、視差により立体視可能な画像を表示する立体画像表示装置に採用される視差バリアのバリアパターンを基板PLに形成するパターン形成装置として構成したが、本発明はこれに限らない。例えば、所定波長の光を透過する粒子を付着させることで所定のパターンが形成されたカラーフィルターを製造してもよく、同様に、偏光フィルターを製造してもよい。更に、それぞれ異なる性質を有する粒子を付着させて、基板PL上に複数の層を形成してもよい。加えて、基板PLに形成されるパターンは、適宜選択可能である。
【0062】
前記各実施形態では、基板PLは、感光ドラム2の露光面21との間に所定の隙間を介して配置されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、露光面21と基板PLとが接触し、当該露光面21に誘着されたトナーが基板PLの対象面PL1に付着されることでパターンが形成されるように、パターン形成装置を構成してもよい。
【0063】
前記各実施形態では、パターン形成手段10によりレーザー光が照射される部位、すなわち、露光面21における基板PLに最も近い部位での当該露光面21の回転接線方向と、移動手段4により移動される基板PLの移動方向とは、互いに反対方向であるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該回転接線方向と、基板PLの移動方向とが同じ方向となるように、移動手段4が基板PLを移動させる構成としてもよい。
【0064】
前記各実施形態では、回転手段3による露光面21の移動速度は、移動手段4による基板PLの移動速度より高い(速い)としたが、本発明はこれに限らない。すなわち、露光面21の移動速度が、基板PLの移動速度より低くてもよく、或いは、それぞれが同じであってもよい。
【0065】
前記第1実施形態では、領域形成手段8は、トナーTが付着されうる列と、トナーTが付着されない列とが、露光面21の移動方向(感光ドラム2の回転方向)に沿って交互に配列された潜像を形成するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該トナーTが付着されない列を形成せずに、領域形成手段8が潜像を形成する構成としてもよい。
【0066】
また、前記第2実施形態では、領域形成手段8は、誘着領域AA及び非誘着領域NAが感光ドラム2の中心軸に沿う方向であるC方向に交互に配列された列CA2と、非誘着領域NAが当該C方向に沿って形成された列CA1とを、感光ドラム2の回転方向に沿って露光面21に形成するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、誘着領域AAと非誘着領域NAとが当該中心軸に沿って交互に形成された列と、当該列とは誘着領域AAの位置と非誘着領域NAの位置とが反転した列とが、感光ドラム2の回転方向に沿って露光面21に形成されていれば、列CA1がなくても、誘着領域AAに誘着されたトナーTの遊離性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、基板にパターンを形成するパターン形成装置及びパターン形成装置に利用でき、特に、基板にバリアパターンを形成して視差バリアを製造するパターン形成装置及びパターン形成方法として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1…パターン形成装置、2…感光ドラム、3…回転手段、4…移動手段、7…帯電手段、8…領域形成手段、9…誘着手段、10…パターン形成手段、21…露光面、AA…誘着領域、C1…列(非誘着領域が形成される列)、C2…列(誘着領域が形成される列)、CA2(CA21〜CA30)…列、NA…非誘着領域、PL…基板、PT1,PT3…パターン、PT2,PT4,PT5…潜像、T…トナー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にパターンを形成するパターン形成装置であって、
周方向に沿う露光面を有する感光ドラムと、
前記感光ドラムの中心軸を中心として当該感光ドラムを回転させる回転手段と、
前記露光面にトナーが誘着される誘着領域、及び、トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手段と、
前記誘着領域にトナーを誘着させる誘着手段と、
前記露光面における所定位置での前記感光ドラムの接線に沿って前記基板を移動させる移動手段と、
前記露光面に誘着されたトナーを前記基板に付着させて、当該基板に前記パターンを形成するパターン形成手段と、を備える
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成装置において、
前記露光面を帯電させる帯電手段を備え、
前記基板は、透光性を有し、前記露光面との間に所定の隙間を介して配置され、
前記領域形成手段は、前記帯電手段により帯電された前記露光面に光を照射することで除電した前記非誘着領域と、除電されない前記誘着領域とを前記露光面に形成し、
前記パターン形成手段は、前記誘着領域に対して、前記基板における前記露光面に対向する側とは反対側から当該基板を介して光を照射して除電し、当該誘着領域から遊離させたトナーを前記基板に付着させて前記パターンを形成する
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成装置において、
前記領域形成手段は、前記誘着領域及び前記非誘着領域により構成され、かつ、前記パターンを鏡像反転させた潜像を前記露光面に描画する
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン形成装置において、
前記回転手段により回転される前記感光ドラムの前記露光面の移動速度は、前記移動手段により移動される前記基板の移動速度より高い
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパターン形成装置において、
前記領域形成手段は、前記感光ドラムの中心軸に沿って前記非誘着領域が形成される列と、前記誘着領域が形成される列とが、前記感光ドラムの回転方向に沿って交互に配列された前記潜像を描画する
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項6】
請求項2に記載のパターン形成装置において、
前記領域形成手段は、前記誘着領域と前記非誘着領域とが前記感光ドラムの中心軸に沿う方向に交互に配列された第1列と、前記誘着領域の位置と前記非誘着領域の位置とが反転された第2列とを、前記感光ドラムの回転方向に沿って交互に形成し、
前記パターン形成手段は、前記感光ドラムの中心軸に沿う方向に沿って光を照射して、前記第1列及び前記第2列に形成された前記誘着領域から、前記パターンに応じた位置の誘着領域を選択して除電する
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン形成装置において、
前記回転手段により回転される前記感光ドラムの前記露光面の移動速度は、前記移動手段により移動される前記基板の移動速度より高い
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項8】
基板にパターンを形成するパターン形成方法であって、
周方向に沿う露光面を有する感光ドラムを、当該感光ドラムの中心軸を中心として回転させる回転手順と、
前記露光面における所定位置での前記感光ドラムの接線に沿って前記基板を移動させる移動手順と、
前記露光面にトナーが誘着される誘着領域と、トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手順と、
前記誘着領域にトナーを誘着させる誘着手順と、
前記露光面に誘着されたトナーを前記基板に付着させて、前記パターンを形成する形成手順と、を有する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項1】
基板にパターンを形成するパターン形成装置であって、
周方向に沿う露光面を有する感光ドラムと、
前記感光ドラムの中心軸を中心として当該感光ドラムを回転させる回転手段と、
前記露光面にトナーが誘着される誘着領域、及び、トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手段と、
前記誘着領域にトナーを誘着させる誘着手段と、
前記露光面における所定位置での前記感光ドラムの接線に沿って前記基板を移動させる移動手段と、
前記露光面に誘着されたトナーを前記基板に付着させて、当該基板に前記パターンを形成するパターン形成手段と、を備える
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成装置において、
前記露光面を帯電させる帯電手段を備え、
前記基板は、透光性を有し、前記露光面との間に所定の隙間を介して配置され、
前記領域形成手段は、前記帯電手段により帯電された前記露光面に光を照射することで除電した前記非誘着領域と、除電されない前記誘着領域とを前記露光面に形成し、
前記パターン形成手段は、前記誘着領域に対して、前記基板における前記露光面に対向する側とは反対側から当該基板を介して光を照射して除電し、当該誘着領域から遊離させたトナーを前記基板に付着させて前記パターンを形成する
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成装置において、
前記領域形成手段は、前記誘着領域及び前記非誘着領域により構成され、かつ、前記パターンを鏡像反転させた潜像を前記露光面に描画する
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン形成装置において、
前記回転手段により回転される前記感光ドラムの前記露光面の移動速度は、前記移動手段により移動される前記基板の移動速度より高い
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパターン形成装置において、
前記領域形成手段は、前記感光ドラムの中心軸に沿って前記非誘着領域が形成される列と、前記誘着領域が形成される列とが、前記感光ドラムの回転方向に沿って交互に配列された前記潜像を描画する
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項6】
請求項2に記載のパターン形成装置において、
前記領域形成手段は、前記誘着領域と前記非誘着領域とが前記感光ドラムの中心軸に沿う方向に交互に配列された第1列と、前記誘着領域の位置と前記非誘着領域の位置とが反転された第2列とを、前記感光ドラムの回転方向に沿って交互に形成し、
前記パターン形成手段は、前記感光ドラムの中心軸に沿う方向に沿って光を照射して、前記第1列及び前記第2列に形成された前記誘着領域から、前記パターンに応じた位置の誘着領域を選択して除電する
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン形成装置において、
前記回転手段により回転される前記感光ドラムの前記露光面の移動速度は、前記移動手段により移動される前記基板の移動速度より高い
ことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項8】
基板にパターンを形成するパターン形成方法であって、
周方向に沿う露光面を有する感光ドラムを、当該感光ドラムの中心軸を中心として回転させる回転手順と、
前記露光面における所定位置での前記感光ドラムの接線に沿って前記基板を移動させる移動手順と、
前記露光面にトナーが誘着される誘着領域と、トナーが誘着されない非誘着領域とを形成する領域形成手順と、
前記誘着領域にトナーを誘着させる誘着手順と、
前記露光面に誘着されたトナーを前記基板に付着させて、前記パターンを形成する形成手順と、を有する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−237920(P2012−237920A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107936(P2011−107936)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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