説明

パターン形状欠陥検査方法及びその装置

【課題】数秒/枚程度で生産されるパターンドメディアを全面を全数に亘って検査することを可能にするパターンドメディアの形状欠陥検査方法及びその装置を提供する。
【解決手段】基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンを検査する方法において、基板に複数の波長成分を含む光を照射し、この光を照射した基板からの反射光を分光して検出し、この分光して検出して得た信号を処理して分光反射率を求め、この求めた分光反射率から評価値を算出し、予め求めておいた評価値とパターン断面形状との関係に基づいて分光反射率から算出した評価値からパターンの形状欠陥を判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された線幅100nm以下のパターンの断面形状を検査する方法に関し、特に次世代のハードディスクメディアであるパターンドメディアや半導体デバイスのパターン断面形状を検査するパターン形状欠陥検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブの記録容量は、近年益々大容量化の傾向にある。しかし、従来のディスク基板上に磁性膜を成膜しただけのいわゆる連続媒体では、記録密度が1Tbit/in2程度が限界であり、それ以上の記録密度を実現する技術としてパターンドメディアの導入が計画されている。
パターンドメディアとは、図1に示す様にディスク101面上に、記録トラック102を同心円状に形成するディスクリートトラックメディアと、記録単位(ビット)を独立させた島状のパターン103として形成するビットパターンドメディアの2方式が検討されている。いずれの場合も、従来の連続媒体とは異なり、ディスクメディア上に数十nmピッチのパターンを形成するという特徴がある。
【0003】
そのため、従来の製造プロセスとは異なり、新たにパターン形成のためのプロセスが加わることとなり、同プロセスに起因する不良が発生することが懸念されている。例えば、図2はパターンの断面を模式的に示した図であるが、正常なパターン201と比較してパターン断面形状が変形202してしまうことや、パターンそのものが抜けてしまうこと203等が欠陥として考えられる。
【0004】
これらのようなパターンの欠陥を検査する手段としては、原子間力顕微鏡(以下、AFM(atomic force microscope)と略す)や走査型電子顕微鏡(以下、SEM(scanning electron microscope)と略す)等の手段の他に、いわゆるスキャットロメトリと呼ばれる光学式の検査方法がある。AFM及びSEMは当該技術分野において既知の技術である。
【0005】
スキャットロメトリとは一般的には、図3に示すように分光検出光学系301で検査対象302表面の分光反射率303を検出し、検出した分光反射率303に基づいて検査対象302表面上に一様に形成された繰り返しパターン304の断面形状を検出する手法を指す。一様に形成された繰り返しパターンの断面形状が異なると、その表面の分光反射率も異なることを利用し、検査対称表面の分光反射率から検査対象表面に一様に形成された繰り返しパターンの形状を検出することができる。検査対象の構造や材質を用いて算出した理論値(モデル)を高さや幅等の形状をパラメータとして、実際に検出した分光反射率と一致するようにパラメータを最適化することにより形状を求める。パラメータの最適化には、モデルフィッティングやライブラリマッチング等の手法が用いられる。
【0006】
光学式の手法であるスキャットロメトリは、AFMやSEMと比較して高速で検査が可能であるという特徴がある。スキャトロメトリを用いてパターンの正確な形状が計測でき、且つスループットの大きな検査方法が、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-150832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パターンドメディアは、サブストレート(基板)に磁性体等の成膜,ナノインプリント,エッチング等により表面に線幅が数100nm以下のパターンを形成して製造する。この時、各工程にかかる時間は数秒/枚程度である。例えば全数を検査することを考えた場合、同様に数秒/枚以内で検査することが要求される。
【0009】
上述の通り、AFM,SEM又はスキャトロメトリを用いることにより、基板上に形成された線幅が数100nm以下のパターンの断面形状を、検査することができる。しかし、現状の上記手法を用いた場合、上記時間内ではディスク面上の大きさ数十μm程度の領域1箇所程度しか検査できない。
【0010】
スキャトロメトリはSEMやAFMと比較して高速で検査可能であると前述したが、この手法でも一点(数十μm程度の領域)の測定に数秒程度必要である。この理由は、形状の検出に前述したモデルフィッティングやライブラリマッチング等の演算量の大きい手法を用いているためで、比較的演算量の小さいライブラリマッチングにおいてもこれ以上演算時間を短縮することは困難である。そのため、検査できる領域を限れば全数検査することはできなくはないが、ディスク全面を上記した所定の時間内で検査することは不可能であった。
【0011】
本発明の目的は、数秒/枚程度で生産されるパターンドメディアを全面を全数に亘って検査することを可能にするパターンドメディアのパターン形状欠陥検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンを検査する方法において、基板に複数の波長成分を含む光を照射し、この光を照射した基板からの反射光を分光して検出し、この分光して検出して得た信号を処理して分光反射率を求め、この求めた分光反射率から評価値を算出し、予め求めておいた評価値とパターン断面形状との関係に基づいて分光反射率から算出した評価値からパターンの形状欠陥を判定するようにした。
【0013】
又、上記目的を達成するために、本発明では、基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンを検出するパターン形状欠陥検査装置を、基板を載置してこの基板を回転させるθステージと基板を一方向に移動させるXステージとを備えたステージ手段と、基板に複数の波長成分を含む光を照射する光照射部とこの光照射部により光が照射された基板からの反射光を分光して検出する検出部とを備えた分光検出光学系と、この分光検出光学系で分光して検出して得た信号を処理して基板に形成されたパターンの形状欠陥を検出するデータ処理部をと備え、このデータ処理部は、分光検出光学系で分光して検出して得た信号を処理して分光反射率を求める分光反射率算出処理部と、分光反射率算出処理部で求めた分光反射率から評価値を算出するとともに、予め求めておいた評価値とパターン断面形状との関係に基づいて前記分光反射率から算出した評価値から形状パラメータを算出する形状パラメータ算出処理部と、予め記憶しておいた判定しきい値を用いて形状パラメータ算出処理部で算出した形状パラメータから基板に形成されたパターンの形状欠陥を検出する形状欠陥判定処理部とを備えて構成した。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、パターンの形状算出演算量がスキャトロメトリと比較して非常に小さくなり、ほとんど分光反射率の検出と同時にパターンの形状を算出することができる。その結果、数秒/枚程度で生産されるパターンドメディアを全面を全数に亘って検査することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】パターンドメディアの概要を示す斜視図である。
【図2】パターンドメディアの欠陥の概要を示す断面図である。
【図3】スキャットロメトリの構成概要を示すブロック図である。
【図4】パターン形成プロセスを示す型と基板の断面図である。
【図5】磁性体パターンの断面形状示す断面図である。
【図6】レジストパターンの断面形状示す断面図である。
【図7】形状の異なる2つのパターンを示す斜視図である。
【図8】形状の異なる2つのパターン表面の分光反射率を示すグラフである。
【図9】パターン幅とある波長での反射率との関係を示すグラフである。
【図10】検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図11】ステージ系の概略の構成を示す正面図である。
【図12A】検出光学系の概略の構成を示すブロック図である
【図12B】検出光学系の分光器の構成を示す正面図である
【図12C】検出光学系の反射対物レンズの概略の構成を示す正面図である。
【図13】検出光学系の別の例の概略の構成を示すブロック図である
【図14】データ処理の流れを示す説明図である。
【図15】検査のシーケンスを示す説明図である。
【図16A】検査結果を表示する画面の正面図である。
【図16B】検査結果を表示する画面ののうち欠陥マップ表示の別な例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、スキャトロメトリ技術を応用し、予めサンプル表面の分光反射率と、パターンの幅や高さ等の形状との相関を評価しておき、実際に検出した分光反射率の値から、比較的単純な演算によってパターン幅や高さ等の形状を算出する。
【0017】
本発明の実施例として、HDDパターンドメディアの検査に適用した場合について説明する。
【0018】
パターンドメディアとは、前述したように従来メディアとは異なり、ディスク表面に磁性体のパターンを形成する(図1参照)。図4はパターン形成工程を模式的に示した図である。まず、磁性体層403上にレジスト402を塗布する(a)。塗布したレジスト402に対して表面に微細なパターン4011が形成された型(モールド)401押し当てる(b)。この状態で露光し微細パターン4011の形状をレジスト402に転写する(c)。転写したレジストのパターンの凸部4021をマスクとして凹部4022の下層の磁性体403をエッチングして、磁性体403のパターンをディスク上に形成する(e)。最後にレジストを除去する(f)。この様なパターン形成方法をナノインプリント技術と言う。尚、図4においては、説明を簡単にするために磁性体403を単層の構造で説明したが、実際には多層で形成される。
【0019】
ハードディスクメディアは、基板上に形成された磁性体を磁化することにより、情報を記録する。そのため、ディスク基板上の磁性体の量は、記録媒体としての性能を左右する一因となる。
【0020】
従来メディアを例として考える。磁性体層の膜厚が一定値よりも小さい場合には、磁化による記録自体はできるが、磁性体からの漏れ磁界が小さくなるために記録した情報を読み込むことができなくなる場合がある。
【0021】
パターンドメディアに関しても同様である。図5は磁性体パターンを模式的示した図である。同図(a)のパターン501は幅W1適正な正常なパターンであり、パターン501は表面保護膜層5011、磁性膜層5012、第1下地層5013、第2下地層5014などの複数の層で構成されている。同図(b)に示すようにパターン502の幅W2が小さければ磁性膜層5012の量が小さいため、上記のように書き込みはできるが読み込みができず不良となる可能性があり、同図(c)のようにパターン503の幅W3が大きすぎると、隣接するトラックの信号をノイズとして検出してしまうため、この場合も不良となりうる。この様に、パターン形成後の磁性体パターンの形状が、記録媒体としての性能を決定する要因となる。
【0022】
パターン形状検査が必要と考えられる工程は、インプリント後のレジストパターン,エッチング後や埋め込み平坦化後の磁性体パターンであるが、磁性体パターンの形状は、主としてレジストパターンの形状によって決まるため(図4参照)、レジストパターンの形状を検査するのが最も効率的である。
【0023】
図6はレジストパターンを模式的に示した図であり、磁性体層601上にレジストパターン602が形成されている。このとき、レジストパターン602は磁性体層601上に直接形成されているのではなく、磁性体層601とレジストパターン602との間にレジストの層606が形成されている。レジストパターン602の検出すべき形状は、主としてパターンの幅603,高さ604及び下地膜厚605である。以下では、レジストパターン602を対象とし、主としてこれらの3つのパラメータを検出する方法について説明する。
【0024】
本手法では、表面の反射率に基づいて形状の各パラメータを検出する。その意味でスキャトロメトリの一手法であるといえる。ただし、本手法では前述したモデルフィッティング等で形状を検出するのではなく、分光反射率の値を用いて直接パターン形状を算出する。具体的には、予め分光反射率と高さや幅等の形状パラメータとの相関を、多変量解析手法等を用いて評価し、数1に示すような式を作製しておき、この式に反射率の値を入力することによって、各形状パラメータの値を算出する。以下に本手法の原理を説明する。
【0025】
【数1】

図8は図7に示すパターン形状の異なるビットパターン701が形成された表面の波長が0.2μm〜0.8μm(200nm〜800nm)の光に対する分光反射率を示した図である。図7の(a)のような比較的大きなビットパターン701の場合には、図8のグラフの(a)のような分光反射率のパターンとなる。一方、図7(b)のような比較的小さいビットパターン702の場合には、図8のグラフの(b)のような分光反射率のパターンになる。この様にパターン形状が異なると、表面の反射率も変化する。
【0026】
ここで、ある波長での反射率の変化に着目する。図9はパターン幅をパラメータとして、ある波長の反射率の変化を示した図である。同図に示すように、反射率の値と形状パラメータとがほぼ比例関係(線形)であることがわかる。
【0027】
この現象は、パターンの高さや幅等の各形状パラメータそれぞれで確認することができ、各形状パラメータが±10nm程度の範囲においては、反射率と形状パラメータとは比例関係(線形)であることがわかる。この様に線形である場合には、分光反射率と各形状パラメータとの関係を上記数1で表すことができる。
【0028】
分光反射率と各形状パラメータとの関係を表す数1を作り出す方法としては、回帰分析を用いる方法が考えられる。例えば、多変量解析手法の一つであるPLS(Partial least square)法を用いることが考えられる。PLS法は既知の手法であるのでここでは説明を割愛する。
【0029】
PCR(Principal component regression)等別の多変量解析手法を用いることも考えられる。要は数1を作り出すことができればよく、その手段はいずれの方法でも良い。
【0030】
また、数1の様な線形一次式ではなく、多次元の式やその他数学的な式で表す方法も有効である。
【0031】
測定対象によっては、分光反射率と形状パラメータとの間に強い相関関係(相関係数が1に近い)が得られない場合がある。相関関係が弱い場合、数1から算出される形状パラメータの値も誤差が大きくなることになる。そこで、形状パラメータとの相関をより強く検出するために、多変量解析の前に適切な処理(前処理)をし、処理後の値(評価値)を用いることが有効である。
【0032】
前処理の一例として、予め基準となる分光反射率を基準反射率として設定し、各波長で基準反射率との差分値を算出し、分光反射率の差分値を用いることが考えられる(数2)。差分値とすることにより、パラメータの変化に対してより強い相関関係を求めることができる。
【0033】
【数2】

また、分光反射率の差分値データの値を、ある波長の差分値で正規化することが考えられる。具体的には、ある波長の差分値データと、各波長の差分値データとの比を算出する(数3)。この処理により、さらに強い相関関係を示すことができる。
【0034】
【数3】

前処理のもう一つの例としては、分光反射率の微分値を用いることが考えられる。微分値を求める手段としては、隣接する波長での反射率の差分値を求める方法(数4)や、ある波長での微分値として隣接する前後の反射率の差分値を用いる方法(数5)がある。微分値を求めることにより、同様に強い相関関係を示すことができる。
【0035】
【数4】

【0036】
【数5】

前処理をする目的は、強い相関関係を検出することにあり、上記に限らず検査対象によって異なる前処理を適用すればよい。
【0037】
次に、上記検出方法を用いたハードディスク検査装置について説明する。図10は本発明の検出方法を用いたハードディスク検査装置の構成を示したものである。本発明による検査装置は、検査対象である検査対象ディスク(ハードディスクメディア)1005に検出光を照射し検査対象ディスク1005からの反射光を分光検出する分光検出光学系1001と、検査対象である検査対象ディスク1005を保持しディスク上の任意の位置で分光検出できるように光学系との位置を相対的に移動できるステージ部1002、分光検出光学系1001やステージ部1002の動作を制御する制御部1003及び光検出光学系1001で検出した分光検出データに基づいて検査対象である検査対象ディスク1005の表面に形成されたパターンの形状または形状異常を検出するデータ処理部1004で構成される。
【0038】
図11はステージ部1002の構成の一例を示した概要図で、同図に示すとおりステージ部1002は検査対象ディスク1005と平行に移動するXステージ1101と、検査対象ディスク1005に垂直な方向に移動するZステージ1102および検査対象ディスク1005を回転させるθステージ1103を備えている。
【0039】
Zステージ1102は、分光検出光学系1001のフォーカス位置に検査対象ディスクである検査対象ディスク1005を移動させるためのものであり、Xステージ1101とθステージ1103とは検査対象ディスクである検査対象ディスク1005の表面の任意の位置に分光検出光学系1001を移動させるためのものである。検査対象ディスク1005を移動させる方法としては、XYステージを用いる方法も考えられるが、検査対象の形状が円盤状であり検査対象となるパターンも同心円状に形成されていることからXθステージの方が適している。例えば検査対象ディスク1005の表面全面を高速に検査することを目的とした場合には、Xθステージを同時に動かし、ディスク表面をらせん状に分光検出すれば効率的である。
【0040】
図12Aは本発明による分光検出光学系1001の構成の一例を示した図である。同図Aに示しように検出光学系1001は、光源1201、レンズ1202、ハーフミラー1203、偏光素子1204、対物レンズ1205、結像レンズ1206および分光器1207を備えている。光源1201から出た光はレンズ1202を通ってハーフミラー1203で光量の半分が反射されてその向きを変え、偏光素子1204および対物レンズ1205を介して検査対象である検査対象ディスク1005に照射される。光源1201から発射された光が照射された検査対象ディスク1005からの反射光は再び対物レンズ1205および偏光素子1204を通り、反射光の光量の半分がハーフミラー1203を透過して結像レンズ1206により分光検出器1207に導かれる。
【0041】
このとき、図12Bに示すように分光検出器1207の入射口12071の位置に視野絞り1208を配置して結像レンズ1206により視野絞り1208と検査対象ディスク1005の表面とが結像関係にあるように設定し、凹面回折格子12072を介して視野絞り1208と共役な位置に検出器12073を配置することにより、視野絞り1208の形状よって分光検出器1207で分光検出する領域を制限することができる。例えば、入射口の大きさをφ600μmとし、結像面での倍率を20倍とすると、分光検出領域の大きさは検査対象ディスク上でφ30μmとなる。
【0042】
上記したように200nm付近の波長を利用しようとする場合、適用できる光学素子等は限られたものとなる。光源には、波長200nm付近以上の光を射出するキセノンランプや重水素ランプ等を用いることができる。ただし、検査対象によっては波長400nm程度以上でも十分性能を発揮できる場合もあり、その場合はハロゲンランプ等の可視光から赤外光の光を射出する光源を用いてもよい。
【0043】
本実施例の光学系では対物レンズ1205に図12Cに示すような凹面ミラー12051と凸面ミラー12052とを組合わせた反射型対物レンズ12050を用いている。一般的に用いられる透過型のレンズで構成された屈折型の対物レンズでは200nm付近から可視光までをブロードに適用できるものはほとんど無い。反射型対物レンズ12050はミ凹面ラー12051と凸面ミラー12052とで構成されており、波長200nm付近から使用することができる。
【0044】
分光器1207は、通常市販されているもので、検出のサンプリングレートが最大で数100kHz程度のものが一般的に入手可能である。さらにサンプリングレートを高くするためには、検出器12073としてホトマルを用いたものを適用すれば可能である。
【0045】
上記分光検出光学系1001は、ブロードな波長帯域を分光する場合を示しているが、複数の離散的な波長の光を検出する方法も考えられる。例えば図13の様に、互いに波長が異なるレーザを発射する複数のレーザ光源1301−1、1301−2及び1301−3から出射された光を、ダイクロイックミラー1302−1及び1302−2を用いて同一光軸上に重ね合わせて検出光としてハーフミラー1306で光路を切替えて偏光素子1304及び反射対物レンズ1305を介して試料1005に照射し、試料1005からの反射光を結像レンズ1306を介して、同様にダイクロイックミラー1308−1と1308−2とを用いて波長ごとに分離して複数の検出器1307−1、1307−2及び1307−3で検出する方法がある。同図では3つのレーザを用いた場合を示しているが、離散的な波長の数を3つに限定するものではなく、2つでも良く、または4つ以上であってもよい。
【0046】
次に、分光検出器1207または検出器1307−1〜1307−3で検出した分光波形信号を用いて、算出した形状に基づいて欠陥判定処理を実行する。一例としては、予め良品と判定する範囲を形状パラメータ毎に決めておき、検出した形状がこの範囲内に入っている場合は良品とし、範囲外である場合は不良と判定する方法がある。判定は、各形状パラメータを独立に実施しても良いし、組み合わせて判定を実施してもよい。例えば、高さと幅の乗算値で判定する方法も考えられる。
【0047】
次に本発明の検査装置の動作について図14を用いて説明する。まず、検査対象ディスク1005をロード(ステージ部1002に設置)し(S1401)、必要に応じて予め中心と方向とを検出する(ディスクアライメント) (S1402)。次にZステージ1102を駆動させて、検査対象ディスク1005を検出光学系1001のフォーカス位置に移動する(S1403)。続いてXステージ1101とθステージ1103とを駆動させて、検査対象ディスク1005の検査位置が検出光学系1001の直下となるように検査対象ディスク1005を移動する(S1404)。検査は、Xステージ1101とθステージ1103とを設定条件で連続的に駆動させ(S1405)、駆動させている状態で、分光検出光学系1001で検査対象ディスク1005の表面の分光反射強度を検出し(S1406)、この検出した分光反射強度信号をデータ処理部1004で処理してパターン形状を検出し欠陥を検出する(データ処理) (S1407)。これを検査対象ディスクの全面に亘って検査が終了するまで実行し(S1408)、検査が終了したらXステージ1101とθステージ1103とを停止させて(S1409)検査対象ディスクを取り出す(検査対象ディスクのアンロード)(S1410)。なお、検査対象ディスク1005のアライメント,ステージへの設置および取り出しに関する説明は割愛する。
【0048】
制御部1003で制御して、Xステージ1101およびθステージ1103をそれぞれ連続的に動作させて検査を実行した場合には、検査対象ディスク1005上の螺旋状の領域を検査することができる。例えば、θステージ1103が一回転する間にXステージ1101が検出スポットサイズ分だけ移動するような動作を検査対象ディスク1005の半径方向に渡って実行させた場合、ディスク全面を検査することができる。
S1407においてデータ処理部1004で実行するデータ処理の詳細を図15に示す。データ処理は、大きく分けて次の3つある。第1は反射率の算出処理S1510、第2は形状パラメータの算出処理S1520及び第3は欠陥判定処理S1530である。
【0049】
先ず、反射率の算出処理S1510においては、分光検出器1207からの検出信号を受けて検査対象ディスク1005の表面の分光反射強度Isを検出する(S1511)。一方、予め鏡面Siの分光強度Irを検出しておく(S1512)。次に、鏡面Siの分光強度Irに対する検査対象ディスク1005の表面の分光反射強度Isの比(相対反射率R)をもとめるが、相対反射率を求める際、検出器によっては分光強度データにバックグラウンドノイズInが重畳している場合があり、これも予め検出しておき相対反射率Rを算出の際には差し引いた値の比として次の式で求める。
R=(Is−In)/(Ir−In)
次に、形状パラメータの算出処理S1520において、S1510で算出した相対分光反射率Rに対して、前述した数2乃至数5を用いた方法で前処理を実施する(S1521)。一方、予め既知の形状のサンプルで分光反射率を検出して形状パラメータと組合わせたデータのセット(複数)を準備し(S1522)、この検出した既知の形状のサンプルの分光反射率のデータに対してS1521の場合と同様に前処理を行い(S1523)、この前処理を行ったデータに対して多変量解析(PLS解析)を実施して数1のような評価値と形状パラメータとの相関式を求めておく(S1524)。この予め求めておいた評価値と形状パラメータとの相関式とS1521で前処理をした相対分光反射率Rとを用いて各形状パラメータの算出を行う(S1525)。
【0050】
最後に、欠陥判定処理S1530において、予め判定しきい値を設定しておき(S1531)、S1525で算出した各形状パラメータに基づいて、形状欠陥であるかどうかを予め設定したしきい値により判定する(S1532)。
【0051】
図16Aに判定結果をデータ処理部1004の表示画面1600に表示した例を示す。表示画面1600には、検査対象ディスク1005上の欠陥マップ1601を表示する欠陥マップ表示領域1602、型(モールド)の情報を表示する領域1603、欠陥マップ1601に表示した欠陥の種類を表示する領域1604、判定結果を表示する領域1605を有している。図16Aの例では欠陥マップ1601上に欠陥を点で表示しているが、図16Bに示すように形状欠陥の種類(図16Bの例では、パターン太り16011,パターン細り16012)ごとの分布を領域で表示しても良い。同様にパターンの幅や高さ等のパターン形状を表すパラメータを表示してもよい。例ではディスク形状と同様に、検査結果をディスク状に示しているが、表示方法はこの限りではない。
【0052】
以上に説明したように、本発明の検査装置により例えばパターンドメディアのパターン形状・欠陥の分布を検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1001・・・分光検出光学系 1002・・・ステージ部 1003・・・制御部 1004・・・データ処理部 1005・・・検査対象ディスク
1101・・・Xステージ 1102・・・Zステージ 1103・・・θステージ 1201・・・光源 1202・・・レンズ 1203・・・ハーフミラー 1204・・・偏向素子 1205・・・対物レンズ 12050・・・反射対物レンズ 1206・・・結像レンズ 1207・・・分光器 1600・・・表示画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンを検査する方法であって、
前記基板に複数の波長成分を含む光を照射し、
該光を照射した前記基板からの反射光を分光して検出し、
該分光して検出して得た信号を処理して分光反射率を求め、
該求めた分光反射率から評価値を算出し、
予め求めておいた評価値とパターン断面形状との関係に基づいて前記分光反射率から算出した評価値からパターンの形状欠陥を判定する
ことを特徴とするパターン形状欠陥検査方法。
【請求項2】
前記予め求めておいた評価値とパターン断面形状との関係は、多変量解析手法を用いて求めることを特徴とする請求項1記載のパターン形状欠陥検査方法。
【請求項3】
前記評価値として、前記求めた分光反射率と予め設定した基準表面からの反射光の分光反射率との差分値を用いることを特徴とする請求項1記載のパターン形状欠陥検査方法。
【請求項4】
前記評価値として、前記求めた分光反射率と予め設定した基準表面からの反射光の分光反射率との差分値をもとめ、さらに特定波長での反射率との比とって正規化した値を用いることを特徴とする請求項1記載のパターン形状欠陥検査方法。
【請求項5】
前記評価値として、分光反射率の微分値を用いることを特徴とする請求項1記載のパターン形状欠陥検査方法。
【請求項6】
基板に形成された寸法が100nm以下の繰り返しパターンを検査する装置であって、
前記基板を載置して該基板を回転させるθステージと該基板を一方向に移動させるXステージとを備えたステージ手段と、
前記基板に複数の波長成分を含む光を照射する光照射部と該光照射部により光が照射された前記基板からの反射光を分光して検出する検出部とを備えた分光検出光学系と、
該分光検出光学系で分光して検出して得た信号を処理して前記基板に形成されたパターンの形状欠陥を検出するデータ処理部をと備え、
該データ処理部は、
分光検出光学系で分光して検出して得た信号を処理して分光反射率を求める分光反射率算出処理部と、
該分光反射率算出処理部で求めた分光反射率から評価値を算出するとともに、予め求めておいた評価値とパターン断面形状との関係に基づいて前記分光反射率から算出した評価値から形状パラメータを算出する形状パラメータ算出処理部と、
予め記憶しておいた判定しきい値を用いて前記形状パラメータ算出処理部で算出した形状パラメータから前記基板に形成されたパターンの形状欠陥を検出する形状欠陥判定処理部と
を備えたことを特徴とするパターン形状欠陥検査装置。
【請求項7】
前記形状パラメータ算出処理部は、前記予め求めておいた評価値とパターン断面形状との関係を、多変量解析手法を用いて求めることを特徴とする請求項6記載のパターン形状欠陥検査装置。
【請求項8】
前記形状パラメータ算出処理部は、前記評価値として、前記分光反射率算出処理部で求めた前記基板の分光反射率と予め設定した基準表面からの反射光の分光反射率との差分値を用いることを特徴とする請求項6記載のパターン形状欠陥検査装置。
【請求項9】
前記形状パラメータ算出処理部は、前記評価値として、前記分光反射率算出処理部で求めた前記基板の分光反射率と予め設定した基準表面からの反射光の分光反射率との差分値をもとめ、さらに特定波長での反射率との比をとって正規化した値を用いることを特徴とする請求項6記載のパターン形状欠陥検査装置。
【請求項10】
前記形状パラメータ算出処理部は、前記評価値として、前記分光反射率算出処理部で求めた前記基板の分光反射率の微分値を用いることを特徴とする請求項6記載のパターン形状欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【公開番号】特開2012−73073(P2012−73073A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217076(P2010−217076)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】