説明

パターン微細化用被覆剤、及びそれを用いた微細パターンの形成方法

【課題】近年の半導体デバイスのさらなる微細化に対応し得るパターン微細化用被覆剤、及びそれを用いた微細パターン形成方法を提供する。
【解決手段】基板上に形成されたホトレジストパターンを被覆し、微細パターンを形成するために使用されるパターン微細化用被覆剤として、水溶性ペプチド、好ましくは水溶性コラーゲンペプチドを含有する被覆剤を用いる。この被覆剤は狭小化量が大きい。また、パターン狭小化の際の温度依存性が小さく、パターン間隔の粗密依存性も小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リソグラフィ技術分野におけるレジストパターンの微細化に対応し得る、パターン微細化用被覆剤及びそれを用いた微細パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化、微細化の傾向が高まり、レジストパターンの形成についても超微細加工が要求されている。レジストパターン形成に用いられる活性光線は、KrF、ArFエキシマレーザー光、EB、EUV、軟X線等の短波長の照射光が利用される一方、レジスト材料についても、これらの照射光に対応した物性を持つ材料系の研究開発が行われている。
【0003】
上記レジストパターンの微細化の手法の一つとして、レジストパターン上を被覆剤により被覆処理することにより、パターン幅を狭小化する方法が知られている。例えば、下記の特許文献1には、酸発生剤を含むレジストパターンの上を、酸の存在で架橋する材料を含む材料で覆い、続く加熱又は露光処理によりレジストパターン中に酸を発生させ、界面に生じた架橋層をレジストパターンの被覆層を形成することでパターン幅を狭小化する方法が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、所定の水溶性樹脂でレジストパターンを被覆後に熱処理することにより、当該水溶性樹脂の収縮を利用してパターン幅を狭小化し、その後に水溶性樹脂を除去する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−073927号公報
【特許文献2】特開2003−084459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、被覆層の熱依存性が大きく、微細化処理後のパターン幅のバラツキが顕著にみられるという問題があった。また、微細化処理後のディフェクト(パターン欠陥)発生を抑止することが困難であった。
【0007】
特許文献2の方法は、上記特許文献1の問題点を克服できるパターン微細化用被覆剤であるが、近年更なるパターン幅の狭小化の要請があり、これに対応可能な材料が求められていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レジストパターンの近年の更なる微細化要求に対応し得るパターン微細化用被覆剤、及びそれを用いた微細パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、基板上に形成されたホトレジストパターンを被覆し、微細パターンを形成するために使用されるパターン微細化用被覆剤であって、水溶性ペプチドを含有するパターン微細化用被覆剤を提供する。
【0010】
また、本発明は、基板上に形成されたホトレジストパターンを、上記パターン微細化用被覆剤で被覆した後、60℃以上250℃以下の加熱処理により該パターン微細化用被覆剤を熱収縮させ、次いで前記パターン微細化用被覆剤を除去する工程を含む微細パターンの形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパターン微細化用被覆剤及び形成方法によれば、処理後にディフェクトが発生することなく、従来の被覆剤に比べて大きな狭小化量(=処理前のレジストパターン幅−処理後のレジストパターン幅)を簡単に得ることができる。
【0012】
また、パターン幅狭小化の際の温度依存性やパターン密度依存性が小さいので、安定したパターン幅が得られる。更に、レジストパターンのトップ部とボトム部の形状が僅かにラウンディングする(丸まる)等の形状変化が起こり難い、という優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
≪パターン微細化用被膜形成剤≫
本発明のパターン微細化用被覆剤(以下、単に「被覆剤」という。)は、水溶性ペプチドを含有してなる水溶液から構成される。
【0014】
<水溶性ペプチド>
水溶性ペプチドとしては、室温で水への溶解性が高く、低温でもゲル化しにくいペプチドであればよく、特に制限されるものではない。水溶性ペプチドの質量平均分子量は10000以下であることが好ましく、5000以下がより好ましい。質量平均分子量が10000以下であることにより、水への溶解性が高く、低温でもゲル化しにくいため、溶液の安定性が高くなる。なお、質量平均分子量の下限は500以上であるとより好ましい。また、水溶性ペプチドは天然物由来であってもよく、合成物であってもよい。また、水溶性ペプチドの誘導体であってもよい。
【0015】
水溶性ペプチドとしては、例えば、コラーゲン由来の加水分解ペプチド、絹糸タンパク由来の加水分解ペプチド、大豆タンパク由来の加水分解ペプチド、小麦タンパク由来の加水分解ペプチド、コメタンパク由来の加水分解ペプチド、ゴマタンパク由来の加水分解ペプチド、エンドウタンパク由来の加水分解ペプチド、羊毛タンパク由来の加水分解ペプチド、カゼイン由来の加水分解ペプチド等があげられる。
【0016】
本発明の水溶性ペプチドは、その少なくとも一部が3重らせん構造を形成可能であることが好ましい。水溶性ペプチドの少なくとも一部が3重らせん構造を有しているか否かは、円二色性スペクトルにおいて、特定することができる(例えば特開2003−321500参照)。水溶性ペプチドの少なくとも一部が3重らせん構造を有することで保水効果が高いため、水分を保持した膜が形成される。加熱により3重らせん構造が壊れると、水分子を膜内に吸着することができなくなる。また、加熱により膜内に保持していた水分が揮発する。その結果、体積が減少して収縮することで、パターン幅の狭小化に寄与すると推定される。また、この3重らせん構造により、本発明の被膜形成剤は、加熱処理温度による熱収縮量の変化がほとんどなく、パターンの密度依存も極めて少ないものと推定される。
【0017】
本発明の水溶性ペプチドは、水溶性コラーゲンペプチドであることが好ましい。コラーゲンとは、真皮、靭帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質の一種で、多細胞動物の細胞外気質の主成分である。コラーゲンタンパク質のペプチド鎖を構成するアミノ酸は、−(グリシン)−(アミノ酸X)−(アミノ酸Y)−と、グリシンが3残基ごとに繰り返す一次構造を有する。このコラーゲン分子は、細長い棒状の形をしているため、同じ体積の球状に比べて、およそ4倍大きく表面積を取ることができる。そのため、加熱処理前の保水効果が高いために、加熱処理後との体積差が大きいことがパターン幅の狭小化に寄与すると推定される。
【0018】
水溶性コラーゲンペプチドは、天然コラーゲンでも合成コラーゲンのどちらでも使用することができる。天然コラーゲンとしては、例えば、牛皮・豚皮由来ゼラチンから構成される加水分解コラーゲン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コラーゲン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、ココイル加水分解コラーゲンK、ココイル加水分解コラーゲンK、ココイル加水分解コラーゲンNa、ココイル加水分解コラーゲンTEA、ウンデシレノイル加水分解コラーゲンK、イソステアロイル加水分解コラーゲンAMPD、イソステアロイル加水分解コラーゲン、ロジン加水分解コラーゲンAMPD、ロジン加水分解コラーゲン等があげられ、魚皮由来ゼラチンから構成される加水分解コラーゲンや、魚鱗から構成されるココイル加水分解コラーゲンK、イソステアロイル加水分解コラーゲンAMPD、イソステアロイル加水分解コラーゲン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン等があげられる。
【0019】
合成コラーゲンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、特開2003−321500、特開2005−60550、特開2007−223981、特開2007−262087等に記載された合成コラーゲン等があげられる。なお、本発明におけるコラーゲンとは、上記公報に記載されているような「コラーゲン様」物質も含むものである。
【0020】
上記水溶性ペプチドの熱的性質としては、塗布膜形成時に3重らせん構造を形成していることが好ましい。これにより、微細化処理後に、レジストパターンのトップ部とボトム部の形状が僅かにラウンディングする(丸まる)等の形状の劣化を防止することができる。また、レジストが加熱温度の変動によって微細化量が変動する等の問題がなく被覆剤の熱収縮量が一定となるため、低温でパターン幅を狭小化することができる。
【0021】
また、本発明では、被覆剤に対して、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、以下の界面活性剤、防腐剤を配合してもよい。このような任意に添加される成分としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0022】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、上記水溶性ペプチドに対し溶解性が高く、懸濁を発生しない等の特性が必要である。このような特性を満たす界面活性剤を用いることにより、特に被覆剤を塗布する際の気泡(マイクロフォーム)発生を抑えることができ、このマイクロフォーム発生と関係があるとされるディフェクトの発生をより効果的に防止することができる。
【0023】
上記の点から、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−ヘプチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、N−ノニル−2−ピロリドン、N−デシル−2−ピロリドン、N−デシル−2−ピロリドン、N−ウンデシル−2−ピロリドン、N−ドデシル−2−ピロリドン、N−トリデシル−2−ピロリドン、N−テトラデシル−2−ピロリドン、N−ペンタデシル−2−ピロリドン、N−ヘキサデシル−2−ピロリドン、N−ヘプタデシル−2−ピロリドン、N−オクタデシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン系界面活性剤、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ペンタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩系界面活性剤、「プライサーフA212E」、「プライサーフA210G」(以上、いずれも第一工業製薬(株)製)等のポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル化物又はアルキルアミンオキシド化合物等のノニオン性界面活性剤のうちの1種以上が好ましく用いられる。
【0024】
このような界面活性剤を添加する場合の添加量は、被覆剤の固形分中、1ppm〜10質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは100ppm〜2質量%程度に調整することが好ましい。
【0025】
<防腐剤>
天然コラーゲンを含有する場合、腐敗やバクテリアの発生を防ぐために、水溶性アミン化合物や、第4級アンモニウム水酸化物等のアルカリや、酢酸・過酢酸等の酸を防腐剤として添加することができる。
水溶性アミン化合物としては、25℃の水溶液におけるpKa(酸解離定数)が7.5以上のアミン類が挙げられる。具体的には、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン類;ベンジルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン等の環状アミン類等が挙げられる。
第4級アンモニウム水酸化物としては、テトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、テトラブチルアンモニウム水酸化物、メチルトリプロピルアンモニウム水酸化物、メチルトリブチルアンモニウム水酸化物、コリン等が挙げられる。
【0026】
このような水溶性アミン化合物を添加する場合の添加量は、被覆剤の固形分中、0.1〜30質量%程度とするのが好ましく、特には2〜15質量%程度に調整することが好ましい。
【0027】
<水溶液>
本発明の被覆剤は、水溶液として用いることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、水とアルコール系溶媒との混合溶媒としてもよい。このようなアルコール系溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール等が挙げられる。これらのアルコール系溶媒は、水100質量部に対して好ましくは30質量部、より好ましくは20質量部を上限として混合して用いられる。
【0028】
≪微細パターンの形成方法≫
本発明に係る微細パターンの形成方法は、基板上に形成されたホトレジストパターンを、上記被覆剤で被覆した後、60℃以上250℃以下の加熱処理し、該被覆剤を熱収縮させ、次いで上記被覆剤を除去する工程を含む。
【0029】
基板上へのホトレジストパターンの形成は特に限定されない。例えば、シリコンウェーハ等の基板上に、従来公知のホトレジスト用組成物を、スピンナー等で塗布、乾燥してホトレジスト層を形成した後、従来公知の露光現像処理することによって、基板上に任意のホトレジストパターンを形成することができる。
【0030】
なお、レジストパターンの材料となるホトレジスト用組成物としては、特に限定されるものではなく、i線、g線用ホトレジスト組成物、KrF、ArF、F等のエキシマレーザー用ホトレジスト組成物、さらにはEB(電子線)用ホトレジスト組成物、EUV用ホトレジスト等、広く一般的に用いられるホトレジスト組成物を用いることができる。
【0031】
<a.被覆剤塗布工程>
次いで、このようなマスクパターンとしてのホトレジストパターンの全面に亘って、被覆剤を塗布し被覆する。なお、該被覆剤を塗布した後に、例えば、80〜100℃の温度で30〜90秒間プリベークを施してもよい。
【0032】
被覆方法は従来の熱フロープロセスにおいて通常行われていた方法に従って行うことができる。すなわち、例えばバーコーター法、ロールコーター法、スリットコーター法、スピンナーを用いた回転塗布等の公知の塗布手段により、ホトレジストパターンに上記被覆剤の水溶液を塗布し被覆する。被覆剤の塗布厚さとしては、ホトレジストパターンの高さと同程度あるいはそれを覆う程度の高さが好ましい。
【0033】
<b.加熱処理工程>
次いで、加熱処理を行って、被覆剤を熱収縮させる。この被覆剤の熱収縮作用により、被覆剤に接するホトレジストパターンが被覆剤の収縮相当分幅広になり、その結果、ホトレジストパターン同士が互いに近接した状態となってホトレジストパターン間の間隔(パターン幅)が狭められる。
【0034】
加熱処理温度は、60℃以250℃以下の温度が好ましい。特に、80℃以上200℃以下の温度がより好ましい。加熱処理温度が、80℃以上200℃以下の温度であることで、ホトレジストパターン自体の熱流動を防ぎつつ、効果的に被覆剤を収縮させることができる。また、このような温度での加熱処理により、プロファイルの良好な微細パターンの形成をより一層効果的に行うことができ、また特にウェーハ面内におけるデューティ(Duty)比、すなわちウェーハ面内におけるパターン間隔に対する依存性も小さくすることができる。また、本発明の被覆剤は加熱温度の変動によって微細化量が変動する等の問題がなく被覆剤の熱収縮量が一定となるため、低温でもパターン幅を安定的に狭小化することができる。
【0035】
<c.被覆剤除去工程>
この後、ホトレジストパターンを有する基板上に残留する被覆剤からなる塗膜は、水系溶剤、好ましくは純水により10〜60秒間洗浄することにより除去する。なお、水洗除去に先立ち、所望によりアルカリ水溶液(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等)でリンス処理をしてもよい。本発明に係る被覆剤は、水での洗浄除去が容易で、かつ、基板及びホトレジストパターンから完全に除去することができる。そして基板上に、幅広・広大となったホトレジストパターンの間に画定された、微小化されたパターンを有する基板が得られる。
【0036】
本発明により得られる微細パターンは、これまでの方法によって得られる解像限界よりもより微細なパターンを有するとともに、良好なレジストパターン形状を有し、所要の要求特性を十分に満足し得る物性を備えたものである。具体的には、従来の被覆剤では得られなかった、1回あたり15から30nm程度の大きな狭小化量(=処理前のレジストパターン幅−処理後のレジストパターン幅)をバラツキなく安定的に得ることができる。
【0037】
なお、上記a〜c工程を複数回、繰返して行ってもよい。このようにa〜c工程を複数回繰返すことにより、ホトレジストパターンを徐々に幅広・広大とすることができる。
【0038】
本発明が適用される技術分野としては、半導体分野に限られず、広く液晶表示素子、磁
気ヘッド製造、さらにはマイクロレンズ製造等に用いることが可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
<実施例1〜4>
〔被覆剤A〕
「水溶性コラーゲンペプチドPA」(協和醗酵工業(株)製)10g、ポリオキシエチレンの燐酸エステル系界面活性剤として「プライサーフA210G」(第一工業製薬(株)製)0.1gを純水で溶解させ、全量を100gに調整し、これを被覆剤Aとした。
【0041】
〔被覆剤B〕
「水溶性コラーゲンペプチドDS」(協和醗酵工業(株)製)10g、ポリオキシエチレンの燐酸エステル系界面活性剤として「プライサーフA210G」(第一工業製薬(株)製)0.1gを純水で溶解させ、全量を100gに調整し、これを被覆剤Bとした。
【0042】
〔被覆剤C〕
「水溶性コラーゲンペプチドSS」(協和醗酵工業(株)製)10g、ポリオキシエチレンの燐酸エステル系界面活性剤として「プライサーフA210G」(第一工業製薬(株)製)0.1gを純水で溶解させ、全量を100gに調整し、これを被覆剤Cとした。
【0043】
〔被覆剤D〕
「水溶性フィッシュコラーゲンペプチド」(協和醗酵工業(株)製)10g、ポリオキシエチレンの燐酸エステル系界面活性剤として「プライサーフA210G」(第一工業製薬(株)製)0.1gを純水で溶解させ、全量を100gに調整し、これを被覆剤Dとした。
【0044】
一方、8インチシリコンウェーハ上に「ARC−29A」(日産化学工業(株)製)の反射防止膜を回転塗布し、205℃で60秒間ベーク処理し成膜した。反射防止膜が形成されたシリコンウェーハ上に、ポジ型ホトレジストである「TARF−P7152」(東京応化工業(株)製)を回転塗布し、135℃で90秒間ベーク処理し、膜厚370nmのホトレジスト層を形成した。
【0045】
該ホトレジスト層に対して、露光装置NSR-S302((株)ニコン製)を用いて露光処理し、110℃にて60秒間加熱処理を施し、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液を用いて現像処理して、直径154.0nm(ホール径:ホールパターン間距離=1:1)のホールパターンを形成した。
【0046】
次に、このシリコンウェーハ上のレジストパターンに、上記被覆剤A〜Dをそれぞれ塗布し、膜厚200nmの被覆膜を形成し、該ウェーハを140℃で60秒間加熱処理し、該ホールパターンの微細化処理を行った。続いて23℃で純水を用いて被覆剤を除去した。
【0047】
<比較例>
〔比較被覆剤〕
アクリル酸/ビニルピロリドン(AA/VP)からなるコポリマー(AA:VP=2:1.3(重合比))7.0g、トリエチルアミン6g、及びポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤として「プライサーフA210G」(第一工業製薬(株)製)1gを純水に溶解し、全量を100gに調整し、比較被覆剤とした。
【0048】
上記実施例と同様に、直径154.0nm(ホール径:ホールパターン間距離=1:1)のホールパターンを形成した後、上記比較被覆剤を塗布し、膜厚200nmの被覆膜を形成し、該ウェーハを140℃で60秒間加熱処理し、該ホールパターンの微細化処理を行った。続いて23℃で純水を用いて被覆剤を除去した。
【0049】
<試験例>
これらの微細化処理について、それぞれ以下に示す評価1〜4を行った。
【0050】
評価1:狭小化量(微細化量)
前述した微細化処理後のレジストパターン寸法を走査型電子顕微鏡にて測定した。このときの「処理前のレジストパターン幅−処理後のレジストパターン幅」で定義される狭小化量をそれぞれ表1に示した。
【0051】
評価2:疎密パターンの狭小化量の変動
前述したホールパターンのホールパターン間距離を、ホール径に対して、1倍(等倍:密パターン)、5倍(疎パターン)としたパターンに対して、それぞれ微細化処理を行った。このときの微細化処理後のレジストパターンを走査型電子顕微鏡にて測定し、狭小化量の最小量と最大量との差をそれぞれ表1に示した。
【0052】
評価3:微細化処理後のレジストパターン形状
前述した微細化処理後のレジストパターン形状を走査型電子顕微鏡にて観察し評価した。その結果、レジストパターンが矩形形状の良好なものをA、パターン形状が矩形形状でないものをBとして、表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果より、実施例1から4については、20nm以上の大きな狭小化量が得られており、また、疎密パターンにおける狭小化量の変動も5nm以下と小さかった。また、比較例で見られるレジストパターンのトップ部とボトム部の形状が僅かにラウンディングする(丸まる)等の形状変化が起こり難く、パターン形状も良好であった。なお、実施例のいずれもディフェクトの発生は認められなかった。
【0055】
評価4:加熱処理温度の変動による狭小化量の変動
被膜形成剤A及び比較被膜形成剤のそれぞれを用いて、前述した微細化処理における加熱処理を、145℃、150℃、155℃の3ポイントとして、それぞれ微細化処理を行った。この微細化処理後のレジストパターン寸法を走査型電子顕微鏡にて測定をした。その結果を表2及び表3に示した。表2は微細化処理後のレジストパターン寸法を走査型電子顕微鏡にて測定したホール径を示し、表3はそれぞれの狭小化量を示している。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
表2、表3の結果から、実施例の被覆剤は比較例に比べて狭小化量が大きい。また、パターン幅狭小化の際の温度依存性が小さく、パターン間隔の粗密依存性も小さいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたホトレジストパターンを被覆し、微細パターンを形成するために使用されるパターン微細化用被覆剤であって、
水溶性ペプチドを含有するパターン微細化用被覆剤。
【請求項2】
前記水溶性ペプチドの少なくとも一部が3重らせん構造を形成可能である請求項1に記載のパターン微細化用被覆剤。
【請求項3】
前記水溶性ペプチドが水溶性コラーゲンペプチドである請求項1又は2に記載のパターン微細化用被覆剤。
【請求項4】
前記水溶性ペプチドの質量平均分子量が10000以下である請求項1から3のいずれかに記載のパターン微細化用被覆剤。
【請求項5】
前記パターン微細化用被覆剤が、さらに界面活性剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載のパターン微細化用被覆剤。
【請求項6】
前記パターン微細化用被覆剤が、さらに防腐剤を含有する請求項1から5のいずれかに記載のパターン微細化用被覆剤。
【請求項7】
基板上に形成されたホトレジストパターンを、請求項1から6のいずれかに記載のパターン微細化用被覆剤で被覆した後、60℃以上250℃以下の加熱処理により該パターン微細化用被覆剤を熱収縮させ、次いで前記パターン微細化用被覆剤を除去する工程を含む微細パターンの形成方法。

【公開番号】特開2010−26073(P2010−26073A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184959(P2008−184959)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】