説明

パターン検査方法およびパターン検査装置

【課題】微細化あるいはハイアスペクト化された凹部を有する構造体に対するパターン検査の精度を向上させることができるパターン検査方法およびパターン検査装置を提供することである。
【解決手段】本発明の実施態様によれば、構造体が有する凹部にX線または真空紫外線を集光させ、前記集光させた前記X線または前記真空紫外線を前記凹部の内部において伝播させて前記凹部の底面に到達させ、前記底面で反射または前記底面を透過した前記X線または前記真空紫外線の強度を検出することにより前記凹部の欠陥の有無を検査することを特徴とするパターン検査方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン検査方法およびパターン検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、フラットパネルディスプレイ、光記録媒体、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)などの分野では、表面に微細な凹部が形成された構造体を有するパターンがリソグラフィ技術などを用いて製造されている。そして、例えば薄膜プロセスなどの製造工程中において、構造体上に形成された穴や溝などの凹部の欠陥や異物の検査が行われている。
【0003】
しかしながら、近年、パターンの微細化やハイアスペクト化などにより、穴や溝などの凹部の底におけるエッチングの残りや、底あるいは膜中におけるゴミなどの異物残存などの検査が困難となっている。微細化あるいはハイアスペクト化された凹部を有するパターンにおいて、パターン検査の精度の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−109227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、微細化あるいはハイアスペクト化された凹部を有するパターンに対するパターン検査の精度を向上させることができるパターン検査方法およびパターン検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施態様によれば、構造体が有する凹部にX線または真空紫外線を集光させ、前記集光させた前記X線または前記真空紫外線を前記凹部の内部において伝播させて前記凹部の底面に到達させ、前記底面で反射または前記底面を透過した前記X線または前記真空紫外線の強度を検出することにより前記凹部の欠陥の有無を検査することを特徴とするパターン検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態にかかるパターン検査方法における被検査体を例示する断面模式図である。
【図2】本実施形態にかかるパターン検査方法を表す断面模式図である。
【図3】波長と屈折率との関係の一例を例示するグラフ図である。
【図4】本実施形態にかかるパターン検査方法を表す断面模式図である。
【図5】軟X線が凹部内を伝播するときのシミュレーションの結果の一例を例示する模式図である。
【図6】軟X線が凹部内を伝播するときのシミュレーションの結果の一例を例示する模式図である。
【図7】他の実施形態にかかるパターン検査方法を表す断面模式図である。
【図8】他の実施形態にかかるパターン検査方法を表す断面模式図である。
【図9】本実施形態にかかるパターン検査装置を表す模式図である。
【図10】他の実施形態にかかるパターン検査装置を表す模式図である。
【図11】構造体の主面を表す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施形態にかかるパターン検査方法における被検査体を例示する断面模式図である。
【0009】
図1に表したように、本実施形態にかかるパターン検査方法における被検査体(構造体)100は、例えば穴や溝などの凹部130が形成された基板(ウェーハ)などである。本実施形態の構造体100は、例えば半導体110と誘電体120とが積層された構造を有する。本実施形態の半導体110は、例えばSiなどを含む。また、本実施形態の誘電体120は、例えばSiOやSiNなどを含む。例えば、本実施形態の構造体100では、Si系の基板にSiOやSiNなどが積層され、電子回路がパターニングされている。なお、本実施形態の被検査体は、半導体を有することに限定されるわけではない。
【0010】
凹部130の幅D1は、例えば約数十nm(ナノメートル)程度である。凹部130の高さD2は、例えば約数百nm〜数μm(マイクロメートル)程度である。このように、本実施形態にかかるパターン検査方法では、比較的大きいアスペクト比を有する凹部130が形成された構造体100を被検査体(検査対象)とする。
【0011】
図2および図4は、本実施形態にかかるパターン検査方法を表す断面模式図である。
また、図3は、波長と屈折率との関係の一例を例示するグラフ図である。
なお、図2は、欠陥が存在しない場合におけるパターン検査方法を表す断面模式図であり、図4は、欠陥が存在する場合におけるパターン検査方法を表す断面模式図である。
【0012】
本実施形態にかかるパターン検査方法では、X線あるいは真空紫外線を用いて構造体100に形成された凹部130の欠陥の有無を検査する。本実施形態にかかるパターン検査方法において用いられるX線および真空紫外線の光源としては、例えば、リソグラフィ用のEUV(Extreme Ultraviolet)光源や、重水素ランプや、Fレーザ光源や、YAGレーザ光源や、エキシマレーザ光源、SOR(Synchrotron Orbital Radiation)光源などが挙げられる。
【0013】
比較例にかかるパターン検査方法として、波長が約250nm〜600nm程度の近紫外光ないし可視光を被検査体に照射し、被検査体からの反射光を検出器に結像することで、欠陥の有無を検査する方法が挙げられる。あるいは、前述した近紫外光ないし可視光を被検査体上でスキャンし、欠陥の有無による反射率の違いを検出することで、欠陥の有無を検査する方法が挙げられる。しかしながら、近年、構造体100の凹部130の微細化やハイアスペクト化などにより、光が膜においてより吸収され、また欠陥が微小化している。そのため、波長が約250nm〜600nm程度の近紫外光ないし可視光を用いた検査が困難となってきている。
【0014】
これに対して、本実施形態にかかるパターン検査方法では、X線あるいは真空紫外線を用いて構造体100に形成された凹部130の欠陥の有無を検査する。その際には、X線あるいは真空紫外線の波長領域の導波路効果を用いる。以下の説明では、X線を用いる場合を例に挙げる。
【0015】
まず、図2に表したX線210のように、図示しない集光素子によりX線を凹部130に集光させる。本実施形態にかかるパターン検査方法において用いられる集光素子としては、例えば、フレネルゾーンプレート(FZP)や、スパッタースライス製FZPや、KB(Kirkpatrick-Baez)型反射鏡や、X線導波管や、多層膜反射ミラーや、金属反射ミラーなどが挙げられる。
【0016】
ここで、図3に表したように、X線の波長領域においては、多くの材料の屈折率は、空気の屈折率「1.0」よりも低い。例えば、X線の波長が50nmである場合には、Siの屈折率は、約0.9程度であり、SiOの屈折率は、約0.97程度である。
一方、凹部130の内部には、空間が存在する。つまり、凹部130の内部の状態は、空気が存在する状態や真空状態となっている。そのため、凹部130の内部の屈折率は、約1程度である。
【0017】
そのため、図2に表した矢印A1およびA2のように、凹部130に集光されたX線210は、凹部130の内部(空気あるいは真空)と半導体110との境界面(側面)において全反射する。そして、X線210は、導波路効果により凹部130の内部を伝播して凹部130の底面131に到達する。つまり、凹部130は、集光されたX線210を全反射させる導波管として機能する。本願明細書において「導波路効果」とは、凹部130に入射した光が反射や屈折などにより光軸方向に戻されつつ凹部130の内部に閉じ込められて凹部130の底面131に導かれることをいうものとする。なお、図2に表した反射状態では、X線210は、1回の全反射により凹部130の底面131に到達しているが、これだけに限定されず、複数回の全反射により凹部130の底面131に到達してもよい。
【0018】
図2に表したように、例えばエッチングの残りやゴミなどの異物残存などの欠陥が無い場合には、誘電体120が凹部130の底面131を形成する。前述したように、凹部130の内部の屈折率と、例えばSiOを含む誘電体120の屈折率と、の間には差異がある。そのため、図2に表した矢印A2およびA3のように、X線210が例えば約10〜70nm程度の波長を有する軟X線である場合には、凹部130の底面131に到達したX線210の一部は、凹部130の内部と誘電体120との屈折率差により凹部130の内部と誘電体120との境界面(底面131)においてフレネル反射する。一方、凹部130の底面131に到達したX線210の他の一部は、凹部130の底面131を形成する誘電体120を透過し、構造体100の外部へ放射される。
【0019】
ここで、凹部130の内部の密度と、誘電体120の密度と、の間には差異がある。そのため、図2に表した矢印A2およびA3のように、X線210が例えば約1nm程度以下の波長を有する硬X線である場合には、凹部130の底面131に到達したX線210の一部は、凹部130の内部と誘電体120との密度差により凹部130の内部と誘電体120との境界面(底面131)においてフレネル反射する。一方、凹部130の底面131に到達したX線210の他の一部は、凹部130の底面131を形成する誘電体120を透過し、構造体100の外部へ放射される。
【0020】
続いて、図2に表した矢印A3およびA4のように、凹部130の内部と誘電体120との境界面(底面131)においてフレネル反射したX線210は、凹部130の内部と半導体110との境界面(側面)において全反射し、凹部130の内部を伝播して構造体100の外部へ放射される。このようにして構造体100の外部へ放射されたX線210は、図示しない検出器により検出される。
【0021】
これに対して、図4に表したように、例えばエッチングの残りやゴミなどの異物残存などの欠陥111がある場合には、誘電体120ではなく半導体110などが凹部130の底面131を形成する。ここでは、エッチングの残りにより、半導体110が凹部130の底面131を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0022】
まず、凹部130に集光されたX線210が導波路効果により凹部130の内部を伝播して凹部130の底面131に到達することは、図2に関して前述した如くである。前述したように、凹部130の内部の屈折率と、例えばSiを含む半導体110の屈折率と、の間には差異がある。そのため、図4に表した矢印A2およびA3のように、X線210が例えば約10〜70nm程度の波長を有する軟X線である場合には、凹部130の底面131に到達したX線210の一部は、凹部130の内部と半導体110との屈折率差により凹部130の内部と半導体110との境界面(底面131)においてフレネル反射する。一方、凹部130の底面131に到達したX線210の他の一部は、凹部130の底面131を形成する半導体110を透過し、構造体100の外部へ放射される。
【0023】
続いて、図4に表した矢印A3およびA4のように、凹部130の内部と半導体110との境界面(底面131)においてフレネル反射したX線210は、凹部130の内部と半導体110との境界面(側面)において全反射し、凹部130の内部を伝播して構造体100の外部へ放射される。
【0024】
ここで、半導体110の屈折率と、誘電体120の屈折率と、の間には差異があるため、凹部130の内部と半導体110との境界面における反射率および透過率と、凹部130の内部と誘電体120との境界面における反射率および透過率と、の間にはそれぞれ差異がある。これにより、凹部130の内部と半導体110との境界面(底面131)においてフレネル反射し凹部130の内部を伝播して構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、凹部130の内部と誘電体120との境界面(底面131)においてフレネル反射し凹部130の内部を伝播して構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、の間には差異がある。あるいは、凹部130の底面131を形成する半導体110を透過し、構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、凹部130の底面131を形成する誘電体120を透過し、構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、の間には差異がある。
【0025】
本実施形態にかかるパターン検査方法では、図示しない検出器が反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度の差異を検出することで、欠陥の有無を検査することができる。これにより、微細化あるいはハイアスペクト化された凹部130を有する構造体100に対するパターン検査の精度を向上させることができる。
【0026】
また、凹部130の内部の密度と、半導体110の密度と、の間には差異がある。そのため、図4に表した矢印A2およびA3のように、X線210が例えば約1nm程度以下の波長を有する硬X線である場合には、凹部130の底面131に到達したX線210の一部は、凹部130の内部と半導体110との密度差により凹部130の内部と半導体110との境界面(底面131)においてフレネル反射する。一方、凹部130の底面131に到達したX線210の他の一部は、凹部130の底面131を形成する半導体110を透過し、構造体100の外部へ放射される。
【0027】
続いて、図4に表した矢印A3およびA4のように、凹部130の内部と半導体110との境界面(底面131)においてフレネル反射したX線210は、凹部130の内部と半導体110との境界面(側面)において全反射し、凹部130の内部を伝播して構造体100の外部へ放射される。
【0028】
ここで、半導体110の密度と、誘電体120の密度と、の間には差異があるため、凹部130の内部と半導体110との境界面における反射率および透過率と、凹部130の内部と誘電体120との境界面における反射率および透過率と、の間にはそれぞれ差異がある。これにより、凹部130の内部と半導体110との境界面(底面131)においてフレネル反射し凹部130の内部を伝播して構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、凹部130の内部と誘電体120との境界面(底面131)においてフレネル反射し凹部130の内部を伝播して構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、の間には差異がある。あるいは、凹部130の底面131を形成する半導体110を透過し、構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、凹部130の底面131を形成する誘電体120を透過し、構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、の間には差異がある。
【0029】
本実施形態にかかるパターン検査方法では、軟X線に関して前述した場合と同様に硬X線を凹部130に集光させる場合でも、図示しない検出器が反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度の差異を検出することで、欠陥の有無を検査することができる。これにより、微細化あるいはハイアスペクト化された凹部130を有する構造体100に対するパターン検査の精度を向上させることができる。
【0030】
なお、構造体100を形成する半導体110および誘電体120によっては、半導体110の密度と、誘電体120の密度と、の間の差異が比較的小さい場合もあり得る。例えば、Siの密度は、約2.2g/cm程度であり、SiOの密度は、約2.3g/cm程度である。この場合には、凹部130の内部と半導体110との境界面における反射率および透過率と、凹部130の内部と誘電体120との境界面における反射率および透過率と、の間の差異は、それぞれ比較的小さい。そうすると、図示しない検出器が反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度の差異を検出し難いあるいは検出できない場合もあり得る。この場合には、凹部130に集光させるX線210として、硬X線よりも軟X線を用いることがより好ましい。
図示しない検出器が透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度の差異を検出する場合については、図7および図8に関して後述する。
【0031】
図5および図6は、軟X線が凹部内を伝播するときのシミュレーションの結果の一例を例示する模式図である。
なお、図5(a)は、欠陥の無い凹部を軟X線が伝播するときのシミュレーションの結果の一例を例示しており、図5(b)は、本シミュレーションにおける構造体のモデルを表す断面模式図である。
また、図6(a)は、欠陥の有る凹部を軟X線が伝播するときのシミュレーションの結果の一例を例示しており、図6(b)は、本シミュレーションにおける構造体のモデルを表す断面模式図である。
【0032】
図5(a)および図6(a)に表したシミュレーション結果では、凹部130に集光された軟X線(波長:50nm)が凹部130の内部を伝播していくときの軟X線の強弱(振幅)をモノトーン色の濃淡で表している。
【0033】
図5(b)に表した構造体100のモデルのように、凹部130に欠陥が存在しない場合には、軟X線は、凹部130の内部と半導体110との境界面(側面)において全反射し、導波路効果により凹部130の内部を伝播して凹部130の底面131に到達していることが分かる。さらに、凹部130の底面131に到達した軟X線は、凹部130の内部と誘電体120との境界面(底面131)においてフレネル反射し、凹部130の内部を伝播して凹部130の外部へ放射されていることが分かる。つまり、軟X線は、回折により広がることはほとんどなく、凹部130の内部を比較的真っ直ぐに進む。
【0034】
これに対して、図6(b)に表した構造体100のモデルのように、凹部130に欠陥111(本シミュレーションではエッチングの残り)が存在する場合には、軟X線は、凹部130の内部と半導体110との境界面(底面131)において回折により広がっていることが分かる。これは、図2〜図4に関して前述したように、凹部130の内部と半導体110との境界面における反射率および透過率と、凹部130の内部と誘電体120との境界面における反射率および透過率と、の間にはそれぞれ差異があるためである。
【0035】
そのため、図5(b)に表した構造体100のモデルにおいて凹部130の外部へ放射された軟X線の強度と、図6(b)に表した構造体100のモデルにおいて凹部130の外部へ放射された軟X線の強度と、の間には差異があることが分かる。これにより、図示しない検出器が反射光あるいは透過光として凹部130の外部へ放射された軟X線の強度の差異を検出することで、欠陥の有無を検査することができる。
【0036】
図7および図8は、他の実施形態にかかるパターン検査方法を表す断面模式図である。 なお、図7は、欠陥が存在しない場合におけるパターン検査方法を表す断面模式図であり、図8は、欠陥が存在する場合におけるパターン検査方法を表す断面模式図である。
【0037】
本実施形態にかかるパターン検査方法では、凹部130に集光させるX線210として、硬X線を用いる。まず、図7に表したX線210のように、図示しない集光素子によりX線210を凹部130に集光させる。図7に表した矢印A5およびA6のように、凹部130に集光されたX線210は、凹部130の内部と半導体110との境界面(側面)において全反射する。これは、図2に関して前述した如くである。
【0038】
凹部130の内部の密度と、凹部130の底面131を形成する誘電体120の密度と、の間には差異がある。そのため、凹部130の底面131に到達したX線210の一部は、凹部130の内部と誘電体120との境界面(底面131)においてフレネル反射する。一方、図7に表した矢印A6のように、凹部130の底面131に到達したX線210の他の一部は、凹部130の底面131を形成する誘電体120を透過し、構造体100の外部へ放射される。このようにして構造体100の外部へ放射されたX線210は、図示しない検出器により検出される。
【0039】
これに対して、凹部130に欠陥111(ここではエッチングの残り)が存在する場合には、図8に表した矢印A7およびA8のように、凹部130の底面131に到達したX線210の一部は、凹部130の内部と半導体110との境界面(底面131)において全反射あるいはフレネル反射しない。そして、X線210は、凹部130の底面131を形成する半導体110を透過し、構造体100の外部へ放射される。このようにして構造体100の外部へ放射されたX線210は、図示しない検出器により検出される。
【0040】
ここで、図2〜図4に関して前述したように、半導体110の密度と、誘電体120の密度と、の間には差異があるため、凹部130の内部と半導体110との境界面における反射率および透過率と、凹部130の内部と誘電体120との境界面における反射率および透過率と、の間にはそれぞれ差異がある。そのため、凹部130の底面131を形成する半導体110を透過し、構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、凹部130の底面131を形成する誘電体120を透過し、構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、の間には差異がある。図示しない検出器がこの差異を検出することで、欠陥の有無を検査することができる。
【0041】
このように、反射光ではなく透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度の差異を図示しない検出器が検出することでも、欠陥の有無を検査することができる。これにより、微細化あるいはハイアスペクト化された凹部130を有する構造体100に対するパターン検査の精度を向上させることができる。
【0042】
次に、本実施形態にかかるパターン検査装置について、図面を参照しつつ説明する。
図9は、本実施形態にかかるパターン検査装置を表す模式図である。
【0043】
本実施形態にかかるパターン検査装置10は、チャンバー11と、EUV光源200と、多層膜反射ミラー310と、検出器320と、を備える。EUV光源200、多層膜反射ミラー310、および検出器320は、チャンバー11の内部に収容されている。
【0044】
EUV光源200は、EUV220を発生させ放射することができる。EUV光源200が放射するEUV220の波長は、例えば約15nm程度である。多層膜反射ミラー310は、EUV光源200から放射されたEUV220を反射し、構造体100に形成された凹部130に集光させることができる。検出器320は、EUV220の強度を検出することができる。
【0045】
また、パターン検査装置10は、図示しない排気系と、載置部と、搬送部と、を備える。図示しない排気系は、チャンバー11の内部の気体を排気し、チャンバー11の内部空間を減圧雰囲気に維持することができる。図示しない載置部は、被検査体としての構造体100を載置および保持するとともに、保持した構造体100の位置を変化させることができる。図示しない搬送部は、構造体100をチャンバー11の中に搬入したり、チャンバー11の中から搬出することができる。
【0046】
図9に表した矢印A11およびA12ように、EUV光源200から放射されたEUV220は、多層膜反射ミラー310により反射され、構造体100に形成された凹部130に集光する。凹部130に集光したEUV220は、図2〜図4に関して前述したように、全反射やフレネル反射して反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射される。図9に表した矢印A14およびA15のように、反射光として構造体100の外部へ放射されたEUV220は、多層膜反射ミラー310により反射され、検出器320に結像される。また、図9に表した矢印A17およびA18のように、透過光として構造体100の外部へ放射されたEUV220は、多層膜反射ミラー310により反射され、検出器320に結像される。
【0047】
検出器320は、反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射され結像したEUV220の強度を検出する。そして、例えば多層膜反射ミラー310や図示しない載置部などを移動させることで、EUV220を構造体100上でスキャンさせる。
【0048】
図2に関して前述したように、凹部130に欠陥が存在する場合に反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射されたEUV220の強度と、凹部130に欠陥が存在しない場合に反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射されたEUV220の強度と、の間には差異がある。検出器320は、その差異を検出することで欠陥の有無を検査することができる。これにより、微細化あるいはハイアスペクト化された凹部130を有する構造体100に対するパターン検査の精度を向上させることができる。
【0049】
なお、図9に表したパターン検査装置10には、反射光として構造体100の外部へ放射されたEUV220の強度を検出する検出器320と、透過光として構造体100の外部へ放射されたEUV220の強度を検出する検出器320と、の両方が設けられているが、いずれか一方の検出器320が設けられていてもよい。この場合でも、検出器320は、EUV220の強度の差異を検出することで欠陥の有無を検査することができる。
【0050】
図10は、他の実施形態にかかるパターン検査装置を表す模式図である。
また、図11は、構造体の主面を表す平面模式図である。
なお、図11は、凹部が形成された構造体の主面を垂直にみたときの平面模式図である。
【0051】
本実施形態にかかるパターン検査装置20は、X線源250と、多層膜反射ミラー310と、X線導波管260と、検出器320と、を備える。
X線源250は、X線210を発生させ放射することができる。X線源250が放射するX線210は、硬X線および軟X線のいずれでもよい。多層膜反射ミラー310は、X線源250から放射されたX線210を反射し、X線導波管260に導くことができる。X線導波管260は、多層膜反射ミラー310から導かれたX線210をスポットX線210aとして構造体100に形成された凹部130に集光(結像)させることができる。検出器320は、X線210の強度を検出することができる。
【0052】
また、パターン検査装置10は、図示しない載置部と、搬送部と、を備える。図示しない載置部は、被検査体としての構造体100を載置および保持するとともに、保持した構造体100の位置を変化させることができる。図示しない搬送部は、構造体100を所定位置に搬送することができる。
なお、本実施形態にかかるパターン検査装置20では、多層膜反射ミラー310は、フレネルゾーンプレートに置き換えられてもよい。
【0053】
図10に表した矢印A21およびA22のように、X線源250から放射されたX線210は、多層膜反射ミラー310により反射されX線導波管260に導かれる。図10に表した矢印A24のように、X線導波管260に導かれたX線210は、X線導波管260の導波路効果によりスポットX線210aとして構造体100に形成された凹部130に集光する。凹部130に集光したX線210は、図2〜図4に関して前述したように、全反射やフレネル反射して反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射される。図10に表した矢印A26のように、反射光として構造体100の外部へ放射されたX線210は、多層膜反射ミラー310により検出器320に結像される。また、図10に表した矢印A28のように、透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210は、検出器320に結像される。
【0054】
検出器320は、反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射され結像したX線210の強度を検出する。そして、例えばX線導波管260や多層膜反射ミラー310や図示しない載置部などを移動させることで、スポットX線210aを構造体100上でスキャンさせる。つまり、X線導波管260およびスポットX線210aは、例えばプローブなどとしての機能を有する。
【0055】
このとき、図11に表したように、複数のスポットX線210aを構造体100上でスキャンさせると、スキャン時間およびパターン検査時間を短縮することができる。複数のスポットX線210aは、互いに隣り合う凹部130ではなく所定の間隔で離隔した凹部130にそれぞれ集光することがより好ましい。例えば、検出器320の分解能に応じて、スポットX線210aを約数μm程度の間隔で構造体100上に集光させる。これによれば、構造体100上および検出器320上にスポットX線210aをより確実に結像させることができる。
【0056】
図2に関して前述したように、凹部130に欠陥が存在する場合に反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、凹部130に欠陥が存在しない場合に反射光あるいは透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度と、の間には差異がある。検出器320は、その差異を検出することで欠陥の有無を検査することができる。これにより、微細化あるいはハイアスペクト化された凹部130を有する構造体100に対するパターン検査の精度を向上させることができる。
【0057】
なお、図9に関して前述したように、反射光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度を検出する検出器320と、透過光として構造体100の外部へ放射されたX線210の強度を検出する検出器320と、のいずれか一方が設けられていてもよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10 パターン検査装置、 11 チャンバー、 20 パターン検査装置、 100 構造体、 110 半導体、 111 欠陥、 120 誘電体、 130 凹部、 131 底面、 200 EUV光源、 210 X線、 220 EUV、 210a スポットX線、 250 X線源、 260 X線導波管、 310 多層膜反射ミラー、 320 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体が有する凹部にX線または真空紫外線を集光させ、
前記集光させた前記X線または前記真空紫外線を前記凹部の内部において伝播させて前記凹部の底面に到達させ、
前記底面で反射または前記底面を透過した前記X線または前記真空紫外線の強度を検出することにより前記凹部の欠陥の有無を検査することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項2】
前記X線または前記真空紫外線を導波路効果により前記伝播させることを特徴とする請求項1記載のパターン検査方法。
【請求項3】
フレネルゾーンプレート、金属反射ミラー、多層膜反射ミラー、およびX線導波管の少なくともいずれかを用いて、前記X線または前記真空紫外線を前記集光させることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン検査方法。
【請求項4】
X線または真空紫外線を発生させる光源と、
前記光源から放射された前記X線または前記真空紫外線を構造体が有する凹部に集光させる集光素子と、
前記集光し前記凹部の内部において伝播して前記凹部の底面に到達し、前記底面で反射または前記底面を透過した前記X線または前記真空紫外線の強度を検出する検出器と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項5】
前記集光素子は、フレネルゾーンプレート、金属反射ミラー、多層膜反射ミラー、およびX線導波管の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4記載のパターン検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−2910(P2013−2910A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133288(P2011−133288)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】