説明

パターン検査装置及びパターン検査方法

【目的】マスクに形成されたパターン自体の位置精度の均質性を検査可能な検査装置を提供する。
【構成】検査装置100は、離散的な領域を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、対応する参照画像中の図形の寸法との間での第1の位置ずれ量を用いて、被検査領域全体における第1の位置ずれ量マップを作成するマップ作成回路131と、検査領域全体を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第2の位置ずれ量を用いて、被検査領域全体における第2の位置ずれ量マップを作成するマップ作成回路132と、第2の位置ずれ量マップを、第1の位置ずれ量マップと第2の位置ずれ量マップとの第1の差分マップで補正した第3の位置ずれ量マップに定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する判定回路156と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査装置及びパターン検査方法に関する。例えば、照明光を照射して得られたパターン像の光学画像を設定データ等から作成した参照画像と比較することでパターンを検査する検査装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができる電子ビームを用いたパターン描画装置を用いる。かかるパターン描画装置を用いてウェハに直接パターン回路を描画することもある。或いは、電子ビーム以外にもレーザビームを用いて描画するレーザビーム描画装置の開発が試みられている。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査するパターン検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
検査手法としては、拡大光学系を用いてリソグラフィマスク等の試料上に形成されているパターンを所定の倍率で撮像した光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パターンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、パターン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die(ダイ−ダイ)検査」や、パターン設計されたCADデータをマスクにパターンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計パターンデータ)を検査装置に入力して、これをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database(ダイ−データベース)検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0006】
パターンの微細化が進む一方、パターン原版となるマスクを用いて、縮小投影露光装置でウェハにパターンを露光転写して回路形成するリソグラフィ技術が継続して使われている。そのため、ウェハの製造歩留まりを向上させるためにマスクのパターン欠陥や、露光転写時におけるプロセス諸条件の変動許容量(マージン)確保が厳しくなってきている。これまでは、主に形状欠陥の許容値を厳しくして、マスクパターンの寸法精度を高めることで、プロセス諸条件の変動マージンを吸収することが行われてきた。しかしながら、検査対象となるマスクの品質は、パターンを構成する個々の図形が設計寸法通りに形成されていることの他に、マスク全面でのパターンの位置精度や寸法誤差の均質性が求められるようになってきている。従来、マスクの面内均質性は、専用の測定器でマスクパターン内に適切な周期で配置してある十字マークの寸法位置を計測して、理想格子状であるべき各点座標の変動量を測定することで、伸縮誤差や平行ずれ、局所的な変動を把握して品質管理を行っていた。
【0007】
通常のマスク欠陥検査は、パターンの形状欠陥を検出する用途で設計されており、マスクパターン微細化に応じて検出すべき欠陥寸法も微細になっている。そのため、高倍率な検出光学系で検出する必要があり、マスク欠陥検査によるマスク全面の検査所要時間は例えば、数時間に及ぶようになってきた。マスクの欠陥検査の所要時間は、例えば、数時間に及び、かかる所要時間の間、被検査マスクに照射される検査光によるエネルギー蓄積による被検査マスクの熱膨張、或いは検査装置内部の気流の変動若しくは装置内の各種熱源によるステージ位置測長システムの測定誤差等によって、測定された結果から得られるパターンの位置や寸法がマスク面内で変動してしまうといった問題があった。その結果、マスク全面のパターンの位置精度や寸法誤差の均質性が劣化し、かかる均質性の劣化がマスクの品質精度にとって無視できないものとなってきている。かかる均質性の検査は、検査装置および被検査マスクの信頼性を保障するための課題となっていた
【0008】
パターンの寸法誤差については、例えば、測定された光学画像からパターンの両端のエッジ部分を認識して、ペアのエッジ間の距離を計算して線幅寸法を測定し、同様に、参照データの画像からパターンの両端のエッジ部分を認識して、ペアのエッジ間の距離を計算して線幅寸法を測定し、両者の差を演算することで寸法誤差を求めることができる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ここで得られた寸法誤差は、上述した被検査マスクに照射される検査光によるエネルギー蓄積による被検査マスクの熱膨張、或いは検査装置内部の気流の変動若しくは装置内の各種熱源によるステージ位置測長システムの測定誤差等といった検査装置に起因した誤差が含まれている。そのため、マスクに形成されたパターンの寸法誤差なのか、検査装置に起因した寸法誤差なのかがわからないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3824542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、検査対象となるマスクの品質は、パターンを構成する個々の図形が設計寸法通りに形成されていることの他に、マスク全面でのパターンの位置精度や寸法誤差の均質性が求められる。一方、被検査マスクに照射される検査光によるエネルギー蓄積による被検査マスクの熱膨張、或いは検査装置内部の気流の変動若しくは装置内の各種熱源によるステージ位置測長システムの測定誤差等によって、測定された結果から得られるパターンの位置や寸法がマスク面内で変動してしまうといった問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、かかる問題点を克服し、マスクに形成されたパターン自体の位置精度と寸法誤差の少なくとも一方の均質性を検査可能な検査装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のパターン検査装置は、
複数の図形パターンが形成された被検査試料を載置する、移動可能なステージと、
検査光を発生する光源と、
ステージと相対移動しながら、検査光を用いて被検査試料に形成された複数の図形パターンの光学画像を撮像するセンサと、
被検査試料の被検査領域全体を短冊状に仮想分割した複数の小領域のうち離散的な複数の小領域について、離散的な各小領域間に位置する領域については撮像せずにセンサとステージとを相対移動させながら、離散的な複数の小領域おける光学画像を順に取得するように制御する第1の画像取得制御部と、
センサとステージとを相対移動させながら、被検査試料の被検査領域全体について小領域毎に順に光学画像を取得するように制御する第2の画像取得制御部と、
離散的な複数の小領域を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第1の位置ずれ量を演算する第1の位置ずれ量演算部と、
離散的な複数の小領域における各第1の位置ずれ量を用いて、被検査領域全体における第1の位置ずれ量マップを作成する第1の位置ずれ量マップ作成部と、
検査領域全体を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第2の位置ずれ量を演算する第2の位置ずれ量演算部と、
第2の位置ずれ量を用いて、被検査領域全体における第2の位置ずれ量マップを作成する第2の位置ずれ量マップ作成部と、
第1の位置ずれ量マップと第2の位置ずれ量マップとの差分を演算して、第1の位置ずれ差分マップを作成する第1の位置ずれ差分マップ作成部と、
第2の位置ずれ量マップと第1の位置ずれ差分マップとの差分を演算して、第3の位置ずれ量マップを作成する第3の位置ずれ量マップ作成部と、
第3の位置ずれ量マップに定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する位置ずれ量判定部と、
位置ずれ量についての判定結果を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、離散的な複数の小領域を撮像した際における、それぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第1の寸法誤差量を演算する第1の寸法誤差量演算部と、
離散的な複数の小領域における各第1の寸法誤差量を用いて、被検査領域全体における第1の寸法誤差量マップを作成する第1の寸法誤差量マップ作成部と、
検査領域全体を撮像した際における、それぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第2の寸法誤差量を演算する第2の寸法誤差量演算部と、
第2の寸法誤差量を用いて、被検査領域全体における第2の寸法誤差量マップを作成する第2の寸法誤差量マップ作成部と、
第1の寸法誤差量マップと第2の寸法誤差量マップとの差分を演算して、第1の寸法誤差差分マップを作成する第1の寸法誤差差分マップ作成部と、
第2の寸法誤差量マップと第1の寸法誤差差分マップとの差分を演算して、第3の寸法誤差量マップを作成する第3の寸法誤差量マップ作成部と、
第3の寸法誤差量マップに定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する寸法誤差量判定部と、
をさらに備え、
出力部は、寸法誤差量についての判定結果を出力すると好適である。
【0014】
また、被検査試料の被検査領域は所定の方向に短冊状に複数のストライプ領域に仮想分割され、
離散的な複数の小領域として、複数のストライプ領域のうち、それぞれ均等に離れたストライプ領域が用いられると好適である。
【0015】
或いは、被検査試料の被検査領域は所定の方向に短冊状に複数のストライプ領域に仮想分割され、
複数のストライプ領域のうち、それぞれ所定の間隔で均等に離れた各ストライプ領域内にそれぞれ図形パターンが存在するかどうかを判定する判定部と、
判定されたすべてのストライプ領域に図形パターンが存在する場合には、判定されたすべてのストライプ領域を離散的な複数の小領域として設定し、判定された一部或いは全部のストライプ領域に図形パターンが存在しない場合には、図形パターンが存在するストライプ領域と、図形パターンが存在しないストライプ領域の代わりとなる当該図形パターンが存在しないストライプ領域に最も近い図形パターンが存在するストライプ領域とを離散的な複数の小領域として設定する設定部と、
をさらに備えても好適である。数回程度、代わりとなるストライプ領域を探索しても図形パターンの存在が確認できなかった場合には、当該離散的な領域の演算は行わないことにして、他のストライプ領域の判定に移ることは、有限の時間で全体処理を進めるためには好適である。
【0016】
本発明の一態様のパターン検査方法は、
複数の図形パターンが形成された被検査試料を載置するステージと相対移動しながら、光源から発生する検査光を用いて被検査試料に形成された複数の図形パターンの光学画像を撮像するセンサを用いて、被検査試料の被検査領域全体を短冊状に仮想分割した複数の小領域のうち離散的な複数の小領域について、離散的な各小領域間に位置する領域については撮像せずにセンサとステージとを相対移動させながら、離散的な複数の小領域おける光学画像を順に取得する工程と、
センサとステージとを相対移動させながら、被被検査試料の検査領域全体について小領域毎に順に光学画像を取得する工程と、
離散的な複数の小領域を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第1の位置ずれ量を演算する工程と、
離散的な複数の小領域における各第1の位置ずれ量を用いて、被検査領域全体における第1の位置ずれ量マップを作成する工程と、
被検査領域全体を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第2の位置ずれ量を演算する工程と、
第2の位置ずれ量を用いて、検査領域全体における第2の位置ずれ量マップを作成する工程と、
第1の位置ずれ量マップと第2の位置ずれ量マップとの差分を演算して、第1の位置ずれ差分マップを作成する工程と、
第2の位置ずれ量マップと第1の位置ずれ差分マップとの差分を演算して、第3の位置ずれ量マップを作成する工程と、
第3の位置ずれ量マップに定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する工程と、
位置ずれ量についての判定結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マスクに形成されたパターン自体の少なくとも位置精度の均質性を検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための概念図である。
【図3】実施の形態1における検査方法の要部工程の一部を示すフローチャート図である。
【図4】実施の形態1におけるプリスキャン領域の一例を示す概念図である。
【図5】図5は、実施の形態1におけるメッシュ領域に分割された被検査領域を説明するための概念図である。
【図6】実施の形態1におけるパターン位置とパターン寸法との一例を示す図である。
【図7】実施の形態1における検査方法の要部工程の他の一部を示すフローチャート図である。
【図8】実施の形態1における検査方法の要部工程の他の一部を示すフローチャート図である。
【図9】実施の形態1における検査方法の要部工程の他の一部を示すフローチャート図である。
【図10】ダイ−ダイ検査を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図1において、試料、例えばマスクの欠陥を検査する検査装置100は、光学画像取得部150と制御系回路160を備えている。光学画像取得部150は、光源103、XYθテーブル102、照明光学系170、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105(センサの一例)、センサ回路106、ストライプパターンメモリ123、レーザ測長システム122、及びオートローダ130を備えている。制御系回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、バス121を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、プリンタ119、エッジ判定回路120、位置ずれ演算回路125,126、寸法誤差量演算回路124,128、マップ作成回路131,132,134,136、プリスキャン領域判定回路140、設定回路142、プリスキャン制御回路144、フルスキャン制御回路146、差分マップ作成回路152,153,154,155、及び判定回路156,158に接続されている。また、センサ回路106は、ストライプパターンメモリ123に接続され、ストライプパターンメモリ123は、比較回路108、およびエッジ判定回路120に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。XYθテーブル102は、ステージの一例となる。ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0020】
検査装置100では、光源103、XYθテーブル102、照明光学系170、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、及びセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。また、XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。
【0021】
複数の図形パターンが形成された被検査試料となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、フォトマスク101に形成されたパターンには、適切な光源103によって紫外域以下の波長の光(検査光)が照明光学系170を介して照射される。フォトマスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像し、入射する。フォトダイオードアレイ105として、例えば、TDI(タイム・ディレイ・インテグレーション)センサ等を用いると好適である。
【0022】
図2は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための概念図である。被検査領域22は、図2に示すように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20(小領域、およびストライプ領域の一例)に仮想的に分割される。そして、その分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御される。XYθテーブル102の移動によってフォトダイオードアレイ105が相対的にX方向に連続移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、図2に示されるようなスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。言い換えれば、センサの一例となるフォトダイオードアレイ105は、XYθテーブル102(ステージ)と相対移動しながら、検査光を用いてフォトマスク101に形成された複数の図形パターンの光学画像を撮像する。実施の形態1では、1つの検査ストライプ20における光学画像を撮像した後、スキャン幅WずつY方向にずれた位置で今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。すなわち、往路と復路で逆方向に向かうフォワード(FWD)−バックフォワード(BWD)の方向で撮像を繰り返す。
【0023】
ここで、撮像の方向は、フォワード(FWD)−バックフォワード(BWD)の繰り返しに限るものではない。各検査ストライプ20について一方の方向から撮像してもよい。例えば、FWD−FWDの繰り返しでもよい。或いは、BWD−BWDの繰り返しでもよい。図2の例では、例えば、x方向をFWD方向、−x方向をBWDとして示している。
【0024】
フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105の各受光素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。そして、検査ストライプ20毎にストライプパターンメモリ123に画素データが格納される。その後、画素データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータと共に比較回路108およびエッジ判定回路120に送られる。測定データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0025】
上述したように、マスクの欠陥検査の所要時間は、数時間、例えば2〜6時間に及び、かかる所要時間の間、被検査マスクとなるフォトマスク101に照射される検査光によるエネルギー蓄積によるフォトマスク101の熱膨張が起きてしまう。或いは/及び検査装置100内部の気流の変動若しくは検査装置100内の各種熱源によるステージ位置を測長するレーザ測長システム122の測定誤差等によって、測定された結果から得られるパターンの位置や寸法がマスク面内で変動してしまうといった問題があった。その結果、マスク全面のパターンの位置精度や寸法誤差の均質性が劣化し、かかる均質性の劣化がマスクの品質精度にとって無視できないものとなってきている。かかる問題に対して、マスクの欠陥検査にかかる動作を短時間にできれば、検査装置100に起因した上述した変動を無視できる程度に小さくすることができる。言い換えれば、温度変化の影響を受けない状態で検査を行うことができる。一方、短時間でフォトマスク101の被検査領域22全面の画像を取得することは困難である。そこで、実施の形態1では、フォトマスク101の被検査領域22全面の画像を取得する場合よりも短時間で、フォトマスク101の被検査領域22のうち、離散的な複数の領域についてだけ、まずは、画像を取得する。そして、得られた離散的な複数の領域での画像を使って、検査装置100に起因した上述した変動分を補正する。
【0026】
図3は、実施の形態1における検査方法の要部工程の一部を示すフローチャート図である。図3では、実施の形態1における検査方法の一連の工程のうち、プリスキャンによる位置ずれ量と寸法誤差とを測定する各工程について示している。図3において、実施の形態1におけるプリスキャンによる位置ずれ量と寸法誤差とを測定する方法は、プリスキャン領域判定工程(S102)と、プリスキャン領域設定工程(S104)と、離散的プリスキャン工程(S106)と、離散的参照画像作成工程(S108)と、パターンエッジ判定工程(S110)と、位置ずれ量演算工程(S112)と、位置ずれ量マップ作成工程(S114)と、寸法誤差量演算工程(S116)と、寸法誤差量マップ作成工程(S118)という一連の工程を実施する。
【0027】
プリスキャン領域判定工程(S102)として、プリスキャン領域判定回路140は、被検査領域22が仮想分割された複数の検査ストライプ20のうち、それぞれ所定の間隔で均等に離れた各検査ストライプ20内にそれぞれ図形パターンが存在するかどうかを判定する。プリスキャン領域判定回路140は、判定部の一例である。
【0028】
図4は、実施の形態1におけるプリスキャン領域の一例を示す概念図である。図4において、フォトマスク101の被検査領域22は、上述したように、複数の検査ストライプ20に仮想分割される。そして、これらの複数の検査ストライプ20の中からプリスキャンを行うプリスキャン領域30を設定する。プリスキャン領域30は、これら複数の検査ストライプ20のうち、それぞれ均等に離れたいくつかの検査ストライプ20が用いられることが望ましい。例えば、被検査領域22をy方向にn等分(例えば、10等分)して、y方向に向かってn等分された各領域の最初の検査ストライプ20が用いられると好適である。このような離散的な複数の検査ストライプ20が用いられると好適である。特に、各プリスキャン領域30が均等に離れるように設定するとなおよい。各プリスキャン領域30が均等に離れることで、検査領域の偏りを抑制できる。その結果、より正確な後述するマップを得ることができる。但し、せっかく、プリスキャン領域30となった検査ストライプ20内に、図形パターンが形成されていない場合もあり得る。図形パターンが形成されていない場合、撮像してもパターン像が得られないので、この検査ストライプ20をプリスキャン領域30としても、必要な情報が得られない。そこで、まず、プリスキャン領域判定回路140は、被検査領域22が仮想分割された複数の検査ストライプ20のうち、それぞれ所定の間隔で均等に離れた各検査ストライプ20内にそれぞれ図形パターンが存在するかどうかを判定する。図形パターンが存在するかどうかを確認する方法として、例えば、当該ストライプの各メッシュ領域で、後述するパターンエッジ判定工程(S110)におけるパターンエッジ対を判定(検出)する処理と同様の処理を行い、検出されるパターンエッジ対が所定の個数に達しない場合に図形パターンが存在しないと判断するように構成すると好適である。但し、これに限るものではない。
【0029】
プリスキャン領域設定工程(S104)として、設定回路142は、判定されたすべての検査ストライプ20に図形パターンが存在する場合には、判定されたすべての検査ストライプ20を離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)として設定する。一方、判定された一部或いは全部の検査ストライプ20に図形パターンが存在しない場合には、図形パターンが存在しない検査ストライプ20の代わりに、当該図形パターンが存在しない検査ストライプ20に最も近い図形パターンが存在する検査ストライプ20を探索して設定する。言い換えれば、図形パターンが存在する検査ストライプ20と、図形パターンが存在しない検査ストライプ20の代わりとなる当該図形パターンが存在しない検査ストライプ20に最も近い図形パターンが存在する検査ストライプ20とを離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)として設定する。設定回路142は、設定部の一例である。図形パターンが存在する検査ストライプ20を設定することでパターンの光学画像を得ることができる。
【0030】
離散的プリスキャン工程(S106)として、プリスキャン制御回路144は、設定された離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)における光学画像(測定データ)を順に取得するように各機器を制御する。その際、設定された各プリスキャン領域30の間に位置する検査ストライプ20については撮像せずにフォトダイオード105とXYθテーブル102とを相対移動させる。複数のプリスキャン領域30について、例えば、往路と復路で逆方向に向かうFWD−BWDの方向で撮像を繰り返す。フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105の各受光素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。そして、検査ストライプ20(プリスキャン領域30)毎にストライプパターンメモリ123に画素データが一時的に格納される。これにより、設定されたすべてのプリスキャン領域30の撮像が終了するまでの時間を短縮化できる。よって、被検査領域22全面について、各検査ストライプ20を順に撮像する場合に比べて、大幅に撮像時間を短縮できる。その結果、フォトマスク101に照射される検査光によるエネルギーの蓄積量が低減し、フォトマスク101の熱膨張を抑制できる。また、検査装置100内の各種熱源から放出される熱量を低減できる。よって、検査装置100内部の気流の変動若しくは検査装置100内の各種熱源から放出される熱に起因するステージ位置の測長誤差を抑制できる。言い換えれば、検査装置100に起因する測定誤差を低減できる。プリスキャン制御回路144は、第1の画像取得制御部の一例である。その後、画素データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータと共にエッジ判定回路120に送られる。測定データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0031】
離散的参照画像作成工程(S108)として、参照回路112は、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して、設定された離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)における設計データを読み出す。そして、読み出されたフォトマスク101の設計データを2値ないしは多値のイメージデータに変換して、参照データ(参照画像)を作成する。参照データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。そして、参照データは、エッジ判定回路120に送られる。
【0032】
図5は、実施の形態1におけるメッシュ領域に分割された被検査領域を説明するための概念図である。フォトマスク101の被検査領域22は、所定の量子化寸法のグリッドによってメッシュ状の複数のメッシュ領域50に仮想分割される。メッシュ領域50のサイズは、検査ストライプ20の幅よりも十分小さいことが望ましい。言い換えれば、各検査ストライプ20は、それぞれ複数のメッシュ領域50によって分割された状態になる。
【0033】
パターンエッジ判定工程(S110)として、エッジ判定回路120は、メッシュ領域毎に、センサより得られた光学画像と参照画像のそれぞれの内部に配置されるパターン像から、X方向、Y方向、及び斜め45度(45度、135度、225度、及び315度を含む)方向にパターン(図形)の端部を割り出す。そして、端部を構成するパターンエッジ(辺)と対になるパターンエッジ(辺)を判定する。このようにして、エッジ判定回路120は、パターンエッジ対を判定(検出)する。言い換えれば、各図形の寸法を決定する両端の辺を判定し、検出する。
【0034】
位置ずれ量演算工程(S112)として、位置ずれ演算回路125は、離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での位置ずれ量(第1の位置ずれ量)を演算する。位置ずれ演算回路125は、第1の位置ずれ量演算部の一例である。
【0035】
図6は、実施の形態1におけるパターン位置とパターン寸法との一例を示す図である。図6(a)では、メッシュ領域内の一部の領域40内に配置されるパターンの上面図が示されている。図6(b)では、図6(a)のパターンに対応するドーズプロファイルの一例が示されている。具体的には、まず、位置ずれ演算回路125は、メッシュ領域毎に、光学画像と参照画像とで、それぞれ判定されたパターンエッジ対42,43(或いは、パターンエッジ対44,45)間の中心位置を算出する。かかるエッジ間の中心位置をパターンの位置とする。次に、光学画像から得られたパターンの位置と参照画像から得られた対応するパターンの位置との差分を演算する。その差が、位置ずれ量(第1の位置ずれ量)として演算される。通常、各メッシュ領域内には、複数のパターンが配置されるので、かかる位置ずれ量も複数のパターンの数に応じてそれぞれ算出される。そこで、実施の形態1では、各算出値を統計処理し、最頻値(モード値)をそのメッシュ領域50を代表する位置ずれ量(第1の位置ずれ量)とすればよい。
【0036】
位置ずれ量マップ作成工程(S114)として、マップ作成回路131は、離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)における各位置ずれ量(第1の位置ずれ量)を用いて、被検査領域22全体における位置ずれ量マップ(第1の位置ずれ量マップ)を作成する。マップ作成回路131は、第1の位置ずれ量マップ作成部の一例である。ここでは、離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)の各メッシュ領域の値しかデータを持っていない。そこで、マップ作成回路131は、得られているメッシュ領域値を多項式で近似(フィッティング)して、データの無いその他のメッシュ領域の値も推定する。そして、データの有るメッシュ領域では、それぞれの対応するメッシュ領域値が入力される。一方、データの無いその他のメッシュ領域では、推定された値が入力される。このようにして、被検査領域22全体における位置ずれ量マップ(第1の位置ずれ量マップ)が作成される。ここでは、多項式を使ったフィッティングを行っているがこれに限るものではなく、線形補間によってデータの無いその他のメッシュ領域の値を補間してもよい。作成された位置ずれ量マップ(第1の位置ずれ量マップ、位置ずれ量マップA)は、例えば、磁気ディスク装置109に格納(記憶)される。
【0037】
寸法誤差量演算工程(S116)として、寸法誤差量演算回路124は、離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)を撮像した際における、それぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での寸法誤差量(第1の寸法誤差量)を演算する。寸法誤差量演算回路124は、第1の寸法誤差量演算部の一例である。具体的には、まず、寸法誤差量演算回路124は、メッシュ領域毎に、光学画像と参照画像とで、それぞれ判定されたパターンエッジ対42,43(或いは、パターンエッジ対44,45)間の距離を算出する。かかるエッジ間の距離をパターン寸法とする。次に、光学画像から得られたパターン寸法と参照画像から得られた対応するパターン寸法との差分を演算する。その差が、寸法誤差量(第1の寸法誤差量)として演算される。通常、各メッシュ領域内には、複数のパターンが配置されるので、かかる寸法誤差量も複数のパターンの数に応じてそれぞれ算出される。そこで、実施の形態1では、各算出値を統計処理し、最頻値(モード値)をそのメッシュ領域50を代表する寸法誤差量(第1の寸法誤差量)とすればよい。
【0038】
寸法誤差量マップ作成工程(S118)として、マップ作成回路132は、離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)における各寸法誤差量(第1の寸法誤差量)を用いて、被検査領域22全体における寸法誤差量マップ(第1の寸法誤差量マップ)を作成する。マップ作成回路132は、第1の寸法誤差量マップ作成部の一例である。ここでは、離散的な複数の検査ストライプ20(プリスキャン領域30)の各メッシュ領域の値しかデータを持っていない。そこで、マップ作成回路132は、得られているメッシュ領域値を多項式で近似(フィッティング)して、データの無いその他のメッシュ領域の値も推定する。そして、データの有るメッシュ領域では、それぞれの対応するメッシュ領域値が入力される。一方、データの無いその他のメッシュ領域では、推定された値が入力される。このようにして、被検査領域22全体における寸法誤差量マップ(第1の寸法誤差量マップ)が作成される。ここでは、多項式を使ったフィッティングを行っているがこれに限るものではなく、線形補間によってデータの無いその他のメッシュ領域の値を補間してもよい。作成された寸法誤差量マップ(第1の寸法誤差量マップ、寸法誤差量マップA)は、例えば、磁気ディスク装置109に格納(記憶)される。
【0039】
図7は、実施の形態1における検査方法の要部工程の他の一部を示すフローチャート図である。図7では、実施の形態1における検査方法の一連の工程のうち、フルスキャンによる位置ずれ量と寸法誤差とを測定する各工程およびパターン欠陥検査の工程とについて示している。図7において、実施の形態1におけるフルスキャンによる位置ずれ量と寸法誤差とを測定する方法は、フルスキャン工程(S206)と、参照画像作成工程(S208)と、パターンエッジ判定工程(S210)と、位置ずれ量演算工程(S212)と、位置ずれ量マップ作成工程(S214)と、寸法誤差量演算工程(S216)と、寸法誤差量マップ作成工程(S218)という一連の工程を実施する。また、パターン欠陥検査方法は、上述したフルスキャン工程(S206)及び参照画像作成工程(S208)と、画素比較工程(S220)という一連の工程を実施する。
【0040】
フルスキャン工程(S206)として、フルスキャン制御回路146は、フォトダイオードアレイ105とXYθテーブル102とを相対移動させながら、フォトマスク101の被検査領域22全体について検査ストライプ20毎に順に光学画像を取得するように各機器を制御する。フルスキャン制御回路146は、第2の画像取得制御部の一例である。例えば、往路と復路で逆方向に向かうFWD−BWDの方向で撮像を繰り返す。フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105の各受光素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。そして、検査ストライプ20毎にストライプパターンメモリ123に画素データが一時的に格納される。その後、画素データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータと共にエッジ判定回路120および比較回路108に送られる。測定データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。かかるフルスキャンで得られた測定データは、検査装置100内の温度上昇による位置ずれおよび寸法誤差を含んでいることになる。
【0041】
参照画像作成工程(S208)として、参照回路112は、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して、被検査領域22全体における各検査ストライプ20について順に設計データを読み出す。そして、読み出されたフォトマスク101の設計データを2値ないしは多値のイメージデータに変換して、参照データ(参照画像)を作成する。参照データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。そして、参照データは、エッジ判定回路120および比較回路108に送られる。
【0042】
パターンエッジ判定工程(S210)として、エッジ判定回路120は、上述したメッシュ領域毎に、センサより得られた光学画像と参照画像のそれぞれの内部に配置されるパターン像から、X方向、Y方向、及び斜め45度(45度、135度、225度、及び315度を含む)方向にパターン(図形)の端部を割り出す。そして、端部を構成するパターンエッジ(辺)と対になるパターンエッジ(辺)を判定する。このようにして、エッジ判定回路120は、パターンエッジ対を判定(検出)する。言い換えれば、各図形の寸法を決定する両端の辺を判定し、検出する。
【0043】
位置ずれ量演算工程(S212)として、位置ずれ演算回路126は、被検査領域22全体を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での位置ずれ量(第2の位置ずれ量)を演算する。位置ずれ演算回路126は、第2の位置ずれ量演算部の一例である。位置ずれ量の演算の仕方は、上述したプリスキャンの場合と同様である。
【0044】
位置ずれ量マップ作成工程(S214)として、マップ作成回路134は、位置ずれ量(第2の位置ずれ量)を用いて、被検査領域22全体における位置ずれ量マップ(第2の位置ずれ量マップ)を作成する。マップ作成回路134は、第2の位置ずれ量マップ作成部の一例である。ここでは、被検査領域22全体における検査ストライプ20の各メッシュ領域の値のデータを持っている。よって、演算された値をそのまま用いればよい。作成された位置ずれ量マップ(第2の位置ずれ量マップ、位置ずれ量マップB)は、例えば、磁気ディスク装置109に格納(記憶)される。
【0045】
寸法誤差量演算工程(S216)として、寸法誤差量演算回路128は、被検査領域22全体を撮像した際における、それぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での寸法誤差量(第2の寸法誤差量)を演算する。寸法誤差量演算回路128は、第2の寸法誤差量演算部の一例である。寸法誤差量の演算の仕方は、上述したプリスキャンの場合と同様である。
【0046】
寸法誤差量マップ作成工程(S218)として、マップ作成回路136は、寸法誤差量(第2の寸法誤差量)を用いて、被検査領域22全体における寸法誤差量マップ(第2の寸法誤差量マップ)を作成する。マップ作成回路136は、第2の寸法誤差量マップ作成部の一例である。ここでは、被検査領域22全体における検査ストライプ20の各メッシュ領域の値のデータを持っている。よって、演算された値をそのまま用いればよい。作成された寸法誤差量マップ(第2の寸法誤差量マップ、寸法誤差量マップB)は、例えば、磁気ディスク装置109に格納(記憶)される。
【0047】
また、画素比較工程(S220)として、比較回路108(検査部)は、検査ストライプ20毎にストライプパターンメモリ123から測定データ(光学画像)を入力する。他方、参照回路112から参照データ(参照画像)を入力する。
【0048】
そして、測定データと参照データとの位置合わせを行なう。そして、測定データの各画素データと参照データの参照画素データとを所定のアルゴリズムに従って画素毎に比較し、欠陥の有無を判定する。例えば、測定データと参照データとにおける画素値の差が閾値内かどうかで判定する。そして、比較された結果は出力される。比較された結果は、例えば、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119に出力される。或いは、外部に出力されても構わない。
【0049】
図8は、実施の形態1における検査方法の要部工程の他の一部を示すフローチャート図である。図8では、実施の形態1における検査方法の一連の工程のうち、位置ずれ量取得後における位置ずれ量の検査方法の各工程について示している。図8において、位置ずれ量取得後における位置ずれ量の検査方法は、差分マップ作成工程(S302)と、差分マップ作成工程(S304)と、判定工程(S306)という一連の工程を実施する。
【0050】
差分マップ作成工程(S302)として、差分マップ作成回路152は、プリスキャンで得られた位置ずれ量マップ(第1の位置ずれ量マップ)とフルスキャンで得られた位置ずれ量マップ(第2の位置ずれ量マップ)との差分を演算して、位置ずれ差分マップ(第1の位置ずれ差分マップ、位置ずれ差分マップA)を作成する。差分マップ作成回路152は、第1の位置ずれ差分マップ作成部の一例である。かかる位置ずれ差分マップ(第1の位置ずれ差分マップ、位置ずれ差分マップA)では、フォトマスク101に照射される検査光によるエネルギー蓄積によるフォトマスク101の熱膨張、或いは/及び検査装置100内部の気流の変動若しくは検査装置100内の各種熱源によるステージ位置を測長するレーザ測長システム122の測定誤差等、検査装置100に起因した上述した変動分が表されている。言い換えれば、検査装置100の温度変化の影響による変動分が表されている。作成された位置ずれ差分マップ(第1の位置ずれ差分マップ、位置ずれ差分マップA)は、例えば、磁気ディスク装置109に格納(記憶)される。
【0051】
差分マップ作成工程(S304)として、差分マップ作成回路153は、フルスキャンで得られた位置ずれ量マップ(第2の位置ずれ量マップ)と位置ずれ差分マップ(第1の位置ずれ差分マップ、位置ずれ差分マップA)との差分を演算して、補正された位置ずれ量マップ(第3の位置ずれ量マップ、位置ずれ量マップC)を作成する。差分マップ作成回路153は、第3の位置ずれ量マップ作成部の一例である。作成された補正済み位置ずれ量マップ(第3の位置ずれ量マップ、位置ずれ量マップC)では、フルスキャンで得られた位置ずれ量マップから検査装置100の温度変化等の装置内の環境変動の影響による変動分を除いた位置ずれ量が定義される。言い換えれば、フォトマスク101に形成されたパターン自体の位置ずれ量が示される。作成された位置ずれ量マップ(第3の位置ずれ量マップ、位置ずれ量マップC)は、例えば、磁気ディスク装置109に格納(記憶)される。
【0052】
判定工程(S306)として、判定回路156は、位置ずれ量マップ(第3の位置ずれ量マップ、位置ずれ量マップC)に定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する。判定回路156は、位置ずれ量判定部の一例である。そして、位置ずれ量についての判定結果は出力される。判定結果は、例えば、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119に出力される。或いは、外部に出力されても構わない。特に、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119では、判定結果を表示することによってユーザへ視覚的に出力する。は、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119は出力部の一例となる。位置ずれ量マップ(第3の位置ずれ量マップ、位置ずれ量マップC)に定義される各マップ値が許容値内であれば、許容マスクと判定できる。他方、各マップ値のいずれかが許容値を超えていれば、NGマスクと判定できる。言い換えれば、位置ずれ量について面内均一性が許容範囲外であると判定できる。かかるNGマスクは、たとえ画素比較でパターン欠陥が許容内であった場合でも、NGマスクとして評価される。
【0053】
図9は、実施の形態1における検査方法の要部工程の他の一部を示すフローチャート図である。図9では、実施の形態1における検査方法の一連の工程のうち、寸法誤差量取得後における寸法誤差量の検査方法の各工程について示している。図9において、寸法誤差量取得後における寸法誤差量の検査方法は、差分マップ作成工程(S312)と、差分マップ作成工程(S314)と、判定工程(S316)という一連の工程を実施する。
【0054】
差分マップ作成工程(S312)として、差分マップ作成回路154は、プリスキャンで得られた寸法誤差量マップ(第1の寸法誤差量マップ)とフルスキャンで得られた寸法誤差量マップ(第2の寸法誤差量マップ)との差分を演算して、寸法誤差差分マップ(第1の寸法誤差差分マップ、寸法誤差差分マップA)を作成する。差分マップ作成回路154は、第1の寸法誤差差分マップ作成部の一例である。かかる寸法誤差差分マップ(第1の寸法誤差差分マップ、寸法誤差差分マップA)では、フォトマスク101に照射される検査光によるエネルギー蓄積によるフォトマスク101の熱膨張、或いは/及び検査装置100内部の気流の変動若しくは検査装置100内の各種熱源によるステージ位置を測長するレーザ測長システム122の測定誤差等、検査装置100に起因した上述した変動分が表されている。言い換えれば、検査装置100の温度変化の影響による変動分が表されている。作成された寸法誤差差分マップ(第1の寸法誤差差分マップ、寸法誤差差分マップA)は、例えば、磁気ディスク装置109に格納(記憶)される。
【0055】
差分マップ作成工程(S314)として、差分マップ作成回路155は、フルスキャンで得られた寸法誤差量マップ(第2の寸法誤差量マップ)と寸法誤差差分マップ(第1の寸法誤差差分マップ、寸法誤差差分マップA)との差分を演算して、補正された寸法誤差量マップ(第3の寸法誤差量マップ、寸法誤差量マップC)を作成する。差分マップ作成回路155は、第3の寸法誤差量マップ作成部の一例である。作成された補正済み寸法誤差量マップ(第3の寸法誤差量マップ、寸法誤差量マップC)では、フルスキャンで得られた寸法誤差量マップから検査装置100の温度変化等の装置内の環境変動の影響による変動分を除いた寸法誤差量が定義される。言い換えれば、フォトマスク101に形成されたパターン自体の寸法誤差量が示される。作成された寸法誤差量マップ(第3の寸法誤差量マップ、寸法誤差量マップC)は、例えば、磁気ディスク装置109に格納(記憶)される。
【0056】
判定工程(S316)として、判定回路158は、寸法誤差量マップ(第3の寸法誤差量マップ、寸法誤差量マップC)に定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する。判定回路156は、寸法誤差量判定部の一例である。そして、寸法誤差量についての判定結果は出力される。判定結果は、例えば、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119に出力される。或いは、外部に出力されても構わない。特に、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119では、判定結果を表示することによってユーザへ視覚的に出力する。は、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119は出力部の一例となる。寸法誤差量マップ(第3の寸法誤差量マップ、寸法誤差量マップC)に定義される各マップ値が許容値内であれば、許容マスクと判定できる。他方、各マップ値のいずれかが許容値を超えていれば、NGマスクと判定できる。言い換えれば、寸法誤差量について面内均一性が許容範囲外であると判定できる。かかるNGマスクは、たとえ画素比較でパターン欠陥が許容内であった場合でも、NGマスクとして評価される。
【0057】
以上のように、短時間であれば、上述した変動は無視できるほどの変化であることに着目し、マスク全面検査に先立って、マスク全面を短時間で離散的にプリスキャンして、温度変化の影響を受けない状態のパターン位置・寸法誤差分布データを採取する。そして、追ってマスク全面検査およびマスク全面のパターン位置ずれ・寸法誤差分布状況を採取し、これらの誤差分布は、先に採取済みの温度変化の影響を受けない状態の誤差分布データで補正すればよい。
【0058】
実施の形態1によれば、温度変化の影響を受けない状態の分布データでマスク全面検査に連動して採取するマスク全面のパターン位置ずれ・寸法誤差分布データを補正して、信頼性の高いマスクの面内誤差分布データを取得することができる。従来、別装置で計測する必要があったマスク面内均質性の測定が可能な検査装置および検査方法が提供される。
【0059】
ここで、上述したメッシュ領域は、検査装置の比較判定処理の過程で取り扱う適当な寸法のフレーム領域とするのが適切で、メッシュ寸法の一例としては、1辺が約30μmから50μm程度の矩形領域(正方形領域、或いは長方形領域)に設定すると好適である。1辺が200nmの正方形状のコンタクトホールパターンが500nmピッチで配置されていたとすると、30μm角の矩形領域には(約59個)=3481個存在することになる。一方、50nmの画素寸法でパターンを処理すると、200nm角のコンタクトホールのX方向端部の辺とY方向端部の辺は、理論上はそれぞれ4画素分、実際には、それぞれ2画素または3画素にわたってパターンエッジ対を構成する。よって、2画素または3画素にわたってパターン寸法算出およびパターン位置算出が可能である。パターンエッジ対におけるエッジ間で対となる画素の位置を特定し、パターン寸法算出においては画素間の距離を、パターン位置算出においては画素間のちょうど真中となる中間位置を演算すればよい。このため、コンタクトホールパターン1個につきXY各2点、計4点のパターンエッジ対計算が可能になる。よって、30μm角の矩形領域(フレーム領域)では3481×4=13924個のパターン位置、および線幅測定値が得られる。このように求まった位置ずれ量データと線幅寸法誤差データはメッシュ領域内で統計処理され、最も頻度が高い値(モード値)をそのメッシュ領域を代表とする位置ずれ値と線幅誤差値とすればよい。被検査領域22が例えば100mm角だとして、(X,Y)それぞれ20×20箇所〜100×100箇所程度の測定箇所があれば有意義なマップが作成できる。そのため、例えば、30μm角のメッシュ領域を設定した場合には、例えば、1〜5mm程度の間隔でメッシュ領域内の計算を実行すれば十分である。
【0060】
よって、フルスキャン時において、被検査領域22全面について得られた画像のすべてのメッシュ領域におけるパターン位置ずれ量と寸法誤差量を求めてもよいが、x方向およびy方向について、上述した、例えば、1〜5mm程度の間隔で離れたメッシュ領域内の計算を実行してもよい。被検査領域22が例えば100mm角だとして、被検査領域22を20〜100等分した座標に位置するメッシュ領域を計算対象としてもよい。言い換えれば、フルスキャン時において、検査ストライプ20の分割方向(y方向)について、被検査領域22を20〜100等分した座標に該当するか、該当しないを判別して、該当する検査ストライプ20についてパターン位置ずれ量と寸法誤差量を求めてもよい。そして、得られた値をマップ化することにより、被検査マスクの位置ずれ量マップ、寸法誤差量マップが得られる。
【0061】
また、フルスキャン時およびプリスキャン時の一方或いは両方において、撮像した検査ストライプ20内のメッシュ領域の中にもパターンエッジが含まれていないメッシュ領域が存在する場合がある。x方向およびy方向について、上述した、例えば、1〜5mm程度の間隔で離れたメッシュ領域内の計算を実行する際、かかるパターンエッジが含まれていないメッシュ領域が計算領域になる場合がある。その場合には、近傍に位置するパターンエッジが含まれているメッシュ領域を代わりに計算領域とすればよい。被検査領域22が例えば100mm角の場合、検査ストライプ20の長手方向(x方向)も100mmとなる。その場合、検査ストライプ20の長手方向を20〜100等分した座標に位置するメッシュ領域を計算対象とすればよい。そして、かかるピッチで計算するメッシュ領域のうち、パターンエッジが含まれていないメッシュ領域は、近傍に位置するパターンエッジが含まれているメッシュ領域を代わりとすればよい。
【0062】
また、撮像された検査ストライプ20(プリスキャン領域30)内の各メッシュ領域を計算する所要時間は、センサで撮像しながらステージ走行する所要時間に対してきわめて短時間である。そのため、プリスキャンにおいて、撮像する検査ストライプ20を間引いて走行しても、メッシュ領域内の計算時間によって律束しない。よって、プリスキャンにかかる時間は、フルスキャンに比べて短時間で済ますことができ、温度上昇等の装置内の環境変動の影響を受ける前にスキャンを終了できる。
【0063】
実施の形態1で得られた位置ずれ量マップ、寸法誤差量マップは,従来のマスクパターンの局所的な形状欠陥とは違ったマスク評価を判断する尺度になる。たとえ、従来のマスク形状検査で無欠陥と判断しても、本マップでマスク全面の均質性が悪いと判断した場合には、その被検査マスクは不良品と判断される。均質性が悪いと判断する目安は、マスク全面のパターンの位置ずれがピーク・トゥ・ピーク値で、例えば、20nmほどの誤差を生じている場合、あるいは、マスク全面の線幅誤差量が最大20nmを越える箇所がある場合に不良と判断する。
【0064】
また、判断の基準は上述した例ではナノメータ[nm]単位の数値で示したが、被検査マスクが用いられるデバイス・テクノロジーノードで決まる典型的な線幅寸法に対する比率(パーセント値指定)で許容面内均一性の基準を決める方法もある。例えば線幅許容値を線幅の10%とする方式である。デバイス・テクノロジーノードがハーフピッチ(hp)28nmとすると、4倍体マスク上の典型的な線幅:112nmの箇所の位置ずれ、線幅許容値は線幅の10%として、11.2nmで判定する。マスク上には様々な寸法のパターンがあるが、どのパターンにも10%を適用する。パターン寸法が大きい箇所では許容誤差寸法が大きく、細いパターンには、許容値も小さな値となる。
【0065】
このようにパターンの形状欠陥が無くても、マスク面内のパターン位置ずれ、線幅誤差が許容値を超えた場合には、そのマスクは不合格とすることで、従来に比べて一層高精度なマスク検査を実施できる。
【0066】
そして、実施の形態1において、パターンの形状欠陥が無く、かつ、パターン位置ずれ、及び線幅誤差の評価においても合格だったマスクは次の工程のウェハ露光に供される。ウェハ露光装置は原版マスクを例えば4分の1に縮小投影してウェハ焼付けを行う。最近のウェハ露光装置には光源形状が単一の点光源ではなく、輪帯や異方形状の光源を形成できるものが存在する。このような、光源形状を制御可能な露光装置に、実施の形態1で得られるマスク面内分布を測定した情報を入力すると、マスク面内の位置ずれ・線幅分布情報を相殺する光源の光量分布補正を掛けることができ、一層正確なウェハ露光像を得ることが可能になる。すなわち、マスク上のパターン線幅が細めに形成された領域に対応する露光光源光量を強めに、マスク上のパターン線幅が太めに形成された領域に対応する光源光量を弱めに制御することによって、ウェハ面に形成されるパターン線幅は、全面で一層均質な一定幅にすることができる。マスク上のパターン位置ずれに対しても、光源形状を制御可能な露光装置にて点光源の輝点位置を、パターンずれを相殺するよう偏心させるよう制御すれば、ウェハ面に形成されるパターン位置を設計どおりの理想位置・線幅となるように形成することができるようになる。
【0067】
このように、マスク検査が合格だったマスクであっても、許容範囲内のパターン位置ずれ、線幅誤差位置ずれ・線幅分布の情報を添えてウェハ転写工程で適切な補正を施すことができ、一層高精度なウェハパターンを形成できるようになる。
【0068】
さらに、マスク検査においてパターン位置ずれ、線幅誤差の判定がわずかに許容値オーバーで不合格になったマスクでも、パターン位置ずれ、線幅誤差位置ずれ・線幅分布の情報を添えてウェハ転写工程で適切な補正を施せば、設計どおりの理想位置・線幅となるように形成することができるようになり、不合格となるマスクを減らして、製造歩留まりを向上させることができるようになる。
【0069】
また、製造されたマスクのパターン位置ずれ、線幅誤差を生じる原因はマスク描画装置でパターンを描画する際のマスク描画装置の安定性やマスク製造プロセスの変動が考えられる。実施の形態1で得られたマスク面内分布マップが、複数のマスクで共通で再現性がある分布傾向がある場合には、描画装置でその傾向を相殺するよう補正を掛けることが考えられる。例えば、線幅が細めに形成されている領域には、描画のパターン線幅を予め太めに補正しておいたり、パターン位置ずれを生じる領域では、予め逆方向にパターンをシフトしておいたりする方法である。
【0070】
また、以上説明している本技術は、採取するマスクパターン像は、透過光により得られる像のほか、反射像でも演算可能であり、光リソグラフィ用のマスクのほか、EUV露光用の反射マスクの検査にも有効である。
【0071】
以上の説明において、「〜部」、或いは「〜回路」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。例えば、位置回路107、比較回路108、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、エッジ判定回路120、位置ずれ演算回路125,126、寸法誤差量演算回路124,128、マップ作成回路131,132,134,136、プリスキャン領域判定回路140、設定回路142、プリスキャン制御回路144、フルスキャン制御回路146、差分マップ作成回路152,153,154,155、及び判定回路156,158内の各回路等は、電気的回路で構成されていても良いし、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現してもよい。また電気的回路とソフトウェアの組み合わせで実現しても良い。
【0072】
また、上述した例では、ダイ−データベース検査を基にして、参照画像を設計データから作成した場合について説明したが、これに限るものではない。
【0073】
図10は、ダイ−ダイ検査を説明するための概念図である。図10において、フォトマスク101上には、同一の設計パターンで描画された複数のパターン領域10,12(被検査領域)が形成されている。そして、この2つのパターン領域10,12を合わせた全体が図2で示した複数の検査ストライプに仮想分割される。そして、光学画像取得部150によって、検査ストライプ毎に光学画像データ(測定データ)が取得される。そのため、1つの検査ストライプの測定データには、パターン領域10,12の両方の画像が含まれている。そして、測定されたパターン領域10,12の一方の画像を上述した光学画像とし、他方の画像を参照画像として、同様に、位置ずれ量、寸法誤差量を求めれば、ダイ−ダイ検査を基にして、実施の形態1を適用することができる。
【0074】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、以上の説明では、透過光学系とフォトマスク101の透過光を使った検査装置について説明したが、反射光学系とフォトマスク101の反射光を使った検査装置であっても本発明は有効である。
【0075】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、検査装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0076】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0077】
10,12 パターン領域
20 検査ストライプ
22 被検査領域
30 プリスキャン領域
50 メッシュ領域
100 検査装置
101 フォトマスク
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 フォトダイオードアレイ
106 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
112 参照回路
113 オートローダ制御回路
114 テーブル制御回路
115 磁気テープ装置
116 FD
117 CRT
118 パターンモニタ
119 プリンタ
120 エッジ判定回路
121 バス
122 レーザ測長システム
123 ストライプパターンメモリ
124,128 寸法誤差量演算回路
125,126 位置ずれ演算回路
130 オートローダ
131,132,134,136 マップ作成回路
140 プリスキャン領域判定回路
142 設定回路
144 プリスキャン制御回路
146 フルスキャン制御回路
150 光学画像取得部
152,153,154,155 差分マップ作成回路
156,158 判定回路
160 制御系回路
170 照明光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の図形パターンが形成された被検査試料を載置する、移動可能なステージと、
検査光を発生する光源と、
前記ステージと相対移動しながら、前記検査光を用いて前記被検査試料に形成された複数の図形パターンの光学画像を撮像するセンサと、
前記被検査試料の被検査領域全体を短冊状に仮想分割した複数の小領域のうち離散的な複数の小領域について、前記離散的な各小領域間に位置する領域については撮像せずに前記センサと前記ステージとを相対移動させながら、前記離散的な複数の小領域おける光学画像を順に取得するように制御する第1の画像取得制御部と、
前記センサと前記ステージとを相対移動させながら、前記被検査試料の被検査領域全体について小領域毎に順に光学画像を取得するように制御する第2の画像取得制御部と、
前記離散的な複数の小領域を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第1の位置ずれ量を演算する第1の位置ずれ量演算部と、
前記離散的な複数の小領域における各第1の位置ずれ量を用いて、被検査領域全体における第1の位置ずれ量マップを作成する第1の位置ずれ量マップ作成部と、
前記検査領域全体を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第2の位置ずれ量を演算する第2の位置ずれ量演算部と、
前記第2の位置ずれ量を用いて、被検査領域全体における第2の位置ずれ量マップを作成する第2の位置ずれ量マップ作成部と、
前記第1の位置ずれ量マップと前記第2の位置ずれ量マップとの差分を演算して、第1の位置ずれ差分マップを作成する第1の位置ずれ差分マップ作成部と、
前記第2の位置ずれ量マップと前記第1の位置ずれ差分マップとの差分を演算して、第3の位置ずれ量マップを作成する第3の位置ずれ量マップ作成部と、
前記第3の位置ずれ量マップに定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する位置ずれ量判定部と、
位置ずれ量についての判定結果を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記離散的な複数の小領域を撮像した際における、それぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第1の寸法誤差量を演算する第1の寸法誤差量演算部と、
前記離散的な複数の小領域における各第1の寸法誤差量を用いて、被検査領域全体における第1の寸法誤差量マップを作成する第1の寸法誤差量マップ作成部と、
前記検査領域全体を撮像した際における、それぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第2の寸法誤差量を演算する第2の寸法誤差量演算部と、
前記第2の寸法誤差量を用いて、被検査領域全体における第2の寸法誤差量マップを作成する第2の寸法誤差量マップ作成部と、
前記第1の寸法誤差量マップと前記第2の寸法誤差量マップとの差分を演算して、第1の寸法誤差差分マップを作成する第1の寸法誤差差分マップ作成部と、
前記第2の寸法誤差量マップと前記第1の寸法誤差差分マップとの差分を演算して、第3の寸法誤差量マップを作成する第3の寸法誤差量マップ作成部と、
前記第3の寸法誤差量マップに定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する寸法誤差量判定部と、
をさらに備え、
前記出力部は、寸法誤差量についての判定結果を出力することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記被検査試料の被検査領域は所定の方向に短冊状に複数のストライプ領域に仮想分割され、
前記離散的な複数の小領域として、複数のストライプ領域のうち、それぞれ均等に離れたストライプ領域が用いられることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン検査装置。
【請求項4】
前記被検査試料の被検査領域は所定の方向に短冊状に複数のストライプ領域に仮想分割され、
前記複数のストライプ領域のうち、それぞれ所定の間隔で均等に離れた各ストライプ領域内にそれぞれ図形パターンが存在するかどうかを判定する判定部と、
判定されたすべてのストライプ領域に図形パターンが存在する場合には、判定されたすべてのストライプ領域を前記離散的な複数の小領域として設定し、判定された一部或いは全部のストライプ領域に図形パターンが存在しない場合には、図形パターンが存在するストライプ領域と、図形パターンが存在しないストライプ領域の代わりとなる当該図形パターンが存在しないストライプ領域に最も近い図形パターンが存在するストライプ領域とを前記離散的な複数の小領域として設定する設定部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のパターン検査装置。
【請求項5】
複数の図形パターンが形成された被検査試料を載置するステージと相対移動しながら、光源から発生する検査光を用いて前記被検査試料に形成された複数の図形パターンの光学画像を撮像するセンサを用いて、前記被検査試料の検査領域全体を短冊状に仮想分割した複数の小領域のうち離散的な複数の小領域について、前記離散的な各小領域間に位置する領域については撮像せずに前記センサと前記ステージとを相対移動させながら、前記離散的な複数の小領域おける光学画像を順に取得する工程と、
前記センサと前記ステージとを相対移動させながら、前記被検査試料の検査領域全体について小領域毎に順に光学画像を取得する工程と、
前記離散的な複数の小領域を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第1の位置ずれ量を演算する工程と、
前記離散的な複数の小領域における各第1の位置ずれ量を用いて、検査領域全体における第1の位置ずれ量マップを作成する工程と、
前記検査領域全体を撮像した際に取得されたそれぞれの光学画像中の図形の寸法と、それぞれ対応する参照画像中の図形の寸法との間での第2の位置ずれ量を演算する工程と、
前記第2の位置ずれ量を用いて、検査領域全体における第2の位置ずれ量マップを作成する工程と、
前記第1の位置ずれ量マップと前記第2の位置ずれ量マップとの差分を演算して、第1の位置ずれ差分マップを作成する工程と、
前記第2の位置ずれ量マップと前記第1の位置ずれ差分マップとの差分を演算して、第3の位置ずれ量マップを作成する工程と、
前記第3の位置ずれ量マップに定義される各値のうち、許容値を超える値の有無を判定する工程と、
位置ずれ量についての判定結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とするパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−40873(P2013−40873A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178877(P2011−178877)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】