説明

パターン欠陥検査装置およびパターン欠陥検査方法

【課題】高速かつ高感度で微小欠陥を検出する。
【解決手段】実施形態のパターン欠陥検査装置は、検査対象パターンに関する第1のデータに基づいて、前記検査対象パターンに対する電子ビームの照射点の軌道に関するデータを含み前記電子ビームの走査を制御するためのデータである電子ビーム照射点軌道データを生成する電子ビーム照射点軌道データ生成手段と、前記電子ビーム照射点軌道データに従って前記検査対象パターンに電子ビームを照射する電子ビーム照射手段と、前記電子ビームの照射により前記検査対象パターンから発生する二次電子を検出する二次電子検出手段と、前記二次電子検出手段の出力信号から前記二次電子の信号強度に関する第2のデータを取得する信号強度取得手段と、前記第2のデータから異常点を検出して前記検査対象パターンの欠陥として出力する欠陥検出手段と、を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン欠陥検査装置およびパターン欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパターン欠陥検査について、リソグラフィー工程やエッチング工程等の半導体装置の製造工程で形成される微細パターンの欠陥検査を一例として取り挙げて説明する。
【0003】
近年における半導体パターンの微細化の進展に伴い,半導体製品の性能に影響を与える欠陥のサイズも小さくなってきており,このような微小サイズの欠陥を従来の検査装置で検出することがますます困難になってきている。
【0004】
従来は、光学画像またはSEM画像を取得し、それらの検査画像に対して参照パターンとの比較を行うことで欠陥を検出する検査装置が広く用いられている。参照パターンとして検査パターンに隣接するダイを用いる方式であるダイ・ツー・ダイ(Die to Die)方式や、設計データを参照パターンとするダイ・ツー・データベース(Die to Database)方式等が一般の欠陥検査装置の原理として採用されている。
【0005】
これらの検査手法は、検査画像が光学画像であるかSEM画像であるかに依存してそれぞれメリット・デメリットが異なる。光学画像による検査では、スループットが高いものの微細な欠陥を検出するには分解能が不足しているという欠点がある。この一方、SEM画像による検査では、これと反対に分解能は十分であるものの、スループットが低いために、現段階ではウェーハの全面検査は現実的でなく、検査領域をウェーハ全面の数パーセントにすることが一般的である。
【0006】
しかしながら、製品の正確な歩留まりを予測するためには、ウェーハの検査領域を光学検査並みの数10パーセントに拡大することが望ましい。このため、SEM画像による検査の高速化を目的として様々な試みがなされている。これらのSEM画像は電子ビームのラスタスキャンにより取得されるが、単純に画像取得時間を短縮しただけでは、信頼のおける検査に十分な画像のS/Nが得られないという問題がある。
【0007】
その一方で、SEM画像による検査では、電子ビーム電流量を増大すればSEM画像の取得時間を短縮できるが、単純に電子ビーム電流量を増大した場合、チャージング現象を誘発し、所望の画像が得られないという問題がある。ラスタスキャンによる画像取得に代わり、写像投影光学系によって検査画像を取得する手法の提案もなされているが、画像の分解能が低く、微細欠陥の検出には適さないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−312318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高速かつ高感度で微小欠陥を検出するパターン欠陥検査装置およびパターン欠陥検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態のパターン欠陥検査装置は、検査対象パターンに関する第1のデータに基づいて、前記検査対象パターンに対する電子ビームの照射点の軌道に関するデータを含み前記電子ビームの走査を制御するためのデータである電子ビーム照射点軌道データを生成する電子ビーム照射点軌道データ生成手段と、前記電子ビーム照射点軌道データに従って前記検査対象パターンに電子ビームを照射する電子ビーム照射手段と、前記電子ビームの照射により前記検査対象パターンから発生する二次電子を検出する二次電子検出手段と、前記二次電子検出手段の出力信号から前記二次電子の信号強度に関する第2のデータを取得する信号強度取得手段と、前記第2のデータから異常点を検出して前記検査対象パターンの欠陥として出力する欠陥検出手段と、を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】パターン欠陥検査装置の第1の実施の形態の概略構成を示すブロック図。
【図2】パターン欠陥検査方法の第1の実施の形態の概略手順を示すフローチャート。
【図3】検査対象パターンの一例を示すSEM画像。
【図4】図2に示すフローチャートにおいて電子ビーム照射点軌道データの具体的生成方法を示すフローチャート。
【図5】図3の検査対象パターンに対応したCADデータの展開例を示す図。
【図6】図5の展開図形を処理して骨格線を生成した例を示す。
【図7】電子ビーム照射点の軌道の一例を示す図。
【図8】検査対象パターンの開放(オープン)欠陥と信号強度との関係を示す説明図。
【図9】凹パターンについて生成した骨格線の一例を示す図。
【図10】図9に示す骨格線を繋いで生成された電子ビーム照射点の軌道の一例を示す図。
【図11】パターン欠陥検査方法の第4の実施の形態に使用する電子ビーム照射点軌道データの生成方法を示すフローチャート。
【図12】図11に示すパターン欠陥検査方法に好適な検査対象パターンの一例を示す図。
【図13】図12に示す検査対象パターン中のスペースパターンについて生成された骨格線の例を示す図。
【図14】図12のスペースパターンについて生成された一次元信号波形データの例を示す図。
【図15】図14に示す信号波形データの解析により検出されたパターン欠陥の例を示す図。
【図16】パターン欠陥検査装置の第2の実施の形態の概略構成を示すブロック図。
【図17】パターン欠陥検査方法の第5の実施の形態による電子ビーム照射点軌道データの生成方法の概略手順を示すフローチャート。
【図18】検査対象パターンの画像データから輪郭点を検出した例を模式的に示す図。
【図19】図18に示す輪郭点に対するグルーピング処理により取り出された輪郭線のみを示す模式図。
【図20】形状マッチングにおけるマッチングスコアの具体例を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態では、半導体装置の製造工程で形成される微細パターンの欠陥検査を取り挙げて説明するが、半導体装置に限ることなく、他の様々な産業分野におけるパターン欠陥検査の全般に適用可能であることに留意されたい。
【0013】
また、本願明細書においてパターンという用語は、凸パターンのみならず、凹パターンを表すためにも使用される点に留意されたい。これは、例えば基板表面に形成された材料をパターニングすることにより基板の上方へ突出する複数の凸状部材を形成した場合、凸状部材自身を凸パターンとみなすほか、隣り合う凸状部材と、これらの凸状部材間の基板表面領域と、を凹パターンとみなして隣り合う凸状部材の間の基板表面領域を凹パターンの底面とみなすこともできるからである。以下の実施形態において、凸パターンは例えば第1のパターンに対応し、凹パターンは例えば第2のパターンに対応する。
【0014】
(1)パターン欠陥検査装置の第1の実施の形態
図1は、実施の一形態によるパターン検査装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すパターン検査装置は、走査型電子顕微鏡(CD−SEM(ritical imension−canning lectron icroscope))40と、制御コンピュータ21と、外付けの記憶装置MR1,MR2と、スキャン方式決定部27と、信号波形生成部25と、欠陥検出部28と、表示装置29と、入力装置20と、を備える。
【0015】
制御コンピュータ21は電子ビーム照射点軌道データ生成部30を含む。制御コンピュータ21は、走査型電子顕微鏡40の他、スキャン方式決定部27、信号波形生成部25、欠陥検出部28、表示装置29、入力装置20および記憶装置MR1,MR2にも接続される。
【0016】
記憶装置MR2には検査対象パターンのCADデータが収納される。CADデータは、本実施形態において例えば第1のデータに対応する。記憶装置MR1は、後述するパターン検査方法の手順が記述されたレシピファイルを格納し、このレシピファイルを制御コンピュータ21が読み取ってパターン欠陥検査を実行する。
【0017】
電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、記憶装置MR2からCADデータを引き出し、後述するデータ処理により、検査対象パターンに対する電子ビームの照射点の軌道に関するデータを含み、電子ビームの走査を制御するためのデータである電子ビーム照射点軌道データを生成する。生成された電子ビーム照射点軌道データは、ステージ制御部26に送られる。本実施形態において、電子ビーム照射点軌道データ生成部30は例えば電子ビーム照射点軌道データ生成手段に対応する。
【0018】
走査型電子顕微鏡40は、本実施形態において例えば電子ビーム照射手段に対応し、鏡筒9と、試料室8と、電子銃制御部22、コンデンサレンズ制御部23、偏向器制御部24、ステージ制御部26、および対物レンズ制御部43を含む。鏡筒9には電子銃6と、コンデンサレンズ4と、偏向器5と、対物レンズ3と、二次電子検出器7が設けられ、また、試料室8内には、検査対象パターンが形成された試料である基板11を支持するステージ10とアクチュエータ12が設けられる。
【0019】
制御コンピュータ21はまた、電子銃制御部22、コンデンサレンズ制御部23、ステージ制御部26および対物レンズ制御部43に接続され、スキャン方式決定部27を介して偏向器制御部24に接続され、さらに信号波形生成部25を介して二次電子検出器7に接続される。
【0020】
電子銃制御部22は鏡筒9内の電子銃6に接続され、コンデンサレンズ制御部23はコンデンサレンズ4に接続され、偏向器制御部24は偏向器5に接続され、対物レンズ制御部43は対物レンズ3に接続される。ステージ制御部26は試料室8内のアクチュエータ12に接続される。
【0021】
電子銃制御部22は、制御コンピュータ21の指示に従って制御信号を生成し、この制御信号を受けて電子銃6は電子ビーム1を放出する。
【0022】
対物レンズ制御部43は、制御コンピュータ21から送られる指令信号に従って制御信号を生成し、この制御信号を受けて対物レンズの焦点位置を調整し、電子銃6から放出された電子ビーム1は、コンデンサレンズ4により集束された後に対物レンズ3を通って基板11に照射される。
【0023】
コンデンサレンズ制御部23は、制御コンピュータ21から送られる指令信号に従って制御信号を生成し、この制御信号を受けてコンデンサレンズ4が電子ビーム1を集束する。偏向器制御部24は、制御コンピュータ21の指示に従って制御信号を生成し、偏向器5は偏向器制御部24から送られる制御信号により偏向電界または偏向磁界を形成して電子ビーム1をX方向およびY方向に適宜偏向して基板11の表面を走査する。
【0024】
ステージ10は、X方向およびY方向に移動可能であり、制御コンピュータ21からの指令によりステージ制御部26が生成した制御信号に従ってアクチュエータ12がステージ10を移動する。これにより、検査領域(FOV:ield iew)に対する電子ビーム走査が行われる。
【0025】
走査型電子顕微鏡40は、ラスタスキャン方式およびベクタスキャン方式のいずれでも走査可能な構成を有する。スキャン方式決定部27は、制御コンピュータ21からの制御信号に従ってスキャン方式を決定して偏向制御部24に選択信号を送る。偏向制御部24は、送られた選択信号に従い、選択されたスキャン方式で偏向器を制御する。また、スキャン方式決定部27がラスタスキャン方式を選択した場合は、電子ビーム照射点軌道データ生成部30から電子ビーム照射点軌道データが供給され、電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、電子ビーム照射点軌道データに従って電子ビームが照射されるように制御信号を生成する。
【0026】
走査型電子顕微鏡40はまた、図示しない可変成形アパーチャを有し、可変成形ビームを生成する機能を有する。
【0027】
電子ビーム1の照射により基板11の表面から二次電子が発生し、二次電子検出器7により検出されて検出信号が信号波形生成部25に出力される。信号波形生成部25は、二次電子検出器7からの検出信号を処理して検出信号の一次元の強度分布を表す信号波形データを作成して制御コンピュータ21に送る。
【0028】
制御コンピュータ21は、信号波形生成部25から送られた信号波形データを欠陥検出部28に送ると共に、表示装置29により信号波形を表示させ、記憶装置MR1に記憶させる。本実施形態において、二次電子検出器7は例えば二次電子検出手段に対応し、また、信号波形生成部25は例えば信号強度取得手段に対応する。さらに、信号波形データは、本実施形態において例えば第2のデータに対応する。
【0029】
欠陥検出部28は、本実施形態において例えば欠陥検出手段に対応し、制御コンピュータ21から送られた一次元信号波形データを解析して異常点を検出し、検出結果を検査対象パターンの欠陥として制御コンピュータ21へ送る。制御コンピュータ21は、送られた欠陥の情報を表示装置29により表示させる他、記憶装置MR1に記憶させる。
【0030】
入力装置20は、検査領域FOVの座標位置、検査パターンの種類、検査条件、欠陥検出のための各種閾値等の情報を制御コンピュータ21へ入力するためのインタフェイスである。各種閾値は、例えば後述する第2の実施の形態において、凹パターンの底面部中で骨格線の生成対象から除外する部分を判定するための最も新設する輪郭からの距離の値、第4の実施形態の形態におけるライン幅とスペース幅の各値、および第5の実施の形態における輪郭検出のための閾値を含む。
【0031】
次に、図2乃至図8を参照しながら、図1に示すパターン検査装置を用いたパターン検査方法の実施の形態のいくつかについて説明する。
【0032】
(2)パターン欠陥検査方法の第1の実施の形態
本実施形態のパターン欠陥検査方法の概略手順について図2のフロー図を参照して説明する。
【0033】
先ず、電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、記憶装置MR2からCADデータを引き出し、このCADデータから電子ビーム照射点軌道データを生成する(ステップS1)。
【0034】
次に、スキャン方式決定部27がベクタスキャン方式を採用して偏向器制御部24にベクタスキャン用の設定を行う。ステージ制御部26は、電子ビーム照射点軌道データ生成部30から送られる電子ビーム照射点軌道データに基づいてステージ10を駆動し、電子銃1が電子ビームを生成して検査パターン上に照射させる(ステップS2)。
【0035】
次いで、二次電子検出器7が検査対象パターンから発生する二次電子を検出して信号波形生成部25に送る。信号波形生成部25は、スキャン開始時点を基準とする座標情報に対応した信号波形の強度分布を作成し、一次元信号波形としてそのデータを、制御コンピュータ21を介して欠陥検出部28に送る(ステップS3)。
【0036】
欠陥検出部28は、送られた一次元信号波形データを解析することにより、検査対象パターンの欠陥を検出する(ステップS4)。検出された欠陥に関する情報は、制御コンピュータ21を介して表示装置29によりディスプレイなどに表示される他、記憶装置MR1に格納されて記録される(ステップS5)。
【0037】
制御コンピュータ21は、以上の一連の欠陥検出を検査領域FOVの全てについて行う。
【0038】
次に、図3乃至図8を参照して本実施形態のパターン欠陥検査方法をより具体的に説明する。
【0039】
(i)電子ビーム照射点軌道データの生成
図3は、検査対象パターンの一例を示すSEM画像である。図3に示す例では、凸状のパターンP1〜P10が示される。凸パターンP1〜P7の輪郭間のスペース部は、凹パターンP20の底面を構成する。同様に、凸パターンP7とP8との間のスペース部は凹パターン21の底面を構成し、凸パターンP8〜P10の間のスペース部は凹パターン22の底面を構成する。
【0040】
図4は、本実施形態における電子ビーム照射点軌道データの生成方法を示すフローチャートである。本実施形態では、電子ビーム照射点軌道データの生成のために検査対象パターンに対応する設計データを用いる。設計データは様々なファイルフォーマットで生成されているが、本実施形態では、GDS等のバイナリデータを用いる。このため、電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、該バイナリデータを展開して図5のような図形を取得する(図4、ステップS10)。
【0041】
次に、電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、展開された図形の骨格線を生成する(図4、ステップS11)。ここで、図形の骨格線とは、その図形の輪郭からの距離が等しい点の集合をいい、その図形の中心軸とも呼ばれている。
【0042】
図形の骨格を抽出する方法には様々な手法が提案されているが、本実施形態では距離変換を用いた手法を採用する。距離変換とは図形中の画素値を、その画素から図形輪郭までの最短距離に変換する処理である。この距離変換を施すことにより、図形の骨格は距離変換画像の局所的な極大値として抽出できる。
【0043】
図6は、図5の展開図形を処理して骨格線を生成した例を示す。図6の例では、図3の凸パターンP1〜P10に対応する展開図形から抽出された骨格線CL1〜CL10が示されている。
【0044】
ステップS11で生成された骨格線を電子ビームの電子ビーム照射点軌道データにするためには、電子ビーム走査の順番を決定した上で複数の骨格線を繋ぐ必要がある。このようにして形成された電子ビーム軌道の一例を図7に示す。
【0045】
図7の例において、点線は骨格線を繋ぐ部分であり、実際にはこの部分に電子ビームを照射しない。これは、例えば走査型電子顕微鏡40の電子ビーム光学系にビームブランキング等によるシャッターを設けるなどの既知の手段で実現可能である。
【0046】
検査時間を短縮するためには、電子ビームの照射経路を最短にすることが望ましい。これは一般には、巡回セールスマン問題として知られている問題の応用例と考えられる。従って、骨格線が少ない場合は、すべての組み合わせを計算してその中から最短のものを選ぶことで解を見出すことが可能である。しかしながら、骨格線が多い場合は計算負荷が膨大となるが、そこまでして最短経路を見出すことは現実的でない。このため、近似的に巡回セールスマン問題を解く方法が提案されている。
【0047】
ここで、実際の検査において、図7に示す骨格線のうち実線部では、十分に検出可能な二次電子が放出されるだけの(一次)電子ビームのドーズ量を得る必要があるので、ビームの移動速度として一定以上の速度を設定することはできない。しかしながら、点線部の照射されない部分では、最大のビーム偏向速度で移動できるという特徴がある。このような状況下で、電子ビーム走査の最短経路を過大な負荷を掛けて求めることには大きな価値はない。
【0048】
そこで、本実施形態では、図7の紙面左下に位置する骨格線CL1から開始して、未接続の骨格線の中で互いに最も近接した骨格線を単純に接続することにより電子ビーム照射点軌道データを生成するという手法を選択する。
【0049】
生成された電子ビーム照射点軌道データは、例えばGDSのような一般的なフォーマットとして記憶装置MR1に記録してもよいが、本実施形態では、Gコードのような簡易的なフォーマットを採用する。Gコードとは、NC加工装置において、加工工具の移動や座標系の設定などを記述するために用いられているフォーマットであり、NC加工装置に示す手順書のようなものである。GコードではGに続く2桁の数字がその機能を示し、実際のGコードにはG00からG99の100種類がある。
【0050】
本実施形態では、G00で示される初期の電子ビーム照射点の位置決めと、G01で示されるビーム照射の始点から終点を結ぶ直線上を、移動速度を指定して電子ビーム軌道を動かす直線補完の機能についてGコードと同様の記述を採用する。例えば以下のように電子ビーム照射点軌道データが記述される。
【0051】
G00 X100 Y100
G01 X150 Y100 FV1
上述の例は、座標(100、100)から座標(150、100)へ速度V1で電子ビームを照射することを意味する。ここで速度V1は、スキャンスピードに対する装置の設定パラメータであって、必ずしも実際の速度を数値として記述する必要はない。
【0052】
(ii)ベクタスキャン(図2、ステップS2)
次に、基板11上の実際の検査対象パターンに、上述の手順で生成された電子ビーム照射点軌道データに従い、電子ビームを照射する。これは公知のCADナビゲーション技術を用いることで実現可能である。
【0053】
このようなビームの照射方法をベクタスキャンと呼び、これを実現する様々な手段が提案されており、これらの提案をもとにした市販の装置もマーケットに出回っている。これらの装置は、あくまでも電子ビームを用いたパターンの製造装置である。この一方、本実施形態の目的ではパターンの欠陥検査を実現するための手段である点に注意されたい。
【0054】
電子ビームのスポットサイズは、パターンの観察のためには画像の分解能を向上させるため、できるだけ小さくする必要があるが、本実施形態ではパターンの欠陥を感度よく検出するために、パターン幅以下のサイズであることが好ましい。本実施形態では、例えば図3に示すパターンの幅は20nm程度であるため、電子ビームのスポット径はその半分の10nmとなっている。
【0055】
(iii)一次元信号波形の取得(図2、ステップS3)
ステップS2の手順で電子ビームを照射されたパターンからは、二次電子が生成し、生成した二次電子を二次電子検出器7が検出し、信号波形生成部25へ送る。信号波形生成部25は送られた検出信号の強度を増幅した上で、スキャン開始時点を基準とする座標情報に対応した信号波形の強度分布を作成し、一次元信号波形としてそのデータを制御コンピュータ21へ送る(ステップS3)。
【0056】
制御コンピュータ21は、送られた一次元信号波形データを欠陥検出部28に送ると共に、記憶装置MR1に送って記録させる。二次電子検出器7からの検出信号は、ラスタスキャンでは通常の二次元パターン像として構成して利用されるが、本実施形態では、ベクタスキャンを採用しているために、画像として構成することは意味を持たず、一次元の態様の信号波形として出力され、欠陥検出部28により解析される。
【0057】
(iv)一次元信号波形の解析による欠陥検出(図2、ステップS4)
本実施形態では、パターンが存在する部分にのみ電子ビームを照射するため、パターンが正常であれば、二次電子の強度は常に一定となるはずである。しかしながら、パターンの欠損や異物の付着等の欠陥が存在する場合、欠陥位置に対応した部分で二次電子信号強度が変化する。
【0058】
欠陥検出部28は、送られた二次電子信号波形に対して、このような変化を検出する。変化の検出には、例えば信号波形の微分波形を計算しその強度から変化点を見出す等、既知のピーク検出アルゴリズムを適用することが可能である。本実施形態では、FIR(inite mpulse esponse:有限インパルス応答)フィルターを用いてピーク検出を実施する。
【0059】
そして、欠陥検出部28は、検出したピークの数を欠陥数として出力する。二次電子信号波形の横軸はビーム照射データと照合することでパターン上の座標に変換できるので、これにより欠陥位置を出力することも可能である。さらに、例えばピークの半値幅等を欠陥の大きさとして出力することも可能である。
【0060】
例えば図8の上部に示すように、座標位置x1,x2間で検査対象パターンP2に開放(オープン)欠陥部分があった場合は、その部分は一般的に信号強度が高くなるので、図8の下部に示すように、ピークとして検出される。そこで、ピークの半値幅HWの大きさを有する欠陥が座標位置x1,x2間に存在するものとして検出される。
【0061】
本実施形態によれば、一次元信号波形の解析によって欠陥を検出するので、評価対象パターンの画像を取得する必要が無い。このため、短時間での欠陥検査が可能になる。また、二次元画像を処理する必要が無いので、制御コンピュータ21において、欠陥検出処理に掛かるCPUの負担を小さくすることができる。
【0062】
(3)パターン欠陥検査方法の第2の実施の形態
前述したパターン検査方法の第1の実施の形態では、凸パターンP1〜P10について開放(オープン)欠陥を検出する場合を取り挙げたが、本実施形態では凹パターンに発生し得る短絡(ショート)欠陥等の検出方法について説明する。
【0063】
この場合、距離変換の手法を用いて得られた骨格線から電子ビーム照射点軌道データを生成する点は前述の実施形態と同様であるが、凹パターン部分について骨格線を生成する点が異なる。さらに、本実施形態では、最も近接する輪郭から一定の距離以上離れた部分は、ショート欠陥のリスクが低いために、電子ビームを照射する必要が無いものと判断して骨格線の生成対象から除外する。
【0064】
このようにして凹パターンについて生成した骨格線の例を図9に示す。図9の符号CL20(CL20aおよびCL20b)〜CL22に示す骨格線は、図3の凹パターンP20〜P22に対応する設計データから生成したものである。図9中の点線で示した部分は除外された骨格線を表す。
【0065】
このようにパターンの輪郭から十分に離れていてショート欠陥が発生する可能性が少ない箇所が検査対象から除外されるので、その分だけ検査時間を短縮することができる。図9に示す骨格線を繋いで生成された電子ビーム照射点の軌道の一例を図10に示す。図10の例では、骨格線を繋いだ結果、複数の直線が結合した複雑な形状が発生する。このような場合は、いくつかの部分に分割して電子ビーム走査をすればよい。図10に示す例では、a→bおよびc→dの2つの順路で走査が行われる。その後は、前述した第1の実施の形態と同様の手順で欠陥を検出することが可能である。
【0066】
上述の検査方法では、凸パターンと凹パターンとで別々に検査を行ったが、これに限る必要は無く、凸パターンと凹パターンとの両方について同時に欠陥検査を実施してもよい。この場合は、凸パターンと凹パターンとで個々に欠陥を検出できるので、欠陥がオープンによるものなのか、ショートによるものなのかを容易に判定することができる。これにより、欠陥の分類に必要な時間とコストを削減することができる。
【0067】
本実施形態によれば、必要のない部分について電子ビームを照射しないので、擬似欠陥が発生しにくいというメリットがある。また、電子ビームの照射量が抑えられるので、基板11のチャージングを緩和でき、これにより、S/Nが向上するというメリットもある。
【0068】
(4)パターン欠陥検査方法の第3の実施の形態
前述したパターン検査方法の第1および第2の実施の形態では、共通の材質で形成されて全体として同一パターンとみなせる凸パターンおよび凹パターンについて、それぞれ別個の検査を行う例を示した。しかしながら、輪郭となる側壁が共通であっても、ある材料で形成された膜の上に膜の材料とは異なる材料で凸パターンを形成した場合は、凹パターンの底面と凸パターンとで材質が異なる。本実施形態ではこのように凹パターンの底面と凸パターンとで材質が異なる場合の検査方法を提供する。
【0069】
例えば、絶縁膜上に金属配線パターンが形成されている場合、金属でなる凸パターンと、底面が絶縁膜でなる凹パターンに対して、連続して検査する場合を取り挙げる。この場合、電子ビームの照射条件をパターンの材質に応じて変更する方法がある。例えば金属でなる凸パターンについては加速エネルギー、電流量、スキャンスピードのそれぞれを1.2keV、3pA、TVレートと設定し、絶縁膜でなる、凹パターンの底部に照射する場合、加速エネルギー、電流量、スキャンスピードのそれぞれを例えば0.8keV、1pA、TV/2と設定する。
【0070】
このように照射領域の材質に応じて電子ビームの設定を変更することにより、絶縁膜のチャージングの影響を低減することができ、より高精度な検査を実施できる。また、この際に、対物レンズ制御部43を介した対物レンズ3の制御によって電子ビームの焦点位置を変えることにより、ビームサイズを変更してもよい。さらには、図示しない可変成形アパーチャを用いた可変成型ビームの生成により、電子ビームの形状をパターンの材質に応じて変更してもよい。
【0071】
(5)パターン欠陥検査方法の第4の実施の形態
上述した第1乃至第3の実施形態では、図3に示すような複雑なパターンについても適用可能な態様について説明した。しかしながら、検査対象パターンには、ライン・アンド・スペース(以下、単にL/Sという)パターンのように、所定の規則に従って配置されるパターンもある。このような場合は、上記所定の規則に依存してパターンの配置を表す設定値が予め決定されている。そこで、本実施形態では、このような設定値を用いて簡易に電子ビーム照射点軌道データを生成する方法を提供する。
【0072】
図11は、本実施形態に使用する電子ビーム照射点軌道データの生成方法を示すフローチャートである。また、図12は、本実施形態における検査対象パターンの一例を示す図である。図12には、ラインパターンL1乃至L4とこれらの間に配置されるスペースパターンS1〜S3でなるL/Sパターンが示されている。各ラインパターンL1乃至L4はそれぞれ20nmのライン幅を有し、各スペースパターンS1〜S3はそれぞれ30nmのスペース幅を有する。
【0073】
先ず、入力装置20からL/Sパターンを記述する数値としてライン幅20nm、スペース幅30nmを入力し、前述した手法により図13に示すように、スペースパターンS1〜S3の骨格線CL31〜CL33を生成する(ステップS12)。
【0074】
次いで、骨格線CL31〜CL33を相互に接続することにより、電子ビーム照射点軌道データを生成する(ステップS13)。
【0075】
その後は、図2を参照して前述したものと同様の手順により、電子ビーム照射点軌道データに従って検査対象パターンに電子ビームを照射する(図2、ステップS2)。この際の位置合せも、前述した通り、例えばCADナビゲーション技術を使用すればよい。
【0076】
そして、検査対象パターンの表面から発生した二次電子を検出して処理することにより、図14の符号LP1〜LP3に示すような一次元の信号波形データが得られる(図2、ステップS3)。
【0077】
最後に、得られた信号波形データについてピーク検出を行うことにより、図15に示すように、欠陥DF1,DF2を検出することができる(図2、ステップS4)。
【0078】
(6)パターン欠陥検査装置の第2の実施の形態
図16は、パターン検査装置の第2の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の特徴は、電子ビーム照射点軌道データの生成に際して、設計データを用いるのではなく、検査対象パターンのSEM画像から検出した輪郭データを用いる点にある。なお、本願明細書における「輪郭」とは、画像中で局所的に明るさが変化している部分のことをいう。
【0079】
図1との対比により明らかなように、図16に示すパターン検査装置は、設計データが格納された記憶装置MR2に代えて、輪郭検出部33を備え、また、画像取得制御部35をさらに備える。画像取得制御部35は、制御コンピュータ21からの指令信号によって制御され、2次電子検出器7から検出信号を送られて検査対象パターンの二次元SEM画像を生成して制御コンピュータ21に送る。制御コンピュータ21は、二次元SEM画像を輪郭検出部33に送り、輪郭検出部33は、検査対象パターンの輪郭を検出し、電子ビーム照射点軌道データ生成部30に送る。電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、送られた輪郭データを用いて電子ビーム照射点軌道データを生成する。
【0080】
(7)パターン欠陥検査方法の第5の実施の形態
本実施形態のパターン欠陥検査装置を用いたパターン欠陥検査方法については、輪郭データのGDS化処理が加わる点が上述した第1乃至第4の実施の形態と異なる点であり、本質的な検査内容はなんら異なるところがない。しかしながら、輪郭データのGDS化処理に際して、輪郭によって区画された部分のうち、どれが凸パターンに対応し、どこが凹パターンに対応しているかを正しく記述する必要がある。この判別は、単に輪郭検出処理を実施するだけでは達成できない。
【0081】
そこで、本実施形態では、パターンの内外を識別する方法の一例として、検査対象パターンの外側エッジおよび内側エッジのいずれか一方およびいずれか他方の候補となる第1および第2の輪郭線グループの組合せで構成される輪郭線グループペアを生成し、これらのグループペア毎に形状マッチングを行って得られたマッチングスコアを用いて内側/外側エッジの判定を行う手法を採用する。以下、この手法を用いて電子ビーム照射点軌道データを生成する方法について、図17乃至図20を用いて具体的に説明する。
【0082】
図17は、本実施形態による電子ビーム照射点軌道データの生成方法の概略手順を示すフローチャートである。
【0083】
先ず、走査型電子顕微鏡40により、検査対象パターンについて画像データを取得し(ステップS21)、輪郭検出部33により画像中の輪郭点を検出する(ステップS22)。
【0084】
次に、グルーピング処理で、検出された輪郭点を、それぞれが輪郭線として連続したグループに分類することにより、複数の輪郭線を生成する(ステップS23)。
【0085】
次いで、電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、生成された複数の輪郭線をそれぞれ異なる態様で二分するように輪郭線を組合せることにより、第1および第2の輪郭線グループの組合せでなる輪郭線グループのペア(以下、単に「輪郭線グループペア」という)を複数生成する(ステップS24)。
【0086】
続いて、電子ビーム照射点軌道データ生成部30により、輪郭線グループペア毎に第1および第2の輪郭線グループ間で形状のマッチングを行い、得られたマッチングスコアのうち、最良のマッチングスコアを与える輪郭線グループペアを、検査対象パターンの外側エッジ(トップ)および内側エッジ(ボトム)のいずれか一方およびいずれか他方を構成する輪郭線グループペアとして特定する(ステップS25)。
【0087】
さらに、電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、特定された輪郭線グループペアを構成する第1および第2の輪郭線グループのそれぞれについて輪郭強度を求めて互いに比較し、輪郭強度が大きい方の輪郭線グループを外側エッジグループと特定する(ステップS26)。
【0088】
その後は、電子ビーム照射点軌道データ生成部30が、特定された外側エッジグループとその内側(内側エッジグループの側)の領域とを凸パターンと定義し、外側エッジグループの外側領域を凹パターンの底面と定義して必要な骨格線を生成する(ステップS27)。
【0089】
最後に、電子ビーム照射点軌道データ生成部30は、生成された骨格線を相互に接続することにより、検査対象パターンについての電子ビーム照射点軌道データを生成する(ステップS28)。
【0090】
次に、図18乃至図20を参照しながら、上記手順についてより具体的に説明する。
【0091】
図18は、ある検査対象パターンについてSEM画像を取得し、その画像データから輪郭点を検出した例を模式的に示す図である。図18中の実線で示す線が、検出された輪郭点の集合を示す。なお、楕円EL内の破線で示す線は輪郭として検出されなかった画素の集合を示す。
【0092】
本実施形態ではソーベルフィルタを用いて輪郭点を検出する。ソーベルフィルタとは、ある注目画素を中心とし、サイズ3の場合は上下左右の9つの画素値に対して、重み係数をそれぞれ乗算した結果を合計した値を出力する処理である。輪郭検出の場合は、垂直、水平の二つの方向に係数行列を用いてこの処理を行う。このようにして得られた値を一定のしきい値で判別して、輪郭点を検出する。
【0093】
なお、輪郭点の検出は画像処理の中で最も基本的な技術の一つであるため、ソーベルフィルタ以外に非常に多くの手法が提案されている。ここでは、各々の輪郭点に輪郭強度が数値として出力されるものであれば、ソーベルフィルタ以外のどのような輪郭検出方法を用いてもよい。
【0094】
図17のステップS23におけるグルーピング処理とは、検出された輪郭点を、輪郭線として連続した一つのグループに分類する処理である。グルーピング処理は、互いに近接する輪郭点を単純に同一グループと特定する方法の他、様々な手法があり、例えば特開2005−296349号公報には、輪郭点を線状にグルーピングすることによって輪郭線を抽出する技術が開示されている。
【0095】
図19は、図18に示す輪郭点に対するグルーピング処理により取り出された輪郭線のみを示す模式図である。図19では、EG1〜EG16の符号で示されるように、16の輪郭線が生成されている。
【0096】
次に、図17のステップS24およびS25の手順についてより具体的に説明する。
【0097】
ステップS23により生成された輪郭線グループには、パターンのトップ部に位置する内側エッジとボトム部に位置する外側エッジとが混在している。従って、グルーピング処理により生成した複数の輪郭線のうち、いずれの輪郭線が内側エッジのグループに属し、いずれの輪郭線が外側エッジのグループに属するかを正確に判別する必要がある。
【0098】
図19に示す例では、輪郭線が16本あるので、これらの輪郭線を内側エッジグループと外側エッジグループに二分する場合、単純計算では、216=65536通りの組み合わせがある。
【0099】
本実施例では組み合わせの正しさを判定するための指標として、内側エッジグループと外側エッジグループとの間で形状マッチングを行って得られたマッチングスコアを用いる。すなわち、内側エッジグループと外側エッジグループとの形状は似ているという推察に基づき、両者のあらゆる組み合わせのうち最良のマッチングスコアを与える組み合わせを正しい組み合わせであると特定する。
【0100】
より具体的には、図17のステップS24の手順において、ステップS23で生成された複数の輪郭線を二分して一方を第1の輪郭線グループ、他方を第2の輪郭線グループとする輪郭線グループを組合せて輪郭線グループのペアを生成する。その際、上記複数の輪郭線を二分する態様をそれぞれ変更して輪郭線グループを組合せることにより、複数の輪郭線グループペアを生成する。ここで、上記第1の輪郭線グループは、検査対象パターンの外側エッジおよび内側エッジのいずれか一方の候補となり、また、上記第2の輪郭線グループは、検査対象パターンの外側エッジおよび内側エッジのいずれか他方の候補となる。
【0101】
次いで、図17のステップS25の手順において、生成された輪郭線グループペア毎に、各ペアを構成する第1の輪郭線グループと第2の輪郭線グループとの間で形状マッチングを行う。形状マッチングとしてはどのような手法を用いてもよく、マッチングスコアもその手法に応じたどのような値でもかまわない。
【0102】
図20は、輪郭線グループペア毎のマッチングスコアのうち、正しい組合せのスコアの例と正しくない組み合わせのスコア例とを対比して表したものである。
【0103】
図18の輪郭線EG1〜EG16のうち、輪郭線EG1〜EG8を第1グループとし、輪郭線EG9〜EG16を第2グループとする組合せの輪郭線グループペアでは、マッチングスコアとして、形状一致度=0.533416、分散値=70.099947が得られた。
【0104】
この一方、図20には、正しくない組み合わせとして、形状一致度=0.244051、分散値=2460.834574の例が挙げられ、確かに形状一致度は小さく、分散値は大きくなっている。このように、本実施形態によれば、数ある外側エッジグループと内側エッジグループとの組み合わせの中から正しい組み合わせを導出することができる。
【0105】
上述した形状マッチングのスコアを用いる方法により、正しい組合せの輪郭線グループペアを特定することができるが、これだけでは、特定された輪郭線グループペアを構成する第1および第2の輪郭線グループのうち、どちらの輪郭線グループが外側のエッジグループで、どちらの輪郭線グループが内側のエッジグループであるかはまだ分からない。そこで、ステップS26では、先ず、第1および第2の輪郭グループのエッジ強度をそれぞれ求める。ここでエッジ強度とは、その輪郭がどれだけはっきりとしているか、すなわち、どれだけ急激に変化をしているかを示す指標であれば、どのような定義であってもよい。例えばソーベルフィルタによる輪郭検出の場合は、ソーベルオペレータを施した際に得られる、その輪郭グループに属する各々の輪郭点の出力値(ここでは濃度値)の平均値を採用すれば、二つの輪郭グループの輪郭強度をそれぞれ求めることができる。
【0106】
一般に、パターンのトップエッジとボトムエッジとではボトムエッジのほうがはっきりとしている場合が多いため、輪郭強度が大きい方を外側エッジグループと見なすことができる。製品に応じて輪郭強度が大きい方の輪郭線グループを内側エッジグループと特定すべき場合もあるが、通常はパターンの外側の輪郭、図19の例では輪郭線EG1〜EG8をもってパターンの外形とする。
【0107】
その後は、輪郭線EG1〜EG8およびその内側領域を凸パターンと定義し、輪郭線EG1〜EG8の外側領域を凹パターンの底面と定義して必要な骨格線を生成する(ステップS27)。
【0108】
最後に、生成された骨格線を相互に接続することにより、検査対象パターンについての電子ビーム照射点軌道データを生成する(ステップS28)。
【0109】
このように、本実施形態によれば、設計データや良品から得られた画像データなどの検査対象パターンに関する情報を用意することなく、電子ビーム照射点軌道データを作成することができる。
【符号の説明】
【0110】
1:電子ビーム
2:二次電子
7:二次電子検出器
25:信号波形生成部
28:欠陥検出部
30:電子ビーム照射点軌道データ生成部
33:輪郭検出部
35:画像取得制御部
40:走査型電子顕微鏡(CD−SEM)
CL1〜CL10,CL20〜CL22:骨格線
EG1〜EG16:輪郭線
P1〜P10,:凸パターン
P20〜P22,:凹パターン
L1〜L4:ラインパターン
S1〜S3:スペースパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象パターンに関する第1のデータに基づいて、前記検査対象パターンに対する電子ビームの照射点の軌道に関するデータを含み前記電子ビームの走査を制御するためのデータである電子ビーム照射点軌道データを生成する工程と、
前記電子ビーム照射点軌道データに従って前記検査対象パターンに電子ビームを照射する工程と、
前記電子ビームの照射により前記検査対象パターンから発生する二次電子を検出する工程と、
前記二次電子検出手段の出力信号から前記二次電子の信号強度に関する第2のデータを取得する工程と、
前記第2のデータから異常点を検出して前記検査対象パターンの欠陥として出力する工程と、
を備えるパターン欠陥検査方法。
【請求項2】
前記第1のデータは前記検査対象パターンの設計データであり、
前記設計データから設計パターンの骨格線を生成する工程をさらに備え、
前記電子ビーム照射点軌道データは、生成された骨格線から生成されることを特徴とする請求項1に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項3】
前記検査対象パターンは所定の規則に従って配置されるパターンであり、
前記電子ビーム照射点軌道データは、前記規則に依存して予め決定された設定値に基づいて生成されることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項4】
前記第1のデータは前記検査対象パターンの輪郭線データであり、
前記輪郭線データから前記検査対象パターンの骨格線を生成する工程をさらに備え、
前記電子ビーム照射点軌道データは、生成された骨格線から生成されることを特徴とする請求項1に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項5】
前記電子ビームの照射経路が最短となる照射順序を決定する工程をさらに備え、
前記電子ビーム照射点軌道データは、決定した照射順序に従って生成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれに記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項6】
前記検査対象パターンは、凸パターンでなる第1のパターンと、前記第1のパターンの輪郭を側壁とし前記第1のパターン間のスペースを底面とする凹パターンでなる第2のパターンと、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項7】
前記電子ビームを照射する工程は、前記第1のパターンと前記第2のパターンとで互いに異なる電子ビーム照射条件を設定する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項8】
前記電子ビーム照射点軌道データを生成する工程は前記第2のパターンの骨格線と前記第2のパターンの輪郭のうちで前記第2のパターンの骨格線に最も近接する輪郭との間の距離を算出する工程を含み、
前記第2のパターンのうち、前記距離が所定の閾値以上となる部分への前記二次電子ビームの照射は省略されることを特徴とする請求項6または7に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項9】
前記電子ビームを照射する工程は、パターンの材質に応じて前記二次電子ビームの形状を変化させる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれに記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項10】
検査対象パターンに関する第1のデータに基づいて、前記検査対象パターンに対する電子ビームの照射点の軌道に関するデータを含み前記電子ビームの走査を制御するためのデータである電子ビーム照射点軌道データを生成する電子ビーム照射点軌道データ生成手段と、
前記電子ビーム照射点軌道データに従って前記検査対象パターンに電子ビームを照射する電子ビーム照射手段と、
前記電子ビームの照射により前記検査対象パターンから発生する二次電子を検出する二次電子検出手段と、
前記二次電子検出手段の出力信号から前記二次電子の信号強度に関する第2のデータを取得する信号強度取得手段と、
前記第2のデータから異常点を検出して前記検査対象パターンの欠陥として出力する欠陥検出手段と、
を備えるパターン欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図3】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−68051(P2012−68051A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210920(P2010−210920)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】