説明

パターン測定装置及びパターン測定方法

【課題】パターンの輝度の影響を受けることなく、ラインパターンとスペースパターンを容易に識別することのできるパターン測定装置及びパターン測定方法を提供すること。
【解決手段】パターン測定装置は、電子ビームを試料上に照射する照射手段と、電子ビームの光軸を挟んで設置された第1の電子検出手段及び第2の電子検出手段と、パターンの画像データを生成する画像処理手段と、パターンのラインプロファイルを作成するラインプロファイル作成手段と、第1の電子検出手段で検出された信号と第2の電子検出手段で検出された信号との差分に対応する電子量を基に画像処理手段にパターンの画像データを生成させる制御手段を有する。制御手段は、第1の電子検出手段で検出された信号と第2の電子検出手段で検出された信号との差分を基に作成されたラインプロファイルによりパターンの立下り又は立上りを判定し、ラインの線幅を測定するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームによるパターンの測定装置及び測定方法に関し、特に、等間隔のラインアンドスペースパターンのラインとスペースを識別することのできるパターン測定装置及びパターン測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パターンの線幅測定方法として、走査型電子顕微鏡による測定が行われている。走査型電子顕微鏡では、電子線走査範囲内に入射電子を走査させながら照射し、シンチレータを介して試料から放出される2次電子を取得し、取得した電子の電子量を輝度に変換して表示装置に表示している。
【0003】
このような走査型電子顕微鏡を用いて半導体装置の特性を管理する場合に、パターンの線幅が設計基準値内に形成されているか否かの作業を行うことが一般に採用されている。パターンの線幅の管理は、次のような手順によって行われている。フォトマスク上に形成されたパターンの所定範囲をディスプレイに表示した後、その表示範囲内の測定ポイントに照準を当てて電子ビームを照射し、測定ポイントから反射された二次電子に基づいて輝度分布の波形を取得する。そして、輝度分布の波形の高レベル部分の幅を線幅と判断する。この線幅が許容誤差の範囲内にあるか否かを判断し、許容誤差の範囲内であれば、次の工程に移り、許容誤差の範囲内でなければパターン形成の処理工程に戻される。
【0004】
このように、パターンの線幅の測定は、半導体装置の製造工程において重要であり、線幅を正確に測定するための種々の手法が提案されている。
【0005】
一般的に、2次電子量に対応する輝度の傾きが最大となる位置をパターンのエッジ位置としているが、特許文献1では、2次電子信号が極小値をとる位置をエッジ位置とみなすエッジ検出方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ラインアンドスペースパターンの輝度情報を1次微分して、x方向に位置をずらした画像と元画像との自己相関値から平均的なライン幅やスペース幅を算出する方法が開示されている。
【0007】
一方、ラインパターンとスペースパターンの幅がほぼ等しい場合、エッジを検出できても、エッジとエッジとの間がラインパターンかスペースパターンかの判別が困難となる場合がある。例えば、図1(a)に示すように、通常はラインパターン103aのトーンがスペースパターン102aのトーンよりも高いため、エッジ101間のトーンの高いパターン103aがラインパターンと判別できる。
【0008】
しかし、パターンを形成する材質や膜厚によっては、図1(b)に示すように、ラインパターン103bとスペースパターン102bにトーンの差がない場合や、図1(c)に示すように、パターン103cとスペースパターン102cの部分のトーンが反転してしまう場合がある。このような場合には、エッジ101間の部分がラインパターンなのかスペースパターンなのかを誤って判定してしまうおそれがある。
【0009】
特許文献3には、このようなライン幅とスペース幅がほぼ等間隔に形成されたラインアンドスペースパターンについて、ラインパターンかスペースパターンかを識別する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−296754号公報
【特許文献2】特開2005−195361号公報
【特許文献3】特開2007−292732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3の技術では、ラインパターンとスペースパターンの幅がほぼ等しい場合にラインプロファイルの2次微分プロファイルを基にラインパターンのエッジの立上りか立下りを検出できるようになっている。
【0012】
具体的には、パターンのSEM画像からラインプロファイルを算出し、そのラインプロファイルから2次微分プロファイルを求める処理をし、パターンのエッジ付近における2次微分プロファイルのピーク位置及びピーク値により判断している。
【0013】
しかし、2次微分プロファイルのピーク値が明確に検出されないときには、エッジが立上がりか立下りかを正確に判定することが困難である。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みなされたものであり、目的は、パターンの輝度の影響を受けることなく、測定対象部位の凹凸を的確に特定し、ラインパターンとスペースパターンを容易に識別することのできるパターン測定装置及びパターン測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題は、表示手段と、荷電粒子ビームを試料上に照射する照射手段と、前記荷電粒子ビームの照射によってパターンが形成された前記試料上から発生する電子の電子量を検出する電子検出手段であって、前記荷電粒子ビームの光軸を挟んで設置された第1の電子検出手段及び第2の電子検出手段と、前記電子量を基に当該パターンの画像データを生成する画像処理手段と、前記第1の電子検出手段で検出された信号と前記第2の電子検出手段で検出された信号との差分信号を算出し、当該差分信号に対応する電子量を基に前記画像処理手段に前記パターンの画像データを生成させ、前記表示手段の画面に前記画像データに対応する画像を表示する制御手段と、を有することを特徴とするパターン測定装置により解決する。
【0016】
この形態に係るパターン測定装置において、さらに、前記電子検出手段で検出された電子の電子量を基に前記試料上に形成されたパターンのラインプロファイルを作成するラインプロファイル作成手段を有し、前記制御手段は、前記第1の電子検出手段が前記パターンの左側に設けられ、前記第2の電子検出手段が前記パターンの右側に設けられているとき、前記ラインプロファイル作成手段により作成された前記差分信号に対応するラインプロファイルの正のピーク位置が前記パターンのエッジの立上りであり、負のピーク位置が前記パターンのエッジの立下りであると判定するようにしてもよく、前記制御手段は、前記差分信号に対応するラインプロファイルにおいて、ピークに至る途中であってピーク位置近傍に段差を有するとき、当該段差のピーク側の山の幅をエッジ幅とするようにしてもよく、前記制御手段は、前記段差のピーク側の端点位置から、ピークを挟んだ当該端点位置と同一の信号値を持つ位置までの距離を前記山の幅とするようにしてもよく、前記制御手段は、前記ラインプロファイルを微分して微分プロファイルを取得し、当該微分プロファイルにおいて前記段差のピーク側の極大値の位置から極小値の位置までの距離を前記山の幅とするようにしてもよい。
【0017】
また、この形態に係るパターン測定装置において、前記制御手段は、前記エッジ幅と前記パターンの高さを基に前記パターンのエッジの傾斜角度を算出するようにしてもよく、前記制御手段は、前記ラインプロファイルにおける正のピークを基に検出された位置X1から位置X2(>X1)までのエッジ幅と、当該正のピークに隣接する負のピークを基に検出された位置X3(>X2)からX4(>X3)までのエッジ幅に対して、位置X1から位置X4までの距離を前記パターンの底辺の幅として算出するようにしてもよく、前記制御手段は、少なくとも前記パターンのエッジ角度がほぼ直角か又は前記パターンの膜厚が所定の厚さよりも薄いとき、前記パターンの立上りエッジ及び立下りエッジの幅が同じであると仮定し、前記ラインプロファイルの正のピーク位置から負のピーク位置までの距離を算出し、前記パターンの膜厚及びエッジの傾斜角度を基に予め検出されたエッジ幅を前記距離に加算した値を前記パターンの線幅とするようにしてもよい。
【0018】
また、上記した課題は、荷電粒子ビームを試料上に照射して、前記試料上から発生する電子の電子量を基に試料上に形成されたパターンの計測をするパターン測定方法であって、前記荷電粒子ビームの光軸を挟んで設置された第1の電子検出手段と第2の電子検出手段のうち、前記第1の電子検出手段により検出された第1の電子量を基に前記試料上に形成されたパターンのSEM画像を取得するステップと、前記第2の電子検出手段により検出された第2の電子量を基に前記試料上に形成されたパターンのSEM画像を取得するステップと、前記第1の電子量と前記第2の電子量の差分に対応する第3の電子量を基にパターンのSEM画像を取得するステップと、当該SEM画像を表示手段の画面に表示するステップと、を有することを特徴とするパターン測定方法により解決する。
【0019】
この形態に係るパターン測定方法において、さらに、前記第3の電子量を基に前記パターンのラインプロファイルを作成するステップと、前記第1の電子検出手段が前記パターンの左側に設けられ、前記第2の電子検出手段が前記パターンの右側に設けられているとき、前記ラインプロファイルの正のピーク位置が前記パターンのエッジの立上りであり、負のピーク位置が前記パターンのエッジの立下りであると判定するステップと、を有するようにしてもよく、さらに、前記ラインプロファイルにおいて、ピークに至る途中であってピーク位置近傍に段差を有するとき、当該段差のピーク側の山の幅をエッジ幅とするステップを有するようにしてもよく、前記段差のピーク側の山の幅をエッジ幅とするステップでは、前記段差のピーク側の端点位置から、ピークを挟んだ当該端点位置と同一の信号値を持つ位置までの距離を前記山の幅とするようにしてもよく、前記段差のピーク側の山の幅をエッジ幅とするステップは、前記ラインプロファイルを微分して微分プロファイルを取得するステップと、前記微分プロファイルにおいて前記段差のピーク側の極大値の位置から極小値の位置までの距離を前記山の幅とするステップと、を有するようにしてもよい。
【0020】
また、この形態に係るパターン測定方法において、さらに、前記エッジ幅と前記パターンの高さを基に前記パターンのエッジの傾斜角度を算出するステップを有するようにしてもよく、さらに、前記ラインプロファイルから正のピーク及び当該正のピークに隣接する負のピークを検出するステップと、前記正のピークを基に検出された位置X1から位置X2(>X1)までのエッジ幅を算出するステップと、前記負のピークを基に検出された位置X3(>X2)から位置X4(>X3)までのエッジ幅を算出するステップと、前記位置X1から前記位置X4までの距離を前記パターンの底辺の幅として算出するステップと、を有するようにしてもよく、さらに、少なくとも前記パターンのエッジ角度がほぼ直角か又は前記パターンの膜厚が所定の厚さよりも薄いとき、前記パターンの立上りエッジ及び立下りエッジの幅が同じであると仮定して前記ラインプロファイルの正のピーク位置から負のピーク位置までの距離を算出するステップと、前記パターンの膜厚及びエッジの傾斜角度を基に予め検出されたエッジ幅を前記距離に加算して前記パターンの線幅を算出するステップと、を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、複数の電子検出器を備えたパターン測定装置において、パターンの一方のエッジ側に配置された電子検出器によって検出された電子量とパターンの他方のエッジ側に配置された電子検出器によって検出された電子量との差分を算出し、その差分に対応する電子量を基にパターンのSEM画像を形成している。これにより、エッジの部分の輝度が強調され、パターンが形成されている領域とパターンの形成されていない領域との区別が明確に表示されるようになる。
【0022】
また、パターンの左側に配置された電子検出器によって検出された電子量からパターンの右側に配置された電子検出器によって検出された電子量を減算した差分に対応する電子量を基にラインプロファイルを作成している。このラインプロファイルにおいて、正のピーク位置がパターンのエッジの立上りに対応し、負のピーク位置がパターンのエッジの立下りに対応する。これにより、ラインプロファイルの1次微分や2次微分をすることなく、パターンのエッジの立上り又は立下り判定を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ラインアンドスペースパターンのSEM像の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態で使用される走査型電子顕微鏡の構成図である。
【図3】信号処理部が取得する電子像およびプロファイルの説明図である。
【図4】複数の電子検出器によってパターンの凹凸が強調される原理を説明する図である。
【図5】COGマスクのSEM画像及びラインプロファイルを示す図である。
【図6】エッジに傾斜があるパターンと傾斜がないパターンのSEM画像及びラインプロファイルを示す図である。
【図7】エッジの角度算出を説明する図である。
【図8】薄膜マスクにおけるパターンの線幅測定を説明する図である。
【図9】薄膜マスクのSEM画像及びラインプロファイルを示す図である。
【図10】測定値のエッジ幅による補正を説明する図である。
【図11】パターンを測定する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
はじめに、パターン測定装置として使用される走査型電子顕微鏡の構成について説明する。次に、一般的なパターンの線幅の測定方法について説明する。次に、複数の電子検出器を使用したSEM画像の生成及びパターンの測定について説明する。
【0026】
(走査型電子顕微鏡の構成)
図2は、本実施形態に係る走査型電子顕微鏡の構成図である。
【0027】
この走査型電子顕微鏡100は、電子走査部10と、信号処理部30と、画像表示部40と、記憶部55と、電子走査部10、信号処理部30、画像表示部40及び記憶部55の各部を制御する制御部20とに大別される。制御部20は、プロファイル作成部21、及びエッジ検出部23を有している。
【0028】
電子走査部10は、電子銃1とコンデンサレンズ2と偏向コイル3と対物レンズ4と移動ステージ5と試料ホルダ6とを有している。
【0029】
電子銃1から照射された荷電粒子9をコンデンサレンズ2、偏向コイル3、対物レンズ4を通して移動ステージ5上の試料7に照射するようになっている。
【0030】
荷電粒子9(1次電子ビーム)が照射されて試料7から放出される2次電子は、シンチレータ等で構成される電子検出器8によって検出される。検出された2次電子の電子量は、信号処理部30のAD変換器によってデジタル量に変換され、画像データとして記憶部55に格納される。画像データは輝度信号に変換されて画像表示部40で表示される。
【0031】
画像データは、試料7上における1次電子ビームの走査位置と同じ配置になるように2次元配列上に並べられて、2次元デジタル画像が得られる。この2次元デジタル画像の各画素(ピクセル)は、それぞれ8ビットの情報量で輝度データを表わしている。
【0032】
偏向コイル3の電子偏向量と画像表示部40の画像スキャン量は制御部20によって制御される。また、制御部20には、線幅測定を実行するためのプログラムが格納されている。
【0033】
プロファイル作成部21では、指定された範囲のSEM画像データの輝度信号を表すラインプロファイルを作成する。ラインプロファイルは、2次電子の電子量に対応した輝度信号を表すものであり、測定パターンの断面形状を反映すると考えられている。
【0034】
エッジ検出部23は、ラインプロファイルのデータを基に、パターンのエッジを検出する。
【0035】
(一般的なSEM画像を利用したパターンサイズの測定)
次に、図2に示した走査型電子顕微鏡100を用いて、図3(a)に示す試料のパターンのエッジ検出を含むSEM画像を利用したパターンサイズの測定について説明する。
【0036】
試料7として、図3(a)に示すように、フォトマスク基板50上に配線パターン51が形成されたものを対象する。試料7の一部は図3(a)に示すような平面形状となっている。ここで、破線52で囲んだ部分は、走査型電子顕微鏡100の観察領域を示している。
【0037】
図3(b)は、図3(a)に示す試料上に電子ビームを走査して得られる2次電子等の電子量を電子検出器8によって検出し、検出した電子量を輝度信号に変換し、電子ビームの走査と表示装置(画像表示部40)のCRTの走査とを同期させて表示したSEM画像の例を示している。
【0038】
図3(b)に示すSEM画像から、測長エリアを指定してSEM画像を抽出する。測長エリアは例えば幅H1が400ピクセル、長さLの領域とする。この領域は、上側ラインマーカーLM1、下側ラインマーカーLM2、左側ラインマーカーLM3及び右側ラインマーカーLM4によってオペレータによって選択される。
【0039】
抽出したSEM画像ピクセルデータから、測長エリアのH1方向を分割し、分割した領域について輝度分布に対応するラインプロファイルを求める。なお、ラインプロファイルを求めるときに、長さL方向に例えば3ピクセル幅でスムージング処理を行うことによりノイズ成分を小さくすることができる。
【0040】
図3(c)は、図3(a)のI−I線に沿って電子ビームを照射したときに得られる試料から放出される2次電子の電子量に対応するラインプロファイルを示した図である。図3(c)に示すように、ラインプロファイル(コントラストプロファイル)は、パターンのエッジ部分で急激に変化する。急激に変化する位置を求めるために、一般的には、ラインプロファイルを微分して、微分信号量の最大ピークと最小ピークを求める。
【0041】
更に、図3(d)に示すように、ピーク前後の複数の微分信号Dxからピクセル間を補完して微分波形C1,C2を求め、1/100の分解能で第1ピークP1と第2ピークP2のピーク位置を計算する。ラインパターンの幅W1は、第1ピークP1と第2ピークP2との間の距離として求められる。
【0042】
以上の処理を分割したそれぞれの領域で行い、各領域で算出したパターンの幅の平均値を測長値とすることで、より正確なラインパターンの幅W1が得られる。
【0043】
(複数の電子検出器によるSEM画像の生成及びパターンの測定)
以下に、複数の電子検出器による試料上に形成されたパターンのSEM画像の取得、及び、パターンの測定処理について説明する。
【0044】
図4(a)は、電子検出器の配置を示す概略模式図である。図4(a)に示すように、電子検出器45a〜45dが、荷電粒子ビーム42の光軸を中心に、対称に配置されている。各電子検出器45a〜45dは、試料ステージ41上に載置された試料上に荷電粒子ビームを照射することによって発生する2次電子を捕捉して、各設置位置における電子量をch1〜ch4の信号として信号処理部30に送出する。
【0045】
通常は、このように配置された各電子検出器45a〜45dにおけるch1〜ch4の信号をすべて加算して2次電子量を算出し、その値を基にSEM画像を生成したり、エッジ位置を検出したりしている。
【0046】
本実施形態では、ラインパターンの一方のエッジ側に設けられた電子検出器で検出された2次電子量と、他方のエッジ側に設けられた電子検出器で検出された2次電子量との差分を算出して、その差分データを基にSEM画像を生成する。このようにして生成されたSEM画像では、電子検出量のすべてを合計した電子量を基に生成したSEM画像に比べて、エッジ位置が明確になり、パターンの凹凸を明確に認識することが可能になる。
【0047】
図4(b)は、パターンの凹凸が強調される原理を説明する図である。パターンは、断面形状に示すような立上り傾斜のエッジ46aと立下り傾斜のエッジ46bを有するものとする。
【0048】
パターンの左側に配置された検出器45aと検出器45bにより検出される信号を合計した信号をL信号とし、パターンの右側に配置された検出器45cと検出器45dにより検出される信号を合計した信号をR信号とする。
【0049】
立上り傾斜のエッジ46aにおいて発生する2次電子は左側に配置された検出器(45a,45b)で多量に捕捉され、立下り傾斜のエッジ46bにおいて発生する2次電子は右側に配置された検出器(45c、45d)で多量に捕捉される。
【0050】
立上り傾斜のエッジ46aにおいて発生する2次電子は、左側に配置された検出器(45a、45b)に向かう量が多くなるため、エッジ46aに対応するL信号47aの値が大きく、右側に配置された検出器(45c、45d)に向かう量は少なくなるため、L信号47aに比べて小さい値(R信号48a)になる。同様に、立下り傾斜のエッジ46bでは、エッジ46bに対応するR信号48bの値がL信号47bの値より大きくなっている。
【0051】
L信号とR信号との差分をとると、平坦な領域では信号量がゼロに近くなり、立上り傾斜のエッジ46aにおける電子量はL−R信号49aに示すようにプラス側に強調され、立下り傾斜のエッジ46bにおける電子量はL−R信号49bに示すようにマイナス側に強調される。
【0052】
図5は、COGマスクに対するSEM画像、及びラインプロファイルを示した図である。図5(a)は、ガラス基板56の上に形成されたクロムパターン57を示している。図5(b)は、図5(a)のCOGマスクに対して、左側の検出器(45a、45b)により検出された信号量と右側の検出器(45c、45d)により検出された信号量とを加算した信号量を基に作成したSEM画像58を示している。このSEM画像58に示すように、パターン57aが形成されている領域の画像58aはパターンが形成されていない領域の画像58bよりも明るく表示されている。ラインプロファイルL1に示すように、エッジ部分では信号量が他の部分よりも大きくなっている。
【0053】
図5(c)は、図5(a)のCOGマスクに対して、左側の検出器(45a、45b)により検出された信号量から右側の検出器(45c、45d)により検出された信号量を減算した信号量を基に作成したSEM画像59を示している。このSEM画像59に示すように、パターンの立上りエッジE1、立下りエッジE2に対応するSEM画像59c、59dがそれぞれ白、黒に強調されて表示されている。また、ラインプロファイルL2によると、立上りエッジ部ではプラスピーク、立下りエッジ部ではマイナスピークを示し、パターンが形成されている領域のSEM画像59aとパターンが形成されていない領域のSEM画像59bとを明瞭に区別することができる。
【0054】
次に、図6及び図7を参照しながら、エッジ幅の検出及びエッジの角度測定について説明する。図6は、エッジに傾斜があるパターンと傾斜がないパターンのSEM画像及びラインプロファイルを示した図である。
【0055】
図6(a)は、パターンの膜厚が70nmでエッジに傾斜がある場合のSEM画像61を示している。SEM画像63aはスペースに対応し、SEM画像63bはパターンに対応している。また、パターンの立上りエッジに対応する部分のSEM画像63cは白く表示されている。エッジ部分のラインプロファイルL3に着目すると、正のピーク66のスペース側には、ピーク66に至る途中に段差65が存在し、突起した状態で幅が数nmのピーク66が現れている。
【0056】
一方、図6(b)は、エッジの角度が90度のパターンに対するSEM画像62を示している。SEM画像64aはスペースに対応し、SEM画像64bはパターンに対応している。また、パターンの立上りエッジに対応する部分のSEM画像64cの輝度が一番高くなっている。エッジ部分のラインプロファイルL4に着目すると、図6(a)とは異なり、正のピーク67のスペース側は一定の傾斜であり、段差が存在していない。
【0057】
このように、本来、ビーム径より小さい幅はSEM画像のラインプロファイルに現れることはないが、L−Rの差分画像を生成することで、エッジの幅の情報が顕在化していると考えられる突起状態のピークを観察することができる。従って、このピーク部の幅を測定することで、エッジ部の幅を検出することができる。
【0058】
また、さらに、パターンの膜厚が既知であれば、このエッジ部分の幅からエッジ側壁の角度を算出することが可能となる。
【0059】
図7は、エッジの角度算出について説明する図である。測定対象のパターン71の膜厚Hは予め分かっているものとする。
【0060】
パターン71のエッジ75と反対側の検出器で検出されたR信号を基に作成されたラインプロファイルL5は、エッジ75の影となるため、立上りパターンのスペース側で信号値が下がり、エッジ部分では平坦部分よりも信号値が大きくなっている。
【0061】
パターン71のエッジ75側の検出器で検出されたL信号を基に作成されたラインプロファイルL6は、エッジ75の反射側となるため、立上りパターンのスペース側で信号値が上がり、エッジ部分ではR信号よりも大きな信号値となっている。
【0062】
L信号とR信号の差分信号(L−R信号)によるラインプロファイルL7では、エッジ75のスペース側に段差77が出現し、エッジ75に対応して突起状にピークを形成している。
【0063】
R信号において、エッジに幅があるときは、エッジの中央部にラインプロファイルL5のピークが出現するとともに、エッジ部分のスペース側においてラインプロファイルL5の変化率がプラスの部分が存在する。このプラスの部分の変化率とL信号のラインプロファイルL6の変化率とが同一になる部分が存在することにより、L−R信号における段差77が出現する。
【0064】
一方、エッジの角度が90度の場合は、エッジ部分の幅が0であるため、L−R信号において段差が出現しないと考えられる。
【0065】
従って、L−R信号において、ピークに至る途中であってピーク位置近傍に段差を有するとき、この段差のピーク側の山の幅、例えば、端点位置(ラインプロファイルの変化率が急激に変わる点)からピークを挟んだ端点位置と同一の信号値を持つ位置までの距離W、をエッジ幅とみなしている。
【0066】
また、ラインプロファイルを微分して微分プロファイルを取得し、この微分プロファイルから段差のピーク側の極大値及び極小値を求め、極大値の位置から極小値の位置までをエッジ幅とするようにしてもよい。
【0067】
このようにして検出したエッジ幅Wとパターンの高さHとを用いて、エッジの角度θはtanθ=H/Wにより算出することが可能となる。
【0068】
また、パターン71の幅は、パターン左側で検出したエッジ75の幅の左側のエッジ位置と、パターン右側で検出したエッジ76の幅の右側のエッジ位置との距離から算出することができる。この測定方法により、電子ビーム径に依存しないパターンの寸法測定が可能となる。
【0069】
次に、高さが10nm以下のパターンが形成された薄膜マスクにおけるパターン幅の測定方法について説明する。
【0070】
図8は、パターンのSEM画像を従来の電子検出器で取得したときの処理を示している。図8に示すように、ライン部85aの輝度がスペース部85bの輝度よりも低くなっている。薄膜パターンの場合、エッジ部85cの輝度信号が非常に小さいため、このプロファイルから立上りか立下りかを判定することは困難である。また、輝度情報もパターンの材質や膜厚によって変化するため、ラインとスペースが等間隔のパターンの場合、ラインとスペースを判別することは非常に困難である。
【0071】
また、図8に示すように、ラインプロファイルのエッジ位置(E3,E4)には、極小値と極大値とが現れているが、左側のエッジE3の位置はプロファイル87aの極大値88aの左側の立上りエッジ位置、右側のエッジE4の位置はプロファイル87bの極大値88bの右側の立下りエッジ位置となり、スペース部85bの輝度がプロファイルの極大値(88a、88b)よりも高いため、正確にエッジ位置を検出することは困難である。
【0072】
図9は、薄膜マスクに対して電子検出器45a〜45dで検出された電子量を基に生成されたSEM画像を示している。
【0073】
図9(a)は、基板91に薄膜パターン92が形成された薄膜マスクの例を示している。図9(b)は、パターン92の左側の電子検出器45a、45bにより検出された電子量を基に生成したSEM画像93、及びラインプロファイルL8を示している。図9(b)のSEM画像93に示すように、パターンのエッジ位置(E5,E6)に対応する部分のSEM画像93c、93dは高輝度のために白く表示され、パターンが形成されている部分のSEM画像93aがパターンの形成されていない部分のSEM画像93bよりも暗く表示されている。
【0074】
また、ラインプロファイルL8に示すように、パターンの形成されていない部分93bの電子量がパターンの形成されている部分93aの電子量よりも高くなっている。また、パターンのエッジ位置(E5,E6)では、ラインプロファイルL8の値が大きくなっているが、左側のエッジ位置E5に対応するラインプロファイルQ1の値の方が、右側のエッジ位置E6に対応するラインプロファイルQ2の値よりも大きくなっている。
【0075】
図9(c)は、パターン92の右側の電子検出器(45c、45d)により検出された電子量を基に生成したSEM画像94、及びラインプロファイルL9を示している。図9(c)のSEM画像94に示すように、パターンのエッジ位置(E5,E6)に対応する部分のSEM画像94c、94dは高輝度のために白く表示され、パターンが形成されている部分のSEM画像94aがパターンの形成されていない部分のSEM画像94bよりも暗く表示されている。
【0076】
また、ラインプロファイルL9に示すように、パターンが形成されていない部分94bの電子量がパターンの形成されている部分94aの電子量よりも高くなっている。また、パターンのエッジ位置(E5,E6)では、ラインプロファイルL9の値が大きくなっているが、左側のエッジ位置E5に対応するラインプロファイルQ3の値の方が、右側のエッジ位置E6に対応するラインプロファイルQ4の値よりも小さくなっている。
【0077】
図9(d)は、左側の電子検出器(45a,45b)により検出された電子量と右側の電子検出器(45c、45d)により検出された電子量とを加算した電子量を基に生成したSEM画像95、及びラインプロファイルL10を示している。図9(d)のSEM画像95に示すように、パターンのエッジ位置(E5,E6)に対応する部分のSEM画像95c、95dは高輝度のために白く表示され、パターンが形成されている部分のSEM画像95aがパターンの形成されていない部分のSEM画像95bよりも暗く表示されている。
【0078】
また、ラインプロファイルL10に示すように、パターンが形成されていない部分95bの電子量がパターンの形成されている部分95aの電子量よりも高くなっている。また、パターンのエッジ位置(E5,E6)では、ラインプロファイルの値が大きくなっており、左側のエッジ位置E5に対応するラインプロファイルQ5の値と、右側のエッジ位置E6に対応するラインプロファイルQ6の値がほぼ同じになっている。
【0079】
図9(e)は、左側の電子検出器(45a、45b)により検出された電子量から右側の電子検出器(45c、45d)により検出された電子量を減算した電子量を基に生成したSEM画像96、及びラインプロファイルL11を示している。なお、画像の各画素(ピクセル)は8ビットの情報量で輝度データが表されるが、左右の電子検出器により検出された電子量の差分をとったときに、所定の値、例えば128を加算して、画素値がマイナスにならないようにする。
【0080】
図9(e)のSEM画像96に示すように、パターンの立上りエッジ位置E5に対応する部分のSEM画像96cは白く表示され、パターンの立下りエッジ位置E6に対応する部分のSEM画像96dは黒く表示されている。また、パターンが形成されている部分のSEM画像96aとパターンが形成されていない部分のSEM画像96bとはほぼ同じ色で表示されている。
【0081】
また、ラインプロファイルL11に示すように、パターンが形成されていない部分96bとパターンが形成されている部分96aでは、電子量はほぼ同一になっている。
【0082】
また、パターンの左側の立上りエッジ位置E5に対応するラインプロファイルQ7は正のピーク値になり、パターンの右側の立下りエッジ位置E6に対応するラインプロファイルQ8は負のピーク値になっている。
【0083】
このように、パターンの左側の電子検出器45a、45bで検出された電子量から右側の電子検出器45c、45dで検出された電子量を減算することにより、エッジ位置E5,E6の信号量が強調され、立上りエッジと立下りエッジを容易に認識可能になり、パターンが形成されている領域と形成されていない領域とを明確に認識することが可能となる。
【0084】
次に、薄膜パターンの線幅の測定について説明する。薄膜の場合、上述したように、立上りエッジと立下りエッジ位置は明確に検出できるが、図10(b)に示すようにエッジ幅がSEM画像のピクセル分解能に比べて非常に狭く、L−Rの差分画像のプロファイルにエッジ幅の位置情報が現れない。従って、前述したCOGパターンでのプロファイルのエッジ幅情報を使ったパターン幅の測定が実施できない。
【0085】
以下に、薄膜パターンの線幅測定方法について説明する。
【0086】
図10(a)はパターン110に対するラインプロファイルL12を示した図である。このパターン110の幅は、エッジ111aの外側x1からエッジ111bの外側x4までの距離である。しかし、実際のラインプロファイルからはエッジ幅の位置を特定することはできない。
【0087】
本実施形態では、ラインプロファイルL12のピークをエッジの幅の中心と仮定し、さらに、立上りエッジのエッジ幅(|x1−x2|)と立下りエッジのエッジ幅(|x3−x4|)が同じであると仮定して、測定値(ラインプロファイルL12の正のピーク位置から負のピーク位置までの距離)に、設計値から推定した膜厚とエッジ角度から算出したエッジ幅(予め記憶部55に格納しておく)を加算してパターン110の線幅としている。
【0088】
図10(b)は図10(c)に示す薄膜パターンに対して膜厚及びエッジの傾斜角度毎にエッジ幅を計測した結果を示している。例えば、膜厚Hが5nmのときにエッジの傾斜角度が85度であると、エッジ幅は0.44nmとなる。
【0089】
図10(b)のエッジ幅に示すように、薄膜の場合はエッジ幅が狭いため、100K倍の画像の分解能(1ピクセル約1.4nm)ではラインプロファイルにエッジ幅の情報が現れない。よって、ラインプロファイルにより算出された値に予め算出されたエッジ幅を加算することにより、実際のライン幅に近い値を算出することが可能となる。
【0090】
なお、図10を参照して説明した薄膜パターンの線幅測定は、エッジの角度がほぼ90度に近く、エッジ幅が狭くなる場合にも同様に適用可能である。
【0091】
次に、図11を参照しながら、荷電粒子ビームによるパターン測定方法について説明する。図11は、ラインパターンを明確に表示してライン幅を測定するパターン測定処理の一例を示すフローチャートである。図11のパターン測定処理では、予めパターンが形成された試料に対して、各電子検出器からの検出電子量を基に、パターンの左側に配置された電子検出器により検出された電子量を基に作成されたSEM画像データ(左側SEM画像データ)及び右側に配置された電子検出器により検出された電子量を基に作成されたSEM画像データ(右側SEM画像データ)が記憶部55に格納されているものとする。
【0092】
図11のステップS11において、対象領域のSEM画像を取得する。所望の検査エリアを指定して、対象領域の左側SEM画像データと右側SEM画像データを記憶部55から抽出し、左側SEM画像データから右側SEM画像データを減算した画像データを生成する。このとき、所定のピクセル値、例えば128を加算して画像表示が可能な値に調整する。
【0093】
次のステップS12において、算出された画像データを基にSEM画像を表示する。このSEM画像では、立上りエッジ及び立下りエッジがそれぞれ強調され、例えば図9(e)に示すように立上りエッジに対応するSEM画像96cは輝度が高く白表示され、立下りエッジに対応するSEM画像96dは輝度が低く黒表示される。そのため、パターンが形成されている部分とパターンが形成されていない部分とを明確に識別可能に表示することができる。
【0094】
次のステップS13からステップS16は、パターンの線幅の測定を行うステップである。ステップS13では、ステップS11で取得したSEM画像データを所定の数の領域に分割する。
【0095】
次のステップS14において、ステップS13で分割した領域におけるラインプロファイルを算出する。ラインプロファイルの算出は、制御部20のプロファイル作成部21がSEM画像データのうちの輝度情報を抽出して行う。測長エリアの全領域について、ラインプロファイルからエッジ位置を算出し、それらの平均をとり指定された領域のエッジ位置の値とする。
【0096】
次のステップS15において、パターンのエッジ部分が立上がりなのか、立下りなのかを判定する。左側SEM画像データから右側SEM画像データを引いたSEM画像データを使用してラインプロファイルを生成したときには、正のピーク値の位置が立上がりエッジ位置と判定され、負のピーク値の位置が立下りのエッジ位置と判定される。
【0097】
次のステップS16において、ステップS15で判定した、パターンの立上りのエッジの位置と、そのパターンの立上りのエッジと対向する立下りのエッジのエッジ位置との間の幅を算出することにより、ラインパターンの線幅を算出する。
【0098】
なお、パターンの膜厚が、例えば10nm以下のように薄い場合には、パターンの立上りエッジと立下りエッジが同じ幅であると仮定し、ステップS16において算出されたエッジ間の距離に、予め設計値から推定したパターンの膜厚に対するエッジ幅を加算してパターンの線幅とするようにしてもよい。
【0099】
また、膜厚が、例えば70nm以上のパターンについては、ステップS14において作成されたラインプロファイルにおいて、ピークに至る途中であってピーク位置近傍に段差を有するとき、この段差のピーク側の山の幅、例えば端点位置からピークを挟んだ端点位置と同一の信号値を持つ位置までの距離、をエッジ幅とし、エッジ幅とパターンの高さを基にエッジの傾斜角度を算出するようにしてもよい。
【0100】
以上説明したように、本実施形態のパターン測定装置及びパターン測定方法では、複数の電子検出器を備えたパターン測定装置において、パターンの一方のエッジ側に配置された電子検出器によって検出された電子量とパターンの他方のエッジ側に配置された電子検出器によって検出された電子量との差分を算出し、その差分に対応する電子量を基にパターンのSEM画像を形成している。これにより、エッジの部分の輝度が強調され、パターンが形成されている領域とパターンの形成されていない領域との区別が明確に表示されるようになる。
【0101】
また、パターンの左側に配置された電子検出器によって検出された電子量からパターンの右側に配置された電子検出器によって検出された電子量を減算した差分に対応する電子量を基にラインプロファイルを作成している。このラインプロファイルにおいて、正のピーク位置がパターンのエッジの立上りに対応し、負のピーク位置がパターンのエッジの立下りに対応する。これにより、ラインプロファイルの1次微分や2次微分をすることなく、パターンのエッジの立上り又は立下り判定を容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0102】
1…電子銃、2…コンデンサレンズ、3…偏向コイル、4…対物レンズ、5、41…移動ステージ、7…試料、8、45a〜45d…電子検出器、9、42…荷電粒子、10…電子走査部、20…制御部、21…プロファイル作成部、30…信号処理部、40…画像表示部、50…下地層、51…レジストパターン、55…記憶部、58、59、61、62、85、93〜96、…SEM画像、100…走査型電子顕微鏡、L1〜L12…ラインプロファイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段と、
荷電粒子ビームを試料上に照射する照射手段と、
前記荷電粒子ビームの照射によってパターンが形成された前記試料上から発生する電子の電子量を検出する電子検出手段であって、前記荷電粒子ビームの光軸を挟んで設置された第1の電子検出手段及び第2の電子検出手段と、
前記電子量を基に当該パターンの画像データを生成する画像処理手段と、
前記第1の電子検出手段で検出された信号と前記第2の電子検出手段で検出された信号との差分信号を算出し、当該差分信号に対応する電子量を基に前記画像処理手段に前記パターンの画像データを生成させ、前記表示手段の画面に前記画像データに対応する画像を表示する制御手段と、
を有することを特徴とするパターン測定装置。
【請求項2】
さらに、前記電子検出手段で検出された電子の電子量を基に前記試料上に形成されたパターンのラインプロファイルを作成するラインプロファイル作成手段を有し、
前記制御手段は、前記第1の電子検出手段が前記パターンの左側に設けられ、前記第2の電子検出手段が前記パターンの右側に設けられているとき、前記ラインプロファイル作成手段により作成された前記差分信号に対応するラインプロファイルの正のピーク位置が前記パターンのエッジの立上りであり、負のピーク位置が前記パターンのエッジの立下りであると判定することを特徴とする請求項1に記載のパターン測定装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記差分信号に対応するラインプロファイルにおいて、ピークに至る途中であってピーク位置近傍に段差を有するとき、当該段差のピーク側の山の幅をエッジ幅とすることを特徴とする請求項2に記載のパターン測定装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記段差のピーク側の端点位置から、ピークを挟んだ当該端点位置と同一の信号値を持つ位置までの距離を前記山の幅とすることを特徴とする請求項3に記載のパターン測定装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ラインプロファイルを微分して微分プロファイルを取得し、当該微分プロファイルにおいて前記段差のピーク側の極大値の位置から極小値の位置までの距離を前記山の幅とすることを特徴とする請求項3に記載のパターン測定装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記エッジ幅と前記パターンの高さを基に前記パターンのエッジの傾斜角度を算出することを特徴とする請求項4又は5に記載のパターン測定装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ラインプロファイルにおける正のピークを基に検出された位置X1から位置X2(>X1)までのエッジ幅と、当該正のピークに隣接する負のピークを基に検出された位置X3(>X2)からX4(>X3)までのエッジ幅に対して、位置X1から位置X4までの距離を前記パターンの底辺の幅として算出することを特徴とする請求項3に記載のパターン測定装置。
【請求項8】
前記制御手段は、少なくとも前記パターンのエッジ角度がほぼ直角か又は前記パターンの膜厚が所定の厚さよりも薄いとき、前記パターンの立上りエッジ及び立下りエッジの幅が同じであると仮定し、前記ラインプロファイルの正のピーク位置から負のピーク位置までの距離を算出し、前記パターンの膜厚及びエッジの傾斜角度を基に予め検出されたエッジ幅を前記距離に加算した値を前記パターンの線幅とすることを特徴とする請求項3に記載のパターン測定装置。
【請求項9】
荷電粒子ビームを試料上に照射して、前記試料上から発生する電子の電子量を基に試料上に形成されたパターンの計測をするパターン測定方法であって、
前記荷電粒子ビームの光軸を挟んで設置された第1の電子検出手段と第2の電子検出手段のうち、前記第1の電子検出手段により検出された第1の電子量を基に前記試料上に形成されたパターンのSEM画像を取得するステップと、
前記第2の電子検出手段により検出された第2の電子量を基に前記試料上に形成されたパターンのSEM画像を取得するステップと、
前記第1の電子量と前記第2の電子量の差分に対応する第3の電子量を基にパターンのSEM画像を取得するステップと、
当該SEM画像を表示手段の画面に表示するステップと、
を有することを特徴とするパターン測定方法。
【請求項10】
さらに、前記第3の電子量を基に前記パターンのラインプロファイルを作成するステップと、
前記第1の電子検出手段が前記パターンの左側に設けられ、前記第2の電子検出手段が前記パターンの右側に設けられているとき、前記ラインプロファイルの正のピーク位置が前記パターンのエッジの立上りであり、負のピーク位置が前記パターンのエッジの立下りであると判定するステップと、
を有することを特徴とする請求項9に記載のパターン測定方法。
【請求項11】
さらに、前記ラインプロファイルにおいて、ピークに至る途中であってピーク位置近傍に段差を有するとき、当該段差のピーク側の山の幅をエッジ幅とするステップを有することを特徴とする請求項10に記載のパターン測定方法。
【請求項12】
前記段差のピーク側の山の幅をエッジ幅とするステップでは、前記段差のピーク側の端点位置から、ピークを挟んだ当該端点位置と同一の信号値を持つ位置までの距離を前記山の幅とすることを特徴とする請求項11に記載のパターン測定方法。
【請求項13】
前記段差のピーク側の山の幅をエッジ幅とするステップは、
前記ラインプロファイルを微分して微分プロファイルを取得するステップと、
前記微分プロファイルにおいて前記段差のピーク側の極大値の位置から極小値の位置までの距離を前記山の幅とするステップと、
を有することを特徴とする請求項11に記載のパターン測定方法。
【請求項14】
さらに、前記エッジ幅と前記パターンの高さを基に前記パターンのエッジの傾斜角度を算出するステップを有することを特徴とする請求項11に記載のパターン測定方法。
【請求項15】
さらに、前記ラインプロファイルから正のピーク及び当該正のピークに隣接する負のピークを検出するステップと、
前記正のピークを基に検出された位置X1から位置X2(>X1)までのエッジ幅を算出するステップと、
前記負のピークを基に検出された位置X3(>X2)から位置X4(>X3)までのエッジ幅を算出するステップと、
前記位置X1から前記位置X4までの距離を前記パターンの底辺の幅として算出するステップと、
を有することを特徴とする請求項11に記載のパターン測定方法。
【請求項16】
さらに、少なくとも前記パターンのエッジ角度がほぼ直角か又は前記パターンの膜厚が所定の厚さよりも薄いとき、前記パターンの立上りエッジ及び立下りエッジの幅が同じであると仮定して前記ラインプロファイルの正のピーク位置から負のピーク位置までの距離を算出するステップと、
前記パターンの膜厚及びエッジの傾斜角度を基に予め検出されたエッジ幅を前記距離に加算して前記パターンの線幅を算出するステップと、
を有することを特徴とする請求項10に記載のパターン測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−37399(P2012−37399A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178310(P2010−178310)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】