説明

パターン状ポリイミド膜の形成方法、電子部品、電子部品の形成方法

【課題】 インクジェット法などの印刷手法によって、微細なパターン状ポリイミド膜を形成する方法を提供すること。さらに、容易な表面処理方法でインクジェット印刷に適した均一な基板表面を形成することができ、結果として所望のパターンのポリイミド膜が得られる塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する表面処理剤を用いて、基板上に前記表面処理膜を形成する工程、その後に、アミド酸誘導体及びそのイミド化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有するインクジェットインクを前記表面処理膜上にインクジェット塗布方法によりパターン状に形成する工程、を有する、パターン状ポリイミド膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法などによる印刷手法を用いて、微細なパターンを形成することを可能にするパターン状ポリイミド膜の形成方法、該方法で形成された電子部品、該電子部品の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料用の樹脂膜は、絶縁膜、保護膜などの用途で電子部品の多くの部分に使用されている。これまで様々な感光性組成物や熱硬化性組成物が、これらの用途に用いられてきた。
【0003】
基板上に樹脂膜を形成する際、あるいは材質の異なる2種の基板を樹脂膜を介して接着する際に、基板と樹脂膜との密着性(接着性)を向上させるために、あらかじめ基板を下地剤であるプライマー溶液で処理する技術が検討されている。
例えば、無機材料と、塗料用、接着剤用、成形用などのエポキシ樹脂との耐水接着性向上、ミクロボイドの抑制のための濡れ性向上を目的としたプライマー溶液が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。該プライマー溶液は、有効成分として一分子中に少なくとも2個のエポキシ官能基を持つエポキシ化合物と、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等の該エポキシ化合物の持つ該エポキシ官能基と反応しうる官能基を有するシリコン化合物との反応生成物を含有することを特徴とする。
しかしながら、該プライマー溶液で処理する技術は、ガラス板とエポキシ樹脂との接着性を改良させることに関しており、後述するインクジェット法のパターニングの精度を向上させるためのプライマー処理に関するものではなく、にじまない、濡れ広がらないといった効果は何ら記述されていない。
【0004】
一方、近年、インクジェット法を始めとする様々な印刷手法が使用されてきており、オンデマンドでのパターン形成が可能なインクジェット法は、環境に優しく、コストメリットも期待できることから注目されてきている。
【0005】
さらに、インクジェット法によってフォトリソグラフィ法で得られるパターンに匹敵する微細なパターンを実現することが求められているが、現在のインクジェット法では、インクの着弾後、インクが濡れ広がるため、また一回の吐出における液量が多いために、その要求を実現するのは難しい。
【0006】
インクジェット法によって基板上に微細なパターンを描画するためには、基板の表面処理が必要であり、そのための基板への種々の表面処理の技術が提案されている。
例えば、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤にて、透明導電膜を表面処理した後、透明導電膜上の遮光層に重複する領域に部分的にインクジェット方式により硬化型樹脂組成物からなる液晶表示素子用スペーサーを付与する技術が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。具体的には、シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランのエタノール溶液が用いられている。また、硬化型樹脂組成物として、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸、ジアセトンアクリルアミド、ベンゾイルパーオキシドまたは2−ブタノンを90℃で5時間溶液重合し、さらに2−ブタノンを加えて固形分が18重量%となるように希釈した溶液が用いられている。
【0007】
さらに、表面処理の方法として、四フッ化メタン等のフルオロカーボン系ガスを使用したプラズマ処理法や、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2,テトラヒドロデシルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシランと基板とを同一の容器に入れて一定期間放置することによるフルオロアルキルシラン処理法が検討されている(例えば、例えば特許文献3及び4参照。)。
【0008】
また、(イ)下記式で表わされるシロキサンマクロモノマーおよび/または特定のシロキサンマクロモノマー1〜40重量%、(ロ)加水分解性アルコキシシリル基含有モノマー5〜50重量%、及び(ハ)これらと共重合可能な他の不飽和モノマー10〜94重量%の共重合により得られる加水分解性アルコキシシリル基含有シロキサンポリマー(A)を必須成分として含有することを特徴とする滑水性表面を形成し得るポリマー組成物が検討されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0009】


【0010】
上記式中、Zは炭素数1〜10のアルキル基を表わし、Z2は炭素数1〜6の二価の炭化水素基を表わし、Z3は水素原子又はメチル基を表わし、yは6〜300の数である。
【0011】
特許文献5には、ある物体に水が付着した場合に、水を拭き取るなど機械的方法で、強制的に前記ポリマー組成物を除去しなくとも、物体を傾けただけで付着水滴が転がり落ちるようにするために用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平01−197568号公報
【特許文献2】特開2001−83314号公報
【特許文献3】特開2005−251809号公報
【特許文献4】特開2004−6700号公報
【特許文献5】特開2000−239601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、インクジェット法などの印刷手法によって、微細なパターン状ポリイミド膜を形成する方法を提供することである。さらに、容易な表面処理方法でインクジェット印刷に適した均一な基板表面を形成することができ、結果として所望のパターンのポリイミド膜が得られる塗膜形成方法を提供することである。
【0014】
なお本明細書において、上記パターン状ポリイミド膜とは、基板表面が露出している箇所とポリイミド膜によって覆われている箇所とが混在している場合における、ポリイミド膜の部分をいう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する表面処理剤を用い、基板上に塗布し、表面処理膜を作製した。その後に、前記表面処理膜上にアミド酸誘導体及びそのイミド化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するインクジェットインクをインクジェット塗布方法によりパターンを形成することにより、本発明の課題の1つであるパターン性の良好なポリイミド膜が良好に形成できることを見出し、発明を完成させた。
【0016】
以下に本発明の構成を示す。
【0017】
[1] 式(1)で表される反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、式(2)、(3)または(4)で表されるパーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及び式(5)で表されるカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する表面処理剤を用いて、基板上に前記表面処理膜を形成する工程、その後に、アミド酸誘導体及びそのイミド化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有するインクジェットインクを前記表面処理膜上にインクジェット塗布方法によりパターン状に形成する工程、を有する、パターン状ポリイミド膜の形成方法。



式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の有機基であり、Rは、メチルあるいはOR’(ここで、R’は、炭素数1〜10の有機基である。)であり、Rは、ビニル、エポキシ、メタクリル、アクリル、アミノ、ウレイド、メルカプト、イソシアネート及びケチミンからなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する炭素数1〜20の有機基であり、Rは、炭素数1〜20の有機基であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の有機基であり、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基であり、Rは、フッ素数3〜41のパーフルオロアルキル基を含む炭素数1〜20の有機基であり、nは1〜1000の整数であり、Aは、−1〜−4のいずれかの価数を有し、単原子イオン、多原子イオン及び錯イオンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアニオンである。
[2] 表面処理剤が、さらに溶媒(D)を含むことを特徴とする[1]に記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
[3] 表面処理剤が、シランカップリング剤(A)、シランカップリング剤(B)及びシランカップリング剤(C)の全重量に対して、シランカップリング剤(A)の割合が0重量%〜90重量%であることを特徴とする[1]または[2]に記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
[4] 表面処理剤が、シランカップリング剤(A)、シランカップリング剤(B)及びシランカップリング剤(C)の全重量に対して、シランカップリング剤(A)の割合が20重量%〜90重量%であることを特徴とする[3]に記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
[5] シランカップリング剤(A)が、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
[6]シランカップリング剤(B)が、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロオクチルトリエトキシシラン、パーフルオロドデシル−1H−1H−2H−2H−トリエトキシシラン、パーフルオロデトラデシル−1H−1H−2H−2H−トリエトキシシランまたは3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
[7] シランカップリング剤(C)が、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルデシル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムブロマイドまたはN−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライドであることを特徴とする[3]〜[6]のいずれかに記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
[8] アミド酸誘導体が、式(6)で表される構成単位を有し、式(6−1)及び下記式(6−2)で表される分子末端基の群から選ばれる1以上の分子末端基を有する化合物、及び式(7)〜(10)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。



式中、Xは、炭素数1〜100の4価の有機基であり、Yは、炭素数1〜100の2価の有機基であり、X’は、炭素数1〜100の2価の有機基であり、Y’は、炭素数1〜100の1価の有機基であり、Zは、炭素数1〜100の1価の有機基である。
[9] アミド酸誘導体が、式(6)で表される構成単位を有し、式(6−1)及び下記式(6−2)で表される分子末端基の群から選ばれる1以上の分子末端基を有する化合物、及び式(7)〜(10)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[8]に記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。



式中、Xは、炭素数1〜100の4価の有機基であり、Yは、炭素数1〜100の2価の有機基であり、X’は、不飽和結合を有する炭素数2〜100の2価の有機基、または式(a)で表される2価の有機基であり、Y’は、不飽和結合を有する炭素数2〜100の1価の有機基、または式(b)で表される1価の有機基であり、Zは、炭素数1〜100の1価の有機基である。


式中、Rは、水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R’は、炭素数1〜20の3価の有機基であり、R”は、炭素数1〜20の2価の有機基である。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の形成方法により得られたパターン状ポリイミド膜を有する電子部品。
[11] [1]〜[9]のいずれかに記載の形成方法により得られたパターン状ポリイミド膜を形成する工程を有する電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の表面処理剤から形成された表面処理膜は、インクジェットにより吐出された液滴のパターニングの精度を向上させる。これによって、インクジェット塗布により微細なパターン状ポリイミド膜を形成することが可能である。したがって本発明のパターン状ポリイミド膜の形成方法は、特に基板上に電子回路パターンを形成する用途等に最適である。
また、本発明のパターン状ポリイミド膜の形成方法によると、インクジェット塗布により必要な部分のみにポリイミド膜を描画することが可能となるため、インクジェットインクの使用量を圧倒的に少なくすることができる。さらにフォトマスクを使用する必要がないので、多品種・大量生産が可能であり、また、製造に要する工程数を少なくすることができる。
本発明のパターン状ポリイミド膜は、例えば、密着性、耐熱性、電気絶縁性が高いため、本発明のパターン状ポリイミド膜を有する電子部品は、信頼性が高く、歩留まりを低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、基板に、パターニングの精度を向上させるために用いられる表面処理剤(以下、単に「本発明の表面処理剤」ともいう。)は、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。また、前記表面処理剤は、単なる混合物であってもよいし、加水分解等で反応した反応生成物であってもよい。また、これらの混合物であってもよい。また、前記表面処理剤は、溶剤(D)を含んでもよい。
【0020】
1.反応性の有機基を有するランカップリング剤(A)
式(1)で表わされる反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)は、基板に、微細なパターン状ポリイミド膜を形成するのに十分なパターニングの精度を向上させる機能を有する。
【0021】


【0022】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の有機基であり、Rは、メチルあるいはOR’(ここで、R’は、炭素数1〜10の有機基である。)であり、Rは、ビニル、エポキシ、メタクリル、アクリル、アミノ、ウレイド、メルカプト、イソシアネート及びケチミンからなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する炭素数1〜20の有機基である。
【0023】
としては、OR’が好ましく、R、R及びR’としては、基板に対して、優れたパターニングの精度の向上と、ポリイミド膜の密着性を付与する観点から炭素数1〜5のアルキルが好ましく、炭素数1〜3のアルキルがより好ましく、メチルまたはエチルであることが特に好ましい。
【0024】
は、基板に対して、優れたパターニングの精度の向上と、ポリイミド膜との密着性を付与する観点から、炭素数1〜15のアルキル、ベンジルを含む炭素数1〜15のアルキル、炭素数4〜15のシクロアルキルが好ましく、炭素数1〜8のアルキル、ベンジルを含む炭素数1〜8のアルキル、炭素数4〜6のシクロアルキルがより好ましい。
【0025】
は、反応性を付与する観点から、ビニル、エポキシ、メタクリル、アクリル、アミノ、ウレイド、メルカプト、イソシアネートまたはケチミンを基として有することが好ましく、エポキシ、メタクリル、アクリル、アミノ、メルカプト、またはイソシアネートを基として有することがより好ましく、エポキシ、メタクリル、アクリル、またはアミノを基として有することがさらに好ましい。
【0026】
以下に反応性の有機基有するシランカップリング剤(A)の具体例を挙げる。
反応性の有機基有するシランカップリング剤(A)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノフェニルトリメトキシシラン、N, N’−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどが挙げられる。
【0027】
反応性の有機基有するシランカップリング剤(A)としては、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノフェニルトリメトキシシラン、N, N’−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0028】
さらにN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノフェニルトリメトキシシラン、N, N’−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0029】
本発明の表面処理剤を製造するにあたって、上記反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)は1種で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。なお、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)の製造方法は公知であり、シランカップリング剤(A)は、市販もされている。
【0030】
2.パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を1つ以上有するシランカップリング剤(B)
式(2)、式(3)及び式(4)で表わされるパーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を1つ以上有するシランカップリング剤(B)は、基板に、微細なパターン状ポリイミド膜を形成するのに十分なパターニングの精度を向上させる機能だけでなく、撥インク性を付与する機能を有する。
【0031】


【0032】
式(2)〜(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の有機基であり、Rは、メチルあるいはOR’(ここで、R’は、炭素数1〜10の有機基である。)であり、Rは、炭素数1〜20の有機基であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の有機基であり、Rは、フッ素数3〜41のパーフルオロアルキル基を含む炭素数1〜20の有機基であり、nは1〜1000の整数である。
【0033】
としては、OR’が好ましく、R、R及びR’としては、基板のパターニングの精度を向上させるだけでなく、基板とインクとの密着性を付与する観点から炭素数1〜5のアルキルが好ましく、炭素数1〜3のアルキルがより好ましい。R、R及びR’としては、メチル及びエチルが特に好ましい。
【0034】
としては、基板のパターニングの精度を向上させる機能の付与の観点から、炭素数1〜15の有機基が好ましく、炭素数2〜12の有機基がより好ましく、炭素数2〜12のアルキレンが特に好ましい。Rには、アミド結合を含んでいてもよい。Rとしては、メチレン、エチレン及びアルキレンが特に好ましい。
【0035】
、R及びRとしては、基板のパターニングの精度を向上させる機能の付与の観点から、炭素数1〜10の有機基が好ましく、炭素数1〜8の有機基がより好ましい。R、R及びRとしては、メチル及びフェニルが特に好ましい。
【0036】
は、基板のパターニングの精度を向上させる機能の付与の観点から、フッ素数3〜41のパーフルオロアルキル基を含む炭素数1〜20の有機基が好ましく、フッ素数3〜33のパーフルオロアルキル基を含む炭素数1〜16の有機基がより好ましい。
【0037】
以下に、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)の具体例を挙げる。
【0038】
パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)としては、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロオクチルトリエトキシシラン、パーフルオロドデシル−1H−1H−2H−2H−トリエトキシシラン、パーフルオロデトラデシル−1H−1H−2H−2H−トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランあるいは式(11)、(12)及び(13)などが挙げられる。
【0039】

【0040】
パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)としては、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロオクチルトリエトキシシラン、パーフルオロドデシル−1H−1H−2H−2H−トリエトキシシラン、パーフルオロデトラデシル−1H−1H−2H−2H−トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0041】
上記式(11)、(12)及び(13)は、アミンとテトラカルボン二酸無水物、あるいはアミンと酸無水物の反応生成物から得られる。
【0042】
本発明の表面処理剤を製造するにあたって、上記パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)は1種で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0043】
3.カチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)
式(5)で表わされるカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)は、基板に、微細なパターン状ポリイミド膜を形成するのに十分なパターニングの精度を向上させる機能だけでなく、撥インク性を付与する機能を有する。
【0044】


【0045】
式(5)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の有機基であり、Rは、メチルあるいはOR’(ここで、R’は、炭素数1〜10の有機基である。)であり、Rは、炭素数1〜20の有機基であり、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基であり、Aは、−1〜−4のいずれかの価数を有し、単原子イオン、多原子イオン及び錯イオンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアニオンである。単原子イオンとしては、例えば、水素化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酸化物イオン及び硫化物イオンを挙げることができる。多原子イオンとしては、例えば、水酸化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸水素イオン、硫化水素イオン、チオシアン酸イオン 、過酸化物イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、クロム酸イオン 、二クロム酸イオン、リン酸一水素イオン、リン酸イオン、トリフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン及びビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミドイオンを挙げることができる。錯イオンとしては、例えば、テトラヒドロキソアルミン酸イオン、ジシアノ銀(I) 酸イオン、テトラヒドロキソクロム(III) 酸イオン、テトラクロロ金(III) 酸イオン、テトラヒドロキソ亜鉛(II) 酸イオン、テトラシアノ亜鉛(II) 酸イオン、テトラクロロ銅(II) 酸イオン、ヘキサシアノ鉄(III) 酸イオン、ビス(チオスルファト)銀(I) 酸イオン及びヘキサシアノ鉄(II) 酸イオンを挙げることができる。
【0046】
としては、OR’が好ましい。R、R及びR’としては、基板のパターニングの精度を向上させるだけでなく、基板とインクとの密着性を付与する観点から炭素数1〜5のアルキルが好ましく、炭素数1〜3のアルキルがより好ましい。R、R及びR’としては、メチル及びエチルが特に好ましい。また、Rとしては、基板のパターニングの精度を向上させるだけでなく、基板とインクとの密着性を付与する観点から炭素数1〜5のアルキレンが好ましく、炭素数1〜3のアルキレンがより好ましい。Rとしては、メチレン及びエチレンが特に好ましい。
【0047】
、R10及びR11としては、基板のパターニングの精度を向上させるだけでなく、基板とインクとの密着性を付与する観点から炭素数1〜5のアルキルが好ましく、炭素数1〜2のアルキルがより好ましい。R、R10及びR11としては、メチルが特に好ましい。
【0048】
以下にカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)の具体例を挙げる。
【0049】
N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルデシル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド好ましい。
【0050】
本発明の表面処理剤を製造するにあたっては、上記カチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)は、1種で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0051】
4.溶剤(D)
本発明の表面処理剤に含有される溶剤(D)は基板から均一に蒸発し、ムラのない表面処理を行う機能を有する。
【0052】
本発明で用いられる溶剤(D)の沸点は、50℃〜250℃であることが、基板上に塗布された本発明における表面処理剤の乾燥の容易性の観点から好ましい。
【0053】
沸点が50℃〜250℃である溶剤(D)の具体例としては、メタノール、メチルエチルケトン、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸エチル、キシレン、トルエン、ヘキサン、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、水、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メチルメトキシプロピオン酸、ジエチレングリコールモノブチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、エチルラクテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、安息香酸メチル、安息香酸エチル、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,3-ジメチル−2−イミダゾリジノン及びγ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0054】
これらのなかでも、水、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンおよびジエチレングリコールメチルエチルエーテルは、表面処理剤のぬれ性が良好であるため好ましい。
【0055】
本発明で用いられる溶剤(D)は、1種で使用してもよく、また、2種以上を併用した混合溶剤であってもよい。
【0056】
また、本発明の表面処理剤において、溶剤(D)は、表面処理剤の総量に対して、固形分である反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)の合計分が0.01〜50重量%となるように配合されることが好ましい。
【0057】
なお、好ましい固形分濃度は、本発明の表面処理剤の塗布方法に毎に異なる。たとえば浸漬法で表面処理剤を塗布する場合には、固形分濃度は、0.01〜30重量%であることが好ましく、0.05〜20重量%であることがさらに好ましい。布等で表面処理剤を塗り込む場合には、固形分濃度は、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.5〜15重量%であることがさらに好ましい。スピンコート法で表面処理剤を塗布する場合には、固形分濃度は、0.01〜50重量%であることが好ましく、0.5〜40重量%であることがさらに好ましい。
【0058】
5.表面処理剤の作製方法
表面処理剤は、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)とを混合し、作製することができる。前記表面処理剤に、溶剤(D)を含有させてもよく、この場合、溶剤(D)に水が含まれていると反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)が加水分解し、一部縮合生成物を作り、基板への密着力が高まるので好ましい。
【0059】
加水分解・縮合反応における温度は、通常20〜40℃の範囲が好ましい。さらには25℃〜35℃が好ましい。
【0060】
加水分解・縮合反応における時間は、通常1〜24時間の範囲であり、好ましいのは1〜5時間の範囲、さらには2〜3時間の範囲である。また、前記加水分解・縮合反応は、加圧、減圧または大気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。
【0061】
上記のようにして製造される本発明の表面処理剤において、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)の割合は、表面処理膜のパターニングの精度を向上させるだけでなく、基板とインクとの密着性を発現する観点から、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)の合計100重量%に対して、10〜100重量%であることが好ましく、20〜95重量%であることがより好ましく、25〜90重量%であることがさらに好ましい。
【0062】
また、本発明の表面処理剤において、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)の割合は、表面処理膜のパターニングの精度を向上させる観点から、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)の合計100重量%に対して、0〜45重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましく、5〜37.5重量%であることがさらに好ましい。
【0063】
また、本発明の表面処理剤において、カチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)の割合は、表面処理膜のパターニングの精度を向上させるだけでなく、基板とインクとの密着性を付与する観点から、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及びカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)の合計100重量%に対して、0〜100重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましく、5〜37.5重量%であることがさらに好ましい。
【0064】
6.添加剤
本発明の基板のパターニングの精度を向上させるための表面処理剤には、塗布均一性、表面処理膜の基板との密着性を向上させるために、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、フッ素系またはシリコン系の界面活性剤、アミン・ジアミン等の密着性向上剤などを挙げることができる。
【0065】
7.表面処理剤の保存
本発明の表面処理剤は、−30℃〜30℃の温度範囲で遮光して保存すると、経時安定性が良好であり好ましい。保存する温度範囲が−10℃〜20℃であれば析出物が生じることもなくより好ましい。
【0066】
8.本発明の表面処理剤の塗布法
本発明の表面処理剤による表面処理膜は、インクジェット分野において通常行なわれている方法や、その他の公知の方法により、ガラス等の基板上に表面処理剤を塗布することによって形成することができる。
【0067】
塗布方法としてたとえば、スピンコート、ロールコート、スリットコート、またはインクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0068】
本発明の表面処理剤を塗布する基板としては、公知の基板を用いることができる。
本発明に適用可能な基板としては、例えば、FR−1、FR−3、FR−4、CEM−3、又はE668等の各種規格に適合する、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、グリーンエポキシ基板及びBTレジン基板が挙げられる。
また、本発明に適用可能な他の基板としては、例えば、銅、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ、クロム、又はステンレス等の金属からなる基板(それらの金属を表面に有する基板であってもよい);酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、ジルコニウムのケイ酸塩(ジルコン)、酸化マグネシウム(マグネシア)、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛(PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、硫化カドニウム、硫化モリブデン、酸化ベリリウム(ベリリア)、酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素(シリコンカーバイト)、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)、酸化亜鉛、ムライト、フェライト、ステアタイト、ホルステライト、スピネル、又はスポジュメン等のセラミックスからなる基板(それらのセラミックスを表面に有する基板であってもよい);PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PCT(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)、熱可塑性エラストマー、又は液晶ポリマー等の樹脂からなる基板(それらの樹脂を表面に有する基板であってもよい);シリコン、ゲルマニウム、又はガリウム砒素等の半導体基板;ガラス基板;酸化スズ、酸化亜鉛、ITO、又はATO等の電極材料が表面に形成された基板;αGEL(アルファゲル)、βGEL(ベータゲル)、θGEL(シータゲル)、又はγGEL(ガンマゲル)(以上、株式会社タイカの登録商標)等のゲルシートが挙げられる。
上記の基板上に表面処理剤を塗布し、メッキやインクジェット印刷法で配線形成し、さらにインクジェット印刷法などにて絶縁膜を形成した後に、さらにそれらの表面に表面処理剤を塗布して、均一な表面を作製してから、さらに配線や絶縁膜を形成するという重ね塗りを行うこともできる。
【0069】
これら基板は平面状である必要はなく、本発明の表面処理剤を塗布できるのであれば、曲面状であってもよい。
【0070】
また、上記の方法によらず、ウェス、布等に本発明の表面処理剤を含浸させ、それらで基板表面を拭くことで基板上に本発明の表面処理剤を塗布することや、表面処理剤に基板ごと浸漬し、所定時間経過後に取り出すことで塗布することもできる。
【0071】
上記の方法によって表面処理剤が塗布された基板は、そのまま風乾してもよいし、表面処理膜の基板への密着性や信頼性をより高めるために、焼成してもよい。焼成温度は、表面処理剤中の溶剤(D)が乾燥する温度であれば特に限定されないが、好ましくは50〜300℃であり、より好ましくは70〜250℃、さらに好ましくは80〜230℃である。
【0072】
表面処理剤で表面処理された基板には、パターニングの精度を向上させる機能が付与されており、基板上(正確には表面処理膜上)に、インクジェット法、スクリーン印刷法等で、所望のパターンを描画すると、通常、幅200μm以下、さらに幅100μm以下の微細なパターンを形成することができる。またインクジェット法でパターン状ポリイミド膜を形成する場合には、基板に撥インク性が付与されたことにより、インクが濡れ広がらず、凹凸のない平坦なパターン状ポリイミド膜が得られる。
【0073】
9.表面処理剤の塗布前の処理
本発明の表面処理剤の塗布前後に基板の処理を行ってもよい。特に、複数の素材からなる基板は、素材が異なるとぬれ性も異なることが多いため、表面処理剤を塗る前に基板の処理を行うと均一に表面処理剤を塗布できる。この方法としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、アッシング処理、ケミカルエッチングなどが挙げられる。
【0074】
10.インクジェットインク
本発明の表面処理剤の塗布後に塗布するインクは、アミド酸誘導体及びそのイミド化物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するインクジェットインクであれば特に限定はされない。本発明のインクジェットインク中のアミド酸誘導体及び/またはそのイミド化物の濃度は、合計で、30〜80重量%であることが好ましく、30〜70重量%であることがさらに好ましい。
アミド酸誘導体及び/またはそのイミド化物の濃度が高いほど、本発明のインクから得られるポリイミド膜の膜厚が厚くなるため好ましい。しかし、その一方で粘度も高くなる傾向にあるため、場合によってはインクジェット印刷機でインクが吐出できなくなるという問題が生じる。特に上記の濃度範囲であれば、膜厚の大きなポリイミドの膜を形成可能で、問題なく吐出できるインクジェットインクが得られる。なお、本発明で用いられるインクジェットインクは、無色、有色のどちらであってもよい。
【0075】
11.アミド酸誘導体またはそのイミド化物
アミド酸誘導体としては、例えば、式(6)で表される構成単位を有し、式(6−1)及び下記式(6−2)で表される分子末端基の群から選ばれる1以上の分子末端基を有する化合物、及び式(7)〜(10)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
アミド酸誘導体のイミド化物としては、例えば、前記アミド酸誘導体のイミド化物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0076】


式中、Xは、炭素数1〜100の4価の有機基であり、Yは、炭素数1〜100の2価の有機基であり、X’は、炭素数1〜100の2価の有機基であり、好ましくは、不飽和結合を有する炭素数2〜100の2価の有機基、または式(a)で表される2価の有機基であり、Y’は、炭素数1〜100の1価の有機基であり、好ましくは、不飽和結合を有する炭素数2〜100の1価の有機基、または式(b)で表される1価の有機基であり、Zは、炭素数1〜100の1価の有機基である。


式中、Rは、水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R’は、炭素数1〜20の3価の有機基であり、R”は、炭素数1〜20の2価の有機基である。
【0077】
アミド酸誘導体またはそのイミド化物としては、例えば、以下に示すポリアミド酸、シリコンアミド酸及びアルケニル置換ナジイミド化合物が挙げられる。
【0078】
11.1 ポリアミド酸
本発明のアミド酸誘導体として、ジアミンと酸無水物基を2つ以上有する化合物とを用いて得られるポリアミド酸が挙げられる。
好ましくは、例えば、特開2009−35700号公報に記載されている、下記式(6)で表される構成単位を有し、下記式(6−1)及び下記式(6−2)で表される分子末端基の群から選ばれる1以上の分子末端基を有するポリアミド酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。



式中、Xは、炭素数1〜100の4価の有機基であり、Yは、炭素数1〜100の2価の有機基である。X’は、炭素数1〜100の2価の有機基であり、好ましくは、不飽和結合を有する炭素数2〜100の2価の有機基、または式(a)で表される2価の有機基であり、Y’は、炭素数1〜100の1価の有機基であり、好ましくは、不飽和結合を有する炭素数2〜100の1価の有機基、または式(b)で表される1価の有機基である。


式(a)中、Rは、水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R’は、炭素数1〜20の3価の有機基であり、式(b)中、Rは、水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R”は、炭素数1〜20の2価の有機基である。
【0079】
11.2 シリコンアミド酸
本発明のアミド酸誘導体として、分子内にアミド酸構造を有するシリコン化合物であるシリコンアミド酸が挙げられる。好ましくは、例えば、国際公開WO2008/123190号パンフレットに記載されている、分子内に少なくとも2つのアミド酸構造を有する、下記式(7)で表されるシリコンアミド酸、又は下記式(8)で表されるシリコンアミド酸、あるいは特開2009−144138号公報に記載されている、分子内に1つのアミド酸構造を有する、下記式(10)で表されるシリコンアミド酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。





式中、Xは、炭素数1〜100の4価の有機基であり、X’は、炭素数1〜100の2価の有機基であり、不飽和結合を有する炭素数2〜100の2価の有機基、または式(a)で表される2価の有機基であることが好ましく、Yは、炭素数1〜100の2価の有機基であり、Y’は、炭素数1〜100の1価の有機基であり、不飽和結合を有する炭素数2〜100の1価の有機基、または式(b)で表される1価の有機基であることが好ましい。



式(a)中、Rは、水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R’は、炭素数1〜20の3価の有機基であり、式(b)中、Rは、水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R”は、炭素数1〜20の2価の有機基である。
【0080】
11.3 アルケニル置換ナジイミド化合物
本発明のアミド酸誘導体のイミド化物として、下記式(7)で表される化合物のイミド化物が挙げられる。



式中、X’は、炭素数1〜100の2価の有機基であり、不飽和結合を有する炭素数2〜100の2価の有機基、不飽和結合を有する炭素数2〜100の2価の有機基であることが好ましく、Yは、炭素数1〜100の2価の有機基である。
【0081】
例えば、分子内に少なくとも1つのアルケニル置換ナジイミド構造を有するアルケニル置換ナジイミド化合物が挙げられる。好ましくは、例えば、国際公開WO2008/059986号パンフレットに記載されている、下記式(14)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物、あるいは特開2009−203440号公報に記載されているアルケニル置換ナジイミド化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。



式(14)中、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルのいずれかであり、nは1〜2の整数であり、
n=1のとき、R14は、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、ベンジル、−{(C2q)O(C2rO)2sX}(ここで、q、r、sはそれぞれ独立に選ばれた2〜6の整数、tは0または1の整数及びuは1〜30の整数、Xは水素または水酸基である)で表されるポリオキシアルキレンアルキル、−(R)−C−R15(ここで、aは0または1の整数、Rは炭素数1〜4のアルキレン、R15は水素もしくは炭素数1〜4のアルキルを表す)で表される基、−C−T−C(ここで、Tは−CH−、−C(CH−、−CO−、−S−もしくはSO−である)で表される基、またはこれらの基の芳香環に直結した1〜3個の水素が水酸基で置き換えられた基であり、
n=2のとき、R14は、−C2p−(ここで、pは2〜20の整数)で表されるアルキレン、炭素数5〜8のシクロアルキレン、−{(C2qO)(C2rO)2s}−(ここで、q、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1の整数及びuは1〜30の整数である)で表されるポリオキシアルキレン、炭素数6〜12のアリーレン、−(R15−C−R16−(ここで、aは0または1の整数、R15及びR16は、独立に選ばれた炭素数1〜4のアルキレンである)で表される基、−C−T−C−(ここで、Tは−CH−、−C(CH−、−CO−、−O−、−OCC(CHO−、−S−、−SO−)で表される基、またはこれらの基の芳香環に直結する1〜3個の水素が水酸基で置き換えられた基である。
【0082】
次に、以下において、インクジェットインク中の溶媒及びその他の添加剤について説明する。
【0083】
12 溶媒
本発明のインクジェットインクは、溶媒を含んでもよい。前記溶媒は、アミド酸誘導体及び/またはそのイミド化物を溶解することができる溶媒であれば、特に限定されない。
また、単独ではアミド酸誘導体及び/またはそのイミド化物を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒と混合することによってアミド酸誘導体及び/またはそのイミド化物を溶解するようになるのであれば、そのような混合溶媒を、上記溶媒として用いることが可能である。
【0084】
また溶媒の沸点は通常150〜300℃であり、好ましくは150〜250℃である。
溶媒の具体例としては、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、エチルラクテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びγ−ブチロラクトンを挙げることができる。
【0085】
これらの溶媒の中でも、インクジェットヘッドの耐久性向上の点で、インクジェットインクが、乳酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンまたはγ−ブチロラクトンを、溶媒として含むことが好ましい。
なお、以上、例示した溶媒の中で、インクジェットヘッドの耐久性の点から、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのアミド系溶媒は、溶媒全重量に対して、20重量%以上含まないことが好ましく、全く含まない、すなわち溶媒が非アミド系の溶媒であることがより好ましい。
溶媒は、1種で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0086】
13 添加剤
インクジェットインクには、目的とする特性によっては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、エポキシ硬化剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー、顔料、染料などの添加剤を含んでもよい。
【0087】
以上のようにして基板上に微細なパターン状ポリイミド膜を形成した後、用途によって所定の製造工程を経て、電子部品が製造される。本発明の表面処理剤で表面処理された基板上には微細なパターン状ポリイミド膜を形成することができるので、より小型の電子部品を得ることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0089】
以下では、作製例及び比較例において使用した反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)、カチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)、溶剤(D)を以下のように記号で示すことがある。
【0090】
<反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)>
a−1:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
【0091】
<パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)>
b−1:ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロキシでしるトリメトキシシラン
【0092】
<カチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)>
c−1:N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(50重量%メタノール溶液)
【0093】
<溶剤(D)>
d−1:純水
d−2:エタノール
【0094】
[作製例1] 表面処理剤(S1)の作製
四つ口フラスコに、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)として3−アミノプロピルトリエトキシシラン、溶剤(D)として純水とエタノールを下記重量割合で仕込み、25℃で3時間攪拌を行ない、表面処理剤(S1)を得た。
【0095】
a−1:0.01g
d−1:49.995g
d−2:49.995g
【0096】
[作製例2] 表面処理剤(S2)の作製
四つ口フラスコに、反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)として3−アミノプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)として、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロキシデシルトリメトキシシラン、溶剤(D)として純水とエタノールを下記重量割合で仕込み、25℃で3時間攪拌を行い、表面処理剤(S2)を得た。
【0097】
a−1:0.009g
b−1:0.001g
d−1:49.995g
d−2:49.995g
【0098】
[作製例3] 表面処理剤(S3)の合成
作製例1と同様にして、下記の成分を下記の重量割合で仕込み、攪拌を行い、表面処理剤(S3)を得た。
【0099】
c−1:0.01g
d−1:49.995g
d−2:49.995g
【0100】
[実施例1〜3、比較例1]
<表面処理膜の形成>
実施例1〜3として、作製例1〜3で得られた表面処理剤をカプトン基板上にワイプし、80℃のホットプレート上に5分間静置することで、カプトン基板上に表面処理膜を形成した。比較例1として表面処理膜が形成されていない、カプトン基板そのものを使用した。
【0101】
<表面処理膜の評価方法>
1)接触角測定
得られた表面処理膜またはカプトン基板のパターン性は、協和界面化学社製のDropMaster500にて25℃で、純水とジヨードメタンの接触角を測定することにより評価した。着滴1秒後の値を接触角とした。得られた結果を表1に示す。
ここで、接触角(ジヨードメタン)(度)は、25度以上が好ましく、30度以上がより好ましい。また、接触角(純水)(度)は、44度以上が好ましく、45度以上がより好ましい。
【0102】
2)描画評価
チッソ社製インクジェット用インク(PIN−6302−001)を、インクジェット塗布法によって、カプトン基板上に1ドットの間隔でインクを吐出し、ライン状に塗膜を形成した。また、インクジェット塗布は、FUJIFILM Dimatix社製インクジェット塗布装置DMP−2831(型番)を用いた。
インクジェット塗布の条件は次のとおりである。
1ドット幅のドットピッチを20μmに、インクジェットヘッドのヒーターを30℃にし、ピエゾ電圧を20Vに、駆動周波数を10kHzに設定し、常温(25℃)でパターン膜の塗布を行った。
次に、各基板上に形成された塗膜を80℃のホットプレートで5分間乾燥した後、230℃のオーブンで30分間加熱し、ライン幅を測定した。
【0103】
評価結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
表1に示されたように、本発明の表面処理剤は、基板に対する、純水やジヨードメタンの接触角を高めることができ、インクジェット法によって基板上(正確には前記表面処理膜上)に微細なパターン膜を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のポリイミド膜は、密着性、耐熱性、電気絶縁性が高いため、プリント配線板や半導体回路を含む電子部品に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される反応性の有機基を有するシランカップリング剤(A)、式(2)、(3)または(4)で表されるパーフルオロアルキル基あるいはポリシロキサン基から選ばれる基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤(B)及び式(5)で表されるカチオン性有機基を有するシランカップリング剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する表面処理剤を用いて、基板上に前記表面処理膜を形成する工程、その後に、アミド酸誘導体またはそのイミド化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有するインクジェットインクを前記表面処理膜上にインクジェット塗布方法によりパターン状に形成する工程、を有する、パターン状ポリイミド膜の形成方法。



式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の有機基であり、Rは、メチルあるいはOR’(ここで、R’は、炭素数1〜10の有機基である。)であり、Rは、ビニル、エポキシ、メタクリル、アクリル、アミノ、ウレイド、メルカプト、イソシアネート及びケチミンからなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する炭素数1〜20の有機基であり、Rは、炭素数1〜20の有機基であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の有機基であり、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基であり、Rは、フッ素数3〜41のパーフルオロアルキル基を含む炭素数1〜20の有機基であり、nは1〜1000の整数であり、Aは、−1〜−4のいずれかの価数を有し、単原子イオン、多原子イオン及び錯イオンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアニオンである。
【請求項2】
表面処理剤が、さらに溶媒(D)を含むことを特徴とする請求項1に記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
【請求項3】
表面処理剤が、シランカップリング剤(A)、シランカップリング剤(B)及びシランカップリング剤(C)の全重量に対して、シランカップリング剤(A)の割合が0重量%〜90重量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
【請求項4】
表面処理剤が、シランカップリング剤(A)、シランカップリング剤(B)及びシランカップリング剤(C)の全重量に対して、シランカップリング剤(A)の割合が20重量%〜90重量%であることを特徴とする請求項3に記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
【請求項5】
シランカップリング剤(A)が、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
【請求項6】
シランカップリング剤(B)が、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1−1−2−2−ヒドロオクチルトリエトキシシラン、パーフルオロドデシル−1H−1H−2H−2H−トリエトキシシラン、パーフルオロデトラデシル−1H−1H−2H−2H−トリエトキシシランまたは3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
【請求項7】
シランカップリング剤(C)が、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルデシル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムブロマイドまたはN−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライドであることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。
【請求項8】
アミド酸誘導体が、式(6)で表される構成単位を有し、式(6−1)及び下記式(6−2)で表される分子末端基の群から選ばれる1以上の分子末端基を有する化合物、及び式(7)〜(10)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。



式中、Xは、炭素数1〜100の4価の有機基であり、Yは、炭素数1〜100の2価の有機基であり、X’は、炭素数1〜100の2価の有機基であり、Y’は、炭素数1〜100の1価の有機基であり、Zは、炭素数1〜100の1価の有機基である。
【請求項9】
アミド酸誘導体が、式(6)で表される構成単位を有し、式(6−1)及び下記式(6−2)で表される分子末端基の群から選ばれる1以上の分子末端基を有する化合物、及び式(7)〜(10)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載のパターン状ポリイミド膜の形成方法。



式中、Xは、炭素数1〜100の4価の有機基であり、Yは、炭素数1〜100の2価の有機基であり、X’は、不飽和結合を有する炭素数2〜100の2価の有機基、または式(a)で表される2価の有機基であり、Y’は、不飽和結合を有する炭素数2〜100の1価の有機基、または式(b)で表される1価の有機基であり、Zは、炭素数1〜100の1価の有機基である。


式中、Rは、水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R’は、炭素数1〜20の3価の有機基であり、R”は、炭素数1〜20の2価の有機基である。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の形成方法により得られたパターン状ポリイミド膜を有する電子部品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の形成方法により得られたパターン状ポリイミド膜を形成する工程を有する電子部品の製造方法。

【公開番号】特開2011−161327(P2011−161327A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24277(P2010−24277)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】