パターン評価方法およびプログラム
【課題】簡易な構成で高精度かつ迅速にパターン形状を評価する。
【解決手段】被評価パターンP2の輪郭を検出し、許容値Lが予め与えられた基準パターンであってパターンP2の評価基準となる基準パターンRP2の輪郭を検出し、基準パターンRP2の輪郭と許容値Lに基づいてパターンP2の許容範囲AS2を生成し、検出されたパターンP2の輪郭と許容範囲AS2との相対位置関係を求めることによりパターンP2の輪郭と前記許容範囲との包含関係を判定し、さらに、その判定結果に基づいてパターンP2の良否を判定する。
【解決手段】被評価パターンP2の輪郭を検出し、許容値Lが予め与えられた基準パターンであってパターンP2の評価基準となる基準パターンRP2の輪郭を検出し、基準パターンRP2の輪郭と許容値Lに基づいてパターンP2の許容範囲AS2を生成し、検出されたパターンP2の輪郭と許容範囲AS2との相対位置関係を求めることによりパターンP2の輪郭と前記許容範囲との包含関係を判定し、さらに、その判定結果に基づいてパターンP2の良否を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン評価方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
評価対象であるパターンの形状をその基準パターンとの相違を指標として評価する方法が様々な工業分野で広く採用されている。例えば、半導体デバイスパターンの評価の分野では、作成されたパターンの評価画像としてSEM(Scanning Electron Microscope)装置によるSEM画像を取得する一方で、形状評価の基準となる基準パターンを設計データから予め作成し、これらのSEM画像および基準パターンを用いて、デバイスパターンの加工形状の良否を判定する方法が提案されている。これらの方法の一例を従来の技術として説明する。
【0003】
まず、検査画像であるSEM画像のパターン輪郭を検出する。また、設計パターンとしてCAD図形がGDSII等のバイナリファイルで与えられている場合は、そのデータからパターンの輪郭データを取得する。次に、画像照合により両者のパターンの位置を検出する。具体的には両パターンの相対的位置を変えながら、その相違度または類似度を求め、その度合いを表わす値が最大または最小になる位置を検出する。相違度としては一般に相互相関や、画像の明るさを正規化した正規化相関等のパラメータが用いられている。上記のマッチング処理により、 SEM画像輪郭とCAD図形とを重ね合わせる。
【0004】
次に、重ね合わされたパターンに一つまたは幾つかのROIを設定し、そのROI内での両パターンの輪郭間の寸法を計測する。このようにして得られた一つまたは幾つかの寸法値を、別に定めた規格に照合して検査パターンの合否を判定する。
【0005】
しかしながら上述した従来技術では、パターンの形状を幾つかの寸法値で評価するため、複雑なパターンを評価するためにはROIを数多く設定しなければならず、かつ、こうして得られた数多くの寸法データを解析するためにも多大な計算の手間を必要としてしまうという問題があった。さらに、このように多大な手間をかけても、例えばパターン形状がパターンコーナ部の一般的なラウンディングよりも複雑である場合には、そのパターン解析に対して十分な性能を発揮することができなかった。
【特許文献1】特開2004-185019
【特許文献2】特開2003-188074
【特許文献3】特開2002-328015
【特許文献4】特開2002-31525
【特許文献5】特開2001-338304
【特許文献6】特開2000-293690
【特許文献7】特開平10-222672
【特許文献8】特開平6-119452
【特許文献9】特開平6-96214
【特許文献10】特開平6-44362
【特許文献11】特開平5-324836
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡易な構成で高精度かつ迅速な評価を可能にするパターン評価方法、およびこの評価方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の手段により上記課題の解決を図る。
【0008】
即ち、本発明によれば、
評価対象である被評価パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンの評価基準となる基準パターンであって前記被評価パターンの許容度を表わすパラメータが予め与えられた基準パターンの輪郭を検出する手順と、
前記前記基準パターンのパラメータと輪郭のデータとに基づいて前記被評価パターンの許容範囲を生成する手順と、
前記被評価パターンの前記輪郭と前記許容範囲との相対位置関係を求めることにより前記被評価パターンの前記輪郭と前記許容範囲との包含関係を判定する手順と、
得られた判定結果に基づいて前記被評価パターンの良否を判定する手順と、
を備えるパターン評価方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
評価対象である被評価パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンの評価基準となる基準パターンであって前記被評価パターンの許容度を表わすパラメータが予め与えられた基準パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンと前記基準パターンとの位置合せを行なう手順と、
前記基準パターンのパラメータと輪郭のデータとに基づいて前記被評価パターンの許容範囲を生成する手順と、
前記位置合せの結果に基づいて、前記被評価パターンの前記輪郭と前記許容範囲とを重ね合わせることにより前記輪郭と前記許容範囲との包含関係を判定する手順と、
得られた判定結果に基づいて前記被評価パターンの良否を判定する手順と、
を備えるパターン評価方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
上述したパターン評価方法をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で高い精度でかつ迅速にパターンを評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下では、フォトリソグラフィ工程やエッチング工程等の半導体装置の製造工程で形成される微細パターンの形状検査を取り挙げて説明する。しかしながら、本発明は半導体装置の微細パターンに限ることなく、他の様々な産業分野における製品に用いられるパターン一般の形状検査に適用可能であることに留意されたい。
【0013】
(1)第1の実施の形態
図1乃至図6を参照しながら本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施形態の特徴は、被評価パターンの評価基準を与えるパターンとしての基準パターンと許容値というパラメータとを予め準備し、これらを用いて被評価パターンの許容範囲(「評価パターン形状の許容範囲」と呼ぶこともできる)を生成し、得られた許容範囲と被評価パターンとの包含関係により被評価パターンの良否を判定する点にある。
【0014】
図1は、被評価パターンの一例であるパターンP2の部分的輪郭を示す図であり、図2は、図1に示すパターンP2の基準パターンRP2の部分的輪郭を示す図である。本実施形態では、基準パターンRP2は、被評価パターンP2の設計データに基づく設計パターンである。基準パターンとしては被評価パターンの評価基準を与えるものであれば設計パターンに限ることなく任意のパターンで良く、例えばシミュレーション結果のデータを用いることもできる。
【0015】
本実施形態では、基準パターンRP2の輪郭からの距離Lをパラメータとしての許容値として設定する。従って、評価パターンP2の許容範囲は、図2に示す基準パターンRP2の輪郭から距離Lだけ離隔した全ての点の集合として生成される。これらの点集合を許容範囲と特定する方法の他、図2に示すパターンRP2に距離変換処理を実行し、その結果から距離Lの等高線をパターンRP2の内側と外側に求め、これら2つの等高線に挟まれた領域を許容範囲と規定する方法など、いかなる方法を用いても良い。本実施形態におおいて着目されるべき点は、評価パターンP2の許容範囲が基準パターンRP2の輪郭からの距離Lで規定されることであり、この距離LはパターンP2の評価に際し、許容値として予め与えられている値である。即ち、この距離Lは、形状判定のスペックとして被評価パターンに応じて決められている値である。このようにして生成された許容範囲の一例を図3に示す。許容値がパターンの内側と外側に共通して距離Lであるため、図3に示す許容範囲AS2は、幅が2Lの帯をなすように生成される。許容値はパターンの内側と外側とで共通である必要はなく、例えば図4に示す許容範囲AS4のように、パターンの内側で2Lの許容値、パターンの外側でLの許容値を有することにより全体として幅3Lの帯状領域として生成されるように、パターンの内側と外側とで異なる許容値を設定することができる。さらに、パターンの内側と外側に限ることなく、パターンの要求仕様に応じてパターンの各構成要素毎に異なる許容値を設定することもできる。
【0016】
次に、例えば上述した方法により生成された、被評価パターンの許容範囲に対して、評価パターンの輪郭が包含されているかどうかを調べることにより、被評価パターンの形状の良否を判定する。より具体的には、例えば許容範囲AS2に対して、被評価パターンP2の輪郭の相対的位置を走査し、被評価パターンP2の輪郭が許容範囲AS2内に全て収まるための相対的位置を算出する。図5に示すように、ある相対的位置で被評価パターンP2が許容範囲AS2内に収まっている場合には、被評価パターンP2は合格となり良品と判定される。この一方、図6に示すように、この相対的位置が求まらなかった場合は被評価パターンP2は不合格となり、不良と判定される。
【0017】
(2)第2の実施の形態
図7乃至図11を参照しながら本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施形態の特徴は、予め定義した単位パターンを基準パターンの輪郭に畳み込むことにより許容範囲を生成する点にある。
【0018】
図7に単位パターンの一例を示す。同図に示す単位パターンUP2は、一辺の長さがaの正方形である。単位パターンUP2については、一辺の長さaの他、正方形の内側にある任意の点であって基準パターンの輪郭と交差させる点Pの座標も与えられ、長さaの値と点Pの座標位置とが許容値となる。次に、図8に示すように、点Pが基準パターンRP2の輪郭に重なるように単位パターンUP2を点Pで基準パターンRP2に合わせた上で、点Pが基準パターンRP2の輪郭を辿るように単位パターンUP2を基準パターンRP2の輪郭に沿って移動させる。このときの単位パターンUP2の輪郭が描く軌跡を記録することにより、図9に示すように、幅aの帯状領域を含む許容範囲AS6が生成される。図9に示す許容範囲AS6は、そのコーナ部の形状が角張っており、この点で図3の許容範囲AS2と明らかに異なる。
【0019】
その後は、このように生成された許容範囲AS6に対して、第1の実施の形態で前述した方法により被評価パターンの形状の良否を判定することができる。
【0020】
上記説明では、単位パターンとして正方形のものを例示したが、その形状は勿論正方形に限ることなく、長方形の他、円、楕円形をも利用することができる。図10に長方形の単位パターンの一例を示し、図10の単位パターンUP4を用いて生成された許容範囲を図11に示す。なお、円形や楕円形状の単位パターンを採用すれば、図3の許容範囲AS2と同様に、コーナ部に丸みを有する許容範囲を生成することができる。
【0021】
(3)第3の実施の形態
上述した実施形態では、被評価パターンと基準パターンとの位置合せを予め行なうことなく、基準パターンから生成された許容範囲と被評価パターンとの相対的位置を走査することにより、あらゆる位置関係における両者の包含関係を検証した。これとは対照的に、本実施形態の特徴は、許容範囲の生成に先立って、被評価パターンと基準パターンとの間で予め位置合せを行なう点にある。これにより、予め位置合せを行なった位置における包含関係のみを調べるだけで被評価パターンの良否を判定することが可能になる。この場合、基準パターンとしては、例えば評価パターンの設計データを用いることができる。
【0022】
(4)プログラム
上述した第1乃至第3の実施の形態で説明したパターン評価方法の各一連の手順は、プログラムに組み込み、コンピュータに読込ませて実行させても良い。これにより、本発明にかかるパターン評価方法における各一連の手順を汎用コンピュータを用いて実現することができる。また、上述したパターン評価方法の各一連の手順をコンピュータに実行させるプログラムとしてフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読込ませて実行させても良い。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の携帯可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でも良い。また、上述したパターン評価方法のそれぞれの一連の手順を組込んだプログラムをインターネット等の通信回線(無線通信を含む)を介して頒布しても良い。さらに、上述したパターン評価方法の各一連の手順を組込んだプログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、または記録媒体に収納して頒布しても良い。
【0023】
(5)半導体装置の製造方法
上述した第1乃至第3の実施の形態で説明したパターン評価方法を半導体装置の製造における検査工程に組み込むことにより、高いスループットおよび歩留まりで半導体装置を製造することが可能になる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態のいくつかについて説明したが、本発明は上記形態に限ることなく、その技術的範囲内で種々変形して適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】評価対象である被評価パターンの一例の部分的輪郭を示す図である。
【図2】図1に示すパターンの基準パターンの部分的輪郭を示す図である。
【図3】基準パターンの輪郭と基準パターンからの距離で規定される許容範囲の一例を示す図である。
【図4】基準パターンの輪郭と基準パターンからの距離で規定される許容範囲の他の一例を示す図である。
【図5】生成された評価パターンの許容範囲に対して、評価パターンの輪郭が包含されていないために不良と判定される場合の一例を示す図である。
【図6】生成された評価パターンの許容範囲に対して、評価パターンの輪郭が包含されているために良品と判定される場合の一例を示す図である。
【図7】単位パターンの一例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態により単位パターンを用いて許容範囲を生成する方法を示す説明図である。
【図9】図7に示す単位パターンを用いて生成された許容範囲の一例を示す図である。
【図10】単位パターンの他の一例を示す図である。
【図11】図9に示す単位パターンを用いて生成された許容範囲の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
AS2,AS4,AS6 許容範囲
L,2L,a,b 許容度を表わすパラメータ(許容値)
P2 被評価パターン
RP2 基準パターン
UP2,UP4 単位パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン評価方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
評価対象であるパターンの形状をその基準パターンとの相違を指標として評価する方法が様々な工業分野で広く採用されている。例えば、半導体デバイスパターンの評価の分野では、作成されたパターンの評価画像としてSEM(Scanning Electron Microscope)装置によるSEM画像を取得する一方で、形状評価の基準となる基準パターンを設計データから予め作成し、これらのSEM画像および基準パターンを用いて、デバイスパターンの加工形状の良否を判定する方法が提案されている。これらの方法の一例を従来の技術として説明する。
【0003】
まず、検査画像であるSEM画像のパターン輪郭を検出する。また、設計パターンとしてCAD図形がGDSII等のバイナリファイルで与えられている場合は、そのデータからパターンの輪郭データを取得する。次に、画像照合により両者のパターンの位置を検出する。具体的には両パターンの相対的位置を変えながら、その相違度または類似度を求め、その度合いを表わす値が最大または最小になる位置を検出する。相違度としては一般に相互相関や、画像の明るさを正規化した正規化相関等のパラメータが用いられている。上記のマッチング処理により、 SEM画像輪郭とCAD図形とを重ね合わせる。
【0004】
次に、重ね合わされたパターンに一つまたは幾つかのROIを設定し、そのROI内での両パターンの輪郭間の寸法を計測する。このようにして得られた一つまたは幾つかの寸法値を、別に定めた規格に照合して検査パターンの合否を判定する。
【0005】
しかしながら上述した従来技術では、パターンの形状を幾つかの寸法値で評価するため、複雑なパターンを評価するためにはROIを数多く設定しなければならず、かつ、こうして得られた数多くの寸法データを解析するためにも多大な計算の手間を必要としてしまうという問題があった。さらに、このように多大な手間をかけても、例えばパターン形状がパターンコーナ部の一般的なラウンディングよりも複雑である場合には、そのパターン解析に対して十分な性能を発揮することができなかった。
【特許文献1】特開2004-185019
【特許文献2】特開2003-188074
【特許文献3】特開2002-328015
【特許文献4】特開2002-31525
【特許文献5】特開2001-338304
【特許文献6】特開2000-293690
【特許文献7】特開平10-222672
【特許文献8】特開平6-119452
【特許文献9】特開平6-96214
【特許文献10】特開平6-44362
【特許文献11】特開平5-324836
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡易な構成で高精度かつ迅速な評価を可能にするパターン評価方法、およびこの評価方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の手段により上記課題の解決を図る。
【0008】
即ち、本発明によれば、
評価対象である被評価パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンの評価基準となる基準パターンであって前記被評価パターンの許容度を表わすパラメータが予め与えられた基準パターンの輪郭を検出する手順と、
前記前記基準パターンのパラメータと輪郭のデータとに基づいて前記被評価パターンの許容範囲を生成する手順と、
前記被評価パターンの前記輪郭と前記許容範囲との相対位置関係を求めることにより前記被評価パターンの前記輪郭と前記許容範囲との包含関係を判定する手順と、
得られた判定結果に基づいて前記被評価パターンの良否を判定する手順と、
を備えるパターン評価方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
評価対象である被評価パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンの評価基準となる基準パターンであって前記被評価パターンの許容度を表わすパラメータが予め与えられた基準パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンと前記基準パターンとの位置合せを行なう手順と、
前記基準パターンのパラメータと輪郭のデータとに基づいて前記被評価パターンの許容範囲を生成する手順と、
前記位置合せの結果に基づいて、前記被評価パターンの前記輪郭と前記許容範囲とを重ね合わせることにより前記輪郭と前記許容範囲との包含関係を判定する手順と、
得られた判定結果に基づいて前記被評価パターンの良否を判定する手順と、
を備えるパターン評価方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
上述したパターン評価方法をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で高い精度でかつ迅速にパターンを評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下では、フォトリソグラフィ工程やエッチング工程等の半導体装置の製造工程で形成される微細パターンの形状検査を取り挙げて説明する。しかしながら、本発明は半導体装置の微細パターンに限ることなく、他の様々な産業分野における製品に用いられるパターン一般の形状検査に適用可能であることに留意されたい。
【0013】
(1)第1の実施の形態
図1乃至図6を参照しながら本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施形態の特徴は、被評価パターンの評価基準を与えるパターンとしての基準パターンと許容値というパラメータとを予め準備し、これらを用いて被評価パターンの許容範囲(「評価パターン形状の許容範囲」と呼ぶこともできる)を生成し、得られた許容範囲と被評価パターンとの包含関係により被評価パターンの良否を判定する点にある。
【0014】
図1は、被評価パターンの一例であるパターンP2の部分的輪郭を示す図であり、図2は、図1に示すパターンP2の基準パターンRP2の部分的輪郭を示す図である。本実施形態では、基準パターンRP2は、被評価パターンP2の設計データに基づく設計パターンである。基準パターンとしては被評価パターンの評価基準を与えるものであれば設計パターンに限ることなく任意のパターンで良く、例えばシミュレーション結果のデータを用いることもできる。
【0015】
本実施形態では、基準パターンRP2の輪郭からの距離Lをパラメータとしての許容値として設定する。従って、評価パターンP2の許容範囲は、図2に示す基準パターンRP2の輪郭から距離Lだけ離隔した全ての点の集合として生成される。これらの点集合を許容範囲と特定する方法の他、図2に示すパターンRP2に距離変換処理を実行し、その結果から距離Lの等高線をパターンRP2の内側と外側に求め、これら2つの等高線に挟まれた領域を許容範囲と規定する方法など、いかなる方法を用いても良い。本実施形態におおいて着目されるべき点は、評価パターンP2の許容範囲が基準パターンRP2の輪郭からの距離Lで規定されることであり、この距離LはパターンP2の評価に際し、許容値として予め与えられている値である。即ち、この距離Lは、形状判定のスペックとして被評価パターンに応じて決められている値である。このようにして生成された許容範囲の一例を図3に示す。許容値がパターンの内側と外側に共通して距離Lであるため、図3に示す許容範囲AS2は、幅が2Lの帯をなすように生成される。許容値はパターンの内側と外側とで共通である必要はなく、例えば図4に示す許容範囲AS4のように、パターンの内側で2Lの許容値、パターンの外側でLの許容値を有することにより全体として幅3Lの帯状領域として生成されるように、パターンの内側と外側とで異なる許容値を設定することができる。さらに、パターンの内側と外側に限ることなく、パターンの要求仕様に応じてパターンの各構成要素毎に異なる許容値を設定することもできる。
【0016】
次に、例えば上述した方法により生成された、被評価パターンの許容範囲に対して、評価パターンの輪郭が包含されているかどうかを調べることにより、被評価パターンの形状の良否を判定する。より具体的には、例えば許容範囲AS2に対して、被評価パターンP2の輪郭の相対的位置を走査し、被評価パターンP2の輪郭が許容範囲AS2内に全て収まるための相対的位置を算出する。図5に示すように、ある相対的位置で被評価パターンP2が許容範囲AS2内に収まっている場合には、被評価パターンP2は合格となり良品と判定される。この一方、図6に示すように、この相対的位置が求まらなかった場合は被評価パターンP2は不合格となり、不良と判定される。
【0017】
(2)第2の実施の形態
図7乃至図11を参照しながら本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施形態の特徴は、予め定義した単位パターンを基準パターンの輪郭に畳み込むことにより許容範囲を生成する点にある。
【0018】
図7に単位パターンの一例を示す。同図に示す単位パターンUP2は、一辺の長さがaの正方形である。単位パターンUP2については、一辺の長さaの他、正方形の内側にある任意の点であって基準パターンの輪郭と交差させる点Pの座標も与えられ、長さaの値と点Pの座標位置とが許容値となる。次に、図8に示すように、点Pが基準パターンRP2の輪郭に重なるように単位パターンUP2を点Pで基準パターンRP2に合わせた上で、点Pが基準パターンRP2の輪郭を辿るように単位パターンUP2を基準パターンRP2の輪郭に沿って移動させる。このときの単位パターンUP2の輪郭が描く軌跡を記録することにより、図9に示すように、幅aの帯状領域を含む許容範囲AS6が生成される。図9に示す許容範囲AS6は、そのコーナ部の形状が角張っており、この点で図3の許容範囲AS2と明らかに異なる。
【0019】
その後は、このように生成された許容範囲AS6に対して、第1の実施の形態で前述した方法により被評価パターンの形状の良否を判定することができる。
【0020】
上記説明では、単位パターンとして正方形のものを例示したが、その形状は勿論正方形に限ることなく、長方形の他、円、楕円形をも利用することができる。図10に長方形の単位パターンの一例を示し、図10の単位パターンUP4を用いて生成された許容範囲を図11に示す。なお、円形や楕円形状の単位パターンを採用すれば、図3の許容範囲AS2と同様に、コーナ部に丸みを有する許容範囲を生成することができる。
【0021】
(3)第3の実施の形態
上述した実施形態では、被評価パターンと基準パターンとの位置合せを予め行なうことなく、基準パターンから生成された許容範囲と被評価パターンとの相対的位置を走査することにより、あらゆる位置関係における両者の包含関係を検証した。これとは対照的に、本実施形態の特徴は、許容範囲の生成に先立って、被評価パターンと基準パターンとの間で予め位置合せを行なう点にある。これにより、予め位置合せを行なった位置における包含関係のみを調べるだけで被評価パターンの良否を判定することが可能になる。この場合、基準パターンとしては、例えば評価パターンの設計データを用いることができる。
【0022】
(4)プログラム
上述した第1乃至第3の実施の形態で説明したパターン評価方法の各一連の手順は、プログラムに組み込み、コンピュータに読込ませて実行させても良い。これにより、本発明にかかるパターン評価方法における各一連の手順を汎用コンピュータを用いて実現することができる。また、上述したパターン評価方法の各一連の手順をコンピュータに実行させるプログラムとしてフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読込ませて実行させても良い。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の携帯可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でも良い。また、上述したパターン評価方法のそれぞれの一連の手順を組込んだプログラムをインターネット等の通信回線(無線通信を含む)を介して頒布しても良い。さらに、上述したパターン評価方法の各一連の手順を組込んだプログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、または記録媒体に収納して頒布しても良い。
【0023】
(5)半導体装置の製造方法
上述した第1乃至第3の実施の形態で説明したパターン評価方法を半導体装置の製造における検査工程に組み込むことにより、高いスループットおよび歩留まりで半導体装置を製造することが可能になる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態のいくつかについて説明したが、本発明は上記形態に限ることなく、その技術的範囲内で種々変形して適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】評価対象である被評価パターンの一例の部分的輪郭を示す図である。
【図2】図1に示すパターンの基準パターンの部分的輪郭を示す図である。
【図3】基準パターンの輪郭と基準パターンからの距離で規定される許容範囲の一例を示す図である。
【図4】基準パターンの輪郭と基準パターンからの距離で規定される許容範囲の他の一例を示す図である。
【図5】生成された評価パターンの許容範囲に対して、評価パターンの輪郭が包含されていないために不良と判定される場合の一例を示す図である。
【図6】生成された評価パターンの許容範囲に対して、評価パターンの輪郭が包含されているために良品と判定される場合の一例を示す図である。
【図7】単位パターンの一例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態により単位パターンを用いて許容範囲を生成する方法を示す説明図である。
【図9】図7に示す単位パターンを用いて生成された許容範囲の一例を示す図である。
【図10】単位パターンの他の一例を示す図である。
【図11】図9に示す単位パターンを用いて生成された許容範囲の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
AS2,AS4,AS6 許容範囲
L,2L,a,b 許容度を表わすパラメータ(許容値)
P2 被評価パターン
RP2 基準パターン
UP2,UP4 単位パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象である被評価パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンの評価基準となる基準パターンであって前記被評価パターンの許容度を表わすパラメータが予め与えられた基準パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンと前記基準パターンとの位置合せを行なう手順と、
前記基準パターンのパラメータと輪郭のデータとに基づいて前記被評価パターンの許容範囲を生成する手順と、
前記位置合せの結果に基づいて、前記被評価パターンの前記輪郭と前記許容範囲とを重ね合わせることにより前記輪郭と前記許容範囲との包含関係を判定する手順と、
得られた判定結果に基づいて前記被評価パターンの良否を判定する手順と、
を備え、
前記パラメータは、前記基準パターンの構成要素の少なくとも一つについて前記基準パターンの輪郭点から内側および外側のうち少なくともいずれかで共通する任意の値の距離であり、
前記許容範囲は、前記基準パターンの輪郭点から前記基準パターンの内側および外側へ前記任意の距離だけ離隔する範囲を設定することにより生成されることを特徴とするパターン評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン評価方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項1】
評価対象である被評価パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンの評価基準となる基準パターンであって前記被評価パターンの許容度を表わすパラメータが予め与えられた基準パターンの輪郭を検出する手順と、
前記被評価パターンと前記基準パターンとの位置合せを行なう手順と、
前記基準パターンのパラメータと輪郭のデータとに基づいて前記被評価パターンの許容範囲を生成する手順と、
前記位置合せの結果に基づいて、前記被評価パターンの前記輪郭と前記許容範囲とを重ね合わせることにより前記輪郭と前記許容範囲との包含関係を判定する手順と、
得られた判定結果に基づいて前記被評価パターンの良否を判定する手順と、
を備え、
前記パラメータは、前記基準パターンの構成要素の少なくとも一つについて前記基準パターンの輪郭点から内側および外側のうち少なくともいずれかで共通する任意の値の距離であり、
前記許容範囲は、前記基準パターンの輪郭点から前記基準パターンの内側および外側へ前記任意の距離だけ離隔する範囲を設定することにより生成されることを特徴とするパターン評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン評価方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−141295(P2011−141295A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93110(P2011−93110)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【分割の表示】特願2005−98513(P2005−98513)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【分割の表示】特願2005−98513(P2005−98513)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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