説明

パターン転写装置およびパターン転写方法

【課題】パターンを担持したブランケット等の担持体と基板を互いに密着させた後、両者を互いに離間させることで剥離して担持体上のパターンを基板に転写するパターン転写技術において、担持体と基板との剥離を良好に行う。
【解決手段】剥離工程を開始する前あるいは剥離開始と同時に、吸着プレート51で複数の開口のうち開口形成エリアOFA内で有効パターンエリアEPAを取り囲むエリア、つまり非パターンエリアNPAに位置する開口P(+n)、P(−n)への負圧供給を開始する。これによって、開口P(+n)、P(−n))に対向するブランケット部分が担持体保持面51aに吸着保持され、剥離時においてブランケットBLを担持体保持面51aに保持する力、つまり保持力が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブランケット等の担持体が担持するパターンを基板に転写するパターン転写装置およびパターン転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したパターン転写方法を用いて電子部品を製造する発明が例えば特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載の発明では、ブランケットの表面中央部にパターン層が形成されており、表面中央部を取り囲むブランケットの周縁部が下部ステージに吸着保持された状態で、ブランケットを基板に加圧当接することでブランケットと基板とを相互に密着させる。そして、ブランケットと基板とを互いに離間することで両者を剥離する。これによって、ブランケット上のパターン層に形成されているパターンが基板に転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−158799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように互いに密着しているブランケットと基板とを剥離する際、ブランケットと基板とを互いに離間させるが、その際にも密着時と同様に、ブランケットを下部ステージに固定しておく必要がある。特に、剥離処理時には、ブランケットと基板との密着力に打ち勝ってブランケットを基板から離間させなければならず、そのために、ブランケットを下部ステージに保持する力(以下「保持力」という)を高める技術が要望される。特に、密着力が高くなるにしたがって剥離時の保持力を高める技術の重要度は増してくる。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、パターンを担持したブランケット等の担持体と基板を互いに密着させた後、両者を互いに離間させることで剥離して担持体上のパターンを基板に転写するパターン転写技術において、担持体と基板との剥離を良好に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかるパターン転写装置は、基板の被転写面に対し、担持体の表面中央部に位置するとともに被転写面と同じ広さを有するパターンエリア内で担持されるパターンを転写するパターン転写装置であって、上記目的を達成するため、基板を保持する基板保持手段と、表面中央部にパターンエリアよりも広い開口形成エリアを有するとともに開口形成エリアに複数の開口が形成された担持体保持面で、基板保持手段に保持される基板と向かい合うように担持体を保持する担持体保持手段と、開口形成エリアを取り囲む担持体保持面の周縁部で担持体の周縁部を保持しながら、開口の全部に正圧を供給する、または複数の開口の一部に正圧を供給するとともに残りの開口への圧力供給を停止することで担持体の中央部を浮き上がらせて基板に密着させる密着手段と、担持体保持手段および基板保持手段を互いに離間させることで、密着手段によって相互に密着された担持体と基板とを剥離する剥離手段と、剥離手段により剥離を行う間、パターンエリアを取り囲む担持体の非パターンエリアと対向する開口の少なくとも1つ以上に負圧を供給して非パターンエリアを担持体保持面に吸着保持する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかるパターン転写方法は、基板の被転写面に対し、担持体の表面中央部に位置するとともに被転写面と同じ広さを有するパターンエリア内で担持されるパターンを転写するパターン転写方法であって、上記目的を達成するため、パターンと被転写面とが向かい合う状態で、表面中央部にパターンエリアよりも広い開口形成エリアを有するとともに開口形成エリアに複数の開口が形成された担持体保持面で担持体を保持した後で、開口の全部に正圧を供給する、または複数の開口の一部に正圧を供給するとともに残りの開口への圧力供給を停止することで担持体の中央部を浮き上がらせて基板に密着させる密着工程と、担持体および基板を互いに離間させることで、互いに密着された担持体と基板とを剥離する剥離工程とを備え、剥離工程では、パターンエリアを取り囲む担持体の非パターンエリアと対向する開口の少なくとも1つ以上に負圧を供給して非パターンエリアを担持体保持面に吸着保持することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(パターン転写装置およびパターン転写方法)では、開口形成エリアに形成される開口の全部に正圧を供給する、または複数の開口の一部に正圧を供給するとともに残りの開口への圧力供給を停止することで担持体の中央部が浮上して基板に密着する。このように、開口形成エリアに対向する担持体部分、つまりパターンエリアよりも広いエリアを浮き上がらせて基板に密着させているので、パターンエリアに担持されるパターンは基板に良好に転写される。一方、剥離段階では、パターンエリアを取り囲む担持体の非パターンエリアと対向する開口の少なくとも1つ以上に対して負圧が供給されて非パターンエリアが担持体保持面に吸着保持される。これによって、剥離時において担持体を担持体保持面に保持しておく力が増大し、剥離処理の安定化が図られる。
【0009】
ここで、担持体保持面の開口形成エリアに形成される各開口の形状や大きさなどについては任意であり、例えば各開口を、担持体保持面と平行な第1方向に延設されたスリット溝で構成してもよい。これにより、非パターンエリアと対向する開口が第1方向に延設されたものとなり、剥離時に担持体の非パターンエリアを広範囲にわたって吸着保持することができ、剥離処理の安定化をさらに向上させることができる。また、これら複数のスリット溝を、担持体保持面と平行でかつ第1方向と直交する第2方向に配列してもよい。さらに、第2スリット溝の間隔を一定としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、担持体と基板とを密着させる際に使用される複数の開口のうちパターンエリアを取り囲む担持体の非パターンエリアと対向する開口の少なくとも1つ以上については剥離中に負圧が供給され、これによって担持体の非パターンエリアを担持体保持面に吸着保持している。その結果、剥離時における担持体を担持体保持面に保持する力、つまり保持力が増大し、担持体と基板との剥離を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるパターン転写方法を適用した印刷装置を示す斜視図である。
【図2】図1の印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の印刷装置に装備される搬送部を示す斜視図である。
【図4】図1の印刷装置に装備される上ステージ部を示す斜視図である。
【図5】図1の印刷装置に装備されるアライメント部および下ステージ部を示す斜視図である。
【図6】アライメント部の撮像部を示す斜視図である。
【図7】下ステージ部に装備されるリフトピン部を示す図である。
【図8】ブランケット厚み計測部を示す斜視図である。
【図9】図1の印刷装置に装備される押さえ部を示す図である。
【図10】図1の印刷装置に装備されるプリアライメント部を示す斜視図である。
【図11】図1の印刷装置に装備される除電部を示す斜視図である。
【図12】図1の印刷装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図13】図1の印刷装置の動作を説明するための図である。
【図14】図1の印刷装置の動作を説明するための図である。
【図15】図1の印刷装置の動作を説明するための図である。
【図16】図1の印刷装置の動作を説明するための図である。
【図17】図1の印刷装置の動作を説明するための図である。
【図18】図1の印刷装置の動作を説明するための図である。
【図19】図1の印刷装置の動作を説明するための図である。
【図20】吸着プレート、ブランケットおよび基板の寸法関係を示す斜視図である。
【図21】本発明にかかるパターン転写装置の一実施形態を示す図である。
【図22】図21のパターン転写装置によるパターン転写方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでは、まず本発明にかかるパターン転写方法を適用した印刷装置の全体構成を説明した後、装置各部の構成および動作を詳しく説明する。その上で、本発明にかかるパターン転写装置および方法について詳述する。
【0013】
A.装置の全体構成
図1は、本発明にかかるパターン転写方法を適用した印刷装置を示す斜視図であり、装置内部の構成を明示するために、装置カバーを外した状態で図示している。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この印刷装置100は、装置の左側面側より装置内部に搬入される版の下面に対して、装置の正面側より装置内部に搬入されるブランケットの上面を密着させた後で剥離することで、版の下面に形成されたパターンによりブランケット上の塗布層をパターニングしてパターン層を形成する(パターニング処理)。また、印刷装置100は、装置の右側面側より装置内部に搬入される基板の下面に対して、パターニング処理されたブランケットの上面を密着させた後で剥離することで、そのブランケットに形成されたパターン層を基板の下面に転写する(転写処理)。なお、図1および後で説明する各図では、装置各部の配置関係を明確にするために、版および基板の搬送方向を「X方向」とし、図1の右手側から左手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「−X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向のうち、装置の正面側を「+Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「−Y方向」と称する。さらに、鉛直方向における上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「−Z方向」と称する。
【0014】
この印刷装置100では、バネ方式の除振台11の上に本体ベース12が載置され、さらに本体ベース12上に石定盤13が取り付けられている。また、この石定盤13の上面中央に2本のアーチ状フレーム14L、14Rが互いにX方向に離間しながら立設されている。これらのアーチ状フレーム14L、14Rの(−Y)側上端部には、2本の水平プレート15が連結されて第1フレーム構造体が構成されている。また、この第1フレーム構造体により覆われるように、第2フレーム構造体が石定盤13の上面に設けられている。より詳しくは、図1に示すように、各アーチ状フレーム14L、14Rの直下位置でフレーム14L、14Rよりも小型のアーチ状フレーム16L、16Rが石定盤13に立設されている。また、X方向に延設される複数の水平プレート17が各フレーム16L、16Rで柱部位同士を接続し、またY方向に延設される複数の水平プレート17がフレーム16L、16R同士を接続している。
【0015】
このように構成されたフレーム構造体の間では、フレーム14L、16Lの梁部位の間、ならびにフレーム14R、16Rの梁部位の間に搬送空間が形成されており、当該搬送空間を介して版及び基板を水平姿勢に保持した状態で搬送可能となっている。本実施形態では、第2フレーム構造体の後側、つまり(−Y)側に搬送部2が設けられて版および基板をX方向に搬送可能となっている。
【0016】
また、第1フレーム構造体を構成する水平プレート15に対して上ステージ部3が固定されて搬送部2により搬送される版および基板の上面を吸着保持可能となっている。つまり、搬送部2の版用シャトルによって版が図1の左手側から搬送空間を介して上ステージ部3の直下位置に搬送された後、上ステージ部3の吸着プレートが下降して版を吸着保持する。逆に、版用シャトルが上ステージ部3の直下位置に位置した状態で版を吸着した吸着プレートが吸着を解除すると、版が搬送部2に移載される。こうして、搬送部2と上ステージ部3との間で、版の受渡しが行われる。
【0017】
また、基板についても版と同様にして上ステージ部3に保持される。すなわち、搬送部2の基板用シャトルによって基板が図1の右手側から搬送空間を介して上ステージ部3の直下位置に搬送された後、上ステージ部3の吸着プレートが下降して基板を吸着保持する。逆に、基板用シャトルが上ステージ部3の直下位置に位置した状態で基板を吸着した上ステージ部3の吸着プレートが吸着を解除すると、基板が搬送部2に移載される。こうして、搬送部2と上ステージ部3との間で、基板の受渡しが行われる。
【0018】
上ステージ部3の鉛直方向の下方(以下「鉛直下方」あるいは「(−Z)方向」という)では、石定盤13の上面にアライメント部4が配置されている。そして、アライメント部4のアライメントステージ上に下ステージ部5が載置されて下ステージ部5の上面が上ステージ部3の吸着プレートと対向している。この下ステージ部5の上面はブランケットを吸着保持可能となっており、制御部6がアライメントステージを制御することで下ステージ部5上のブランケットを高精度に位置決め可能となっている。
【0019】
このように、本実施形態では、上ステージ部3と下ステージ部5とが鉛直方向Zにおいて互いに対向配置されている。そして、それらの間に、下ステージ部5上に載置されるブランケットを上方より押さえる押さえ部7と、版、基板およびブランケットのプリアライメントを行うプリアライメント部8とがそれぞれ配置され、第2フレーム構造体に固定されている。
【0020】
プリアライメント部8では、プリアライメント上部およびプリアライメント下部が鉛直方向Zに2段で積層配置されている。このプリアライメント上部は上ステージ部3の吸着プレートの直下位置に位置決めされた版用シャトルに保持される版にアクセスして版用シャトル上で版の位置合せを行う(版のプリアライメント処理)。また、吸着プレートの直下位置に位置決めされた基板用シャトルに保持される基板SBにアクセスして基板用シャトル上で基板の位置合せを行う(基板のプリアライメント処理)。さらに、プリアライメント下部は下ステージ部5の吸着プレート上に載置されたブランケットにアクセスして当該吸着プレート上でブランケットの位置合せを行う(ブランケットのプリアライメント処理)。
【0021】
ブランケット上のパターン層を基板に精密に転写するためには、基板のプリアライメント処理以外に、精密なアライメント処理が必要となる。このため、本実施形態では、アライメント部4は4台のCCD(Charge Coupled Device)カメラCMa〜CMdを有しており、各CCDカメラCMa〜CMdにより上ステージ部3に保持される基板と、下ステージ部5に保持されるブランケットとの各々に形成されるアライメントマークを読み取り可能となっている。そして、CCDカメラCMa〜CMdによる読取画像に基づいて制御部6がアライメントステージを制御することで、上ステージ部3で保持される基板に対し、下ステージ部5で吸着されるブランケットを精密に位置合せすることが可能となっている。
【0022】
また、ブランケット上のパターン層を基板に転写した後、ブランケットを基板から剥離するが、その剥離段階で静電気が発生する。また、版によりブランケット上の塗布層をパターニングした後、ブランケットを版から剥離した際にも、静電気が発生する。そこで、本実施形態では、静電気を除電するために、除電部9が設けられている。この除電部9は、第1フレーム構造体の左側、つまり(+X)側より上ステージ部3と下ステージ部5で挟まれた空間に向けてイオンを照射するイオナイザ91を有している。
【0023】
なお、図1への図示を省略しているが、装置カバーのうち(+X)側カバーには版を搬入出するための開口が設けられるとともに、版用開口を開閉する版用シャッター(後の図13中の符号18)が設けられている。そして、制御部6のバルブ制御部64が版用シャッター駆動シリンダCL11に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、版用シャッター駆動シリンダCL11を作動させて版用シャッターを開閉駆動する。なお、この実施形態では、シリンダCL11を駆動するための駆動源として加圧エアーを用いており、その正圧供給源として工場の用力を用いているが、装置100がエアー供給部を装備し、当該エアー供給部によりシリンダCL11を駆動するように構成してもよい。この点については、後で説明するシリンダについても同様である。
【0024】
また、本実施形態では、(−X)側カバーおよび(+Y)側カバーにも、それぞれ基板およびブランケットを搬入出するための開口が設けられるとともに、基板用開口に対して基板用シャッター(後の図13中の符号19)およびブランケット用開口に対してブランケット用シャッター(図示省略)がそれぞれ設けられている。そして、バルブ制御部64によるバルブ開閉により基板用シャッター駆動シリンダCL12およびブランケット用シャッター駆動シリンダCL13がそれぞれ開閉駆動される。
【0025】
このように、本実施形態では、3つのシャッターと3つのシャッター駆動シリンダCL11〜CL13によりシャッター部10が構成されており、版、基板およびブランケットをそれぞれ独立して印刷装置100に対して搬入出可能となっている。なお、本実施形態では、図1への図示を省略しているが、版の搬入出のために版用搬入出ユニットが装置100の左手側に並設されるとともに、基板の搬入出のために基板用搬入出ユニットが装置100の右手側に並設されているが、版を搬送するための搬送ロボット(図示省略)が直接的に搬送部2の版用シャトルにアクセスして版の搬入出を行うように構成してもよく、この場合、版用搬入出ユニットの設置は不要となる。この点に関しては、基板側でも同様である。つまり、基板を搬送するための搬送ロボット(図示省略)が直接的に搬送部2の基板用シャトルにアクセスして基板の搬入出を行うように構成することで、基板用搬入出ユニットの設置は不要となる。
【0026】
一方、本実施形態では、ブランケットの搬入出については、ブランケットを搬送するための搬送ロボットを用いて行っている。すなわち、当該搬送ロボットが下ステージ部5に対してアクセスして処理前のブランケットを直接的に搬入し、また使用後のブランケットを受け取り搬出する。もちろん、版や基板と同様に、専用の搬入出ユニットを装置正面側に配置してもよいことは言うまでもない。
【0027】
B.装置各部の構成
B−1.搬送部2
図3は図1の印刷装置に装備される搬送部を示す斜視図である。この搬送部2は、鉛直方向Zに延設された2本のブラケット21L、21Rを有している。図1に示すように、ブラケット21Lは左側フレーム14Lの後側柱部位の左隣で石定盤13の上面より立設され、ブラケット21Rは右側フレーム14Rの後側柱部位の右隣で石定盤13の上面より立設されている。そして、図3に示すように、これら2本のブラケット21L、21Rの上端部を互いに連結するようにボールねじ機構22が左右方向、つまりX方向に延設されている。このボールねじ機構22においては、ボールねじ(図示省略)がX方向に延びており、その一方端には、シャトル水平駆動用のモータM21の回転軸(図示省略)が連結されている。また、ボールねじの中央部に対して2つのボールねじブラケット23、23が螺合されるとともに、それらのボールねじブラケット23、23の(+Y)側面に対してX方向に延設されたシャトル保持プレート24が取り付けられている。
【0028】
このシャトル保持プレート24の(+X)側端部に版用シャトル25Lが鉛直方向Zに昇降可能に設けられる一方、(−X)側端部に基板用シャトル25Rが鉛直方向Zに昇降可能に設けられている。これらのシャトル25L、25Rは、ハンドの回転機構を除き、同一構成を有しているため、ここでは、版用シャトル25Lの構成を説明し、基板用シャトル25Rについては同一符号または相当符号を付して構成説明を省略する。
【0029】
シャトル25Lは、X方向に版PPの幅サイズ(X方向サイズ)と同程度、あるいは若干長く延びる昇降プレート251と、昇降プレート251の(+X)側端部および(−X)側端部からそれぞれ前側、つまり(+Y)側に延設された2つの版用ハンド252、252とを有している。昇降プレート251はボールねじ機構253を介してシャトル保持プレート24の(+X)側端部に昇降可能に取り付けられている。すなわち、シャトル保持プレート24の(+X)側端部に対し、ボールねじ機構253が鉛直方向Zに延設されている。このボールねじ機構253の下端には、版用シャトル昇降モータM22Lに回転軸(図示省略)が連結されている。また、ボールねじ機構253に対してボールねじブラケット(図示省略)が螺合されるとともに、そのボールねじブラケットの(+Y)側面に対して昇降プレート251が取り付けられている。このため、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて版用シャトル昇降モータM22Lが作動することで、昇降プレート251が鉛直方向Zに昇降駆動される。
【0030】
各ハンド252、252の前後サイズ(Y方向サイズ)は版PPの長さサイズ(Y方向サイズ)よりも長く、各ハンド252、252の先端側(+Y側)で版PPを保持可能となっている。
【0031】
また、こうして版用ハンド252、252で版PPが保持されたことを検知するために、昇降プレート251の中央部から(+Y)側にセンサブラケット254が延設されるとともに、センサブラケット254の先端部に版検知用のセンサSN21が取り付けられている。このため、両ハンド252上に版PPが載置されると、センサSN21が版PPの後端部、つまり(−Y)側端部を検知し、検知信号を制御部6に出力する。
【0032】
さらに、各版用ハンド252、252はベアリング(図示省略)を介して昇降プレート251に取り付けられ、前後方向(Y方向)に延びる回転軸YA2を回転中心として回転自在となっている。また、昇降プレート251のX方向両端には、回転アクチュエータRA2、RA2が取り付けられている。これらの回転アクチュエータRA2、RA2は加圧エアーを駆動源として動作するものであり、加圧エアーの供給経路に介挿されたバルブ(図示省略)の開閉により180゜単位で回転可能となっている。このため、制御部6のバルブ制御部64による上記バルブの開閉を制御することで、版用ハンド252、252の一方主面が上方に向いてパターニング前の版PPを扱うのに適したハンド姿勢(以下「未使用姿勢」という)と、他方主面が上方を向いてパターニング後の版PPを扱うのに適したハンド姿勢(以下「使用済姿勢」という)との間で、ハンド姿勢を切替え可能となっている。このようにハンド姿勢の切替え機構を有している点が、版用シャトル25Lが基板用シャトル25Rと唯一相違する点である。
【0033】
次に、シャトル保持プレート24に対する版用シャトル25Lおよび基板用シャトル25Rの取り付け位置について説明する。この実施形態では、図3に示すように、版用シャトル25Lおよび基板用シャトル25Rは、版PPや基板SBの幅サイズ(なお実施形態では、版PPと基板SBの幅サイズは同一である)よりも長い間隔だけX方向に離間してシャトル保持プレート24に取り付けられている。そして、シャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向に回転させると、両シャトル25L、25Rは上記離間距離を保ったままX方向に移動する。例えば図3では、符号XP23が上ステージ部3の直下位置を示しており、シャトル25L、25Rは、位置XP23からそれぞれ(+X)方向および(−X)方向に等距離(この距離を「ステップ移動単位」という)だけ離れた位置XP22、XP24に位置している。なお、本実施形態では、図3に示す状態を「中間位置状態」と称する。
【0034】
また、この中間位置状態からシャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向に回転させてシャトル保持プレート24をステップ移動単位だけ(+X)方向に移動させると、基板用シャトル25Rが(+X)方向に移動して上ステージ部3の直下位置XP23まで移動して位置決めされる。このとき、版用シャトル25Lも一体的に(+X)方向に移動して版用搬入出ユニットに近接した位置XP21に位置決めされる。
【0035】
逆に、シャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向と逆の方向に回転させてシャトル保持プレート24をステップ移動単位だけ(−X)方向に移動させると、版用シャトル25Lが中間位置状態から(−X)方向に移動して上ステージ部3の直下位置XP23まで移動して位置決めされる。このとき、基板用シャトル25Rも一体的に(−X)方向に移動して基板用搬入出ユニットに近接した位置XP25に位置決めされる。このように、本明細書では、X方向におけるシャトル位置として5つの位置XP21〜XP25が規定されている。つまり、版受渡し位置XP21は、版用シャトル25Lが位置決めされる3つの位置XP21〜XP23のうち最も版用搬入出ユニットに近接位置であり、版用搬入出ユニットとの間で版PPの搬入出が行われるX方向位置を意味している。この基板受渡し位置XP25は、基板用シャトル25Rが位置決めされる3つの位置XP23〜XP25のうち最も基板用搬入出ユニットに近接位置であり、基板用搬入出ユニットとの間で基板SBの搬入出が行われるX方向位置を意味している。また、位置XP23は上ステージ部3の吸着プレート37が鉛直方向Zに移動して版PPや基板SBを吸着保持するX方向位置を意味しており、版用シャトル25LがX方向位置XP23に位置している際には、当該位置XP23を「版吸着位置XP23」と称する一方、基板用シャトル25RがX方向位置XP23に位置している際には、当該位置XP23を「基板吸着位置XP23」と称する。また、このようにシャトル25L、25Rにより版PPや基板SBを搬送する鉛直方向Zでの位置、つまり高さ位置を「搬送位置」と称する。
【0036】
また、本実施形態では、パターニング時での版PPとブランケットとのギャップ量、ならびに転写時での基板SBとブランケットとのギャップ量を正確に制御するため、版PPおよび基板SBの厚みを計測する必要がある。そこで、版厚み計測センサSN22および基板厚み計測センサSN23が設けられている。
【0037】
より具体的には、図3に示すように、前側、(+Y)側に延設されたセンサブラケット26Lが左側ブラケット21Lに取り付けられてセンサブラケット26Lの先端部が位置XP21に位置決めされる版PPの上方まで延びている。そして、センサブラケット26Lの先端部に対し、版厚み計測センサSN22が取り付けられている。このセンサSN22は投光部と受光部とを有しており、版PPの上面で反射された光に基づいてセンサSN22から版PPの上面までの距離を計測するとともに、版PPの下面で反射された光に基づいてセンサSN22から版PPの下面までの距離を計測し、それらの距離に関する情報を制御部6に出力している。したがって、制御部6では、これらの距離情報から版PPの厚みを正確に求めることが可能となっている。
【0038】
また、基板側についても版側と同様にして、基板厚み計測センサSN23が設けられている。すなわち、センサブラケット26Rが右側ブラケット21Rに取り付けられてセンサブラケット26Rの先端部が位置XP25に位置決めされる基板SBの上方まで延びている。そして、センサブラケット26Rの先端部に対し、基板厚み計測センサSN23が取り付けられ、基板SBの厚みが計測される。
【0039】
B−2.上ステージ部3
図4は図1の印刷装置に装備される上ステージ部を示す斜視図である。この上ステージ部3は位置XP23(図3参照)に位置決めされる版PPや基板SBの上方に配置されており、支持フレーム31が水平プレート15と連結されることによって第1フレーム構造体に支持されている。この支持フレーム31は、図4に示すように、鉛直方向Zに延設されたフレーム側面を有しており、鉛直方向Zに延設されたボールねじ機構32を当該フレーム側面で支持している。また、ボールねじ機構32の上端部には、第1ステージ昇降モータM31の回転軸(図示省略)が連結されるとともに、ボールねじ機構32に対してボールねじブラケット321が螺合している。
【0040】
このボールねじブラケット321には、別の支持フレーム33が固定されており、ボールねじブラケット321と一体的に鉛直方向Zに昇降可能となっている。さらに、当該支持フレーム33のフレーム面で、別のボールねじ機構34が支持されている。このボールねじ機構34には、上記ボールねじ機構32のボールねじよりも狭ピッチのボールねじが設けられ、その上端部には、第2ステージ昇降モータM32の回転軸(図示省略)が連結されるとともに、中央部にはボールねじブラケット341が螺合している。
【0041】
このボールねじブラケット341には、ステージホルダ35が取り付けられている。ステージホルダ35は、鉛直方向Zに延設された3枚の鉛直プレート351〜353で構成されている。そのうちの鉛直プレート351はボールねじブラケット341に固着され、残りの鉛直プレート352、353はそれぞれ鉛直プレート351の左右側に固着されている。そして、鉛直プレート351〜353の鉛直下方端に対して水平支持プレート36が取り付けられ、さらに当該水平支持プレート36の下面に、例えばアルミニウム合金などの金属製の吸着プレート37が取り付けられている。
【0042】
したがって、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じてステージ昇降モータM31、M32が作動することで、吸着プレート37が鉛直方向Zに昇降移動させられる。また、本実施形態では、異なるピッチを有するボールねじ機構32、34を組み合わせ、第1ステージ昇降モータM31を作動させることで比較的広いピッチで吸着プレート37を昇降させる、つまり吸着プレート37を高速移動させることができるとともに、第2ステージ昇降モータM32を作動させることで比較的狭いピッチで吸着プレート37を昇降させる、つまり吸着プレート37を精密に位置決めすることができる。
【0043】
この吸着プレート37の下面、つまり版PPや基板SBを吸着保持する吸着面に複数本の吸着溝371が設けられている。また、吸着プレート37の外周縁に設けた複数の切欠部373および吸着プレート37の中央部には、複数の吸着パッド38が配置されている。なお、吸着パッド38は、先端面が吸着プレート37の下面と面一になった状態で吸着パッド38を支持するノズル本体が水平支持プレート36やノズル支持プレート39等の支持部材で支持されている。また、吸着パッド38のうち吸着プレート37の中央部に配置されるもの(図示省略)は、吸着強度を向上させるための補助的なものであり、このような補助的な吸着パッドを設けないことも可能である。
【0044】
このように、本実施形態では、版PPや基板SBを吸着保持するための吸着手段として、吸着溝371および吸着パッド38が設けられるとともに、それぞれに対して負圧を独立して供給するための負圧供給経路を介して負圧供給源に接続されている。そして、制御部6のバルブ制御部64からの開閉指令に応じて吸着溝用の負圧供給経路に介挿されるバルブV31(図2)を開閉制御することで吸着溝371による版PPや基板SBの吸着が可能となる。また、バルブ制御部64からの開閉指令に応じて吸着パッド用の負圧供給経路に介挿されるバルブV32(図2)を開閉制御することで吸着パッド38による版PPや基板SBの吸着が可能となる。なお、本実施形態では、上記した吸着手段および後述するようにブランケットを吸着保持する吸着手段は、負圧供給源として工場の用力を用いているが、装置100が真空ポンプなどの負圧供給部を装備し、当該負圧供給部から吸着手段に負圧を供給するように構成してもよい。
【0045】
B−3.アライメント部4
図5は図1の印刷装置に装備されるアライメント部および下ステージ部を示す斜視図である。アライメント部4および下ステージ部5は、図1に示すように、上ステージ部3の鉛直下方側に配置されている。アライメント部4は、カメラ取付ベース41、4本の柱部材42、中央部に開口が設けられた額縁状のステージ支持プレート43、アライメントステージ44および撮像部45を有している。このカメラ取付ベース41は、図1に示すように、石定盤13の上面中央部に形成された凹部の内底面に固定されている。また、カメラ取付ベース41の前後端部の各々から2本ずつ柱部材42が鉛直方向Zの上方(以下「鉛直上方」あるいは「(+Z)方向」という)に立設されており、これらによってカメラ取付ベース41のハンドリング性を向上させている。
【0046】
ステージ支持プレート43は、図1に示すように、石定盤13の凹部を跨ぐように水平姿勢で配置され、ステージ支持プレート43の中央開口とカメラ取付ベース41とが対向した状態で石定盤13の上面に固定されている。また、このステージ支持プレート43の上面にアライメントステージ44が固定されている。
【0047】
アライメントステージ44は、ステージ支持プレート43上に固定されるステージベース441と、ステージベース441の鉛直上方に配置されて下ステージ部5を支持するステージトップ442とを有している。これらステージベース441およびステージトップ442はいずれも中央部に開口を有する額縁形状を有している。また、これらステージベース441およびステージトップ442の間には、鉛直方向Zに延びる回転軸を回転中心とする回転方向、X方向およびY方向の3自由度を有する、例えばクロスローラベアリング等の支持機構(図示省略)がステージトップ442の各角部近傍に配置されている。
【0048】
これらの支持機構のうち、前左角部に配置される支持機構に対してY軸ボールねじ機構443aが設けられるとともに、当該Y軸ボールねじ機構443aにY軸駆動モータM41が取り付けられている。また、前右角部に配置される支持機構に対してX軸ボールねじ機構443bが設けられるとともに、当該X軸ボールねじ機構443bにX軸駆動モータM42が取り付けられている。また、後右角部に配置される支持機構に対してY軸ボールねじ機構443cが設けられるとともに、当該Y軸ボールねじ機構443cの駆動源としてY軸駆動モータM43が取り付けられている。さらに、後左角部に配置される支持機構に対してX軸ボールねじ機構(図示省略)が設けられるとともに、当該X軸ボールねじ機構にX軸駆動モータM44(図2)が取り付けられている。このため、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて各駆動モータM41〜M44を作動させることで、アライメントステージ44の中央部に比較的大きな空間を設けながら、ステージトップ442を水平面内で移動させるとともに、鉛直軸を回転中心として回転させて下ステージ部5の吸着プレートを位置決め可能となっている。
【0049】
本実施形態において中空空間を有するアライメントステージ44を用いた理由のひとつは、下ステージ部5の上面に保持されるブランケットおよび上ステージ部3の下面に保持される基板SBに形成されるアライメントマークを撮像部45により撮像するためである。以下、図5および図6を参照しつつ撮像部45の構成について説明する。
【0050】
図6はアライメント部の撮像部を示す斜視図である。撮像部45は、ブランケットの4箇所にそれぞれ形成されるアライメントマーク、ならびに基板SBの4箇所にそれぞれ形成されるアライメントマークを撮像するものであり、4つの撮像ユニット45a〜45dを有している。各撮像ユニット45a〜45dの撮像対象領域は、
撮像ユニット45a:ブランケットおよび基板SBの前左角部の近傍領域、
撮像ユニット45b:ブランケットおよび基板SBの前右角部の近傍領域、
撮像ユニット45c:ブランケットおよび基板SBの後右角部の近傍領域、
撮像ユニット45d:ブランケットおよび基板SBの後左角部の近傍領域、
であり、互いに異なっているが、ユニット構成は同一である。したがって、ここでは、撮像ユニット45aの構成を説明し、その他の構成については同一または相当符号を付して説明を省略する。
【0051】
撮像ユニット45aでは、XYテーブル451が、図6に示すように、カメラ取付ベース41の前左角部の近傍上面に配置されている。このXYテーブル451のテーブルベースがカメラ取付ベース41に固定されており、調整つまみ(図示省略)をマニュアルで操作することでXYテーブル451のテーブルトップがX方向およびY方向に精密に位置決めされる。このテーブルトップ上に、精密昇降テーブル452が取り付けられている。この精密昇降テーブル452には、Z軸駆動モータM45a(図2)が設けられており、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じてZ軸駆動モータM45aが作動することで精密昇降テーブル452のテーブルトップが鉛直方向Zに昇降移動する。
【0052】
この精密昇降テーブル452のテーブルトップの上面には、鉛直方向Zに延設されたカメラブラケット453の下端部が固定される一方、上端部がステージ支持プレート43の中央開口、アライメントステージ44の中央開口およびステージベースの長孔開口(これについては後で詳述する)を通過して下ステージ部5の吸着プレート51の直下近傍まで延設されている。そして、このカメラブラケット453の上端部に対し、撮像面を鉛直上方側に向けた状態でCCDカメラCMa、鏡筒454および対物レンズ455がこの順序で積層配置されている。また、鏡筒454の側面には光源456が取り付けられており、光源駆動部46により点灯駆動される。本実施形態では、光源456としては赤色LED(Light Emitting Diode)を用いているが、ブランケットや基板SBの材質などに応じた光源を用いることができる。また、鏡筒454の上方には対物レンズ455が取り付けられている。さらに、鏡筒454の内部には、ハーフミラー(図示省略)が配置されており、光源456から射出された照明光を(+Z)方向に折り曲げ、対物レンズ455および吸着プレート51の前左角部の近傍領域に設けられた石英窓52aを介して下ステージ部5上のブランケットに照射する。また、照明光の一部はさらに当該ブランケットを介して上ステージ部3の吸着プレート37に吸着保持される基板SBに照射する。なお、本実施形態では、ブランケットは透明部材で構成されているため、上記したように照明光はブランケットを透過して基板SBの下面に到達する。
【0053】
また、ブランケットや基板SBから射出される光のうち(−Z)側に進む光は、石英窓52a、対物レンズ455および鏡筒454を介してCCDカメラCMaに入射し、CCDカメラCMaが石英窓52aの鉛直上方に位置するアライメントマークを撮像する。このように撮像ユニット45aでは、石英窓52aを介して照明光を照射するとともに石英窓52aを介してブランケットおよび基板SBの前左角部の近傍領域の画像を撮像し、その像に対応する画像信号を制御部6の画像処理部65に出力する。一方、他の撮像ユニット45b〜45dは、撮像ユニット45aと同様にして、それぞれ石英窓52b〜52dを介して画像を撮像する。
【0054】
B−4.下ステージ部5
次に、図5に戻って下ステージ部5の構成について詳述する。この下ステージ部5は、吸着プレート51と、上記した4つの石英窓52a〜52dと、4本の柱部材53と、ステージベース54と、リフトピン部55とを有している。ステージベース54には、左右方向Xに延びる長孔形状の開口が前後方向Yに3つ並んで設けられている。そして、これらの長孔開口と、アライメントステージ44の中央開口とが上方からの平面視でオーバーラップするように、ステージベース54がアライメントステージ44上に固定されている。また、前側の長孔開口には、撮像ユニット45a、45bの上方部(CCDカメラ、鏡筒および対物レンズ)が遊挿されるとともに、後側の長孔開口には、撮像ユニット45c、45dの上方部(CCDカメラ、鏡筒および対物レンズ)が遊挿されている。また、ステージベース54の上面角部から柱部材53が(+Z)に立設され、各頂部が吸着プレート51を支持している。
【0055】
この吸着プレート51は例えばアルミニウム合金などの金属プレートであり、その前左角部、前右角部、後右角部および後左角部の近傍領域には、石英窓52a〜52dがそれぞれ設けられている。また、吸着プレート51の上面には、石英窓52a〜52dを取り囲むように溝511が設けられるとともに、溝511により囲まれる内部領域では、石英窓52a〜52dを除き、左右方向Xに延びる複数の溝512が前後方向Yに一定間隔で設けられている。
【0056】
これら溝511、512の各々に対して正圧供給配管(図示省略)の一方端が接続されるとともに、他方端が加圧用マニホールドに接続されている。さらに、各正圧供給配管の中間部に加圧バルブV51(図2)が介挿されている。この加圧用マニホールドに対しては、工場の用力から供給される加圧エアーをレギュレータで調圧することで得られる一定圧力のエアーが常時供給されている。このため、制御部6のバルブ制御部64からの動作指令に応じて所望の加圧バルブV51が選択的に開くと、その選択された加圧バルブV51に繋がる溝511、512に対して調圧された加圧エアーが供給される。
【0057】
また、溝511、512の各々に対しては、加圧エアーの選択供給のみならず、選択的な負圧供給も可能となっている。すなわち、溝511、512の各々に対して負圧供給配管(図示省略)の一方端が接続されるとともに、他方端が負圧用マニホールドに接続されている。さらに、各負圧供給配管の中間部に吸着バルブV52(図2)が介挿されている。この負圧用マニホールドには、負圧供給源がレギュレータを介して接続されており、所定値の負圧が常時供給されている。このため、制御部6のバルブ制御部64からの動作指令に応じて所望の吸着バルブV52が選択的に開くと、その選択された吸着バルブV52に繋がる溝511、512に対して調圧された負圧が供給される。
【0058】
このように本実施形態では、バルブV51、52の開閉制御によって吸着プレート51上にブランケットを部分的あるいは全面的に吸着させたり、吸着プレート51とブランケットとの間にエアーを部分的に供給してブランケットを部分的に膨らませて上ステージ部3に保持された版PPや基板SBに押し遣ることが可能となっている。
【0059】
図7は下ステージ部に装備されるリフトピン部を示す図であり、同図(a)はリフトピン部の平面図であり、同図(b)は側面図である。リフトピン部55では、リフトプレート551が吸着プレート51とステージベース54との間で昇降自在に設けられている。このリフトプレート551には、4箇所の切欠部551a〜551dが形成されて撮像ユニット45a〜45dとの干渉が防止されている。つまり、撮像ユニット45a〜45dがそれぞれ切欠部551a〜551dに入り込む状態で、リフトプレート551は鉛直方向Zに昇降可能となっている。また、このように4箇所の切欠部551a〜551dを設けることでリフトプレート551には6本のフィンガー部551e〜551jが形成され、各フィンガー部551e〜551jの先端部から鉛直上方にリフトピン552e〜552jがそれぞれ立設されている。また、リフトピン552e、552fの間に別のリフトピン552kが立設されるとともに、リフトピン552i、552jの間にさらに別のリフトピン552mが立設されており、合計8本のリフトピン552(552e〜552k、552m)がリフトプレート551に立設されてブランケットの下面全体を支持可能となっている。これらのリフトピン552は吸着プレート51の外周縁に対して鉛直方向Zに穿設された貫通孔(図示省略)よりも細く、図5に示すように、貫通孔を鉛直下方側より挿通可能となっている。
【0060】
また、各リフトピン552の上端側から圧縮ばね553およびハウジング554がこの順序で外挿され、圧縮ばね553の下端部がリフトプレート551で係止されるとともに、その上端部に対してハウジング554が覆い被さっている。なお、ハウジング554の上面は、吸着プレート51の貫通孔の内径よりも大きな外径を有する円形形状を有しており、次に説明するようにピン昇降シリンダCL51によりリフトプレート551を上昇させた際、ハウジング554の上面は吸着プレート51の下面で係止され、リフトプレート551とで圧縮ばね553を挟み込んで収縮させてリフトプレート551の上昇速度をコントロールする。また、リフトプレート551の下降にも、圧縮ばね553の圧縮力を利用してリフトプレート551の下降速度をコントロールする。
【0061】
このピン昇降シリンダCL51は、下面がカメラ取付ベース41に固定されたガイドブラケット555の側面に固定されており、ピン昇降シリンダCL51のピストン先端がスライドブロック556を介してリフトプレート551を支持している。したがって、制御部6のバルブ制御部64がピン昇降シリンダCL51に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、ピン昇降シリンダCL51を作動させてリフトプレート551を昇降させる。その結果、吸着プレート51の上面、つまり吸着面に対し、全リフトピン552が進退移動させられる。例えば、リフトピン552が吸着プレート51の上面から(+Z)方向に突出することで、ブランケット搬送ロボットによりブランケットがリフトピン552の頂部に載置可能となる。そして、ブランケットの載置に続いて、リフトピン552が吸着プレート51の上面よりも(−Z)方向に後退することで、ブランケットが吸着プレート51の上面に移載される。その後、後述するように適当なタイミングで、吸着プレート51の近傍に配置されたブランケット厚み計測センサSN51によって当該ブランケットの厚みが計測される。
【0062】
図8はブランケット厚み計測部を示す斜視図である。この実施形態では、ブランケット厚み計測部56は下ステージ部5の一部構成であり、次のように構成されている。ブランケット厚み計測部56では、シリンダブラケット561が吸着プレート51の右側近傍位置で第2フレーム構造体に固定されている。また、このシリンダブラケット561に対し、センサ水平駆動シリンダCL52が水平状態で固定されており、制御部6のバルブ制御部64が当該シリンダCL52に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、シリンダCL52に取り付けられたスライドプレート562が左右方向Xにスライドする。このスライドプレート562の左端部にはブランケット厚み計測センサSN51が取り付けられている。このため、センサ水平駆動シリンダCL52によってスライドプレート562が左(+X)側、つまり吸着プレート51側に水平移動すると、ブランケット厚み計測センサSN51が吸着プレート51に吸着保持されるブランケットの右端部の直上位置に位置決めされる。このセンサSN51も、版厚み計測センサSN22および基板厚み計測センサSN23と同様に構成されており、同様の計測原理によりブランケットの厚みを計測可能となっている。一方、計測以外のタイミングにおいては、センサ水平駆動シリンダCL52によってスライドプレート562は右(−X)側、つまり吸着プレート51から離れた退避位置に移動させられており、ブランケット厚み計測部56の干渉が防止される。
【0063】
B−5.押さえ部7
図9は図1の印刷装置に装備される押さえ部を示す図である。同図(a)は押さえ部7の構成を示す斜視図であり、同図(b)は吸着プレート51に吸着保持されるブランケットBLを押さえ部7により押さえた状態(以下「ブランケット押さえ状態」という)を示し、同図(c)は押さえ部7によるブランケットBLを解除した状態(以下「ブランケット押さえ解除状態」という)を示している。この押さえ部7は、吸着プレート51の鉛直上方側に設けられる押さえ部材71を切替機構72によって鉛直方向Zに昇降することでブランケット押さえ状態とブランケット押さえ解除状態とを切り替える。
【0064】
この切替機構72では、第2フレーム構造体の水平プレート17に対し、それぞれシリンダブラケット721〜723によって押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73が、ピストン724を鉛直下方側に進退自在に、取り付けられている。これらのピストン724の先端部では、押さえ部材71がぶら下がり状態で遊嵌されている。
【0065】
押さえ部材71は、支持プレート711と、4つのブランケット押さえプレート712とを有している。支持プレート711は、ブランケットBLと同一の平面サイズを有し、その中央部が開口しており、全体として額縁形状を有している。この支持プレート711の下面に対し、4枚のブランケット押さえプレート712が固定されて支持プレート711の下面全部を覆っている。
【0066】
また、支持プレート711には、図9(b)、(c)に示すように、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73に対応する位置にピストン724の外径よりも広い内径を有する貫通孔716が穿設されている。そして、各貫通孔716の下方側より締結部材717が貫通孔716を介してピストン724の先端部に接続されている。これによって、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73のピストン724は支持プレート711に遊嵌された状態で押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73に連結される。つまり、押さえ部材71は押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73に対してフローティング状態で支持されている。
【0067】
そして、制御部6のバルブ制御部64が押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73を作動させて押さえ部材71を下ステージ部5の吸着プレート51に対して当接または離間させる。例えば、押さえ部材71がブランケットBLを保持している吸着プレート51に下降してブランケット押さえ状態となり、ブランケットBLの周縁部を全周にわたって吸着プレート51とで挟み込んでホールドする。また、アライメントのために吸着プレート51が移動した際にも、押さえ部材71は吸着プレート51とともに水平方向(X方向、Y方向)に移動し、ブランケットBLを安定して保持する。
【0068】
B−6.プリアライメント部8
図10は図1の印刷装置に装備されるプリアライメント部を示す斜視図である。プリアライメント部8は、プリアライメント上部81と、プリアライメント下部82とを有している。これらのうちプリアライメント上部81は、プリアライメント下部82よりも鉛直上方側に配置され、ブランケットBLとの密着に先立って、位置XP23で版用シャトル25Lにより保持される版PPおよび基板用シャトル25Rにより保持される基板SBをアライメントする。一方、プリアライメント下部82は、版PPや基板SBとの密着に先立って、下ステージ部5の吸着プレート51に載置されるブランケットBLをアライメントする。なお、プリアライメント上部81と、プリアライメント下部82とは基本的に同一構成を有している。そこで、以下においては、プリアライメント上部81の構成について説明し、プリアライメント下部82については同一または相当符号を付して構成説明を省略する。
【0069】
プリアライメント上部81は、4つの上ガイド移動部811〜814を有している。各上ガイド移動部811〜814は第2フレーム構造体を構成する複数の水平プレートのうち上段側に配置された水平プレート17に設けられている。すなわち、前後方向Yに延設された2本の水平プレートのうちの左側水平プレート17aに対し、その中央部に上ガイド移動部811が取り付けられるとともに、その前側端部に上ガイド移動部812が取り付けられている。また、もう一方の右側水平プレート17bに対し、その中央部に上ガイド移動部813が取り付けられるとともに、その後側端部に上ガイド移動部814が取り付けられている。なお、上ガイド移動部811、813は同一構成を有し、また上ガイド移動部812、814は同一構成を有している。したがって、以下においては、上ガイド移動部811、812の構成を詳述し、上ガイド移動部813、814について同一または相当符号を付して構成説明を省略する。
【0070】
上ガイド移動部811では、ボールねじ機構811aが左右方向Xに延設された状態で左側水平プレート17aの中央部に固定されている。そして、ボールねじ機構811aのボールねじに対してボールねじブラケットが螺合されるとともに、当該ボールねじブラケットに上ガイド811bが上ガイド移動部813に対向して取り付けられている。また、ボールねじ機構811aの左端部に上ガイド駆動モータM81aの回転軸(図示省略)が連結されており、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて上ガイド駆動モータM81aが作動することで上ガイド811bが左右方向Xに移動する。
【0071】
また、上ガイド移動部812では、ボールねじ機構812aが前後方向Yに延設された状態で左側水平プレート17aの前側端部に固定されている。そして、ボールねじ機構812aのボールねじに対してボールねじブラケットが螺合されるとともに、当該ボールねじブラケットに対し、左右方向に延設されたガイドホルダ812cの左端部が固定されている。このガイドホルダ812cの右端部は、水平プレート17a、17bの中間位置に達しており、その右端部に上ガイド812bが上ガイド移動部814に対向して取り付けられている。また、ボールねじ機構812aの後端部に上ガイド駆動モータM81bの回転軸(図示省略)が連結されており、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて上ガイド駆動モータM81bが作動することで上ガイド812bが前後方向Yに移動する。
【0072】
このように4つの上ガイド811b〜814bが位置XP23の鉛直下方位置で版PPや基板SB(同図中の一点鎖線)を取り囲んでおり、各上ガイド811b〜814bが独立して版PPなどに対して近接および離間可能となっている。したがって、各上ガイド811b〜814bの移動量を制御することによって版PPおよび基板SBをシャトルのハンド上で水平移動あるいは回転させてアライメントすることが可能となっている。
【0073】
B−7.除電部9
図11は図1の印刷装置に装備される除電部を示す斜視図である。除電部9では、ベースプレート92が下ステージ部5の左側で石定盤13の上面に固定されている。また、ベースプレート92から柱部材93が立設されており、その上端部は下ステージ部5よりも高い位置まで延設されている。そして、ベースプレート92の上端部に対して固定金具94を介してイオナイザブラケット95が取り付けられている。このイオナイザブラケット95は右方向(−X)に延設され、その先端部は吸着プレート51の近傍に達している。そして、その先端部にイオナイザ91が取り付けられている。
【0074】
B−8.制御部6
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)61、メモリ62、モータ制御部63、バルブ制御部64、画像処理部65および表示/操作部66を有しており、CPU61はメモリ62に予め記憶されたプログラムにしたがって装置各部を制御して、図12ないし図19に示すように、パターニング処理および転写処理を実行する。
【0075】
C.印刷装置の全体動作
図12は、図1の印刷装置の全体動作を示すフローチャートである。また、図13ないし図19は、図1の印刷装置の動作を説明するための図であり、図中のテーブルは制御部6による制御内容(制御対象および動作内容)を示し、また図中の模式図は装置各部の状態を示している。この印刷装置100の初期状態では、図13(a)に示すように、版用シャトル25Lおよび基板用シャトル25Rはそれぞれ中間位置XP22、XP24に位置決めされており、版用搬入出ユニットへの版PPのセットを待って版PPの投入工程(ステップS1)、ならびに基板用搬入出ユニットへの基板SBのセットを待って基板SBの投入工程(ステップS2)を実行する。なお、版用シャトル25Lおよび基板用シャトル25Rが一体的に左右方向Xに移動するという搬送構造を採用しているため、版PPの搬入を行った(ステップS1)後、基板SBの搬入を行う(ステップS2)が、両者の順序を入れ替えてもよい。
【0076】
C−1.版搬入工程(ステップS1)
図13(b)の「ステップS1」の欄に示すように、サブステップ(1−1)〜(1−7)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を所定方向に回転させ、シャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させる(1−1)。これによって、版用シャトル25Lが版受渡し位置XP21に移動して位置決めされる。また、回転アクチュエータRA2、RA2が動作し、版用ハンド252、252を180゜回転させて原点位置に位置決めする(1−2)。これによって、ハンド姿勢が使用済姿勢から未使用姿勢に切り替わり、使用前の版PPの投入準備が完了する。
【0077】
そして、版用シャッター駆動シリンダCL11が動作し、版用シャッター18を鉛直下方に移動させる、つまりシャッター18を開く(1−3)。それに続いて、制御部6からの動作指令に応じて版用搬入出ユニットが版PPを印刷装置100の内部に搬入し、版用シャトル25Lのハンド252,252上に載置する(1−4)。こうして版PPの投入が完了すると、上記バルブの開閉状態を元に戻すことで版用シャッター駆動シリンダCL11が逆方向に作動して版用シャッター18を元の位置に戻す、つまりシャッター18を閉じる(1−5)。
【0078】
版PPの投入完了時点では、版PPは版受渡し位置XP21に位置している。そこで、このタイミングで、版厚み計測センサSN22が作動して版PPの上面および下面の高さ位置(鉛直方向Zにおける位置)を検出し、それらの検出結果を示す高さ情報を制御部6に出力する。そして、これらの高さ情報に基づいてCPU61は版PPの厚みを求め、メモリ62に記憶する。こうして、版PPの厚み計測が実行される(1−6)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を逆回転させてシャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させ、中間位置XP22に位置決めする(1−7)。
【0079】
C−2.基板投入工程(ステップS2)
図13(b)の「ステップS2」の欄に示すように、サブステップ(2−1)〜(2−6)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を所定方向と逆方向に回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させる(2−1)。これによって、基板用シャトル25Rが基板受渡し位置XP25に移動して位置決めされる。なお、基板用ハンド252、252については回転機構が設けられておらず、サブステップ(2−1)が完了した時点で基板SBの投入準備が完了する。
【0080】
そして、基板用シャッター駆動シリンダCL12が動作し、基板用シャッター19を鉛直下方に移動させる、つまりシャッター19を開く(2−2)。それに続いて、制御部6からの動作指令に応じて基板用搬入出ユニットが基板SBを印刷装置100の内部に搬入し、基板用シャトル25Rのハンド252,252上に載置する(2−3)。こうして基板SBの投入が完了すると、上記バルブの開閉状態を元に戻すことで基板用シャッター駆動シリンダCL12が逆方向に作動して基板用シャッター19を元の位置に戻す、つまりシャッター19を閉じる(2−4)。
【0081】
基板SBの投入完了時点では、基板SBは基板受渡し位置XP25に位置している。そこで、このタイミングで、基板厚み計測センサSN23が作動して基板SBの上面および下面の高さ位置を検出し、それらの検出結果を示す高さ情報を制御部6に出力する。そして、これらの高さ情報に基づいてCPU61は、版PPに続いて、基板SBの厚みを求め、メモリ62に記憶する。こうして、基板SBの厚み計測が実行される(2−5)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を所定方向に回転させてシャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させ、中間位置XP24に位置決めする(2−6)。
【0082】
このように、本実施形態では、図13(c)に示すように、パターニング処理を実行する前に、版PPのみならず、基板SBをも準備しておき、後で詳述するように、パターニング処理および転写処理を連続して実行する。これによって、ブランケットBL上でパターニングされた塗布層が基板SBに転写されるまでの時間間隔を短縮することができ、安定した処理が実行される。
【0083】
C−3.版吸着(ステップS3)
図14(a)の「ステップS3」の欄に示すように、サブステップ(3−1)〜(3−7)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させる(3−1)。これによって、版用シャトル25Lが版吸着位置XP23に移動して位置決めされる。そして、版用シャトル昇降モータM22Lが回転軸を回転させ、昇降プレート251を下方向(−Z)に移動させる(3−2)。これによって、版用シャトル25Lに支持されたまま版PPが搬送位置よりも低いプリアライメント位置に移動して位置決めされる。
【0084】
次に、上ガイド駆動モータM81a〜M81dが回転軸を回転させ、上ガイド811b、813bが左右方向Xに移動するとともに、上ガイド812b、814bが前後方向Yに移動し、各上ガイド811b〜814bが版用シャトル25Lに支持される版PPの端面と当接して版PPを予め設定した水平位置に位置決めする。その後、各上ガイド駆動モータM81a〜M81dが回転軸を逆方向に回転させ、各上ガイド811b〜814bが版PPから離間する(3−3)。
【0085】
こうして、版PPのプリアライメント処理が完了すると、ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート37を下方向(−Z)に下降させて版PPの上面と当接させる。それに続いて、バルブV31,V32が開き、これによって吸着溝371および吸着パッド38により版PPが吸着プレート37に吸着される(3−4)。
【0086】
吸着検出センサSN31(図2)により版PPの吸着が検出されると、ステージ昇降モータM31が回転軸を逆方向に回転させ、吸着プレート37が版PPを吸着保持したまま鉛直上方に上昇して版吸着位置XP23の鉛直上方位置に版PPを移動させる(3−5)。そして、版用シャトル昇降モータM22Lが回転軸を回転させ、昇降プレート251を鉛直上方に移動させ、版用シャトル25Lをプリアライメント位置から搬送位置、つまり版吸着位置XP23に移動して位置決めする(3−6)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させ、空になった版用シャトル25Lを中間位置XP22に位置決めする(3−7)。
【0087】
C−4.ブランケット吸着(ステップS4)
図14(a)の「ステップS4」の欄に示すように、サブステップ(4−1)〜(4−9)を実行する。すなわち、X軸駆動モータM42,M44およびY軸駆動モータM41,M43が作動してアライメントステージ44を初期位置に移動させる(4−1)。これによって、毎回スタートが同じ位置となる。それに続いて、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート551を上昇させ、リフトピン552を吸着プレート51の上面から鉛直上方に突出させる(4−2)。こうして、ブランケットBLの投入準備が完了すると、ブランケット用シャッター駆動シリンダCL13が動作し、ブランケット用シャッター(図示省略)を移動させて当該シャッターを開く(4−3)。そして、ブランケット搬送ロボットが、装置100にアクセスしてブランケットBLをリフトピン552の頂部に載置した後、装置100から退避する(4−4)。これに続いて、ブランケット用シャッター駆動シリンダCL13が動作し、ブランケット用シャッターを移動させて当該シャッターを閉じる(4−5)。
【0088】
次に、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート551を下降させる。これによって、リフトピン552がブランケットBLを支持したまま下降してブランケットBLを吸着プレート51に載置する(4−6)。すると、下ガイド駆動モータM82a〜M82dが回転軸を回転させ、下ガイド821b、823bが左右方向Xに移動するとともに、下ガイド822b、824bが前後方向Yに移動し、各下ガイド821b〜824bが吸着プレート51に支持されるブランケットBLの端面と当接してブランケットBLを予め設定した水平位置に位置決めする(4−7)。
【0089】
こうしてブランケットBLのプリアライメント処理が完了すると、吸着バルブV52が開き、これによって溝511、512に対して調圧された負圧が供給されてブランケットBLが吸着プレート51に吸着される(4−8)。さらに、各下ガイド駆動モータM82a〜M82dが回転軸を逆方向に回転させ、各下ガイド821b〜824bをブランケットBLから離間させる(4−9)。これによって、図14(b)に示すように、パターニング処理の準備が完了する。
【0090】
C−5.パターニング(ステップS5)
ここでは、ブランケット厚みが計測された後で、パターニングが実行される。すなわち、図15(a)の「ステップS5」の欄に示すように、センサ水平駆動シリンダCL52が動作してブランケット厚み計測センサSN51をブランケットBLの右端部の直上位置に位置決めする(5−1)。そして、ブランケット厚み計測センサSN51がブランケットBLの厚みに関連する情報を制御部6に出力し、これによってブランケットBLの厚みが計測される(5−2)。その後で、上記センサ水平駆動シリンダCL52が逆方向に動作してスライドプレート562を(−X)方向にスライドさせてブランケット厚み計測センサSN51を吸着プレート51から退避させる(5−3)。
【0091】
次に、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート37を下方向(−Z)に下降させて版PPをブランケットBLの近傍に移動させる。さらに、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させ、狭いピッチで吸着プレート37を昇降させて鉛直方向Zにおける版PPとブランケットBLの間隔、つまりギャップ量を正確に調整する(5−4)。なお、このギャップ量は版PPおよびブランケットBLの厚み計測結果に基づいて制御部6により決定される。
【0092】
そして、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73が動作し、押さえ部材71を下降させてブランケットBLの周縁部を全周にわたって押さえ部材71で押さえ付ける(5−5)。それに続いて、バルブV51、52が動作して吸着プレート51とブランケットBLとの間にエアーを部分的に供給してブランケットBLを部分的に膨らませる。この浮上部分が上ステージ部3に保持された版PPに押し遣られる(5−6)。その結果、図15(b)に示すように、ブランケットBLの中央部が版PPに密着して版PPの下面に予め形成されたパターン(図示省略)がブランケットBLの上面に予め塗布された塗布層と当接して当該塗布層をパターニングしてパターン層を形成する。
【0093】
C−6.版剥離(ステップS6)
図15(c)の「ステップS6」の欄に示すように、サブステップ(6−1)〜(6−5)を実行する。すなわち、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させて吸着プレート37が上昇して版PPをブランケットBLから剥離させる(6−1)。また、剥離処理を行うために版PPを上昇させるのと並行して適時、バルブV51、V52の開閉状態を切替え、ブランケットBLに負圧を与えて吸着プレート37側に引き寄せる。その後、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、吸着プレート37を上昇させて版PPをイオナイザ91とほぼ同一高さの除電位置に位置決めする(6−2)。また、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73が動作し、押さえ部材71を上昇させてブランケットBLの押さえ付けを解除する(6−3)。それに続いて、イオナイザ91が作動して上記版剥離処理時に発生する静電気を除電する(6−4)。この除去処理が完了すると、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、図15(d)に示すように、版PPを吸着保持したまま吸着プレート37が初期位置(版吸着位置XP23よりも高い位置)まで上昇する(6−5)。
【0094】
C−7.版退避(ステップS7)
図16(a)の「ステップS7」の欄に示すように、サブステップ(7−1)〜(7−7)を実行する。すなわち、回転アクチュエータRA2、RA2が動作し、版用ハンド252、252を180゜回転させて原点位置から反転位置に位置決めする(7−1)。これによって、ハンド姿勢が未使用姿勢から使用済姿勢に切り替わり、使用済みの版PPの受取準備が完了する。そして、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させる(7−2)。これによって、版用シャトル25Lが版吸着位置XP23に移動して位置決めされる。
【0095】
一方、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、版PPを吸着保持したまま吸着プレート37が版用シャトル25Lのハンド252、252に向けて下降してハンド252、252上に版PPを位置させた後、バルブV31,V32が閉じ、これによって吸着溝371および吸着パッド38による版PPの吸着が解除されて搬送位置での版PPの受け渡しが完了する(7−3)。そして、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を逆回転させ、吸着プレート37を初期位置まで上昇させる(7−4)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させる(7−5)。これによって、版用シャトル25Lが使用済み版PPを保持したまま中間位置XP22に移動して位置決めされる。
【0096】
C−8.基板吸着(ステップS8)
図16(a)の「ステップS8」の欄に示すように、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させる(8−1)。これによって、処理前の基板SBを保持する基板用シャトル25Rが基板吸着位置XP23に移動して位置決めされる。そして、版PPのプリアライメント処理(3−2、3−3)および吸着プレート37による版PPの吸着処理(3−4)と同様にして、基板SBのプリアライメント処理(8−2、8−3)および基板SBの吸着処理(8−4)が実行される。
【0097】
その後、吸着検出センサSN31(図2)により基板SBの吸着が検出されると、ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート37を鉛直上方に上昇させて基板吸着位置XP23より高い位置に基板SBを移動させる(8−5)。そして、基板用シャトル昇降モータM22Rが回転軸を回転させ、昇降プレート251を鉛直上方に移動させ、基板用シャトル25Rをプリアライメント位置から搬送位置に移動させて位置決めする(8−6)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させ、図16(b)に示すように、空になった基板用シャトル25Rを中間位置XP24に位置決めする(8−7)。
【0098】
C−9.転写(ステップS9)
図17(a)の「ステップS9」の欄に示すように、ここでは、ブランケット厚みが計測され、さらに精密アライメントが実行された後で、転写処理が実行される。すなわち、図17(a)の「ステップS9」の欄に示すように、パターニング処理(ステップS5)のサブステップ(5−1〜5−3)と同様にして、ブランケットBLの厚みが計測される(9−1〜9−3)。なお、このようにパターニング直前のみならず、転写直前においてもブランケットBLの厚みを計測する主たる理由は、ブランケットBLの一部が膨潤することでブランケットBLの厚みが経時変化するためであり、転写直前でのブランケット厚みを計測することで高精度な転写処理を行うことが可能となる。
【0099】
次に、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート37を下方向(−Z)に下降させて基板SBをブランケットBLの近傍に移動させる。さらに、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させ、狭いピッチで吸着プレート37を昇降させて鉛直方向Zにおける基板SBとブランケットBLの間隔、つまりギャップ量を正確に調整する(9−4)。このギャップ量については、基板SBおよびブランケットBLの厚み計測結果に基づいて制御部6により決定される。次のサブステップ(9−5)では、パターニング(ステップS5)と同様に、押さえ部材71によるブランケットBLの周縁部の押さえ付けを行う。
【0100】
こうして、基板SBとブランケットBLとはいずれもプリアライメントされ、しかも転写処理に適した間隔だけ離間して位置決めされるが、ブランケットBLに形成されたパターン層を基板SBに正確に転写するためには、両者を精密に位置合せする必要がある。そこで、本実施形態では、サブステップ(9−6〜9−8)が実行される(精密アライメント)。
【0101】
ここでは、アライメント部4のZ軸駆動モータM45a〜45dが作動して各撮像ユニット45a〜45dでブランケットBLにパターニングされたアライメントマークに対して焦点が合うようにピント調整が実行される(9−6)。そして、各撮像ユニット45a〜45dで撮像される画像が制御部6の画像処理部65に出力される(9−7)。そして、それらの画像に基づいて制御部6は基板SBに対してブランケットBLを位置合せするための制御量を求め、さらにアライメント部4のX軸駆動モータM42、M44およびY軸駆動モータM41、M43の動作指令を作成する。そして、X軸駆動モータM42、M44およびY軸駆動モータM41、M43が上記制御指令に応じて作動して吸着プレート51を水平方向に移動させるとともに鉛直方向Zに延びる仮想回転軸回りに回転させてブランケットBLを基板SBに精密に位置合せする(9−8)。
【0102】
そして、バルブV51、52が動作して吸着プレート51とブランケットBLとの間にエアーを部分的に供給してブランケットBLを部分的に膨らませる。この浮上部分が上ステージ部3に保持された基板SBに押し遣られる(9−9)。その結果、図17(b)に示すように、ブランケットBLが基板SBに密着する。これによって、ブランケットBL側のパターン層が基板SBの下面のパターンと精密に位置合せされながら、基板Bに転写される。
【0103】
C−10.基板剥離(ステップS10)
図18(a)の「ステップS10」の欄に示すように、サブステップ(10−1)〜(10−5)を実行する。すなわち、版剥離(ステップS6)と同様に、ブランケットBLからの基板SBの剥離(10−1)、除電位置への基板SBの位置決め(10−2)、押さえ部材71によるブランケットBLの押付解除(10−3)、除電(10−4)を実行する。その後、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、図18(b)に示すように、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート37が初期位置(搬送位置よりも高い位置)まで上昇する(10−5)。
【0104】
C−11.基板退避(ステップS11)
図19(a)の「ステップS11」の欄に示すように、サブステップ(11−1)〜(11−4)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させる(11−1)。これによって、基板用シャトル25Rが基板吸着位置XP23に移動して位置決めされる。
【0105】
一方、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート37を基板用シャトル25Rのハンド252、252に向けて下降させる。その後、バルブV31,V32が閉じ、これによって吸着溝371および吸着パッド38による基板SBの吸着が解除される(11−2)。そして、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を逆回転させ、吸着プレート37を初期位置まで上昇させる(11−3)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させて当該基板SBを保持したまま基板用シャトル25を中間位置XP22に移動させて位置決めする(11−4)。
【0106】
C−12.ブランケット取り出し(ステップS12)
図19(a)の「ステップS12」の欄に示すように、サブステップ(12−1)〜(12−6)を実行する。すなわち、バルブV51、52が動作して吸着プレート51によるブランケットBLの吸着を解除する(12−1)。そして、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート551を上昇させ、使用済みのブランケットBLを吸着プレート51から鉛直上方に持ち上げる(12−2)。
【0107】
次に、ブランケット用シャッター駆動シリンダCL13が動作し、ブランケット用シャッター(図示省略)を移動させて当該シャッターを開く(12−3)。そして、ブランケット搬送ロボットが、装置100にアクセスして使用済みのブランケットBLをリフトピン552の頂部から受け取り、装置100から退避する(12−4)。これに続いて、ブランケット用シャッター駆動シリンダCL13が動作し、ブランケット用シャッターを移動させて当該シャッターを閉じる(12−5)。さらに、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート551を下降させ、リフトピン552を吸着プレート51よりも下方向(−Z)に下降させる(12−6)。
【0108】
C−13.版取り出し(ステップS13)
図19(a)の「ステップS13」の欄に示すように、サブステップ(13−1)〜(13−5)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24が(+X)方向に移動する(13−1)。これによって、版用シャトル25Lが版受渡し位置XP21に移動して位置決めされる。また、版用シャッター駆動シリンダCL11が動作し、シャッター18を開く(13−2)。それに続いて、制御部6からの動作指令に応じて版用搬入出ユニットが使用済みの版PPを印刷装置100から取り出す(13−3)。こうして版PPの搬出が完了すると、上記バルブの開閉状態を元に戻すことで版用シャッター駆動シリンダCL11が逆方向に作動して版用シャッター18を元の位置に戻してシャッター18を閉じる(13−4)。そして、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させ、版用シャトル25Lを中間位置XP22に位置決めする(13−5)。
【0109】
C−14.基板取り出し(ステップS14)
図19(a)の「ステップS14」の欄に示すように、サブステップ(14−1)〜(14−5)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させる(14−1)。これによって、基板用シャトル25Rが基板受渡し位置XP25に移動して位置決めされる。また、基板用シャッター駆動シリンダCL12が動作し、シャッター19を開く(14−2)。それに続いて、制御部6からの動作指令に応じて基板用搬入出ユニットが転写処理を受けた基板SBを印刷装置100から取り出す(14−3)。こうして基板SBの搬出が完了すると、基板用シャッター駆動シリンダCL12が逆方向に作動して基板用シャッター19を元の位置に戻してシャッター19を閉じる(14−4)。そして、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させ、基板用シャトル25Rを中間位置XP23に位置決めする(14−5)。これにより、印刷装置100は、図19(b)に示すように、初期状態に戻る。
【0110】
D.パターン転写技術
上記した印刷装置100では、パターン層を担持する担持体としてブランケットBLを用いており、パターン層を担持するブランケットBLを吸着プレート51で吸着保持したまま、上ステージ部3の吸着プレート37が基板SBをブランケットBL上のパターン層と向かい合わせた状態で吸着保持する。そして、図17(b)に示すようにブランケットBLの中央部を基板側に浮上させることで基板SBに加圧当接させてブランケットBLと基板SBとを密着させている。これによって、パターン層に形成されているパターンが基板SBの下面に転写される(転写(ステップS9))。その後、ブランケットBLから基板SBを離間移動させることでブランケットBLと基板SBとを剥離させている(基板剥離(ステップS10))。これらのステップS9、S10がそれぞれ本発明の「密着工程」および「剥離工程」に相当しており、これらを含む方法が本発明の「パターン転写方法」に相当する。以下、吸着プレート51、ブランケットBLおよび基板SBの寸法関係を図20および図21を参照しつつ説明した後で、本発明にかかるパターン転写方法および装置について、図21および図22を参照しつつ詳述する。
【0111】
図20は吸着プレート、ブランケットおよび基板の寸法関係を示す斜視図であり、図21は本発明にかかるパターン転写装置の一実施形態を示す図であり、下ステージ部の吸着プレートの側断面および空圧回路を模式的に示している。基板SBの下面SBaは上記したようにブランケットBL上のパターン層PLが転写される面、つまり本発明の「被転写面」に相当する。換言すれば、図20に示すように、ブランケットBLの表面中央部には基板SBの被転写面SBaと同じ広さの有効パターンエリアEPAが設けられ、その有効パターンエリアEPA内にパターン層PLが形成されている。
【0112】
また、このブランケットBLは吸着プレート51の上面51aで保持されるように構成されている。この上面51aはブランケットBLを保持する本発明の「担持体保持面」として機能する。この担持体保持面51aでは、溝511により囲まれる内部領域513は有効パターンエリアEPAよりも広く、本発明の「開口形成エリア」に相当する。そして、この開口形成エリアOFAには、吸着溝512の開口512aが形成されている。なお、複数の吸着溝512は、図20に示すように、X方向に延設されたスリット溝であり、Y方向に等間隔で一列に配置されている。このため、開口512aは図21に示すようにY方向に一定間隔で開口形成エリアOFA内に形成されている。
【0113】
次に、空圧回路について、図21を参照しつつ説明する。溝511の開口511aおよびスリット溝512の開口512aの各々に対して配管の一方端が接続されている。また、各配管の他方端は2つに分岐しており、その一方の分岐配管は上記したように加圧バルブV51を介して加圧用マニホールド57aに接続されている。また、もう一方の分岐配管は吸着バルブV52を介して負圧用マニホールド57bに接続されている。さらに、これらのマニホールド57a、57bには、それぞれレギュレータにより調圧された正圧および負圧を供給する正圧供給部58aおよび負圧供給部58bが接続されている。このため、制御部6のバルブ制御部64がこれらのバルブV51、V52の開閉状態を個別に制御することで開口511a、512a毎に、正圧供給、負圧供給および供給停止が選択的に行われる。つまり、各開口511a、512aが圧力供給ポートとして機能している。
【0114】
なお、本明細書では、吸着溝(スリット溝)511、512の形成位置に応じて各開口512aを区別するため、図21に示すように、吸着プレート51の担持体保持面51aの中央位置に形成された開口512aを「開口P(0)」とし、開口P(0)から前方向(+Y)に配列されるスリット溝512の開口512aをそれぞれ「開口P(+1)」、「開口P(+2)」、…とし、さらに開口P(0)から後方向(−Y)に配列されるスリット溝512の開口512aをそれぞれ「開口P(−1)」、「開口P(−2)」、…と称する。そして、これらを用いながら、本実施形態におけるパターン転写方法について図22を参照しつつ詳述する。
【0115】
図22は図21のパターン転写装置によるパターン転写方法を模式的に示す図である。同図中の矢印線は各開口512aに供給される圧力状態、つまり、
上向き矢印実線…正圧供給
下向き矢印実線…負圧供給
矢印なしの点線…供給停止
をそれぞれ示している。
【0116】
このパターン転写動作(サブステップ9−9)の開始直前では、ブランケットBLは吸着プレート51の担持体保持面51a全面で吸着されている。すなわち、制御部6のバルブ制御部64は全てのバルブV51を閉じる一方、全てのバルブV52を開いて各開口511a、512aに負圧を供給している。そして、バルブ制御部64が上面中央位置の開口P(0)に接続されるバルブV52を閉じるとともにバルブV51を開いて開口P(0)から正圧を供給することで、パターン転写動作が開始される。この正圧供給によってブランケットBLの中央部と担持体保持面51aとの間に加圧エアーが入り込んで加圧空間SPが形成され、これによってブランケットBLの中央部が浮き上がり、基板SBの下面、つまり被転写面SBaに当接する。一方、開口P(0)より(+Y)端縁側および(−Y)端縁側に位置する開口P(+1)、P(+2)、…、P(−1)、P(−2)、…はいずれも負圧が供給されてブランケットBLを吸着保持している。
【0117】
次に、制御部6のバルブ制御部64は、現時点での第2開口のうち開口P(0)に隣接する開口P(+1)に接続されるバルブV51を閉じたままバルブV52を開状態から閉状態に切り替えて開口P(+1)への負圧供給を停止する。すると、開口P(+1)近傍では、加圧空間SP内の加圧力に対するブランケットBLを保持する力が次第に弱くなる。そして、それに伴って加圧空間SP内の気体成分が、ブランケットBLの開口P(+1)の鉛直上方部分と担持体保持面51aとの間に流入して当該ブランケット部分を担持体保持面51aから浮き上がらせて基板SBの被転写面SBaに当接させる。このように、上記加圧空間SP内の圧力が急激に変動するのを抑制しつつ基板SBに当接するブランケットBLの領域、つまり当接領域CAが中央部から(+Y)端縁側に緩やかに安定して拡幅される。したがって、この拡幅中に残留気泡が基板SBとブランケットBLとの間に入り込むのを確実に防止することができる。
【0118】
このように(+Y)端縁側への当接領域CAの拡幅が完了すると、次に(−Y)端縁側への当接領域CAの拡幅工程が実行される。つまり、制御部6のバルブ制御部64は、現時点での第2開口のうち開口P(0)に隣接する開口P(−1)に接続されるバルブV51を閉じたままバルブV52を開状態から閉状態に切り替えて開口P(−1)への負圧供給を停止する。すると、(+Y)端縁側への当接領域CAの拡幅工程と同様に、開口P(−1)近傍では、加圧空間SP内の加圧力に対するブランケットBLを保持する力が次第に弱くなり、加圧空間SP内の圧力が急激に変動するのを抑制しつつ当接領域CAが中央部から(−Y)端縁側に緩やかに安定して拡幅される(図22(a))。したがって、この拡幅中にも残留気泡が基板SBとブランケットBLとの間に入り込むのを確実に防止することができる。
【0119】
また、上記拡幅工程を行うことで加圧空間SPが広がり、ブランケットBLを基板SBに押しつける加圧力(あるいは押圧力)が低下するおそれがある。そこで、拡幅工程を一定回数だけ実行した後に、制御部6のバルブ制御部64は負圧供給を停止した開口P(+1)、P(−1)に接続されるバルブV51を閉状態から開状態に切り替え、各開口P(+1)、P(−1)への正圧供給を開始する。この正圧供給追加工程によって、加圧空間SPが広がった分だけ新たな正圧供給が加わり、ブランケットBLを基板SBに押しつける加圧力(あるいは押圧力)を安定させることができる。
【0120】
本実施形態では、上記した拡幅工程および正圧供給追加工程を繰り返して行うことで、開口形成エリアOFA内の全開口P(0)、P(+1)、P(−1)、…、P(+m)、P(−m)、P(+n)、P(−n)のうちの中央部に位置する開口P(0)、P(+1)、P(−1)、…に正圧を供給するとともに残りの開口P(+m)、P(−m)、P(+n)、P(−n)等への圧力供給を停止し、ブランケットBLの中央部、つまり開口形成エリアOFA内と対向するブランケット部分を基板SBに浮上させる。これにより、ブランケットBLを基板SBに良好に当接させて基板SBとブランケットBLとを密着させる(同図(b))。
【0121】
なお、パターン転写を行っている間、開口511aには常時負圧を供給してブランケットBLの周縁部、より詳しくは開口形成エリアOFAよりも外側の縁部を吸着プレート51に密着させておくことができ、パターン転写の安定化を図っている。ただし、次に説明するように、ブランケットBLおよび基板SBを剥離させる際、ブランケットBLおよび基板SBの密着力に打ち勝ってブランケットBLを吸着プレート51に吸着保持し続ける必要がある。
【0122】
そこで、本実施形態では、剥離工程を開始する前あるいは剥離開始と同時に、制御部6のバルブ制御部64は負圧供給を停止した開口P(+n)、P(−n)に接続されるバルブV52を閉状態から開状態に切り替え、各開口P(+n)、P(−n)への負圧供給を開始する(同図(c))。こうして、複数の開口のうち開口形成エリアOFA内で有効パターンエリアEPAを取り囲むエリア、つまり非パターンエリアNPAに位置する開口P(+n)、P(−n)への負圧供給を開始する。これによって、開口P(+n)、P(−n))に対向するブランケット部分が担持体保持面51aに吸着保持され、剥離時においてブランケットBLを担持体保持面51aに保持する力、つまり保持力が増大する。しがって、ブランケットBLと基板SBとの密着力が比較的弱い場合はもちろんのこと、密着力が高くなった場合でも、それに打ち勝つだけの保持力が得られる。そして、剥離工程中、この吸着保持状態が維持され、ブランケットBLと基板SBとの剥離が良好に行われる。
【0123】
このように、本実施形態では、吸着プレート37、51がそれぞれ本発明の「基板保持手段」および「担持体保持手段」として機能している。また、吸着プレート51とブランケットBLとの間に加圧エアーを供給するために設けられた正圧供給配管および加圧バルブV51が本発明の「密着手段」として機能している。また、吸着プレート37を上昇させる駆動機構(モータM31、M32、ボールねじ機構32、33等)を装備する上ステージ部3が本発明の「剥離手段」として機能している。また、開口P(+n)、P(−n))が本発明の「パターンエリアを取り囲む担持体の非パターンエリアと対向する開口」に相当する。さらに、「X方向」が本発明の「第1方向」に相当するとともに、「Y方向」が本発明の「第2方向」に相当している。
【0124】
E.その他
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、非パターンエリアNPAに2つの開口P(+n)、P(−n)が存在しているが、1個または3個以上の開口が存在する場合にも、本発明を適用することができる。ここで、非パターンエリアNPAに複数の開口が存在する場合には、上記実施形態と同様に、これら全部に対して負圧を供給してもよいし、一部のみに対して負圧を供給してもよい。
【0125】
また、本実施形態では、吸着プレート51の上面(担持体保持面)51aに対してスリット溝511、512を設けてX方向に延びる開口511a、512を形成しているが、各開口の形状、大きさおよび配置などについては任意であり、上面51aに複数の開口が設けられた吸着プレートなどの担持体保持手段により担持体を吸着保持する装置や方法にも本発明を適用することができる。
【0126】
また、上記実施形態では、開口形成エリアOFAに形成された複数の開口のうちの一部に正圧を供給するとともに残りの開口への圧力供給を停止することでブランケットBLを基板SBに当接させて密着しているが、全開口に正圧を供給してブランケットBLの中央部を浮上させて基板SBと密着させてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、吸着プレート37を上昇させてブランケットBLと基板SBとを剥離させているが、吸着プレート51を下降させたり、吸着プレート37、51をそれぞれ上昇及び下降させることで剥離するように構成してもよい。
【0128】
さらに、上記実施形態では、担持体として四角形状のブランケットBLを用いているが、これ以外の担持体を用いてもよいことはいうまでもなく、例えば円形形状や多角形形状を有する担持体を用いてパターンを転写するパターン転写技術に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
この発明は、パターンを担持したブランケット等の担持体と基板を互いに密着させた後に両者を互いに離間させることで剥離し、担持体上のパターンを基板に転写するパターン転写技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
3…上ステージ部(剥離手段)
6…制御部
37…吸着プレート(基板保持手段)
51…吸着プレート(担持体保持手段)
51a…担持体保持面
BL…ブランケット(担持体)
EPA…有効パターンエリア
NPA…非パターンエリア
OFA…開口形成エリア
SB…基板
V51…加圧バルブ(密着手段)
X…左右方向(第1方向)
Y…前後方向(第2方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の被転写面に対し、担持体の表面中央部に位置するとともに前記被転写面と同じ広さを有するパターンエリア内で担持されるパターンを転写するパターン転写装置であって、
前記基板を保持する基板保持手段と、
表面中央部に前記パターンエリアよりも広い開口形成エリアを有するとともに前記開口形成エリアに複数の開口が形成された担持体保持面で、前記基板保持手段に保持される前記基板と向かい合うように前記担持体を保持する担持体保持手段と、
前記開口形成エリアを取り囲む前記担持体保持面の周縁部で前記担持体の周縁部を保持しながら、前記開口の全部に正圧を供給する、または前記複数の開口の一部に正圧を供給するとともに残りの開口への圧力供給を停止することで前記担持体の中央部を浮き上がらせて前記基板に密着させる密着手段と、
前記担持体保持手段および前記基板保持手段を互いに離間させることで、前記密着手段によって相互に密着された前記担持体と前記基板とを剥離する剥離手段と、
前記剥離手段により剥離を行う間、前記パターンエリアを取り囲む前記担持体の非パターンエリアと対向する開口の少なくとも1つ以上に負圧を供給して前記非パターンエリアを前記担持体保持面に吸着保持する制御手段と
を備えることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項2】
各開口は前記担持体保持面と平行な第1方向に延設されたスリット溝である請求項1に記載のパターン転写装置。
【請求項3】
前記複数のスリット溝は、前記担持体保持面と平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向に配列される請求項2に記載のパターン転写装置。
【請求項4】
前記複数のスリット溝の間隔は一定である請求項3に記載のパターン転写装置。
【請求項5】
基板の被転写面に対し、担持体の表面中央部に位置するとともに前記被転写面と同じ広さを有するパターンエリア内で担持されるパターンを転写するパターン転写方法であって、
前記パターンと前記被転写面とが向かい合う状態で、表面中央部に前記パターンエリアよりも広い開口形成エリアを有するとともに前記開口形成エリアに複数の開口が形成された担持体保持面で前記担持体を保持した後で、前記開口の全部に正圧を供給する、または前記複数の開口の一部に正圧を供給するとともに残りの開口への圧力供給を停止することで前記担持体の中央部を浮き上がらせて前記基板に密着させる密着工程と、
前記担持体および前記基板を互いに離間させることで、互いに密着された前記担持体と前記基板とを剥離する剥離工程とを備え、
前記剥離工程では、前記パターンエリアを取り囲む前記担持体の非パターンエリアと対向する開口の少なくとも1つ以上に負圧を供給して前記非パターンエリアを前記担持体保持面に吸着保持することを特徴とするパターン転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−111910(P2013−111910A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261830(P2011−261830)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】