説明

パチンコ機の打球発射装置

【目的】 大当りが発生するのに伴い遊技者に有利となる、いわゆる権利物タイプの役物が設けられたパチンコ機における打球発射装置の操作性を改善する。
【構成】 パチンコ機の前面に設けられた操作レバー101の回転角度を調節することによりロータリーソレノイドLに流れる電流が制御され該ロータリーソレノイドLにより打撃発射される打球の飛距離を調節し得るようにしたパチンコ機において、該パチンコ機の前面に手動スイッチSを切換操作可能に設け、該手動スイッチSを一方に操作することによりロータリーソレノイドLに流れる電流を格段に増大させ打球が専ら遊技盤の中央より遠地点まで飛昇するように形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大当りが発生するのに伴い遊技者に有利となる、いわゆる権利物タイプの役物が設けられたパチンコ機における打球発射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】パチンコ機の打球発射装置としてロータリーソレノイドを使用したものは特公平4−58996号、特公平4−57354号等により従来から知られている。また従来からこの種の権利物タイプのパチンコ機に用いられる役物としては、例えば、モータによって回転体を常時一定方向に低速回転し、該回転体の周面に球1個分の凹部からなる球保持部を設け、該回転体の周面を囲む環状のガイド枠を設け、該ガイド枠には打球を回転体の周面で待機させる待機部を設けた回転チャッカーが知られている。そして、この回転チャッカーは、回転体の球保持部が待機部と一致したときに該待機部で待機している打球があるとその打球を球保持部に受け入れて下方に運び入賞させるものである。
【0003】ところでこのような回転チャッカーは通常は遊技盤面の向って右側に設けられていて、例えば遊技盤上に設けられた他の始動入賞口に打球が入賞するとCRT,液晶等の可変表示器の数字,記号等の図柄を変動させ一定時間後にその変動を停止させ、その停止した可変表示器の表示結果が「7,7,7」等に揃うと「大当り」の権利発生となり、その権利発生中において打球が前記回転チャッカーの球保持部に受け入れられて入賞すると大当り状態が開始されてその入賞ごとに大入賞口を開放する動作が所定サイクル継続されるいわゆる権利物タイプのパチンコ機に従来から使用されている。
【0004】そしてこの種のパチンコ機は、ひとたび「大当り」の権利発生があると、上記回転チャッカーのような役物に打球を集中させることで極めて有利に賞球が得られるようになるため、その役物が上記のように遊技盤の向って右側に設置されている場合には、遊技者は操作レバーを最大限に回転させ、打球を遊技盤の右半分に集中して落下させる操作をするのが通例である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしこのように大当りの権利発生がある度に遊技者が操作レバーを最大限に回転操作しなければならないことは極めて煩雑であり、また大当り期間が終了したときに操作レバーを元の位置に戻そうとしても以前の最適な位置が判らなくなるなどの問題があった。
【0006】そこで本発明は大当りの権利発生時における対応が簡単にできるようにしてこの種のパチンコ機の操作性を改善しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】そのために本発明は、パチンコ機の前面に設けられた操作レバーの回転角度を調節することによりロータリーソレノイドに流れる電流が制御され該ロータリーソレノイドにより打撃発射される打球の飛距離を調節し得るようにしたパチンコ機において、該パチンコ機の前面に手動スイッチを切換操作可能に設け、該手動スイッチを一方に操作することによりロータリーソレノイドに流れる電流を格段に増大させ打球が専ら遊技盤の中央より遠地点まで飛昇するように形成したことを特徴とする。
【0008】
【作用】大当りが発生したとき遊技者は手動スイッチを操作するだけでロータリーソレノイドによる打球の打撃発射力が格段に強くなり該打球を遠地点まで飛昇させて簡単に役物に集中させることができるようになる。
【0009】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は本発明の一実施例のパチンコ機の構成例を示す正面図、図2はその裏面図である。図において、1はパチンコ機の遊技盤であり、該遊技盤1の表面にはガイドレール2で囲まれる遊技部が形成され、その遊技部のほぼ中央に可変表示器3を設けている。また、可変表示器3の下方には始動入賞口としての通過チャッカー4とアタッカーと呼ばれる特定入賞口5を設けると共に、右側方には回転チャッカー6と権利開始用の始動入賞口7と大入賞口8とを設けている。9は一般入賞口、10は風車である。
【0010】前記可変表示器3は、液晶表示パネル3aを有し、該表示パネル3aに例えば「0〜9」までの3桁の数字が表示可能に構成された周知のものである。また、前記通過チャッカー4には通過した打球を検出する打球検出器11が設けられている。
【0011】前記特定入賞口5は、図3に示すように取付板51に形成した球入口52の前面に前後方向へ開閉自在な開閉扉53が設けられると共に、取付板51の裏面に形成された箱枠54の内部にV入賞口55と一般入賞口56,56が設けられている。また、V入賞口55の上部には開閉扉53が開いているとき、箱枠54内に入る入賞球をV入賞口55に入賞させることなく保留する回転球受板57が設けられており、該回転球受板57は開閉扉53が閉じたときソレノイド58の励磁により回転して保留されている入賞球をV入賞口55に入賞させるように構成されている。なお、開閉扉53は通常は閉じていて打球を受け入れない状態にあり、ソレノイド59が励磁すると開いて打球を受け入れ易いように変換する。
【0012】前記回転チャッカー6は、図4に示すようにモータ61によつて常時一定方向に回転される回転体62と、該回転体62の周面を囲む環状のガイド枠63とを有し、その回転体62の周面にほぼ球1個分の凹部からなる球保持部64が設けられている。回転体62は例えば10秒で1回転するようにその回転速度が設定されている。そして、球保持部64がガイド枠63の上部に設けた待機部65と一致したときその待機部65に待機している打球を球保持部64に受け入れて下方まで運び、ガイド枠63の下部に開設した落下口66から権利開始用の始動入賞口7に入賞させるようになっている。なお、始動入賞口7には入賞球検出器12が設けられている。また、前記大入賞口8は取付板81の前面に一対の可動翼片82,82を開閉自在に設けた周知構造のものである。
【0013】上記のような構成からなるパチンコ機は、遊技盤1の遊技部に打込まれた打球が通過チャッカー4を通過して打球検出器11で検出されるとその検出信号によって可変表示器3の液晶パネル3a上に表示される数字が上から下へ流れて表示される数字変動を所定時間行ない、所定時間終了ののちにその変動を停止する。そして、その停止時の表示があらかじめ設定された表示(例えば「1,1,1」,「7,7,7」等のぞろ目)に揃うと特定入賞口5のソレノイド59を励磁して開閉扉53を一定時間(例えば約6秒)又は一定個数(例えば6個)の打球が入賞するまで開成する。
【0014】一方、開閉扉53が開いているとき、特定入賞口5のソレノイド58は消磁されていて回転球受板87がV入賞口55を閉じる位置に停止保持されている。このため、箱枠54内に入った打球はV入賞口55に入賞することなく一般入賞口56,56に入賞するか或いは運よく回転球受板57に乗って保留されることになる。そして、一定時間経過後又は一定個数の打球が入賞するとソレノイド59が消磁して開閉扉53を開成する。また、開閉扉53が閉成して一定時間(例えば1秒)が経過するとソレノイド58が励磁され、これによつて回転球受板57が回転し、該回転球受板57に打球が保留されていると該球は下方に落下してV入賞口55に入賞し、これによって「大当り」としての権利発生となる。
【0015】また、この権利発生の状態において、回転チャッカー6の回転体62の球保持部64に打球が受け入れられて下方に運ばれ該球が落下口66から始動入賞口7に入賞して入賞球検出器12で検出されると「大当り」の権利が確定となり、同時に大入賞口8の可動翼片82,82が一定時間(例えば約10秒)経過するまでの間、又は所定個数(例えば10個)の打球が入賞するまで開かれる。このように権利発生状態になると打球が回転チャツカー6の回転体62の球保持部64に受け入れられて下方に運ばれて始動入賞口7に入賞し入賞球検出器12で検出されることを条件に大入賞口8の可動翼片82,82の開成動作が所定サイクル(例えば16回)約束される。これによつて、遊技者は容易に多くの景品球を得ることが可能となる。
【0016】一方、100は該パチンコ機の前面右下部に突設されたハンドルで、該ハンドル100の外周に指掛用の操作レバー101が突設されている。また、該パチンコ機の裏側にはロータリーソレノイドLが設けられ、該ロータリーソレノイドLにより槌103を往復旋回動させることにより発射レール104上の打球を遊技盤1面上に打撃発射し得るようになつている。
【0017】図5にロータリーソレノイド式打球発射装置の回路図を示し、図中Lは上記ロータリーソレノイド、TR1,TR2は該ロータリーソレノイドLに直流電源Vccより電流をその方向を交互に切換えて流すために設けられた電流切換用トランジスタ、TR3,TR4はその電流値を制御するためのトランジスタ、IC1は該トランジスタTR3のベース電流を制御する差動アンプ、IC2はトランジスタTR4のベース電流を制御する差動アンプである。トランジスタTR1,TR2にはさらにトランジスタTR5,TR6を介してタイミング回路110より1分回に100回のパルス信号T1,T2が出力される。R1,R2,VR1,VR2,は差動アンプIC1の入力段に設けられた分圧抵抗および可変抵抗器で、該可変抵抗器VR2は前記操作レバー101の回転角度を調節することにより遊技者が所望に設定し得るようになつている。また、Sは分圧抵抗R1と並列に接続された押釦式の手動スイッチで、該手動スイッチSは図1にも示したように遊技者により自由に切換操作ができるように該パチンコ機の前面に設けられている。
【0018】ハンドル100には遊技者の手が触ることによりオンするタッチスイッチ111が設けられ、該タッチスイッチ111がオンすることで前記タイミング回路110が槌103により打球を打撃するタイミング、および該槌103を元に戻すタイミングを図るパルス信号を夫々トランジスタTR1,TR2に出力する。また該タイミング回路110からは玉送り駆動回路112に打球を発射レール上に送り込むタイミングを図るパルスTOが出力され、そのタイミングに従い玉送り装置113が作動する。なおR4,R5は差動アンプIC2の入力段に設けられた分圧抵抗である。
【0019】このため遊技者はハンドル100を把握し操作レバー101を回転操作することによりその回転角度に従い可変抵抗器VR2の抵抗値を変動させれば、トランジスタTR3のベース電流が該操作レバー101の回転角度を調節することにより自由に設定できるのでロータリーソレノイドLに流れる電流がこれにより制御されロータリーソレノイドLによる打球の打撃発射力を所望にコントロールすることができる。
【0020】そして遊技者が手動スイッチSを押してオンすると分圧抵抗Rをバイパスして差動アンプIC1に電圧が印加されるのでトランジスタTR3のベース電圧がステップ的に上昇し、ロータリーソレノイドLに流れる電流が格段に増大するため打球が強力に打撃発射され、その打球は遊技盤1の専ら右半分に飛昇して落下し前記回転チャッカー6,大入賞口8等にその打球を入賞し易くできる。また手動スイッチSを再度押してオフすることにより元の飛昇状態に戻すことができるので、遊技者は手動スイッチSを押している間も操作レバー101を動かさないでいることにより元の所望の位置に打球の飛び具合を戻すことができる。
【0021】
【発明の効果】このように本発明の打球発射装置は、パチンコ機の前面に設けた手動スイッチを操作することによりロータリーソレノイドによる打撃発射力を格段に増大させ打球を遊技盤の中央より専ら遠地点まで飛昇できるようにしたので、大当りの権利発生時に対処すべき打球飛昇位置の変更が即座にしかも簡単にできるようになり、操作性が改善されるなど有益な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパチンコ機の正面図。
【図2】図1のパチンコ機の裏面図。
【図3】特定入賞口の斜視図。
【図4】回転チャッカーの斜視図。
【図5】本発明に係るパチンコ機の打球発射装置の回路図。
【符号の説明】
1 遊技盤
101 操作レバー
L ロータリーソレノイド
IC1,IC2 差動アンプ
TR1〜TR6 トランジスタ
VR1,VR2 可変抵抗器
S 手動スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パチンコ機の前面に設けられた操作レバーの回転角度を調節することによりロータリーソレノイドに流れる電流が制御され該ロータリーソレノイドにより打撃発射される打球の飛距離を調節し得るようにしたパチンコ機において、該パチンコ機の前面に手動スイッチを切換操作可能に設け、該手動スイッチを一方に操作することによりロータリーソレノイドに流れる電流を格段に増大させ打球が専ら遊技盤の中央より遠地点まで飛昇するように形成したことを特徴とするパチンコ機の打球発射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平8−155090
【公開日】平成8年(1996)6月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−331769
【出願日】平成6年(1994)12月8日
【出願人】(000161806)京楽産業株式会社 (4,820)