説明

パチンコ機

【課題】機枠を島設備に容易に固定することができるパチンコ機を提供する。
【解決手段】本発明のパチンコ機Pでは、幕板16が機枠1に対して上下方向へスライド可能に凹凸嵌合されており、機枠1を島設備に固定する際に、本体枠2とのヒンジ結合を解除した状態で幕板16を機枠1の上方へスライド移動すると、機枠1の底板1bと幕板16との間に広い作業空間Sが確保されるため、この作業空間Sを利用して機枠1の姿勢調整や釘打ち作業を容易に行うことができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤を目視可能な前面扉が本体枠に対して開閉可能に支持されていると共に、この本体枠が機枠に対して開閉可能に支持されているパチンコ機に係り、特に、機枠の下部領域を覆うように配置された幕板の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にパチンコ機は、遊技場の島設備に設置される縦長方形状の機枠(外枠)と、この機枠にヒンジ機構を介して扉状に開閉可能に取り付けられた本体枠と、この本体枠の内側に収容された遊技盤と、本体枠の前面に別のヒンジ機構を介して開閉可能に取り付けられた前面扉とを備えており、前面扉の中央部に形成された開口部には遊技盤を目視可能な透明板が取り付けられている。本体枠の背面側には、電装部品の一つである液晶表示装置が取り付けられる他、それ以外の電装部品として遊技に関する制御を行う制御処理装置(制御基板)や、賞球払出装置による賞球の払い出しを制御する払出基板、各部に電力を供給する電源基板等が取り付けられている。また、機枠の下端部には横長形状の幕板が一体化されており、本体枠は機枠と幕板の各上端部に設けられた軸受け体をヒンジ機構として開閉動作される。したがって、本体枠と前面扉が機枠に対して閉鎖状態にあるとき、幕板は本体枠と前面扉の下側に位置して前方へ露出しており、幕板は本体枠を支持する支持板の他に化粧板としても機能している。
【0003】
従来、このように概略構成されたパチンコ機を遊技場の島設備に設置する場合、総重量の大きな前面扉と本体枠を機枠から取り外した状態で、機枠を適正な姿勢に調整して島設備に固定した後、本体枠の上下両端部を機枠と幕板の各軸受け体にヒンジ結合することにより、本体枠と前面扉を機枠に取り付けるようにしていた(例えば、特許文献1参照)。その際、作業者は島通路に立って機枠の左右方向の傾きが水平になるように水平調整を行い、さらに機枠の前後方向の傾きが所定の後傾角度になるように傾斜調整を行った後、幕板の後方位置に延在する機枠の底部をハンマで釘打ちして島設備に固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−329453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来のパチンコ機においては、機枠を島設備に固定する際に、作業者は幕板で仕切られた後方空間内で釘打ち作業をする必要があるため、ハンマを振り下ろすときに幕板が邪魔になってしまい、幕板や周囲の構成部材(例えばアウトタンク等)を誤って破損してしまう虞があった。また、幕板の後方の狭い空間に水準器を配置して水平調整や傾斜調整等を行う必要があるため、これら調整作業時にも幕板が邪魔になって作業性を低下させていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、機枠を島設備に容易に固定することができるパチンコ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、遊技場の島設備に固定される外殻方形状の機枠と、この機枠の下部領域を覆うように配置された幕板と、前記機枠と前記幕板に開閉可能に軸支された本体枠と、この本体枠に開閉可能に軸支された前面扉とを備え、前記本体枠が前記機枠と前記幕板に対して着脱可能となっているパチンコ機において、前記機枠の両内側部と前記幕板の両外側部とを凹凸嵌合し、前記本体枠が前記機枠と前記幕板に対して取り外された状態にあるとき、前記凹凸嵌合によって前記幕板を前記機枠に対して上下方向へスライド可能とした。
【0008】
このように構成されたパチンコ機では、機枠を島設備に固定する場合、本体枠とのヒンジ結合を解除した状態で幕板を機枠の上方へスライド移動すると、機枠の底部と幕板との間に広い作業空間が確保されるため、この広い作業空間を利用して機枠の姿勢調整や釘打ち作業を容易に行うことができる。そして、かかる作業の終了後に幕板を下方へスライド移動して機枠の下端側に戻し、本体枠を機枠と幕板に対してヒンジ結合すれば、本体枠を機枠と幕板との間に開閉可能に軸支することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパチンコ機は、幕板が機枠に対して上下方向へスライド可能に凹凸嵌合されており、機枠を島設備に固定する際に、本体枠とのヒンジ結合を解除した状態で幕板を機枠の上方へスライド移動すると、機枠の底部と幕板との間に広い作業空間が確保されるため、この広い作業空間を利用して機枠の姿勢調整や釘打ち作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態例に係るパチンコ機の斜視図である。
【図2】図1に示すパチンコ機の前面扉と本体枠を開放した状態の斜視図である。
【図3】図1のパチンコ機に備えられる幕板の斜視図である。
【図4】図2のA部詳細図である。
【図5】図3の幕板を機枠の上方へ移動した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態例に係るパチンコ機の要部を示す正面図である。
【図7】図6のパチンコ機に備えられる幕板を機枠の上方へ移動した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1と図2に示すように、本発明の第1実施形態例に係るパチンコ機Pは、遊技場の島設備に設置される外殻方形状の機枠1と、機枠1に扉状に開閉自在に取り付けられた本体枠2と、本体枠2の前面に扉状に開閉自在に取り付けられた前面扉3等を備えており、前面扉3にはガラスやプラスチック等からなる透明板4が取り付けられている。
【0012】
本体枠2の上部内側には遊技盤5が収納されており、この遊技盤5の盤面(前面)は透明板4を透して目視可能となっている。図示省略されているが、遊技盤5はガイドレール等によって区画形成された遊技領域を有しており、この遊技領域に可変表示装置や始動入賞口、一般入賞口、アタッカー装置、遊技釘、風車、アウト口等が設けられている。本体枠2の左側枠部は後述する第1ヒンジ機構を介して機枠1に開閉自在に支持されており、本体枠2の自由端側である右側枠部(図2では左側)には施錠装置6が設置されている。この施錠装置6は、本体枠2の後方へ突出する後部施錠杆6aと、本体枠2の前方へ突出する前部施錠杆(不図示)と、カム板を内蔵するシリンダ錠6b等を備えており、シリンダ錠6bは本体枠2の前方へ突出して前面扉3から露出している。常態では、施錠装置6の後部施錠杆6aによって本体枠2が機枠1に対して施錠されると共に、前部施錠杆によって前面扉3が本体枠2に対して施錠されている。そして、シリンダ錠6bの鍵穴に差し込んだ図示せぬキーを一方向(例えば時計回り)へ回転操作すると、カム板に押圧された後部施錠杆が下動して本体枠2が解錠され、シリンダ錠6bの鍵穴に差し込んだキーを他方向(反時計回り)へ回転操作すると、カム板に押圧された前部施錠杆が上動して前面扉3が解錠されるようになっている。
【0013】
前面扉3の左側枠部の上下両端にはピン(不図示)が設けられており、これら両ピンを本体枠2の左側枠部に突設した上下の支持板(不図示)に軸支することによって、前面扉3を本体枠2に対して開閉自在に支持する第2ヒンジ機構が構成されている。前面扉3には遊技盤5の盤面に対向する大きな開口3aが開設されており、この開口3aは透明板4によって塞がれている。前面扉3の前面上部には比較的小型のスピーカ7が左右に1個ずつ配設されており、前面扉3の前面下部には上段受皿8と下段受皿9が上下2段に積層配置されている。上段受皿8には遊技盤5の裏面の賞球払出装置から払い出された遊技球が収容され、上段受皿8から排出された遊技球は下段受皿9に収容されるようになっている。さらに、上段受皿8の手前側には遊技者による押下操作が可能なプッシュ釦10が設けられており、上段受皿8の右側方には遊技球の発射強度を調整するための操作ハンドル11が配設されている。
【0014】
機枠1は天板1aと底板1bおよび左右の側板1cを縦長方形状に組み合わせた枠体であり(図5参照)、各板のコーナー部に補強具12等を固定して全体の剛性が高められている。機枠1の両側板1cはレール状の支持体13によって構成されており、図4に示すように、これら支持体13には上下方向に延びる凹溝13aが形成されている。支持体13は剛性の高い金属材や樹脂材等からなり、本実施形態例では押出成形されたアルミニウム材が使用されている。また、機枠1の天板1a左端部には上側軸受け体14が取り付けられており、この上側軸受け体14には解除レバー15が付設されている。
【0015】
機枠1の開口のうち下部領域は横長矩形状の幕板16によって覆われており、この幕板16は剛性の比較的高い樹脂材、あるいは、剛性の比較的高い金属材料、剛性の比較的高い木材によって成形されている。図3に示すように、幕板16の左右両外側部には凸部16aが形成されており、これら凸部16aを対応する支持体13の凹溝13aに挿入することにより、幕板16は機枠1の両側板1cに上下方向へスライド可能に凹凸嵌合されている(図4参照)。また、幕板16の上面左端部にはピン17aを有する下側軸受け体17が取り付けられており、この下側軸受け体17は天板1aに取り付けられた上側軸受け体14の鉛直方向の真下に位置している。そして、本体枠2の左側枠部の下端に設けられた軸孔(不図示)を下側軸受け体17のピン17aに挿入すると共に、本体枠2の左側枠部の上端に設けられたピン(不図示)を上側軸受け体14に軸支することによって、本体枠2を機枠1に対して開閉自在に支持する第1ヒンジ機構が構成されている。すなわち、本体枠2と前面扉3の下方に幕板16の高さ相当分の空間が確保されており、この空間の上方を本体枠2や前面扉3が回動するようになっているため、ドル箱と呼ばれる収納ケースを幕板16の前方に配置したまま本体枠2や前面扉3を開放動作することができる。ただし、上側軸受け体14に付設された解除レバー15を回動操作すると、本体枠2のピンが上側軸受け体14の外方へ押し出されるように構成されているため、この状態で第1ヒンジ機構の結合を解除して本体枠2を機枠1から取り外せるようになっている。さらに、幕板16の上面中央付近には金属製のガイド板18が取り付けられており、このガイド板18を摺動面として本体枠2が機枠1に対してスムーズに開閉動作されるようになっている。
【0016】
このように構成されたパチンコ機Pを遊技場の島設備に設置する場合、予め総重量の大きな本体枠2と前面扉3を機枠1から取り外しておき、図5に示すように、この状態で幕板16を左右の支持体13に沿って機枠1の上方へスライド移動することにより、幕板16と機枠1の底板1bとの間に大きくて広い作業空間Sを確保する。次いで、底板1b上に図示せぬ水準器を載置して機枠1の左右方向の傾きが水平になるように水平調整を行い、さらに機枠1の前後方向の傾きが所定の後傾角度になるように傾斜調整を行った後、作業空間Sの最下に位置する底板1bをハンマで釘打ちして機枠1を島設備に固定する。これら姿勢調整や釘打ち作業は、底板1bの上方に確保された広い作業空間Sを利用して容易に行うことができる。その際、凹溝13aと凸部16aの凹凸嵌合力を利用して幕板16を作業空間Sの上方位置に停止させておくことも可能であるが、着脱可能な保持具(不図示)を機枠1の側板1c(支持体13)等に取り付けて幕板16の移動を阻止するようにしても良い。そして、かかる姿勢調整や釘打ち作業を行った後、幕板16を支持体13に沿って機枠1の下端位置までスライド移動し、この状態で本体枠2側のピンと軸孔(いずれも不図示)を機枠1側の上側軸受け体14と下側軸受け体17にヒンジ結合することにより、機枠1に対して本体枠2と前面扉3が組み込まれて図1に示すようなパチンコ機Pとなる。
【0017】
図6は本発明の第2実施形態例に係るパチンコ機Pに備えられる機枠1の正面図であり、図5に対応する部分には同一符号を付してある。本実施形態例が前述した第1実施形態例と相違する点は、横長矩形状の幕板16の代わりに大型のスピーカ19を一体化した異形状の幕板20を用いたことにあり、それ以外の構成は基本的に同様である。すなわち、幕板20の上面一側部はスピーカ19の形状に倣って上方へ膨出しており、この膨出部の上面に下側軸受け体17が取り付けられている。そして、このような形状の幕板20の左右両外側部に凸部(不図示)が形成されており、これら凸部を機枠1の側板1cである支持体13の凹溝(不図示)に挿入することにより、幕板20は機枠1に対して上下方向へスライド可能に凹凸嵌合されている。なお、本体枠2と前面扉3は図示省略されているが、これら本体枠2と前面扉3のヒンジ側の下端部には幕板20の膨出部に対応する切り欠きが形成されており、この切り欠き内にスピーカ19が露出するようになっている。
【0018】
このように構成された第2実施形態例においても、機枠1を遊技場の島設備に固定する場合は、図7に示すように、本体枠2と前面扉3を機枠1から取り外した状態で幕板20を左右の支持体13に沿って機枠1の上方へスライド移動することにより、まず幕板20と機枠1の底板1bとの間に大きくて広い作業空間Sを確保する。次いで、この広い作業空間Sを利用して機枠1の左右方向の傾きが水平になるように水平調整を行い、さらに機枠1の前後方向の傾きが所定の後傾角度になるように傾斜調整を行った後、作業空間Sの最下に位置する底板1bをハンマで釘打ちして機枠1を島設備に固定する。しかる後、幕板20を支持体13に沿って機枠1の下端位置までスライド移動し、この状態で本体枠2を機枠1側の上側軸受け体14と下側軸受け体17にヒンジ結合すれば、機枠1に対して本体枠2と前面扉3を組み込むことができる。
【0019】
なお、上記した各実施形態例では、幕板16(20)の左右両外側部に形成した凸部16aを機枠1の両側板1cである支持体13の凹溝13aに挿入することにより、幕板16(20)を機枠1に対してスライド可能に凹凸嵌合するようにしているが、これとは逆に、幕板16(20)の左右両外側部に形成した凹溝を機枠1の支持体13に形成した凸部に凹凸嵌合するようにしても良い。
【符号の説明】
【0020】
1 機枠
1a 天板
1b 底板
1c 側板
2 本体枠
3 前面扉
5 遊技盤
13 支持体
13a 凹溝
14 上側軸受け体
15 解除レバー
16,20 幕板
16a 凸部
17 下側軸受け体
17a ピン
19 スピーカ
S 作業空間
P パチンコ機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技場の島設備に固定される外殻方形状の機枠と、この機枠の下部領域を覆うように配置された幕板と、前記機枠と前記幕板に開閉可能に軸支された本体枠と、この本体枠に開閉可能に軸支された前面扉とを備え、前記本体枠が前記機枠と前記幕板に対して着脱可能となっているパチンコ機において、
前記機枠の両内側部と前記幕板の両外側部とを凹凸嵌合し、前記本体枠が前記機枠と前記幕板に対して取り外された状態にあるとき、前記凹凸嵌合によって前記幕板を前記機枠に対して上下方向へスライド可能としたことを特徴とするパチンコ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103015(P2013−103015A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249847(P2011−249847)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】