説明

パチンコ機

【課題】糸付き球を用いた不正行為を簡単な構成で確実に防止できるパチンコ機の提供。
【解決手段】発射装置23のハンマ38を回転駆動することで待機位置40aに保持された遊技球が遊技領域8に向けて打ち出されるパチンコ機において、ハンマ38に連動して回転するアーム部材39に貫通孔39aを設け、紐状体45の付いた遊技球(糸付き球)B1を上段受皿13に投入すると、この遊技球B1が紐状体45を付けたままアーム部材39の貫通孔39aを通過して待機位置40aに保持されるようにした。この状態で操作ハンドル16が回動操作されると、ハンマ38が待機位置40aに向かって回転すると共に、アーム部材39が紐状体45と一緒に待機位置40aから離れる方向へ回転するため、遊技球B1が紐状体45に引っ張られて待機位置40aから打ち出し方向へ逃がされ、待機位置40aに到達したハンマ38が遊技球B1を打撃できなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技球を用いて遊技を行うパチンコ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にパチンコ機は、機器本体の前面に設けられた受皿内の遊技球を内部の待機位置へ1個ずつ供給し、この待機位置に保持された遊技球を発射装置の作動によって遊技盤の遊技領域へ向けて発射するようになっている。遊技盤には、発射装置から発射された遊技球を遊技領域の上部側に案内する外レールと、遊技領域の周壁の大部分を規定する内レールとが設けられており、これら外レールと内レールとで挟まれた空間は発射案内通路となっている。発射装置の近傍には発射案内通路に向かって上り勾配で傾斜する発射レールが設けられており、この発射レールの下端部が遊技球を保持する待機位置となり、発射レールの上端部と発射案内通路との間にはレール欠落部が形成されている。発射装置はロータリソレノイドを駆動源として回転動作されるハンマを有しており、機器本体の前面下部に設けられた発射ハンドルの回転角度に応じてロータリソレノイドを回転制御することにより、ハンマが待機位置に保持された遊技球を打撃するようになっている。
【0003】
そして、遊技者が発射ハンドルを任意角度まで回動操作すると、受皿から発射レール上の待機位置に供給された遊技球が発射装置のハンマの回転によって打撃されるため、この遊技球がレール欠落部を飛び越えて発射案内通路から遊技流域へと向かう。その際、発射時の勢いが不十分で遊技領域まで到達できなかった遊技球は、発射案内通路を逆走してレール欠落部に落下した後、レール欠落部に連続する回収通路を通ってファール球として遊技者に戻される。一方、十分に勢いのある遊技球は、発射案内通路を通過して遊技領域内に進入し、この遊技球が遊技領域を流下して始動入賞口や一般入賞口等に入ると、所定数の遊技球が賞球として受皿に払い出される。ここで、始動入賞口や一般入賞口の内部には近接スイッチ等の検知センサが配置されており、通常、この検知センサは1つの入賞口に対して1つ配置されている。検知センサは遊技球の通過によってオン/オフの切換信号を出力し、入賞口に入った遊技球が検知センサを通過することにより、入賞口の種類(始動入賞口や一般入賞口)に応じて予め設定された数の遊技球が賞球として受皿に払い出されるようになっている。
【0004】
従来より、このようなパチンコ機におけるゴト行為として、機器本体の隙間から遊技領域にピアノ線等を挿入し、このピアノ線等を用いて入賞口やVゾーンと呼ばれる特定領域に恰も遊技球が入ったかのように検知センサを誤動作させることで、賞球を不正に搾取したり大当たり遊技を獲得するといった不正行為が問題となっている。そこで、1つの入賞口の内部に2つの検知センサを上下方向に積層配置し、これら2つの検知センサによる遊技球の検知が上側から下側にかけて所定時間内で順番に行われたときだけ、遊技球が入賞口に正規に入ったものと認識する遊技球通過認識手段を備えたパチンコ機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる遊技球通過認識手段を備えたパチンコ機によれば、不正行為を働こうとする者が機器本体の隙間からピアノ線等を挿入し、このピアノ線等を用いて遊技領域に配置された入賞口内の検知センサを刺激しようとしても、通常は、上下2つの検知センサの片方だけを刺激することになるため、遊技球が入賞口に正規に入ったものと判断されず、遊技球が不正に払い出されることはない。また、仮にピアノ線等を用いて入賞口内の2つの検知センサを刺激することができたとしても、実際に遊技球が入賞口に入ったかのように、2つの検知センサが上側から下側にかけて所定時間内で順番に検知信号を出力することは極めて困難であるため、ピアノ線等を用いた不正行為を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−340072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、遊技球を不正に搾取するゴト行為の手口は日を追うごとに巧妙になってきており、例えば、遊技球に透明な釣り糸等の紐状体を接着した糸付き球と呼ばれる不正球を遊技領域に打ち出し、この糸付き球を受皿を介して外部から手動操作して入賞口やVゾーンへ誘導することで、恰も遊技球が入ったかのような状態を作り出す糸ゴトと呼ばれる不正行為が問題となっている。かかる糸ゴト行為は紐状体の付いた遊技球を入賞口やVゾーンに入れて内部の検知センサを作動させるというものであり、紐状体を巧みに操作して遊技球を入賞口やVゾーンの入口付近で上下動させることにより、糸付き球に正規の遊技球と同じような挙動をさせることが可能となるため、特許文献1に開示された従来のパチンコ機では、このような糸ゴト行為を防止することはできなかった。また、特許文献1に開示された従来のパチンコ機では、1つの入賞口に設けられた2つの検知センサの検知信号に基づいて不正行為を判断するようにしているため、不正行為の対象となる入賞口やVゾーンの個数が増えると、必要とされる検知センサの数が非常に多くなってコスト高になるという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、糸付き球を用いた不正行為を簡単な構成で確実に防止できるパチンコ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、遊技球が流下する遊技領域を有する遊技盤と、回転駆動されるハンマを有する発射装置と、受皿に貯留された遊技球を前記発射装置の待機位置に向けて1個ずつ供給する整流器とを備え、前記待機位置に保持された遊技球が前記ハンマの打撃によって前記遊技領域に向けて打ち出されるパチンコ機において、前記ハンマに連動して回転するアーム部材を備え、前記整流器から供給される遊技球が前記アーム部材を通過して前記待機位置に保持されるようになし、前記ハンマが前記待機位置に向かって回転するとき、前記アーム部材が前記ハンマに先行して前記待機位置から遊技球の打ち出し方向へ回転するようにした。
【0009】
このように構成されたパチンコ機において、受皿に貯留された正規の遊技球は、整流器で1個ずつ整流されながらアーム部材を通過して待機位置に保持され、発射装置のハンマが待機位置に向かって回転することにより、ハンマで打撃されて遊技領域に向けて打ち出される。その際、アーム部材はハンマに先行して待機位置から遊技球の打ち出し方向へ回転するが、アーム部材は整流器と待機位置との間を移動するため、待機位置上にある遊技球と回転中のアーム部材とが干渉することはない。一方、釣り糸等の紐状体を接着した遊技球(糸付き球)を受皿から待機位置に供給すると、この遊技球は紐状体を付けたままアーム部材を通過して待機位置に保持されるが、紐状体を挿通したアーム部材がハンマに先行して待機位置から遊技球の打ち出し方向へ回転するとき、遊技球に付けられた紐状体がアーム部材と一緒に同方向へ移動するため、糸付き球はハンマで打撃される前に待機位置から打ち出し方向へ逃がされる。その結果、ハンマが待機位置まで回転しても遊技球に接触しなくなり、糸付き球をハンマで打撃して遊技領域に発射させることができなくなるため、糸付き球を使用した不正行為を確実に防止することができる。
【0010】
上記の構成において、アーム部材とハンマとをギア等の中継部材を介して連結しても良いが、アーム部材とハンマとを所定の交叉角度を保って同軸上で連結すると、既存の発射装置に対してアーム部材を簡単に付設することができて好ましい。
【0011】
また、上記の構成において、遊技球に付けられた紐状体を駆動できればアーム部材の形状は特に限定されないが、アーム部材が整流器と待機位置との間で遊技球を通過させる貫通孔を有し、この貫通孔の内周面に周方向に連続する多数の鋸歯状溝が形成されていると、アーム部材の回転時に遊技球に付けられた紐状体を任意の鋸歯状溝に入り込ませて引っ掛けることができるため、糸付き球が遊技領域に発射されることをより確実に阻止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパチンコ機では、釣り糸等の紐状体を接着した遊技球(糸付き球)を受皿から待機位置に供給すると、この遊技球は紐状体を付けたままアーム部材を通過して待機位置に保持されるが、紐状体を挿通したアーム部材がハンマに先行して待機位置から遊技球の打ち出し方向へ回転するとき、遊技球に付けられた紐状体がアーム部材と一緒に同方向へ移動するため、糸付き球はハンマで打撃される前に待機位置から打ち出し方向へ逃がされる。その結果、ハンマが待機位置まで回転しても遊技球に接触しなくなり、糸付き球をハンマで打撃して遊技領域に発射させることができなくなるため、糸付き球を使用した不正行為を確実に防止することができる。しかも、回路構成が煩雑な不正判定手段等を用いなくても、アーム部材を追加するだけで糸付き球の発射を確実に阻止できるため、構造が複雑化したりコストアップになることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態例に係るパチンコ機の外観斜視図である。
【図2】図1に示すパチンコ機のガラス扉を開けた状態の外観斜視図である。
【図3】図1に示すパチンコ機の背面図である。
【図4】図1のパチンコ機に備えられる本体枠の正面図である。
【図5】図1のパチンコ機に備えられる発射装置の斜視図である。
【図6】図5に示す発射装置の正規の遊技球に対する動作説明図である。
【図7】図5に示す発射装置の糸付き球に対する動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1に示すように、本実施形態例に係るパチンコ機Pは、遊技場の島設備に設置される縦長方形状の機枠1と、機枠1に扉状に開閉自在に取り付けられた本体枠2と、本体枠2の前面に扉状に開閉自在に取り付けられたガラス扉3等を備えており、ガラス扉3にはガラスやプラスチック等からなる透明板4が取り付けられている。
【0015】
図2に示すように、機枠1の左側枠部には上側軸受け体5aと下側軸受け体5bが固着されており、この下側軸受け体5bよりも下方の左下隅部には大型のスピーカ6が配設されている。一方、本体枠2の左側枠部の上下両端には第1ピン(図示せず)が設けられており、これら両第1ピンが対応する上下の軸受け体5a,5bに軸支されることにより、本体枠2は機枠1に対して開閉自在となっている。
【0016】
本体枠2の上部内側には遊技盤7が収納されており、この遊技盤7の盤面(前面)は透明板4を透して目視可能となっている。遊技盤7はその盤面に遊技領域8を有しており、遊技領域8はガラス扉3の透明板4を透して外部から目視可能となっている。遊技領域8はガイドレール9と規制レール10によって略円形状に区画形成されており、この遊技領域8内を後述する発射装置23によって打ち出された遊技球が流下する。また、遊技領域8内には、センター役物装置と呼ばれる可変表示装置24と、一対の始動入賞口25,26と、複数の一般入賞口27と、通過ゲートであるスルーチャッカー28と、大入賞口を有するアタッカー装置29等が設けられており、図示せぬが、これら始動入賞口25,26と一般入賞口27および大入賞口の内部には遊技球の通過を検知するための検知センサが設けられている。
【0017】
遊技領域8内に設けられた上記各部材について簡単に説明すると、可変表示装置24の下側にはステージ30が設けられており、一対の始動入賞口25,26はステージ30の真下位置に上下2段に積層状態で配置されている。上段側の始動入賞口25は可動片を持たない非作動式の入賞口であるが、下段側の始動入賞口26は一対の可動片を有する作動式(電動チューリップ構造)の入賞口となっている。そして、これら始動入賞口25,26のいずれか一方に遊技球が入ると、それを契機として特別図柄表示の電子抽選が行われ、可変表示装置24の表示画面上で演出用図柄の変動表示および停止表示が行われる。また、スルーチャッカー28を遊技球が通過したことを契機として普通図柄表示の電子抽選が行われ、その抽選結果が当たりの場合に始動入賞口26の可動片を一時的に開放して遊技球の入球を許可するようになっている。
【0018】
アタッカー装置29は、始動入賞口25,26に遊技球が入ることを契機に行われる特別図柄表示の電子抽選の結果、当たりとなって大当たり遊技状態へ移行した場合に作動される装置である。具体的には、特別図柄表示の抽選結果が当たりの場合、可変表示装置24の表示画面上で演出用図柄の変動停止を例えば「777」のように特別図柄で停止させると共に、アタッカー装置29が複数回繰り返し開放動作して内部の大入賞口を露呈させる。アタッカー装置29は1回の開放動作について例えば30秒経過するまで、あるいは遊技球が大入賞口に例えば10個入るまで開放状態を維持し、かかる開放動作を例えば15回繰り返した後に大当たりが終了する。なお、始動入賞口25,26に遊技球が入ると、特別図柄表示の抽選結果が行われると共に、所定個数の遊技球が賞球として遊技者に払い出されるが、一般入賞口27に遊技球が入った場合には所定個数の遊技球の払い出しのみが行われる。そして、いずれの始動入賞口25,26や一般入賞口27にも入らなかった遊技球は、遊技領域8の最下端部に設けられたアウト口31から遊技盤7の裏面側に排出されるようになっている。
【0019】
遊技盤7よりも下方の本体枠2はガラス扉3の下部によって覆い隠される設置部2aとなっており、この設置部2a内の下部中央には遊技球を遊技領域8に向けて発射する発射装置23が配設されている。また、本体枠2の右側枠部には施錠装置11が設置されており、この施錠装置11は、本体枠2の前面側に突出するシリンダ錠11aと、本体枠2の裏面に配置された図示せぬ後部施錠杆および前部施錠杆とを備えている。常態では、施錠装置11の後部施錠杆によって機枠1に対して本体枠2が施錠されると共に、前部施錠杆によって本体枠2に対してガラス扉3が施錠されている。そして、シリンダ錠11aの鍵穴に図示せぬ鍵を差し込み、この鍵を一方向(例えば時計回り)へ回動すると、後部施錠杆が下動して本体枠2が開錠されるようになっている。また、シリンダ錠11aの鍵穴に差し込んだ鍵を他方向(反時計回り)へ回動すると、前部施錠杆が上動してガラス扉3が開錠されるようになっている。
【0020】
ガラス扉3の左側枠部の上下両端には第2ピン(図示せず)が設けられており、これら両第2ピンを本体枠2の上下の軸孔(図示せず)に挿入することにより、ガラス扉3は本体枠2に対して開閉自在となっている。図1に戻り、ガラス扉3には遊技盤7の盤面に対向する大きな開口3aが開設されており、この開口3aは透明板4によって塞がれている。ガラス扉3の前面上部には比較的小型のスピーカ12が左右に1個ずつ配設されており、これらスピーカ12と前述した大型のスピーカ6とによって遊技に関する様々な効果音を発するようになっている。また、ガラス扉3の前面下部には、遊技盤7の裏面に配設された賞球払出装置(後述する)から払い出された遊技球を収容する上段受皿13と、上段受皿13から排出された遊技球を収容する下段受皿14と、遊技者による押下操作が可能なプッシュ釦15とが設けられており、上段受皿12の右側方には発射装置23の発射強度を調整するための操作ハンドル16が配設されている。
【0021】
図3に示すように、このパチンコ機Pの背面側には、遊技に関する主要な処理を行う主制御処理部17と、主制御処理部17からの指令を受けて可変表示装置やスピーカ等の各種装置を制御する副制御処理部18と、上段受皿13に対して所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出装置19と、主制御処理部17からの指令を受けて賞球払出装置19を制御する払出制御処理部20と、操作ハンドル16の回動操作量に応じて発射装置23の作動を制御する発射制御処理部21と、賞球数や大当たり回数等の各種情報を遊技場のホールコンピュータに出力する外部端子基板22等が設けられている。主制御処理部17は、CPU(Central Processing Unit)と、予め定められた制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、生成された処理情報の一時記憶および記憶した情報の削除を行うRAM(Random Access Memory)等が実装された制御基板(メイン基板)とを備えており、このCPUがROMに格納された各種プログラムやデータを読み込んで実行することにより、遊技に関する主要な処理が行われる。
【0022】
図4に示すように、遊技盤7の遊技領域8よりも左側には、発射装置23から発射された遊技球を遊技領域8の上部側に案内する外レール32と、規制レール10の外周面に沿って延びる内レール33とが設けられており、これら外レール32と内レール33とで挟まれた空間部分が発射案内通路34となっている。なお、図4において、遊技領域8内に設けられた可変表示装置24や始動入賞口25,26等は図示省略されている。外レール32はアウト口31から離れた左側位置から遊技盤7の左側端および上端部を経て円弧状に配置されており、外レール32の上端側はガイドレール9に連続している。内レール33はアウト口31のやや左側位置から遊技盤7の上端部にかけて円弧状に配置されており、発射案内通路34の上端部には遊技領域8から遊技球が戻るのを阻止する球戻り防止片35が設けられている。
【0023】
図5に示すように、前記発射装置23は、本体枠2の設置部2aに固定されるベース板36と、ベース板36の裏面側に取り付けられたロータリソレノイド37と、ベース板36の前面側に配置されてロータリソレノイド37を駆動源として一体的に回転(揺動)するハンマ38およびアーム部材39と、ベース板36の前面側に設けられた発射レール40とを備えている。ロータリソレノイド37は、コイルに通電すると発生する吸引力によって回転子が所定角度だけ回転し、通電を止めると回転子が永久磁石に吸引されて通電前の位置まで復帰するという公知の電気部品である。このロータリソレノイド37は回転子からベース板36を貫通して前面側へ突出する駆動軸37aを有しており、この駆動軸37aにハンマ38の基端側が固定されている。ハンマ38はベース板36の前面側へ突出する一対のストッパ41,42によって回転角度が規制されており、ハンマ38の先端側には遊技球を打撃する突部38aが形成されている。アーム部材39は合成樹脂の成形品からなり、このアーム部材39の基端側もロータリソレノイド37の駆動軸37aに固定されている。その際、アーム部材39とハンマ38は所定の交叉角度(例えば約90度)をなすようにナット37bを用いて駆動軸37aに共締めされており、この交叉角度を保ったまま両者38,39は一体的に回転するようになっている。アーム部材39の先端側には遊技球の直径よりも幾分大きめな貫通孔39aが設けられており、この貫通孔39aの内周面に周方向に連続する多数の鋸歯状溝39bが形成されている。
【0024】
発射レール40は発射案内通路34に向かって上り勾配で傾斜しており、この傾斜面の右端の最下部が待機位置40aとなっている。図4に示すように、待機位置40aの前方位置に2点鎖線で示す供給口43aが対向するようになっており、これら待機位置40aと供給口43aとの間にアーム部材39の貫通孔39aが配置されている。供給口43aは上段受皿13に連設されてガラス扉3の裏面側に突出する整流器43の出口であり(図2参照)、上段受皿13に貯留された多数の遊技球は、整流器43で一列に整流された状態で供給口43aからアーム部材39の貫通孔39aを通って待機位置40aへ1個ずつ供給されるようになっている。また、発射レール40から発射案内通路34に至る空間の下部にはファール球回収通路44が設けられており、ファール球回収通路44の最下部には下段受皿14からガラス扉3の裏面側に突出する球回収部14a(図2参照)が位置している。
【0025】
このように構成されたパチンコ機Pにおいて、まず、正規の遊技球を使用して遊技を行う場合について図6を参照しつつ説明する。上段受皿13に貯留された正規の遊技球Bは、整流器43で1個ずつ整流されて供給口43aから排出された後、図6(a)に示すように、アーム部材39の貫通孔39aを通過して発射レール40の待機位置40aに保持される。このとき、ハンマ38は一方のストッパ41に当接して初期位置で停止しており、アーム部材39は待機位置40aの近傍で停止している。この状態で遊技者が操作ハンドル16を回動操作すると、その回動操作量に応じた駆動電流がロータリソレノイド37のコイルに通電されることにより、図6(b)に示すように、ハンマ38が初期位置から待機位置40aに向かって回転すると共に、ハンマ38に連動してアーム部材39が待機位置40aの近傍から遊技球の打ち出し方向へ回転する。そして、図6(c)に示すように、ハンマ38が動作位置まで回転して他方のストッパ42に当接すると、待機位置40aに保持されていた遊技球Bがハンマ38の突部38aで打撃されることにより、この遊技球Bはアーム部材39と干渉することなく発射案内通路34の方向へ発射される。その際、発射時の勢いが不十分で発射案内通路34を通過して遊技領域8まで到達できなかった遊技球Bは、発射案内通路34を逆走してファール球回収通路44に落下した後、球回収部14aを通って下段受皿14にファール球として戻される。一方、発射時に十分に勢いのある遊技球Bは、発射レール40を飛び越えて発射案内通路34に入った後、発射案内通路34の上端に配置された球戻り防止片35を通過して遊技領域8内に進入する。前述したように、このようにして遊技領域8内に進入した遊技球Bが始動入賞口25,26に入ると、特別図柄表示の抽選結果が行われると共に、所定個数の遊技球が賞球として遊技者に払い出される。また、遊技領域8内を流下する遊技球Bが一般入賞口27に入ると所定個数の遊技球の払い出しのみが行われ、いずれの始動入賞口25,26や一般入賞口27にも入らなかった遊技球Bはアウト口31から遊技盤7の裏面側に排出される。
【0026】
次に、不正行為を働こうとする者が遊技球に釣り糸等の紐状体45を接着・固定し、かかる糸付き球を使用して遊技を行う場合について図7を参照しつつ説明する。紐状体45を付けた遊技球(糸付き球)B1を上段受皿13に投入すると、この遊技球B1は紐状体45を付けたまま整流器43の供給口43aから排出された後、図7(a)に示すように、アーム部材39の貫通孔39aを通過して発射レール40の待機位置40aへ供給されるため、遊技球B1は紐状体45を貫通孔39aに挿通させた状態で待機位置40aに保持される。この状態で遊技者が操作ハンドル16を回動操作すると、前述した正規の遊技球を使用した場合と同様に、ハンマ38が初期位置から待機位置40aに向かって回転すると共に、ハンマ38に連動してアーム部材39が待機位置40aの近傍から遊技球の打ち出し方向へ回転する。このとき、アーム部材39は紐状体45を貫通孔39aに挿通させた状態で打ち出し方向へ回転するため、図7(b)に示すように、紐状体45は貫通孔39aの内周面に形成された鋸歯状溝39bの1つに引っ掛かったままアーム部材39と一緒に同方向へ移動し、この紐状体45に引っ張られて遊技球B1が待機位置40aから打ち出し方向へ移動する。したがって、図7(c)に示すように、ハンマ38の突部38aが待機位置40aに到達しても待機位置40aに遊技球B1は存在せず、遊技球B1をハンマ38で打撃して発射案内通路34の方向へ発射することはできなくなる。
【0027】
そして、ロータリソレノイド37が逆転してハンマ38が初期位置に戻ると、ハンマ38に連動してアーム部材39も待機位置40aの近傍に戻り、遊技球(糸付き球)B1は再び待機位置40aに保持されるが、引き続いてハンマ38が初期位置から待機位置40aに向かって回転すると、ハンマ38に連動して回転するアーム部材39によって上記と同様の動作が繰り返される。つまり、糸付き球B1を使用している限り、その糸付き球B1を遊技領域8に到達させることはできないため、外部から紐状体45を手動操作して糸付き球B1を始動入賞口25,26や一般入賞口27等へ誘導することは不可能となり、糸付き球B1を使用した不正行為を確実に防止することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態例に係るパチンコ機Pでは、発射装置23がハンマ38に連動して回転するアーム部材39を備えており、紐状体45の付いた遊技球(糸付き球)B1を上段受皿13から待機位置40aに供給すると、この遊技球B1が紐状体45を付けたままアーム部材39の貫通孔39aを通過して待機位置40aに保持されるようになっているので、ハンマ38が初期位置から待機位置40aに向かって回転するときに、アーム部材39がハンマ38に先行して待機位置40aから打ち出し方向へ回転して、貫通孔39aに挿通させた紐状体45がアーム部材39と一緒に同方向へ移動する。これにより、遊技球B1は紐状体45に引っ張られて待機位置40aから打ち出し方向へ逃がされため、ハンマ38が待機位置40aまで回転しても遊技球B1を打撃することはできず、糸付き球B1を使用した不正行為を確実に防止することができる。しかも、糸付き球B1を使用した不正行為を検知センサの出力信号等に基づいて電気的に判断するのではなく、アーム部材39によって糸付き球B1の発射自体を阻止して不正行為を防止するというものであるため、構造が複雑化したりコストアップになることを防止できる。
【0029】
また、本実施形態例に係るパチンコ機Pでは、ハンマ38とアーム部材39とを所定の交叉角度を保ってロータリソレノイド37の駆動軸37a上で連結させているため、既存の発射装置23の構成部材にアーム部材38を追加するだけで済み、そのアーム部材38を簡単に付設することもできる。ただし、ハンマ38とアーム部材39を同一材料で形成して一体品としたり、ハンマ38とアーム部材39をギア等の中継部材を介して連結することも可能であり、要は、ハンマ38とアーム部材39がロータリソレノイド37を駆動源として同期回転するようになっていれば良い。
【0030】
さらに、本実施形態例に係るパチンコ機Pでは、アーム部材39がその先端側に遊技球を通過させる貫通孔39aを有し、この貫通孔39aの内周面に周方向に連続する多数の鋸歯状溝39bが形成されているため、アーム部材39が待機位置40aから打ち出し方向へ回転するときだけでなく、アーム部材39が待機位置40aに戻る方向へ回転するときも、貫通孔39aに挿通された紐状体45を任意の鋸歯状溝39bに入り込ませて引っ掛けることができ、遊技球(糸付き球)B1をアーム部材39の回転方向に確実に移動させることができる。ただし、アーム部材39の形状はこれに限定されず、例えば、貫通孔39aのない棒状のアーム部材39を用いることも可能であり、要は、ハンマ38が待機位置40aに向かって回転するときに、それに連動して回転するアーム部材39が紐状体45に当接できるようになっていれば良い。
【0031】
なお、上記の実施形態例では、遊技盤7の遊技領域8に始動入賞口25,26やアタッカー装置29等を設けたパチンコ機Pについて説明したが、本発明は遊技領域8にVゾーンと呼ばれる特定領域を設けたパチンコ機Pについても適用可能であり、この場合も、アーム部材39によって糸付き球B1の発射自体が阻止されているため、糸付き球B1をVゾーンに誘導して大当たり遊技状態にすることはできなくなる。
【符号の説明】
【0032】
1 機枠
2 本体枠
3 ガラス扉
7 遊技盤
8 遊技領域
9 ガイドレール
10 規制レール
13 上段受皿(受皿)
14 下段受皿
14a 球回収部
16 操作ハンドル
23 発射装置
24 可変表示装置
25,26 始動入賞口
27 一般入賞口
28 スルーチャッカー
29 アタッカー装置
32 外レール
33 内レール
34 発射案内通路
36 ベース板
37 ロータリソレノイド
37a 駆動軸
38 ハンマ
38a 突部
39 アーム部材
39a 貫通孔
39b 鋸歯状溝
40 発射レール
40a 待機位置
41,42 ストッパ
43 整流器
43a 供給口
44 ファール球回収通路
B 正規の遊技球
B1糸付き球
P パチンコ機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球が流下する遊技領域を有する遊技盤と、回転駆動されるハンマを有する発射装置と、受皿に貯留された遊技球を前記発射装置の待機位置に向けて1個ずつ供給する整流器とを備え、前記待機位置に保持された遊技球が前記ハンマの打撃によって前記遊技領域に向けて打ち出されるパチンコ機において、
前記ハンマに連動して回転するアーム部材を備え、前記整流器から供給される遊技球が前記アーム部材を通過して前記待機位置に保持されるようになし、前記ハンマが前記待機位置に向かって回転するとき、前記アーム部材が前記ハンマに先行して前記待機位置から遊技球の打ち出し方向へ回転するようにしたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記アーム部材と前記ハンマとが所定の交叉角度を保って同軸上で連結されていることを特徴とするパチンコ機。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記アーム部材が前記整流器と前記待機位置との間で遊技球を通過させる貫通孔を有し、この貫通孔の内周面に周方向に連続する多数の鋸歯状溝が形成されていることを特徴とするパチンコ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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