パチンコ機
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、パチンコ機、とりわけパチンコ機の遊技板の背後に設けられるセーフ球を取りまとめるためのセーフ球の球寄せ室につき改良を施したパチンコ機に関する。
[従来の技術及び問題点]
一般にパチンコ機は、遊技板に設けられる入賞球受けを通してセーフ球となったパチンコ球(打球)を、遊技板の背後に設ける球寄せ室に受け入れ、ここから整列させながら順次セーフ球通路へと送り出すようにしてあり、その先においてセーフ球通路に臨ませたセーフ球検出装置で個々のセーフ球を検出し、賞球装置をセーフ球の数に応じて作動させ、遊技者に賞球を放出するように構成しているが、入賞球受けを通して一時に多数のセーフ球が転入すると、球寄せ室に滞溜して球詰りを起す問題があった。ことに、所謂「大当り」と称せられる多量入賞可能な状態となったとき、一時に多数のセーフ球が連続的に飛入することが多く球寄せ室の底面板上に滞溜しやすくなり、セーフ球通路への流れが詰ってセーフ球検出装置の作動が滞ることがある。
この球詰りの第1の原因は一時に多数のセーフ球が飛入することにあるが、同時に賞球の放出に所要の時間がかゝることに合せてセーフ球検出装置の作動に時間をかけてタイミングを合せてあること、またそのため一個づつのセーフ球を順次送り出すためセーフ球通路中に球切り装置を介在させてあること、等が2次的な原因となっているが、しかしこれらの手段は現在のパチンコ機においては変更のできない要素となっているためこれらを改善して問題を解決することは困難である。
[発明の目的]
本発明は、この様な実情に鑑み、セーフ球の球寄せ室内部において発生する球詰り状態を他の変更の出来ない要素に対して影響を与えることなく改善し、セーフ球通路への円滑な誘導が行えるように改良したことにある。
[問題点を解決するための手段]
本発明は、上記問題点を解決するため、セーフ球を受ける球寄せ室を後方に拡張し、貯留空間を形成してセーフ球の滞溜場所を確保する一方、該球寄せ室の底面板の一部に折り返し上に屈曲する整列樋を備えて底板上に落下するセーフ球を一列に整列させ、これをセーフ球通路に誘導するようにしたことにある。
即ち、本発明において特徴とするところは球寄せ室を後方に拡張して貯留空間を形成したこと、そしてこの貯留空間の拡張形成に併せて底面板の一部に整列樋を組み入れたことにある。
周知の様にパチンコ機の遊技板背後に設けられるセーフ球の球寄せ室は、遊技板の背面に直接設けられる場合も、また後述実施例において説明するように遊技板を固定する機構枠体の背面に沿って設けられる場合もその前後幅、つまり奥行きは略パチンコ球1個の直径を越える程度の深さに形成されているのが普通である。これはセーフ球が前後に並んでブリッジ現象を起し球詰り原因を作らないための配慮によるが、同時にセーフ球通路に対して一個づつの球を整列誘導するのが困難になることによる。
本発明はこの様な前提下において球寄せ室の底面板の一部に整列樋を組入れることによって該球寄せ室の後方への拡張を可能とし、且つ球詰りのない円滑な誘導を可能としたのである。
本発明における球寄せ室の拡張は球寄せ室の底面板を基準にこれを後方に向けて延長し、併せてその背面板を後退させて拡張した貯留空間を形成するもので、この貯留空間によってセーフ球の貯留容量を拡大させ一時における多数個の飛入に備えられるようにするものである。そして、本発明は上記延長され拡幅された底面板を中央部が最も低くなるようV字形の傾斜面に形成してもその一方の傾斜面部分に長さの途中を折り返し状に屈曲させてなる整列樋を組入れ、該傾斜底面板上に滞溜するセーフ球を該整列樋に誘導して一個づつの流れに整列し、セーフ球通路へと送り出すようにしたことにある。
ところで、前述したように従来から球寄せ室の奥行き幅は球の整列誘導の面から略パチンコ球1個の直径を基準にしてこれより幾分大きめの幅を選択しているが、本発明における球寄せ室の底面板の延長幅は同様の理由によってパチンコ球1個の直径より幾分広いものとすることが適当である。
一方、整列樋は前記V字形に形成される底面板の一方の傾斜面部分に組入れるについて、長さの途中を屈曲させ折り返し状に形成して第1の整列樋区間と第2の整列樋区間から構成し、上記第1の整列樋区間はその底面を底面板の他方の傾斜面部分に連続させて傾斜方向を揃え、他方第2の整列樋区間は折り返して先端をセーフ球通路に連通させる。
整列樋における第1の整列樋区間は遊技板の背面側に沿って溝を有し、この溝の幅を底面板の他方の傾斜面部分に接続する基端側から徐々に狭め、併せて徐々に深く形成して底面に勾配を付しており、またこれに続く第2の整列樋区間はその底面の勾配を連続させながらU字形に後方に屈曲させ上方からみて第1の整列樋区間と並行するように折り返し、且つ徐々に幅を狭めてその先端部をセーフ球通路に連通させる。
尚、本発明における前記貯留空間は、球寄せ室の底面板を基準にしてその背面板の適当な高さまで後退させれば拡張が得られ貯留空間の形成が可能であるが、この貯留空間を遊技板に設けられる入賞球受けの全体を包囲できる範囲に亘って形成すると、これら入賞球受けの後部控部分を受け入れることが可能となるため有利に実施することができる。
以下、本発明を図示する実施例について更に詳述しその特徴とするところを明らかにする。
[実施例]
図面第1図は本発明に係るパチンコ機の要部の背面図で、第2図は上図II−II線拡大断面図、第3図は同じくIII−III線拡大横断面図、第4図は同じくIV−IV線拡大縦断面図である。図面において、1はパチンコ機の前面に一側縁を螺着して開閉自由に取付けられる額縁形をなす扉枠で、2はこの扉枠の背面に装備される浅い筐形に形成してなる機構枠体であり、3は機構枠体2の前面にクランプ4を介して着脱自由に取付けられる遊技板、5は賞球貯留タンク6及び賞球誘導樋7を設けるベース板、8はセーフ球寄せ室9の周囲を囲繞する枠体で、10はこの枠体8を避けてその側方に縦に設けた賞球装置である。
機構枠体2は金属板製であり、遊技板3を添わせる板部2aには中央部分に遊技板の背面部を開放する窓が開設してある。
上記窓は広く実用化されているように遊技板面に備える入賞球受け(図示せず)の後部、或は入賞球受けの後部相互を連絡する樋11等を板部2aの背後に臨ませるため開設されるもので、この窓を背後から被うように球寄せ室9が形成される。
球寄せ室9は板部2aの背面に対し約パチンコ球1個の直径を越える間隔をおいて対設される前記ベース板5を基準にして本体部9aが形成され、この後方に枠体8の囲繞によって拡張された貯留空間9bが形成されてこの両者の結合によって一つの空間に形成されている。
上記貯留空間9bを形成する枠体8は上面部と左右側面部を構成し、後方への突き出し幅は前記ベース板5の板部2aに対する間隔と同様に、このベース板5からパチンコ球1個の直径を越える長さにしてあり、その後縁に背面板12を添わせて背後を塞ぐ一方、底部は本体部9aと共通の底面板13によって塞ぎ球寄せ室9を独立した空間に形成してある。
上記底面板13は中央部を最低位置にして略V字形に形成し、左右方向から中央部に向けて下り勾配に形成する一方、この底面板の一半の傾斜面部分を整列樋14とし、球寄せ室9の下方に備えられるセーフ球通路15に連絡する構造にしてある。
整列樋14は前記遊技板3の入賞球受けを通して球寄せ室9に不規則に転入するセーフ球を底面板13の勾配と協働して整列させセーフ球通路15に1個づつ誘導させるもので、図示するように折り返し状に設けられる第1の整列樋区間14aと第2の整列樋区間14bから構成される。第1の整列樋区間は底面板13上に落下し、滞溜するセーフ球を一列状に揃える第1段階の役割をもち、他半の傾斜面部分13aの下端(底面板13の中央部)に臨む一端を受入れ口16として底面板13の奥行き幅に揃え、ここから底の深さを徐々に深くすると共に開口幅を徐々に狭める溝17を形成する。
溝17は球寄せ室9の底面板13の前縁側に沿って設けられ、その開口幅の狭まりによって出来る背面板12との間に傾斜板18を渡してこれを塞ぐようにしてある。この傾斜板18は実質的に底面板13の一半の傾斜面部分を構成するもので、ここに落下滞溜するセーフ球は溝17に転がり落ちることになる。尚、第1の整列樋区間14aの底面は他半の傾斜面部分13aの傾斜方向の延長線上に沿って下り勾配に形成してあり、その先端部は後方に向けて屈曲させ第2の整列樋区間14bに連通する。
第2の整列樋区間は前記傾斜板18の下方に位置し、この傾斜板によって上面を塞ぐ一方、上方からみて第1の整列樋区間14aに並行するように設けてある。この整列樋区間はセーフ球を一列に並べると同時に重なる球を底面に揃えて一個づつ並べるための区間で、溝19は全長に亘って1個のセーフ球を通す幅に形成し、その底面は第1の整列樋区間の勾配に続けて下り勾配に形成してある。そして、先端部出口20はS字形に屈曲させて第1の整列樋区間の受入れ口16の直下に位置し機構枠体2の板部2aの背面に沿って付設されるセーフ球通路15に連通する。
ところで、上記説明の整列樋14はその全域を第1と第2の整列樋区間に分割し、これを折り返し状に組合せることによって限られた空間内に必要な勾配と長さをもった整列溝17,19を備えるものとなっているが、更にこの実施例では第1の整列樋区間を形成する枠体21をベースにして第2の整列樋区間14bを形成する樋枠22を枢着軸23を以て回動自由に軸着し、組合せる構造に形成して両区間を開閉可能にしてある。
第6,7図はこの整列樋の構造を明らかにするもので、枠体21の一端部近くに設ける軸着部24に枢着軸23を介して第2整列樋区間を形成する樋枠22を回動自由に軸着し、常には樋枠の先端部側面に備える係止凸部25を枠体21に設ける係合孔26に嵌め入れ止め付け両者を一体に組合せるようにしてある。この2つの枠体21,22による構成はプラスチック素材による成形性を考慮するものであると同時に、傾斜板18によって上面を塞がれる第2の整列樋区間14bの溝19内部の清掃作業を円滑に行うためであり、枢着軸23を支点とする回動操作によって溝19を露出させることができる(第7図参照)。
図中、27はセーフ球通路15に臨ませた球切り装置で、28は同じくセーフ球通路を落下するセーフ球を受けて揺動し、その通過を検出するセーフ球検出装置である。
球切り装置27は二又部27aに受けるセーフ球の重量で支軸29を支点に上下に揺動し、セーフ球を1個づつ縦の通路15aに送り出す。この縦の通路15aに送られたセーフ球はここに待ち受けるセーフ球検出装置28の先端に乗り、これを球重量で支軸30を支点に押し下げ、その下端に達したところで先端から転出し、放出路31に誘導される。
セーフ球検出装置28は上記揺動を通して連絡杆32を押し上げ、この動作を通して賞球装置10の賞球貯留ケースのカバー33を開放し、賞球を賞球放出樋34に放出することになる。放出された賞球は樋34中に臨むリン35を打ち、その下方に設ける放出口36から扉枠1の前面に揃える賞球皿(図示せず)へと誘導される。
尚、当該実施例ではセーフ球通路15を含むセーフ球検出装置28、カバー33を備える賞球装置10、そしてこの賞球装置に賞球を誘導する誘導樋7の一部と賞球放出樋34等を逆L字形のケース体37に一括して収め、このケース体37を螺番38を介して機構枠体2の板部2aの背面に開閉自由に取付けている。そして、前記貯留空間9bを囲む枠体8及び球寄せ室9の背後を塞ぐ背面板12を上記ケース体37の自由端縁に沿って取付け、ケース体の開放に伴なはせて球寄せ室9の背後を開放できるようにしてある。
図中、39はケース体37に対向させて機構枠体2その他側縁に沿って縦長に固定した枠部材であり、この枠部材に沿って枠体8の一部が設けてある。40は背面板12の中央部に開設した窓41を塞ぐ箱形のケースで、遊技板背面から突き出す入賞42を被う。また、43は遊技板のアウト口44からのアウト球を放出する放出路である。
本発明は上述の如く構成されるもので、遊技板の入賞球受け及び入賞装置に飛入しセーフ球となった打球は遊技板の背面に抜け出しセーフ球の球寄せ室9に転入し、それぞれは底面板13に落下し、その勾配に従って整列樋14の受入れ口16に誘導されることになる。このセーフ球の転入において、入賞球受け或は入賞装置の飛入条件が緩和し一時に多数の入賞があったとき、本発明においては球寄せ室9の本体部9aの後方に貯留空間9bが増設され、併せて底面板13の奥行き幅が拡大されていることがあるから、セーフ球同志の重なり状態が回避され底面板上に分散した状態で収容されることになる。そして、底面板13上に落下したセーフ球は広く開口する整列樋14の受入れ口16に誘導されて第1の整列樋区間14aに入り、溝17を移動する間に重なり合うセーフ球は最終的に一列状に均され、次の第2の整列樋区間14bの溝19に誘導される。
この2つの整列樋区間は折り返し状に形成されることによって限られた空間内にセーフ球の整列に必要な長さを確保するもので、緩やかな底面の傾斜の中で、球の重なり状態を解消することになる。整列樋14を抜けたセーフ球は前述した如くセーフ球通路15に入り、セーフ球検出装置28を作動させ、賞球装置10を作動させることになる。
尚、上記実施例において、球寄せ室9の貯留空間9bは特に底面板13の奥行き幅を拡大するため用意されるもので、この意味から底面板に近いところに形成されゝばセーフ球の滞溜によって生じる球詰り状態を回避するのに有効に作用するが、更に図示した様に上方に亘って大きな空間をもたせると、入賞球受けの後部の付き出しを受け入れることが可能となるため有利に実施することができる。
[発明の効果]
以上、実施例に基づき詳述した様に本発明は、セーフ球を受ける球寄せ室を従来のパチンコ機において実施されている奥行き幅に加えて該球寄せ室の後部に貯留空間を増設して拡大させる一方、その底面板を後方に向けて拡幅したことからこの底面板上に落下したセーフ球が重なり合った状態に滞留することりがなく、それぞれは底面板に直接接触してその勾配に誘導されるものとなり、整列しやすいものとなっている。また、この底面板の一半に第1,第2の整列樋区間を折り返し状に備えて整列に充分な長さを確保する整列樋を連設することから確実にセーフ球の一列整列が可能であり、従って、セーフ球通路に向けて1個づつの送り出しができるものとなっている。
この様に本発明は球寄せ室の球詰りを解消すると共に、セーフ球通路に対して1個づつのセーフ球を円滑に送り届けられることから球詰りを原因とする遊技板中における不測の停止や故障等を有効に回避できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の一実施例を示したもので、第1図はパチンコ機の扉枠の背面に設けられる機構枠体を背後からみた要部の正面図、第2図は上図II−II線に沿った拡大縦断側面図、第3図は同じくIII−III線に沿った拡大横断平面図、第4図は同じくIV−IV線に沿った拡大縦断側面図、第5図は整列樋とセーフ球通路の関係を示す拡大図、第6図は整列樋の拡大正面図、第7図は第2の整列樋区間を開放した状態の平面図、第8図は第7図A−A断面図、第9図は同じくB−B断面図、第10図は同じくC−C断面図、第11図は同じくD−D断面図、第12図はE−E端面図、第13図はF−F線方向から見た第2整列樋区間の側面図である。
2……機構枠体、2a……機構枠体の板部
3……遊技板、5……ベース板
8……枠体、9……球寄せ室
9b……貯留空間、12……背面板
13……底面板、13a……傾斜面部分
14……整列樋、14a……第1の整列樋区間
14b……第2の整列樋区間
15……セーフ球通路
[産業上の利用分野]
本発明は、パチンコ機、とりわけパチンコ機の遊技板の背後に設けられるセーフ球を取りまとめるためのセーフ球の球寄せ室につき改良を施したパチンコ機に関する。
[従来の技術及び問題点]
一般にパチンコ機は、遊技板に設けられる入賞球受けを通してセーフ球となったパチンコ球(打球)を、遊技板の背後に設ける球寄せ室に受け入れ、ここから整列させながら順次セーフ球通路へと送り出すようにしてあり、その先においてセーフ球通路に臨ませたセーフ球検出装置で個々のセーフ球を検出し、賞球装置をセーフ球の数に応じて作動させ、遊技者に賞球を放出するように構成しているが、入賞球受けを通して一時に多数のセーフ球が転入すると、球寄せ室に滞溜して球詰りを起す問題があった。ことに、所謂「大当り」と称せられる多量入賞可能な状態となったとき、一時に多数のセーフ球が連続的に飛入することが多く球寄せ室の底面板上に滞溜しやすくなり、セーフ球通路への流れが詰ってセーフ球検出装置の作動が滞ることがある。
この球詰りの第1の原因は一時に多数のセーフ球が飛入することにあるが、同時に賞球の放出に所要の時間がかゝることに合せてセーフ球検出装置の作動に時間をかけてタイミングを合せてあること、またそのため一個づつのセーフ球を順次送り出すためセーフ球通路中に球切り装置を介在させてあること、等が2次的な原因となっているが、しかしこれらの手段は現在のパチンコ機においては変更のできない要素となっているためこれらを改善して問題を解決することは困難である。
[発明の目的]
本発明は、この様な実情に鑑み、セーフ球の球寄せ室内部において発生する球詰り状態を他の変更の出来ない要素に対して影響を与えることなく改善し、セーフ球通路への円滑な誘導が行えるように改良したことにある。
[問題点を解決するための手段]
本発明は、上記問題点を解決するため、セーフ球を受ける球寄せ室を後方に拡張し、貯留空間を形成してセーフ球の滞溜場所を確保する一方、該球寄せ室の底面板の一部に折り返し上に屈曲する整列樋を備えて底板上に落下するセーフ球を一列に整列させ、これをセーフ球通路に誘導するようにしたことにある。
即ち、本発明において特徴とするところは球寄せ室を後方に拡張して貯留空間を形成したこと、そしてこの貯留空間の拡張形成に併せて底面板の一部に整列樋を組み入れたことにある。
周知の様にパチンコ機の遊技板背後に設けられるセーフ球の球寄せ室は、遊技板の背面に直接設けられる場合も、また後述実施例において説明するように遊技板を固定する機構枠体の背面に沿って設けられる場合もその前後幅、つまり奥行きは略パチンコ球1個の直径を越える程度の深さに形成されているのが普通である。これはセーフ球が前後に並んでブリッジ現象を起し球詰り原因を作らないための配慮によるが、同時にセーフ球通路に対して一個づつの球を整列誘導するのが困難になることによる。
本発明はこの様な前提下において球寄せ室の底面板の一部に整列樋を組入れることによって該球寄せ室の後方への拡張を可能とし、且つ球詰りのない円滑な誘導を可能としたのである。
本発明における球寄せ室の拡張は球寄せ室の底面板を基準にこれを後方に向けて延長し、併せてその背面板を後退させて拡張した貯留空間を形成するもので、この貯留空間によってセーフ球の貯留容量を拡大させ一時における多数個の飛入に備えられるようにするものである。そして、本発明は上記延長され拡幅された底面板を中央部が最も低くなるようV字形の傾斜面に形成してもその一方の傾斜面部分に長さの途中を折り返し状に屈曲させてなる整列樋を組入れ、該傾斜底面板上に滞溜するセーフ球を該整列樋に誘導して一個づつの流れに整列し、セーフ球通路へと送り出すようにしたことにある。
ところで、前述したように従来から球寄せ室の奥行き幅は球の整列誘導の面から略パチンコ球1個の直径を基準にしてこれより幾分大きめの幅を選択しているが、本発明における球寄せ室の底面板の延長幅は同様の理由によってパチンコ球1個の直径より幾分広いものとすることが適当である。
一方、整列樋は前記V字形に形成される底面板の一方の傾斜面部分に組入れるについて、長さの途中を屈曲させ折り返し状に形成して第1の整列樋区間と第2の整列樋区間から構成し、上記第1の整列樋区間はその底面を底面板の他方の傾斜面部分に連続させて傾斜方向を揃え、他方第2の整列樋区間は折り返して先端をセーフ球通路に連通させる。
整列樋における第1の整列樋区間は遊技板の背面側に沿って溝を有し、この溝の幅を底面板の他方の傾斜面部分に接続する基端側から徐々に狭め、併せて徐々に深く形成して底面に勾配を付しており、またこれに続く第2の整列樋区間はその底面の勾配を連続させながらU字形に後方に屈曲させ上方からみて第1の整列樋区間と並行するように折り返し、且つ徐々に幅を狭めてその先端部をセーフ球通路に連通させる。
尚、本発明における前記貯留空間は、球寄せ室の底面板を基準にしてその背面板の適当な高さまで後退させれば拡張が得られ貯留空間の形成が可能であるが、この貯留空間を遊技板に設けられる入賞球受けの全体を包囲できる範囲に亘って形成すると、これら入賞球受けの後部控部分を受け入れることが可能となるため有利に実施することができる。
以下、本発明を図示する実施例について更に詳述しその特徴とするところを明らかにする。
[実施例]
図面第1図は本発明に係るパチンコ機の要部の背面図で、第2図は上図II−II線拡大断面図、第3図は同じくIII−III線拡大横断面図、第4図は同じくIV−IV線拡大縦断面図である。図面において、1はパチンコ機の前面に一側縁を螺着して開閉自由に取付けられる額縁形をなす扉枠で、2はこの扉枠の背面に装備される浅い筐形に形成してなる機構枠体であり、3は機構枠体2の前面にクランプ4を介して着脱自由に取付けられる遊技板、5は賞球貯留タンク6及び賞球誘導樋7を設けるベース板、8はセーフ球寄せ室9の周囲を囲繞する枠体で、10はこの枠体8を避けてその側方に縦に設けた賞球装置である。
機構枠体2は金属板製であり、遊技板3を添わせる板部2aには中央部分に遊技板の背面部を開放する窓が開設してある。
上記窓は広く実用化されているように遊技板面に備える入賞球受け(図示せず)の後部、或は入賞球受けの後部相互を連絡する樋11等を板部2aの背後に臨ませるため開設されるもので、この窓を背後から被うように球寄せ室9が形成される。
球寄せ室9は板部2aの背面に対し約パチンコ球1個の直径を越える間隔をおいて対設される前記ベース板5を基準にして本体部9aが形成され、この後方に枠体8の囲繞によって拡張された貯留空間9bが形成されてこの両者の結合によって一つの空間に形成されている。
上記貯留空間9bを形成する枠体8は上面部と左右側面部を構成し、後方への突き出し幅は前記ベース板5の板部2aに対する間隔と同様に、このベース板5からパチンコ球1個の直径を越える長さにしてあり、その後縁に背面板12を添わせて背後を塞ぐ一方、底部は本体部9aと共通の底面板13によって塞ぎ球寄せ室9を独立した空間に形成してある。
上記底面板13は中央部を最低位置にして略V字形に形成し、左右方向から中央部に向けて下り勾配に形成する一方、この底面板の一半の傾斜面部分を整列樋14とし、球寄せ室9の下方に備えられるセーフ球通路15に連絡する構造にしてある。
整列樋14は前記遊技板3の入賞球受けを通して球寄せ室9に不規則に転入するセーフ球を底面板13の勾配と協働して整列させセーフ球通路15に1個づつ誘導させるもので、図示するように折り返し状に設けられる第1の整列樋区間14aと第2の整列樋区間14bから構成される。第1の整列樋区間は底面板13上に落下し、滞溜するセーフ球を一列状に揃える第1段階の役割をもち、他半の傾斜面部分13aの下端(底面板13の中央部)に臨む一端を受入れ口16として底面板13の奥行き幅に揃え、ここから底の深さを徐々に深くすると共に開口幅を徐々に狭める溝17を形成する。
溝17は球寄せ室9の底面板13の前縁側に沿って設けられ、その開口幅の狭まりによって出来る背面板12との間に傾斜板18を渡してこれを塞ぐようにしてある。この傾斜板18は実質的に底面板13の一半の傾斜面部分を構成するもので、ここに落下滞溜するセーフ球は溝17に転がり落ちることになる。尚、第1の整列樋区間14aの底面は他半の傾斜面部分13aの傾斜方向の延長線上に沿って下り勾配に形成してあり、その先端部は後方に向けて屈曲させ第2の整列樋区間14bに連通する。
第2の整列樋区間は前記傾斜板18の下方に位置し、この傾斜板によって上面を塞ぐ一方、上方からみて第1の整列樋区間14aに並行するように設けてある。この整列樋区間はセーフ球を一列に並べると同時に重なる球を底面に揃えて一個づつ並べるための区間で、溝19は全長に亘って1個のセーフ球を通す幅に形成し、その底面は第1の整列樋区間の勾配に続けて下り勾配に形成してある。そして、先端部出口20はS字形に屈曲させて第1の整列樋区間の受入れ口16の直下に位置し機構枠体2の板部2aの背面に沿って付設されるセーフ球通路15に連通する。
ところで、上記説明の整列樋14はその全域を第1と第2の整列樋区間に分割し、これを折り返し状に組合せることによって限られた空間内に必要な勾配と長さをもった整列溝17,19を備えるものとなっているが、更にこの実施例では第1の整列樋区間を形成する枠体21をベースにして第2の整列樋区間14bを形成する樋枠22を枢着軸23を以て回動自由に軸着し、組合せる構造に形成して両区間を開閉可能にしてある。
第6,7図はこの整列樋の構造を明らかにするもので、枠体21の一端部近くに設ける軸着部24に枢着軸23を介して第2整列樋区間を形成する樋枠22を回動自由に軸着し、常には樋枠の先端部側面に備える係止凸部25を枠体21に設ける係合孔26に嵌め入れ止め付け両者を一体に組合せるようにしてある。この2つの枠体21,22による構成はプラスチック素材による成形性を考慮するものであると同時に、傾斜板18によって上面を塞がれる第2の整列樋区間14bの溝19内部の清掃作業を円滑に行うためであり、枢着軸23を支点とする回動操作によって溝19を露出させることができる(第7図参照)。
図中、27はセーフ球通路15に臨ませた球切り装置で、28は同じくセーフ球通路を落下するセーフ球を受けて揺動し、その通過を検出するセーフ球検出装置である。
球切り装置27は二又部27aに受けるセーフ球の重量で支軸29を支点に上下に揺動し、セーフ球を1個づつ縦の通路15aに送り出す。この縦の通路15aに送られたセーフ球はここに待ち受けるセーフ球検出装置28の先端に乗り、これを球重量で支軸30を支点に押し下げ、その下端に達したところで先端から転出し、放出路31に誘導される。
セーフ球検出装置28は上記揺動を通して連絡杆32を押し上げ、この動作を通して賞球装置10の賞球貯留ケースのカバー33を開放し、賞球を賞球放出樋34に放出することになる。放出された賞球は樋34中に臨むリン35を打ち、その下方に設ける放出口36から扉枠1の前面に揃える賞球皿(図示せず)へと誘導される。
尚、当該実施例ではセーフ球通路15を含むセーフ球検出装置28、カバー33を備える賞球装置10、そしてこの賞球装置に賞球を誘導する誘導樋7の一部と賞球放出樋34等を逆L字形のケース体37に一括して収め、このケース体37を螺番38を介して機構枠体2の板部2aの背面に開閉自由に取付けている。そして、前記貯留空間9bを囲む枠体8及び球寄せ室9の背後を塞ぐ背面板12を上記ケース体37の自由端縁に沿って取付け、ケース体の開放に伴なはせて球寄せ室9の背後を開放できるようにしてある。
図中、39はケース体37に対向させて機構枠体2その他側縁に沿って縦長に固定した枠部材であり、この枠部材に沿って枠体8の一部が設けてある。40は背面板12の中央部に開設した窓41を塞ぐ箱形のケースで、遊技板背面から突き出す入賞42を被う。また、43は遊技板のアウト口44からのアウト球を放出する放出路である。
本発明は上述の如く構成されるもので、遊技板の入賞球受け及び入賞装置に飛入しセーフ球となった打球は遊技板の背面に抜け出しセーフ球の球寄せ室9に転入し、それぞれは底面板13に落下し、その勾配に従って整列樋14の受入れ口16に誘導されることになる。このセーフ球の転入において、入賞球受け或は入賞装置の飛入条件が緩和し一時に多数の入賞があったとき、本発明においては球寄せ室9の本体部9aの後方に貯留空間9bが増設され、併せて底面板13の奥行き幅が拡大されていることがあるから、セーフ球同志の重なり状態が回避され底面板上に分散した状態で収容されることになる。そして、底面板13上に落下したセーフ球は広く開口する整列樋14の受入れ口16に誘導されて第1の整列樋区間14aに入り、溝17を移動する間に重なり合うセーフ球は最終的に一列状に均され、次の第2の整列樋区間14bの溝19に誘導される。
この2つの整列樋区間は折り返し状に形成されることによって限られた空間内にセーフ球の整列に必要な長さを確保するもので、緩やかな底面の傾斜の中で、球の重なり状態を解消することになる。整列樋14を抜けたセーフ球は前述した如くセーフ球通路15に入り、セーフ球検出装置28を作動させ、賞球装置10を作動させることになる。
尚、上記実施例において、球寄せ室9の貯留空間9bは特に底面板13の奥行き幅を拡大するため用意されるもので、この意味から底面板に近いところに形成されゝばセーフ球の滞溜によって生じる球詰り状態を回避するのに有効に作用するが、更に図示した様に上方に亘って大きな空間をもたせると、入賞球受けの後部の付き出しを受け入れることが可能となるため有利に実施することができる。
[発明の効果]
以上、実施例に基づき詳述した様に本発明は、セーフ球を受ける球寄せ室を従来のパチンコ機において実施されている奥行き幅に加えて該球寄せ室の後部に貯留空間を増設して拡大させる一方、その底面板を後方に向けて拡幅したことからこの底面板上に落下したセーフ球が重なり合った状態に滞留することりがなく、それぞれは底面板に直接接触してその勾配に誘導されるものとなり、整列しやすいものとなっている。また、この底面板の一半に第1,第2の整列樋区間を折り返し状に備えて整列に充分な長さを確保する整列樋を連設することから確実にセーフ球の一列整列が可能であり、従って、セーフ球通路に向けて1個づつの送り出しができるものとなっている。
この様に本発明は球寄せ室の球詰りを解消すると共に、セーフ球通路に対して1個づつのセーフ球を円滑に送り届けられることから球詰りを原因とする遊技板中における不測の停止や故障等を有効に回避できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の一実施例を示したもので、第1図はパチンコ機の扉枠の背面に設けられる機構枠体を背後からみた要部の正面図、第2図は上図II−II線に沿った拡大縦断側面図、第3図は同じくIII−III線に沿った拡大横断平面図、第4図は同じくIV−IV線に沿った拡大縦断側面図、第5図は整列樋とセーフ球通路の関係を示す拡大図、第6図は整列樋の拡大正面図、第7図は第2の整列樋区間を開放した状態の平面図、第8図は第7図A−A断面図、第9図は同じくB−B断面図、第10図は同じくC−C断面図、第11図は同じくD−D断面図、第12図はE−E端面図、第13図はF−F線方向から見た第2整列樋区間の側面図である。
2……機構枠体、2a……機構枠体の板部
3……遊技板、5……ベース板
8……枠体、9……球寄せ室
9b……貯留空間、12……背面板
13……底面板、13a……傾斜面部分
14……整列樋、14a……第1の整列樋区間
14b……第2の整列樋区間
15……セーフ球通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】遊技板を固定する機構枠体の背面に設けられるセーフ球の球寄せ室の底面板を後方に向けて延設し、該底面板を基準に球寄せ室の背面板を後退させ貯留空間を拡張形成する一方、上記底面板をV字形の傾斜面に形成し、その一方の傾斜面部分に折り返し状に屈曲する整列樋を備え、該整列樋の先端をセーフ球通路に連通させてなるパチンコ機。
【請求項2】特許請求の範囲第1項の記載において、底面板の延設はその延設幅が少なくともパチンコ球1個の直径を越える長さ以上であることを特徴とするパチンコ機。
【請求項3】特許請求の範囲第1項の記載において、球寄せ室の背面板は遊技板に設けられる入賞球受けの全てを囲む範囲に亘り後退させ貯留空間とすることを特徴とするパチンコ機。
【請求項4】特許請求の範囲第1項の記載において、整列樋は第1の整列樋区間と第2の整列樋区間から構成し、第1の整列樋区間は底面を球寄せ室の底面板の他方の傾斜面部分の傾斜方向に揃えて連続させ、第2の整列樋区間は上記第1の整列樋区間の先端に連続させると共に該連続部を折り返し点に並行状に折り返してその先端をセーフ球通路に連続させるようにしたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項1】遊技板を固定する機構枠体の背面に設けられるセーフ球の球寄せ室の底面板を後方に向けて延設し、該底面板を基準に球寄せ室の背面板を後退させ貯留空間を拡張形成する一方、上記底面板をV字形の傾斜面に形成し、その一方の傾斜面部分に折り返し状に屈曲する整列樋を備え、該整列樋の先端をセーフ球通路に連通させてなるパチンコ機。
【請求項2】特許請求の範囲第1項の記載において、底面板の延設はその延設幅が少なくともパチンコ球1個の直径を越える長さ以上であることを特徴とするパチンコ機。
【請求項3】特許請求の範囲第1項の記載において、球寄せ室の背面板は遊技板に設けられる入賞球受けの全てを囲む範囲に亘り後退させ貯留空間とすることを特徴とするパチンコ機。
【請求項4】特許請求の範囲第1項の記載において、整列樋は第1の整列樋区間と第2の整列樋区間から構成し、第1の整列樋区間は底面を球寄せ室の底面板の他方の傾斜面部分の傾斜方向に揃えて連続させ、第2の整列樋区間は上記第1の整列樋区間の先端に連続させると共に該連続部を折り返し点に並行状に折り返してその先端をセーフ球通路に連続させるようにしたことを特徴とするパチンコ機。
【第8図】
【第12図】
【第1図】
【第6図】
【第9図】
【第10図】
【第11図】
【第13図】
【第2図】
【第4図】
【第3図】
【第5図】
【第7図】
【第12図】
【第1図】
【第6図】
【第9図】
【第10図】
【第11図】
【第13図】
【第2図】
【第4図】
【第3図】
【第5図】
【第7図】
【特許番号】第2775180号
【登録日】平成10年(1998)5月1日
【発行日】平成10年(1998)7月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−224652
【出願日】平成1年(1989)9月1日
【公開番号】特開平3−90183
【公開日】平成3年(1991)4月16日
【審査請求日】平成8年(1996)8月28日
【出願人】(999999999)株式会社平和
【参考文献】
【文献】特開 昭63−119786(JP,A)
【登録日】平成10年(1998)5月1日
【発行日】平成10年(1998)7月16日
【国際特許分類】
【出願日】平成1年(1989)9月1日
【公開番号】特開平3−90183
【公開日】平成3年(1991)4月16日
【審査請求日】平成8年(1996)8月28日
【出願人】(999999999)株式会社平和
【参考文献】
【文献】特開 昭63−119786(JP,A)
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