説明

パッキン材

【課題】柔軟性や弾力性、水・気密性に優れ、かつ伸びや引張強度の高い、方向転換や回転などの各種の運動機能が要求される光や音の検知部材など用として、好適なパッキン材を提供する。
【解決手段】合成樹脂微発泡体層と合成樹脂シートとの積層体からなるパッキン材であって、前記合成樹脂微発泡体層が、引張伸び300%以上、引張強度2MPa以上、密度0.25〜0.65g/cm3、25%圧縮荷重0.10〜0.20MPaであることを特徴とする。このとき、合成樹脂微発泡体層が、ポリウレタンウレアからなることが好ましい。また、ポリウレタンウレア微発泡体層が、温度100〜150℃、絶対湿度150g/m3以上で湿熱処理されたものであり、かつ機械発泡されたものであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッキン材に通常要求される柔軟性や弾力性、水・気密性だけでなく、伸びや引張強度も高く、よって方向転換や回転などの各種の運動機能が要求される光や音の検知部材など用として、好適なパッキン材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ、コンピュータ、携帯電話などの携帯情報端末機、あるいはテレビやDVDデバイスなどの電気・電子機器内には、各種素材製の表示部、マイク、スピーカ、キー、センサ、CPU、CPU周辺部材などの内・外部機器部材を、ケーシングの内部にあるいはケーシングの外部に臨むように設けられている。
これらの内・外部機器部材とケーシング、あるいは内・外部機器部材同士は、これらの間にシール材(すなわちパッキン材)を介在させて、水、ガス、あるいはこれらに同伴する防塵の他に、光の内・外から外・内への漏れを防止したり、電気・電子機器の稼働や移動中の内・外部機器部材自体のガタツキや、内・外部機器部材とケーシングとの衝突などを防止している。
【0003】
このパッキン材としては、例えば、(1)25%圧縮時に低荷重で容易に変形し、かつ片面にバックアップ材であるプラスチックフィルムを一体成形したメカニカルフロス法により成形されるポリウレタンフォーム(特許文献1)、(2)メカニカルフロス法により得られるポリウレタン発泡体であって、特定の密度、硬度、および圧縮永久歪みを有するもの(特許文献2)、(3)ポリエステルフィルムからなる強化層の一方の面にポリウレタン発泡原料層を形成し、該層を反応・硬化させて第1の発泡層とする際に該第1の発泡層と強化層とを接合した後、他方の面にポリウレタン発泡原料層を形成し、該層を反応・硬化させて第2の発泡層とする際に該第2の発泡層と強化層とを接合してなるもの(特許文献3)、などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−100216号公報
【特許文献2】特開2002−138126号公報
【特許文献3】特開平9−254293号公報
【特許文献4】特開平11−60768号公報
【特許文献5】特許第4040895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発泡体では、ソリッド体のような欠点(耐久性は高いが、高硬度故に、防震性や脆性が低く、小さなクラック等が原因で裂けたり欠ける等の形状欠陥も生じ易い)はないものの、高荷重で長期間使用する場合に、セルの潰れやセル壁の劣化等の形状的な経年変化、言いかえれば圧縮永久歪みの点で問題がある。
また、このような問題のない発泡体として、所定以上の硬度を有するポリウレタン発泡体が考えられるが、硬度を調整する架橋剤の過剰添加で、硬度がより高まって脆くなり、結果、前述のソリッド体と同様の欠点を内在することになる。
【0006】
さらに、上で指摘した特許文献2の特定の密度、硬度、圧縮永久歪を有するポリウレタン発泡体では、伸びや引張強度が充分でなく、各種の機能(方向転換や回転などの運動機能を含む)を有する電子部材においては、要求性能に応じた強度を保持していない。
加えて、携帯情報端末などでは、極寒あるいは極暑の地(エリア)で多用されることがあり、このような環境下でも、密度、硬度、圧縮永久歪と共に、伸びや引張強度を充分に維持できるパッキン材が必須となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上のような、従来のパッキン材用発泡体が有する上記の諸問題を解決し、パッキン材に通常要求される柔軟性や弾力性、水・気密性に優れ、かつ伸びや引張強度の高い、方向転換や回転などの各種の運動機能が要求される光や音の検知部材など用として、好適なパッキン材を提供することを目的とする。
【0008】
本発明のパッキン材は、上記目的を達成するために、合成樹脂微発泡体層と合成樹脂シートとの積層体からなり、該合成樹脂微発泡体層が、引張伸び300%以上、引張強度2MPa以上、密度0.25〜0.65g/cm3、25%圧縮荷重0.10〜0.20MPaであることを特徴とする。
このとき、上記の合成樹脂微発泡体層はポリウレタンウレアからなることが好ましく、またこのポリウレタンウレア微発泡体層は、温度100〜150℃、絶対湿度150g/m3以上で湿熱処理されたものであり、かつ機械発泡されたものであることがより好適である。
【0009】
本発明のパッキン材を構成する合成樹脂微発泡体層は、物性において、通常のパッキン材に要求される柔軟性や弾力性、水・気密性に優れるだけでなく、伸び、引張強度にも優れる必要があり、これらの全てを充足することができる合成樹脂微発泡体であれば、どのようなものでも使用できる。
なかでも、近年の軽薄短小・携帯可能・回転・方向転換などの精密微細な運動機能を有する電子機器などに内蔵される各種部材用の、あるいはこれらの部材とケーシング間用のパッキン材として好適であるためには、合成樹脂微発泡体層の密度が0.25〜0.65g/cm3、25%圧縮荷重が0.10〜0.20MPaであると共に、引張伸びが300%以上、引張強度が2MPa以上である必要がある。
【0010】
すなわち、密度が0.25〜0.65g/cm3の合成樹脂発泡体層であれば充分な水・気密性を保持でき、この合成樹脂発泡体層の25%圧縮荷重が0.10〜0.20MPaであれば優れた柔軟性や弾力性をも確保できる。
加えて、引張伸びが300%以上で、かつ引張強度が2MPa以上の優れた機械的強度を有していれば、軽薄短小・携帯可能な電子機器などであって、しかも回転・方向転換などの俊敏で精密微細な運動機能を備えている場合においても、該機器に内蔵される各種部材用の、あるいはこれらの部材とケーシング間用のパッキン材として、充分に機能することができる。
【0011】
本発明においては、上記のような物性を有するものであれば、どのような種類の合成樹脂微発泡体層をも使用することができるが、製造し易く、上記物性を満たすことが容易で、かつ耐久性や加工性など上記の物性以外の特性にも優れたポリウレタンウレア発泡体層を使用することが好ましい。
【0012】
このポリウレタンウレア発泡体層は、例えば特開平11−60768号公報や特許4040895号公報などに記載のものが使用できる。
具体的には、(1)グリコールとジイソシアネートとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液に、架橋剤、触媒、含湿空気を混入させ、この溶液をコーティングし、加湿、加熱雰囲気下で反応、固化させたもの(特開平11−60768号公報参照)、あるいは(2)ジイソシアネート化合物を、グリコール(例えばポリオキシプロピレングリコール)と反応させて末端水酸基を有するプレポリマーを得、次いで短鎖ジオールを加えると共に、プレポリマー中の水酸基に対して過剰量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー溶液とした後、該イソシアネート基に対して特定量のポリオキシアルキレンポリオール(架橋剤)、触媒、整泡剤を加え、該混合液をコーティングし、湿気雰囲気下、加熱、発泡、硬化させたもの(特許4040895号公報)などが好ましく使用できる。
【0013】
本発明では、上記のようなポリウレタンウレア微発泡体であって、特に温度100〜150℃、絶対湿度150g/m3以上の温度・湿度条件下で、湿熱処理し、機械発泡したものが好ましく使用できる。すなわち、このような条件での湿熱処理がなされ、しかも化学発泡ではなく、機械発泡したものを合成樹脂シートと積層すれば、殆どが密度0.25〜0.65g/cm3の微発泡体であって、25%圧縮荷重が0.10〜0.20MPa、引張伸びが300%以上、引張強度が2MPa以上の諸特性を有するものとなり、ロスが僅少となる。絶対湿度が150g/m3未満であっても、上記諸特性を有するパッキン材を得ることはできるが、反応終結に時間を要し、またロスが大きくなる傾向にある。
なお、湿熱処理の時間は、設定温度(湿度)条件に加えて、パッキン材のサイズなどにも左右される。
【0014】
上記条件での湿熱処理は、上記のような溶液(コーティング液)を基体(本発明では合成樹脂シート)上にコーティングした後に上記湿熱条件の雰囲気下に置くことで行ったり、あるいはコーティング前の溶液に含湿空気を、上記温度下で上記の雰囲気湿度となるような量で添加しておき、これをコーティングした後、上記温度下に置く(この温度下に置けば、上記湿度となる)ことで行うなど種々の態様で行ってよい。
【0015】
また、機械発泡は、この溶液状態のときに行えばよく、このときの条件は特になく、成形して得られる合成樹脂微発泡体層の密度が0.25〜0.65g/cm3となるような条件とすればよい。例えば、溶液を、回転翼や回転子などの攪拌部材を備えた装置内において、攪拌部材が回転翼の場合、該翼を1000〜5000RPM程度で稼働しつつ、空気(上記した含湿空気であってもよい)を吹き込み、所定時間(例えば、30〜300秒程度)、攪拌すればよい。
これにより、微細な気泡が溶液に入る。この溶液を下記の基体(合成樹脂シート)上にコーティングし、上記の湿熱処理をすることにより、上記の諸特性を有する微発泡のポリウレタンウレアとなる。
【0016】
本発明では、ジイソシアネート化合物を、疎水性有機溶媒中で分子量1000〜2500のグリコールと短鎖ジオールを反応させて、末端にイソシアネート基を有し、且つ、そのイソシアネート基の含有率が4.0〜5.5重量%になるプレポリマー溶液とした後、更に該イソシアネート基が3.3〜5.0重量%となる量のポリオキシアルキレンポリオール、触媒および整泡剤を加えた混合液となし、当該混合液を下記の基材上に塗布することがより好ましい。
【0017】
上記の基体としての合成樹脂シートは、パッキン材の基体として使用できるものであれば特に制限なく使用できるが、本発明ではポリエステルシート、ポリエチレンテレフタレートシートなどが好適に使用できる。
【0018】
本発明において上記の合成樹脂微発泡体層と基体の厚さは、パッキン材の用途に応じて異なり、一概には決められないが、パッキン材に通常要求される柔軟性や弾力性、水・気密性の他に、伸び、引張強度、あるいは方向転換や回転などの各種の運動に適応できる特性を保持させるためには、合成樹脂微発泡体層は0.2〜0.6mm程度、基体は0.03〜0.10mm程度であることが好ましい。
両層ともこれより薄いと、水・気密性はもとより、伸び、引張強度、各種運動適応性が低下するおそれがあり、これより厚くてもこれらの特性は飽和し、また柔軟性や弾力性が低下する可能性がある。
【0019】
なお、本発明において、合成樹脂微発泡体層及び基体には、顔料、防黴剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、香料、染料、無機系充填剤、抗菌剤等を添加することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のパッキン材は、柔軟性や弾力性、水・気密性に優れ、かつ伸びや引張強度も高いため、方向転換や回転などの各種の運動機能が要求される光や音の検知部材用として等、幅広く使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実験例1,2
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、酢酸エチル中で、表1に示す分子量を有するポリテトラメチレングリコールと表1に示す短鎖ジオールとを、それぞれ下記の表1中に示す配合で、80℃で3時間、窒素ガス雰囲気下で攪拌して反応させて、イソシアネート基の含有率(NCO重量%)が表1に示す割合となるプレポリマー溶液を得た。
【0022】
次に、得られたプレポリマー溶液100gに、該プレポリマー溶液のNCO重量%が表1に示す割合となる量のポリオキシアルキレンポリオール(三井武田ケミカル社製 商品名“アクトコール”:水酸基価24のグリセリンベースプロピレンオキサイドエチレンオキサイド付加体)、シリコン系整泡剤(大日本インキ社製 商品名“クリスボンアシスターSD−7”)、触媒(ジブチル錫ジラウレート)を、それぞれ下記の表1中に示す配合で混合し、200mLポリエチレン製容器内で毎分3,000回転の4枚羽攪拌機により60秒攪拌した。
【0023】
【表1】

【0024】
得られた混合液を、厚さ50μmのポリエステルフィルム上に0.3mmの厚さとなるようドグターナイフでコーティングし、温度120℃、絶対湿度400g/m3のオーブンに4分間入れて反応を行い、各パッキン材を得た。
【0025】
実験例3
実験例3については、加湿を行わず、加熱硬化のみさせ、一週間養生させた以外は実験例1と同様にして、パッキン材を得た。
なお、養生しないとベタツキがあり、パッキン材としての使用は困難なものであった。
【0026】
得られたパッキン材の合成樹脂微発泡体層の厚み(mm)、密度(g/cm3)、引張強度(MPa)、引張伸び(%)ならびに25%圧縮荷重(MPa)を下記の評価方法で評価した。結果を表2に示す。
なお、以下の評価は、混合液を離型紙上に塗工して合成樹脂発泡体層を形成し、剥離した合成樹脂発泡体層単体について行った。
【0027】
(1)厚み:デジマチックインジケーター(ミツトヨ社製 商品名“ID−C112”)を用いて測定した。
(2)密度:120mm×10mmにカットしたものを試料片とし、該試料片の縦・横および質量を測定し、その結果から体積を算出し、質量を体積で割ったものを密度とした。
(3)引張強度(MPa)および引張伸び(%):引張試験機(島津製作所社製 商品名“オートグラフ”)を用いて、試料片の引張伸び及び引張強度を測定した。なお、引張伸びとは、引張試験において試料片が破断した時の伸びた長さを試験前の長さで割った百分率(%)をいう。また、引張強度とは、引張試験で試料片が降伏点・耐力を超えさらに大きな荷重に耐えたとし、その時の最大荷重を試験前の断面積で割った値(単位:MPa)をいう。
(4)25%圧縮荷重(MPa):JIS K6254の規定に準じて測定した。
【0028】
【表2】

【0029】
参考例1
ポリエーテルポリオール(三洋化成製 商品名“GP−3000”:平均分子量3000、水酸基価56.0)100重量部に対して、1,3ブタンジオール3重量部、増粘剤20重量部、金属触媒0.1重量部、整泡剤3重量部を添加した混合物を得た。
この混合物に、体積当たり80%の窒素と、イソシアネートインデックスが約1.0となるようにポリイソシアネート(クルードMDI)とを添加混合し、コーティング液とした。
【0030】
得られたコーティング液を、実験例1と同様に厚さ50μmのポリエステルフィルム上に厚さ0.3mmとなるようドグターナイフでコーティングし、160℃に設定したオーブンに3分間入れて反応を行い、パッキン材を得た。
【0031】
得られたパッキン材の合成樹脂微発泡体層の厚み(mm)、密度(g/cm3)、引張強度(MPa)、引張伸び(%)ならびに25%圧縮荷重(MPa)を実験例1〜3と同様の評価方法で評価した。この結果を併せて表2に示す。なお、各評価は、コーティング液を離型紙上に塗工して合成樹脂発泡体層を形成し、剥離した合成樹脂発泡体層単体について行った。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のパッキン材は、柔軟性や弾力性、水・気密性に優れ、かつ伸びや引張強度が高いため、接着剤を使用せずに被着体を固定できる。
従って、電子部材、光や音の検知部材などの広範な分野のパッキン材として好適に使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂微発泡体層と合成樹脂シートとの積層体からなるパッキン材であって、前記合成樹脂微発泡体層が、引張伸び300%以上、引張強度2MPa以上、密度0.25〜0.65g/cm3、25%圧縮荷重0.10〜0.20MPaであることを特徴とするパッキン材。
【請求項2】
合成樹脂微発泡体層が、ポリウレタンウレアからなることを特徴とする請求項1に記載のパッキン材。
【請求項3】
ポリウレタンウレア微発泡体層が、温度100〜150℃、絶対湿度150g/m3以上で湿熱処理されたものであり、かつ機械発泡されたものであることを特徴とする請求項2に記載のパッキン材。

【公開番号】特開2011−16892(P2011−16892A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161739(P2009−161739)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】