パッキン

【課題】優れた柔軟性及び伸縮性を有するとともに、耐酸性及び耐アルカリ性であって、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している環境内においても、劣化を生じにくいものとし、一対の対象物間の密閉性を良好に保つことができるパッキンを得る。
【解決手段】付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成し、一側に係合部2を形成するとともに、他側に前記係合部2と一体的に連続して介在片5を突出形成したパッキン本体1と、このパッキン本体1の係合部2に係合した硬質材製の型枠6とから成り、この型枠6を密閉目的部の一対の対象物の一方に密着固定し、上記パッキン本体1の介在片5を一対の対象物間に介在させるとともに、上記密閉目的部の内側に型枠6を配置し、一対の対象物間を密閉可能とする。
【解決手段】付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成し、一側に係合部2を形成するとともに、他側に前記係合部2と一体的に連続して介在片5を突出形成したパッキン本体1と、このパッキン本体1の係合部2に係合した硬質材製の型枠6とから成り、この型枠6を密閉目的部の一対の対象物の一方に密着固定し、上記パッキン本体1の介在片5を一対の対象物間に介在させるとともに、上記密閉目的部の内側に型枠6を配置し、一対の対象物間を密閉可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弾性のゲル材にて形成したパッキン本体と硬質材製の型枠とにより形成し、一対の対象物間に配置して、この一対の対象物間を密閉するためのパッキンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場内に設置されている制御盤等には、粉塵や薬品などを含有する雰囲気との接触をさけるため、扉や蓋体等に、内部と外部との連通を遮断し、外部からの雰囲気の侵入を困難とするためのパッキンを設けることが知られている。このパッキンは、特許文献1及び特許文献2に示す如く、一般的にウレタンやゴムなど、弾性を有する樹脂材にて形成されたものであり、この弾性によって、パッキンを一対の対象物間に配置した際に、このパッキンを各対象物に密着させて、対象物間の密閉性の向上を図るものである。
【特許文献1】特公平7−69016号公報
【特許文献2】特公平7−94566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特に酸やアルカリ性の液体が霧状に浮遊している工場等の雰囲気内において、上記特許文献1に示す如きウレタン製のパッキンを使用した場合に、ウレタンは酸及びアルカリに弱いため、これら酸やアルカリの液体に接触することにより、パッキンの劣化が生じるおそれがあった。そのため、このような劣化が生じた場合には、パッキンにひびが入ったり破断する等して密閉性が低下し、制御盤などの外部と内部との遮断を確実に行うことができないものとなっていた。
【0004】
また、特許文献2に示す如きゴム製のパッキンのうち、特にブチルゴム製のものは、弾性を有しているものの、柔軟性や伸縮性に乏しく、優れたシール性や復元性を発揮しにくいものとなり、密閉性を良好に保つことが困難なものとなっていた。従って、酸やアルカリ性の液体が霧状に浮遊している工場等の雰囲気内において、上記特許文献1及び特許文献2に記載の如きパッキンを使用した場合には、外部雰囲気中の酸やアルカリが内部に侵入して、制御盤に組み付けられた精密部品などと接触し、該精密部品などに不具合が生じるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、優れた柔軟性及び伸縮性を有するとともに、耐酸性及び耐アルカリ性であって、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している雰囲気内においても、劣化を生じにくいものとし、一対の対象物間の密閉性を良好に保つことができるパッキンを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の如き課題を解決するため、本発明のパッキン本体は、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成している。このようなゲル材にて形成することにより、優れた柔軟性及び伸縮性を有するとともに、耐酸性・耐アルカリ性のパッキンを得ることが可能となる。また、前記パッキン本体は、一側に係合部を形成するとともに、他側に前記係合部と一体的に連続して介在片を突出形成している。
【0007】
そして、このパッキン本体と、パッキン本体の係合部に係合した硬質材製の型枠とにより、本発明のパッキンを構成している。このように、パッキン本体と硬質材製の型枠とを係合することにより、パッキン本体を硬質材製の型枠を介して密閉目的部の一対の対象物の一方に容易に密着固定することが可能となる。
【0008】
そして、この型枠を一対の対象物の一方に密着固定して、上記パッキン本体の介在片を一対の対象物間に介在させるとともに、上記密閉目的部の内側に上記型枠を配置することにより、一対の対象物間を密閉可能とするものである。
【0009】
また、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、スチレンエチレンプロピレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンブタジエン、スチレンエチレンブタジエンスチレンのうち、1種以上を含有したものであっても良い。
【0010】
また、介在片は、平板状に形成したものであっても良いし、一側面又は他側面の断面形状を、外方に突出した円弧状又は山形状としたものであっても良い。また、一対の対象物は、制御盤の扉体と制御盤の収納枠であっても良い。そして、型枠は、制御盤の扉体の閉止時に、制御盤の内部に位置するものであっても良い。また、一対の対象物は、フィルターの外周と取り付け部の壁面であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如く構成したものであって、パッキン本体を付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成している。そのため、このゲル材は、優れた柔軟性や伸縮性を有するとともに、耐酸性及び耐アルカリ性の性質を有するものである。
【0012】
そして、上記パッキン本体を、係合部を介して型枠に係合することにより、この型枠を介してパッキン本体を一対の対象物の一方に固定配置することが可能となる。そのため、型枠によりパッキン本体の配置形状が保持され、密閉目的部に安定した状態で固定することができる。従って、長期間の使用によっても変形したり、固定位置がずれたりすることなく、対象物間に介在させた介在片を、一対の対象物にそれぞれ確実に密着することが可能となる。
【0013】
また、ゲル本体は耐酸性及び耐アルカリ性であるため、外部環境中に酸やアルカリの液体が霧状に浮遊し、ゲル本体がこの酸やアルカリの液体に接触した場合であっても、劣化しにくいものとなる。従って、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している雰囲気にあっても、ゲル本体の介在片によって一対の対象物間の密閉性を良好に保つことが可能となる。
【発明の実施の形態】
【0014】
パッキン本体を構成するゲル材は、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分としている。そして、この付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルは、極性を持たないので酸やアルカリに強いものである。
【0015】
また、上記付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリイソプレンブロック(I)とから成るブロック共重合体、及び/又はポリスチレンブロックと水添又は非水添のポリブタジエンブロック(B)とから成るブロック共重合体から成るものである。即ち、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、SとIとから成るブロック共重合体、SとBとから成るブロック共重合体、又は上記各ブロック共重合体の複合体である。
【0016】
また、上記ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリイソプレンブロック(I)とから成るブロック共重合体としては、具体的には飽和型のジブロック及びトリブロックタイプのスチレンエチレンプロピレン(SEP)や、スチレンエチレンプロピレンスチレン(SEPS)が好適に用いられる。また、ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリブタジエンブロック(B)とから成るブロック共重合体としては、具体的にはスチレンエチレンブタジエン(SEB)やスチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS)が好適に用いられる。
【0017】
そして、本発明の付加重合系熱可塑性ブロック弾性体としては、SEP、SEPS、SEB、SEBSをそれぞれ単体で使用することも可能であり、また、SEP、SEPS、SEB、SEBSを2種以上複合させて使用することも可能である。また、この付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、(S−I)や(S−B)で表されるジブロックのもの、あるいはS−(I−S)nやS−(B−S)n、(但し、n=1〜5)の一般式で表されるトリブロック及びそれ以上のものである。
【0018】
また、本発明の付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、全体の数平均分子量が5000〜500000の範囲が好ましい。また、Sブロック単位の含有量は5〜70wt%であり、且つIブロック単位又はBブロック単位の二重結合の70%以上が水添されたものが好ましい。また、Sブロック単位の重量平均分子量としては5000〜125000、Iブロック単位又はBブロック単位の重量平均分子量としては15000〜250000のものが好ましい。
【0019】
また、本発明のパラフィン系オイルは、その種類については特に限定されないが、入手が容易で低コストであるという点から、流動パラフィンが好ましい。また、パッキン本体の成形方法は特に限定されず、射出成形法、コンプレッション成形法、抽出成型法、シート成形法などにより成形することができる。
【0020】
また、本発明の型枠は、密閉目的部の内側に配置し、酸やアルカリの液体が浮遊する外部雰囲気に接触する側にパッキン本体の介在片を配置する。従って、上記型枠は外部雰囲気と接触することはないため、硬質材製であって一対の対象物の一方に密着固定することができるものであれば材質については特に限定するものではなく、プラスチックや金属等を使用することができる。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1を図1〜4において説明すると、図1に示す如く、本実施例ではパッキン(25)を、制御盤(10)の片開きの扉体(11)に配置している。本実施例1のパッキン(25)について詳細に説明すると、図2に示す如く、(1)はパッキン本体であって、長尺な棒状に形成したものである。このパッキン本体(1)は、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成している。
【0022】
尚、本実施例及び以下の実施例2及び3で記載の制御盤(10)とは、機械や電気装置の遠隔操作などで、制御用のスイッチ(23)や計器類をまとめて備え付けてある制御盤本体(12)の開口部を扉体(11)等で被覆して成るものを言う。
【0023】
そして、本実施例では付加重合系熱可塑性ブロック弾性体であるスチレンエチレンプロピレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンブタジエン、及びスチレンエチレンブタジエンスチレンを複合して使用している。また、本実施例ではパラフィン系オイルとして流動パラフィンを使用している。
【0024】
上記付加重合系熱可塑性ブロック弾性体とパラフィン系オイルは極性を持たないので耐酸性及び耐アルカリ性である。そのため、上記の如く、パッキン本体(1)を付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とするゲル材にて形成することにより、耐酸性及び耐アルカリ性のパッキン本体(1)を得ることが可能となる。
【0025】
ここで、パッキン本体(1)の上記特性を実証するために、本実施例1のパッキン本体(1)の耐薬品性についての試験を行った。使用した薬品は、硫酸5%水溶液、酢酸5%水溶液、水酸化ナトリウム10%水溶液、アンモニア25%水溶液である。また、試験方法は、試験片を各薬液に7日間浸漬する方法により行った。そして、浸漬開始から1日、2日、及び7日後の質量をそれぞれ測定し、次式によって浸漬前と浸漬後の質量変化率を計算した。
【0026】
A=(W2−W1)/W1×100
尚、Aは質量変化率(%)、W1は浸漬前の試験片の質量(g)、W2は浸漬後の試験片の質量(g)である。
上記各試験結果について以下の表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
上記試験結果より、全ての薬品において、浸漬1日後、浸漬2日後、浸漬7日後のいずれも質量変化率が1%未満であった。よって、パッキン本体(1)は酸やアルカリ、及び強アルカリに浸漬しても、体積変化がほとんど生じないという結果を得ることができた。従って、上記結果から、酸やアルカリと接触しても、劣化しにくいことが実証された。
【0029】
また、上記パッキン本体(1)の柔軟性及び伸縮性を実証するために、パッキン本体(1)の硬度、伸び率、圧縮永久歪について測定した。尚、硬度はJIS硬さであって、JIS K 6301に準じた試験方法により測定した。
【0030】
その結果、硬度は0であった。これと比較して、従来例であるブチルゴムの硬度は一般的に20〜90であり、ウレタンの硬度は60〜100である。従って、パッキン本体(1)の硬度はブチルゴムやウレタンの硬度よりも遙かに低い値を示すことから、柔軟性に優れていることが明らかとなった。
【0031】
次に、伸び率は1300以上であった。一方、ブチルゴムの伸び率は一般的に100〜800であり、ウレタンの伸び率は一般的に300〜800である。従って、パッキン本体(1)の伸び率は、ブチルゴムやウレタンよりも遙かに高い値を示していることから、パッキン本体(1)は柔軟性及び伸縮性に優れていることが明らかとなった。
【0032】
また、圧縮率が25%の時の圧縮永久歪をJIS K 6262に基づいて測定した。その結果、圧縮永久歪は12%であり、圧縮しても大半の部分がもとの形状に復元可能であって、優れた弾力性を有していることが明らかとなった。以上の結果より、パッキン本体(1)は、従来品と同等又はそれ以上の優れた柔軟性及び伸縮性を有することを確認することができた。
【0033】
また、このパッキン本体(1)は、図2に示す如く、長尺な棒状に形成したものであって、パッキン本体(1)の一側に係合部(2)を形成している。この係合部(2)は、断面コ字型の凹溝(3)をパッキン本体(1)の長さ方向に、両側面の対向位置に一箇所ずつ設けることにより形成したものであって、断面形状を矩形としている。また、この係合部(2)は、パッキン本体(1)の一端から他端まで連続している。
【0034】
そして、上記パッキン本体(1)の係合部(2)とは凹溝を介して隔壁(4)を平行に突出し、この隔壁(4)と平行に連結片(24)を介して介在片(5)を突出形成している。この介在片(5)は、パッキン本体(1)の一端から他端まで連続してパッキン本体(1)の幅方向に突出形成したものである。また、この介在片(5)は、対象物と密着する側の断面形状を円弧状の弧状部(16)としている。そして、上記介在片(5)の弧状部(16)とは反対側の反対面(26)を、平面状としている。
【0035】
また、上記の如く形成したパッキン本体(1)の係合部(2)には、図2に示す如く、パッキン本体(1)を扉体(11)に固定配置するための型枠(6)を係合している。この型枠(6)は、硬質材製であるABS樹脂にて形成したものであって、断面をコ字型としている。また、この型枠(6)の開口縁には、内方に突出した一対の係合片(7)を、型枠(6)の一端から他端まで連続して形成している。
【0036】
そして、上記の如く形成した型枠(6)とパッキン本体(1)とを係合する。即ち、パッキン本体(1)の係合部(2)を型枠(6)の開口部(8)から内方に弾性変形させながら挿入するとともに、図2に示す如く、パッキン本体(1)の一対の凹溝(3)に、型枠(6)の一対の係合片(7)をそれぞれ係合させる。
【0037】
このとき、係合部(2)の断面の形状及び大きさを、型枠(6)の内面形状及び大きさに対応したものとしている。そのため、上記の如く型枠(6)の内部に配置された係合部(2)が、型枠(6)の係合片(7)により係止されるものとなり、係合部(2)は型枠(6)内部から外方に離脱困難な状態となる。上記の如く、型枠(6)とパッキン本体(1)とを係合することにより、本実施例1のパッキン(25)が形成される。
【0038】
そして、上記の如く形成したパッキン(25)を、図1に示す如く、片開きの制御盤(10)の扉体(11)に配置した場合について説明する。まず、図1及び図3に示す如く、制御盤(10)本体の前面に形成されている平板状の収納枠(13)と対向する扉体(11)の内面に、パッキン(25)を長方形の枠状に配置する。
【0039】
この配置は、外部の雰囲気と接触する扉体(11)の外周側に、パッキン本体(1)の介在片(5)を配置し、このパッキン本体(1)の内周側に型枠(6)を配置する。そして、型枠(6)は、両面粘着テープ、接着剤、ビス固定等の適宜の方法で扉体に固定する。そして、この型枠(6)に固定したパッキン本体(1)の介在片(5)の弧状部(16)とは反対側の反対面(26)を、扉体(11)の内面に面接触させる。
【0040】
上記の如くパッキン(25)を制御盤(10)の扉体(11)の内面に配置することにより、制御盤(10)の扉体(11)を閉止すると、図4に示す如く、パッキン本体(1)の介在片(5)の弧状部(16)と平板状の収納枠(13)の表面とが密着する。そして、介在片(5)の弧状部(16)が収納枠(13)の表面と収納枠(13)の全周にわたって密着するとともに、介在片(5)の反対面(26)が、扉体(11)の内面に全周にわたって連続して面接触した状態で密着するものとなる。
【0041】
従って、扉体(11)と制御盤本体(12)の収納枠(13)との間は、介在片(5)を介して密閉されるものとなる。尚、本実施例における密閉目的部の一対の対象物は、上記扉体(11)と、制御盤本体(12)の開口縁に突設した長方形の収納枠(13)である。上記の如く、扉体(11)と制御盤本体(12)との間を、介在片(5)を介して密閉することにより、制御盤(10)の外部と制御盤(10)の内部とを完全に遮断することが可能となる。
【0042】
また、上記の如くパッキン本体(1)は耐酸性及び耐アルカリ性であるため、このパッキン本体(1)が制御盤(10)を設置している工場内の環境中に、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している場合でも、これら酸やアルカリの液体に侵されることなく、扉体(11)と制御盤本体(12)との間の密閉性を良好に保つことが可能となる。そのため、環境中の酸やアルカリの液体が制御盤(10)内に侵入困難なものとなり、制御盤(10)内の精密部品等の、酸やアルカリの液体との接触による不具合を生じにくいものとすることができる。
【0043】
また、上記の如く制御盤(10)の扉体(11)を閉止して扉体(11)と制御盤本体(12)の収納枠(13)とを密閉した際には、図4に示す如く、パッキン本体(1)のうち、制御盤(10)の外部に露出した部分は、環境中の酸やアルカリの液体と接触するものとなるが、パッキン本体(1)と係合している型枠(6)は、パッキン本体の内周側に係合しているため、扉体(11)の閉止時は制御盤本体(12)の内部に位置している。そのため、扉体(11)の閉止時においては、型枠(6)は酸やアルカリの液体とほとんど接触することはないことから、酸やアルカリの液体との接触による劣化が生じにくいものとなっている。
【実施例2】
【0044】
また、前記実施例1では、介在片(5)の、対象物と密着する側の断面形状を円弧状の弧状部(16)としているが、本発明の実施例2では、図5に示す如く、対象物と密着する側の断面形状を山形状の山状部(28)としている。そして、上記の如き山状部(28)を形成したパッキン(25)を、制御盤(10)本体の前面に形成されている平板状の収納枠(13)と対向する扉体(11)の内面に、長方形の枠状に配置する。
【0045】
これにより、制御盤(10)の扉体(11)を閉止した際に、図6に示す如く、介在片(5)の山状部(28)の先端部分と平板状の収納枠(13)の表面とが密着する。そして、介在片(5)の山状部(28)が収納枠(13)の表面と収納枠(13)の全周にわたって密着するものとなり、制御盤(10)の外部と内部とを完全に遮断することが可能となる。
【実施例3】
【0046】
また、上記実施例1及び2では、片開きの制御盤(10)の扉体(11)にパッキン(25)を固定配置しているが、本発明の実施例3では、図7に示す如く、両開きの制御盤(10)の一側扉体(17)及び他側扉体(18)に各々パッキン(25)を固定配置している。
【0047】
本実施例3について以下に詳細に説明すると、一側扉体(17)及び他側扉体(18)を閉止する際には、まず、図8に示す如く一側扉体(17)を閉止し、この一側扉体(17)の他側扉体側(18)に設けた合わせ部(15)の上面に、他側扉体(18)の一側扉体(17)側の内面端縁(22)を重ね合わせることにより、一側扉体(17)及び他側扉体(18)を閉止するものである。
【0048】
また、図7に示す如く、制御盤本体(12)の前面の開口縁には、一定幅で平板状の収納枠(13)を形成している。また、一側扉体(17)及び他側扉体(18)の内面には、閉止時において制御盤本体(12)の収納枠(13)に対向する位置に、パッキン(25)を固定配置している。そして、このパッキン(25)のパッキン本体(1)は、図2に示す如く、上記実施例1と同様に介在片(5)の断面形状を円弧状に形成して弧状部(16)を突設したものである。
【0049】
このように介在片(5)に弧状部(16)を突設することにより、この介在片(5)の弧状部(16)を平板状の収納枠(13)に確実に密着させることができる。そのため、介在片(5)と収納枠(13)との密着性を良好なものとすることが可能となる。上記の如く、一側扉体(17)及び他側扉体(18)の内面に弧状部(16)を設けた介在片(5)を配置することにより、一側扉体(17)及び他方扉体を閉止した際には、介在片(5)の弧状部(16)が制御盤本体(12)の収納枠(13)に全周にわたって密着するものとなる。
【0050】
しかしながら、介在片(5)を弧状部(16)とした場合において、平坦面への密着性は極めて優れたものとなるが、平板の端面(21)を突き当てて密着性を向上することは困難なものとなる。そこで、このような平板の端面(21)を突き当てて密閉性を保持しようとする場合には、介在片(5)を、表面が平坦な平板状の平板部(27)とする。
【0051】
そして、図10に示す如く、平板部(27)を形成した介在片(5)の一側を他側扉体(18)の内面端縁(22)に連続して密着配置する。このような状態で、図11に示す如く、他側扉体(18)の内面端縁(22)を、一側扉体(17)の合わせ部(15)の上面に重ね合わせることにより、合わせ部(15)の突片(20)の端面(21)に、他側扉体(18)に固定したパッキン本体(1)の介在片(5)が密着するものとなる。
【0052】
この時、上記の如く、介在片(5)は、平板部(27)を形成することにより表面を平坦なものとしているため、合わせ部(15)の突片(20)の端面(21)を介在片(5)に確実に連続して密着させることが可能となる。そのため、他方扉体(18)の内面に長方形の枠状に固定したパッキン本体(1)は、図12に示す如く、合わせ部(15)側の一辺に平板部(27)を配置するとともに、他の3辺に弧状部(16)を設けた介在片(5)を配置した状態となる。尚、図12及び図13に示す如く、介在片(5)の弧状部(16)と平板部(27)との接続部分は、連続して一体的に形成している。
【0053】
従って、一側扉体(17)を閉止した状態で、更に他側扉体(18)を閉止し、一側扉体(17)の重ね部に他側扉体(18)の内面端縁(22)を重ね合わせることにより、制御盤本体(12)の収納枠(13)の対向位置に配置した弧状部(16)が、制御盤本体(12)の収納枠(13)に密着するとともに、一側扉体(17)の合わせ部(15)の突片(20)に、他側扉体(18)の内面端縁(22)に配置した平板部(27)が密着するものとなる。
【0054】
従って、本実施例における密閉目的部の一対の対象物間である、一側扉体(17)及び他側扉体(18)と、制御盤本体(12)の収納枠(13)及び一側扉体(17)の合わせ部(15)の上面との間を密閉することが可能となる。このように、一側扉体(17)及び他側扉体(18)と、制御盤本体(12)との間を、介在片(5)を介して密閉することにより、制御盤(10)の外部と制御盤(10)の内部とを完全に遮断することが可能となる。
【0055】
また、上記の如く形成したパッキン本体(1)は、上記実施例1及び実施例2と同様に柔軟性及び伸縮性に優れるとともに耐酸性及び耐アルカリ性であるため、このパッキン本体(1)が制御盤(10)を設置している工場内の環境中に、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している場合でも、これら酸やアルカリの液体に侵されることなく、扉体と制御盤本体(12)との間の密閉性を良好に保つことが可能となる。そのため、環境中の酸やアルカリの液体が制御盤(10)内に侵入困難なものとなり、酸やアルカリの液体との接触による制御盤(10)内の精密部品等の不具合を生じにくいものとすることができる。
【0056】
尚、本実施例及び上記実施例1及び2では、一対の対象物を制御盤(10)の扉体(11)と制御盤(10)の収納枠(13)としているが、他の異なる実施例においては、一対の対象物をフィルターの外周と取り付け部の壁面とすることも可能であるし、更には、他の一対の対象物間に介在させて両者を密着することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1において、パッキンを制御盤に配置した状態を示す斜視図。
【図2】実施例1のパッキンの部分拡大斜視図。
【図3】実施例1の収納枠、及びパッキンを配置した扉体の関係を示す断面図。
【図4】実施例1の扉体を閉止した状態を示す部分拡大断面図。
【図5】本発明の実施例2において、収納枠、及びパッキンを配置した扉体の関係を示す断面図。
【図6】実施例2の扉体を閉止した状態を示す部分拡大断面図。
【図7】本発明の実施例3において、パッキンを両開き方式の制御盤に配置した状態を示す正面図。
【図8】実施例3の一側扉体を閉止した状態を示す正面図。
【図9】実施例3のパッキンの部分拡大斜視図。
【図10】実施例3の合わせ部と他方扉体の関係を示す断面図。
【図11】実施例3の一側扉体及び他側扉体を閉止した状態を示す断面図。
【図12】実施例3の他側扉体の型枠及びパッキン本体を示す斜視図。
【図13】実施例3のパッキンの部分拡大斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 パッキン本体
2 係合部
5 介在片
6 型枠
10 制御盤
11 扉体
13 収納枠
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弾性のゲル材にて形成したパッキン本体と硬質材製の型枠とにより形成し、一対の対象物間に配置して、この一対の対象物間を密閉するためのパッキンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場内に設置されている制御盤等には、粉塵や薬品などを含有する雰囲気との接触をさけるため、扉や蓋体等に、内部と外部との連通を遮断し、外部からの雰囲気の侵入を困難とするためのパッキンを設けることが知られている。このパッキンは、特許文献1及び特許文献2に示す如く、一般的にウレタンやゴムなど、弾性を有する樹脂材にて形成されたものであり、この弾性によって、パッキンを一対の対象物間に配置した際に、このパッキンを各対象物に密着させて、対象物間の密閉性の向上を図るものである。
【特許文献1】特公平7−69016号公報
【特許文献2】特公平7−94566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特に酸やアルカリ性の液体が霧状に浮遊している工場等の雰囲気内において、上記特許文献1に示す如きウレタン製のパッキンを使用した場合に、ウレタンは酸及びアルカリに弱いため、これら酸やアルカリの液体に接触することにより、パッキンの劣化が生じるおそれがあった。そのため、このような劣化が生じた場合には、パッキンにひびが入ったり破断する等して密閉性が低下し、制御盤などの外部と内部との遮断を確実に行うことができないものとなっていた。
【0004】
また、特許文献2に示す如きゴム製のパッキンのうち、特にブチルゴム製のものは、弾性を有しているものの、柔軟性や伸縮性に乏しく、優れたシール性や復元性を発揮しにくいものとなり、密閉性を良好に保つことが困難なものとなっていた。従って、酸やアルカリ性の液体が霧状に浮遊している工場等の雰囲気内において、上記特許文献1及び特許文献2に記載の如きパッキンを使用した場合には、外部雰囲気中の酸やアルカリが内部に侵入して、制御盤に組み付けられた精密部品などと接触し、該精密部品などに不具合が生じるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、優れた柔軟性及び伸縮性を有するとともに、耐酸性及び耐アルカリ性であって、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している雰囲気内においても、劣化を生じにくいものとし、一対の対象物間の密閉性を良好に保つことができるパッキンを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の如き課題を解決するため、本発明のパッキン本体は、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成している。このようなゲル材にて形成することにより、優れた柔軟性及び伸縮性を有するとともに、耐酸性・耐アルカリ性のパッキンを得ることが可能となる。また、前記パッキン本体は、一側に係合部を形成するとともに、他側に前記係合部と一体的に連続して介在片を突出形成している。
【0007】
そして、このパッキン本体と、パッキン本体の係合部に係合した硬質材製の型枠とにより、本発明のパッキンを構成している。このように、パッキン本体と硬質材製の型枠とを係合することにより、パッキン本体を硬質材製の型枠を介して密閉目的部の一対の対象物の一方に容易に密着固定することが可能となる。
【0008】
そして、この型枠を一対の対象物の一方に密着固定して、上記パッキン本体の介在片を一対の対象物間に介在させるとともに、上記密閉目的部の内側に上記型枠を配置することにより、一対の対象物間を密閉可能とするものである。
【0009】
また、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、スチレンエチレンプロピレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンブタジエン、スチレンエチレンブタジエンスチレンのうち、1種以上を含有したものであっても良い。
【0010】
また、介在片は、平板状に形成したものであっても良いし、一側面又は他側面の断面形状を、外方に突出した円弧状又は山形状としたものであっても良い。また、一対の対象物は、制御盤の扉体と制御盤の収納枠であっても良い。そして、型枠は、制御盤の扉体の閉止時に、制御盤の内部に位置するものであっても良い。また、一対の対象物は、フィルターの外周と取り付け部の壁面であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如く構成したものであって、パッキン本体を付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成している。そのため、このゲル材は、優れた柔軟性や伸縮性を有するとともに、耐酸性及び耐アルカリ性の性質を有するものである。
【0012】
そして、上記パッキン本体を、係合部を介して型枠に係合することにより、この型枠を介してパッキン本体を一対の対象物の一方に固定配置することが可能となる。そのため、型枠によりパッキン本体の配置形状が保持され、密閉目的部に安定した状態で固定することができる。従って、長期間の使用によっても変形したり、固定位置がずれたりすることなく、対象物間に介在させた介在片を、一対の対象物にそれぞれ確実に密着することが可能となる。
【0013】
また、ゲル本体は耐酸性及び耐アルカリ性であるため、外部環境中に酸やアルカリの液体が霧状に浮遊し、ゲル本体がこの酸やアルカリの液体に接触した場合であっても、劣化しにくいものとなる。従って、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している雰囲気にあっても、ゲル本体の介在片によって一対の対象物間の密閉性を良好に保つことが可能となる。
【発明の実施の形態】
【0014】
パッキン本体を構成するゲル材は、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分としている。そして、この付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルは、極性を持たないので酸やアルカリに強いものである。
【0015】
また、上記付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリイソプレンブロック(I)とから成るブロック共重合体、及び/又はポリスチレンブロックと水添又は非水添のポリブタジエンブロック(B)とから成るブロック共重合体から成るものである。即ち、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、SとIとから成るブロック共重合体、SとBとから成るブロック共重合体、又は上記各ブロック共重合体の複合体である。
【0016】
また、上記ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリイソプレンブロック(I)とから成るブロック共重合体としては、具体的には飽和型のジブロック及びトリブロックタイプのスチレンエチレンプロピレン(SEP)や、スチレンエチレンプロピレンスチレン(SEPS)が好適に用いられる。また、ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリブタジエンブロック(B)とから成るブロック共重合体としては、具体的にはスチレンエチレンブタジエン(SEB)やスチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS)が好適に用いられる。
【0017】
そして、本発明の付加重合系熱可塑性ブロック弾性体としては、SEP、SEPS、SEB、SEBSをそれぞれ単体で使用することも可能であり、また、SEP、SEPS、SEB、SEBSを2種以上複合させて使用することも可能である。また、この付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、(S−I)や(S−B)で表されるジブロックのもの、あるいはS−(I−S)nやS−(B−S)n、(但し、n=1〜5)の一般式で表されるトリブロック及びそれ以上のものである。
【0018】
また、本発明の付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、全体の数平均分子量が5000〜500000の範囲が好ましい。また、Sブロック単位の含有量は5〜70wt%であり、且つIブロック単位又はBブロック単位の二重結合の70%以上が水添されたものが好ましい。また、Sブロック単位の重量平均分子量としては5000〜125000、Iブロック単位又はBブロック単位の重量平均分子量としては15000〜250000のものが好ましい。
【0019】
また、本発明のパラフィン系オイルは、その種類については特に限定されないが、入手が容易で低コストであるという点から、流動パラフィンが好ましい。また、パッキン本体の成形方法は特に限定されず、射出成形法、コンプレッション成形法、抽出成型法、シート成形法などにより成形することができる。
【0020】
また、本発明の型枠は、密閉目的部の内側に配置し、酸やアルカリの液体が浮遊する外部雰囲気に接触する側にパッキン本体の介在片を配置する。従って、上記型枠は外部雰囲気と接触することはないため、硬質材製であって一対の対象物の一方に密着固定することができるものであれば材質については特に限定するものではなく、プラスチックや金属等を使用することができる。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1を図1〜4において説明すると、図1に示す如く、本実施例ではパッキン(25)を、制御盤(10)の片開きの扉体(11)に配置している。本実施例1のパッキン(25)について詳細に説明すると、図2に示す如く、(1)はパッキン本体であって、長尺な棒状に形成したものである。このパッキン本体(1)は、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成している。
【0022】
尚、本実施例及び以下の実施例2及び3で記載の制御盤(10)とは、機械や電気装置の遠隔操作などで、制御用のスイッチ(23)や計器類をまとめて備え付けてある制御盤本体(12)の開口部を扉体(11)等で被覆して成るものを言う。
【0023】
そして、本実施例では付加重合系熱可塑性ブロック弾性体であるスチレンエチレンプロピレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンブタジエン、及びスチレンエチレンブタジエンスチレンを複合して使用している。また、本実施例ではパラフィン系オイルとして流動パラフィンを使用している。
【0024】
上記付加重合系熱可塑性ブロック弾性体とパラフィン系オイルは極性を持たないので耐酸性及び耐アルカリ性である。そのため、上記の如く、パッキン本体(1)を付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とするゲル材にて形成することにより、耐酸性及び耐アルカリ性のパッキン本体(1)を得ることが可能となる。
【0025】
ここで、パッキン本体(1)の上記特性を実証するために、本実施例1のパッキン本体(1)の耐薬品性についての試験を行った。使用した薬品は、硫酸5%水溶液、酢酸5%水溶液、水酸化ナトリウム10%水溶液、アンモニア25%水溶液である。また、試験方法は、試験片を各薬液に7日間浸漬する方法により行った。そして、浸漬開始から1日、2日、及び7日後の質量をそれぞれ測定し、次式によって浸漬前と浸漬後の質量変化率を計算した。
【0026】
A=(W2−W1)/W1×100
尚、Aは質量変化率(%)、W1は浸漬前の試験片の質量(g)、W2は浸漬後の試験片の質量(g)である。
上記各試験結果について以下の表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
上記試験結果より、全ての薬品において、浸漬1日後、浸漬2日後、浸漬7日後のいずれも質量変化率が1%未満であった。よって、パッキン本体(1)は酸やアルカリ、及び強アルカリに浸漬しても、体積変化がほとんど生じないという結果を得ることができた。従って、上記結果から、酸やアルカリと接触しても、劣化しにくいことが実証された。
【0029】
また、上記パッキン本体(1)の柔軟性及び伸縮性を実証するために、パッキン本体(1)の硬度、伸び率、圧縮永久歪について測定した。尚、硬度はJIS硬さであって、JIS K 6301に準じた試験方法により測定した。
【0030】
その結果、硬度は0であった。これと比較して、従来例であるブチルゴムの硬度は一般的に20〜90であり、ウレタンの硬度は60〜100である。従って、パッキン本体(1)の硬度はブチルゴムやウレタンの硬度よりも遙かに低い値を示すことから、柔軟性に優れていることが明らかとなった。
【0031】
次に、伸び率は1300以上であった。一方、ブチルゴムの伸び率は一般的に100〜800であり、ウレタンの伸び率は一般的に300〜800である。従って、パッキン本体(1)の伸び率は、ブチルゴムやウレタンよりも遙かに高い値を示していることから、パッキン本体(1)は柔軟性及び伸縮性に優れていることが明らかとなった。
【0032】
また、圧縮率が25%の時の圧縮永久歪をJIS K 6262に基づいて測定した。その結果、圧縮永久歪は12%であり、圧縮しても大半の部分がもとの形状に復元可能であって、優れた弾力性を有していることが明らかとなった。以上の結果より、パッキン本体(1)は、従来品と同等又はそれ以上の優れた柔軟性及び伸縮性を有することを確認することができた。
【0033】
また、このパッキン本体(1)は、図2に示す如く、長尺な棒状に形成したものであって、パッキン本体(1)の一側に係合部(2)を形成している。この係合部(2)は、断面コ字型の凹溝(3)をパッキン本体(1)の長さ方向に、両側面の対向位置に一箇所ずつ設けることにより形成したものであって、断面形状を矩形としている。また、この係合部(2)は、パッキン本体(1)の一端から他端まで連続している。
【0034】
そして、上記パッキン本体(1)の係合部(2)とは凹溝を介して隔壁(4)を平行に突出し、この隔壁(4)と平行に連結片(24)を介して介在片(5)を突出形成している。この介在片(5)は、パッキン本体(1)の一端から他端まで連続してパッキン本体(1)の幅方向に突出形成したものである。また、この介在片(5)は、対象物と密着する側の断面形状を円弧状の弧状部(16)としている。そして、上記介在片(5)の弧状部(16)とは反対側の反対面(26)を、平面状としている。
【0035】
また、上記の如く形成したパッキン本体(1)の係合部(2)には、図2に示す如く、パッキン本体(1)を扉体(11)に固定配置するための型枠(6)を係合している。この型枠(6)は、硬質材製であるABS樹脂にて形成したものであって、断面をコ字型としている。また、この型枠(6)の開口縁には、内方に突出した一対の係合片(7)を、型枠(6)の一端から他端まで連続して形成している。
【0036】
そして、上記の如く形成した型枠(6)とパッキン本体(1)とを係合する。即ち、パッキン本体(1)の係合部(2)を型枠(6)の開口部(8)から内方に弾性変形させながら挿入するとともに、図2に示す如く、パッキン本体(1)の一対の凹溝(3)に、型枠(6)の一対の係合片(7)をそれぞれ係合させる。
【0037】
このとき、係合部(2)の断面の形状及び大きさを、型枠(6)の内面形状及び大きさに対応したものとしている。そのため、上記の如く型枠(6)の内部に配置された係合部(2)が、型枠(6)の係合片(7)により係止されるものとなり、係合部(2)は型枠(6)内部から外方に離脱困難な状態となる。上記の如く、型枠(6)とパッキン本体(1)とを係合することにより、本実施例1のパッキン(25)が形成される。
【0038】
そして、上記の如く形成したパッキン(25)を、図1に示す如く、片開きの制御盤(10)の扉体(11)に配置した場合について説明する。まず、図1及び図3に示す如く、制御盤(10)本体の前面に形成されている平板状の収納枠(13)と対向する扉体(11)の内面に、パッキン(25)を長方形の枠状に配置する。
【0039】
この配置は、外部の雰囲気と接触する扉体(11)の外周側に、パッキン本体(1)の介在片(5)を配置し、このパッキン本体(1)の内周側に型枠(6)を配置する。そして、型枠(6)は、両面粘着テープ、接着剤、ビス固定等の適宜の方法で扉体に固定する。そして、この型枠(6)に固定したパッキン本体(1)の介在片(5)の弧状部(16)とは反対側の反対面(26)を、扉体(11)の内面に面接触させる。
【0040】
上記の如くパッキン(25)を制御盤(10)の扉体(11)の内面に配置することにより、制御盤(10)の扉体(11)を閉止すると、図4に示す如く、パッキン本体(1)の介在片(5)の弧状部(16)と平板状の収納枠(13)の表面とが密着する。そして、介在片(5)の弧状部(16)が収納枠(13)の表面と収納枠(13)の全周にわたって密着するとともに、介在片(5)の反対面(26)が、扉体(11)の内面に全周にわたって連続して面接触した状態で密着するものとなる。
【0041】
従って、扉体(11)と制御盤本体(12)の収納枠(13)との間は、介在片(5)を介して密閉されるものとなる。尚、本実施例における密閉目的部の一対の対象物は、上記扉体(11)と、制御盤本体(12)の開口縁に突設した長方形の収納枠(13)である。上記の如く、扉体(11)と制御盤本体(12)との間を、介在片(5)を介して密閉することにより、制御盤(10)の外部と制御盤(10)の内部とを完全に遮断することが可能となる。
【0042】
また、上記の如くパッキン本体(1)は耐酸性及び耐アルカリ性であるため、このパッキン本体(1)が制御盤(10)を設置している工場内の環境中に、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している場合でも、これら酸やアルカリの液体に侵されることなく、扉体(11)と制御盤本体(12)との間の密閉性を良好に保つことが可能となる。そのため、環境中の酸やアルカリの液体が制御盤(10)内に侵入困難なものとなり、制御盤(10)内の精密部品等の、酸やアルカリの液体との接触による不具合を生じにくいものとすることができる。
【0043】
また、上記の如く制御盤(10)の扉体(11)を閉止して扉体(11)と制御盤本体(12)の収納枠(13)とを密閉した際には、図4に示す如く、パッキン本体(1)のうち、制御盤(10)の外部に露出した部分は、環境中の酸やアルカリの液体と接触するものとなるが、パッキン本体(1)と係合している型枠(6)は、パッキン本体の内周側に係合しているため、扉体(11)の閉止時は制御盤本体(12)の内部に位置している。そのため、扉体(11)の閉止時においては、型枠(6)は酸やアルカリの液体とほとんど接触することはないことから、酸やアルカリの液体との接触による劣化が生じにくいものとなっている。
【実施例2】
【0044】
また、前記実施例1では、介在片(5)の、対象物と密着する側の断面形状を円弧状の弧状部(16)としているが、本発明の実施例2では、図5に示す如く、対象物と密着する側の断面形状を山形状の山状部(28)としている。そして、上記の如き山状部(28)を形成したパッキン(25)を、制御盤(10)本体の前面に形成されている平板状の収納枠(13)と対向する扉体(11)の内面に、長方形の枠状に配置する。
【0045】
これにより、制御盤(10)の扉体(11)を閉止した際に、図6に示す如く、介在片(5)の山状部(28)の先端部分と平板状の収納枠(13)の表面とが密着する。そして、介在片(5)の山状部(28)が収納枠(13)の表面と収納枠(13)の全周にわたって密着するものとなり、制御盤(10)の外部と内部とを完全に遮断することが可能となる。
【実施例3】
【0046】
また、上記実施例1及び2では、片開きの制御盤(10)の扉体(11)にパッキン(25)を固定配置しているが、本発明の実施例3では、図7に示す如く、両開きの制御盤(10)の一側扉体(17)及び他側扉体(18)に各々パッキン(25)を固定配置している。
【0047】
本実施例3について以下に詳細に説明すると、一側扉体(17)及び他側扉体(18)を閉止する際には、まず、図8に示す如く一側扉体(17)を閉止し、この一側扉体(17)の他側扉体側(18)に設けた合わせ部(15)の上面に、他側扉体(18)の一側扉体(17)側の内面端縁(22)を重ね合わせることにより、一側扉体(17)及び他側扉体(18)を閉止するものである。
【0048】
また、図7に示す如く、制御盤本体(12)の前面の開口縁には、一定幅で平板状の収納枠(13)を形成している。また、一側扉体(17)及び他側扉体(18)の内面には、閉止時において制御盤本体(12)の収納枠(13)に対向する位置に、パッキン(25)を固定配置している。そして、このパッキン(25)のパッキン本体(1)は、図2に示す如く、上記実施例1と同様に介在片(5)の断面形状を円弧状に形成して弧状部(16)を突設したものである。
【0049】
このように介在片(5)に弧状部(16)を突設することにより、この介在片(5)の弧状部(16)を平板状の収納枠(13)に確実に密着させることができる。そのため、介在片(5)と収納枠(13)との密着性を良好なものとすることが可能となる。上記の如く、一側扉体(17)及び他側扉体(18)の内面に弧状部(16)を設けた介在片(5)を配置することにより、一側扉体(17)及び他方扉体を閉止した際には、介在片(5)の弧状部(16)が制御盤本体(12)の収納枠(13)に全周にわたって密着するものとなる。
【0050】
しかしながら、介在片(5)を弧状部(16)とした場合において、平坦面への密着性は極めて優れたものとなるが、平板の端面(21)を突き当てて密着性を向上することは困難なものとなる。そこで、このような平板の端面(21)を突き当てて密閉性を保持しようとする場合には、介在片(5)を、表面が平坦な平板状の平板部(27)とする。
【0051】
そして、図10に示す如く、平板部(27)を形成した介在片(5)の一側を他側扉体(18)の内面端縁(22)に連続して密着配置する。このような状態で、図11に示す如く、他側扉体(18)の内面端縁(22)を、一側扉体(17)の合わせ部(15)の上面に重ね合わせることにより、合わせ部(15)の突片(20)の端面(21)に、他側扉体(18)に固定したパッキン本体(1)の介在片(5)が密着するものとなる。
【0052】
この時、上記の如く、介在片(5)は、平板部(27)を形成することにより表面を平坦なものとしているため、合わせ部(15)の突片(20)の端面(21)を介在片(5)に確実に連続して密着させることが可能となる。そのため、他方扉体(18)の内面に長方形の枠状に固定したパッキン本体(1)は、図12に示す如く、合わせ部(15)側の一辺に平板部(27)を配置するとともに、他の3辺に弧状部(16)を設けた介在片(5)を配置した状態となる。尚、図12及び図13に示す如く、介在片(5)の弧状部(16)と平板部(27)との接続部分は、連続して一体的に形成している。
【0053】
従って、一側扉体(17)を閉止した状態で、更に他側扉体(18)を閉止し、一側扉体(17)の重ね部に他側扉体(18)の内面端縁(22)を重ね合わせることにより、制御盤本体(12)の収納枠(13)の対向位置に配置した弧状部(16)が、制御盤本体(12)の収納枠(13)に密着するとともに、一側扉体(17)の合わせ部(15)の突片(20)に、他側扉体(18)の内面端縁(22)に配置した平板部(27)が密着するものとなる。
【0054】
従って、本実施例における密閉目的部の一対の対象物間である、一側扉体(17)及び他側扉体(18)と、制御盤本体(12)の収納枠(13)及び一側扉体(17)の合わせ部(15)の上面との間を密閉することが可能となる。このように、一側扉体(17)及び他側扉体(18)と、制御盤本体(12)との間を、介在片(5)を介して密閉することにより、制御盤(10)の外部と制御盤(10)の内部とを完全に遮断することが可能となる。
【0055】
また、上記の如く形成したパッキン本体(1)は、上記実施例1及び実施例2と同様に柔軟性及び伸縮性に優れるとともに耐酸性及び耐アルカリ性であるため、このパッキン本体(1)が制御盤(10)を設置している工場内の環境中に、酸やアルカリの液体が霧状に浮遊している場合でも、これら酸やアルカリの液体に侵されることなく、扉体と制御盤本体(12)との間の密閉性を良好に保つことが可能となる。そのため、環境中の酸やアルカリの液体が制御盤(10)内に侵入困難なものとなり、酸やアルカリの液体との接触による制御盤(10)内の精密部品等の不具合を生じにくいものとすることができる。
【0056】
尚、本実施例及び上記実施例1及び2では、一対の対象物を制御盤(10)の扉体(11)と制御盤(10)の収納枠(13)としているが、他の異なる実施例においては、一対の対象物をフィルターの外周と取り付け部の壁面とすることも可能であるし、更には、他の一対の対象物間に介在させて両者を密着することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1において、パッキンを制御盤に配置した状態を示す斜視図。
【図2】実施例1のパッキンの部分拡大斜視図。
【図3】実施例1の収納枠、及びパッキンを配置した扉体の関係を示す断面図。
【図4】実施例1の扉体を閉止した状態を示す部分拡大断面図。
【図5】本発明の実施例2において、収納枠、及びパッキンを配置した扉体の関係を示す断面図。
【図6】実施例2の扉体を閉止した状態を示す部分拡大断面図。
【図7】本発明の実施例3において、パッキンを両開き方式の制御盤に配置した状態を示す正面図。
【図8】実施例3の一側扉体を閉止した状態を示す正面図。
【図9】実施例3のパッキンの部分拡大斜視図。
【図10】実施例3の合わせ部と他方扉体の関係を示す断面図。
【図11】実施例3の一側扉体及び他側扉体を閉止した状態を示す断面図。
【図12】実施例3の他側扉体の型枠及びパッキン本体を示す斜視図。
【図13】実施例3のパッキンの部分拡大斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 パッキン本体
2 係合部
5 介在片
6 型枠
10 制御盤
11 扉体
13 収納枠
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成し、一側に係合部を形成するとともに、他側に前記係合部と一体的に連続して介在片を突出形成したパッキン本体と、このパッキン本体の係合部に係合した硬質材製の型枠とから成り、この型枠を密閉目的部の一対の対象物の一方に密着固定し、上記パッキン本体の介在片を一対の対象物間に介在させるとともに、上記密閉目的部の内側に型枠を配置し、一対の対象物間を密閉可能としたことを特徴とするパッキン。
【請求項2】
付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、スチレンエチレンプロピレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンブタジエン、スチレンエチレンブタジエンスチレンのうち、1種以上を含有することを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項3】
介在片は、平板状に形成したことを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項4】
介在片は、一側面又は他側面の断面形状を、外方に突出した円弧状又は山形状としたことを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項5】
一対の対象物は、制御盤の扉体と制御盤の収納枠であることを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項6】
型枠は、制御盤の扉体の閉止時に、制御盤の内部に位置することを特徴とする請求項5のパッキン。
【請求項7】
一対の対象物は、フィルターの外周と取り付け部の壁面であることを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項1】
付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分とした軟弾性を有するゲル材にて形成し、一側に係合部を形成するとともに、他側に前記係合部と一体的に連続して介在片を突出形成したパッキン本体と、このパッキン本体の係合部に係合した硬質材製の型枠とから成り、この型枠を密閉目的部の一対の対象物の一方に密着固定し、上記パッキン本体の介在片を一対の対象物間に介在させるとともに、上記密閉目的部の内側に型枠を配置し、一対の対象物間を密閉可能としたことを特徴とするパッキン。
【請求項2】
付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、スチレンエチレンプロピレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンブタジエン、スチレンエチレンブタジエンスチレンのうち、1種以上を含有することを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項3】
介在片は、平板状に形成したことを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項4】
介在片は、一側面又は他側面の断面形状を、外方に突出した円弧状又は山形状としたことを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項5】
一対の対象物は、制御盤の扉体と制御盤の収納枠であることを特徴とする請求項1のパッキン。
【請求項6】
型枠は、制御盤の扉体の閉止時に、制御盤の内部に位置することを特徴とする請求項5のパッキン。
【請求項7】
一対の対象物は、フィルターの外周と取り付け部の壁面であることを特徴とする請求項1のパッキン。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【公開番号】特開2008−57565(P2008−57565A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231963(P2006−231963)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000130178)株式会社コスモ計器 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000130178)株式会社コスモ計器 (10)
【Fターム(参考)】
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