説明

パッキン

【課題】スリーブと挿通物との隙間を確実に閉塞することができるパッキンを提供する。
【解決手段】筒状のスリーブ2の端部に装着され、スリーブ2に挿通される保護管31とスリーブ2との隙間を塞ぐパッキン4であって、スリーブ2の外周面に嵌合する中空筒状の外側筒状部41と、スリーブ2の内周面に嵌合する中空筒状の内側筒状部42と、外側筒状部41の一端側と内側筒状部42の一端側とを連結する連結部43と、内側筒状部42の内周面から径方向内側に向かって突出し、スリーブ2の軸方向に互いに間隔を隔てて設けられ、保護管31を挿通する挿通孔44aを有する複数の環状壁部44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に設置されたスリーブと挿通物の隙間から白蟻等の虫や小動物が侵入するのを防ぐためのパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁や基礎などのコンクリート部分に中空のスリーブ(サヤ管)を埋設しておき、そのスリーブを通して建物内部に給水管や配水管等の配管を引き込むことが行われている。また、住宅金融支援機構による木造住宅工事仕様書(技術対応規準)では、スリーブと配管の隙間には防蟻性のあるシール材を充填する等、防蟻上有効な措置を施すことが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図8(a)に示すように、スリーブ101の開口端部101aに可撓性板状体(パッキン)200を嵌着することが開示されている。具体的には、可撓性板状体200は、スリーブ101の外周面に嵌着される嵌着部201とこの嵌着部201の先端に直角に折り曲げられてスリーブ101の開口端部101aに当接されるリング状の密着部202とより形成されている。このリング状の密着部202の内周縁は、配管挿通孔202aを形成しており、この配管挿通孔202a内には、配管300(図8(b)参照)が挿通し得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−303042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スリーブ101に挿通する配管300などの挿通物は、スリーブ101の曲がりに沿って変形できるように弾性(可撓性)を有しているものが多い。そのため、例えば、図8(b)に示すように、スリーブ101内に湾曲して配置された配管300が、復元力によってもとの状態に戻ろうとするときに、可撓性板状体200のリング状の密着部202を押し広げてしまうことがある。
リング状の密着部202が押し広げられると、リング状の密着部202と配管300との間に隙間Sが発生し、虫や小動物の侵入を防止する機能が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、スリーブと挿通物との隙間を確実に閉塞することができるパッキンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筒状のスリーブの端部に装着され、前記スリーブに挿通される挿通物と前記スリーブとの隙間を塞ぐパッキンであって、前記スリーブの外周面に嵌合する中空筒状の外側筒状部と、前記スリーブの内周面に嵌合する中空筒状の内側筒状部と、前記外側筒状部の一端側と前記内側筒状部の一端側とを連結する連結部と、前記内側筒状部の内周面から径方向内側に向かって突出し、前記スリーブの軸方向に互いに間隔を隔てて設けられ、前記挿通物を挿通する挿通孔を有する複数の環状壁部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、内側筒状部の内周面から径方向内側に向かって突出し、スリーブの軸方向に互いに間隔を隔てて設けられ、挿通物を挿通する挿通孔を有する複数の環状壁部を備えているので、スリーブ内の挿通物が複数の環状壁部によってスリーブの軸方向に亘って広い範囲で支持されることとなる。そのため、挿通物が複数の環状壁部で分散支持されるので、一つ当たりの環状壁部に作用する荷重(支持力)が低減され、各環状壁部の変形が抑制されることとなる。これにより、挿通物と環状壁部の密着状態が保たれるので、スリーブと挿通物との隙間を確実に閉塞することができる。
【0009】
また、本発明に係るパッキンの内側筒状部は、前記内側筒状部の他端側に開口する凹部を有しているのが好ましい。
【0010】
このようにすれば、内側筒状部のうち、凹部を形成した部分の肉厚が小さくなるので、当該部分が径方向外側に変形し易くなる。そのため、挿通孔に挿通物を挿入する際に、内側筒状部と環状壁部が径方向外側に拡径し易くなり、複数の環状壁部による挿入抵抗を低減することができる。これにより、施工の容易性と隙間の閉塞性とを両立することができる。
【0011】
また、前記凹部は、前記内側筒状部の周方向に沿って形成された環状の凹溝であるのが好ましい。
また、前記凹部は、前記内側筒状部の周方向に互いに間隔を隔てて複数形成されているのが好ましい。
【0012】
このようにすれば、内側筒状部のうち、凹溝や凹部よりも径方向内側の部分(環状壁部を支持する部分)が拡径し易くなるので、複数の環状壁部による挿入抵抗を低減することができる。
【0013】
また、本発明に係るパッキンは、前記外側筒状部、前記内側筒状部及び前記連結部のいずれか1つの一端側から前記スリーブの軸方向に突出し、前記挿通孔の周囲を囲う環状突部を有するのが好ましい。
【0014】
このようにすれば、パッキンをスリーブの端部に取り付けた状態で、コンクリートを打設する型枠内に当該スリーブを設置した際に、環状突部が型枠の表面に密着するので、コンクリートの打設時に、ノロ等の異物が挿通孔からスリーブ内に侵入することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るパッキンによれば、スリーブと挿通物との隙間を確実に閉塞することができるので、白蟻等の虫や小動物の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るパッキンを備えた建物の基礎構造の断面図である。
【図2】スリーブにパッキンを装着した状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は(b)に示すI−I線におけるパッキンの断面図、(b)は屋内側から見たパッキンの背面図である。
【図4】建物の基礎構造の施工状況を説明するための図面であり、(a)は型枠設置時、(b)はコンクリート打設時、を示している。
【図5】建物の基礎構造の施工状況を説明するための図面であり、(a)は型枠取り外し時、(b)は配管設置時、を示している。
【図6】(a)は(b)のII−II線における第1変形例に係るパッキンの断面図、(b)は第1変形例に係るパッキンの背面図である。
【図7】(a)は(b)のIII−III線における第2変形例に係るパッキンの断面図、(b)は第2変形例に係るパッキンの背面図である。
【図8】(a)は従来のパッキンを示す断面図であり、(b)は従来のパッキンに配管を挿入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1、図2に示すように、建物の基礎構造Kは、例えば、鉄筋コンクリート製のべた基礎1と、べた基礎1に埋設されたスリーブ2と、スリーブ2内に挿通された配管3と、スリーブ2の屋外側(一端側)の端部2aに装着されたパッキン4と、を主に備えている。
【0019】
べた基礎1は、平盤状のスラブ部11と、スラブ部11の端部から立ち上がる立ち上がり部12と、を備えている。スラブ部11と立ち上がり部12の内部には鉄筋13a,13bが配置されている。また、スラブ部11のうち立ち上がり部12の下方の部分11a(以下、「フーチング部11a」という。)は、スラブ部11の他の部分に比べて厚さ寸法が大きく形成されている。
【0020】
スリーブ2は、建物の外部から建物の内部に配管3などを引き込む通路を形成するための管状部材であり、例えば塩化ビニル製のパイプ材などで構成されている。スリーブ2は、フーチング部11aに埋設されている。スリーブ2の屋外側の端部2aは、スラブ部11の側面11bに開口しており、スリーブ2の屋内側(他端側)の端部2bは、スラブ部11の上面11cに開口している。つまり、スリーブ2は、屋内側ほど上方に向かうように湾曲している。
なお、図示は省略するが、スリーブ2の屋内側の端部2bの外周には、ブチルゴム製のシートが巻きつけられており、コンクリートとの密着を図っている。
【0021】
配管3は、スリーブ2に挿通される長尺の管状部材である。配管3の具体例としては、給水管、ガス管、給湯管、空調管などが挙げられる。配管3は、スリーブ2の内径よりも細径に形成されている。配管3は、例えば弾性を有するポリエチレン管で構成されており、スリーブ2に沿ってある程度柔軟に湾曲するようになっている。
【0022】
配管3には、配管3を保護するための保護管31が外嵌されている。保護管31は、スリーブ2の屋外側の端部2a付近に配置されている。保護管31の屋外側の半分程度が、スリーブ2から突出している。保護管31は、蛇腹状を呈しており、複数の環状の凹部31bと凸部31cが外周面に交互に形成されている。
【0023】
保護管31の屋外側の端部31aには、シールキャップ32が装着されている。シールキャップ32は、保護管31の外周面に嵌合する大径部32aと、大径部32aよりも小径に形成され、配管3の外周面に嵌合する小径部32bと、大径部32aと小径部32bとを連結する段部32cと、を有している。
なお、図示は省略するが、保護管31とシールキャップ32と配管3との繋ぎ目には、防食テープが巻きつけられる。これにより、配管3と保護管31の屋外側の繋ぎ目が確実にシールされることとなる。
【0024】
なお、スリーブ2に挿通する挿通物は、配管3及び保護管31に限定されるものではなく、例えば保護管31を省略してもよい。また、挿通物は、配管3ではなく、電線などのケーブル類であってもよい。
【0025】
パッキン4は、スリーブ2と保護管31との隙間を閉塞する略円筒状の部材である。パッキン4は、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)やエチレンプロピレンゴム(EPDM)などの柔軟性(弾性)を有する樹脂材料に防蟻剤を混練したものを型枠内に射出成形して製造されている。
なお、パッキン4の材料は、これに限定されるものではなく、例えば、シロアリの食害を受けない硬度(耐久性)を有する材料であれば、防蟻成分を含有しなくてもよい。
【0026】
ここで、パッキン4の構造について図2、図3(適宜図1)を参照して詳細に説明する。なお、図3の(a)はパッキンの断面図、(b)は屋内側(スリーブ側)から見たパッキンの背面図である。
図2及び図3(a),(b)に示すように、パッキン4は、スリーブ2の外周面2c(図1参照)に嵌合する中空筒状の外側筒状部41と、スリーブ2の内周面2d(図1参照)に嵌合する中空筒状の内側筒状部42と、外側筒状部41の一端側41aと内側筒状部42の一端側42aとを連結する連結部43と、内側筒状部42の内周面42gから径方向内側に向かって突出する複数の環状壁部44,44・・・と、フランジ部45と、環状突部46と、を主に備えている。
【0027】
外側筒状部41は、パッキン4の最も外側の部分であり、中空円筒状に形成されている。外側筒状部41の内径は、スリーブ2の外径と略等しい寸法に形成されている。外側筒状部41の他端側41bの外周面には、径方向外側に向かって延出する環状のフランジ部45が形成されている。外側筒状部41の他端側41bの内周縁には、テーパ部41cが形成されており、スリーブ2の外周面2cに嵌合し易くなっている。
【0028】
内側筒状部42は、外側筒状部41の内側に同芯円状に配置された中空円筒状の部材である。内側筒状部42の外径は、スリーブ2の内径と略等しい寸法に形成されている。内側筒状部42と外側筒状部41との間には、スリーブ2の屋外側の端部2aを挿入するための環状の隙間42cが形成されている。
内側筒状部42は、外側筒状部41よりも軸方向の寸法が大きく形成されている。そのため、内側筒状部42の他端側42bは、外側筒状部41の他端側41bから突出している。内側筒状部42の他端側42bの外周縁には、テーパ部42dが形成されており、スリーブ2の内周面2dに挿入し易くなっている。
【0029】
内側筒状部42は、厚さ方向(径方向)の略中央部に、内側筒状部42の周方向に沿って形成された環状の凹溝42eを有している。環状の凹溝42eは、内側筒状部42の他端側42bに開口している。
内側筒状部42のうち凹溝42eよりも径方向内側の部分42f(以下、「壁支持部42f」という。)は、内側筒状部42の内周面42gに設けられた後記する複数の環状壁部44,44,・・・を支持している。壁支持部42fは、凹溝42eが有ることにより、径方向外側に拡径し易くなっている。
なお、凹溝42eの深さ寸法は、壁支持部42fが変形し易いように、できるだけ大きくするのが好ましい。本実施形態では、凹溝42eの深さ寸法は、内側筒状部42の軸方向の長さ寸法の1/2以上の大きさに形成されている。
【0030】
連結部43は、外側筒状部41の一端側41aと内側筒状部42の一端側42aとを連結する部分である。換言すれば、外側筒状部41の一端側41aは、連結部43を介して、内側筒状部42の一端側42aと連結されている。
連結部43は、外側筒状部41と内側筒状部42の隙間42cの底部を構成している。
【0031】
環状壁部44は、内側筒状部42の内周面42gから径方向内側に突出するように設けられた正面視環状(リング状)を呈する壁体である。本実施形態では、5つの環状壁部44が、内側筒状部42の軸方向に互いに間隔を隔てて設けられている。なお、本実施形態では、環状壁部44の間隔は、保護管31の凹部31bの間隔に略一致している。
環状壁部44は、図3(a)に示すように、断面視で三角形状に形成されており、径方向内側に向かうほど厚さ寸法が小さくなっている。これにより、環状壁部44の先端部が変形し易くなるので、挿入抵抗を軽減することができる。
また、環状壁部44は、中央部に配管3及び保護管31を挿通するための挿通孔44aを有している。挿通孔44aの内径は、保護管31の凹部31bの外径と略同径に形成されているのが好ましい。
【0032】
内側筒状部42の一端側42aには、スリーブ2の軸方向に突出し、挿通孔44aの周囲を囲う環状突部46が形成されている。環状突部46は、べた基礎1のコンクリートを打設するための型枠W1(図4(a)参照)の内面に密接して、挿通孔44aにコンクリートやノロなどが入り込み難くする機能を有している。
環状突部46は、図3(a)に示すように、断面視で三角形状に形成されており、スリーブ2と反対側に向かうほど厚さ寸法が小さくなっている。そのため、環状突部46が型枠W1(図4(a)参照)に当接したときに、先端部が潰れて密着し易い。
なお、環状突部46を設ける位置は、内側筒状部42の一端側42aに限定されるものではなく、挿通孔44aの周囲を囲うように設けられていればよく、例えば、外側筒状部41の一端側41aや連結部43の一端側(すなわち、パッキン4の屋外側の端面)であってもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係るパッキンの使用方法について、図4、図5を参照して説明する。なお、図4は、建物の基礎構造の施工状況を説明するための図面であり、(a)は型枠設置時、(b)はコンクリート打設時、を示している。また、図5は、建物の基礎構造の施工状況を説明するための図面であり、(a)は型枠取り外し時、(b)は配管設置時、を示している。
【0034】
始めに、図4(a)に示すように、スラブ部11の底面形状に合わせて掘削及び床均しを行った地盤Gの上に、型枠W1,W2と、鉄筋13a、13bと、を設置する。なお、立ち上がり部12の屋内側の側面に対応する型枠W2や鉄筋13a、13bは、図示しないサポート材やスペーサによって地面から浮かせて配置されている。
次に、パッキン4の外側筒状部41と内側筒状部42との間に形成された環状の隙間42cに、スリーブ2の一端部2aを挿入して、パッキン4をスリーブ2に取り付ける。
そして、予め設置した鉄筋13a,13bに、ホルダH,Hを用いてスリーブ2を取り付ける。このとき、パッキン4の環状突部46を型枠W1の内面W1aに押し付け、両者を密着させる。
【0035】
次に、図4(b)に示すように、型枠W1,W2の中に、コンクリートCを打設する。このとき、パッキン4の環状突部46が型枠W1の内面W1aに押し付けられているので、コンクリートやノロなどが、挿通孔44aやスリーブ2の内部に入り込むことがない。
【0036】
コンクリートが硬化したら、図5(a)に示すように、型枠W1,W2を解体し、撤去する。これにより、スラブ部11の側面11bに、パッキン4の挿通孔44aが開口した状態となる。
このとき、フランジ部45の屋外側に硬化したコンクリートCが存在するので、パッキン4がべた基礎1から抜け落ちることがない。
【0037】
次に、図5(b)に示すように、パッキン4の挿通孔44aに、保護管31を差し込む。このとき、環状壁部44を支持する壁支持部42fの周囲には、環状の凹溝42eが形成されているので、壁支持部42f及び環状壁部44が拡径するように変形し易い。そのため、パッキン4の挿通孔44aに保護管31を差し込む際の抵抗が軽減される。
また、本実施形態では、環状壁部44の相互の間隔が、保護管31の周囲の凹部31bの間隔に略一致しているので、各環状壁部44が、保護管31の周囲の凹部31bにそれぞれ嵌まり込んで密着した状態となる。これにより、スリーブ2と保護管31との隙間が環状壁部44によって閉塞されるとともに、保護管31が軸方向の比較的広い範囲に亘って複数の環状壁部44に支持されることとなる。
【0038】
そして、保護管31を通して、スリーブ2の内部に配管3を挿通するとともに、保護管31の一端側31aにシールキャップ32を取り付けて、保護管31と配管3との繋ぎ目をシールする。
最後に、図1に示すように、べた基礎1の周囲を埋め戻して、配管3と保護管31とシールキャップ32とを埋設することにより、建物の基礎構造Kが完成する。
【0039】
以上、説明したように、本実施形態に係るパッキン4によれば、パッキン4の挿通孔44aに挿通した保護管31が、内側筒状部42の内周面42gに軸方向に所定間隔を隔てて設けられた複数の環状壁部44に分散支持されるので、一つ当たりの環状壁部44に作用する荷重(支持力)が低減され、各環状壁部44の変形が抑制されることとなる。これにより、保護管31と環状壁部44の密着状態が保たれるので、スリーブ2と保護管31との隙間を確実に閉塞することができる。
【0040】
また、パッキン4は、内側筒状部42に環状の凹溝42eを有しているので、挿通孔44aに保護管31を挿通する際に、壁支持部42f及び環状壁部44が拡径するように変形し易い。そのため、環状壁部44の数を増やしても保護管31の挿入抵抗がそれほど大きくならず、容易に施工することができる。
【0041】
また、環状の凹溝42eは内側筒状部42の他端側42bに開口しているので、壁支持部42fが、いわゆる片持ち支持状態(他端側がフリーな状態)となる。そのため、保護管31がパッキン4に対して傾いて配置された場合でも、壁支持部42fが保護管31の傾きに追従して変形できるので、環状壁部44と保護管31との間に隙間ができ難い。そのため、スリーブ2と保護管31との隙間を確実に閉塞することができる。
【0042】
また、パッキン4は、図4に示すように、挿通孔44aの周囲を囲い、型枠W1の内面W1aに当接する環状突部46を有しているので、施工中に挿通孔44a内にコンクリートやノロなどが流れ込むことがない。そのため、コンクリート打設後のメンテナンスが不要となり、施工が容易になる。
【0043】
また、パッキン4は、外側筒状部41の他端側41bの外周面から径方向外側に向かって突出する環状のフランジ部45を有しているので、パッキン4をスリーブ2の一端部2aに取り付けた状態でコンクリートCに埋設した際に、フランジ部45がコンクリートCに引っ掛かるので、スリーブ2の一端部2aからパッキン4が抜け落ちることを防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、パッキン4は、防蟻成分を含有する樹脂材料で形成されているので、パッキン4にシロアリの食害に対する耐久性を付与しながら、可撓性を付与することができる。そのため、施工性や密着性(変形追従性)を犠牲にすることなく、シロアリの侵入を防止することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
例えば、本実施形態では、内側筒状部42に環状の凹溝42eを形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、後記する第1変形例のように、内側筒状部42に複数の凹部を形成してもよい。
【0047】
第1変形例に係るパッキン4’は、図6(a),(b)に示すように、内側筒状部42の周方向に互いに間隔を隔てて3つの凹部47,47,47を有している点が、前記した実施形態と異なっている。各凹部47の間には隔壁42hが形成されている。
かかる構成でも、凹部47によって壁支持部42fの肉厚が小さくなるので、壁支持部42f及び環状壁部44が拡径するように変形し易くなる。そのため、環状壁部44の枚数を増やしながら、保護管31を挿通孔44aに挿入する際の挿入抵抗を抑制することができる。また、隔壁42hによって、支持力を高めることができる。
【0048】
また、前記した実施形態や第1変形例では、内側筒状部42に環状の凹溝42eや複数の凹部47を形成したが、挿通抵抗が十分に小さい場合は、凹溝42eを有していなくてもよい。この場合でも、複数の環状壁部44によって保護管31が支持されるので、一つ当たりの環状壁部44に作用する支持力が小さくなり、環状壁部44の変形を小さくして、保護管31と環状壁部44との間に隙間が形成されることを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、内側筒状部42の内径をスリーブ2の外径と略一致させて、外側筒状部41と内側筒状部42とでスリーブ2の端部2aを挟持するようにしたが、後記する第2変形例のように、内側筒状部42の内径をスリーブ2の外径より小さくしてもよい。
【0050】
第2変形例に係るパッキン4”は、図7(a),(b)に示すように、内側筒状部42の外径が、スリーブ2(図1参照)の内径よりも小さく形成されている点、及び、凹溝42e(図3参照)が省略されている点が、前記した実施形態と異なっている。
このようにすれば、パッキン4”をスリーブ2の端部2aに取り付けた際に、内側筒状部42がスリーブ2の内周面に遊嵌した状態(隙間を有して嵌合した状態)となるので、内側筒状部42と、この内側筒状部42に支持された環状壁部44とが拡径し易い。そのため、パッキン4”に挿通物を挿入する際の挿入抵抗を軽減することができる。また、金型の複雑化を防止するとともに、製造コストを低減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、環状のフランジ部45を設けたが、これに限定されるものではなく、パッキン4がコンクリートCから抜け落ちないようにできれば、どのような形状であってもよい。例えば、外側筒状部41の外周面に凹部や凸部を設け、この凹部や凸部とコンクリートCとが係合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 べた基礎
2 スリーブ
3 配管
31 保護管
32 シールキャップ
4 パッキン
41 外側筒状部
42 内側筒状部
42c 隙間
42e 環状の凹溝
42f 壁支持部
42g 内周面
43 連結部
44 環状壁部
44a 挿通孔
45 フランジ部
46 環状突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のスリーブの端部に装着され、前記スリーブに挿通される挿通物と前記スリーブとの隙間を塞ぐパッキンであって、
前記スリーブの外周面に嵌合する中空筒状の外側筒状部と、
前記スリーブの内周面に嵌合する中空筒状の内側筒状部と、
前記外側筒状部の一端側と前記内側筒状部の一端側とを連結する連結部と、
前記内側筒状部の内周面から径方向内側に向かって突出し、前記スリーブの軸方向に互いに間隔を隔てて設けられ、前記挿通物を挿通する挿通孔を有する複数の環状壁部と、を備えることを特徴とするパッキン。
【請求項2】
前記内側筒状部は、前記内側筒状部の他端側に開口する凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載のパッキン。
【請求項3】
前記凹部は、前記内側筒状部の周方向に沿って形成された環状の凹溝であることを特徴とする請求項2に記載のパッキン。
【請求項4】
前記凹部は、前記内側筒状部の周方向に互いに間隔を隔てて複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載のパッキン。
【請求項5】
前記外側筒状部、前記内側筒状部及び前記連結部のいずれか1つの一端側から前記スリーブの軸方向に突出し、前記挿通孔の周囲を囲う環状突部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパッキン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−281420(P2010−281420A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136782(P2009−136782)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(596037460)株式会社エプコ (14)
【出願人】(000201582)前澤化成工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】