説明

パッケージの封止方法

【課題】パッケージの内部と外部との間で流体が流通し易くしつつ、パッケージを容易に封止する。
【解決手段】パッケージ内にアンプルを配置し、パッケージとリッドとの間に、金属管を一方の端部が外部に突出するように設け、金属管とパッケージ及びリッドとの間に低融点ガラスを設け、パッケージとリッドとの間に貫通孔を有する低融点ガラスを設け、パッケージとリッドとを接合する。金属管の端部には、洗浄液やコーティング剤の流通を制御するポンプが接続され、このポンプにより、パッケージの内部と外部との間で貫通孔を介して洗浄液やコーティング剤を流通させる。金属管を引き抜き、低融点ガラスを溶融させて、金属管を引き抜いたときに形成されるパッケージとリッドとの間隙を封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージを封止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や半導体のパッケージを封止する技術が知られている。例えば、特許文献1には、PDP(Plasma Display Panel)やFED(Field Emission Display)などの表示装置の製造において、通気孔に封着材料を配置し、レーザ光を照射して溶融させることにより、フロントパネルとリアパネルとの間の空間を封止する方法が記載されている。特許文献2には、容器の底部に設けられた貫通孔に封止部材を置き、レーザービーム照射によって封止部材を溶融することにより、貫通孔を封止する方法が記載されている。特許文献3には、筒状ガラス管の内部に細孔を形成し、この細孔を介して排気及びガスの封入を行った後、レーザ光線を細孔の周囲のガラスにあてて加熱溶融し、細孔を塞いで気密封止する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−103184号公報
【特許文献2】特開2008−57995号公報
【特許文献3】特開昭61−51746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生体の心臓等から発せられる磁場を検出する装置として、光ポンピング式の磁気センサーが知られている。この磁気センサーには、アルカリ金属ガスが封入されたガスセルが用いられる。このガスセルを製造する場合、ガスセルの筐体(パッケージ)を形成した後に、筐体内にコーティング剤を流入させて、筐体の内面に膜を形成する。しかし、上述した特許文献1又は2に記載された方法では、封止材がパッケージの貫通孔を封止してしまうため、コーティング剤をパッケージの内部に流入させるのが難しい。また、上述した特許文献3に記載された方法では、筒状ガラス管の細孔を封止するには高温で加熱する必要があるため、パッケージを容易に封止することができない。
本発明は、パッケージの内部と外部との間で流体が流通し易くしつつ、パッケージを容易に封止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、開口部を有するパッケージ内に、アルカリ金属原子を収容する収容部を配置し、前記パッケージと前記開口部を覆う蓋との間に、第1の貫通孔を有する管状部材を一方の端部が外部に突出するように設け、当該管状部材と前記パッケージ又は前記蓋との間に第1の封止材を設け、前記パッケージと前記蓋との間に、第2の貫通孔を有する第2の封止材を設け、前記パッケージと前記蓋とを接合する接合工程と、前記管状部材の前記端部には、流体の流通を制御する流体機械が接続され、当該流体機械により、前記第2の貫通孔を介して前記パッケージの内部にコーティング剤を流入させ、当該コーティング剤により当該パッケージの内面に膜を形成し、当該流体機械により、前記パッケージ内部の前記コーティング剤を前記第2の貫通孔を介して外部に流出させる流通工程と、前記管状部材を引き抜き、前記第1の封止材を溶融させて、当該管状部材の引き抜いたときに形成される前記パッケージと前記蓋との間隙を封止し、前記第2の封止材を溶融させて、前記第2の貫通孔を封止する封止工程と、前記収容部にレーザ光を照射して、当該収容部を破壊する破壊工程とを備えることを特徴とするパッケージの封止方法を提供する。
この封止方法によれば、コーティング剤により内面に膜が形成され、アルカリ金属原子を封入したパッケージを容易に製造することができる。
【0006】
好ましい態様において、前記流通工程において、前記第2の貫通孔は、コーティング剤の中に配置され、前記コーティング剤を流入させる場合には、前記流体機械により、前記パッケージ内の気体を前記第1の貫通孔から外部に排出して、当該パッケージ内の圧力を下げてもよい。
この封止方法によれば、パッケージの内部にコーティング剤を短時間で流入させることができる。
【0007】
好ましい態様において、前記流通工程において、前記コーティング剤を流出する場合には、前記流体機械により、前記パッケージの内部に前記第1の貫通孔を介して圧縮した気体を入れて、当該パッケージ内の圧力を上げてもよい。
この封止方法によれば、パッケージの内部からコーティング剤を短時間で流出させることができる。
【0008】
好ましい態様において、前記接合工程において、前記パッケージと前記蓋とが接合する面には、接合材料が塗布され、当該パッケージと当該蓋との間には、一端が外部に突出するように棒状部材が配置され、当該接合材料が溶融されることにより前記パッケージと前記蓋とが接合され、冷却後、当該棒状部材が引き抜かれることにより、当該接合材料により前記第2の封止材が形成されてもよい。
この封止方法によれば、パッケージと蓋との間に容易に第2の封止材を設けることができる。
【0009】
好ましい態様において、前記接合工程において、前記パッケージと前記蓋とが接合する面には、融点が第1の温度である接合材料が塗布され、前記パッケージと前記蓋との間には、融点が前記第1の温度よりも高い第2の温度である材料で形成され、貫通孔を有する前記第2の封止材が配置され、前記接合材料は、前記第1の温度以上前記第2の温度未満の温度で加熱され、当該接合材料が溶融することにより、前記パッケージと前記蓋とが接合され、前記封止工程において、前記第2の封止材は、前記第2の温度以上の温度で加熱されてもよい。
この封止方法によれば、パッケージと蓋との間に容易に第2の封止材を設けることができる。
【0010】
また、本発明は、開口部を有するパッケージと当該開口部を覆う蓋との間に、貫通孔を有する管状部材を一方の端部が外部に突出するように設け、当該管状部材と前記パッケージ又は前記蓋との間に封止材を設け、当該パッケージと当該蓋とを接合する接合工程と、前記管状部材の前記端部には、流体の流通を制御する流体機械が接続され、当該流体機械により、前記パッケージの内部と外部との間で前記貫通孔を介して当該流体を流通させる流通工程と、前記管状部材を引き抜き、前記封止材を溶融させて、当該管状部材の引き抜いたときに形成される前記パッケージと前記蓋との間隙を封止する封止工程とを備えることを特徴とするパッケージの封止方法を提供する。
この封止方法によれば、パッケージの内部と外部との間で流体が流通し易くしつつ、パッケージを容易に封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】磁気測定装置の構成を表すブロック図
【図2】実施形態に係るガスセルを示す斜視図
【図3】実施形態に係るガスセルの製造工程を示すフローチャート
【図4】実施形態に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図5】実施形態に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図6】実施形態に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図7】実施形態に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図8】実施形態に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図9】実施形態に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図10】変形例1に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図11】変形例1に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図12】変形例1に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図13】変形例1に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図14】変形例1に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図15】変形例1に係るガスセルの製造工程を説明する図
【図16】変形例2に係るガスセルアレイの平面図
【図17】変形例2に係るガスセルアレイの断面図
【図18】変形例3に係るパッケージの平面図
【図19】変形例6に係るステップS150(第2の封止工程)を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態
(1)構成
図1は、実施形態に係る磁気測定装置1の構成を表すブロック図である。磁気測定装置1は、心臓から発生する磁場(心磁)または脳から発生する磁場(脳磁)等、生体から発生する磁場を、生体の状態の指標として測定する磁気センサーである。磁気測定装置1は、ガスセルアレイ10と、ポンプ光照射ユニット20と、プローブ光照射ユニット30と、検出ユニット40とを有する。ガスセルアレイ10は、複数のガスセル11を有する。ガスセル11内には、アルカリ金属ガス(例えば、セシウム(Cs))が封入されている。ポンプ光照射ユニット20は、アルカリ金属原子と相互作用するポンプ光(例えば、セシウムのD1線に相当する波長894nmの光)を出力する。ポンプ光は円偏光成分を有する。ポンプ光が照射されると、アルカリ金属原子の最外殻電子が励起され、スピン偏極が生じる。スピン偏極したアルカリ金属原子は、被測定物が生じる磁場Bによって歳差運動をする。一つのアルカリ金属原子のスピン偏極は、時間の経過とともに緩和するが、ポンプ光がCW(Continuous Wave)光であるので、スピン偏極の形成と緩和は、同時平行的かつ連続的に繰り返される。その結果、原子の集団全体としてみれば、定常的なスピン偏極が形成される。
【0013】
プローブ光照射ユニット30は、直線偏光成分を有するプローブ光を出力する。ガスセル11の透過前後において、プローブ光の偏光面は、ファラデー効果により回転する。偏光面の回転角は、磁場Bの関数である。検出ユニット40は、プローブ光の回転角を検出する。検出ユニット40は、入射した光の光量に応じた信号を出力する光検出器と、信号を処理するプロセッサーと、データを記憶するメモリーとを有する。プロセッサーは、光検出器から出力された信号を用いて磁場Bの大きさを算出する。プロセッサーは、算出した結果を示すデータをメモリーに書き込む。こうして、ユーザーは、被測定物から発生する磁場Bの情報を得ることができる。
【0014】
図2は、ガスセル11を示す斜視図である。ガスセル11は、石英ガラスまたはホウケイ酸ガラス等、光透過性を有する材料を用いて形成されている。ガスセル11は、パッケージ12とリッド13とを有する。パッケージ12は、例えばガラス成型により製造される。なお、パッケージ12は、ガラス加工により形成されてもよい。パッケージ12は、アルカリ金属ガスが封入される主室14を有する。この主室14は、外部に向けて開口されている。つまり、パッケージ12は、開口部を有する。リッド13は、パッケージ12の上面を覆う蓋である。リッド13は、例えばガラスの平板である。
【0015】
パッケージ12には、主室14の隣に断面がV字型の凹部15が形成されている。この凹部15には、アルカリ金属が封入されたアンプル50が収容される。このアンプル50は、例えばガラス容器である。アンプル50は、アルカリ金属原子を収容する収容部として用いられる。パッケージ12の上面には、凹部15から主室14に向かって溝16が形成されている。この溝16も、例えばガラス成型で形成される。凹部15と主室14とは、この溝16を介して接続される。溝16の内径は、後述する洗浄液やコーティング剤を流通させることはできるが、主室14内でスピン偏極しているアルカリ金属原子が入り難いような大ききであるのが好ましい。図2に示す溝16では、主室14側の端部が、凹部15側の端部に比べて内径が小さくなっている。また、パッケージ12の上面には、主室14から外部へ向けて溝17が形成され、凹部15から外部へ向けて溝18が形成されている。さらに、パッケージ12の上面には、溝17と交わるように、断面がV字型の凹部19が形成されている。
【0016】
(2)製造方法
図3は、ガスセル11の製造工程を示すフローチャートである。図4〜9は、ガスセル11の製造工程を説明する図である。図4〜9では、図2に示すI−I線で切断したガスセル11の断面が示されている。ステップS110(接合工程)において、パッケージ12とリッド13とが接合する面に、ペースト状の低融点ガラス60を塗布する。具体的には、パッケージ12の上面とリッド13の下面の周辺部とに、ペースト状の低融点ガラス60を塗布する。この低融点ガラス60の塗布は、例えばスクリーン印刷やディスペンサを利用して行われる。低融点ガラス60を塗布した後、加熱により、低融点ガラス60に含まれる溶剤成分を蒸発させ、乾燥させる。次に、アンプル50をパッケージ12の凹部15に置く。アンプル50を置いた後、図4に示すように、棒状の金属ワイヤ61を溝17に入れる。このとき、金属ワイヤ61は、一端が外部に突出し、他端が凹部19内に突出するように配置される。また、貫通孔77を有する筒状の金属管62を溝18に入れる。このとき、金属管62は、一方の端部が外部に突出し、他端が凹部15内に突出するように配置される。この金属管62の一方の端部には、配管102を介してポンプ100が接続される。この金属管62の端部と配管102とは、継手101を用いて接続される。ポンプ100は、ガスセル11の内部から気体を排出させ、又はガスセル11の内部に圧縮した空気を入れることにより、ガスセル11内の圧力を制御する機能を有する。金属管62は、低融点ガラス60に接合し難い金属、例えばニッケル等の材料を用いて形成されている。なお、金属管62は、全ての部分が低融点ガラス60に接合し難い金属で形成されている必要はない。例えば、金属管62は、低融点ガラス60に接合する金属を用いて形成された筒状の部材の表面に、ニッケルめっきを施したものであってもよい。なお、パッケージ12には、金属ワイヤ61や金属管62の位置決めができるように、金属ワイヤ61や金属管62が配置されるところに溝が形成されていてもよい。
【0017】
金属ワイヤ61及び金属管62を配置した後、パッケージ12の上にリッド13を重ねる。これにより、パッケージ12とリッド13との間に、低融点ガラス60を介して金属ワイヤ61、金属管62が挟み込まれる。つまり、金属管62とパッケージ12、及び、金属管62とリッド13との間に低融点ガラス60が設けられる。次に、加圧しながら、低融点ガラス60が溶融するような温度、例えば400℃まで加熱する。この加熱には、例えばアニール炉が利用される。この加熱により、パッケージ12とリッド13との間の低融点ガラス60が溶融し、パッケージ12とリッド13とが接合される。
【0018】
また、溶融した低融点ガラス60は、溝17において金属ワイヤ61の円周面を覆う。ただし、溝17から溢れた低融点ガラス60は、凹部19内に落ちる。そうすると、金属ワイヤ61において、外部に突出している一端と、凹部19内に突出している他端とは、低融点ガラス60で覆われない。従って、金属ワイヤ61は、溝17内の低融点ガラス60を貫通する。また、溶融した低融点ガラス60は、溝18において金属管62の円周面を覆う。ただし、溝18から溢れた低融点ガラス60は、凹部15内に落ちる。そのため、金属管62の貫通孔77の中に低融点ガラス60が入り込むのが防止される。冷却後、金属ワイヤ61を引き抜く。金属ワイヤ61を引き抜き難い場合には、超音波振動を印加して、棒状部材と接合材料との接合界面を剥離させてもよい。これにより、図5に示すように、パッケージ12とリッド13との間に、貫通孔71が形成される。この場合、貫通孔71を形成する低融点ガラス60が、第2の封止材として用いられる。
【0019】
ステップS120(コーティング工程)において、ガスセル11を洗浄液の中に入れる。このとき、貫通孔71が洗浄液の中に入るようにガスセル11を配置する。例えば、洗浄液の中に、貫通孔71が下になるような向きでガスセル11を配置する。次に、ポンプ100により、ガスセル11内の気体を貫通孔77から外部に排出して、ガスセル11内の圧力を下げる。これにより、洗浄液が貫通孔71からガスセル11の内部に流入する。洗浄液によりガスセル11内が洗浄された後、ポンプ100により、ガスセル11の内部に貫通孔77を介して圧縮した気体を入れて、ガスセル11内の圧力を上げる。これにより、洗浄液が貫通孔71からガスセル11の外部に流出する。
【0020】
このようにして、ガスセル11内の汚染物質を除去した後、コーティング剤を用いて、主室14の内面に膜70を形成する。このコーティング剤には、例えばパラフィンやシラン系炭化水素が使用される。また、コーティング剤には、ヘキサメチルジシランが使用されてもよい。膜70を形成する方法としては、液相成膜法と気相成膜法とがある。いずれの方法においても、上述した洗浄液と同様に、貫通孔71がコーティング剤の中に入るようにガスセル11を配置し、ポンプ100により、コーティング剤を貫通孔71から流入させ、貫通孔71から流出させる。ただし、液相成膜法を用いた場合には、コーティング剤が液体の状態でガスセル11内に流入する。この場合には、例えばコーティング剤の中に、貫通孔71が下になるような向きでガスセル11を配置する。一方、気相成膜法を用いた場合には、コーティング剤が気体の状態でガスセル11内に流入する。洗浄液やコーティング剤は、貫通孔71を介してガスセル11の内部と外部との間で流通する流体である。また、ポンプ100は、流体の流通を制御する流体機械として用いられる。つまり、ステップS120(コーティング工程)は、流体の流通を制御するポンプ100により、ガスセル11の内部と外部との間で、貫通孔71を介して流体を流通させる流通工程に含まれる。ガスセル11からコーティング剤が流出された後、金属管62を引き抜く。これにより、パッケージ12とリッド13との間に、間隙72が形成される。この場合、間隙72を形成する低融点ガラス60が、第1の封止材として用いられる。
【0021】
ステップS130(第1の封止工程)において、図6に示すように、真空環境の下、貫通孔71を形成している低融点ガラス60にリッド13を介してレーザ光を照射し、加熱する。これにより、図7に示すように、低融点ガラス60が溶融し、貫通孔71が封止される。レーザ光の吸収を向上させるために、低融点ガラス60に光吸収材を添加してもよい。
【0022】
ステップS140(アンプル破壊工程)において、図7に示すように、真空環境の下、レーザ光の焦点をアンプル50に合わせ、リッド13を介してレーザ光をアンプル50に照射する。これにより、アンプル50に穴が開けられ、又はアンプル50が割断されて、アンプル50が破壊される。この「破壊」とは、アンプル50の形を崩して、アンプル50の内部と外部とを連通させることをいう。レーザ光の吸収を向上させるために、アンプルに光吸収材の膜を形成してもよい。また、超短パルスレーザを用いてアンプル50を破壊してもよい。アンプル50の破壊にあたり、気化成分が発生することがある。この気化成分は、間隙72から外部へ排気される。気化成分が間隙72から排気されるのに十分な時間が確保されるように、次のステップS150(第2の封止工程)は、アンプル50が破壊された後、決められた時間が経過してから行われる。
【0023】
ステップS150(第2の封止工程)において、図8に示すように、真空環境の下、間隙72を形成している低融点ガラス60にリッド13を介してレーザ光を照射し、加熱する。これにより、図9に示すように、低融点ガラス60が溶融し、間隙72が封止される。
【0024】
ステップS160(充填工程)において、ガスセル11内にアルカリ金属ガスを充填させる。具体的には、ガスセル11を加熱することにより、アンプル50内のアルカリ金属を気化させる。これにより、アンプル50からアルカリ金属ガスが放出される。図9に示すように、アンプル50から放出されたアルカリ金属ガスは、溝16を介して主室14に移動する。これにより、アルカリ金属ガスが拡散され、主室14内にアルカリ金属ガスが充填される。
【0025】
この実施形態では、金属管62が外部に突出しているため、ここにポンプ100の配管102を接続することができる。これにより、ポンプ100を使って洗浄液やコーティング剤の流入や流出を行うことができるため、ポンプ100を使わない場合に比べて、洗浄液やコーティング剤の流入や流出にかかる時間を短くすることができる。また、貫通孔71や間隙72は、いずれも通常のガラスより溶融点の低い低融点ガラス60で形成されている。そのため、貫通孔71や間隙72が通常のガラスで形成されている場合に比べて、低温で加熱しても貫通孔71や間隙72を封止することができる。すなわち、実施形態によれば、ガスセル11の内部と外部との間で洗浄液やコーティング剤が流通し易くしつつ、ガスセル11を容易に封止することができる。
【0026】
また、上述した実施形態では、ポンプ100の作動によりガスセル11内を洗浄液やコーティング剤が循環するようになっているが、ポンプ100の作動中又は作動後に、洗浄液やコーティング剤が金属管62の貫通孔77に入り込んでしまう場合がある。このような場合において、仮に金属管62がないときには、封止材として用いられる低融点ガラス60の内壁に洗浄液やコーティング剤が付着してしまう。そうすると、低融点ガラス60を溶融して間隙72を封止するときに、低融点ガラス60に洗浄液やコーティング剤が混入し、封止効果が低下してしまう。しかし、本実施形態によれば、このような場合にも洗浄液やコーティング剤は、金属管62の貫通孔77の中に入ることになるため、封止剤として用いられる低融点ガラス60には、洗浄液やコーティング剤が付着しない。これにより、間隙72を封止するときに、低融点ガラス60に洗浄液やコーティング剤が混入しないため、封止の信頼性が向上する。
【0027】
2.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0028】
(1)変形例1
上述した実施形態では、金属ワイヤ61を用いて、低融点ガラス60により貫通孔71を有する封止材を形成していた。しかし、この封止材に代えて、予め貫通孔73を有する筒状の形状に成形された封止材81を用いてもよい。この場合、封止材81が第2の封止材として用いられる。この変形例1に係るガスセル11の構成は、実施形態で説明した構成と概ね同じである。ただし、パッケージ12には、凹部19は設けられていない。
【0029】
図10〜15は、変形例1に係るガスセル11の製造工程を説明する図である。上述したステップS110(接合工程)において、図10に示すように、パッケージ12の溝17には、金属ワイヤ61に代えて、筒状の封止材81が配置される。この封止材81は、リッド13とパッケージ12に塗布された低融点ガラス60よりも融点が高い低融点ガラスや半田などの材料を用いて形成されている。ここでは、低融点ガラス60の融点が温度T1(第1の温度)であり、封止材81を形成する材料の融点が温度T2(第2の温度)である場合を想定する。この場合、パッケージ12とリッド13とを接合するときには、温度T1以上温度T2未満の温度で加熱され、リッド13とパッケージ12に塗布された低融点ガラス60だけが溶融される。このときの加熱温度は、封止材81の融点よりも低いため、封止材81は、溶融せずに筒状の形状を保つ。
【0030】
上述したステップS120(コーティング工程)において、図11に示すように、この筒状の封止材81の貫通孔73を介して洗浄液やコーティング剤を流入、流出させる。上述したステップS130(第1の封止工程)において、図12に示すように、レーザ光を照射して、低融点ガラス60とともに封止材81を温度T2以上の温度で加熱する。これにより、低融点ガラス60とともに封止材81が溶融して、貫通孔73が封止される。その他の工程は、上述した実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
(2)変形例2
ガスセルアレイ10は、単に複数のガスセル11を並べたものに限らない。
図16は、変形例2に係るガスセルアレイEのI−I断面図である。このガスセルアレイ10Eは、ガスセル11に複数の主室14を設けたものと同様の構成を有している。ガスセルアレイ10Eは、パッケージ12Eとリッド13Eとを有している。パッケージ12Eは、4つの主室14A〜14Dを有している。このパッケージ12Eの上面には、上述した凹部15,19,溝16〜18に加えて、溝91〜93が形成されている。溝91は、主室14Aと主室14Bとを接続する。溝92は、主室14Bと主室14Cとを接続する。溝93は、主室14Cと主室14Dとを接続する。凹部15は、主室14Dの隣に形成される。溝17は、主室14Aから外部に向けて形成される。このガスセルアレイ10Eでは、アンプル50から放出されたアルカリ金属ガスは、溝16を介して主室14Dへと移動する。続いて、アルカリ金属ガスは、溝93,92,91を介して、主室14C,14B,14Aへと順に移動する。これにより、主室14A〜14Dにアルカリ金属ガスが充填される。
【0032】
また、ガスセルアレイ10において、複数のガスセル及びダミーセルを含むセル群が、xy平面上に2次元配置(マトリクス状に配置)されてもよい。
図17は、変形例2に係るガスセルアレイ10Fの断面図である。この断面は、図に示すxy平面に平行である。ガスセルアレイ10Fは、ガスセル110と、ガスセル120と、ガスセル140と、ガスセル150と、ダミーセル130とを有している。ガスセル110とダミーセル130との間には、貫通孔111が設けられている。ガスセル120とダミーセル130との間には、貫通孔121が設けられている。ガスセル140とダミーセル130との間には、貫通孔141が設けられている。ガスセル150とダミーセル130との間には、貫通孔151が設けられている。ダミーセル130にはアンプル50が収納される。アンプル50から放出されたアルカリ金属ガスは、ダミーセル130から、貫通孔111、貫通孔121、貫通孔141、および貫通孔151を介して、ガスセル110、ガスセル120、ガスセル140、およびガスセル150に拡散される。
【0033】
なお、図17は断面図であるため示されていないが、ダミーセル130の上面には、図2に示すガスセル11と同様に、ダミーセル130から外部へと向かう溝17及び溝18が形成されている。この溝17と溝18とは、例えば対向する位置に設けられる。なお、このガスセルアレイ10Fでは、アンプル50がダミーセル130に配置されるため、凹部15を設ける必要はない。ガスセルアレイ10Fを封止する方法については、上述したガスセル11を封止する方法と同様である。
【0034】
(3)変形例3
溝17,溝18の位置は、図2に示す位置に限定されない。
図18は、変形例3に係るパッケージ12Fの平面図である。図18に示す主室14の形状は、直方体である。この場合、主室14の角においては、アルカリ金属原子のスピン偏極が緩和しやすい。従って、溝17と溝18とは、パッケージ12Fの上面において、主室14の対角に設けられてもよい。なお、図18に示す溝17,18は、ガスセル11の側面と平行に延びるように形成されているが、主室14の角からガスセル11の角に向けて延びるように形成されていてもよい。
【0035】
(4)変形例4
上述した実施形態では、洗浄液やコーティング剤を流入させるときと流出させるときの両方において、ポンプ100を使用していた。しかし、上述したように、洗浄液やコーティング剤の中に、貫通孔71が下になるような向きでガスセル11を配置した場合には、ポンプ100を使用しなくても、洗浄液やコーティング剤は貫通孔71から流れ落ちる。従って、洗浄液やコーティング剤を流入させるときのみポンプ100を使用してもよい。
【0036】
(5)変形例5
金属管62は、他端が溝16内に突出するように配置されてもよい。図2に示す例では、溝16の主室14側の端部が、凹部15側の端部に比べて内径が小さくなっている。この場合、金属管62の他端は、溝16の内径が大きい部分に配置されるのが好ましい。これにより、主室14内の気体を効率よく排出し、又は主室14内に圧縮した空気を効率よく入れることができる。
【0037】
(6)変形例6
アンプル50から気化成分が放出されない場合や、アンプル50から放出される気化成分が影響を及ぼさないほど微量である場合など、アンプル50から放出される気化成分を外部に放出する必要がない場合がある。このような場合には、ステップS140(アンプル破壊工程)を行う前に、ステップS150(第2の封止工程)を行ってもよい。例えば、ステップS120(コーティング工程)において金属管62を引き抜きながら、ステップS150(第2の封止工程)を行ってもよい。
【0038】
図19は、変形例6に係るステップS150(第2の封止工程)を説明する図である。このステップS150(第2の封止工程)において、金属管62は、まずレーザ光が照射される位置P1と溝18の外部に開口する端部の位置P2との間まで引き抜かれる。続いて、位置P1において、レーザ光を低融点ガラス60に照射して加熱する。これにより、低融点ガラス60が溶融し、金属管62を引き抜いたときに形成される間隙72が予め封止される。その後、金属管62を引き抜く。このようにして、金属管62を完全に引き抜く前に間隙72を封止することにより、コーティング剤により主室14の内面に膜70が形成された後、ガスセル11内の機密性が保たれる。これにより、ガスセル11の内面に形成された膜70を外気に触れさせないようにすることができる。なお、この場合には、間隙72を封止するときに、アニール炉を利用してガスセル11全体を加熱してもよい。
【0039】
(7)変形例7
ガスセル11の形状は図2に示す形状に限定されない。図2に示すガスセル11は、直方体の形状をしている。しかし、ガスセル11の形状は、直方体以外の多面体、球体、または、円柱等、一部に曲面を有するものであってもよい。
【0040】
(8)変形例8
上述した実施形態では、パッケージ12とリッド13とを接合する接合材料として、低融点ガラスが用いられていた。しかし、接合材料は、低融点ガラスに限定されない。例えば、半田であってもよい。また、パッケージ12とリッド13とをオプティカルコンタクトにより接合してもよい。この場合、溝17,18だけに接合材料が塗布される。また、接合材料は、パッケージ12とリッド13との両方に塗布されてもよいし、パッケージ12の上面又はリッド13の下面だけに塗布されてもよい。この場合、金属管62とパッケージ12との間、又は金属管62とリッド13との間のいずれか一方だけに、封止材として用いられる低融点ガラス60が設けられることになる。この場合にも、この低融点ガラス60の量が十分に多ければ、低融点ガラス60の溶融により、金属管62が引き抜かれた後に形成される間隙72を封止することができる。
【0041】
(9)変形例9
上述した実施形態では、パッケージ12とリッド13との間に設けられる管状部材として、ニッケルを用いて形成された筒状の金属管62が用いられていた。しかし、管状部材の形状は、筒状に限定されない。例えば、管状部材は、断面が三角形や四角形など円以外の形状である管状形状であってもよい。また、管状部材の材料は、ニッケルに限定されない。例えば、管状部材は、ニッケル以外の材料を用いて形成されてもよい。ただし、管状部材は、パッケージ12とリッド13との接合に用いられる接合材料と接合し難い材料を用いて形成されるのが好ましい。
【0042】
(10)変形例10
封止材の形状は、貫通孔を有する筒状の形状に限定されない。例えば、封止材の形状は、立方体や直方体などの多面体、球体、円柱などの、貫通孔を有する筒状以外の立体形状であってもよい。この場合、実施形態では、封止材の形状に合わせた溝17が形成される。変形例1では、このような形状を有する封止材81が用いられる。また、封止材の材料は、低融点ガラスや半田に限定されない。例えば、樹脂であってもよい。
【0043】
(11)変形例11
上述した実施形態では、パッケージ12とリッド13との間に配置される棒状部材として、ニッケルを用いて形成された金属ワイヤ61が用いられていた。しかし、棒状部材は、ニッケルを用いて形成された金属ワイヤ61に限定されない。例えば、棒状部材は、ニッケル以外の材料を用いて形成された棒状の部材に、ニッケルめっきを施したものであってもよい。この棒状部材は、パッケージ12とリッド13との接合に用いられる接合材料と接合し難い材料を用いて形成されるのが好ましい。
【0044】
(12)変形例12
アルカリ金属原子は、固体、液体、または気体のうち、どの状態でガスセル11に導入されてもよい。アルカリ金属は、少なくとも測定時にガス化していればよく、常にガス状態である必要はない。
【0045】
(13)変形例13
ガスセル11の用途は、磁気センサーに限定されない。例えば、ガスセル11は、原子発振器に用いられてもよい。
【0046】
(14)変形例14
本発明に係るパッケージの封止方法を用いて封止されるパッケージは、ガスセル11に限定されない。例えば、水晶やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いたジャイロセンサー、加速度センサー、圧力センサー、傾斜センサー、水晶発振器などの電子デバイスの筐体には、気密封止パッケージが使われている。本発明に係るパッケージの封止方法は、この気密封止パッケージを封止するのに用いられてもよい。具体的には、上述した実施形態又は変形例と同じ方法で、気密封止パッケージとリッドとの間に、貫通孔を有する管状部材を一方の端部が外部に突出するように設け、この管状部材とパッケージ又はリッドとの間に封止材を設け、パッケージと蓋とを接合する。管状部材の端部には、流体の流通を制御する流体機械が接続され、この流体機械により、パッケージの内部と外部との間で貫通孔を介して流体を流通させる。管状部材を引き抜き、封止材を溶融させて、管状部材の引き抜いたときに形成されるパッケージとリッドとの間隙を封止する。この流体機械としては、例えば真空ポンプが用いられる。
【符号の説明】
【0047】
1…磁気測定装置、10…ガスセルアレイ、11…ガスセル、12…パッケージ、13…リッド、50…アンプル、61…金属ワイヤ、62…金属管、71,77…貫通孔、72…間隙、100…ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するパッケージ内に、アルカリ金属原子を収容する収容部を配置し、前記パッケージと前記開口部を覆う蓋との間に、第1の貫通孔を有する管状部材を一方の端部が外部に突出するように設け、当該管状部材と前記パッケージ又は前記蓋との間に第1の封止材を設け、前記パッケージと前記蓋との間に、第2の貫通孔を有する第2の封止材を設け、前記パッケージと前記蓋とを接合する接合工程と、
前記管状部材の前記端部には、流体の流通を制御する流体機械が接続され、当該流体機械により、前記第2の貫通孔を介して前記パッケージの内部にコーティング剤を流入させ、当該コーティング剤により当該パッケージの内面に膜を形成し、当該流体機械により、前記パッケージ内部の前記コーティング剤を前記第2の貫通孔を介して外部に流出させる流通工程と、
前記管状部材を引き抜き、前記第1の封止材を溶融させて、当該管状部材の引き抜いたときに形成される前記パッケージと前記蓋との間隙を封止し、前記第2の封止材を溶融させて、前記第2の貫通孔を封止する封止工程と、
前記収容部にレーザ光を照射して、当該収容部を破壊する破壊工程と
を備えることを特徴とするパッケージの封止方法。
【請求項2】
前記流通工程において、前記第2の貫通孔は、コーティング剤の中に配置され、前記コーティング剤を流入させる場合には、前記流体機械により、前記パッケージ内の気体を前記第1の貫通孔から外部に排出して、当該パッケージ内の圧力を下げる
ことを特徴とする請求項1に記載のパッケージの封止方法。
【請求項3】
前記流通工程において、前記コーティング剤を流出させる場合には、前記流体機械により、前記パッケージの内部に前記第1の貫通孔を介して圧縮した気体を入れて、当該パッケージ内の圧力を上げる
ことを特徴とする請求項2に記載のパッケージの封止方法。
【請求項4】
前記接合工程において、前記パッケージと前記蓋とが接合する面には、接合材料が塗布され、当該パッケージと当該蓋との間には、一端が外部に突出するように棒状部材が配置され、当該接合材料が溶融されることにより前記パッケージと前記蓋とが接合され、冷却後、当該棒状部材が引き抜かれることにより、当該接合材料により前記第2の封止材が形成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパッケージの封止方法。
【請求項5】
前記接合工程において、前記パッケージと前記蓋とが接合する面には、融点が第1の温度である接合材料が塗布され、前記第2の封止材は、融点が前記第1の温度よりも高い第2の温度である材料で形成され、前記接合材料は、前記第1の温度以上前記第2の温度未満の温度で加熱され、当該接合材料が溶融することにより、前記パッケージと前記蓋とが接合され、
前記封止工程において、前記第2の封止材は、前記第2の温度以上の温度で加熱される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパッケージの封止方法。
【請求項6】
開口部を有するパッケージと当該開口部を覆う蓋との間に、貫通孔を有する管状部材を一方の端部が外部に突出するように設け、当該管状部材と前記パッケージ又は前記蓋との間に封止材を設け、当該パッケージと当該蓋とを接合する接合工程と、
前記管状部材の前記端部には、流体の流通を制御する流体機械が接続され、当該流体機械により、前記パッケージの内部と外部との間で前記貫通孔を介して当該流体を流通させる流通工程と、
前記管状部材を引き抜き、前記封止材を溶融させて、当該管状部材の引き抜いたときに形成される前記パッケージと前記蓋との間隙を封止する封止工程と
を備えることを特徴とするパッケージの封止方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate