パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計
【課題】製造効率の向上を図った上で、両基板を高精度に位置合わせでき、パッケージ内の真空度を確保できるパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計を提供する。
【解決手段】ベース基板用ウエハ40において、パッケージ形成領域の外側の非形成領域N2にバンプスペーサ42を形成するバンプ形成工程と、バンプスペーサ42を介してベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせた状態で、各ウエハ40,50を加熱する予備加熱工程と、導電性を有する接合材23を介して両ウエハ40,50を陽極接合する接合工程と、を有し、接合工程では、両ウエハ40,50を加圧してバンプスペーサ42を押し潰した状態で陽極接合を行うことを特徴とする。
【解決手段】ベース基板用ウエハ40において、パッケージ形成領域の外側の非形成領域N2にバンプスペーサ42を形成するバンプ形成工程と、バンプスペーサ42を介してベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせた状態で、各ウエハ40,50を加熱する予備加熱工程と、導電性を有する接合材23を介して両ウエハ40,50を陽極接合する接合工程と、を有し、接合工程では、両ウエハ40,50を加圧してバンプスペーサ42を押し潰した状態で陽極接合を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子としては、例えば互いに接合されたベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片と、を備えている。
【0003】
このような2層構造タイプの圧電振動子を製造する場合には、まずリッド基板にキャビティ用の凹部を形成する一方、ベース基板上に圧電振動片をマウントする。
次に、ベース基板及びリッド基板を、真空チャンバ内に配設された陽極接合装置にセットして、導電性材料からなる陽極接合用の接合材を介してこれらのウエハを重ね合わせる。その後、所定の温度(以下、接合温度という)で所定の電圧を印加して両基板を陽極接合する。陽極接合の方法として、例えば特許文献1には、シリコン結晶板とガラス材料とを陽極接合する方法が開示されている。
【0004】
ところで、一般に、ベース基板及びリッド基板は通常ガラス材により形成されており、ガラス材には有機物や水分等が含まれている。
特に、ガラスフリットを焼成して圧電振動子の内外を動通させる貫通電極を形成した場合、焼成後のガラスフリット中に有機溶剤が残存しているおそれがある。このため、陽極接合する際に各基板を加熱すると、各基板のガラス材及びガラスフリット内の有機物や水分等がアウトガスとして発生するおそれがある。
【0005】
ここで、圧電振動子は、等価抵抗値(実効抵抗値、Re)を低く抑えることが望まれている。一般に、等価抵抗値は、圧電振動片が封止されている圧電振動子内が真空に近いほど低く抑えられることが知られている。したがって、各基板から発生するアウトガスを効果的に圧電振動子外に排出しつつ、陽極接合を行う必要がある。
【0006】
そのため、近時では、接合後におけるキャビティ内でのアウトガスの残留を抑制するために、ベース基板とリッド基板とを位置合わせした後、スペーサを介して両者を重ね合わせ、接合前に予備加熱を行う方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−72433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した方法では、まず予備加熱の前に、ベース基板とリッド基板との間にスペーサを間に挟んだ状態で位置合わせを行う必要があるため、位置合わせが難しいという問題がある。
特に、予備加熱の後に、スペーサを引き抜くことでベース基板とリッド基板との位置ずれが発生する虞がある。
【0009】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、製造効率の向上を図った上で、両基板を高精度に位置合わせでき、パッケージ内の真空度を確保できるパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された第1基板及び第2基板の間に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、前記第1基板において、パッケージ形成領域の外側の領域に第1バンプを形成する第1バンプ形成工程と、前記第1バンプを介して前記第1基板及び前記第2基板を重ね合わせた状態で、前記各基板を加熱する予備加熱工程と、導電性を有する接合材を介して前記第1基板、及び前記第2基板を陽極接合する接合工程と、を有し、前記接合工程では、前記第1基板及び前記第2基板を加圧して前記第1バンプを押し潰した状態で陽極接合を行うことを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、接合工程の前に両基板からアウトガスを放出させることができる。その際、第1基板におけるパッケージ形成領域の外側の領域に第1バンプを形成し、この第1バンプを介して両基板を重ね合わせて予備加熱をすることで、予備加熱工程により両基板から放出されたアウトガスは、第1バンプにより形成された第1基板、及び第2基板の間の隙間から外部に排出される。これにより、その後の接合工程でアウトガスがパッケージ内に放出されるのを抑制できるので、パッケージ内の良好な真空度を確保できる。
特に、その後の接合工程において、第1バンプをそのまま押し潰した状態で両基板を接合するため、予備加熱工程の後に従来のようにスペーサを引き抜く必要がない。これにより、両基板の位置合わせ後に位置ずれが発生する虞がないので、両基板を高精度に位置合わせした状態で接合できる。また、予備加熱工程の後に従来のようにスペーサを引き抜く必要がないので、製造効率の向上も図ることができる。
【0012】
また、前記第1基板において、前記パッケージ形成領域上の電極パターンに前記電子部品を実装するための第2バンプを形成する第2バンプ形成工程を有し、前記第1バンプ形成工程と、前記第2バンプ形成工程とを同一工程で行うことを特徴としている。
この構成によれば、第1バンプ形成工程と第2バンプ形成工程とを同一工程で行うことで、第1バンプの追加に伴う製造工数の増加を抑制することができる。
【0013】
また、前記第2基板の接合面おいて、前記第1バンプと対向する領域には、前記第1バンプの先端側を収容する位置決め凹部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1基板と第2基板とを位置合わせする際に、第1バンプの先端側が位置決め凹部内に収容されるように、両基板を重ね合わせることで、両者を高精度に位置合わせできるとともに、その後の位置ずれの虞もない。
さらに、位置決め凹部を形成することで、接合工程時に両基板により押し潰された第1バンプは、位置決め凹部内に収容されることになる。これにより、第1バンプを押し潰した状態で両基板を確実に密着させた上で、第1バンプが両基板間で広範囲に広がるのを抑制できる。その結果、両基板の接合面積を確保して、両基板をより強固に接合できる。
【0014】
また、少なくとも前記第1基板の接合面において、前記第1バンプの周囲には、溜まり凹部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、接合工程時に両基板により押し潰された第1バンプは、溜まり凹部内に収容されることになる。これにより、第1バンプを押し潰した状態で両基板を確実に密着させた上で、第1バンプが両基板間で広範囲に広がるのを抑制できる。その結果、両基板の接合面積を確保して、両基板をより強固に接合できる。
【0015】
また、第1バンプ形成工程では、前記第1基板の周方向に間隔をあけて前記第1バンプを少なくとも3つ以上形成することを特徴としている。
この構成によれば、両基板間の全域に亘って隙間が形成されることになるため、予備加熱工程において、両基板から放出されたアウトガスを効率的に外部へ排出できる。
【0016】
また、前記第1基板と前記第1バンプとの間に、前記第1バンプと前記第1基板との密着性を高める密着膜が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1基板上に密着膜を介して第1バンプを形成することで、両基板を重ね合わせる際に第1バンプがずれたり、倒れたりするのを抑制して、第2基板を安定して支持することができる。これにより、両基板をより高精度に位置合わせすることができる。
【0017】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片が封入されていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造された圧電振動子であるため、等価抵抗値を低くすることができ、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るパッケージの製造方法によれば、製造効率の向上を図った上で、両基板を高精度に位置合わせでき、パッケージ内の真空度を確保できる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造された圧電振動子であるため、等価抵抗値を低くすることができ、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態における圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する流れを示すフローチャートである。
【図6】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】予備加熱工程を説明するための説明図であって、予備加熱室の側面図である。
【図8】予備加熱工程を説明するための説明図であって、予備加熱室の平面図である。
【図9】接合工程を説明するための説明図であって、陽極接合室の側面図である。
【図10】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図11】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図13】本実施形態の他の構成を示すベース基板用ウエハ、及びリッド基板用ウエハの断面図である。
【図14】本実施形態の他の構成を示すベース基板用ウエハ、及びリッド基板用ウエハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の第1面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0025】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対の貫通孔21,22が形成されている。貫通孔21,22は、ベース基板2の第1面2aから第2面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径したテーパ形状をなしている。
【0026】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の第1面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の第1面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0027】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型に形成されている。一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を互いに接近または離間する方向(幅方向)に所定の共振周波数で振動させる一対の励振電極(不図示)が形成されている。また、基部26の外表面上には、一対のマウント電極(不図示)が形成され、図示しない引き出し電極を介して一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0028】
このように構成された圧電振動片5は、図2,3に示すように、金等のバンプ(第2バンプ)Bを利用して、ベース基板2の第2面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の第2面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。なお、本実施形態の引き回し電極27,28は、クロムと金の積層膜であり、ガラス材料と密着性の良いクロムを下地膜として成膜した後に、その下地膜の表面に金を仕上げ層として成膜することにより形成されている。
【0029】
外部電極6,7は、ベース基板2の第1面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0030】
貫通電極8,9は、焼成によって貫通孔21,22に対して一体的に固定された筒体32、及び芯材部31によって形成されたものである。各貫通電極8,9は、貫通孔21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0031】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で、かつベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32を貫通するように配されている。また、本実施形態では貫通孔21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、貫通孔21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これら貫通孔21,22に対して強固に固着されている。
【0032】
芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。
そして、芯材部31を通して貫通電極8,9の電気導通性が確保されている。
【0033】
リッド基板3の第1面3b全体には、陽極接合用の接合材23が形成されている。具体的に、接合材23は、額縁領域3c及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材23はSi膜で形成されているが、接合材23をAlで形成することも可能である。なお接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材で形成することも可能である。そして後述するように、この接合材23とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0034】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0035】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を圧電振動子1毎に切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6は、ウエハ接合体の分解斜視図であり、図6に示す破線Mは、後述する個片化工程(S100)で切断する切断線を図示したものである。
図5に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S50以下)と、を有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0036】
(圧電振動片作製工程)
初めに、圧電振動片作製工程を行って図1〜4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0037】
(リッド基板用ウエハ作製工程)
リッド基板用ウエハ作製工程(S20)では、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を作製する。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の第1面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。この際、リッド基板用ウエハ50は、中央部に複数の凹部3aが配列されたパッケージ形成領域N1を構成し、パッケージ形成領域N1の外側に凹部3aが形成されない非形成領域N2を構成している。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の第1面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、第1面50aを鏡面加工する。
【0038】
次に、リッド基板用ウエハ50の第1面50aに接合材23を形成する接合材形成工程(S24)を行う。具体的には、まずスパッタやCVD等により、リッド基板用ウエハ50の第1面50aにおける全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材23を成膜する。その後、リッド基板用ウエハ50の非形成領域N2において、後述するバンプスペーサ42に対向する部分の接合材23が除去されるようにパターニングする。なお、本実施形態では、リッド基板用ウエハ50の非形成領域N2において、周方向に沿って間隔を空けて4箇所に接合材23が形成されていない接合材除去部51が設定されている。
以上により、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)が終了する。なお、接合材形成工程(S24)の前に接合面を研磨しているので、接合材23の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。また、接合材除去部51を設定せず、接合材23を第1面50aの全体に形成しても構わない。この場合には、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
【0039】
(ベース基板用ウエハ作製工程)
まず、図5,6に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極8,9を配置するための貫通孔21,22を複数形成する貫通孔形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工によりベース基板用ウエハ40の第1面40aに凹部を形成した後、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側から研磨することで、凹部を貫通させ、貫通孔21,22を形成することができる。
【0040】
続いて、貫通孔形成工程(S32)で形成された貫通孔21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。具体的には、貫通孔21,22内に芯材部31を挿入してガラスフリットを充填する。ガラスフリットは、主に粉末状のガラス粒子と、有機溶剤と、バインダ(固着剤)とにより構成されている。
そして、ガラスフリットを焼成して、ガラスの筒体32、貫通孔21,22及び芯材部31を一体化させる。このとき、ガラスフリット内部の有機溶剤やバインダ等が蒸発して、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)等のアウトガスが発生し、ガラスフリットの外部に放出される。
最後に、ベース基板用ウエハ40の第1面40a、及び第2面40bを研磨して、芯材部31を第1面40a、及び第2面40bに露出させつつ平坦面とすることにより、貫通孔21,22内に貫通電極8,9を形成する。これにより、貫通孔21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の両面40a,40bに対して面一な状態で保持され、貫通電極8,9を形成することができる。
【0041】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに導電性材料をパターニングして、引き回し電極27,28を形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。この際、ベース基板用ウエハ40は、上述したリッド基板用ウエハ50と同様に、中央部に複数の引き回し電極27,28が配列されたパッケージ形成領域N1を構成し、パッケージ形成領域N1の外側に引き回し電極27,28が形成されない非形成領域N2を構成している。
そして、本実施形態の引き回し電極形成工程(S34)では、ベース基板用ウエハ40の非形成領域N2において、上述した接合材除去部51に対向する位置に、引き回し電極27,28と同材料(例えばクロムと金の積層体)からなる密着膜41(図7参照)が残存するように導電性材料をパターニングする。すなわち、密着膜41は、非形成領域N2において周方向に間隔を空けて4箇所形成されている。
【0042】
最後に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極27、28上に、圧電振動片作製工程(S10)で作製された圧電振動片5をマウントするためのバンプ(第2バンプ)Bを形成する(S35:バンプ形成工程(第1バンプ形成工程、及び第2バンプ形成工程))。バンプBの形成方法は、引き回し電極27,28上における所定の位置に金線を溶接するスタッドバンプ法を採用することができる。
【0043】
ここで、本実施形態のバンプ形成工程(S35)では、上述した密着膜41上、すなわち非形成領域N2において周方向に間隔を空けて4箇所にバンプBと同形状のバンプスペーサ42(第1バンプ)を形成する。バンプB、及びバンプスペーサ42は、基端側から先端側に向かうに従い漸次先細る円錐台形状に形成され、その基端面、及び先端面が平坦に形成されている。また、バンプB、及びバンプスペーサ42は、高さが例えば100μm程度に形成されている。なお、図6では、バンプ形成工程(S35)で形成されるバンプB、及びバンプスペーサ42のうち、バンプスペーサ42のみを誇張して表現し、バンプBを省略している。
以上により、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0044】
(組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)で作製されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、バンプBを介して圧電振動片5をマウントする(S50)。具体的には、圧電振動片5の基部26をバンプB上に載置し、バンプBを所定温度に加熱しながら、圧電振動片5をバンプBに押し付けつつ超音波振動を印加する。これにより、図3に示すように、圧電振動片5の振動腕部24,25がベース基板用ウエハ40の第1面40aから浮いた状態で、基部26がバンプBに機械的に固着される。
【0045】
続いて、後述する接合工程(S70)に先立ち、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を予備加熱する予備加熱工程(S60)を行う。予備加熱工程(S60)は、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を真空チャンバ内にセットするセット工程(S61)と、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を予備加熱するウエハ加熱工程(S62)と、を有している。
予備加熱工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40の内部や、筒体32に残存している有機溶剤やバインダ、水分等を予備加熱により蒸発させ、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)等のアウトガスを放出している。そして、接合工程(S70)の際、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40が後述する接合温度F1,F2まで上昇しても、アウトガスが放出されるのを抑制している。
【0046】
(予備加熱工程)
図7,8は予備加熱工程を説明するための説明図であって、図7は予備加熱室の側面図であり、図8は平面図である。なお、図面をわかりやすくするために、各図では、バンプスペーサ42の大きさを誇張して表現している。また、図8では、リッド基板用ウエハ50および第1ヒータ71の図示を省略している。
まず、図7,8に示すように、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を予備加熱するため、真空チャンバ65内の予備加熱室67aに、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40をセットする(S61:セット工程S61)。
【0047】
真空チャンバ65には真空ポンプPが接続されており、この真空ポンプPにより予備加熱室67aの圧力が調節可能になっている。なお、真空チャンバ65内には、予備加熱室67aに隣接して陽極接合室67b(図9参照)が設けられており、予備加熱室67aと同様に陽極接合室67bの圧力が調節可能になっている。
予備加熱室67aには、リッド基板用ウエハ50を加熱する第1ヒータ71と、ベース基板用ウエハ40を加熱する第2ヒータ72と、が設けられている。第1ヒータ71及び第2ヒータ72には、市販のホットプレート等が使用される。
【0048】
リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40は、以下の手順で予備加熱室67aにセットする。
まず、後述する接合工程(S70)で陰極となる電極76を介して、ベース基板用ウエハ40の第1面40aを第2ヒータ72の上面72aに当接させて、ベース基板用ウエハ40を配置する。なお、電極76は、ステンレスやカーボン(C)等で形成されている。また、第2ヒータ72の上面72aには不図示の治具が配置されており、ベース基板用ウエハ40が第2ヒータ72に対して位置決めされる。さらに、治具を導電性材料により形成し、治具と電極を兼ねるような構成にしても構わない。
【0049】
続いて、ベース基板用ウエハ40の上にリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる。具体的には、両ウエハ40,50に形成された図示しないアライメントマークを指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。このとき、リッド基板用ウエハ50が、ベース基板用ウエハ40の非形成領域N2に形成されたバンプスペーサ42の先端面に当接した状態で両ウエハ40,50が重ね合わされる。すなわち、バンプスペーサ42は、両ウエハ40,50に挟持された状態となり、両ウエハ40,50間には面方向の全域に亘ってバンプスペーサ42の高さとほぼ同等の隙間Gが形成される。なお、上述したようにリッド基板用ウエハ50の非形成領域N2において、バンプスペーサ42に対向する部分は接合材23が除去された接合材除去部51が形成されているため、バンプスペーサ42の先端面はリッド基板用ウエハ50の第1面50aに直接当接している。
【0050】
その後、リッド基板用ウエハ50の第2面50bに第1ヒータ71の下面71bを当接させて、第1ヒータ71を配置する。第1ヒータ71の下面71bには不図示の治具が配置されており、リッド基板用ウエハ50が第1ヒータ71に対して位置決めされる。
以上により、セット工程(S61)が終了する。
【0051】
続いて、第1ヒータ71でリッド基板用ウエハ50を加熱し、第2ヒータ72でベース基板用ウエハ40を加熱する、ウエハ加熱工程(S62)を行う。ウエハ加熱工程(S62)では、真空下で、第1ヒータ71の設定温度をT1としてリッド基板用ウエハ50の第2面50bに当接させ、第2ヒータ72の設定温度をT2としてベース基板用ウエハ40の第1面40aに当接させている。
【0052】
ところで、予備加熱工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40の外部にアウトガスを排出することで、後述する接合工程(S70)の際、アウトガスが放出されるのを抑制することを目的としている。したがって、予備加熱工程(S60)におけるリッド基板用ウエハ50の実温度が、接合工程(S70)におけるリッド基板用ウエハ50の接合温度F1を確実に上回っている必要がある。また同様に、予備加熱工程(S60)では、ベース基板用ウエハ40の実温度が、接合工程(S70)におけるベース基板用ウエハ40の接合温度F2を確実に上回っている必要がある。
【0053】
ここで、予備加熱工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40との間に、バンプスペーサ42により隙間Gが形成されるため、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40の熱が隙間Gから放熱される虞がある。このため、予備加熱工程(S60)におけるリッド基板用ウエハ50の実温度は、第1ヒータ71の設定温度であるT1を大幅に下回り、さらに接合工程(S70)におけるリッド基板用ウエハ50の接合温度F1を下回るおそれがある。また、予備加熱工程(S60)におけるベース基板用ウエハ40の実温度は、第2ヒータ72の設定温度であるT2を大幅に下回り、さらに接合温度F2を下回る虞がある。このため、予備加熱工程(S60)で、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40の外部へのアウトガスの放出が不十分となり、接合工程(S70)でアウトガスを放出してしまう虞がある。
【0054】
そこで、各ヒータ71,72の温度と各ウエハ40,50の実温度との差分を予め測定しておき、この差分を考慮して予備加熱工程(S60)における各ヒータ71,72の設定温度T1,T2を決定することが望ましい。各ヒータ71,72で両ウエハ40,50をそれぞれ加熱すると、両ウエハ40,50及びガラスフリットからなる筒体32からアウトガスが放出される。放出されたアウトガスは、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との隙間Gから、真空チャンバ65の予備加熱室67a内に放出される。そして、所定時間(例えばアウトガスが放出しきると想定される時間)経過した後、ウエハ加熱工程(S62)を終了する。以上で、予備加熱工程(S60)が終了する。
【0055】
(接合工程)
図9は、接合工程を説明するための説明図であって、陽極接合室の側面図である。
次に、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を陽極接合する接合工程(S70)を行う。具体的には、図9に示すように、まず真空状態のまま、第1ヒータ71、及び第2ヒータ72とともに、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を予備加熱室67aから陽極接合室67bに移動する。陽極接合室67bでは、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40は、上述のセット工程(S61)と同じ状態でセットされる。
【0056】
続いて、不図示の加圧装置で第1ヒータ71の上面71aを押圧して、ベース基板用ウエハ40にリッド基板用ウエハ50を押付ける。なお、加圧装置の押圧力は、例えば500N程度である。すると、ベース基板用ウエハ40に形成されたバンプスペーサ42が両ウエハ40,50間で押し潰されることで、両ウエハ40,50が密着する。この際、バンプスペーサ42は、先端側にかけて漸次先細る円錐台形状に形成されているため、先端側から簡単に押し潰し易くなっている。
【0057】
続いて、加圧装置で押圧しながら、各ヒータ71,72により各ウエハ40,50をそれぞれ接合温度F1,F2に加熱する。この際、第2ヒータ72の温度を第1ヒータ71の温度よりも若干高く設定するのが望ましい。これにより、接合工程(S70)でベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を接合した後に反りが発生するのを防止できる。
ここで、上述した予備加熱工程(S60)では、接合温度F1,F2よりも高温になるように、両ウエハ40,50を加熱している。したがって、接合工程(S70)で両ウエハ40,50からアウトガスが放出されることがない。
【0058】
続いて、加圧装置で押圧しつつ第1ヒータ71および第2ヒータ72で加熱しながら、リッド基板用ウエハ50の接合材23を電源77の陽極電極に、ベース基板用ウエハ40と第2ヒータ72との間に配置された電極76を電源77の陰極電極に接続し、各電極間に例えば500V程度の電圧を印加する。すると、接合材23とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着することで、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40とを接合することができる。
これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。以上で、接合工程(S70)が終了する。
【0059】
この後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S80)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S90)。
そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断し、個片化する個片化工程(S100)を行う。
【0060】
そして、電気特性検査工程(S110)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。
最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0061】
このように、本実施形態では、ベース基板用ウエハ40の非形成領域N2にバンプスペーサ42を形成し、このバンプスペーサ42を介して両ウエハ40,50を重ね合わせて予備加熱をした後、バンプスペーサ42を押し潰した状態で陽極接合を行う構成とした。
この構成によれば、予備加熱工程(S60)を行うことで、接合工程(S70)の前にアウトガスを放出させることができる。その際、両ウエハ40,50の間にバンプスペーサ42を配置して予備加熱工程(S60)を行っているので、予備加熱工程(S60)により両ウエハ40,50や筒体32から放出されたアウトガスは、バンプスペーサ42により形成された隙間Gから外部に排出される。これにより、その後の接合工程(S70)でアウトガスがパッケージ10内に放出されるのを抑制できるので、パッケージ10内の良好な真空度を確保できる。
【0062】
特に、本実施形態では、セット工程(S61)において両ウエハ40,50を位置合わせした後、接合工程(S70)においてバンプスペーサ42をそのまま押し潰した状態で両ウエハ40,50を接合するため、従来のように予備加熱工程(S60)の後にスペーサを引き抜く必要がない。これにより、両ウエハ40,50の位置合わせ後に位置ずれが発生する虞がないので、両ウエハ40,50を高精度に位置合わせした状態で接合できる。また、従来のようにスペーサを引き抜く必要がないので、製造効率の向上も図ることができる。なお、ウエハ接合体60においてバンプスペーサ42を押し潰した領域では、両ウエハ40,50同士は接合されないが、本実施形態のバンプスペーサ42はパッケージ形成領域N1の外側、すなわち非形成領域N2に形成しているため、個片化工程(S100)においてパッケージ10と非形成領域N2とは分離される。したがって、個片化された圧電振動子1の振動特性等に何ら影響を与えるものではない。
そして、このように高精度に位置合わせされるとともに、良好な真空度が確保されたパッケージ10の内部に圧電振動片5が封入されて圧電振動子1が構成されているので、等価抵抗値を低くすることができ、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0063】
また、本実施形態のバンプスペーサ42は、上述したバンプ形成工程(S35)において、圧電振動片5のマウント用のバンプBと同一工程で形成するため、バンプスペーサ42の追加に伴う製造工数の増加を抑制することができる。
さらに、ベース基板用ウエハ40の周方向に沿ってバンプスペーサ42を4箇所形成することで、両ウエハ40,50の全域に亘って隙間Gが形成されることになるため、予備加熱工程(S60)において、効率的にアウトガスを外部へ排出できる。
【0064】
また、ベース基板用ウエハ40上に密着膜41を介してバンプスペーサ42を形成することで、ベース基板用ウエハ40とバンプスペーサ42との密着性を向上させることができる。これにより、バンプスペーサ42がベース基板用ウエハ40からずれたり、倒れたりするのを抑制して、セット工程(S61)においてリッド基板用ウエハ50を安定して支持することができる。その結果、両ウエハ40,50をより高精度に位置合わせすることができる。
【0065】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図10を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図10に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0066】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0067】
本実施形態の発振器100は、上記のように信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、発振器100自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0068】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図11を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0069】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図11に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0070】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0071】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0072】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0073】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0074】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0075】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0076】
本実施形態の携帯情報機器110は、上記のように信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器110自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0077】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図12に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0078】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0079】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0080】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0081】
本実施形態の電波時計130は、上記のように信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、電波時計130自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0082】
以上、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片5を用いた圧電振動子1を例に挙げて本発明のパッケージの製造方法を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子等に、本発明を適用しても構わない。
【0083】
さらに、上述した実施形態においては、リッド基板用ウエハ50に接合材23を形成する構成について説明したが、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50の額縁領域3cに対向する領域に接合材23を形成しても構わない。
また、上述した実施形態では、バンプスペーサ42を4箇所形成した場合について説明したが、3箇所以下でも5箇所以上でも構わない。
さらに、バンプスペーサ42の形状は、円錐台形状に限らず、種々の形状を採用することができる。
【0084】
また、例えば図13に示すように、少なくともリッド基板用ウエハ50の第1面50aにおいて、バンプスペーサ42に対向する部分(接合材除去部51)に、バンプスペーサ42の先端側を収容する位置決め凹部80を形成しても構わない。この場合、図13(a)に示すセット工程(S61)において、バンプスペーサ42の先端側が位置決め凹部80内に収容されるように、両ウエハ40,50を重ね合わせることで、両者を高精度に位置合わせできるとともに、その後の位置ずれの虞もない。
【0085】
また、図13(b)に示すように、位置決め凹部80を形成することで、接合工程(S70)時に両ウエハ40,50により押し潰されたバンプスペーサ42は、位置決め凹部80内に収容されることになる。これにより、バンプスペーサ42を押し潰した状態で両ウエハ40,50を確実に密着させた上で、バンプスペーサ42が両ウエハ40,50間で広範囲に広がるのを抑制できる。その結果、両ウエハ40,50の接合面積を確保して、両ウエハ40,50をより強固に接合できる。なお、位置決め凹部80は、リッド基板用ウエハ50だけに限らず、ベース基板用ウエハ40の双方に形成しても構わない。これにより、ベース基板用ウエハ40の位置決め凹部80をバンプスペーサ42の形成時における指標とすることができる。
【0086】
さらに、例えば図14に示すように、ベース基板用ウエハ40におけるバンプスペーサ42の周囲を取り囲むように、溜まり凹部81を形成しても構わない。この場合、図14(b)に示すように、接合工程(S70)時に両ウエハ40,50により押し潰されたバンプスペーサ42は、溜まり凹部81内に収容されることになる。これにより、バンプスペーサ42を押し潰した状態で両ウエハ40,50を確実に密着させた上で、バンプスペーサ42が両ウエハ40,50間で広範囲に広がるのを抑制できる。その結果、両ウエハ40,50の接合面積を確保して、両ウエハ40,50をより強固に接合できる。なお、溜まり凹部は、ベース基板用ウエハ40だけに限らず、リッド基板用ウエハ50の双方に形成しても構わない。
【符号の説明】
【0087】
1…圧電振動子 3a…凹部 5…圧電振動片(電子部品) 10…パッケージ 23…接合材 27,28…引き回し電極(電極パターン) 40…ベース基板用ウエハ(第1基板) 41…密着膜 42…バンプスペーサ(第1バンプ) 50…リッド基板用ウエハ(第2基板) 80…位置決め凹部 81…溜まり凹部 100…発振器 101…集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…計時部 130…電波時計 131…フィルタ部 B…バンプ(第2バンプ) C…キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子としては、例えば互いに接合されたベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片と、を備えている。
【0003】
このような2層構造タイプの圧電振動子を製造する場合には、まずリッド基板にキャビティ用の凹部を形成する一方、ベース基板上に圧電振動片をマウントする。
次に、ベース基板及びリッド基板を、真空チャンバ内に配設された陽極接合装置にセットして、導電性材料からなる陽極接合用の接合材を介してこれらのウエハを重ね合わせる。その後、所定の温度(以下、接合温度という)で所定の電圧を印加して両基板を陽極接合する。陽極接合の方法として、例えば特許文献1には、シリコン結晶板とガラス材料とを陽極接合する方法が開示されている。
【0004】
ところで、一般に、ベース基板及びリッド基板は通常ガラス材により形成されており、ガラス材には有機物や水分等が含まれている。
特に、ガラスフリットを焼成して圧電振動子の内外を動通させる貫通電極を形成した場合、焼成後のガラスフリット中に有機溶剤が残存しているおそれがある。このため、陽極接合する際に各基板を加熱すると、各基板のガラス材及びガラスフリット内の有機物や水分等がアウトガスとして発生するおそれがある。
【0005】
ここで、圧電振動子は、等価抵抗値(実効抵抗値、Re)を低く抑えることが望まれている。一般に、等価抵抗値は、圧電振動片が封止されている圧電振動子内が真空に近いほど低く抑えられることが知られている。したがって、各基板から発生するアウトガスを効果的に圧電振動子外に排出しつつ、陽極接合を行う必要がある。
【0006】
そのため、近時では、接合後におけるキャビティ内でのアウトガスの残留を抑制するために、ベース基板とリッド基板とを位置合わせした後、スペーサを介して両者を重ね合わせ、接合前に予備加熱を行う方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−72433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した方法では、まず予備加熱の前に、ベース基板とリッド基板との間にスペーサを間に挟んだ状態で位置合わせを行う必要があるため、位置合わせが難しいという問題がある。
特に、予備加熱の後に、スペーサを引き抜くことでベース基板とリッド基板との位置ずれが発生する虞がある。
【0009】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、製造効率の向上を図った上で、両基板を高精度に位置合わせでき、パッケージ内の真空度を確保できるパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された第1基板及び第2基板の間に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、前記第1基板において、パッケージ形成領域の外側の領域に第1バンプを形成する第1バンプ形成工程と、前記第1バンプを介して前記第1基板及び前記第2基板を重ね合わせた状態で、前記各基板を加熱する予備加熱工程と、導電性を有する接合材を介して前記第1基板、及び前記第2基板を陽極接合する接合工程と、を有し、前記接合工程では、前記第1基板及び前記第2基板を加圧して前記第1バンプを押し潰した状態で陽極接合を行うことを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、接合工程の前に両基板からアウトガスを放出させることができる。その際、第1基板におけるパッケージ形成領域の外側の領域に第1バンプを形成し、この第1バンプを介して両基板を重ね合わせて予備加熱をすることで、予備加熱工程により両基板から放出されたアウトガスは、第1バンプにより形成された第1基板、及び第2基板の間の隙間から外部に排出される。これにより、その後の接合工程でアウトガスがパッケージ内に放出されるのを抑制できるので、パッケージ内の良好な真空度を確保できる。
特に、その後の接合工程において、第1バンプをそのまま押し潰した状態で両基板を接合するため、予備加熱工程の後に従来のようにスペーサを引き抜く必要がない。これにより、両基板の位置合わせ後に位置ずれが発生する虞がないので、両基板を高精度に位置合わせした状態で接合できる。また、予備加熱工程の後に従来のようにスペーサを引き抜く必要がないので、製造効率の向上も図ることができる。
【0012】
また、前記第1基板において、前記パッケージ形成領域上の電極パターンに前記電子部品を実装するための第2バンプを形成する第2バンプ形成工程を有し、前記第1バンプ形成工程と、前記第2バンプ形成工程とを同一工程で行うことを特徴としている。
この構成によれば、第1バンプ形成工程と第2バンプ形成工程とを同一工程で行うことで、第1バンプの追加に伴う製造工数の増加を抑制することができる。
【0013】
また、前記第2基板の接合面おいて、前記第1バンプと対向する領域には、前記第1バンプの先端側を収容する位置決め凹部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1基板と第2基板とを位置合わせする際に、第1バンプの先端側が位置決め凹部内に収容されるように、両基板を重ね合わせることで、両者を高精度に位置合わせできるとともに、その後の位置ずれの虞もない。
さらに、位置決め凹部を形成することで、接合工程時に両基板により押し潰された第1バンプは、位置決め凹部内に収容されることになる。これにより、第1バンプを押し潰した状態で両基板を確実に密着させた上で、第1バンプが両基板間で広範囲に広がるのを抑制できる。その結果、両基板の接合面積を確保して、両基板をより強固に接合できる。
【0014】
また、少なくとも前記第1基板の接合面において、前記第1バンプの周囲には、溜まり凹部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、接合工程時に両基板により押し潰された第1バンプは、溜まり凹部内に収容されることになる。これにより、第1バンプを押し潰した状態で両基板を確実に密着させた上で、第1バンプが両基板間で広範囲に広がるのを抑制できる。その結果、両基板の接合面積を確保して、両基板をより強固に接合できる。
【0015】
また、第1バンプ形成工程では、前記第1基板の周方向に間隔をあけて前記第1バンプを少なくとも3つ以上形成することを特徴としている。
この構成によれば、両基板間の全域に亘って隙間が形成されることになるため、予備加熱工程において、両基板から放出されたアウトガスを効率的に外部へ排出できる。
【0016】
また、前記第1基板と前記第1バンプとの間に、前記第1バンプと前記第1基板との密着性を高める密着膜が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1基板上に密着膜を介して第1バンプを形成することで、両基板を重ね合わせる際に第1バンプがずれたり、倒れたりするのを抑制して、第2基板を安定して支持することができる。これにより、両基板をより高精度に位置合わせすることができる。
【0017】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片が封入されていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造された圧電振動子であるため、等価抵抗値を低くすることができ、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るパッケージの製造方法によれば、製造効率の向上を図った上で、両基板を高精度に位置合わせでき、パッケージ内の真空度を確保できる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造された圧電振動子であるため、等価抵抗値を低くすることができ、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態における圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する流れを示すフローチャートである。
【図6】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】予備加熱工程を説明するための説明図であって、予備加熱室の側面図である。
【図8】予備加熱工程を説明するための説明図であって、予備加熱室の平面図である。
【図9】接合工程を説明するための説明図であって、陽極接合室の側面図である。
【図10】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図11】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図13】本実施形態の他の構成を示すベース基板用ウエハ、及びリッド基板用ウエハの断面図である。
【図14】本実施形態の他の構成を示すベース基板用ウエハ、及びリッド基板用ウエハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の第1面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0025】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対の貫通孔21,22が形成されている。貫通孔21,22は、ベース基板2の第1面2aから第2面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径したテーパ形状をなしている。
【0026】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の第1面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の第1面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0027】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型に形成されている。一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を互いに接近または離間する方向(幅方向)に所定の共振周波数で振動させる一対の励振電極(不図示)が形成されている。また、基部26の外表面上には、一対のマウント電極(不図示)が形成され、図示しない引き出し電極を介して一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0028】
このように構成された圧電振動片5は、図2,3に示すように、金等のバンプ(第2バンプ)Bを利用して、ベース基板2の第2面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の第2面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。なお、本実施形態の引き回し電極27,28は、クロムと金の積層膜であり、ガラス材料と密着性の良いクロムを下地膜として成膜した後に、その下地膜の表面に金を仕上げ層として成膜することにより形成されている。
【0029】
外部電極6,7は、ベース基板2の第1面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0030】
貫通電極8,9は、焼成によって貫通孔21,22に対して一体的に固定された筒体32、及び芯材部31によって形成されたものである。各貫通電極8,9は、貫通孔21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0031】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で、かつベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32を貫通するように配されている。また、本実施形態では貫通孔21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、貫通孔21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これら貫通孔21,22に対して強固に固着されている。
【0032】
芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。
そして、芯材部31を通して貫通電極8,9の電気導通性が確保されている。
【0033】
リッド基板3の第1面3b全体には、陽極接合用の接合材23が形成されている。具体的に、接合材23は、額縁領域3c及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材23はSi膜で形成されているが、接合材23をAlで形成することも可能である。なお接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材で形成することも可能である。そして後述するように、この接合材23とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0034】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0035】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を圧電振動子1毎に切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6は、ウエハ接合体の分解斜視図であり、図6に示す破線Mは、後述する個片化工程(S100)で切断する切断線を図示したものである。
図5に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S50以下)と、を有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0036】
(圧電振動片作製工程)
初めに、圧電振動片作製工程を行って図1〜4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0037】
(リッド基板用ウエハ作製工程)
リッド基板用ウエハ作製工程(S20)では、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を作製する。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の第1面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。この際、リッド基板用ウエハ50は、中央部に複数の凹部3aが配列されたパッケージ形成領域N1を構成し、パッケージ形成領域N1の外側に凹部3aが形成されない非形成領域N2を構成している。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の第1面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、第1面50aを鏡面加工する。
【0038】
次に、リッド基板用ウエハ50の第1面50aに接合材23を形成する接合材形成工程(S24)を行う。具体的には、まずスパッタやCVD等により、リッド基板用ウエハ50の第1面50aにおける全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材23を成膜する。その後、リッド基板用ウエハ50の非形成領域N2において、後述するバンプスペーサ42に対向する部分の接合材23が除去されるようにパターニングする。なお、本実施形態では、リッド基板用ウエハ50の非形成領域N2において、周方向に沿って間隔を空けて4箇所に接合材23が形成されていない接合材除去部51が設定されている。
以上により、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)が終了する。なお、接合材形成工程(S24)の前に接合面を研磨しているので、接合材23の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。また、接合材除去部51を設定せず、接合材23を第1面50aの全体に形成しても構わない。この場合には、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
【0039】
(ベース基板用ウエハ作製工程)
まず、図5,6に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極8,9を配置するための貫通孔21,22を複数形成する貫通孔形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工によりベース基板用ウエハ40の第1面40aに凹部を形成した後、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側から研磨することで、凹部を貫通させ、貫通孔21,22を形成することができる。
【0040】
続いて、貫通孔形成工程(S32)で形成された貫通孔21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。具体的には、貫通孔21,22内に芯材部31を挿入してガラスフリットを充填する。ガラスフリットは、主に粉末状のガラス粒子と、有機溶剤と、バインダ(固着剤)とにより構成されている。
そして、ガラスフリットを焼成して、ガラスの筒体32、貫通孔21,22及び芯材部31を一体化させる。このとき、ガラスフリット内部の有機溶剤やバインダ等が蒸発して、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)等のアウトガスが発生し、ガラスフリットの外部に放出される。
最後に、ベース基板用ウエハ40の第1面40a、及び第2面40bを研磨して、芯材部31を第1面40a、及び第2面40bに露出させつつ平坦面とすることにより、貫通孔21,22内に貫通電極8,9を形成する。これにより、貫通孔21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の両面40a,40bに対して面一な状態で保持され、貫通電極8,9を形成することができる。
【0041】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに導電性材料をパターニングして、引き回し電極27,28を形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。この際、ベース基板用ウエハ40は、上述したリッド基板用ウエハ50と同様に、中央部に複数の引き回し電極27,28が配列されたパッケージ形成領域N1を構成し、パッケージ形成領域N1の外側に引き回し電極27,28が形成されない非形成領域N2を構成している。
そして、本実施形態の引き回し電極形成工程(S34)では、ベース基板用ウエハ40の非形成領域N2において、上述した接合材除去部51に対向する位置に、引き回し電極27,28と同材料(例えばクロムと金の積層体)からなる密着膜41(図7参照)が残存するように導電性材料をパターニングする。すなわち、密着膜41は、非形成領域N2において周方向に間隔を空けて4箇所形成されている。
【0042】
最後に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極27、28上に、圧電振動片作製工程(S10)で作製された圧電振動片5をマウントするためのバンプ(第2バンプ)Bを形成する(S35:バンプ形成工程(第1バンプ形成工程、及び第2バンプ形成工程))。バンプBの形成方法は、引き回し電極27,28上における所定の位置に金線を溶接するスタッドバンプ法を採用することができる。
【0043】
ここで、本実施形態のバンプ形成工程(S35)では、上述した密着膜41上、すなわち非形成領域N2において周方向に間隔を空けて4箇所にバンプBと同形状のバンプスペーサ42(第1バンプ)を形成する。バンプB、及びバンプスペーサ42は、基端側から先端側に向かうに従い漸次先細る円錐台形状に形成され、その基端面、及び先端面が平坦に形成されている。また、バンプB、及びバンプスペーサ42は、高さが例えば100μm程度に形成されている。なお、図6では、バンプ形成工程(S35)で形成されるバンプB、及びバンプスペーサ42のうち、バンプスペーサ42のみを誇張して表現し、バンプBを省略している。
以上により、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0044】
(組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)で作製されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、バンプBを介して圧電振動片5をマウントする(S50)。具体的には、圧電振動片5の基部26をバンプB上に載置し、バンプBを所定温度に加熱しながら、圧電振動片5をバンプBに押し付けつつ超音波振動を印加する。これにより、図3に示すように、圧電振動片5の振動腕部24,25がベース基板用ウエハ40の第1面40aから浮いた状態で、基部26がバンプBに機械的に固着される。
【0045】
続いて、後述する接合工程(S70)に先立ち、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を予備加熱する予備加熱工程(S60)を行う。予備加熱工程(S60)は、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を真空チャンバ内にセットするセット工程(S61)と、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を予備加熱するウエハ加熱工程(S62)と、を有している。
予備加熱工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40の内部や、筒体32に残存している有機溶剤やバインダ、水分等を予備加熱により蒸発させ、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)等のアウトガスを放出している。そして、接合工程(S70)の際、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40が後述する接合温度F1,F2まで上昇しても、アウトガスが放出されるのを抑制している。
【0046】
(予備加熱工程)
図7,8は予備加熱工程を説明するための説明図であって、図7は予備加熱室の側面図であり、図8は平面図である。なお、図面をわかりやすくするために、各図では、バンプスペーサ42の大きさを誇張して表現している。また、図8では、リッド基板用ウエハ50および第1ヒータ71の図示を省略している。
まず、図7,8に示すように、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を予備加熱するため、真空チャンバ65内の予備加熱室67aに、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40をセットする(S61:セット工程S61)。
【0047】
真空チャンバ65には真空ポンプPが接続されており、この真空ポンプPにより予備加熱室67aの圧力が調節可能になっている。なお、真空チャンバ65内には、予備加熱室67aに隣接して陽極接合室67b(図9参照)が設けられており、予備加熱室67aと同様に陽極接合室67bの圧力が調節可能になっている。
予備加熱室67aには、リッド基板用ウエハ50を加熱する第1ヒータ71と、ベース基板用ウエハ40を加熱する第2ヒータ72と、が設けられている。第1ヒータ71及び第2ヒータ72には、市販のホットプレート等が使用される。
【0048】
リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40は、以下の手順で予備加熱室67aにセットする。
まず、後述する接合工程(S70)で陰極となる電極76を介して、ベース基板用ウエハ40の第1面40aを第2ヒータ72の上面72aに当接させて、ベース基板用ウエハ40を配置する。なお、電極76は、ステンレスやカーボン(C)等で形成されている。また、第2ヒータ72の上面72aには不図示の治具が配置されており、ベース基板用ウエハ40が第2ヒータ72に対して位置決めされる。さらに、治具を導電性材料により形成し、治具と電極を兼ねるような構成にしても構わない。
【0049】
続いて、ベース基板用ウエハ40の上にリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる。具体的には、両ウエハ40,50に形成された図示しないアライメントマークを指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。このとき、リッド基板用ウエハ50が、ベース基板用ウエハ40の非形成領域N2に形成されたバンプスペーサ42の先端面に当接した状態で両ウエハ40,50が重ね合わされる。すなわち、バンプスペーサ42は、両ウエハ40,50に挟持された状態となり、両ウエハ40,50間には面方向の全域に亘ってバンプスペーサ42の高さとほぼ同等の隙間Gが形成される。なお、上述したようにリッド基板用ウエハ50の非形成領域N2において、バンプスペーサ42に対向する部分は接合材23が除去された接合材除去部51が形成されているため、バンプスペーサ42の先端面はリッド基板用ウエハ50の第1面50aに直接当接している。
【0050】
その後、リッド基板用ウエハ50の第2面50bに第1ヒータ71の下面71bを当接させて、第1ヒータ71を配置する。第1ヒータ71の下面71bには不図示の治具が配置されており、リッド基板用ウエハ50が第1ヒータ71に対して位置決めされる。
以上により、セット工程(S61)が終了する。
【0051】
続いて、第1ヒータ71でリッド基板用ウエハ50を加熱し、第2ヒータ72でベース基板用ウエハ40を加熱する、ウエハ加熱工程(S62)を行う。ウエハ加熱工程(S62)では、真空下で、第1ヒータ71の設定温度をT1としてリッド基板用ウエハ50の第2面50bに当接させ、第2ヒータ72の設定温度をT2としてベース基板用ウエハ40の第1面40aに当接させている。
【0052】
ところで、予備加熱工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40の外部にアウトガスを排出することで、後述する接合工程(S70)の際、アウトガスが放出されるのを抑制することを目的としている。したがって、予備加熱工程(S60)におけるリッド基板用ウエハ50の実温度が、接合工程(S70)におけるリッド基板用ウエハ50の接合温度F1を確実に上回っている必要がある。また同様に、予備加熱工程(S60)では、ベース基板用ウエハ40の実温度が、接合工程(S70)におけるベース基板用ウエハ40の接合温度F2を確実に上回っている必要がある。
【0053】
ここで、予備加熱工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40との間に、バンプスペーサ42により隙間Gが形成されるため、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40の熱が隙間Gから放熱される虞がある。このため、予備加熱工程(S60)におけるリッド基板用ウエハ50の実温度は、第1ヒータ71の設定温度であるT1を大幅に下回り、さらに接合工程(S70)におけるリッド基板用ウエハ50の接合温度F1を下回るおそれがある。また、予備加熱工程(S60)におけるベース基板用ウエハ40の実温度は、第2ヒータ72の設定温度であるT2を大幅に下回り、さらに接合温度F2を下回る虞がある。このため、予備加熱工程(S60)で、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40の外部へのアウトガスの放出が不十分となり、接合工程(S70)でアウトガスを放出してしまう虞がある。
【0054】
そこで、各ヒータ71,72の温度と各ウエハ40,50の実温度との差分を予め測定しておき、この差分を考慮して予備加熱工程(S60)における各ヒータ71,72の設定温度T1,T2を決定することが望ましい。各ヒータ71,72で両ウエハ40,50をそれぞれ加熱すると、両ウエハ40,50及びガラスフリットからなる筒体32からアウトガスが放出される。放出されたアウトガスは、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との隙間Gから、真空チャンバ65の予備加熱室67a内に放出される。そして、所定時間(例えばアウトガスが放出しきると想定される時間)経過した後、ウエハ加熱工程(S62)を終了する。以上で、予備加熱工程(S60)が終了する。
【0055】
(接合工程)
図9は、接合工程を説明するための説明図であって、陽極接合室の側面図である。
次に、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を陽極接合する接合工程(S70)を行う。具体的には、図9に示すように、まず真空状態のまま、第1ヒータ71、及び第2ヒータ72とともに、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を予備加熱室67aから陽極接合室67bに移動する。陽極接合室67bでは、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40は、上述のセット工程(S61)と同じ状態でセットされる。
【0056】
続いて、不図示の加圧装置で第1ヒータ71の上面71aを押圧して、ベース基板用ウエハ40にリッド基板用ウエハ50を押付ける。なお、加圧装置の押圧力は、例えば500N程度である。すると、ベース基板用ウエハ40に形成されたバンプスペーサ42が両ウエハ40,50間で押し潰されることで、両ウエハ40,50が密着する。この際、バンプスペーサ42は、先端側にかけて漸次先細る円錐台形状に形成されているため、先端側から簡単に押し潰し易くなっている。
【0057】
続いて、加圧装置で押圧しながら、各ヒータ71,72により各ウエハ40,50をそれぞれ接合温度F1,F2に加熱する。この際、第2ヒータ72の温度を第1ヒータ71の温度よりも若干高く設定するのが望ましい。これにより、接合工程(S70)でベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を接合した後に反りが発生するのを防止できる。
ここで、上述した予備加熱工程(S60)では、接合温度F1,F2よりも高温になるように、両ウエハ40,50を加熱している。したがって、接合工程(S70)で両ウエハ40,50からアウトガスが放出されることがない。
【0058】
続いて、加圧装置で押圧しつつ第1ヒータ71および第2ヒータ72で加熱しながら、リッド基板用ウエハ50の接合材23を電源77の陽極電極に、ベース基板用ウエハ40と第2ヒータ72との間に配置された電極76を電源77の陰極電極に接続し、各電極間に例えば500V程度の電圧を印加する。すると、接合材23とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着することで、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40とを接合することができる。
これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。以上で、接合工程(S70)が終了する。
【0059】
この後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S80)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S90)。
そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断し、個片化する個片化工程(S100)を行う。
【0060】
そして、電気特性検査工程(S110)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。
最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0061】
このように、本実施形態では、ベース基板用ウエハ40の非形成領域N2にバンプスペーサ42を形成し、このバンプスペーサ42を介して両ウエハ40,50を重ね合わせて予備加熱をした後、バンプスペーサ42を押し潰した状態で陽極接合を行う構成とした。
この構成によれば、予備加熱工程(S60)を行うことで、接合工程(S70)の前にアウトガスを放出させることができる。その際、両ウエハ40,50の間にバンプスペーサ42を配置して予備加熱工程(S60)を行っているので、予備加熱工程(S60)により両ウエハ40,50や筒体32から放出されたアウトガスは、バンプスペーサ42により形成された隙間Gから外部に排出される。これにより、その後の接合工程(S70)でアウトガスがパッケージ10内に放出されるのを抑制できるので、パッケージ10内の良好な真空度を確保できる。
【0062】
特に、本実施形態では、セット工程(S61)において両ウエハ40,50を位置合わせした後、接合工程(S70)においてバンプスペーサ42をそのまま押し潰した状態で両ウエハ40,50を接合するため、従来のように予備加熱工程(S60)の後にスペーサを引き抜く必要がない。これにより、両ウエハ40,50の位置合わせ後に位置ずれが発生する虞がないので、両ウエハ40,50を高精度に位置合わせした状態で接合できる。また、従来のようにスペーサを引き抜く必要がないので、製造効率の向上も図ることができる。なお、ウエハ接合体60においてバンプスペーサ42を押し潰した領域では、両ウエハ40,50同士は接合されないが、本実施形態のバンプスペーサ42はパッケージ形成領域N1の外側、すなわち非形成領域N2に形成しているため、個片化工程(S100)においてパッケージ10と非形成領域N2とは分離される。したがって、個片化された圧電振動子1の振動特性等に何ら影響を与えるものではない。
そして、このように高精度に位置合わせされるとともに、良好な真空度が確保されたパッケージ10の内部に圧電振動片5が封入されて圧電振動子1が構成されているので、等価抵抗値を低くすることができ、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0063】
また、本実施形態のバンプスペーサ42は、上述したバンプ形成工程(S35)において、圧電振動片5のマウント用のバンプBと同一工程で形成するため、バンプスペーサ42の追加に伴う製造工数の増加を抑制することができる。
さらに、ベース基板用ウエハ40の周方向に沿ってバンプスペーサ42を4箇所形成することで、両ウエハ40,50の全域に亘って隙間Gが形成されることになるため、予備加熱工程(S60)において、効率的にアウトガスを外部へ排出できる。
【0064】
また、ベース基板用ウエハ40上に密着膜41を介してバンプスペーサ42を形成することで、ベース基板用ウエハ40とバンプスペーサ42との密着性を向上させることができる。これにより、バンプスペーサ42がベース基板用ウエハ40からずれたり、倒れたりするのを抑制して、セット工程(S61)においてリッド基板用ウエハ50を安定して支持することができる。その結果、両ウエハ40,50をより高精度に位置合わせすることができる。
【0065】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図10を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図10に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0066】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0067】
本実施形態の発振器100は、上記のように信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、発振器100自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0068】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図11を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0069】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図11に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0070】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0071】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0072】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0073】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0074】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0075】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0076】
本実施形態の携帯情報機器110は、上記のように信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器110自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0077】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図12に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0078】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0079】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0080】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0081】
本実施形態の電波時計130は、上記のように信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、電波時計130自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0082】
以上、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片5を用いた圧電振動子1を例に挙げて本発明のパッケージの製造方法を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子等に、本発明を適用しても構わない。
【0083】
さらに、上述した実施形態においては、リッド基板用ウエハ50に接合材23を形成する構成について説明したが、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50の額縁領域3cに対向する領域に接合材23を形成しても構わない。
また、上述した実施形態では、バンプスペーサ42を4箇所形成した場合について説明したが、3箇所以下でも5箇所以上でも構わない。
さらに、バンプスペーサ42の形状は、円錐台形状に限らず、種々の形状を採用することができる。
【0084】
また、例えば図13に示すように、少なくともリッド基板用ウエハ50の第1面50aにおいて、バンプスペーサ42に対向する部分(接合材除去部51)に、バンプスペーサ42の先端側を収容する位置決め凹部80を形成しても構わない。この場合、図13(a)に示すセット工程(S61)において、バンプスペーサ42の先端側が位置決め凹部80内に収容されるように、両ウエハ40,50を重ね合わせることで、両者を高精度に位置合わせできるとともに、その後の位置ずれの虞もない。
【0085】
また、図13(b)に示すように、位置決め凹部80を形成することで、接合工程(S70)時に両ウエハ40,50により押し潰されたバンプスペーサ42は、位置決め凹部80内に収容されることになる。これにより、バンプスペーサ42を押し潰した状態で両ウエハ40,50を確実に密着させた上で、バンプスペーサ42が両ウエハ40,50間で広範囲に広がるのを抑制できる。その結果、両ウエハ40,50の接合面積を確保して、両ウエハ40,50をより強固に接合できる。なお、位置決め凹部80は、リッド基板用ウエハ50だけに限らず、ベース基板用ウエハ40の双方に形成しても構わない。これにより、ベース基板用ウエハ40の位置決め凹部80をバンプスペーサ42の形成時における指標とすることができる。
【0086】
さらに、例えば図14に示すように、ベース基板用ウエハ40におけるバンプスペーサ42の周囲を取り囲むように、溜まり凹部81を形成しても構わない。この場合、図14(b)に示すように、接合工程(S70)時に両ウエハ40,50により押し潰されたバンプスペーサ42は、溜まり凹部81内に収容されることになる。これにより、バンプスペーサ42を押し潰した状態で両ウエハ40,50を確実に密着させた上で、バンプスペーサ42が両ウエハ40,50間で広範囲に広がるのを抑制できる。その結果、両ウエハ40,50の接合面積を確保して、両ウエハ40,50をより強固に接合できる。なお、溜まり凹部は、ベース基板用ウエハ40だけに限らず、リッド基板用ウエハ50の双方に形成しても構わない。
【符号の説明】
【0087】
1…圧電振動子 3a…凹部 5…圧電振動片(電子部品) 10…パッケージ 23…接合材 27,28…引き回し電極(電極パターン) 40…ベース基板用ウエハ(第1基板) 41…密着膜 42…バンプスペーサ(第1バンプ) 50…リッド基板用ウエハ(第2基板) 80…位置決め凹部 81…溜まり凹部 100…発振器 101…集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…計時部 130…電波時計 131…フィルタ部 B…バンプ(第2バンプ) C…キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された第1基板及び第2基板の間に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、
前記第1基板において、パッケージ形成領域の外側の領域に第1バンプを形成する第1バンプ形成工程と、
前記第1バンプを介して前記第1基板及び前記第2基板を重ね合わせた状態で、前記各基板を加熱する予備加熱工程と、
導電性を有する接合材を介して前記第1基板、及び前記第2基板を陽極接合する接合工程と、を有し、
前記接合工程では、前記第1基板及び前記第2基板を加圧して前記第1バンプを押し潰した状態で陽極接合を行うことを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記第1基板において、前記パッケージ形成領域上の電極パターンに前記電子部品を実装するための第2バンプを形成する第2バンプ形成工程を有し、
前記第1バンプ形成工程と、前記第2バンプ形成工程とを同一工程で行うことを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
少なくとも前記第2基板の接合面おいて、前記第1バンプと対向する領域には、前記第1バンプの先端側を収容する位置決め凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
少なくとも前記第1基板の接合面において、前記第1バンプの周囲には、溜まり凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項5】
第1バンプ形成工程では、前記第1基板の周方向に間隔をあけて前記第1バンプを少なくとも3つ以上形成することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記第1基板と前記第1バンプとの間に、前記第1バンプと前記第1基板との密着性を高める密着膜が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項1記載のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項7に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
互いに接合された第1基板及び第2基板の間に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、
前記第1基板において、パッケージ形成領域の外側の領域に第1バンプを形成する第1バンプ形成工程と、
前記第1バンプを介して前記第1基板及び前記第2基板を重ね合わせた状態で、前記各基板を加熱する予備加熱工程と、
導電性を有する接合材を介して前記第1基板、及び前記第2基板を陽極接合する接合工程と、を有し、
前記接合工程では、前記第1基板及び前記第2基板を加圧して前記第1バンプを押し潰した状態で陽極接合を行うことを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記第1基板において、前記パッケージ形成領域上の電極パターンに前記電子部品を実装するための第2バンプを形成する第2バンプ形成工程を有し、
前記第1バンプ形成工程と、前記第2バンプ形成工程とを同一工程で行うことを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
少なくとも前記第2基板の接合面おいて、前記第1バンプと対向する領域には、前記第1バンプの先端側を収容する位置決め凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
少なくとも前記第1基板の接合面において、前記第1バンプの周囲には、溜まり凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項5】
第1バンプ形成工程では、前記第1基板の周方向に間隔をあけて前記第1バンプを少なくとも3つ以上形成することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記第1基板と前記第1バンプとの間に、前記第1バンプと前記第1基板との密着性を高める密着膜が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項1記載のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項7に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−74517(P2013−74517A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213013(P2011−213013)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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