説明

パッケージソフトウエア課金情報管理システム

【課題】 パッケージソフトウエアを利用したIT環境管理のアウトソーシングサービスに関し、適切なパッケージソフトウエアの利用状況に基づく課金を可能とする課金情報管理システムを提供する。
【解決手段】 顧客側システム100は、パッケージソフトウエアに含まれるプログラム群が組み込まれることにより、IT環境管理手段と、課金情報管理手段とを構成するサーバコンピュータ101と、複数のクライアントコンピュータ102とを備え、サーバコンピュータ101は、IT環境情報ファイル103と、暗号化した課金情報ファイル104とを生成する。
サービスベンダ側システム110では、レポート生成手段111がIT環境情報ファイル103に基づき、IT環境レポートの生成処理を行う。
プログラム提供者側システム1120では、課金額算出手段121aが、課金情報ファイル104を復号化して、課金情報に基づく課金額算出処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織内のシステム管理ソフトウエアを扱うアウトソーシングサービスにおけるパッケージソフトウエアの課金情報管理を行うシステム構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業内ネットワーク等において、ネットワーク構成管理プログラムや、資産情報管理プログラムを利用することにより自社のIT(Information Technology)環境管理が行われている。
一方、このようなネットワーク構成管理プログラムや資産情報管理プログラムの利用においては、初期投資やその後の運用管理経費の発生等の問題があり、中小規模の企業だけでなく大規模の企業についても導入の断念又は運用継続不可という状態が発生することがあった。
このような背景の中、サービスベンダによるIT環境管理のアウトソーシングサービスが注目されてきている。このアウトソーシングサービスでは、サービスベンダがネットワーク構成管理プログラムや資産情報管理プログラムのパッケージソフトウエアを保有し、顧客に代わってパッケージソフトウエアを用いたIT環境管理を定期的(6ヶ月毎等)に行うこととなる。この場合、通常顧客毎に必要となるパッケージソフトウエアの購入をサービスベンダの購入のみで代替し、一つのパッケージソフトウエアの使い回しを認める一方で、各顧客先での使用状況に応じた課金を行うこととしている。この使用状況の調査は、現状では紳士協定のような形でサービスベンダからの報告によることとしているが、サービスベンダの記録ミス等も考えられるため、必ずしも正確な使用状況の把握はできていなかった。
この点について、従来、ソフトウエアの使用状況に応じた適切な課金を行うためのシステムとして、ASP(Aplication Service Provider)業者の行うソフトウエアレンタルサービスにおいて、クライアント端末に備えられたライセンスマネージャーがアプリケーション使用状況を監視して、監視結果に基づき使用料の算出を行う手段を備えた構成が公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−163578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記特許文献1に記載のシステムは、ASP業者の行うサービスを前提としたものであって、ネットワークを経由してソフトウェアを提供し、ネットワーク経由で随時クライアント端末のアプリケーション使用状況を監視するものであり、ネットワークと常時接続されていない、閉じたユーザシステム内で稼動するパッケージソフトウエアに関する課金のための仕組みを考慮したものではなかった。即ち、パッケージソフトウエアに適用した場合には、使用状況を監視した結果を適切に取得する手段がないものとなっていた。
従って、各顧客先における使用状況を監視した結果は、サービスベンダが収集して報告することとなるため、悪意のあるサービスベンダ等については、監視結果データの改ざん等の恐れもあった。
【0004】
本発明は前記課題を解決するためのものであり、パッケージソフトウエアを利用したIT環境管理のアウトソーシングサービスに関し、適切なパッケージソフトウエアの利用状況に基づく課金を可能とする課金情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明は、IT環境情報管理処理をコンピュータに実行させるIT環境情報管理プログラムを有するパッケージソフトウエアに、前記IT環境情報管理処理に対応する課金情報管理処理を前記コンピュータに実行させる課金情報管理プログラムを組み込み、前記各プログラムにより顧客側システムのサーバコンピュータ及びクライアントコンピュータに各処理を実行させるパッケージソフト課金情報管理システムであって、クライアント側課金情報管理プログラムは、前記クライアントコンピュータに、前記IT環境情報管理プログラムが実行させるIT環境管理処理の実行状況を監視し、当該監視結果を前記サーバコンピュータに送信する課金情報送信処理を実行させ、サーバ側課金情報管理プログラムは、前記サーバコンピュータに、前記IT環境情報管理プログラムが実行させるIT環境管理処理の実行状況を監視し、当該監視結果と、前記クライアントコンピュータから受信した監視結果とに基づき課金情報ファイルを生成して暗号化する課金情報制御処理を実行させることを特徴とする。
前記パッケージソフト課金情報管理システムは、前記課金情報ファイルを取得して復号化し、当該課金情報ファイルに含まれる各監視結果に基づき課金額を算出する課金額算出手段を有するパッケージソフトウエア提供者側システムをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上の構成により本発明では、IT環境情報ファイルとともにパッケージソフトウエアを構成する各プログラムの実行状況に応じた課金情報ファイルの生成を行うため、サービスベンダは各プログラムの実行状況等を意識することなくサービスの提供を行うことができ、また、プログラム提供者に提出する課金情報の適切な管理も可能となる。
また、課金情報ファイルを暗号化することにより、悪意のサービスベンダによる課金情報の改ざん等を防止することができ、適切な課金情報管理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施の形態に係るパッケージソフトウエア課金情報管理システムについて、図面に基づき説明する。
図1は、本実施の形態に係るパッケージソフトウエア課金情報管理システムの全体構成を示すブロック図である。
パッケージソフトウエア課金情報管理システムは、パッケージソフトウエアを利用したIT環境管理対象となる顧客側システム100と、パッケージソフトウエアを保有してアウトソーシングサービスを提供するサービスベンダ側のシステム110と、プログラム提供者側システム120とで構成している。本例では、各システム100,110,120のサーバコンピュータ101,111,121間は、インターネット等のネットワークを介して接続されており、データの送受信が可能になっているものとする。ここで、パッケージソフトウエアとは、顧客側システムにおいて、IT環境管理手段及び課金情報管理手段とを構成するプログラム群がパッケージ化されたものを示す。
顧客側システム100は、パッケージソフトウエアに含まれるプログラム群が組み込まれることにより、IT環境管理手段と、課金情報管理手段とを構成するサーバコンピュータ101と、単数または複数のクライアントコンピュータ102とを備え、サーバコンピュータ101は、各プログラムによりIT環境情報ファイル103と、暗号化した課金情報ファイル104とを生成する。なお、図1では、クライアントコンピュータ102を2つ示しているが、クライアントコンピュータ102の数は2つとは限らない。
サービスベンダ側システム110は、IT環境情報ファイル103と課金情報ファイル104とを取得し、レポート生成手段111がIT環境情報ファイル103に基づき、IT環境レポートの生成処理を行う。
プログラム提供者側システム120は、課金情報ファイル104をサービスベンダ側システム110から取得し、課金額算出手段121が、課金情報ファイル104を復号化して、課金情報に基づく課金額算出処理を行う。
本実施の形態では、IT環境管理手段を構成させるプログラム群を備えたパッケージソフトウエアに、課金情報管理手段を構成させるプログラム群を含め、顧客側システムのサーバコンピュータ101及びクライアントコンピュータ102にIT環境管理手段及び課金情報管理手段を構成させている。
【0008】
図2は、顧客側システム100の詳細を示すブロック図である。
本実施の形態では、顧客側システム100を構成するサーバコンピュータ101及びクライアントコンピュータ102において、パッケージソフトウエアに含まれる各プログラムが組み込まれることにより、IT環境情報ファイル103を生成するための資産情報受信部201,接続構成探索部202,資産情報収集部211,資産情報送信部212と、課金情報ファイルを生成するための課金情報制御部203,課金情報管理送信部213が構成される。
サーバコンピュータ101の資産情報受信部201は、サーバコンピュータにおけるハードウエア,ソフトウエアに関する資産情報を収拾するとともに、各クライアントコンピュータ102の資産情報収集部211が収集して、資産情報送信部212が送信した各クライアントコンピュータ102における資産情報を受信してIT環境情報ファイル103に格納する。
サーバコンピュータ101の接続構成探索部202は、例えば、TCP/IPのネットワーク環境下において、SNMP(Simple Network Management Protocol)を用いて、管理側端末上のSNMPマネージャと、管理対象となるネットワーク機器上のSNMPエージェントとの間で通信を行い、前記SNMPエージェントの管理するMIB(Management Information Base)に含まれる構成情報を取得して、IT環境情報ファイル103に格納する。
本実施の形態では、クライアントコンピュータ102の課金情報管理送信部213が、資産情報収集部211の実行状況を監視し、監視結果に基づき課金情報を生成してサーバコンピュータ101に送信する。この場合、課金情報管理送信部213による課金情報の送信は、資産情報送信部212による資産情報の送信の際に行うものとする。
サーバコンピュータ101の課金情報制御部203は、資産情報収集部201及び接続構成探索部202の実行状況を監視して、監視結果に基づく課金情報を生成し、クライアントコンピュータ102から受信した課金情報とともに課金情報ファイル204に格納して暗号化する。
【0009】
図3は、課金情報ファイル204のデータ構造の一例を示す図である。
課金情報ファイル204は、課金情報の算出方法によりデータ構造が異なるものであり、本例では、パッケージソフトウエア(IT環境管理プログラム)を何時、何回どのような環境において使用したかを示す各プログラムの監視結果データで構成している。
具体的には、IT環境管理プログラムによる処理回数を識別する環境情報識別番号301と、処理内容を識別する分類302と、処理を行ったコンピュータ名303と、処理を行った日付304・時間305と、各コンピュータを一意に識別するためのアドレス306とを有している。
環境情報識別番号301は、一つのパッケージソフトウエアの利用に対する課金情報レコードの全てに対する通し番号を示す。従って、サービスベンダから提出された複数の課金情報ファイル204の間で、通し番号の抜けが発生した場合には、課金情報ファイル204の未提出が発生していることを示す。
【0010】
図4は、本実施の形態に係るパッケージソフトウエア課金情報管理システムの行う処理の概要を示すフローチャートである。
本システムでは、まず、顧客側システム100において、サーバコンピュータ101及びクライアントコンピュータ102の資産情報収集部211,資産情報送信部212,資産情報受信部201,接続構成探索部202がそれぞれ処理を行い、IT環境情報ファイル103を生成する(ステップ401)。
次に、サーバコンピュータ101及びクライアントコンピュータ102の課金情報管理送信部213,課金情報制御部203は、各コンピュータ101,102における資産情報収集部211,資産情報受信部201,接続構成探索部202の実行状況を監視し、監視結果に基づく課金情報により課金情報ファイル204を生成して(ステップ402)、暗号化する(ステップ403)。
顧客側システム100のサーバコンピュータ101は、IT環境情報ファイル103及び暗号化した課金情報ファイル104をサービスベンダ側システム110のサーバコンピュータ111に送信する(ステップ404)。
サービスベンダ側システム110のサーバコンピュータ111は、IT環境レポート生成手段111aによりIT環境情報ファイル103に基づきレポート生成処理を行うとともに(ステップ405)、プログラム提供側システム120のサーバコンピュータ121に暗号化された課金情報ファイル104を転送する(ステップ406)。生成したIT環境情報レポートは、サービスベンダの担当者により顧客に提出される。
プログラム提供者側システム120のサーバコンピュータ121は、課金額算出手段121aにより、暗号化された課金情報ファイル104を復号化し(ステップ407)、取得した課金情報に基づく課金額を算出する(ステップ408)。
この結果に基づき、プログラム提供者により、サービスベンダに対する課金額の請求が行われる。
【0011】
以上のように、本実施の形態に係るパッケージライセンス課金管理システムでは、IT管理プログラムと共にパッケージソフトウエアに含まれる課金情報管理プログラムにより、顧客先におけるIT管理プログラムの使用状況を監視して、監視結果を暗号化した課金情報ファイルを生成することとしたので、暗号化した課金情報ファイルに基づき適切な課金情報管理を行うことが可能となる。
【0012】
なお、前記実施の形態では、各システム間におけるIT環境情報ファイル及び課金情報ファイルのやり取りをネットワーク介した送受信により行うこととしているが、これに限らず、例えば、外部記憶装置に各ファイルを記録して各システムのサーバコンピュータに入力することとしてもよい。これにより、各システム間がネットワーク等で接続されていない場合であっても、課金情報ファイルのやり取りにより、適切に課金情報の管理を行うことが可能となる。従って、サービスベンダによるパッケージソフトウエアの利用に関しても、適切な課金額の算出等を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るパッケージライセンス課金管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る顧客側システムの構成を示すブロック図である。
【図3】課金情報ファイルのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るパッケージライセンス課金管理システムの行う処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0014】
100 顧客側システム、101 サーバコンピュータ、102 クライアントコンピュータ、103 IT管理情報ファイル、104 (暗号化)課金情報ファイル、110 サービスベンダ側システム、111 サーバコンピータ、111a IT環境情報レポート生成手段、120 プログラム提供者側システム、121 サーバコンピュータ、121a 課金額算出手段、201 資産情報受信部、202 接続構成探索部、203 課金情報制御部、204 課金情報ファイル、211 資産情報収集部、212 資産情報送信部、213 課金情報管理送信部。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
IT環境情報管理処理をコンピュータに実行させるIT環境情報管理プログラムを有するパッケージソフトウエアに、前記IT環境情報管理処理に対応する課金情報管理処理を前記コンピュータに実行させる課金情報管理プログラムを組み込み、前記各プログラムにより顧客側システムのサーバコンピュータ及びクライアントコンピュータに各処理を実行させるパッケージソフト課金情報管理システムであって、
クライアント側課金情報管理プログラムは、前記クライアントコンピュータに、前記IT環境情報管理プログラムが実行させるIT環境管理処理の実行状況を監視し、当該監視結果を前記サーバコンピュータに送信する課金情報送信処理を実行させ、
サーバ側課金情報管理プログラムは、前記サーバコンピュータに、前記IT環境情報管理プログラムが実行させるIT環境管理処理の実行状況を監視し、当該監視結果と、前記クライアントコンピュータから受信した監視結果とに基づき課金情報ファイルを生成して暗号化する課金情報制御処理を実行させる
ことを特徴とするパッケージソフト課金情報管理システム。
【請求項2】
前記パッケージソフト課金情報管理システムは、
前記課金情報ファイルを取得して復号化し、当該課金情報ファイルに含まれる各監視結果に基づき課金額を算出する課金額算出手段を有するパッケージソフトウエア提供者側システムをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のパッケージソフトウエア課金情報管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−72517(P2007−72517A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255445(P2005−255445)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】