説明

パッケージ基板用樹脂組成物並びにこれを用いたプリプレグ及び積層板

【課題】微細配線化が進むパッケージ基板に対応するため、高いピール強度と耐熱性に優れたパッケージ基板用樹脂組成物、プリプレグ及び積層板を提供する。
【解決手段】多環式化合物を有する樹脂(A)と、脱水温度が250℃以上の高耐熱水酸化アルミニウム(B)を含有するパッケージ基板用樹脂組成物並びにこれを用いたプリプレグ及び積層板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性や耐熱性などを有すると共に、特にピール強度に優れ、電子部品等に用いられるパッケージ基板用樹脂組成物並びにこれを用いたプリプレグ及び積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等に用いられる通常の積層板は、エポキシ樹脂などの芳香環を有する樹脂を主剤とした樹脂組成物とガラス織布とを硬化し、一体成形したものが一般的である。
このような芳香環を有する樹脂は絶縁性や耐熱性、コストなどのバランスが優れるが、燃焼し易いという欠点を有する。このため、積層板の難燃化が必須であり、従来ブロム系難燃剤が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
しかし、ブロム系難燃剤は燃焼時に有害な物質を発生する可能性があり、環境意識の高まりから、有害な物質を発生する材料は電子部品も含めて規制する動きが活発になっている。
【0003】
このため、ブロム系難燃剤に代わる難燃剤として、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、リン酸エステル等のリン化合物、メラミン樹脂等の窒素化合物が使用されている (例えば、特許文献2〜4参照)。
しかしながら、金属水酸化物は多量に配合しないと難燃機能が発現しない、リン化合物は腐食性を有する、窒素化合物は難燃効果が低いなどの問題も知られている。
また、水酸化アルミニウムは燃焼時に冷却効果を発現する水を多量に含んでいるため、ある程度以上配合すると樹脂組成物や積層板の耐熱性が急激に低下する問題を有している。これは水酸化アルミニウムの水を放出する温度がはんだの溶融温度よりも低いことに起因している。また、鉛フリーはんだを用いた場合、その溶融温度はさらに上昇し、水の放出は顕著な問題になると考えられる。
【0004】
この対策として、非ハロゲン化エポキシ樹脂に対して高耐熱水酸化アルミニウムなどを含有させた熱硬化性樹脂組成物が検討されている(例えば、特許文献5参照)。
また、水酸化アルミニウムの増加に伴い樹脂/水酸化アルミニウム間の界面が増加してピール強度が低下するので、水酸化アルミニウムの粒径と、比表面積を調整することである程度改善できることが知られている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−113665号公報
【特許文献2】特開2002−212394号公報
【特許文献3】特開平11−124489号公報
【特許文献4】特開昭59−53549号公報
【特許文献5】特開2005−209692号公報
【特許文献6】特開2007−146095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように水酸化アルミニウム等の金属水酸化物は難燃効果を発現するが、十分な難燃性を発現するには多量の配合を必要とする。しかし、多量の金属水酸化物の配合は、金属水酸化物の界面増加に伴うピール強度の低下や金属水酸化物の分解に伴う耐熱性の低下など多くの課題を有する。
特許文献5では、非ハロゲン化エポキシ樹脂としてビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂やo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を使用しているが、本発明者らの検討によりピール強度が相当に低下することが分かった。
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、今後も更に微細配線化が進むパッケージ基板に対応するため、高いピール強度と耐熱性に優れたパッケージ基板用樹脂組成物、プリプレグ及び積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、分子内に二つまたはそれ以上の環式構造を持つ多環式化合物を有する樹脂と、高耐熱水酸化アルミニウム(B)を必須成分とする樹脂組成物が上記目的に沿うものであることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のパッケージ基板用樹脂組成物、プリプレグ及び積層板を提供するものである。
1.多環式化合物を有する樹脂(A)と、脱水温度が250℃以上の高耐熱水酸化アルミニウム(B)を含有することを特徴とするパッケージ基板用樹脂組成物。
2.さらにシリカ(C)を含有する上記1のパッケージ基板用樹脂組成物。
3.多環式化合物を有する樹脂(A)が、20℃で結晶性状を持つエポキシ樹脂である上記1又は2のパッケージ基板用樹脂組成物。
4.高耐熱水酸化アルミニウム(B)のBET比表面積が3.5〜10m2/gである上記3のパッケージ基板用樹脂組成物。
5.多環式化合物を有する樹脂(A)が、下記の一般式(1)で表されるビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、一般式(2)で表されるアントラセン型エポキシ樹脂、一般式(3)で表されるジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一つを有する樹脂である上記1〜4のいずれかのパッケージ基板用樹脂組成物。
【0009】
【化1】

(R1〜R4は、独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)
【0010】
【化2】

(R5〜R8は、独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0011】
【化3】

(R9〜R10は、独立に、炭素数1〜6のアルキル基であり、pおよびqは0〜4の整数である。)
【0012】
6.上記1〜5のいずれかのパッケージ基板用樹脂組成物に有機溶剤を含有するワニス。
7.上記6のワニスを基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化して得られたプリプレグ。
8.基材が、ガラス織布、ガラス不織布、アラミド不織布から選ばれる少なくとも一種である上記7のプリプレグ。
9.上記7又は8のプリプレグを積層成形して得られた積層板。
10.プリプレグの少なくとも一方の面に金属箔を重ねた後、加熱加圧成形して得られた金属張積層板である上記9の積層板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多環式化合物を有する樹脂に高耐熱水酸化アルミニウムを配合することで、ピール強度が低下することなく、耐熱性の高いパッケージ基板用樹脂組成物、プリプレグおよび積層板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のパッケージ基板用樹脂組成物は、多環式化合物を有する樹脂(A)と、脱水温度が250℃以上の高耐熱水酸化アルミニウム(B)を含有することを特徴するものであり、多環式化合物を有する樹脂中に高耐熱水酸化アルミニウムを均一分散することで耐熱性とピール強度を向上させた樹脂組成物である。
【0015】
本発明のパッケージ基板用樹脂組成物における多環式化合物を有する樹脂(A)は、多層配線板用途として、絶縁性や吸湿性の面で優れている分子内に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂が好適に用いられる。
多環式化合物を有するエポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
また、これらのエポキシ樹脂の中で、下記の一般式(1)で表されるビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、一般式(2)で表されるアントラセン型エポキシ樹脂および一般式(3)で表されるジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
エポキシ樹脂の分子量は特に制限されず、何種類かの芳香環を有する樹脂を併用することもできる。
【0017】
【化4】

(R1〜R4は、独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)
【0018】
【化5】

(R5〜R8は、独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0019】
【化6】

(R9〜R10は、独立に、炭素数1〜6のアルキル基であり、pおよびqは0〜4の整数である。)
【0020】
なお、本発明のパッケージ基板用樹脂組成物には、ビフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環、ジヒドロアントラセン環から選ばれる少なくとも一種の芳香環を有する化合物以外の芳香環を有する化合物を含むエポキシ樹脂を含んでいても良く、このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0021】
上記のように多環式化合物を有する樹脂(A)としてエポキシ樹脂を用いる場合、結晶性エポキシ樹脂、即ち20℃で結晶性状を持つエポキシ樹脂が好適に使用される。
【0022】
多環式化合物を有する樹脂(A)としてエポキシ樹脂を用いる場合、必要に応じて該エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤を使用することができる。硬化剤の例としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多官能フェノール化合物、ベンゾグアナミン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
また、硬化促進剤の例としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
なお、本発明のパッケージ基板用樹脂組成物において、エポキシ樹脂の他に硬化剤および硬化促進剤を使用する場合、使用される硬化剤および硬化促進剤は、多環式化合物を有する樹脂(A)中に含まれる。
【0023】
多環式化合物を有するエポキシ樹脂の場合、硬化剤は多環式化合物を有する樹脂(A)に対して0.8〜1.2当量とすることが好ましく、硬化促進剤は多環式化合物を有する樹脂(A)100質量部に対して0.01〜5質量部とすることが好ましい。
【0024】
パッケージ基板用樹脂組成物における高耐熱水酸化アルミニウム(B)は、脱水温度が250℃以上あればどのような形状のものでも良い。なお、この脱水温度は水酸化アルミニウムを加熱して1質量%の水を排出する時の温度であり、脱水温度が250℃以上の水酸化アルミニウムが一般に高耐熱水酸化アルミニウムと呼ばれている。
このような高耐熱水酸化アルミニウムとしては、例えば、ALH(河合石灰工業株式会社製、商品名)を挙げることができる。
【0025】
高耐熱水酸化アルミニウムは、BET比表面積が3.5〜10m2/gのものが好ましく、3.8〜7m2/gのものがさらに好ましい。BET比表面積が3.5m2/g以上であることにより耐熱性の向上効果が得られ、10m2/g以下であることによりピール強度が向上する。
【0026】
多環式化合物を有する樹脂(A)と高耐熱水酸化アルミニウム(B)の比率は、多環式化合物を有する樹脂(A)100質量部に対し、高耐熱水酸化アルミニウム(B)が50〜150質量部が好ましく、70〜130質量部がより好ましく、80〜120質量部が特に好ましい。高耐熱水酸化アルミニウム(B)を50質量部以上とすることにより難燃効果が得られ、150質量部以下とすることにより耐熱性が低下しない。
【0027】
本発明のパッケージ基板用樹脂組成物には、多環式化合物を有する樹脂(A)および高耐熱水酸化アルミニウム(B)と共に、シリカ(C)を含有させることが好ましい。
パッケージ基板用樹脂組成物に含有させるシリカ(C)としては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカが挙げられる。これらの中で、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から溶融球状シリカが好ましい。
【0028】
(C)成分のシリカとして溶融球状シリカを用いる場合、その平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましい。
溶融球状シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂組成物に溶融球状シリカを高充填した際の流動性を良好に保つことができ、さらに10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。
ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
(C)成分のシリカの含有量は、多環式化合物を有する樹脂(A)100質量部に対し、30〜150質量部が好ましく、70〜130質量部がより好ましい。シリカ含有(C)を30質量部以上とすることにより熱膨張率が低減でき、150質量部以下とすることにより銅箔引き剥がし強さが向上する。
【0029】
本発明のパッケージ基板用樹脂組成物には、高耐熱水酸化アルミニウム(B)およびシリカ(C)以外の無機充填剤を配合しても構わないし、添加剤を添加することができる。(B)、(C)成分以外の無機充填剤としては、アルミナ、炭酸カルシウム、クレイ、タルク、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウム等を使用することができる。
これらの無機充填剤の配合量としては、均一でかつ良好な取扱性を得るために、パッケージ基板用樹脂組成物の総量100質量部に対して、300質量部以下とすることが好ましく、200質量部以下にすることがより好ましい。
また、添加剤としては、各種シランカップリング剤、消泡剤等を使用できる。この配合量としてはパッケージ基板用樹脂組成物の総量100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは3質量部以下にすることが樹脂組成物の特性を維持する上で好ましい。
高耐熱水酸化アルミニウム(B)やシリカ(C)などの無機充填剤を均一に分散させるため、らいかい機、ホモジナイザー、ビーズミル、ナノマイザー等を用いることが有効である。
【0030】
本発明のパッケージ基板用樹脂組成物は、多環式化合物を有する樹脂(A)と高耐熱水酸化アルミニウム(B)などの無機充填剤を均一に混合するため、有機溶剤を加えてワニスとして用いることが好ましい。
有機溶剤は、多環式化合物を有する樹脂(A)の溶解と高耐熱水酸化アルミニウム(B)などを分散できればどのようなものでもよいが、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が多環式化合物を有する樹脂(A)の溶解性に優れ、高耐熱水酸化アルミニウム(B)などの分散性を有するので好ましく使用される。なお、上記の有機溶剤は組み合わせて用いることができる。
これらの有機溶剤の配合量は、多環式化合物を有する樹脂(A)の溶解と高耐熱水酸化アルミニウム(B)などの分散ができればどのような量でもよいが、多環式化合物を有する樹脂(A)と高耐熱水酸化アルミニウム(B)などの固形成分の総量100質量部に対して、30〜300質量部が好ましく、50〜200質量部がさらに好ましい。
【0031】
本発明のパッケージ基板用樹脂組成物は、基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化してプリプレグとして使用される。プリプレグに用いる際には、最終的に、多環式化合物を有する樹脂(A)や高耐熱水酸化アルミニウム(B)などの各成分が有機溶剤中に溶解もしくは分散されたワニスの状態とすることが好ましい。
本発明のプリプレグは、本発明のパッケージ基板用樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化してなるものである。すなわち、本発明のパッケージ基板用樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、加熱等により半硬化(Bステージ化)させて本発明のプリプレグを製造する。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
【0032】
本発明のプリプレグに用いられる基材は、パッケージ基板用樹脂組成物を含浸させて熱硬化・一体化出来るものであればよく、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物の繊維、ポリイミド、ポリエステル及びポリテトラフルオロエチレン等の有機物の繊維並びにそれらの混合物等が挙げられ、ガラス織布やガラス不織布、アラミド不織布が好適に用いられる。
基材の厚さは、特に制限されないが、例えば、約0.01〜0.2mmのものを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
【0033】
本発明の積層板は、本発明のプリプレグを積層成形して得られるものである。すなわち、プリプレグを、例えば、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形したものである。成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
【実施例】
【0034】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、実施例での耐熱性、ピール強度および絶縁性の評価は以下の方法により測定した。
【0035】
(1)耐熱性
作製した両面銅張積層板(プリプレグ8枚重ね)を50×50mmに切断し、288℃のはんだにフローティングして膨れが発生するまでの時間を測定した。
(2)ピール強度(銅箔引き剥がし強さ)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより1cm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔のピール強度を測定した。(JIS C 5016に準拠し、銅箔の厚さは18μmとした。)
(3)絶縁性
作製した両面銅張積層板(プリプレグ8枚重ね)を50×100mmに切断した後、直径10mmのパターンを形成した。絶縁性は、作製した試験片を85℃/85%RHの恒温恒湿槽中でDC50Vの電圧を印加した条件で、絶縁劣化するまでの時間として測定した。
【0036】
実施例1
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、多環式化合物を有する樹脂(A)としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:YX−8800)100gとビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、商品名:NC−3000‐H)65.8g、エポキシ樹脂の硬化剤としてジシアンジアミド(関東化学株式会社製)0.6gとクレゾールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名:KA−1165)84.5g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)252gを加え、100℃で30分間加熱溶解した。その後、シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:SO−G1)153.3g、高耐熱水酸化アルミニウム(河合石灰工業株式会社製、商品名:ALH、脱水温度255℃)168.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)100g、硬化促進剤1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社、商品名:2PZ−CN)0.5gを投入し、1時間撹拌して目的のワニスを得た。
作製したワニスを厚みが0.1mmのガラス織布(坪量105g/m2)に含浸し、160℃で4分間加熱して半硬化(Bステージ状態)のプリプレグを得た。このプリプレグを8枚重ね、その両側に18μmの銅箔(商品名:YGP−18、Rz:8.6μm)を重ね、185℃、90分、3.0MPaのプレス条件で両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0037】
実施例2
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、多環式化合物を有する樹脂(A)としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:YX−8800)100gとビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、商品名:NC−3000−H)65.8g、エポキシ樹脂の硬化剤としてジシアンジアミド(関東化学株式会社製)0.6gとクレゾールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名:KA−1165)61.1g、フェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名:TD−2090)20.7g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)252gを加え、100℃で30分間加熱溶解した。その後、シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:SO−G1)151.7g、高耐熱水酸化アルミニウム(河合石灰工業株式会社製、商品名:ALH)166.9g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)100g、硬化促進剤1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社、商品名:2PZ−CN)0.5gを投入し、1時間撹拌して目的のワニスを得た。
以下、実施例1と同様の方法で両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0038】
比較例1
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、多環式化合物を有する樹脂(A)として、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:YX−8800)100gとビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000−H)65.8g、エポキシ樹脂の硬化剤としてジシアンジアミド(関東化学株式会社製)0.6gとクレゾールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名KA−1165)84.5g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)252gを加え、100℃で30分間加熱溶解した。その後、シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:SO−G1)153.3g、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、商品名:HP−360、脱水温度248℃)168.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)100g、硬化促進剤1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社、商品名:2PZ−CN)0.5gを投入し、1時間撹拌して目的のワニスを得た。
作製したワニスを厚みが0.1mmのガラス織布(坪量105g/m2)に含浸し、160℃で3分間加熱して半硬化(Bステージ状態)のプリプレグを得た。このプリプレグを8枚重ね、その両側に18μmの銅箔(商品名:YGP−18、Rz:8.6μm)を重ね、185℃、90分、3.0MPaのプレス条件で両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0039】
比較例2
比較例1において、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、商品名:HP−360)168.6gに代えて、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名CL−303、脱水温度230℃)173.2gとした以外は全て同様とした。得られた銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0040】
比較例3
エポキシ樹脂としてビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:N865)100g、エポキシ樹脂の硬化剤としてジシアンジアミド(関東化学株式会社製)0.5gとクレゾールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名KA−1165)55.2g、無機充填剤としてシリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:SO−G1)95.1g、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名:CL−303)104.7g、有機溶剤としてメチルエチルケトン(関東化学株式会社製)130g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学株式会社製)20g、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社、商品名:2PZ−CN)0.3gを投入し、エポキシ樹脂、硬化剤が溶解、無機充填剤が分散するまで撹拌して目的のワニスを得た。
以下、実施例1と同様の方法で両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
第1表の実施例1、2と比較例2の比較から、高耐熱水酸化アルミニウム(B)を用いることで耐熱性、ピール強度を同時に向上できることが分かる。また、比較例1は特許文献6で示されている手法を用いたものであり、耐熱性、ピール強度を共に向上できるが、実施例ほどの耐熱性の向上が無い。
従って、本発明によるピール強度と耐熱性を同時に向上できることは、多環式化合物を有する樹脂(A)に高耐熱水酸化アルミニウム(B)を用いた場合のみに発現する現象であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、多環式化合物を有する樹脂(A)に高耐熱水酸化アルミニウム(B)を配合することで、ピール強度と耐熱性を同時に向上した樹脂組成物を得ることができ、パッケージ基板の用途に好適な材料として電子部品の製造等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多環式化合物を有する樹脂(A)と、脱水温度が250℃以上の高耐熱水酸化アルミニウム(B)を含有することを特徴とするパッケージ基板用樹脂組成物。
【請求項2】
さらにシリカ(C)を含有する請求項1に記載のパッケージ基板用樹脂組成物。
【請求項3】
多環式化合物を有する樹脂(A)が、20℃で結晶性状を持つエポキシ樹脂である請求項1又は2に記載のパッケージ基板用樹脂組成物。
【請求項4】
高耐熱水酸化アルミニウム(B)のBET比表面積が3.5〜10m2/gである請求項3に記載のパッケージ基板用樹脂組成物。
【請求項5】
多環式化合物を有する樹脂が、下記の一般式(1)で表されるビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、一般式(2)で表されるアントラセン型エポキシ樹脂、一般式(3)で表されるジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一つを含む樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載のパッケージ基板用樹脂組成物。
【化1】

(R1〜R4は、独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)
【化2】

(R5〜R8は、独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【化3】

(R9〜R10は、独立に、炭素数1〜6のアルキル基であり、pおよびqは0〜4の整数である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のパッケージ基板用樹脂組成物に有機溶剤を含有するワニス。
【請求項7】
請求項6のワニスを基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化して得られたプリプレグ。
【請求項8】
基材が、ガラス織布、ガラス不織布、アラミド不織布から選ばれる少なくとも一種である請求項7に記載のプリプレグ。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のプリプレグを積層成形して得られた積層板。
【請求項10】
プリプレグの少なくとも一方の面に金属箔を重ねた後、加熱加圧成形して得られた金属張積層板である請求項9に記載の積層板。

【公開番号】特開2012−229362(P2012−229362A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99643(P2011−99643)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】