説明

パッションフルーツの有効利用法

【課題】パッションフルーツの中身を青果やジュースなどとして利用した後に残る果皮の全部、すなわち内皮と中皮と外皮も全部100%有効利用することによって、パッションフルーツのゼロ・エミッションを実現する。
【解決手段】中身を除去した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離し、かつ凍結乾燥してなることを特徴とするパッションフルーツ由来の増粘安定剤であり、果皮の内皮部分を分離し、凍結乾燥してなるパッションフルーツ由来の増粘安定剤は、水分を除去した乾燥品であるため、ジャム以外の加工食品を製造する際に、所定の分量を正確に計量して、安定した高品質の製品を製造するのに適しているので、商品化に適している。したがって、残留農薬等の心配もなく、消費者の安全が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来果汁だけしか利用されていなかったパッションフルーツにつき、果実全体を有効利用可能な方法を実現し、パッションフルーツのゼロ・エミッションを目指すものである。
【背景技術】
【0002】
特開平11−196788号として、今まで廃棄されていたパッションフルーツの皮を、ジャムなどの加工食品に用いることができるようにするために、果実の中身を取り除いたパッションフルーツの皮よりペーストを製造し、このペーストを用いてジャムなどの加工食品を製造する方法が提案されている。
【0003】
また、特開2000-41595号として、極めて低いと言われるパッションフルーツの歩留りを良くすることと、無添加のジャムを製造するために、通常破棄されているパッションフルーツの内果皮の部分を増粘剤として加工利用することにより、果実利用の歩留りを高め、かつ極めて品質の高いジャムを得る方法が提案されている。
【特許文献1】特開平11−196788号
【特許文献2】特開2000-41595号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の製法も特許文献2の製法もジャムなどのような半固形物の製造時に増粘剤として用いるだけであって、ジャムなどの製造以外において、最適の分量を正確に計量して用いるような用途には適せず、増粘安定剤として商品化することは望めない。
【0005】
また、パッションフルーツの果皮の内皮部のみを有効利用する方法であって、中皮や外皮も有効利用することによって、パッションフルーツのゼロ・エミッションを実現することは不可能である。
【0006】
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、パッションフルーツの中身を青果やジュースなどとして利用した後に残る果皮の全部、すなわち内皮と中皮と外皮も全部100%有効利用することによって、パッションフルーツのゼロ・エミッションを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、中身を除去した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離し、かつ凍結乾燥してなることを特徴とするパッションフルーツ由来の増粘安定剤である。このように、中身を除去し、果汁として利用した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離し、かつ凍結乾燥してなるパッションフルーツ由来の増粘安定剤は、水分を除去した乾燥品であるため、ジャム以外の加工食品を製造する際に、所定の分量を正確に計量して、安定した高品質の製品を製造するのに適しているので、商品化に適している。したがって、残留農薬等に関するポジティブリスト制度が導入されている今日、安心して、自然のパッションフルーツ由来の増粘安定剤が容易に入手可能となるため、消費者の安全が確保される。
【0008】
請求項2は、中身を除去した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離し、かつ凍結乾燥することを特徴とするパッションフルーツ由来の増粘安定剤の製造方法である。請求項2は、請求項1の増粘安定剤の製造方法であり、中身を除去した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離して、凍結乾燥する方法によると、汎用性に富んだ、扱い易い、パッションフルーツ由来の増粘安定剤を製造し、提供できる。
【0009】
請求項3は、少なくとも発酵乳とパッションフルーツの果汁と糖分と水と請求項2の製法で製造した凍結乾燥したパッションフルーツ由来の増粘安定剤とを用いることを特徴とするストレートパッション乳飲料の製造方法である。このように、少なくとも発酵乳とパッションフルーツの果汁と糖分と水と請求項2の製法で製造した凍結乾燥したパッションフルーツ由来の増粘安定剤とを用いることによってストレートパッション乳飲料の製造するため、パッションフルーツ由来の増粘安定剤の作用によって、成分の分離が無く、かつ安定した高品質のストレートパッション乳飲料を製造できる。また、凍結乾燥したパッションフルーツ由来の増粘安定剤であるため、計量などの取り扱いも簡便で、品質の一定したストレートパッション乳飲料を製造し、商品化できる。
【0010】
請求項4は、水100に対し、前記の増粘安定剤を1.0〜5.0重量%用いることを特徴とする請求項3に記載のストレートパッション乳飲料の製造方法である。このように、水100に対し、前記の増粘安定剤を1.0〜5.0重量%用いるため、ストレートパッション乳飲料として最適の粘度や味覚を確立できる。凍結乾燥したパッションフルーツ由来の増粘安定剤の比率が1.0重量%より少ないと、増粘作用が低下し、成分の分離を来す恐れがある。逆に、5.0重量%より多いと、増粘作用が高過ぎて、粘度の高い製品となり、味覚や風味が劣るなどの問題が生じる。なお、2.0重量%までしか実験してないが、2.0重量%から5.0重量%程度までは、色や分離状況も2.0重量%と同程度の状態が維持できるものと思われる。
【0011】
請求項5は、少なくとも、パッションフルーツの中身や内皮を除去した後に残る中皮外皮と紙と水とを粉砕混合した後、紙漉き手段で漉いて乾燥させ、さらにプレスしてなることを特徴とするパッションフルーツ紙である。このように、パッションフルーツの中身や内皮を除去した後に残る中皮外皮と紙に水を加えて粉砕した後、紙漉き手段で漉いて乾燥させ、さらにプレスしてなるパッションフルーツ紙は、従来使い道の無かった外皮と中皮とをパッションフルーツ紙として有効利用できるため、パッションフルーツのゼロ・エミッションが実現可能となる。しかも、パッションフルーツ果皮の外皮と中皮を用いると、製紙時の糊剤の作用を兼ねるため、糊剤が不要になるという思わぬ効果も得られる。パッションフルーツの外皮を含んでいるため、パッションフルーツの外皮の独特の色と性状が紙として表現でき、包装紙や包装箱などとして最適である。もちろん、名刺などとして使用することによって、パッションフルーツによる村興しなどにも好適である。
【0012】
請求項6は、少なくとも、パッションフルーツの中身や内皮を除去した後に残る中皮外皮と紙と水とを粉砕混合した後、紙漉き手段で漉いて乾燥させ、さらにプレスすることを特徴とするパッションフルーツ紙の製造方法である。なお、パッションフルーツの中皮・外皮や紙は、先に別々にある程度まで粉砕してから、混合してもよい。このように、パッションフルーツの中身や内皮を除去した後に残る中皮・外皮と紙に水を加えて粉砕混合した後、紙漉き手段で漉いて乾燥させ、さらにプレスする方法によると、果皮の中皮・外皮の作用によって、製紙に必要とされている糊剤を使用しないでも製紙可能となる。
【0013】
請求項7は、前記の中皮外皮と紙との配合割合を10対1から10対3としたことを特徴とする請求項6に記載のパッションフルーツ紙の製造方法である。このように、中皮外皮と紙との配合割合を10対1から10対3としたことにより、糊を添加しなくても紙を製作でき、しかもパッションフルーツの外皮が持つ独特な模様を表現できる。
【0014】
請求項8は、パッションフルーツの中身を採取又は利用した後に残る果皮も全部有効利用するために、内皮は、汎用性に富んだ増粘安定剤として製品化し、中皮外皮を用いてパッション紙を製紙することを特徴とするパッションフルーツのゼロ・エミッション実現方法である。このように、パッションフルーツの内皮は、汎用性に富んだ増粘安定剤として製品化し、中皮外皮はパッション紙の原料とすることによって、パッションフルーツのゼロ・エミッションを実現でき、パッションフルーツの中身を採取又は利用した後に残る果皮も全部有効利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1のように、中身を除去し、果汁として利用した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離し、かつ凍結乾燥してなるパッションフルーツ由来の増粘安定剤は、水分を除去した乾燥品であるため、ジャム以外の加工食品を製造する際に、所定の分量を正確に計量して、安定した高品質の製品を製造するのに適しているので、商品化に適している。したがって、残留農薬等に関するポジティブリスト制度が導入されている今日、安心して、自然のパッションフルーツ由来の増粘安定剤が容易に入手可能となるため、消費者の安全が確保される。
【0016】
請求項2のように、中身を除去した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離して、凍結乾燥する方法によると、汎用性に富んだ、扱い易い、パッションフルーツ由来の増粘安定剤を製造し、提供できる。
【0017】
請求項3のように、少なくとも発酵乳とパッションフルーツの果汁と糖分と水と請求項2の製法で製造した凍結乾燥したパッションフルーツ由来の増粘安定剤とを用いることによってストレートパッション乳飲料の製造するため、パッションフルーツ由来の増粘安定剤の作用によって、成分の分離が無く、かつ安定した高品質のストレートパッション乳飲料を製造できる。また、凍結乾燥したパッションフルーツ由来の増粘安定剤であるため、計量などの取り扱いも簡便で、品質の一定したストレートパッション乳飲料を製造し、商品化できる。
【0018】
請求項4のように、水100に対し、前記の増粘安定剤を1.0〜5.0重量%用いるため、ストレートパッション乳飲料として最適の粘度や味覚を確立できる。凍結乾燥したパッションフルーツ由来の増粘安定剤の比率が1.0重量%より少ないと、増粘作用が低下し、成分の分離を来す恐れがある。逆に、5.0重量%より多いと、増粘作用が高過ぎて、粘度の高い製品となり、味覚や風味が劣るなどの問題が生じる。
【0019】
請求項5のように、パッションフルーツの中身や内皮を除去した後に残る中皮・外皮と紙に水を加えて粉砕した後、紙漉き手段で漉いて乾燥させ、さらにプレスしてなるパッションフルーツ紙は、従来使い道の無かった外皮と中皮とをパッションフルーツ紙として有効利用できるため、パッションフルーツのゼロ・エミッションが実現可能となる。しかも、パッションフルーツ果皮の外皮と中皮を用いると、製紙時の糊剤の作用を兼ねるため、糊剤が不要になるという思わぬ効果も得られる。パッションフルーツの外皮を含んでいるため、パッションフルーツの外皮の独特の色と性状が紙として表現でき、包装紙や包装箱などとして最適である。もちろん、名刺などとして使用することによって、パッションフルーツによる村興しなどにも好適である。
【0020】
請求項6のように、パッションフルーツの中身や内皮を除去した後に残る中皮・外皮と紙に水を加えて粉砕混合した後、紙漉き手段で漉いて乾燥させ、さらにプレスする方法によると、パッションフルーツ果皮の中皮・外皮の作用によって、製紙に必要とされている糊剤を使用しないでも製紙可能となる。
【0021】
請求項7のように、中皮外皮と紙との配合割合を10対1から10対3としたことにより、糊を添加しなくても紙を製作でき、しかもパッションフルーツの外皮が持つ独特な模様を表現できる。
【0022】
請求項8のように、パッションフルーツの内皮は、汎用性に富んだ増粘安定剤として製品化し、中皮外皮はパッション紙の原料とすることによって、パッションフルーツのゼロ・エミッションを実現でき、パッションフルーツの中身を採取又は利用した後に残る果皮も全部有効利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明によるパッションフルーツの有効利用法が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。本発明は、農林高校における授業の一環として完成したため、実際の授業の進行に沿って生徒達が説明する。
一.テーマ設定の理由
本校「県立南部農林高校」が位置する沖縄本島南部地域の糸満市では、沖縄県よりパッションフルーツの産地認定を受け、地産地消運動を進めています。
また、糸満観光農園より商品開発の依頼があり、意欲的に研究活動を始め、試行錯誤の末、パッション酸乳を完成させました。各種イベントでの普及活動と営業許可の取得にこぎつけました。私たちの、この取り組みは、糸満観光農園の売り上げにも貢献できたばかりではなく、生産農家からも「特産品が多くなれば栽培も頑張れるよ」という言葉をいただき、多くのマスコミにも取り上げられました。
今年度は、「ぐっとにゅ〜」のような希釈タイプではなく、薄めず、すぐ飲めるストレートパッション乳飲料の研究開発を進めてきました。
さらに私たちは、糸満観光農園で廃棄される種や果皮の有効利用の研究を行い、パッションフルーツのゼロ・エミッションを進めることによって、糸満市の農業振興と観光産業の活性化を目指しました。
【0024】
二.次に、実施計画と研究経過を詳述します。
1.資料収集
酸乳飲料は、発酵乳に砂糖を添加して作りますが、水で薄めると分離し、見た目が非常に悪くなります。資料収集の結果、市販されている乳飲料は、分離防止のため、表1のような「増粘安定剤」を使用していることが分かりました。私たちは、いろんな果実に含まれているペクチンに注目し、実験を進めました。
【0025】
安定剤の種類
【表.1】

【0026】
2.ストレートパッション乳飲料の研究開発
糸満市では、年間30tのパッションフルーツが生産されています。規格外の果実は、糸満観光農園で年間11tが加工用として利用され、約7tの皮が廃棄されていますから、果汁歩留りは40%しかありません。
私たちは、まず廃棄されている皮にも、ペクチンが含まれていると思い、定性実験を以下の〔方法1〕のように行いました。その結果、ペクチンが多量に含まれていることが分かりました。
【0027】
〔方法1〕
(1).皮に2倍量の1%食塩水を加え、10分間煮沸して苦みをとる。
(2).布でこし、皮を流水で洗う。
(3).(2).の皮を0.2 %クエン酸液で10分間煮沸抽出する。
(4).布でこし、ペクチン液を得る。
(5).抽出液を試験管に入れ、同量の95%エタノールを入れる。
(6).静置後、軽く混ぜ凝固状態を判定する。
【0028】
〔実験1〕ペクチン液を使って分離を防ぐ実験
発酵乳に、抽出したペクチン液を添加して実験を、〔方法2〕のように進めましたが、ペクチン液の色や濃度が一定ではなかったので、完全に分離を抑えることはできず、色や味の改善も必要でした。
【0029】
〔方法2〕
(1).発酵乳に砂糖を添加する。
(2).ペクチン液を加え加熱溶解する。
(3).冷却し、パッション果汁を加える。
(4).容器に移す。
【0030】
〔実験2〕粉末カゼイン使用量実験
〔実験の概要〕
まず私達は、粉末カゼインと液糖を添加して、おいしく飲める添加量を確認する必要性を感じ、ベースとなる添加量実験を行いました。実験方法は以下の通りです。
〔実験方法〕
(1).コップに水を100mlを入れ、液糖を入れてよく混ぜる。
(2).(1).に発酵乳を入れ、加熱溶解する。
【0031】
〔結果〕
表2のように、液糖20%・粉末カゼイン0.1〜0.9%の範囲で実験を行いました。
【表.2】

【0032】
〔実験の結果〕
液糖20%は、少し甘く感じるという意見もあったが、良いという意見が多かった。また、粉末カゼインは、0.7〜0.9%添加が薄くもなく、濃くもなく飲みやすかった。
この結果から、粉末カゼインは0.9%として、液糖は20%をベースにすることに決め、それにペクチン液を添加して実験を進めていくことにしました。
【0033】
〔実験3〕パッションの皮の処理実験
実験1の結果、抽出したペクチン液は、色・味が非常に悪かったので、色を抜く目的で、皮を細かく切り煮沸していると、皮が外皮、中皮、内皮に分かれることに気づきました。
さらに、作業効率を上げるため、皮をそのまま30分煮沸し、内皮だけをアク抜きすれば、桃のような内皮がとれることが分かりました。
その内皮を使ってストレート飲料を試作すると、初めて分離を抑えることに成功しました。しかし、手で絞った内皮で製造したため、添加量が曖昧だったので、内皮を凍結乾燥し、実験を進めました。
凍結乾燥内皮を使った実験では、表.3のように、水100に対して1重量%以上の添加で、分離を防ぐことが分かりました。
また、処理した内皮を凍結乾燥し真空保存することで、利便性が高くなり、内皮だけでも安定剤として流通できる可能性を見出すことができました。
【0034】
凍結乾燥内皮を使った製造実験
【表.3】

【0035】
〔調査〕ストレートパッション乳飲料の試飲調査
製造実験で良い結果が得られたので、試飲アンケートを実施しました。
〔結果〕
試飲アンケートの結果では、「美味しい」、「香りが程良い」という意見が多かったが、「甘すぎる」、「ネクターみたい」という意見もあり、改良実験を進めました。
【0036】
〔改良実験結果〕
表.4、表.5のように、改良実験を進めた結果、表6のように、砂糖11%、果汁6%の添加が良いことが分かり、表7のように、最適な原料配合を決定することができました。
砂糖添加量
【表.4】

砂糖10%添加の果汁添加比較
【表.5】

砂糖11%添加の果汁添加比較
【表.6】

原料配合
【表.7】

【0037】
〔製品のタイプ調査と粘度測定〕
私たちは、開発した製品の商品化が可能かどうか確認するため、商品化されている果汁飲料や清涼飲料水の試飲と、粘度測定を実施し、流通商品のタイプ分けを行いました。商品のタイプ分けは、メンバーで飲んだ感じと粘度で、4つのタイプに分けました。その結果、ストレート飲料はドロドロタイプですが、同じタイプの商品もあり、流通も可能だと判断しました。
【0038】
〔実験4〕残留農薬の検査実験
食品衛生法の一部改正により、平成18年5月29日より残留農薬等に関するポジティブリスト制度が導入されました。この制度によって、農薬等の成分が残留する食品は、輸入、製造、保存、販売等ができないので、パッション内皮の残留農薬検査を、沖縄県教育センターにおいて行いました。
【0039】
GC−MS(ガスクロマトグラフィー−マススぺクトル)で解析した結果、農薬は検出されず、安全性の面でも商品化できると確信しました。さらに、今後国内産及び輸入農産物から作られている安定剤も規制が厳しくなるので、パッション内皮だけでも「安全な安定剤」としてアピールできることも実証できました。
【0040】
〔実験5〕栄養成分の分析実験
学校及び沖縄県教育センターで、内皮の成分分析を行った結果、表8のように、ミネラル分や食物繊維が含まれることが分かり、製品化した状態でも表9のようにミネラル分や食物繊維を含有しています。表10のように、市販品と比較しても、機能性の面でもアピールできることが分かりました。
現在私たちは、賞味期限の調査やラベル制作を行い商品化を進めています。
【0041】
内皮の成分
【表.8】

【0042】
製品中の成分
【表.9】

【0043】
栄養成分の市販商品との比較(100g中)
【表.10】

【0044】
3.パッションフルーツのゼロ・エミッションに向けて
果汁や種を利用した菓子製品の開発も同時に進めていた私たちは、表11のように、パッションチーズタルトケーキを考案し、商品化のため、箱容器の製作を進めました。
オリジナリティーを出すために、捨てられるパッションの外皮(外皮、中皮)を利用して、パッション紙の製作に挑戦しました。
パッション外皮(外皮・中皮)と学校で廃棄される両面使用済みの白紙を混ぜ、パッション紙の製作を行ったところ、糊を添加しなくても紙を製作できることが分かりました。
【0045】
原料配合
【表.11】

【0046】
〔製作方法1〕
(1).廃棄白紙をちぎり水に浸ける。
(2).水を含んだ紙とパッションフルーツの外皮を、適量の水と一緒にミキサーにかけ粉砕する。
(3).オリジナルの紙すきですき、乾燥させる。
(4).乾燥させ、製麺機でプレスして完成。
【0047】
〔実験2〕紙の配合実験
以下のように外皮(外皮・中皮)と廃棄白紙の配合実験を行った結果、表12のように、外皮と白紙の割合は10対1から10対3の配合で、パッションの外皮が独特な模様をつくり出すことが分かりました。
そこで私たちは、お菓子の箱や名刺を作り、総合的な利用をアピールすることにしました。
【0048】
パッション紙の配合割合と結果
【表.12】

【0049】
4.普及活動
パッションフルーツの内皮・外皮(外皮・中皮)の利用が期待できることから、糸満観光農園の山城社長をはじめ、スタッフ全員を学校に招き、皮の処理方法の説明を行いました。さらに糸満観光農園にて研究報告会を行い、職員の名刺をプレゼントしたところ、糸満観光農園のみなさんも高い関心を示し、急いで商品化を進めることを約束してくれました。
【0050】
5.まとめと反省
「ぐっとにゅ〜」を、地域企業との連携により、特産品にすることができた。
ストレート乳飲料を開発することができた。
パッションの皮の利用方法を開発することができた。
栄養成分の調査や残留農薬が無いことを実証することができた。
パッションフルーツのゼロ・エミッションの道すじをつけることができた。
【0051】
糸満観光農園をはじめとする多くの人との出逢いが、無理だと言われたパッションフルーツのストレート飲料の開発を可能にするとともに、私たちを成長させてくれました。
沖縄のティーダ(太陽、日光)をたっぷりあびたパッションには、まだまだ多くの可能性があります。地産地消、ゼロ・エミッションという夢に向かって、私たちの活動はこれからも続いていきます。私たちの手でパッションフルーツの可能性をどんどん広げていきたいと思います。
【0052】
三.その他の実施例(パッションフルーツ内皮由来の増粘安定剤を使った試作品実験(予備前実験))
「南部農林高校が製造した、乾燥状態の内皮を使用した試作品を製造」
1.パッションフルーツワインシャーベット
2.ヨーグルトアイスクリーム
【0053】
試作方法
1.(1). ワイン・果汁・砂糖・水を配合した、シャーベット種液1L に対し、乾燥安定剤2g添加(10倍量の水に約10分もどした)
(2).乾燥安定剤を添加していない種液
(3).在来安定剤(ビドフィックス)同等量を添加した種液
(4).(1).〜(3).を同じ条件で加熱し、アイスクリーム製造機で凝固させ、比較した。
【0054】
結果及び感想
製造直後、何も添加していない前記(2).に比べ前記(1).と(3).は滑らかな舌触りともちっとした食感があり、さらに前記(1).は、前記(2).と(3).に比べて酸味があり、パッションフルーツの風味が増した感がある。製造して3週間後(約−18度冷凍庫内保管)、(1).は製造直後は凝固していたが、糖液状になり溶けている部分と凝固している部分と分離していた。(2).と(3).は凝固しており、表面が少しぱさつき感があったが、中は滑らかさを維持していた。
【0055】
試作方法
2.前記1の時と同じように添加したアイスクリーム種液と添加していない種液を比較した。
結果及び感想
製造直後、添加なしは乳成分のざらつき感が感じられた。添加したサンプルは滑らかでもちもち感があり、ほどよいヨーグルトの酸味も感じられた。
【0056】
まとめ
従来の安定剤と同じように、製品の形状が安定される事がわかり、在来品に代わる天然の増粘安定剤として、商品化が期待できる。特に、フルーツや野菜を原料にした加工品に本剤を使用すると果汁感が増し、風味を向上する働きがある事も期待できる。従来品安定剤の使用を参考にすると、アイスクリーム、シャーベット、ジャム、フルーツソース、果汁ジュース、ゼリー、ドレッシング、マヨネーズ、ホイップクリーム、等の加工品の使用に期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明によると、パッションフルーツの中身だけでなく、中身を採取した後に残る果皮も全部有効利用できる。すなわち、内皮は、汎用性に富んだ増粘安定剤として製品化でき、中皮外皮もパッション紙として利用できる。その結果、パッションフルーツを全部100%有効利用することによって、パッションフルーツのゼロ・エミッションを実現でき、歩留り100%を達成できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中身を除去した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離し、かつ凍結乾燥してなることを特徴とするパッションフルーツ由来の増粘安定剤。
【請求項2】
中身を除去した後のパッションフルーツ果皮の内皮部分を分離し、かつ凍結乾燥することを特徴とするパッションフルーツ由来の増粘安定剤の製造方法。
【請求項3】
少なくとも発酵乳とパッションフルーツの果汁と糖分と水と請求項2の製法で製造した凍結乾燥したパッションフルーツ由来の増粘安定剤とを用いることを特徴とするストレートパッション乳飲料の製造方法。
【請求項4】
水100に対し、前記の増粘安定剤を1.0〜5.0重量%用いることを特徴とする請求項3に記載のストレートパッション乳飲料の製造方法。
【請求項5】
少なくとも、パッションフルーツの中身や内皮を除去した後に残る中皮外皮と紙と水とを粉砕混合した後、紙漉き手段で漉いて乾燥させ、さらにプレスしてなることを特徴とするパッションフルーツ紙。
【請求項6】
少なくとも、パッションフルーツの中身や内皮を除去した後に残る中皮外皮と紙と水とを粉砕又は混合した後、紙漉き手段で漉いて乾燥させ、さらにプレスすることを特徴とするパッションフルーツ紙の製造方法。
【請求項7】
前記の中皮外皮と紙との配合割合を10対1から10対3としたことを特徴とする請求項6に記載のパッションフルーツ紙の製造方法。
【請求項8】
パッションフルーツの中身を採取又は利用した後に残る果皮も全部有効利用するために、内皮は、汎用性に富んだ増粘安定剤として製品化し、中皮外皮を用いてパッション紙を製紙することを特徴とするパッションフルーツのゼロ・エミッション実現方法。

【公開番号】特開2008−29338(P2008−29338A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175660(P2007−175660)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(503329776)糸満観光農園株式会社 (1)
【Fターム(参考)】