説明

パッチアンテナ

【課題】製造が容易であり、アンテナ特性のばらつきが小さなパッチアンテナを提供する。
【解決手段】パッチアンテナ1は、誘電体からなる基板10と、基板10の上面10aに形成されたパッチ電極11と、基板10の底面10bの一部に形成され、パッチ電極11と容量結合された給電電極13と、基板10の底面10bに形成され、給電電極13から絶縁された接地電極とを備えている。基板のすべての側面10c〜10fは電極パターンのない絶縁面であるため、側面電極パターンの位置ずれによるアンテナ特性のばらつきを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチアンテナに関し、特に、パッチアンテナの電極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、GPSシステムを用いた位置情報サービスが急速に拡大しつつある。GPS用アンテナには"パッチアンテナ"と呼ばれるマイクロストリップアンテナが使用される。従来のパッチアンテナは、略正方形の誘電体基板の上面及び底面に放射電極(パッチ電極)及びグランド電極をそれぞれ形成し、誘電体基板の中心付近に誘電体基板を貫通する給電ピンを設け、この給電ピンを経由してパッチ電極に給電する構造が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、給電ピンを用いたパッチアンテナの場合、給電ピンが必要であるとともに、給電ピンを挿入するための貫通孔を誘電体基板に予め形成しておく必要があり、さらに給電ピンを半田付けする工程も必要であり、製造コストが高くなるという問題がある。また、パッチアンテナをプリント基板上に実装する際、給電ピンの先端部をプリント基板側の給電ラインに半田接続する必要があり、リフロー実装工程を採用できないという問題もある。さらに、給電ピンの上端部(頭部)が放射電極の電極面よりも上方に突出しており、給電ピンの頭部をパッチ電極面に半田付けした場合にはその高さがさらに増すため、パッチアンテナの低背化が妨げられるという問題がある。
【0004】
そこで、給電ピンを用いないパッチアンテナも提案されている。たとえば、特許文献2に記載のパッチアンテナは、誘電体基板の側面に給電ラインを設けたものであり、パッチ電極への給電はこの給電ラインを通じて行われる。また、特許文献3に記載のパッチアンテナは、誘電体基板の側面に凹部を形成し、この凹部に給電端子(給電ライン)を設けると共に、誘電体基板の上面に給電用導体を設け、パッチ電極に対して容量結合給電を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−289219号公報
【特許文献2】特開2002−314325号公報
【特許文献3】特開2001−267834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2、3に記載された従来のパッチアンテナは、誘電体基板の上下面とは別にその側面に電極パターンを印刷する工程が必要であり、工数の増加によって製造コストが増加するという問題がある。また、数mm程度の薄い誘電体基板の側面の一部に電極パターンを高い位置精度で印刷することは難しく、電極の位置がずれた場合にはアンテナ特性が低下するという問題もある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、少ない工数で製造でき、アンテナ特性のばらつきが小さく、低背化されたパッチアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によるパッチアンテナは、誘電体からなる基板と、前記基板の上面に形成されたパッチ電極と、前記基板の底面の一部に形成され、前記パッチ電極と電磁界結合された給電電極と、前記基板の前記底面に形成され且つ前記給電電極から絶縁された接地電極とを備え、前記基板のすべての側面は電極パターンのない絶縁面であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、基板の側面に電極パターンを印刷する工程が不要であり、製造コストを低減することができ、また電極の位置ずれによるアンテナ特性のばらつきも発生しない。また、給電ピンを用いていないので、基板の孔空け加工や給電ピンの半田付け工程も不要であり、リフロー実装を採用することもできる。
【0010】
本発明において、前記給電電極の一辺は、前記基板のエッジに接して幅方向の中央部に設けられるとともに、他の三辺が所定幅の絶縁ギャップを介して前記接地電極と対向していることが好ましい。この構成によれば、ノイズの影響を受けにくい特性の良好なパッチアンテナを実現することができる。
【0011】
本発明によるパッチアンテナは、前記基板の前記底面の四隅に形成され、前記グランド電極から絶縁分離されたコーナー電極をさらに備え、前記コーナー電極にチップ素子が接続されていることが好ましい。この場合、前記チップ素子は2つの端子を備え、一方の端子は前記コーナー電極に接続されており、他方の端子はグランドに接続されていることが好ましい。この構成によれば、必要に応じてインピーダンスや周波数を調整するためのチップ素子を接続することができ、パッチアンテナの特性を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少ない工数で製造でき、アンテナ特性のばらつきが小さく、低背化されたパッチアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態によるパッチアンテナ1の構成を示す略斜視図であって、プリント基板20上に実装された状態を示している。
【図2】図2は、パッチアンテナ1の展開図である。
【図3】図3は、プリント基板20のアンテナ実装領域20A内の導体パターンの一例を示す略斜視図である。
【図4】図4は、プリント基板20のアンテナ実装領域20A内の導体パターンの他の例を示す略斜視図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態によるパッチアンテナ2の構成を示す略斜視図であって、プリント基板20上に実装する前の状態を示している。
【図6】図6は、パッチアンテナ2が実装されるプリント基板20のアンテナ実装領域20A内の導体パターンの一例を示す略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態によるパッチアンテナ1の構成を示す略斜視図であって、プリント基板20上に実装された状態を示している。また、図2は、パッチアンテナ1の展開図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、パッチアンテナ1は、基板10と、基板10の上面10aに形成されたパッチ電極11と、基板10の底面10bに形成されたグランド電極12と、グランド電極12とともに基板10の底面10bに形成された給電電極13とを備えている。
【0017】
基板10は上面10a及び底面10bを主面とする薄型な誘電体ブロックである。基板10の平面サイズはパッチ電極11の平面サイズよりも少し大きいことが好ましく、特に限定されるものではないが、例えば12×12(mm)とすることができる。また、基板10の厚さは、アンテナ特性の観点からはできるだけ厚いほうがよいが、低背化の観点からはできるだけ薄いほうがよく、2〜4(mm)であることが好ましい。基板10の材料はセラミックであり、パッチアンテナの共振周波数に合わせた適切な誘電率を有している。基板の材料に高誘電率のセラミックを用いることで波長短縮効果を得ることができ、アンテナの小型化が可能となる。
【0018】
パッチ電極11は一辺が1/2波長程度の長さを有する矩形パターンである。矩形パターンの縦横比は利得や帯域幅などの特性に合わせて調整される。パッチ電極11の平面サイズは、例えば10×10(mm)とすることができる。
【0019】
グランド電極12は、給電電極13を除く底面10bの略全面に形成されている。グランド電極12はプリント基板20側のグランドパターンに接続されている。
【0020】
給電電極13は給電ラインに接続される電極である。給電電極13は矩形パターンであり、基板10の底面10bの一辺のエッジに接して設けられている。また、給電電極13は基板10の底面10bの幅方向の中央部に配置されており、これにより電極パターンの対称性が確保されている。給電電極13はプリント基板20側の給電ライン21に接続されている。
【0021】
給電電極13の一辺は、基板10の底面10bの一辺のエッジに接しているが、他の三辺は、電極パターンの非形成領域である絶縁ギャップ領域14を介して、グランド電極12と対向している。給電電極13とグランド電極12との間には一定幅の絶縁ギャップ領域14が介在しているので、両者の絶縁性を確保することができる。また、給電電極13の周囲三方向がグランド電極12に囲まれているので、ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0022】
本実施形態において、給電電極13は、底面10bの一辺のエッジに近い領域に小さく形成されているが、底面10bのエッジ側から中心部に向かって延びる細長い矩形パターンであってもよい。この場合、パッチ電極11と重なる部分が増えるので、容量結合を強めることができる。
【0023】
基板10の4つの側面10c〜10fには電極パターンは形成されていない。そのため、パッチ電極11は給電電極13に直接接続されていないが、基板10の厚み分のギャップ(誘電体)を介して容量結合している。これにより、基板10の側面の電極パターンを経由することなく給電が可能である。このように、本実施形態によるパッチアンテナ1は、基板10のすべての側面10c〜10fが電極パターンのない絶縁面であることから、基板10の側面への電極印刷工程が不要であり、容易かつ低コストで製造することができる。また、基板の側面に形成した電極パターンの位置ばらつきによるアンテナ特性の低下を防止することができる。
【0024】
図3は、プリント基板20のアンテナ実装領域20A内の導体パターンの一例を示す略斜視図である。
【0025】
図3に示すように、アンテナ実装領域20Aにはグランドパッド22及び給電パッド23が設けられている。アンテナ実装時において、グランドパッド22はパッチアンテナ1のグランド電極12に接続され、給電パッド23は給電電極13に接続される。
【0026】
プリント基板20の表面には導体層及びレジスト層が順次形成されており、導体層はレジスト層に覆われているが、レジスト層に覆われていない領域も存在する。アンテナ実装領域20Aもレジスト層に覆われていない領域の一つであり、この領域内の導体層はプリント基板20の表面に露出している。導体層にはグランドパターン及び給電ラインが含まれており、グランドパッド22はアンテナ実装領域20A内で露出したグランドパターンの一部であり、給電パッド23はアンテナ実装領域20A内で露出した給電ライン21の先端部である。一方、アンテナ実装領域20Aの周囲はレジスト層24に覆われた領域であるため、アンテナ実装領域20Aよりも外側のレジストパターンや給電ライン21は視認できない。よって、レジスト層24に覆われた給電ライン21は破線で表している。
【0027】
図4は、プリント基板20のアンテナ実装領域20A内の導体パターンの他の例を示す略斜視図である。
【0028】
図4に示すように、アンテナ実装領域20Aには、8分割されたグランドパッド22a〜22h及び給電パッド23が設けられている。これらの分割グランドパッド22a〜22hは、略格子状の分割ライン上をレジスト層で覆うことにより形成することができる。つまり、表面的には分割パターンであるが、内部的には一体的な導体パターンのままである。このようにグランドパッドの露出パターンを一つの大きなパターンではなく複数の小さなパターンとすることにより、パッチアンテナ1のグランド電極12の半田接合強度を高めることができる。
【0029】
図5は、本発明の第2の実施の形態によるパッチアンテナ2の構成を示す略斜視図であって、プリント基板20上に実装する前の状態を示している。
【0030】
図5に示すように、パッチアンテナ2の特徴は、基板10の底面10bの四隅にコーナー電極15a〜15dをさらに備えている点にある。コーナー電極15a〜15dはグランド電極12から絶縁分離された電極である。そのため、コーナー電極15a〜15dの形成位置にあるグランド電極は削除されている。その他の構成は第1の実施形態によるパッチアンテナ1と実質的に同一であるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
図6は、パッチアンテナ2が実装されるプリント基板20のアンテナ実装領域20A内の導体パターンの一例を示す略平面図である。
【0032】
図6に示すように、パッチアンテナ2が搭載されるプリント基板20上のアンテナ実装領域20Aの四隅には、コーナー電極15a〜15dに対応してランド25a〜25dが設けられている。ランド25a〜25dの各々は絶縁領域に囲まれており、周囲のグランドパターンから絶縁分離されている。ランド25a〜25dの主要部はアンテナ実装領域20A内に収まっているが、一部はアンテナ実装領域20Aの外側にはみ出している。このはみ出した部分は、チップキャパシタやチップインダクタ等のチップ素子を実装する際のパッドとして機能する。
【0033】
調整素子実装領域20B〜20Eは、アンテナ実装領域20Aと同様、レジスト層が排除された領域であり、導体層が露出している。詳細には、アンテナ実装領域20Aからはみ出したランド25a〜25dの一部と、グランドパターンの一部が露出している。ここで、ランド25a〜25dの一部は、二端子構造のチップ素子30の一方の端子31aを半田接続するためのパッドとなり、グランドパターンの一部は、他方の端子31bを半田接続するためのパッドとなる。そして、チップ素子30が必要に応じて図示のように実装されて、パッチアンテナ2のインピーダンス調整素子又は周波数調整素子として機能する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によるパッチアンテナ2は、基板10の底面10bの四隅にコーナー電極15aか〜15dが設けられているので、必要に応じてインピーダンスや周波数を調整するためのチップ素子30を接続することができ、アンテナ特性を容易に調整することができる。
【0035】
上記実施形態によるパッチアンテナ1及び2は、一個分のサイズに予め形成された基板の上下面に電極を形成することにより形成してもよく、複数個分(例えば4個分)のサイズを有する大きな基板を用意し、この基板の上下面に電極を形成した後、一個分のサイズにダイシングすることにより形成してもよい。上記実施形態によるパッチアンテナ1及び2は基板の側面に電極を持たないことから、分割後に側面のメタライズを実施する必要がない。したがって、一枚の大きな基板からアンテナチップを多数個取りする工程を容易に行うことができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上記実施形態においては、放射電極が矩形パターンである場合を例に挙げたが、放射電極の形状は矩形パターンに限定されず、その他の多角形や円形であってもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、給電電極13が基板10のエッジの幅方向の中央部に設けられているが、中心部からずれた位置に給電電極13を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,2 パッチアンテナ
10 基板
10a 基体の上面
10b 基体の底面
10c〜10f 基体の側面
11 パッチ電極
12 グランド電極
13 給電電極
14 絶縁ギャップ領域
15a〜15d コーナー電極
20 プリント基板
20A アンテナ実装領域
20B〜20E 調整素子実装領域
21 給電ライン
22,22a〜22h グランドパッド
23 給電パッド
24 レジスト層
25a〜25d ランド
30 チップ素子
31a,31b チップ素子の端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる基板と、
前記基板の上面に形成されたパッチ電極と、
前記基板の底面に形成されたグランド電極と、
前記基板の前記底面の一部に形成され、前記グランド電極から絶縁分離された給電電極とを備え、
前記基板のすべての側面は電極パターンのない絶縁面であり、
前記給電電極は前記パッチ電極と容量結合していることを特徴とするパッチアンテナ。
【請求項2】
前記給電電極は矩形パターンであり、
前記給電電極の一辺は、前記基板のエッジに接して当該エッジの幅方向の中央部に設けられており、
前記給電電極の他の三辺は、所定幅の絶縁ギャップ領域を介して前記グランド電極と対向していることを特徴とする請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項3】
前記基板の前記底面の四隅に形成され、前記グランド電極から絶縁分離されたコーナー電極をさらに備え、
前記コーナー電極にチップ素子が接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパッチアンテナ。
【請求項4】
前記チップ素子は2つの端子を備え、一方の端子は前記コーナー電極に接続されており、他方の端子はグランドに接続されていることを特徴とする請求項3に記載のパッチアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78027(P2013−78027A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217414(P2011−217414)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】