説明

パッド印刷における転写方法、パッド印刷機における転写装置及びパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材

【解決手段】表面2の外周に側面3を有する被印刷物に対しパッド印刷を施す際に、インキが付着したパッド5を被印刷物の表面2に押し付けた後、変形したパッド5のうち被印刷物の側面3に面する垂れ部5aを押圧部7により被印刷物の側面3に対し押し付けることにより、パッド5のインキを被印刷物の表面2ばかりでなく側面3にも転写する。
【効果】パッド5を被印刷物の表面2に押し付けた際に変形したパッド5の垂れ部5aを押圧部7により被印刷物の側面3に押し付けて、パッド5のインキを被印刷物の表面2に転写することができるばかりでなく被印刷物の側面3にも容易に転写することができる。また、パッド5内の貫通孔12によりパッド5が変形し易くなってこの垂れ部5aを容易に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドのインキを被印刷物の表面ばかりでなく側面にも転写することができるパッド印刷における転写方法及びパッド印刷機における転写装置、並びに、特にこの転写方法及び転写装置への利用に適しているパッド部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、パッド印刷では、図2(b)の待機状態からパッド5が被印刷物1へ向けて下降する途中で、図3(b)に示すようにパッド5の印刷面11に対し凹版によりインキが付着された後に、図4(c)に示すようにパッド5の印刷面11が被印刷物1の表面2の全体に押し付けられるとともに、パッド5が変形してその垂れ部5aの印刷面11が被印刷物1の側面3に面する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図6(b)に示すように、パッド5のインキは、被印刷物1の表面2の全体に転写されるが、被印刷物1の側面3に対して表面2と側面3との間の隅部でのみ転写される。
【0004】
この発明は、パッドのインキを被印刷物の表面ばかりでなく特定の側面にも容易に転写することができるパッド印刷における転写方法及びパッド印刷機における転写装置を提供することを目的としている。また、特にこのような転写方法及び転写装置への利用に適したパッド部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1、図2(a)、図3(a)、図4(a)(b)、図5及び図6(a))の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるパッド印刷の転写方法においては、表面2の外周に側面3を有する被印刷物1に対しパッド印刷を施す際に、インキが付着したパッド5を被印刷物1の表面2に押し付けた後、変形したパッド5のうち被印刷物1の側面3に面する垂れ部5aを押圧部7により被印刷物1の側面3に対し押し付けることにより、パッド5のインキを被印刷物1の表面2ばかりでなく側面3にも転写する。例えば、この押圧部7は、パッド5を被印刷物1の表面2に押し付けて停止させた状態で、そのパッド5の垂れ部5aを被印刷物1の側面3に押し付けて停止する。
【0006】
請求項2の発明において、表面2の外周に側面3を有する被印刷物1に対しパッド印刷を施すパッド印刷機の転写装置は、下記のパッド駆動手段6と押圧部駆動手段8とを備えている。このパッド駆動手段6では、被印刷物1の表面2に対しパッド5を離間させた待機位置Pと、インキが付着したパッド5を被印刷物1の表面2に対し押し付けた印刷位置Qとを取るように、パッド5を昇降させる。この押圧部駆動手段8では、被印刷物1の側面3に対し押圧部7を離間させた待機位置Pと、このパッド5の印刷位置Qで変形したパッド5のうち被印刷物1の側面3に面する垂れ部5aを押圧部7により被印刷物1の側面3に対し押し付けた押圧位置Rとを取るように、押圧部7を横行させる。このパッド印刷機の転写装置においては、表面2の外周に側面3を有する被印刷物1に対しパッド印刷を施す際に、被印刷物1の表面2に対しパッド5が離間するとともに被印刷物1の側面3に対し押圧部7が離間する待機状態Pから、パッド5を被印刷物1の表面2に押し付けた後、変形したパッド5のうち被印刷物1の側面3に面する垂れ部5aを押圧部7により被印刷物1の側面3に対し押し付け、その後に前記待機状態Pに戻る工程を経て、パッド5のインキを被印刷物1の表面2ばかりでなく側面3にも転写する。
【0007】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記パッド5内には空間部12を設けている。例えば、この空間部は、パッド5の押し付け方向Zに対し交差する方向Xでパッド5の両側面10に開放された貫通孔12である。
【0008】
請求項4の発明にかかるパッド印刷機の転写装置のパッド部材において、被印刷物1に押し付けられてインキを被印刷物1に転写するパッド5内には、パッド5の押し付け方向Zに対し交差する方向Xでパッド5の両側面10に開放された貫通孔12を設けている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、パッド5を被印刷物1の表面2に押し付けてパッド5のインキを被印刷物1の表面2に転写することができるばかりでなく、変形したパッド5の垂れ部5aを押圧部7により被印刷物1の側面3に押し付けてパッド5のインキを被印刷物1の側面3にも容易に転写することができる。また、本発明は、パッド5内に設けた空間部例えば貫通孔12によりパッド5が変形し易くなり、パッド5の印刷状態Qで被印刷物1の側面3に面する垂れ部5aを容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1で概略的に示すように、表面2の外周に側面3を有する被印刷物1を位置決めする支持台4の上方には柱状のシリコンゴムにより成形されたパッド5を上下方向Z(パッド5の押し付け方向)へ昇降させるパッド駆動手段6が配設され、その支持台4の左右方向Y(上下方向Zに対し直交する横方向)の両側には板状の押圧部7を左右方向Yへ横行させる押圧部駆動手段8が配設されている。このパッド駆動手段6においては、昇降板9にパッド5が取着され、その昇降板9が図示しない駆動源例えば電動モータによる昇降機構により上下方向Zへ昇降されるようになっている。この柱状パッド5は上下方向Z及び左右方向Yに対し直交する前後方向Xの両端面10(側面)とその両端面10間で前後方向Xへ延びる曲面状の印刷面11と有し、この両端面10間に空間部としての貫通孔12が貫設されて開放されている。この押圧部駆動手段8においては、押圧部7が図示しない駆動源例えばエアシリンダにより左右方向Yへ横行されるようになっている。なお、図示しないが、支持台4の上方で凹版がパッド5の昇降軌道に対し左右方向Yへ進退するように配設され、この凹版にインキが載せられるようになっている。
【0011】
図2(a)に示す状態では、パッド5が被印刷物1の表面2に対し離間した待機位置P(待機状態)にあり、両押圧部7が被印刷物1の側面3に対し離間した待機位置P(待機状態)にある。
【0012】
図3(a)に示す状態では、パッド5が待機位置Pから下降する途中で、前記凹版によりパッド5の印刷面11にインキが付着される。
図4(a)(b)に示す状態では、パッド5がさらに下降して印刷位置Q(印刷状態)で停止し、パッド5の印刷面11が被印刷物1の表面2の全体に押し付けられるとともに、パッド5が変形してその垂れ部5aの印刷面11が被印刷物1の側面3に面する。
【0013】
図5に示す状態では、両押圧部7が横行して押圧位置R(押圧状態)で停止し、パッド5の垂れ部5aの印刷面11が被印刷物1の各側面3のうち左右方向Yの両側面3に押し付けられる。
【0014】
印刷終了後に、パッド5が印刷位置Q(印刷状態)から待機位置P(待機状態)に戻るとともに、両押圧部7が押圧位置R(押圧状態)から待機位置P(待機状態)に戻る。
従って、図6(a)に示すように、パッド5のインキは、被印刷物1の表面2の全体に転写されるばかりでなく、被印刷物1における左右方向Yの両側面3の全体にも転写される。被印刷物1における前後方向Xの両側面3に対しては従来と同様に表面2と両側面3との間の隅部でのみパッド5のインキが転写される。なお、パッド5の垂れ部5aの印刷面11を被印刷物1の各側面3のうち前後方向Xの両側面3に対し押圧部により押し付ければ、被印刷物1における前後方向Xの両側面3の全体にも転写される。
【0015】
本実施形態では、パッド5の印刷面11を被印刷物1の表面2に押し付けた際に変形したパッド5の垂れ部5aの印刷面11を押圧部7により被印刷物1の側面3に押し付けて、パッド5のインキを被印刷物1の表面2に転写することができるばかりでなく被印刷物1の側面3にも容易に転写することができる。また、パッド5内の貫通孔12によりパッド5が変形し易くなってこの垂れ部5aを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態にかかるパッド印刷機の転写装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】(a)は本実施形態においてパッド及び押圧部の待機状態を概略的に示す作用説明図であり、(b)は従来においてパッドの待機状態を概略的に示す作用説明図である。
【図3】(a)は本実施形態においてパッドのインキ付着状態及び押圧部の待機状態を概略的に示す作用説明図であり、(b)は従来においてパッドのインキ付着状態を概略的に示す作用説明図である。
【図4】(a)(b)は本実施形態においてパッドの印刷状態及び押圧部の待機状態を概略的に示す作用説明図であり、(c)は従来においてパッドの印刷状態を概略的に示す作用説明図である。
【図5】本実施形態においてパッドの印刷状態及び押圧部の押圧状態を概略的に示す作用説明図である。
【図6】(a)は本実施形態において印刷後の被印刷物を概略的に示す斜視図であり、(b)は従来において印刷後の被印刷物を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1…被印刷物、2…被印刷物の表面、3…被印刷物の側面、5…パッド、5a…パッドの垂れ部、6…パッド駆動手段、7…押圧部、8…押圧部駆動手段、10…パッドの側面である端面、12…パッドの空間部としての貫通孔、Q…パッドの印刷位置(印刷状態)、R…押圧部の押圧位置(押圧状態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の外周に側面を有する被印刷物に対しパッド印刷を施す際に、インキが付着したパッドを被印刷物の表面に押し付けた後、変形したパッドのうち被印刷物の側面に面する垂れ部を押圧部により被印刷物の側面に対し押し付けることにより、パッドのインキを被印刷物の表面ばかりでなく側面にも転写することを特徴とするパッド印刷における転写方法。
【請求項2】
表面の外周に側面を有する被印刷物に対しパッド印刷を施すパッド印刷機において、
被印刷物の表面に対しパッドを離間させた待機位置と、インキが付着したパッドを被印刷物の表面に対し押し付けた印刷位置とを取るように、パッドを昇降させるパッド駆動手段と、
被印刷物の側面に対し押圧部を離間させた待機位置と、このパッドの印刷位置で変形したパッドのうち被印刷物の側面に面する垂れ部を押圧部により被印刷物の側面に対し押し付けた押圧位置とを取るように、押圧部を横行させる押圧部駆動手段と
を備えたことを特徴とするパッド印刷機における転写装置。
【請求項3】
前記パッド内には空間部を設けたことを特徴とする請求項2に記載のパッド印刷機における転写装置。
【請求項4】
パッド印刷機の転写装置において被印刷物に押し付けられてインキを被印刷物に転写するパッド内には、パッドの押し付け方向に対し交差する方向でパッドの両側面に開放された貫通孔を設けたことを特徴とするパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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