説明

パッファ形ガス遮断器

【課題】絶縁カバーをパッファシリンダと絶縁ノズルの間に両持ち梁で支持することで組立て作業性を向上させる。
【解決手段】消弧性ガスで充填されたタンク内に、固定側アーク接触子と可動側アーク接触子8と、可動側アーク接触子8を先端に結合するパッファシリンダ6と固定ピストンで形成されたパッファ室と、可動側アーク接触子8を包囲してパッファシリンダ6の先端に取付けられた絶縁カバー10と、絶縁カバー10を包囲してパッファシリンダ6の先端に取付けられた絶縁ノズル9とでパッファ形ガス遮断器を構成し、絶縁カバー10はガス流路10cを有し、パッファシリンダ6の先端と絶縁ノズル9の間に両持ち梁で支持する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消弧性ガスとしてSF6ガスが用いられている電力用のガス遮断器、特に、その消弧部分の絶縁ノズルと絶縁カバーの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
パッファ形ガス遮断器は、一般的に絶縁ノズルと絶縁カバーを備えている。絶縁カバーは筒状をなし、絶縁ノズルの内径側でアーク接触子間に発生するアークに消弧性ガスを効果的に吹き付けることを目的として設けられている。
【0003】
特許文献1には、図6に示すとおり、絶縁ノズルの取付け固定部と、絶縁カバーの根元部から放射状に伸びた足部とを挟み込んでパッファシリンダに圧縮固定することで絶縁ノズル内の気密性を高め、遮断性能の向上を図ることを目的とするパッファ形ガス遮断器が開示されている。
【0004】
しかし、この構成では、ボルト112をパッファシリンダ106に固定し、カバー110の凹部110cとボルト112を一致させることにより位置決めをしなければならない。このため、位置決め公差を考慮して製造しなければならないので作業性が悪いという問題があった。
【0005】
また、絶縁ノズル109とパッファシリンダ106の接合部の気密を確保しつつ、カバー110の足部110aを絶縁ノズル109とパッファシリンダ106の間に密着させてしっかり固定しなければならず作業に慎重を要するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−111151公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑み、取付け作業が容易な絶縁ノズル及び絶縁カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるパッファ形ガス遮断器は、消弧性ガスで充填されたタンク内に、相対的に開離可能な一対の固定側アーク接触子と可動側アーク接触子からなる接触子と、前記可動側アーク接触子を先端に結合する可動パッファシリンダと固定ピストンで形成されたパッファ室と、前記可動側アーク接触子を包囲して前記パッファシリンダの先端に取付けられた絶縁カバーと、前記絶縁カバーを包囲して前記パッファシリンダの先端に取付けられた前記パッファ室からの消弧性ガスを前記接触子に導くための流路を形成する絶縁ノズルとが設けられ、前記接触子の開離動作に関連して前記パッファ室内の消弧性ガスを圧縮して前記接触子間に発生するアークに吹き付けるようにしたうえで、前記絶縁カバーはガス流路を有し、軸方向の両端を前記パッファシリンダの先端と前記絶縁ノズルの間に支持されることを特徴としている。
【0009】
好ましくは、前記カバーはその軸方向の一端がパッファシリンダに遊嵌され、他端が絶縁ノズルに遊嵌され、パッファシリンダと絶縁ノズルの間で回動自在に支持されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる絶縁カバーを絶縁ノズルとパッファシリンダの間に両持ち梁で支持する構成によれば、引例1に示すように絶縁ノズルとパッファシリンダの接合部に気密を確保しつつ絶縁カバーの端部を挟んで固定する必要がなくなる。このため、絶縁カバーの取付けが容易になり組立作業性が向上する。また、絶縁カバーを絶縁ノズルとパッファシリンダの間で回動自在となるように遊びを設けて支持する構成とすることで、位置決め公差、組立公差等を考慮する必要が低減し組立作業性が向上する。
【0011】
さらに、絶縁カバーを回動自在に支持する構成とすることで消弧性ガスをあらゆる角度からアークに対して吹き付けることができるため、消弧性能を向上することができる。また、遮断動作時に絶縁カバーが回転することで、アークによる消耗が1ヶ所に集中しなくなるため、部品寿命の延長も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の絶縁ノズルと絶縁カバーの構成を示す断面部である。
【図2】本発明の絶縁ノズルと絶縁カバーを用いて構成したパッファ形ガス遮断器の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例にかかる絶縁カバーの正面図及び側面断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例にかかる絶縁カバーの正面図及び側面断面図である。
【図5】本発明の絶縁ノズルと絶縁カバーの組立断面図である。
【図6】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるパッファ形ガス遮断器の絶縁ノズル及び絶縁カバーの実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図2において、本発明の絶縁ノズルと絶縁カバーを用いて構成したパッファ形遮断器内部の概要を示す。絶縁ノズルと絶縁カバー以外の構成は従来のパッファ形ガス遮断器の構成と同様である。
【0015】
容器1内にはSF6ガス等の絶縁性ガスが封入され、固定側通電導体2及び可動側通電導体3が引き込まれる。固定側通電導体2は、固定側遮断部11を構成する固定側アーク接触子7及び固定側主接触子4に電気的に接続されている。可動側通電導体3は、可動側遮断部12を構成するパッファシリンダ6及び可動側主接触子5に電気的に接続されている。パッファシリンダ6の先端部には絶縁カバー10及び絶縁ノズル9が設けられる。
【0016】
図1は、図2のパッファシリンダ6の先端部の拡大図である。パッファシリンダ6の先端部中央には可動側アーク接触子8が設けられる。可動側アーク接触子8の外周にはそれを取巻くように絶縁カバー10、絶縁ノズル9、及び可動側主接触子5がそれぞれ同心円状に配される。また、絶縁カバー10は、その軸方向両端部を絶縁ノズル9とパッファシリンダ6の間に両持ち梁で支持される。
【0017】
図3(A)は絶縁カバー10の正面図であり、図3(B)は絶縁カバー10の側面断面図である。図3(A)(B)に示すとおり、絶縁カバー10は円筒状に構成される。図3(B)に示すとおり、絶縁カバー10は、環状凸部10aと小径部10bを有する。環状凸部10aは、絶縁ノズル9に設けられた環状の絶縁カバー嵌合部9aと嵌合するためのものである。小径部10bは、パッファシリンダ6の絶縁カバー支持部6aと嵌合するためのものである。
【0018】
図5は絶縁カバー10をパッファシリンダ6と絶縁ノズル9の間に両持ち梁で支持する手順の一例を示している。まず、パッファシリンダ6の先端中央部及び外周部に可動側アーク接触子8及び可動側主接触子5を固着する。パッファシリンダ6と可動側主接触子5とは一体に成形したものであってもよい。
【0019】
次に、図5(A)(B)に示すように、絶縁カバーの環状凸部10aを絶縁ノズル9の絶縁カバー嵌合部9aに嵌め合わせる。図5(C)に示す可動側主接触子5の内周面にはねじ切りが施されており(不図示)、絶縁ノズル9の外周部に設けられたねじ部(不図示)が螺合される。このとき、絶縁カバーの小径部10bが絶縁カバー支持部6aに嵌合することで、絶縁カバー10が絶縁ノズル9とパッファシリンダ6の間に支持される。
【0020】
以上のとおり、絶縁カバーの軸方向の両端を絶縁ノズルとパッファシリンダの間に両持ち梁で支持することによって、引例1に示すように絶縁ノズルとパッファシリンダの接合部に気密を確保しつつ絶縁カバーの端部を挟んで固定する必要がなくなる。このため、絶縁カバーの取付けが容易になり組立作業性が向上する。
【0021】
また、環状凸部10aと絶縁カバー嵌合部9aを遊嵌させ、小径部10bと絶縁カバー支持部6aを遊嵌させる構成とすることで、製造時に絶縁カバー10と絶縁ノズル9、及び絶縁カバー10とパッファシリンダ6を容易に嵌め合う構成とすることもできる。こうすることで、絶縁カバー10を絶縁ノズル9とパッファシリンダ6の間に取付ける際に厳密な位置決めをする必要がなくなり、位置決め公差、組立公差等を考慮する必要が低減するため組立作業性が向上する。
【実施例2】
【0022】
以下、本発明の第2の実施形態を図4に基づいて説明する。実施例2の絶縁カバー10に設けられたガス流路10cはその軸が絶縁カバー10の軸心から同方向に一定距離ずれるように設けられる。絶縁カバー10が絶縁ノズル9とパッファシリンダ6の間で回動自在となるよう、絶縁カバーの環状凸部10aを絶縁ノズルの絶縁カバー嵌合部9aに遊嵌させ、絶縁カバーの小径部10bをパッファシリンダの絶縁カバー支持部6aと遊嵌させる。
【0023】
この構成によって絶縁カバー10に消弧性ガスが吹きつけられたときに旋回流が生じ、その反力で絶縁カバー10が回転する。これにより、消弧性ガスがあらゆる角度からアークに対して吹き付けられるため消弧性能を向上することができる。また、遮断動作時に絶縁カバー10が回転することで、アークによる消耗が1ヶ所に集中しなくなるため、部品寿命の延長も可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 容器
2 固定側通電導体
3 可動側通電導体
4 固定側主接触子
5 可動側主接触子
6 パッファシリンダ
6a 絶縁カバー支持部
7 固定側アーク接触子
8 可動側アーク接触子
9 絶縁ノズル
9a 絶縁カバー嵌合部
10 絶縁カバー
10a 環状凸部
10b 小径部
10c ガス流路
11 固定側遮断部
12 可動側遮断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスで充填されたタンク内に、相対的に開離可能な一対の固定側アーク接触子と可動側アーク接触子からなる接触子と、前記可動側アーク接触子を先端に結合するパッファシリンダと固定ピストンで形成されたパッファ室と、前記可動側アーク接触子を包囲して前記パッファシリンダの先端に取付けられた絶縁カバーと、前記絶縁カバーを包囲して前記パッファシリンダの先端に取付けられた前記パッファ室からの消弧性ガスを前記接触子に導くための流路を形成する絶縁ノズルとが設けられ、前記接触子の開離動作に関連して前記パッファ室内の消弧性ガスを圧縮して前記接触子間に発生するアークに吹き付けるようにしたパッファ形ガス遮断器であって、
前記絶縁カバーはガス流路を有し、軸方向の両端を前記パッファシリンダの先端と前記絶縁ノズルの間に支持されることを特徴とするパッファ形ガス遮断器。
【請求項2】
前記絶縁カバーは、軸方向の一端が前記パッファシリンダに遊嵌され、他端が前記絶縁ノズルに遊嵌され、前記パッファシリンダと前記絶縁ノズルの間で回動自在に支持されることを特徴とする請求項1に記載のパッファ形ガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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