説明

パネルスピーカ

【課題】建物の躯体に設置された状態で背面方向へ伝播する音を抑制することができるパネルスピーカを提供する。
【解決手段】パネルスピーカ1は、振動板2と、加振器3と、補助スピーカ4と、制御部とを備える。振動板2は、平板状に形成されている。加振器3は、振動板2を振動させて音を発生させる。振動板2の振動によって発生する音が取り出される方向を正面方向A1とする。補助スピーカ4は、正面方向A1とは反対の背面方向A2に設けられ、背面方向A2に音を発生させる。制御部は、振動板2の振動によって背面方向A2に発生した音を打ち消す音を補助スピーカ4から背面方向A2に発生させるように補助スピーカ4を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の振動板を振動させて音を発生させるパネルスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、平板状の振動板を振動させて音を発生させるパネルスピーカが知られている(例えば特許文献1参照)。上記パネルスピーカは、天井または壁などに設置されて用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−290363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパネルスピーカは、天井または壁に設置された状態で音を発生させた場合に、パネルスピーカの背面方向に音が出力されるため、上階の部屋または隣室に音が伝播しやすくなり、上階の部屋または隣室に騒音が発生する。
【0005】
特に、従来のパネルスピーカが天井または壁に埋め込み設置された場合、パネルスピーカから背面方向に出力された音が上階の部屋の床または隣室の壁に直接伝播されるため、上階の部屋または隣室に騒音が発生しやすくなる。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みて為され、本発明の目的は、建物の躯体に設置された状態で背面方向へ伝播する音を抑制することができるパネルスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパネルスピーカは、平板状の振動板と、前記振動板を振動させて音を発生させる加振器と、前記振動板の振動によって発生する音が取り出される方向を正面方向とし、当該正面方向とは反対の背面方向に設けられ当該背面方向に音を発生させる補助スピーカと、前記振動板の振動によって前記背面方向に発生した音を打ち消す音を前記補助スピーカから当該背面方向に発生させるように前記補助スピーカを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このパネルスピーカにおいて、開口部が形成され当該開口部を覆うように前記振動板が設けられ前記加振器が収納される第1のケースと、前記補助スピーカが収納される第2のケースとを備え、前記第2のケースは、前記第1のケースに対して前記振動板とは反対側に設けられていることが好ましい。
【0009】
このパネルスピーカにおいて、前記第1のケースと前記第2のケースとの間に設けられた枠体を備えることが好ましい。
【0010】
このパネルスピーカにおいて、前記枠体と前記第1のケースと前記第2のケースとで囲まれた空間には吸音材が充填されることが好ましい。
【0011】
このパネルスピーカにおいて、前記枠体は、前記第1のケースおよび前記第2のケースの各々と接着されることが好ましい。
【0012】
このパネルスピーカにおいて、前記枠体と前記第1のケースとの間および前記枠体と前記第2のケースとの間の少なくとも一方に設けられた弾性材を備えることが好ましい。
【0013】
このパネルスピーカにおいて、前記第1のケースと前記第2のケースとは接合されることが好ましい。
【0014】
このパネルスピーカにおいて、前記第2のケースの内部空間の断面形状は、一辺150mm以上380mm以下の方形または直径150mm以上380mm以下の円であることが好ましい。
【0015】
このパネルスピーカにおいて、前記第2のケースは、当該第2のケースの内部空間を複数の小空間に仕切る仕切部材を有し、前記複数の小空間の各々には、前記補助スピーカが1対1で収納されていることが好ましい。
【0016】
このパネルスピーカにおいて、前記第2のケースの背面側から前記正面方向を見たときの前記複数の小空間の各々の断面形状は、一辺150mm以上380mm以下の方形または直径150mm以上380mm以下の円であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建物の躯体に設置された状態で、音が取り出される正面方向とは反対側の背面方向において、振動板の振動によって発生した音を打ち消す音を補助スピーカに発生させることによって、背面方向へ伝播する音を抑制することができる。これにより、本発明では、天井に設置された場合に上階の部屋への騒音を低減させることができ、壁に設置された場合に隣室への騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係るパネルスピーカであって、(a)は背面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】同上に係るパネルスピーカの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】同上に係るパネルスピーカの設置図である。
【図4】実施形態2に係るパネルスピーカの断面図である。
【図5】実施形態3に係るパネルスピーカの断面図である。
【図6】実施形態4に係るパネルスピーカにおけるスピーカ本体部の配置図である。
【図7】同上に係るパネルスピーカにおける遮音部の配置図である。
【図8】同上に係るパネルスピーカの図7のB−B断面図である。
【図9】同上に係るパネルスピーカの電気的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施形態1〜4では、平板状の振動板を振動させて音を発生させるパネルスピーカについて説明する。
【0020】
(実施形態1)
実施形態1に係るパネルスピーカ1は、図1に示すように、振動板2と、加振器(エキサイタ)3と、補助スピーカ4と、第1のケース5と、第2のケース6とを備えている。また、パネルスピーカ1は、図2に示すように、制御部7を備えている。振動板2と加振器3と第1のケース5とでスピーカ本体部を構成し、補助スピーカ4と第2のケース6とで遮音部を構成する。振動板2の振動によって発生する音が取り出される方向を正面方向A1し、正面方向A1とは反対の方向を背面方向A2とする。
【0021】
振動板2は、例えば木材、金属または樹脂などで方形の平板状に形成された平面パネルである。振動板2の形状は、例えば正方形、長方形またはひし形などである。
【0022】
加振器3は、振動板2の背面21の中央領域上に設置され、後述の第1の電気信号S1(図2参照)に応じて、振動板2を振動させて音を発生させる。
【0023】
補助スピーカ4は、例えば薄型スピーカ(圧電スピーカなど)、コーン型スピーカまたは加振器などの騒音制御用スピーカであり、加振器3に対して背面方向A2に設けられている。補助スピーカ4は、後述の第2の電気信号S2(図2参照)を音に変換し、変換した音を背面方向A2に出力する。
【0024】
第1のケース5は、例えば木材、金属または樹脂などで形成され、方形の平板状に形成された底面部51と、底面部51の周囲に沿って設けられた矩形枠状の側面部52とを備えている。底面部51の形状は、例えば正方形、長方形またはひし形などである。底面部51と側面部52は、個別に形成された後に接合されてもよいし、樹脂の場合、一体成形によって形成されてもよい。第1のケース5には、内部空間53が形成され、内部空間53の開口を覆うように振動板2が設けられている。内部空間53には、加振器3が収納されている。
【0025】
第2のケース6は、例えば木材、金属または樹脂などで形成され、方形の平板状に形成された前面部61と、前面部61と同じ形状に形成された後面部62と、前面部61および後面部62の周囲に沿って設けられた側面部63とを備えている。前面部61および後面部62の各形状は、例えば正方形、長方形またはひし形などである。前面部61と側面部63または後面部62と側面部63は、個別に形成された後に接合されてもよいし、樹脂の場合、一体成形によって形成されてもよい。第2のケース6には、内部空間64が形成され、内部空間64には、内部空間64を前側空間65と後側空間66とに区切る内部隔壁67が設けられている。補助スピーカ4は、内部隔壁67に取り付けられて内部空間64に収納されている。第2のケース6は、第1のケース5に対して振動板2とは反対側(図1(b)の上側)に設けられている。
【0026】
第1のケース5と第2のケース6とは、例えば接着剤などによって第1のケース5の底面部51と第2のケース6の前面部61とが接着されることによって、直接接合されている。
【0027】
図2に示す制御部7は、例えばマイクロプロセッサ(MPU:Micro Processing Unit)を主構成要素とし、加振器3を制御する機能と補助スピーカ4を制御する機能とを有している。なお、制御部7の設置場所は、パネルスピーカ1のいずれの場所でもよい。
【0028】
制御部7は、加振器3を制御する機能として、振動板2の振動によって所望の音を発生させるための第1の電気信号S1を加振器3に出力する。
【0029】
制御部7は、補助スピーカ4を制御する機能として、補助スピーカ4が所望の音を出力するための第2の電気信号S2を補助スピーカ4に出力する。具体的には、制御部7は、振動板2の振動によって背面方向A2に発生した音を打ち消す音を補助スピーカ4から背面方向A2に発生させるように補助スピーカ4を制御する。制御部7は、加振器3に出力される第1の電気信号S1を用いて、振動板2の振動によって生成された音を打ち消す音を補助スピーカ4が内部空間64の後側空間66へ出力するように第2の電気信号S2を生成する。例えば、制御部7は、振動板2の振動による音と逆位相の音を発生させるための第2の電気信号S2を生成する。
【0030】
上記より、パネルスピーカ1は、図1に示すように、振動板2の振動で発生して背面方向A2へ漏れていた音を、内部空間64の後側空間66を通過する時点で、補助スピーカ4から出力された音で打ち消すことができる。つまり、パネルスピーカ1は、スピーカ本体部(振動板2、加振器3、第1のケース5)の背面側(図1(b)の上側)に、アクティブ遮音機能を有する遮音部(補助スピーカ4、第2のケース6)を備えていることになる。
【0031】
ところで、パネルスピーカ1(第2のケース6)の背面側(図1(b)の上側)から正面方向A1を見たときの第2のケース6の内部空間64の断面形状(背面方向A2と直交する面の形状)は限定されないが、以下の理由により本実施形態では一辺150mm以上380mm以下の方形としている。
【0032】
天井または壁などの躯体を透過して隣の空間に伝播して騒音となる音の周波数は300Hz以下である。逆に、300Hzより高い周波数の音は躯体を透過しにくい。また、音を制御する空間の大きさは、制御する音の1/3波長以下であることが望ましい。したがって、内部空間64の断面形状の大きさは、300Hz以下の音の1/3波長に相当する380mm以下であることが望ましい。
【0033】
一方、内部空間64の断面形状の下限については、制御する音に起因するのではなく、補助スピーカ4の大きさに起因する。補助スピーカ4は、小さすぎると低音を発生させることができず、70Hz程度の低音を発生させる場合、補助スピーカ4の口径を10cmにする必要がある。したがって、内部空間64の大きさは、一辺150mm以上にする必要がある。なお、50〜60Hzの音は、普通の大きさであれば人間の聴覚の特性上、暗騒音にまぎれて人間にはほとんど聞こえない。
【0034】
次に、本実施形態に係るパネルスピーカ1の使用例および消音動作について図1,3を用いて説明する。一例として、図3に示すようにパネルスピーカ1が部屋91の天井92に設置される場合について説明する。パネルスピーカ1は、天井92の取付開口部に嵌めこまれた状態で、ビスなどで天井92に固定されている。
【0035】
まず、制御部7が第1の電気信号S1を加振器3に出力して加振器3が動作すると、振動板2が振動して音が発生する。振動板2の振動による音は、部屋91の空間に伝播するとともに、第1のケース5から第2のケース6の内部空間64に伝播する。
【0036】
その後、制御部7は、振動板2の振動による音を補助スピーカ4から出力された音で打ち消すように、第2の電気信号S2を生成して補助スピーカ4に出力する。補助スピーカ4は、第2の電気信号S2を音に変換し、変換した音を内部空間64の後側空間66に出力する。
【0037】
これにより、後側空間66において、補助スピーカ4から出力された音と振動板2の振動による音とが打ち消し合うので、振動板2の振動による音が上階の部屋93の床94に伝播して上階の部屋93に漏れることを抑制できる。つまり、パネルスピーカ1から背面側に発生する音が遮断されて、空気伝播による音漏れを防止でき、上階の部屋93に音が漏れないようにすることができる。
【0038】
以上、本実施形態のパネルスピーカ1によれば、音が取り出される方向である正面方向A1とは反対側の背面方向A2において、振動板2の振動によって発生した音を打ち消す音を補助スピーカ4に発生させることによって、背面方向A2へ伝播する音を抑制することができる。これにより、本実施形態のパネルスピーカ1では、パネルスピーカ1が天井92に設置された場合に上階の部屋93への騒音を低減させることができる。
【0039】
また、本実施形態のパネルスピーカ1は、振動板2が設けられて加振器3が収納される第1のケース5に対して、補助スピーカ4が収納される第2のケース6が振動板2とは反対側(図1(b)の上側)に設けられている。これにより、本実施形態のパネルスピーカ1では、正面方向A1以外の方向に音が漏れることを抑制することができる。
【0040】
さらに、本実施形態のパネルスピーカ1によれば、第1のケース5と第2のケース6とが接合されることによって、第1のケース5と第2のケース6との間から漏れる音を低減させることができる。
【0041】
また、本実施形態のパネルスピーカ1は、パネルスピーカ1の背面側から正面方向A1に見たときの第2のケース6の内部空間64の断面形状が一辺150mm以上380mm以下の方形である。これにより、本実施形態のパネルスピーカ1は、建物の躯体を透過しやすい周波数帯域の音を低減させることができ、背面方向A2の遮音性能を高めることができる。
【0042】
なお、パネルスピーカ1の背面側から正面方向A1を見たときの第2のケース6の内部空間64の断面形状は、直径150mm以上380mm以下の円であってもよい。上記のような場合であっても、建物の躯体を透過しやすい周波数帯域の音を低減させることができ、背面方向A2の遮音性能を高めることができる。
【0043】
(実施形態2)
実施形態2に係るパネルスピーカ1は、図4に示すような枠体8を備えている点で、実施形態1に係るパネルスピーカ1(図1参照)と相違する。なお、実施形態1のパネルスピーカ1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
枠体8は、例えば木材、金属または樹脂などで枠状に形成された部材であり、第1のケース5と第2のケース6との間に設けられている。枠体8は、第1のケース5の底面部51および第2のケース6の前面部61の各々と接着剤によって直接接着されている。
【0045】
本実施形態のパネルスピーカ1では、枠体8と第1のケース5の底面部51と第2のケース6の前面部61とで封止された空間81が形成される。第1のケース5側から伝播した音が空間81内を空気伝播するので、音エネルギーを低減させることができる。これにより、第1のケース5側から第2のケース6側への音の伝播を抑制することができる。
【0046】
本実施形態では、空間81には吸音材82が充填されている。吸音材82は、例えばグラスウールまたはフェルトなどであり、空間81に圧縮されて充填されている。これにより、吸音材82は、空間81が空洞である場合よりも音の伝播をさらに抑制することができる。つまり、第1のケース5側から第2のケース6側への音の伝播をさらに抑制し、パネルスピーカ1の遮音性能を向上させることができる。
【0047】
以上、本実施形態のパネルスピーカ1によれば、振動板2の振動によって発生した音が空間81(枠体8の内部)を通過する際に、上記音のエネルギーが減衰して上記音が小さくなるので、背面方向A2に伝播する音を小さくすることができる。
【0048】
特に、本実施形態のパネルスピーカ1では、空間81に吸音材82が充填されているので、振動板2の振動によって発生した音が空間81を通過する際に、上記音のエネルギーを吸音材82で減衰することができる。
【0049】
また、本実施形態のパネルスピーカ1によれば、枠体8が第1のケース5および第2のケース6の各々と接着されることによって、枠体8と第1のケース5との間および枠体8と第2のケース6との間から漏れる音を低減させることができる。
【0050】
(実施形態3)
実施形態3に係るパネルスピーカ1は、図5に示すように空気漏れ防止手段として第1の弾性材83および第2の弾性材84を備えている点で、実施形態2に係るパネルスピーカ1(図4参照)と相違する。なお、実施形態2のパネルスピーカ1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
第1の弾性材83は、例えば独立発泡スポンジなどで矩形状に形成された部材であり、枠体8と第1のケース5の底面部51との間に設けられている。
【0052】
第2の弾性材84は、例えば独立発泡スポンジなどで矩形状に形成された部材であり、枠体8と第2のケース6の前面部61との間に設けられている。
【0053】
本実施形態のパネルスピーカ1では、枠体8と第1のケース5および枠体8と第2のケース6はいずれも接着剤によって直接接合されるのではなく、枠体8と第1のケース5は第1の弾性材83を介して接合され、枠体8と第2のケース6は第2の弾性材84を介して接合されている。
【0054】
以上、本実施形態のパネルスピーカ1によれば、枠体8と第1のケース5との間に第1の弾性材83が設けられることによって、第1の弾性材83が設けられた隙間から外部に漏れる音を低減させることができる。また、枠体8と第2のケース6との間に第2の弾性材84が設けられることによって、第2の弾性材84が設けられた隙間から外部に漏れる音を低減させることができる。
【0055】
なお、パネルスピーカ1は、第1の弾性材83または第2の弾性材84のいずれか一方のみを備える構成であってもよい。
【0056】
(実施形態4)
実施形態4に係るパネルスピーカ1は、図8に示すように第1のケース5が第1の仕切部材54を備え、第2のケース6が第2の仕切部材68を備えている点で、実施形態3に係るパネルスピーカ1(図5参照)と相違する。なお、実施形態3のパネルスピーカ1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
第1の仕切部材54は、例えば木材、金属または樹脂などで形成された部材であり、図6に示すように、内部空間53を複数(図示例では2つ)の小空間531,532に仕切るために内部空間53に設けられている。内部空間53は、正面方向A1の音響特性が向上するように複数の小空間531,532に仕切られている。なお、第1の仕切部材54は、底面部51または側面部52と一体に備えてもよいし、別体に備えてもよい。
【0058】
小空間53i(i=1,2)には、加振器3iが1対1で収納されている。つまり、小空間531には加振器31が収納され、小空間532には加振器32が収納されている。
【0059】
本実施形態の加振器3i(i=1,2)は、図9に示すように、制御部7から出力された第1の電気信号S1iを音に変換し、変換した音を出力する。なお、実施形態3の加振器3(図5参照)と同様の機能については説明を省略する。
【0060】
第2の仕切部材68は、図7に示すように、例えば木材、金属または樹脂などで格子状に形成された部材であり、内部空間64を複数(図示例では10)の小空間641,642,……,6410に仕切るために内部空間64に設けられている。小空間64j(j=1,2,……,10)は、内部隔壁67によって、前側空間65jと後側空間66jとに仕切られている(図8参照)。なお、第2の仕切部材68は、前面部61、後面部62または側面部63と一体に備えてもよいし、別体に備えてもよい。
【0061】
小空間64j(j=1,2,……,10)には、補助スピーカ4jが1対1で収納されている。例えば、小空間641には補助スピーカ41が収納され、小空間642には補助スピーカ42が収納され、小空間643には補助スピーカ43が収納されている。
【0062】
本実施形態の補助スピーカ4j(j=1,2,……,10)は、図9に示すように、制御部7から出力された第2の電気信号S2jを音に変換し、変換した音を小空間64jの後側空間66j(図8参照)に出力する。なお、実施形態3の補助スピーカ4(図5参照)と同様の機能については説明を省略する。
【0063】
本実施形態の制御部7は、加振器3i(i=1,2)を制御する機能と補助スピーカ4j(j=1,2,……,10)を制御する機能とを有している。
【0064】
制御部7は、加振器3i(i=1,2)を制御する機能として、振動板2の振動によって所望の音を発生させるための第1の電気信号S1iを加振器3に出力する。
【0065】
制御部7は、補助スピーカ4jを制御する機能として、補助スピーカ4jが所望の音を出力するための第2の電気信号S2jを補助スピーカ4j(j=1,2,……,10)に出力する。具体的には、制御部7は、振動板2の振動によって背面方向A2に発生した音を打ち消す音を補助スピーカ4jから背面方向A2に発生させるように補助スピーカ4jを制御する。制御部7は、加振器3iに出力される第1の電気信号S1iを用いて、振動板2の振動によって生成された音を打ち消す音を補助スピーカ4jが内部空間64の後側空間66へ出力するように第2の電気信号S2jを生成する。例えば、制御部7は、振動板2の振動による音と逆位相の音を発生させるための第2の電気信号S2jを生成する。
【0066】
上記より、本実施形態のパネルスピーカ1は、図8に示すように、振動板2の振動で発生して背面方向A2へ漏れていた音を、小空間64j(j=1,2,……,10)の後側空間66jを通過する時点で、補助スピーカ4jから出力された音で打ち消すことができる。
【0067】
ところで、本実施形態のパネルスピーカ1(第2のケース6)の背面側(図8の上側)から正面方向A1を見たときの小空間64j(j=1,2,……,10)の断面形状(背面方向A2と直交する面の形状)は限定されないが、本実施形態では一辺150mm以上380mm以下の正方形としている。
【0068】
なお、任意の小空間64k(k=1,2,……,10)に収納されている補助スピーカ4kから出力された音は、第2の仕切部材68によって隣の小空間64j(j=1,2,……,10、ただしj=kを除く)に伝達されないようになっている。
【0069】
以上、本実施形態のパネルスピーカ1によれば、第2のケース6が大きい場合であっても、第2のケース6の内部空間64を第2の仕切部材68で仕切ることによって、建物の躯体を透過しやすい周波数帯域の音を低減させることができ、背面方向A2の遮音性能を高めることができる。
【0070】
本実施形態のパネルスピーカ1では、第1のケース5が第1の仕切部材54を備えていることによって、第1のケース5が第1の仕切部材54を備えていない場合よりも第1のケース5の剛性を高めることができる。また、本実施形態のパネルスピーカ1では、第2のケース6が第2の仕切部材68を備えていることによって、第2のケース6が第2の仕切部材68を備えていない場合よりも第2のケース6の剛性を高めることができる。その結果、パネルスピーカ1全体の剛性を高めることができ、不要な振動を抑制することができる。
【0071】
なお、本実施形態のパネルスピーカ1において、パネルスピーカ1の背面側(図8の上側)から正面方向A1を見たときの小空間64j(j=1,2,……,10)の断面形状は、直径150mm以上380mm以下の円であってもよい。
【0072】
また、本実施形態のパネルスピーカ1において、パネルスピーカ1の背面側(図8の上側)から正面方向A1を見たときの小空間64j(j=1,2,……,10)の断面形状は正方形に限定されず、例えばひし形または長方形など正方形以外の方形であってもよい。小空間64iの断面形状が長方形である場合、長辺および短辺のいずれもが150mm以上380mm以下である。
【0073】
第1のケース5の内部空間53が複数の小空間531,532に区切られている構成および第2のケース6の内部空間64が複数の小空間641,642,……,6410に区切られている構成は、実施形態1,2のパネルスピーカ1に適用してもよい。
【0074】
また、各実施形態のパネルスピーカ1は、天井92以外の躯体(例えば壁など)に設置されてもよい。このような場合であっても、パネルスピーカ1が隣室への騒音を低減させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 パネルスピーカ
2 振動板
3,3i 加振器
4,4j 補助スピーカ
5 第1のケース
53 内部空間
53i 小空間
54 第1の仕切部材
6 第2のケース
64 内部空間
64j 小空間
68 第2の仕切部材
7 制御部
8 枠体
81 空間
82 吸音材
83 第1の弾性材
84 第2の弾性材
A1 正面方向
A2 背面方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の振動板と、
前記振動板を振動させて音を発生させる加振器と、
前記振動板の振動によって発生する音が取り出される方向を正面方向とし、当該正面方向とは反対の背面方向に設けられ当該背面方向に音を発生させる補助スピーカと、
前記振動板の振動によって前記背面方向に発生した音を打ち消す音を前記補助スピーカから当該背面方向に発生させるように前記補助スピーカを制御する制御部と
を備えることを特徴とするパネルスピーカ。
【請求項2】
開口部が形成され当該開口部を覆うように前記振動板が設けられ前記加振器が収納される第1のケースと、
前記補助スピーカが収納される第2のケースとを備え、
前記第2のケースは、前記第1のケースに対して前記振動板とは反対側に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のパネルスピーカ。
【請求項3】
前記第1のケースと前記第2のケースとの間に設けられた枠体を備えることを特徴とする請求項2記載のパネルスピーカ。
【請求項4】
前記枠体と前記第1のケースと前記第2のケースとで囲まれた空間には吸音材が充填されることを特徴とする請求項3記載のパネルスピーカ。
【請求項5】
前記枠体は、前記第1のケースおよび前記第2のケースの各々と接着されることを特徴とする請求項3または4記載のパネルスピーカ。
【請求項6】
前記枠体と前記第1のケースとの間および前記枠体と前記第2のケースとの間の少なくとも一方に設けられた弾性材を備えることを特徴とする請求項3または4記載のパネルスピーカ。
【請求項7】
前記第1のケースと前記第2のケースとは接合されることを特徴とする請求項2記載のパネルスピーカ。
【請求項8】
前記第2のケースの背面側から前記正面方向を見たときの前記第2のケースの内部空間の断面形状は、一辺150mm以上380mm以下の方形または直径150mm以上380mm以下の円であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のパネルスピーカ。
【請求項9】
前記第2のケースは、当該第2のケースの内部空間を複数の小空間に仕切る仕切部材を有し、前記複数の小空間の各々には、前記補助スピーカが1対1で収納されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のパネルスピーカ。
【請求項10】
前記第2のケースの背面側から前記正面方向を見たときの前記複数の小空間の各々の断面形状は、一辺150mm以上380mm以下の方形または直径150mm以上380mm以下の円であることを特徴とする請求項9記載のパネルスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−198407(P2012−198407A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62610(P2011−62610)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】