説明

パネル型発光装置

【課題】 平面発光ランプの如き面発光を行うパネル型発光装置として、大型化、薄型化、軽量化を同時に実現でき、組立製作が容易で量産に適するものを提供する。
【解決手段】 少なくとも一方が透明ガラスからなる一対の基板1,2間に放電空間3が構成され、放電空間3内での放電によって透明ガラス板面より発光するパネル型発光装置において、少なくとも一方の透明ガラスからなる基板1が波板構造部11を有し、波板構造部11の内面側の各稜線部11aで他方の基板2内面に当接し、稜線部11a…によって複数の平行な管状空間3a…に区切られた放電空間3が基板1周辺側で連通してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイのバックライトやパネル型照明等に利用されるパネル型発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイのバックライト等に使用される平面発光ランプとして、対向する一対のガラス基板間に放電ガスを封入した高真空の放電空間が構成され、少なくとも片側の基板の放電空間に臨む内面に蛍光体層が設けられ、この放電空間に配置した正負電極間の放電により、蛍光体が励起して所要の発光を生じるように構成したものがある。しかして、近年においては、家庭用TVを始めとする映像ディスプレイ装置全般の大画面化と薄型化が同時進行しており、液晶方式のディスプレイでも大型化が進められ、これに対応してバックライト用の平面発光ランプについても発光面積が大きく且つ全厚を薄くしたものが求められている。
【0003】
ところが、内部に高真空の放電空間を有する平面発光ランプは、真空容器としての耐圧強度を確保する必要があるが、従来における大型化手段では、両ガラス基板の板厚を厚くするか、図8の如く、放電空間80内において両ガラス基板81,82間に隔壁状や柱状の支持体83…を介在させて補強するのが一般的であった。なお、図中の84は両ガラス基板81,82の周辺部間に配置して放電空間80を確保する枠状スペーサである。
【0004】
しかしながら、ガラス基板の板厚を厚くして真空耐圧を確保する方法では、平面発光ランプのサイズ増大に伴う重量増加が非常に大きくなるため、取扱い性の観点から許容される板厚に自ずと限界があり、近年希求される大型化のレベルには対応できない。
【0005】
また、前記のガラス基板間に隔壁状や柱状の支持体を介在させる方法では、放電空間の均一性を確保して且つ稼働中のガス放出を極力抑える上で、支持体材料の選択が難しく、、しかも多数の支持体に均等に真空耐圧を担わせるように、これら支持体を両基板間に精度よく位置決め配置し、仮組み状態で焼成してガラスフリット等で融着固定することになるから、その組立製作に非常に手間と時間がかかり、歩留りも悪く製作コストが高く付くことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の情況に鑑み、前記平面発光ランプの如き面発光を行うパネル型発光装置として、大型化、薄型化、軽量化を同時に実現でき、しかも組立製作が容易で量産に適するものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1は、図面の参照符号を付して示せば、少なくとも一方が透明ガラスからなる一対の基板1,2間に放電空間3が構成され、該放電空間3内での放電によって透明ガラス板面より発光するパネル型発光装置において、
少なくとも一方の透明ガラスからなる基板1が波板構造部11を有し、この波板構造部11の内面側の各稜線部11aで他方の基板2内面に当接すると共に、これら稜線部11a…によって複数の平行な管状空間3a…に区切られた前記放電空間3が基板1周辺側で連通してなることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、上記請求項1のパネル型発光装置において、一対の基板1,2の一方(1)が波板構造部11を有する透明ガラス板からなり、他方(2)が平板である構成としている。
【0009】
請求項3の発明は、上記請求項1のパネル型発光装置において、一対の基板10,10が共に波板構造部11を有する透明ガラス板からなり、両基板10,10が波板構造部の内面側の各稜線部11a,11aを互いに当接してなるものとしている。
【0010】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのパネル型発光装置において、少なくとも一方の基板の前記放電空間3に臨む内面側に蛍光体層4が形成され、放電励起による蛍光を放射する構成としている。
【0011】
請求項5の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのパネル型発光装置において、前記放電空間3内に稀ガス又は水銀蒸気が封入され、放電によって紫外線を放射する構成としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、平面発光ランプの如き面発光を行うパネル型発光装置において、対向配置して間に放電空間を構成する一対の基板の少なくとも一方が、波板構造部を有する透明ガラス板からなり、その波板構造部の内面側の各稜線部が他方の基板の内面に当接する構造であり、該波板構造部の内面側の各稜線部で両基板が相互に支持され、これら多数の支持部で真空耐圧を分担できるから、発光面積ひいては基板面積を増大させる場合でも、真空耐圧を確保するために基板の板厚を特に厚く設定する必要がなく、もって大型化、薄型化、軽量化を同時に実現できる。しかして、波板構造部を有する基板は、板ガラスの原材からの加熱ブレスにより、サイズ及び品質の両面で均質なものを安定的に量産可能である上、両側基板は突き合わせた周縁部をフリットガラスを介して封着するだけで放電空間を有する容器状に一体化できるから、パネル型発光装置を容易に且つ低コストで組立製作できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、上記のパネル型発光装置として、片面が波板状で反対面が平坦であり、その一方又は両方を発光面とするものが提供される。
【0014】
請求項3の発明によれば、上記のパネル型発光装置として、両面が波板状をなすものが提供される。
【0015】
請求項4の発明によれば、上記のパネル型発光装置として、放電励起による蛍光を放射するものが提供される。
【0016】
請求項5の発明によれば、上記のパネル型発光装置として、紫外線を放射するものが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るパネル型発光装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1〜図6は第一実施形態のパネル型発光装置D1を、図7は第二実施形態のパネル型発光装置D2をそれぞれ示す。
【0018】
第一実施形態のパネル型発光装置D1は、図1〜図4に示すように、透明ガラス製で偏平な周縁部1aを除く大部分が波板構造部11をなす矩形の基板1と、透明ガラス製で平坦な矩形の基板2とが、突き合わせた互いの周縁部1a,2aでフリットシール5を介して封着され、両基板1,2間に放電空間3を有する極偏平なパネル型セルを構成している。しかして、基板1の波板構造部11は、図3に示すように、縦断面が外面側へ凸の半円弧状をなす波形を基板長辺方向へ並べた形態であり、その内面側の各稜線部11aが他方の基板2の内面に当接している。
【0019】
両基板1,2間に構成される放電空間3は、前記稜線部11a…の基板2側への当接によって基板短辺方向に沿う複数の平行な管状空間3a…に区切られているが、図2及び図4に示すように、これら管状空間3a…が両端で基板長辺方向に沿う電極配置空間3b,3bに開放することにより、全体が連通した状態になっている。そして、各電極配置空間3bには全長にわたって電極線6が配設され、両電極線6,6のリード6a,6aが両基板1,2の狭間から外部へ導出している。
【0020】
基板1は、基板2のような板ガラス原材の加熱プレスによって波板構造部11等を有する形状に成形されたものであり、図1に示すように、内面側の電極配置空間3b,3bを設けた部分が外面側では帯状凸部1b,1bをなし、片側の帯状凸部1bの中央位置から基板側端へかけて外面側へ突出した排気管取付部1cを有している。この排気管取付部1cは、基板1の内面側では電極配置空間3bから基板側端へ至る溝形になり、両基板1,2をフリットシール5を介して封着する際に、図1の如く排気管7を挿嵌して固着するようになっている。
【0021】
なお、図1で示す排気管7は溶断封着して短くなった形であり、取付当初は長いものである。また、フリットシール5は、両基板1,2とよび排気管7のガラス素材よりも低融点のガラスフリットをビヒクルに混合したペースト材であり、ペースト形態で接着力を有し、焼成によって溶剤が蒸発して溶融ガラス化する。
【0022】
パネル型発光装置D1の製作においては、その構成部品である両基板1,2、電極線6,6、排気管7を封着・接着部に塗着したフリットシール5を介して製品形態に組み立て、これを加熱焼成してフリットシール5を溶融ガラス化することによって全体を一体化したのち、排気管7より放電空間3内の空気を所定の真空度まで吸引排気し、次いで該排気管7より放電空間3内へ所要の放電ガスを導入した上で、該排気管7をガスバーナー等で炙って溶断封着する。
【0023】
このようなパネル型発光装置D1では、両電極線6,6のリード6a,6aを各電極に接続して所定の電圧を印加することにより、両電極線6,6間において放電空間3の全域で管状空間3a…を通した放電が発生する。
【0024】
従って、例えば図5に示すように、平坦な基板2の放電空間3に臨む内面に予め蛍光体層4を設けておけば、該放電によって蛍光体が励起して発光し、該基板2の表面から放電空間3の領域に対応した面発光を生じる。また、図6に示すように、両基板1,2の放電空間3に臨む内面に予め蛍光体層4,4を設けておけば、両面から同様の面発光を生じることになる。無論、図5とは逆に基板1側のみに蛍光体層4を設けておけば、基板1側からの面発光となる。なお、基板1側からの面発光は波板状の表面からなされるため、指向性を有する発光となる。しかして、蛍光体層4は、予め基板表面に蛍光体粉末を含むペーストを刷毛塗り等で塗着しておき、この塗膜を上記の加熱焼成によって硬化させることによって容易に形成できる。
【0025】
一方、上述のような蛍光体層4を設けずに、放電空間3に放電ガスとして、放電によって紫外域の光を発生し得る水銀蒸気やキセノンの如き希ガスを封入しておけば、平面型の紫外線ランプとなる。また、蛍光体層4を両基板1,2の一方側の全体又は一部に設けた形で、同様の放電ガスを封入して紫外線ランプとすれば、紫外線放射時に蛍光体層4からの発光も生じるから、この発光を紫外線ランプのオン・オフの判別に利用できる。
【0026】
このパネル型発光装置D1では、基板1の波板構造部11の内面側の各稜線部11a…が他方の平坦な基板2の内面に当接し、これら多数の当接部分で全体の真空耐圧が分担されるから、基板1,2は全体面積が大きいにも関わらず薄い板厚で十分に真空耐圧を確保できる。しかして、波板構造部11を有する基板1は板ガラスの原材からの加熱ブレスによってサイズ及び品質の両面で均質なものを安定的に量産できることに加え、両側基板1,2は突き合わせた周縁部1a,2aをフリットシール5を介して封着するだけで放電空間3を有する極偏平なパネル型セルを構成できるから、装置全体を容易に且つ低コストで組立製作できる。
【0027】
図7に示す第二実施形態のパネル型発光装置D2では、ガラス製で矩形をなす一対の基板10,10が共に、前記第一実施形態の発光装置D1における基板1と同様の波板構造部11を有するものとなっている。この場合、両基板10,10は、互いの波板構造部11,11における内面側の各稜線部11a,11a同士を相互に当接する形で、突き合わせた互いの平坦な周縁部10a,10aでフリットシール5を介して封着されている。しかして、他の構成は前記第一実施形態と同様である。
【0028】
このようなパネル型発光装置D2においても、前記第一実施形態のパネル型発光装置D1と同様に、両基板10,10の一方又は両方の放電空間3に臨む内面に蛍光体層(図示省略)を設けることにより、蛍光体の放電励起による片面又は両面からの面発光を生じる構成としたり、封入する放電ガスとして水銀蒸気やキセノンの如き希ガスを用いて紫外線発光を生じる構成とすることができる。
【0029】
そして、このパネル型発光装置D2においても、波板構造部11を有する一対の基板10,10が互いの波板構造部11の各稜線部11a,10a同士を当接し、これら当接部分で両基板10,10が相互に支持されているから、基板10,10の面積が大きくても薄い板厚で十分に真空耐圧を確保できる。また、波板構造部11を有する基板10が既述のように均質なものを安定的に量産でき、両側基板10,10をフリットシール5を介して封着するだけで放電空間3を有する極偏平なパネル型セルを構成できるから、装置全体を容易に且つ低コストで組立製作できる。
【0030】
これら第一及び第二実施形態で説明したように、本発明のパネル型発光装置では、発光面積ひいては基板面積が大きくなっても、真空耐圧を確保するために基板の板厚を特に厚く設定する必要がないから、大型化、薄型化、軽量化を同時に実現できる。従って、液晶ディスプレイのバックライト等のディスプレイ用光源として、近年の映像ディスプレイ装置全般の大画面化と薄型化に対応できるものを提供でき、またパネル型照明として建物や通路の壁面部や天井部の全体ないし一部を構成する大面積のものを安価に提供できる。一方、平面型紫外線ランプとしても、殺菌消毒や光硬化型樹脂のキュア等に好適なものを提供できる。
【0031】
なお、本発明のパネル型発光装置は、前記の蛍光体による発光や紫外線放射を行うもの以外でも、プラズマ放電方式、内部電極放電方式等の放電を利用した発光を行うもの全般に適用可能である。また、このような発光装置の細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一実施形態に係るパネル型発光装置を示す斜視図である。
【図2】同パネル型発光装置の要部の横断平面図である。
【図3】図2のA−A線の断面図である。
【図4】図2のB−B線の断面矢視図図である。
【図5】同パネル型発光装置を片面発光型とした要部の縦断面図である。
【図6】同パネル型発光装置を両面発光型とした要部の縦断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係るパネル型発光装置の要部の縦断面図である。
【図8】従来のパネル型発光装置の構成例を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1,2 基板
1a,2a 周縁部
3 放電空間
3a 管状空間
4 蛍光体層
5 フリットシール
6 電極線
6a リード
7 排気管
10 基板
11 波板構造部
11a 稜線部
D1,D2 パネル型発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明ガラスからなる一対の基板間に放電空間が構成され、該放電空間内での放電によって透明ガラス板面より発光するパネル型発光装置において、
少なくとも一方の透明ガラスからなる基板が波板構造部を有し、この波板構造部の内面側の各稜線部で他方の基板内面に当接すると共に、これら稜線部によって複数の平行な管状空間に区切られた前記放電空間が基板周辺側で連通してなることを特徴とするパネル型発光装置。
【請求項2】
前記一対の基板の一方が波板構造部を有する透明ガラス板からなり、他方が平板である請求項1記載のパネル型発光装置。
【請求項3】
前記一対の基板の両方が波板構造部を有する透明ガラス板からなり、両基板が波板構造部の内面側の各稜線部を互いに当接してなる請求項1記載のパネル型発光装置。
【請求項4】
少なくとも一方の基板の前記放電空間に臨む内面側に蛍光体層が形成され、放電励起による蛍光を放射する請求項1〜3のいずれかに記載のパネル型発光装置。
【請求項5】
前記放電空間内に稀ガス又は水銀蒸気が封入され、放電によって紫外線を放射する請求項1〜3のいずれかに記載のパネル型発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−185686(P2006−185686A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376650(P2004−376650)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000114927)ヤマト電子株式会社 (10)
【Fターム(参考)】