パネル
【課題】押入れやクローゼットなどの小空間を適度な湿度に保つ調湿性能を有するパネルを提供する。
【解決手段】芯材２と、芯材２を挟んでその両面に配置される二枚の表面材３ａ，３ｂとを備え、二枚の表面材３ａ，３ｂの間に中空部４を有するパネル１であって、二枚の表面材３ａ，３ｂのうち一方の表面材３ａはケナフ繊維ボードであり、他方の表面材３ｂはケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードであり、二枚の表面材３ａ，３ｂ間の中空部４に調湿材１０が充填されていることを特徴とする。
【解決手段】芯材２と、芯材２を挟んでその両面に配置される二枚の表面材３ａ，３ｂとを備え、二枚の表面材３ａ，３ｂの間に中空部４を有するパネル１であって、二枚の表面材３ａ，３ｂのうち一方の表面材３ａはケナフ繊維ボードであり、他方の表面材３ｂはケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードであり、二枚の表面材３ａ，３ｂ間の中空部４に調湿材１０が充填されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、パネルに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
芯材と、芯材を挟んでその両面に配置される二枚の表面材とを備えたパネルとして各種のものが知られているが（特許文献１参照）、それらのうちドアパネル、引き戸、間仕切り壁などの建具に使用されるフラッシュパネルは、木枠や紙製のハニカムコア材を芯材として、これを二枚の表面材で挟んだ構成を備えており、パネル内には中空部を有している。表面材には主に繊維ボードが使用されており、代表的なものとしてはＭＤＦボード（Medium Density Fiberboard：中密度繊維板）が使用されている。
【特許文献１】特開２００６−３２８８２８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、ＭＤＦボードは透湿性が低いため、押入れやクローゼットなどの小空間を、ＭＤＦボードを表面材として使用した既存のパネルで閉鎖した場合、小空間に湿気が閉じ込められてしまい、閉鎖された小空間に結露やカビが発生するという問題があった。
【０００４】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、押入れやクローゼットなどの小空間を適度な湿度に保つ調湿性能を有するパネルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【０００６】
第１に、本発明のパネルは、芯材と、芯材を挟んでその両面に配置される二枚の表面材とを備え、二枚の表面材の間に中空部を有するパネルであって、二枚の表面材のうち一方の表面材はケナフ繊維ボードであり、他方の表面材はケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードであり、二枚の表面材間の中空部に調湿材が充填されていることを特徴とする。
【０００７】
第２に、上記第１のパネルにおいて、芯材は、格子状またはハニカム状に形成されたケナフ繊維ボードであり、格子またはハニカムのセル部分が中空部を構成していることを特徴とする。
【０００８】
第３に、上記第１のパネルにおいて、二枚の表面材のうち一方の表面材と、芯材とが、一体成形されたケナフ繊維ボードで構成しており、ケナフ繊維ボードの板状表面部が表面材を構成し、板状表面部から突出した突起部が芯材を構成しており、二枚の表面材のうち他方の表面材が、芯材に貼着されていることを特徴とする。
【０００９】
第４に、上記第３のパネルにおいて、芯材は、格子状またはハニカム状に形成されており、格子またはハニカムのセル部分が中空部を構成していることを特徴とする。
【００１０】
第５に、上記第１ないし第４のいずれかのパネルにおいて、二枚の表面材のうち他方の表面材は、ＭＤＦボードまたは合板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１１】
上記第１の発明によれば、二枚の表面材のうち一方の表面材として、透湿性の高いケナフ繊維ボードを用い、他方の表面材としてケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードを用いており、二枚の表面材間の中空部に調湿材を充填したので、ケナフ繊維ボードの表面材を小空間側に向けてパネルを配置することで、パネルで仕切られて閉鎖された小空間の湿度が高い場合には、小空間の湿気が透湿性の高いケナフ繊維ボードを通じてパネルの中空部の調湿材により吸着され、小空間の湿度の増加を抑制するように作用する。一方、小空間の湿度が低い場合には、パネルの中空部の調湿材に吸着されている湿気水分がケナフ繊維ボードを通じて小空間に放出され、小空間が過剰に乾燥するのを抑制するように作用する。
【００１２】
このように、透湿性の高いケナフ繊維ボードを通じて、小空間の湿度に応じてパネルの中空部の調湿材が湿気を吸放湿するので、パネルで仕切られて閉鎖された小空間を適度な湿度に保つことができる。さらに、他方の表面材としてケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードを用いているので、パネルで仕切られて閉鎖された小空間と、外部との間の湿気の流出入が抑制され、外部の湿度に影響されることなく、小空間を適度な湿度に保つことができる。
【００１３】
上記第２の発明によれば、芯材として、格子状またはハニカム状に形成されたケナフ繊維ボードを用いているので、格子またはハニカムのセル部分に調湿材を充填することで、上記第１の発明の効果に加え、仕切られたセル部分同士の通気性が向上し、調湿材による調湿を効率的に行うことができる。さらに、吸湿による芯材の寸法変化が小さいため、吸湿によるパネルの反りの発生を抑制することができる。
【００１４】
上記第３の発明によれば、二枚の表面材のうち一方の表面材と、芯材とを一体成形し、一体のケナフ繊維ボードとして構成するようにしたので、上記第１の発明の効果に加え、表面材と芯材との貼着作業を省略することができ、さらに、表面材と芯材との結合が接着剤による貼着よりも強固となり、パネルの剛性を高めることができる。さらに、吸湿による芯材の寸法変化が小さいため、吸湿によるパネルの反りの発生を抑制することができる。
【００１５】
上記第４の発明によれば、ケナフ繊維ボードで構成された格子またはハニカムのセル部分に調湿材を充填することで、上記第３の発明の効果に加え、仕切られたセル部分同士の通気性が向上し、調湿材による調湿を効率的に行うことができる。
【００１６】
上記第５の発明によれば、二枚の表面材のうち他方の表面材として、ＭＤＦボードなどのケナフ繊維ボードよりも透湿性の低い特定のボードを用いているので、上記第１ないし第４の発明の効果に加え、パネルで仕切られて閉鎖された小空間と、外部との間の湿気の流出入が適切に抑制され、外部の湿度に影響されることなく、小空間側に向けて配置されたケナフ繊維ボードの表面材を通じて調湿材が湿気を吸放湿することで小空間を適度な湿度に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【００１８】
図１は、本発明の第１の実施形態におけるパネルの分解斜視図、図２は、芯材の部分拡大図である。
【００１９】
図１に示す本実施形態のパネル１は、引き戸パネルであり、芯材２と、芯材２を挟んでその両面に配置される二枚の表面材３ａ，３ｂを備えている。二枚の表面材３ａ，３ｂのうち、表面材３ａはケナフ繊維ボードであり、表面材３ｂはＭＤＦボードである。
【００２０】
芯材２は、図２に示すように格子状に形成されたケナフ繊維ボードであり、芯材２の周縁部にはＬＶＬ（Laminated Veneer Lumber：単板積層材）の枠体６が配置されている。芯材２は、図１の二枚の表面材３ａ，３ｂに対して接着剤を用いて貼着されている。芯材２の表裏面を貫通する空間である図２の格子のセル部分５は、パネル１における二枚の表面材３ａ，３ｂ間の中空部４を構成している。
【００２１】
二枚の表面材３ａ，３ｂのそれぞれの表面には、接着剤を用いて化粧材である突き板７ａ，７ｂが貼着されている。
【００２２】
表面材３ａと芯材２を構成するケナフ繊維ボードは、ケナフを解繊して得られるケナフ繊維を樹脂液に含浸し、熱圧成形して得られたものである。また、ケナフ繊維ボードは、たとえば、ケナフ繊維を集合させたケナフ繊維マットに樹脂液を含浸し、これを絞りロールに通して樹脂液の含有量が所定の範囲になるように調整した後、樹脂液を含有するケナフ繊維マットを乾燥して所定の含水率になるように調整し、次いで、ケナフ繊維マットを熱圧成形することにより製造することもできる。
【００２３】
ケナフはアオイ科の一年草であり、その茎の靭皮部を解繊して得られるケナフ繊維は、繊維長が６ｍｍ以上の長繊維であり、繊維径は概ね１０〜３００μｍであって、広葉樹や針葉樹から得られる木質繊維の繊維径よりも大きな直径を有している。
【００２４】
本発明において用いられるケナフ繊維の長さは、好ましくは１０〜２００ｍｍである。長さが当該範囲内のケナフ繊維を用いることで、吸湿に対する寸法安定性の高いケナフ繊維ボードを得ることができる。
【００２５】
ケナフ繊維またはケナフ繊維マットに含浸する樹脂の具体例としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、およびアクリル樹脂エマルジョン、ポリ乳酸エマルジョン等のエマルジョン型樹脂などが挙げられる。
【００２６】
ケナフ繊維ボードにおける樹脂含有率は、好ましくは５〜３０質量％、より好ましくは１５〜２５質量％である。樹脂含有率を当該範囲内とすることで、軽量であり、かつ表面材３ａ，３ｂおよび芯材２として十分な機械的強度を有するケナフ繊維ボードとすることができる。
【００２７】
ケナフ繊維ボードの密度は、好ましくは５００〜１０００ｋｇ／ｍ３である。密度が高過ぎるとケナフ繊維ボードの透湿性が低下し、密度が小さ過ぎるとケナフ繊維ボードの強度物性が低下する。
【００２８】
図２に示すように、芯材２の格子で仕切られたセル部分５には、調湿材１０が充填されている。調湿材１０の具体例としては、珪藻土、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、アロフェン活性白土、セピオライトなどが挙げられる。
【００２９】
本実施形態のパネル１は、図１に示すように、二枚の表面材３ａ，３ｂのうち一方の表面材３ａとして、透湿性の高いケナフ繊維ボードを用い、他方の表面材３ｂとして透湿性の低いＭＤＦボードを用いており、図２に示すように、二枚の表面材３ａ，３ｂ間の中空部４に調湿材１０を充填している。このパネル１は、ケナフ繊維ボードの表面材３ａを押入れやクローゼットなどの小空間側に向けて設置される。
【００３０】
このようにパネル１を設置することで、パネル１で仕切られて閉鎖された小空間の湿度が高い場合には、小空間の湿気がケナフ繊維ボードの表面材３ａを通じてパネル１の中空部４の調湿材１０により吸着され、小空間の湿度の増加を抑制するように作用する。
【００３１】
一方、小空間の湿度が低い場合には、パネル１の中空部４の調湿材１０に吸着されている湿気水分が、ケナフ繊維ボードの表面材３ａを通じて小空間に放出され、小空間が過剰に乾燥するのを抑制するように作用する。
【００３２】
このように、透湿性の高いケナフ繊維ボードの表面材３ａを通じて、小空間の湿度に応じてパネル１の中空部４の調湿材１０が湿気を吸放湿するので、パネル１で仕切られて閉鎖された小空間を適度な湿度に保つことができる。
【００３３】
さらに、他方の表面材３ｂとして、透湿性の低いＭＤＦボードを用いているので、パネル１で仕切られて閉鎖された小空間と、外部との間の湿気の流出入が抑制され、外部の湿度に影響されることなく、小空間を適度な湿度に保つことができる。
【００３４】
また、本実施形態では、芯材２としてケナフ繊維ボードを用いているので、芯材２の吸湿に対する寸法安定性が向上し、パネル１の反りの発生を抑制することができる。さらに、芯材２として図２のように格子状に形成されたケナフ繊維ボードを用いることで、仕切られたセル部分５同士の通気性が向上し、セル部分５に充填された調湿材１０による調湿がより効率的に行えるようになる。なお、芯材２は、図２のような格子状の他、ハニカム状などの形状であってもよい。
【００３５】
表面材３ａ，３ｂと芯材２との貼着には、酢酸ビニルエマルジョンや水性ビニルウレタンなどの木材加工で一般に使用されている接着剤が使用できる。接着剤の塗布面は、表面材３ａ，３ｂと芯材２のいずれであってもよいが、ケナフ繊維ボードの表面材３ａに塗布した場合、表面材３ａの透湿性が損なわれることも考えられるため、芯材２に塗布するのが望ましい。
【００３６】
表面材３ａ，３ｂの裏面には、吸湿によるパネル１の反りの発生を抑制することなどを目的として、一般に行われているように、ポリエチレンシートなどの防湿シートを貼着して表面材３ａ，３ｂの吸湿を防ぐ処理をするようにしてもよいが、ケナフ繊維ボードの表面材３ａにこのような処理をすると、ケナフ繊維ボードの透湿性能が損なわれるため、表面材３ａに防湿シートを用いることはできる限り避けることが望ましい。
【００３７】
表面材３ａ，３ｂの表面には、化粧材として、本実施形態のように突き板７ａ，７ｂを貼着したり、あるいは、所望の着色、模様等を施した紙、ポリプロピレンシート、ポリエチレンシート、ポリエステルシートなどの化粧シートを貼着したり、表面材３ａ，３ｂの表面にアクリルウレタンなどの塗料を塗装するようにしてもよい。しかし、このような方法でパネル１におけるケナフ繊維ボードの表面材３ａ側の表面を化粧面とする場合、化粧方法として、表面材３ａの透湿性能を低下させる方法、たとえば透湿性の低い化粧シートを貼着する方法を選択すると、表面材３ａの透湿性能が損なわれるため、表面材３ａの透湿性能を損なわない化粧方法を選択することが望ましい。
【００３８】
突き板７ａ，７ｂや化粧シートなどを貼着する接着剤は、その種類などに応じて、特に制限なく各種のものを使用することができ、その具体例としては、でんぷん、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【００３９】
図３は、本発明の第２の実施形態におけるパネルの分解斜視図、図４（ａ）は、芯材の部分拡大図、図４（ｂ）は図４（ａ）のＡ−Ａ断面図である。なお、本実施形態において第１の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【００４０】
本実施形態では、二枚の表面材３ａ，３ｂのうち一方の表面材３ａと、芯材２とが、異型金型を用いて一体成形されたケナフ繊維ボードで構成しており、図４（ｂ）に示すように、ケナフ繊維ボードの板状表面部２０が表面材３ａを構成し、板状表面部２０裏面側に垂直に格子状に突出した突起部２１が全体として芯材２を構成している。
【００４１】
この表面材３ａと芯材２とが一体化されたケナフ繊維ボードは、樹脂液を含浸したケナフ繊維またはケナフ繊維マットを熱圧成形する際に、図５に示す異型金型３０を用いて成形することにより製造することができる。この異型金型３０は、図４（ａ）における格子のセル部分５に対応した複数の突出部３０ａが金型面に配列しており、平板プレスの片方の熱盤に代えて、この異型金型３０を用いることにより、表面材３ａと芯材２を同時に成形することが可能となり、表面材３ａと芯材２との接着剤を用いた貼着作業を省略できる。しかも、表面材３ａと芯材２との結合が接着剤による貼着よりも強固となり、パネル１の剛性をより高めることができる。
【００４２】
ケナフ繊維ボードからなる図３の他方の表面材３ｂであるＭＤＦボードは、表面材３ａと芯材２とが一体化された上記のケナフ繊維ボードに対して、芯材２の表面に、上記第１の実施形態において説明した接着剤を用いて貼着することができる。芯材２は、図４（ａ）のような格子状の他、ハニカム状などの形状であってもよく、ハニカム状などの形状とする場合には、異型金型３０の突出部３０ａの形状と配列を当該形状に対応したものとすればよい。
【００４３】
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、表面材３ｂとしてＭＤＦボードを用いたが、表面材３ａのケナフ繊維ボードよりも透湿性の低い他の種類のボード、たとえば合板などを用いるようにしてもよい。表面材３ａのケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードを表面材３ｂとして用いることで、パネル１で仕切られて閉鎖された小空間と、外部との間の湿気の流出入が抑制され、外部の湿度に影響されることなく、小空間側に向けて配置されたケナフ繊維ボードの表面材３ａを通じて調湿材１０が湿気を吸放湿することで小空間を適度な湿度に保つことができる。
【００４４】
また、上記の実施形態では、芯材２としてケナフ繊維ボードから構成したものを用いたが、芯材２として、たとえば木材の角材、紙、フェノール樹脂含浸紙、アルミニウム薄板、塩化ビニル等のプラスチックなどを用いて形成されたハニカムコア材を用いるようにしてもよい。これらのハニカムコア材からなる芯材２と、表面材３ａ，３ｂとの貼着には、酢酸ビニルエマルジョンや水性ビニルウレタンなどの木材加工で一般に使用されている接着剤が使用できる。
【実施例】
【００４５】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
＜実施例１＞
図１に示す引き戸パネルを製造した。表面材３ａを構成するケナフ繊維ボードは、ケナフ繊維マットにフェノール樹脂を含浸し、これを絞りロールに通してフェノール樹脂の含有量が所定の範囲になるように調整した後、乾燥し、次いでケナフ繊維マットを熱圧成形して板状にしたものであり、ケナフ繊維ボードは、厚み１．５ｍｍ、密度６００ｋｇ／ｍ３、樹脂含有率２０質量％とした。
【００４６】
芯材２は、表面材３ａと同様の厚み１．５ｍｍのケナフ繊維ボードを用いて、２０ｍｍ間隔で格子状に組んで形成した。
【００４７】
芯材２のセル部分５には、調湿材１０として珪藻土ブロックを充填した。珪藻土ブロックは、図２に示すように、珪藻土ブロックを充填したセル部分５同士の間に、空のセル部分５が１つ配置されるように、１つおきにセル部分５に充填した。
【００４８】
芯材２を構成する格子状のケナフ繊維ボードの周縁部に、断面寸法３０×３０ｍｍのＬＶＬの枠体６を組み、次いで、厚み０．２ｍｍの突き板７ａを表面に貼着したケナフ繊維ボードの表面材３ａと、厚み０．２ｍｍの突き板７ｂを表面に貼着した厚み２．５ｍｍのＭＤＦボードの表面材３ｂとを、芯材２の両面に酢酸ビニルエマルジョン接着剤で貼着した。酢酸ビニルエマルジョン接着剤は芯材２に塗布し、その塗布量は１５０ｇ／ｍ２であった。
＜実施例２＞
図３に示す引き戸パネルを製造した。ケナフ繊維にフェノール樹脂を含浸したものを用意し、平板プレスの片方の熱盤に代えて図５に示す異型金型３０を用い、熱圧成形することにより、表面材３ａと芯材２とが一体化したケナフ繊維ボードを得た。ケナフ繊維ボードは、板状表面部２０と突起部２１の厚み１．５ｍｍ、密度６００ｋｇ／ｍ３、樹脂含有率２０質量％とし、芯材２を構成する突起部２１は、２０ｍｍ間隔の格子状とした。
【００４９】
芯材２のセル部分５には、調湿材１０として珪藻土ブロックを充填した。珪藻土ブロックは、図４（ａ）に示すように、珪藻土ブロックを充填したセル部分５同士の間に、空のセル部分５が１つ配置されるように、１つおきにセル部分５に充填した。
【００５０】
上記のケナフ繊維ボードの周縁部に、断面寸法３０×３０ｍｍのＬＶＬの枠体６を組み、次いで、厚み０．２ｍｍの突き板７ａを表面材３ａの表面に貼着した上記のケナフ繊維ボードと、厚み０．２ｍｍの突き板７ｂを表面に貼着した厚み２．５ｍｍのＭＤＦボードの表面材３ｂとを、酢酸ビニルエマルジョン接着剤で貼着した。酢酸ビニルエマルジョン接着剤は芯材２に塗布量１５０ｇ／ｍ２で塗布し、芯材２の表面に表面材３ｂの裏面を貼着した。
＜比較例１＞
実施例１において、表面材３ａ，３ｂの両方に、厚み２．５ｍｍのＭＤＦボードを用い、それ以外は実施例１と同様にして引き戸パネルを製造した。芯材２と表面材３ａ，３ｂとの貼着には酢酸ビニルエマルジョン接着剤を用い、突き板７ａ，７ｂを表面に貼着したＭＤＦボードの表面材３ａ，３ｂを、縁部にＬＶＬの枠体６を組み両面に酢酸ビニルエマルジョン接着剤を塗布した芯材２に貼着した。
＜比較例２＞
実施例１において、表面材３ａ，３ｂの両方に、実施例１の表面材３ａと同じケナフ繊維ボードを用い、それ以外は実施例１と同様にして引き戸パネルを製造した。芯材２と表面材３ａ，３ｂとの貼着には酢酸ビニルエマルジョン接着剤を用い、突き板７ａ，７ｂを表面に貼着したケナフ繊維ボードの表面材３ａ，３ｂを、縁部にＬＶＬの枠体６を組み両面に酢酸ビニルエマルジョン接着剤を塗布した芯材２に貼着した。
（パネルの調湿性能の評価：収納施工試験）
４．５畳の居室に隣接する０．５畳の３つの収納のそれぞれに、実施例１・２、比較例１、および比較例２の引き戸パネルを設置して、これらの引き戸パネルにより各収納を居室から仕切って閉鎖し、閉鎖後の各収納内の湿度変化を測定した。なお、実施例１・２の引き戸パネルは、ケナフ繊維ボードの表面材３ａを収納側に向け、ＭＤＦボードの表面材３ｂを居室側に向けて設置した。評価は夏季の５日間実施し、毎日正午に居室内と各収納内の湿度を測定した。その結果を表１に示す。
【００５１】
【表１】
表１に示されるように、ケナフ繊維ボードの表面材３ａとＭＤＦボードの表面材３ｂを用い、パネル内の中空部４に調湿材１０として珪藻土ブロックを充填した実施例１・２の引き戸パネルで閉鎖した収納内の湿度は、５日間で２９％低下し、高い調湿性能を示した。
【００５２】
一方、表面材３ａ，３ｂの両方にＭＤＦボードを用いた比較例１の引き戸パネルで閉鎖した収納内の湿度は、５日後も初期からほとんど変化せず、パネル内の中空部４に充填した調湿材１０は機能しなかった。
【００５３】
また、表面材３ａ，３ｂの両方にケナフ繊維ボードを用いた比較例２の引き戸パネルで閉鎖した収納内の湿度は、５日間で１６％低下し、ある程度の調湿性能を示したが、パネルの両面がケナフ繊維ボードであるため、収納内だけでなく居室の湿気も吸湿し、その分収納内の調湿が鈍くなった。
【図面の簡単な説明】
【００５４】
【図１】本発明の第１の実施形態におけるパネルの分解斜視図である。
【図２】図１のパネルにおける芯材の部分拡大図である。
【図３】本発明の第２の実施形態におけるパネルの分解斜視図である。
【図４】（ａ）は、図３のパネルにおける芯材の部分拡大図であり、（ｂ）は、Ａ−Ａ断面図である。
【図５】異型金型の斜視図である。
【符号の説明】
【００５５】
１ パネル
２ 芯材
３ａ 表面材
３ｂ 表面材
４ 中空部
５ セル部分
１０ 調湿材
２０ 板状表面部
２１ 突起部
３０ 異型金型
【技術分野】
【０００１】
本発明は、パネルに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
芯材と、芯材を挟んでその両面に配置される二枚の表面材とを備えたパネルとして各種のものが知られているが（特許文献１参照）、それらのうちドアパネル、引き戸、間仕切り壁などの建具に使用されるフラッシュパネルは、木枠や紙製のハニカムコア材を芯材として、これを二枚の表面材で挟んだ構成を備えており、パネル内には中空部を有している。表面材には主に繊維ボードが使用されており、代表的なものとしてはＭＤＦボード（Medium Density Fiberboard：中密度繊維板）が使用されている。
【特許文献１】特開２００６−３２８８２８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、ＭＤＦボードは透湿性が低いため、押入れやクローゼットなどの小空間を、ＭＤＦボードを表面材として使用した既存のパネルで閉鎖した場合、小空間に湿気が閉じ込められてしまい、閉鎖された小空間に結露やカビが発生するという問題があった。
【０００４】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、押入れやクローゼットなどの小空間を適度な湿度に保つ調湿性能を有するパネルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【０００６】
第１に、本発明のパネルは、芯材と、芯材を挟んでその両面に配置される二枚の表面材とを備え、二枚の表面材の間に中空部を有するパネルであって、二枚の表面材のうち一方の表面材はケナフ繊維ボードであり、他方の表面材はケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードであり、二枚の表面材間の中空部に調湿材が充填されていることを特徴とする。
【０００７】
第２に、上記第１のパネルにおいて、芯材は、格子状またはハニカム状に形成されたケナフ繊維ボードであり、格子またはハニカムのセル部分が中空部を構成していることを特徴とする。
【０００８】
第３に、上記第１のパネルにおいて、二枚の表面材のうち一方の表面材と、芯材とが、一体成形されたケナフ繊維ボードで構成しており、ケナフ繊維ボードの板状表面部が表面材を構成し、板状表面部から突出した突起部が芯材を構成しており、二枚の表面材のうち他方の表面材が、芯材に貼着されていることを特徴とする。
【０００９】
第４に、上記第３のパネルにおいて、芯材は、格子状またはハニカム状に形成されており、格子またはハニカムのセル部分が中空部を構成していることを特徴とする。
【００１０】
第５に、上記第１ないし第４のいずれかのパネルにおいて、二枚の表面材のうち他方の表面材は、ＭＤＦボードまたは合板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１１】
上記第１の発明によれば、二枚の表面材のうち一方の表面材として、透湿性の高いケナフ繊維ボードを用い、他方の表面材としてケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードを用いており、二枚の表面材間の中空部に調湿材を充填したので、ケナフ繊維ボードの表面材を小空間側に向けてパネルを配置することで、パネルで仕切られて閉鎖された小空間の湿度が高い場合には、小空間の湿気が透湿性の高いケナフ繊維ボードを通じてパネルの中空部の調湿材により吸着され、小空間の湿度の増加を抑制するように作用する。一方、小空間の湿度が低い場合には、パネルの中空部の調湿材に吸着されている湿気水分がケナフ繊維ボードを通じて小空間に放出され、小空間が過剰に乾燥するのを抑制するように作用する。
【００１２】
このように、透湿性の高いケナフ繊維ボードを通じて、小空間の湿度に応じてパネルの中空部の調湿材が湿気を吸放湿するので、パネルで仕切られて閉鎖された小空間を適度な湿度に保つことができる。さらに、他方の表面材としてケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードを用いているので、パネルで仕切られて閉鎖された小空間と、外部との間の湿気の流出入が抑制され、外部の湿度に影響されることなく、小空間を適度な湿度に保つことができる。
【００１３】
上記第２の発明によれば、芯材として、格子状またはハニカム状に形成されたケナフ繊維ボードを用いているので、格子またはハニカムのセル部分に調湿材を充填することで、上記第１の発明の効果に加え、仕切られたセル部分同士の通気性が向上し、調湿材による調湿を効率的に行うことができる。さらに、吸湿による芯材の寸法変化が小さいため、吸湿によるパネルの反りの発生を抑制することができる。
【００１４】
上記第３の発明によれば、二枚の表面材のうち一方の表面材と、芯材とを一体成形し、一体のケナフ繊維ボードとして構成するようにしたので、上記第１の発明の効果に加え、表面材と芯材との貼着作業を省略することができ、さらに、表面材と芯材との結合が接着剤による貼着よりも強固となり、パネルの剛性を高めることができる。さらに、吸湿による芯材の寸法変化が小さいため、吸湿によるパネルの反りの発生を抑制することができる。
【００１５】
上記第４の発明によれば、ケナフ繊維ボードで構成された格子またはハニカムのセル部分に調湿材を充填することで、上記第３の発明の効果に加え、仕切られたセル部分同士の通気性が向上し、調湿材による調湿を効率的に行うことができる。
【００１６】
上記第５の発明によれば、二枚の表面材のうち他方の表面材として、ＭＤＦボードなどのケナフ繊維ボードよりも透湿性の低い特定のボードを用いているので、上記第１ないし第４の発明の効果に加え、パネルで仕切られて閉鎖された小空間と、外部との間の湿気の流出入が適切に抑制され、外部の湿度に影響されることなく、小空間側に向けて配置されたケナフ繊維ボードの表面材を通じて調湿材が湿気を吸放湿することで小空間を適度な湿度に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【００１８】
図１は、本発明の第１の実施形態におけるパネルの分解斜視図、図２は、芯材の部分拡大図である。
【００１９】
図１に示す本実施形態のパネル１は、引き戸パネルであり、芯材２と、芯材２を挟んでその両面に配置される二枚の表面材３ａ，３ｂを備えている。二枚の表面材３ａ，３ｂのうち、表面材３ａはケナフ繊維ボードであり、表面材３ｂはＭＤＦボードである。
【００２０】
芯材２は、図２に示すように格子状に形成されたケナフ繊維ボードであり、芯材２の周縁部にはＬＶＬ（Laminated Veneer Lumber：単板積層材）の枠体６が配置されている。芯材２は、図１の二枚の表面材３ａ，３ｂに対して接着剤を用いて貼着されている。芯材２の表裏面を貫通する空間である図２の格子のセル部分５は、パネル１における二枚の表面材３ａ，３ｂ間の中空部４を構成している。
【００２１】
二枚の表面材３ａ，３ｂのそれぞれの表面には、接着剤を用いて化粧材である突き板７ａ，７ｂが貼着されている。
【００２２】
表面材３ａと芯材２を構成するケナフ繊維ボードは、ケナフを解繊して得られるケナフ繊維を樹脂液に含浸し、熱圧成形して得られたものである。また、ケナフ繊維ボードは、たとえば、ケナフ繊維を集合させたケナフ繊維マットに樹脂液を含浸し、これを絞りロールに通して樹脂液の含有量が所定の範囲になるように調整した後、樹脂液を含有するケナフ繊維マットを乾燥して所定の含水率になるように調整し、次いで、ケナフ繊維マットを熱圧成形することにより製造することもできる。
【００２３】
ケナフはアオイ科の一年草であり、その茎の靭皮部を解繊して得られるケナフ繊維は、繊維長が６ｍｍ以上の長繊維であり、繊維径は概ね１０〜３００μｍであって、広葉樹や針葉樹から得られる木質繊維の繊維径よりも大きな直径を有している。
【００２４】
本発明において用いられるケナフ繊維の長さは、好ましくは１０〜２００ｍｍである。長さが当該範囲内のケナフ繊維を用いることで、吸湿に対する寸法安定性の高いケナフ繊維ボードを得ることができる。
【００２５】
ケナフ繊維またはケナフ繊維マットに含浸する樹脂の具体例としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、およびアクリル樹脂エマルジョン、ポリ乳酸エマルジョン等のエマルジョン型樹脂などが挙げられる。
【００２６】
ケナフ繊維ボードにおける樹脂含有率は、好ましくは５〜３０質量％、より好ましくは１５〜２５質量％である。樹脂含有率を当該範囲内とすることで、軽量であり、かつ表面材３ａ，３ｂおよび芯材２として十分な機械的強度を有するケナフ繊維ボードとすることができる。
【００２７】
ケナフ繊維ボードの密度は、好ましくは５００〜１０００ｋｇ／ｍ３である。密度が高過ぎるとケナフ繊維ボードの透湿性が低下し、密度が小さ過ぎるとケナフ繊維ボードの強度物性が低下する。
【００２８】
図２に示すように、芯材２の格子で仕切られたセル部分５には、調湿材１０が充填されている。調湿材１０の具体例としては、珪藻土、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、アロフェン活性白土、セピオライトなどが挙げられる。
【００２９】
本実施形態のパネル１は、図１に示すように、二枚の表面材３ａ，３ｂのうち一方の表面材３ａとして、透湿性の高いケナフ繊維ボードを用い、他方の表面材３ｂとして透湿性の低いＭＤＦボードを用いており、図２に示すように、二枚の表面材３ａ，３ｂ間の中空部４に調湿材１０を充填している。このパネル１は、ケナフ繊維ボードの表面材３ａを押入れやクローゼットなどの小空間側に向けて設置される。
【００３０】
このようにパネル１を設置することで、パネル１で仕切られて閉鎖された小空間の湿度が高い場合には、小空間の湿気がケナフ繊維ボードの表面材３ａを通じてパネル１の中空部４の調湿材１０により吸着され、小空間の湿度の増加を抑制するように作用する。
【００３１】
一方、小空間の湿度が低い場合には、パネル１の中空部４の調湿材１０に吸着されている湿気水分が、ケナフ繊維ボードの表面材３ａを通じて小空間に放出され、小空間が過剰に乾燥するのを抑制するように作用する。
【００３２】
このように、透湿性の高いケナフ繊維ボードの表面材３ａを通じて、小空間の湿度に応じてパネル１の中空部４の調湿材１０が湿気を吸放湿するので、パネル１で仕切られて閉鎖された小空間を適度な湿度に保つことができる。
【００３３】
さらに、他方の表面材３ｂとして、透湿性の低いＭＤＦボードを用いているので、パネル１で仕切られて閉鎖された小空間と、外部との間の湿気の流出入が抑制され、外部の湿度に影響されることなく、小空間を適度な湿度に保つことができる。
【００３４】
また、本実施形態では、芯材２としてケナフ繊維ボードを用いているので、芯材２の吸湿に対する寸法安定性が向上し、パネル１の反りの発生を抑制することができる。さらに、芯材２として図２のように格子状に形成されたケナフ繊維ボードを用いることで、仕切られたセル部分５同士の通気性が向上し、セル部分５に充填された調湿材１０による調湿がより効率的に行えるようになる。なお、芯材２は、図２のような格子状の他、ハニカム状などの形状であってもよい。
【００３５】
表面材３ａ，３ｂと芯材２との貼着には、酢酸ビニルエマルジョンや水性ビニルウレタンなどの木材加工で一般に使用されている接着剤が使用できる。接着剤の塗布面は、表面材３ａ，３ｂと芯材２のいずれであってもよいが、ケナフ繊維ボードの表面材３ａに塗布した場合、表面材３ａの透湿性が損なわれることも考えられるため、芯材２に塗布するのが望ましい。
【００３６】
表面材３ａ，３ｂの裏面には、吸湿によるパネル１の反りの発生を抑制することなどを目的として、一般に行われているように、ポリエチレンシートなどの防湿シートを貼着して表面材３ａ，３ｂの吸湿を防ぐ処理をするようにしてもよいが、ケナフ繊維ボードの表面材３ａにこのような処理をすると、ケナフ繊維ボードの透湿性能が損なわれるため、表面材３ａに防湿シートを用いることはできる限り避けることが望ましい。
【００３７】
表面材３ａ，３ｂの表面には、化粧材として、本実施形態のように突き板７ａ，７ｂを貼着したり、あるいは、所望の着色、模様等を施した紙、ポリプロピレンシート、ポリエチレンシート、ポリエステルシートなどの化粧シートを貼着したり、表面材３ａ，３ｂの表面にアクリルウレタンなどの塗料を塗装するようにしてもよい。しかし、このような方法でパネル１におけるケナフ繊維ボードの表面材３ａ側の表面を化粧面とする場合、化粧方法として、表面材３ａの透湿性能を低下させる方法、たとえば透湿性の低い化粧シートを貼着する方法を選択すると、表面材３ａの透湿性能が損なわれるため、表面材３ａの透湿性能を損なわない化粧方法を選択することが望ましい。
【００３８】
突き板７ａ，７ｂや化粧シートなどを貼着する接着剤は、その種類などに応じて、特に制限なく各種のものを使用することができ、その具体例としては、でんぷん、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【００３９】
図３は、本発明の第２の実施形態におけるパネルの分解斜視図、図４（ａ）は、芯材の部分拡大図、図４（ｂ）は図４（ａ）のＡ−Ａ断面図である。なお、本実施形態において第１の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【００４０】
本実施形態では、二枚の表面材３ａ，３ｂのうち一方の表面材３ａと、芯材２とが、異型金型を用いて一体成形されたケナフ繊維ボードで構成しており、図４（ｂ）に示すように、ケナフ繊維ボードの板状表面部２０が表面材３ａを構成し、板状表面部２０裏面側に垂直に格子状に突出した突起部２１が全体として芯材２を構成している。
【００４１】
この表面材３ａと芯材２とが一体化されたケナフ繊維ボードは、樹脂液を含浸したケナフ繊維またはケナフ繊維マットを熱圧成形する際に、図５に示す異型金型３０を用いて成形することにより製造することができる。この異型金型３０は、図４（ａ）における格子のセル部分５に対応した複数の突出部３０ａが金型面に配列しており、平板プレスの片方の熱盤に代えて、この異型金型３０を用いることにより、表面材３ａと芯材２を同時に成形することが可能となり、表面材３ａと芯材２との接着剤を用いた貼着作業を省略できる。しかも、表面材３ａと芯材２との結合が接着剤による貼着よりも強固となり、パネル１の剛性をより高めることができる。
【００４２】
ケナフ繊維ボードからなる図３の他方の表面材３ｂであるＭＤＦボードは、表面材３ａと芯材２とが一体化された上記のケナフ繊維ボードに対して、芯材２の表面に、上記第１の実施形態において説明した接着剤を用いて貼着することができる。芯材２は、図４（ａ）のような格子状の他、ハニカム状などの形状であってもよく、ハニカム状などの形状とする場合には、異型金型３０の突出部３０ａの形状と配列を当該形状に対応したものとすればよい。
【００４３】
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、表面材３ｂとしてＭＤＦボードを用いたが、表面材３ａのケナフ繊維ボードよりも透湿性の低い他の種類のボード、たとえば合板などを用いるようにしてもよい。表面材３ａのケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードを表面材３ｂとして用いることで、パネル１で仕切られて閉鎖された小空間と、外部との間の湿気の流出入が抑制され、外部の湿度に影響されることなく、小空間側に向けて配置されたケナフ繊維ボードの表面材３ａを通じて調湿材１０が湿気を吸放湿することで小空間を適度な湿度に保つことができる。
【００４４】
また、上記の実施形態では、芯材２としてケナフ繊維ボードから構成したものを用いたが、芯材２として、たとえば木材の角材、紙、フェノール樹脂含浸紙、アルミニウム薄板、塩化ビニル等のプラスチックなどを用いて形成されたハニカムコア材を用いるようにしてもよい。これらのハニカムコア材からなる芯材２と、表面材３ａ，３ｂとの貼着には、酢酸ビニルエマルジョンや水性ビニルウレタンなどの木材加工で一般に使用されている接着剤が使用できる。
【実施例】
【００４５】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
＜実施例１＞
図１に示す引き戸パネルを製造した。表面材３ａを構成するケナフ繊維ボードは、ケナフ繊維マットにフェノール樹脂を含浸し、これを絞りロールに通してフェノール樹脂の含有量が所定の範囲になるように調整した後、乾燥し、次いでケナフ繊維マットを熱圧成形して板状にしたものであり、ケナフ繊維ボードは、厚み１．５ｍｍ、密度６００ｋｇ／ｍ３、樹脂含有率２０質量％とした。
【００４６】
芯材２は、表面材３ａと同様の厚み１．５ｍｍのケナフ繊維ボードを用いて、２０ｍｍ間隔で格子状に組んで形成した。
【００４７】
芯材２のセル部分５には、調湿材１０として珪藻土ブロックを充填した。珪藻土ブロックは、図２に示すように、珪藻土ブロックを充填したセル部分５同士の間に、空のセル部分５が１つ配置されるように、１つおきにセル部分５に充填した。
【００４８】
芯材２を構成する格子状のケナフ繊維ボードの周縁部に、断面寸法３０×３０ｍｍのＬＶＬの枠体６を組み、次いで、厚み０．２ｍｍの突き板７ａを表面に貼着したケナフ繊維ボードの表面材３ａと、厚み０．２ｍｍの突き板７ｂを表面に貼着した厚み２．５ｍｍのＭＤＦボードの表面材３ｂとを、芯材２の両面に酢酸ビニルエマルジョン接着剤で貼着した。酢酸ビニルエマルジョン接着剤は芯材２に塗布し、その塗布量は１５０ｇ／ｍ２であった。
＜実施例２＞
図３に示す引き戸パネルを製造した。ケナフ繊維にフェノール樹脂を含浸したものを用意し、平板プレスの片方の熱盤に代えて図５に示す異型金型３０を用い、熱圧成形することにより、表面材３ａと芯材２とが一体化したケナフ繊維ボードを得た。ケナフ繊維ボードは、板状表面部２０と突起部２１の厚み１．５ｍｍ、密度６００ｋｇ／ｍ３、樹脂含有率２０質量％とし、芯材２を構成する突起部２１は、２０ｍｍ間隔の格子状とした。
【００４９】
芯材２のセル部分５には、調湿材１０として珪藻土ブロックを充填した。珪藻土ブロックは、図４（ａ）に示すように、珪藻土ブロックを充填したセル部分５同士の間に、空のセル部分５が１つ配置されるように、１つおきにセル部分５に充填した。
【００５０】
上記のケナフ繊維ボードの周縁部に、断面寸法３０×３０ｍｍのＬＶＬの枠体６を組み、次いで、厚み０．２ｍｍの突き板７ａを表面材３ａの表面に貼着した上記のケナフ繊維ボードと、厚み０．２ｍｍの突き板７ｂを表面に貼着した厚み２．５ｍｍのＭＤＦボードの表面材３ｂとを、酢酸ビニルエマルジョン接着剤で貼着した。酢酸ビニルエマルジョン接着剤は芯材２に塗布量１５０ｇ／ｍ２で塗布し、芯材２の表面に表面材３ｂの裏面を貼着した。
＜比較例１＞
実施例１において、表面材３ａ，３ｂの両方に、厚み２．５ｍｍのＭＤＦボードを用い、それ以外は実施例１と同様にして引き戸パネルを製造した。芯材２と表面材３ａ，３ｂとの貼着には酢酸ビニルエマルジョン接着剤を用い、突き板７ａ，７ｂを表面に貼着したＭＤＦボードの表面材３ａ，３ｂを、縁部にＬＶＬの枠体６を組み両面に酢酸ビニルエマルジョン接着剤を塗布した芯材２に貼着した。
＜比較例２＞
実施例１において、表面材３ａ，３ｂの両方に、実施例１の表面材３ａと同じケナフ繊維ボードを用い、それ以外は実施例１と同様にして引き戸パネルを製造した。芯材２と表面材３ａ，３ｂとの貼着には酢酸ビニルエマルジョン接着剤を用い、突き板７ａ，７ｂを表面に貼着したケナフ繊維ボードの表面材３ａ，３ｂを、縁部にＬＶＬの枠体６を組み両面に酢酸ビニルエマルジョン接着剤を塗布した芯材２に貼着した。
（パネルの調湿性能の評価：収納施工試験）
４．５畳の居室に隣接する０．５畳の３つの収納のそれぞれに、実施例１・２、比較例１、および比較例２の引き戸パネルを設置して、これらの引き戸パネルにより各収納を居室から仕切って閉鎖し、閉鎖後の各収納内の湿度変化を測定した。なお、実施例１・２の引き戸パネルは、ケナフ繊維ボードの表面材３ａを収納側に向け、ＭＤＦボードの表面材３ｂを居室側に向けて設置した。評価は夏季の５日間実施し、毎日正午に居室内と各収納内の湿度を測定した。その結果を表１に示す。
【００５１】
【表１】
表１に示されるように、ケナフ繊維ボードの表面材３ａとＭＤＦボードの表面材３ｂを用い、パネル内の中空部４に調湿材１０として珪藻土ブロックを充填した実施例１・２の引き戸パネルで閉鎖した収納内の湿度は、５日間で２９％低下し、高い調湿性能を示した。
【００５２】
一方、表面材３ａ，３ｂの両方にＭＤＦボードを用いた比較例１の引き戸パネルで閉鎖した収納内の湿度は、５日後も初期からほとんど変化せず、パネル内の中空部４に充填した調湿材１０は機能しなかった。
【００５３】
また、表面材３ａ，３ｂの両方にケナフ繊維ボードを用いた比較例２の引き戸パネルで閉鎖した収納内の湿度は、５日間で１６％低下し、ある程度の調湿性能を示したが、パネルの両面がケナフ繊維ボードであるため、収納内だけでなく居室の湿気も吸湿し、その分収納内の調湿が鈍くなった。
【図面の簡単な説明】
【００５４】
【図１】本発明の第１の実施形態におけるパネルの分解斜視図である。
【図２】図１のパネルにおける芯材の部分拡大図である。
【図３】本発明の第２の実施形態におけるパネルの分解斜視図である。
【図４】（ａ）は、図３のパネルにおける芯材の部分拡大図であり、（ｂ）は、Ａ−Ａ断面図である。
【図５】異型金型の斜視図である。
【符号の説明】
【００５５】
１ パネル
２ 芯材
３ａ 表面材
３ｂ 表面材
４ 中空部
５ セル部分
１０ 調湿材
２０ 板状表面部
２１ 突起部
３０ 異型金型
【特許請求の範囲】
【請求項１】
芯材と、芯材を挟んでその両面に配置される二枚の表面材とを備え、二枚の表面材の間に中空部を有するパネルであって、二枚の表面材のうち一方の表面材はケナフ繊維ボードであり、他方の表面材はケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードであり、二枚の表面材間の中空部に調湿材が充填されていることを特徴とするパネル。
【請求項２】
芯材は、格子状またはハニカム状に形成されたケナフ繊維ボードであり、格子またはハニカムのセル部分が中空部を構成していることを特徴とする請求項１に記載のパネル。
【請求項３】
二枚の表面材のうち一方の表面材と、芯材とが、一体成形されたケナフ繊維ボードで構成しており、ケナフ繊維ボードの板状表面部が表面材を構成し、板状表面部から裏面側に突出した突起部が芯材を構成しており、二枚の表面材のうち他方の表面材が、芯材に貼着されていることを特徴とする請求項１に記載のパネル。
【請求項４】
芯材は、格子状またはハニカム状に形成されており、格子またはハニカムのセル部分が中空部を構成していることを特徴とする請求項３に記載のパネル。
【請求項５】
二枚の表面材のうち他方の表面材は、ＭＤＦボードまたは合板であることを特徴とする請求項１ないし４いずれか一項に記載のパネル。
【請求項１】
芯材と、芯材を挟んでその両面に配置される二枚の表面材とを備え、二枚の表面材の間に中空部を有するパネルであって、二枚の表面材のうち一方の表面材はケナフ繊維ボードであり、他方の表面材はケナフ繊維ボードよりも透湿性の低いボードであり、二枚の表面材間の中空部に調湿材が充填されていることを特徴とするパネル。
【請求項２】
芯材は、格子状またはハニカム状に形成されたケナフ繊維ボードであり、格子またはハニカムのセル部分が中空部を構成していることを特徴とする請求項１に記載のパネル。
【請求項３】
二枚の表面材のうち一方の表面材と、芯材とが、一体成形されたケナフ繊維ボードで構成しており、ケナフ繊維ボードの板状表面部が表面材を構成し、板状表面部から裏面側に突出した突起部が芯材を構成しており、二枚の表面材のうち他方の表面材が、芯材に貼着されていることを特徴とする請求項１に記載のパネル。
【請求項４】
芯材は、格子状またはハニカム状に形成されており、格子またはハニカムのセル部分が中空部を構成していることを特徴とする請求項３に記載のパネル。
【請求項５】
二枚の表面材のうち他方の表面材は、ＭＤＦボードまたは合板であることを特徴とする請求項１ないし４いずれか一項に記載のパネル。
【図２】
【図４】
【図５】
【図１】
【図３】
【図４】
【図５】
【図１】
【図３】
【公開番号】特開２００９−７９３９０（Ｐ２００９−７９３９０Ａ）
【公開日】平成２１年４月１６日（２００９．４．１６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−２４８２３１（Ｐ２００７−２４８２３１）
【出願日】平成１９年９月２５日（２００７．９．２５）
【出願人】（０００００５８３２）パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年４月１６日（２００９．４．１６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年９月２５日（２００７．９．２５）
【出願人】（０００００５８３２）パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Ｆターム（参考）】
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