パピローマウイルスのポリプロテイン構築物
【課題】パピローマウイルスのポリプロテイン構築物の提供。
【解決手段】直接的にまたは間接的に融合された少なくとも2つのアミノ酸配列を含んでなり、前記配列の各々がパピローマウイルス(PV)の初期ORFタンパク質の配列またはその免疫原性変異体または断片以外であり、そして前記配列の少なくとも1つがE6またはE7タンパク質またはその免疫原性変異体または断片以外の配列である、ポリプロテイン構築物が提供される。
【解決手段】直接的にまたは間接的に融合された少なくとも2つのアミノ酸配列を含んでなり、前記配列の各々がパピローマウイルス(PV)の初期ORFタンパク質の配列またはその免疫原性変異体または断片以外であり、そして前記配列の少なくとも1つがE6またはE7タンパク質またはその免疫原性変異体または断片以外の配列である、ポリプロテイン構築物が提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ポリプロテイン構築物、特に複数のパピローマウイルス(PV)アミノ酸配列を含んでなり、宿主動物においてPV、特にヒトパピローマウイルス(HPV)に対する免疫応答を引き出す組成物において使用することができるポリプロテイン構築物に関する。
【発明の背景】
【0002】
パピローマウイルスは、ヒトおよび多数の動物における良性の増殖過剰性病変(悪性になることがある)を誘発する。パピローマウイルス感染の生物学は、下記の文献に要約されている:J.P.Sundberg,entitled″Papillomavirus Infectionsin Animals″In ″Papillomaviruses and Human Dieseases″edited by,K.Syrijanen,L.Gissmann,and L.G.Koss、Springer Verlag(1987) 。
【0003】
パピローマウイルスは、8つの初期遺伝子(E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7およびE8)および2つの後期遺伝子(L1およびL2)までをコードする、小さいDNAウイルスのファミリーである。これらのウイルスは、DNA配列の相同性に依存して1〜70型に分化される、いくつかの独特なグループ、例えば、HPVに分類された。HPVの臨床病理学的グルーピングおよびそれらが最も頻繁に関連づけられている病変の潜在性は、下記の文献に要約されている:"Papillomaviruses and Human Cancer",H.Pfister,CRC Press,Inc.(1990)。例えば、HPV1型(HPV−1)は足底いぼの中に存在し、HPV−6またはHPV−11は尖形コンジドローム(生殖器のいぼ)に関係づけられ、そしてHPV−16またはHPV−18は頸部偏平上皮の悪性前および悪性の病変において普通である。
【0004】
HPV疾患の予防に対する免疫学的アプローチは、感染の間または後に体液性および細胞性免疫応答を開始させるウイルスタンパク質の分析を必要とする。しかしながら、最近の限られた成功(Kreider et al.,1986,J.Virol. 59,369;Sterling et al.,1990,J.Virol.64,6305;Meyers et al.,1992,Science, 257,971;Dollard et al.,1992,Genes and Development,6,1131) にかかわらず、パピローマウイルスは培養された細胞中の増殖に対して無反応性であることが知られている(Teichaman and LaPorta,1987,in″The Papovaviridae″,Vol.2,N.P.Salzman and P.M.Howley、p.109) 。結局、ウイルス試薬の欠如はPV感染に対する免疫応答の分析を遅延した。
【0005】
in vitroにおける組換え発現系の最近の出現は、比較的大量の精製された形態の初期および後期の双方の遺伝子によりコードされるウイルスタンパク質の産生を可能とした(Tindle et al.,1990,J.Gen.Virol., 71,1347;Jarrett et al.,1991,Virology, 184,33;Ghim et al.,1992,Virology, 190,548;Stacey et al.,1991,J.Gen.Virol.,73,2337)。これらの系は、最初に、これらのウイルスタンパク質に対する宿主の免疫応答の分析を可能とした。
【0006】
HPVの非構造的初期オープンリーディングフレーム(ORF)タンパク質に対する免疫応答における関心は、HPV−16 E7に集中した。なぜなら、このタンパク質に対する血清抗体と子宮頸癌との間の関連が明らかであったからである(例えば、″Immune Response to Human Papillomaviruses and the Prospects to Human Papillomavirus-Specific Immunisation″,by Tindle and Frazer, In ″Human Pathogenic Papillomaviruses″,edited by H.zur Hausen,Current Topics in Microbiology Immunology,186,Springer-Verlag,Berlin,1994)。
【0007】
また、他のHPV初期ORFタンパク質に対する免疫応答が研究されてきており、これらは下記のものを包含する:PV−16 E6(Stacey et al.,1992,J.Gen.Virol.,73,2337;Bleul et al.,1991,J.Clin.Microbiol.,29,1579;Dillner,‥1990,Int.J.Cancer,46,703;and Muller et al.,1992,Virology,187,508),HPV-16 E2(Dillner et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,3838;Dillner,1990,supra;Lehtinen et al.,1992,J.Med.Virol.37,180;Mann et al.,1990,Cancer Res.,50,7815;and Jenison et al.,1990,J.Infect.Dis.,162,60)and HPV-16 E4‥(Kuchel et al.,1991,Int.J.Cancer,48,682;Jochmus-Kudielka et al.,1989,JNCl,81,1698;and Barber et al.、1992,Cancer Immunol.Immunother.,35,33)。しかしながら、これらの研究を比較すると、血清におけるHPV初期ORFタンパク質の評価において使用された種々のアッセイの結果が相関していないことが明らかである(Tindle and Frazer,1994,supra)。
【0008】
さらに、疾患のマーカーとしてまたはHPV感染後のHPVタンパク質の免疫原性のインジケーターとして、それらの実用性を決定するために十分に大きい数の患者において十分な厳密さで、他のHPV初期ORFタンパク質に対する抗体はまだ探求されてきていない。
【0009】
個々のPVの調製物を使用する動物の免疫化に関連する問題は、これらのタンパク質の大部分が比較的小さく、したがって、多数の反応性エピトープを構成できないということである。さらに、単一のPVタンパク質内の特定のBまたはT細胞のエピトープの免疫優性は、異なる主要な組織適合性(MHC)バックグラウンドの動物の間において多分変化するであろう。この目的で、このような免疫原の効能は、PVに対する免疫応答を引き出すことに関して、多様なMHCバックグラウンドの間で異なることが期待されるであろう。
【0010】
さらに、どのPVタンパク質が分化の種々の段階において感染した細胞により発現されるかに関する知識は驚くべきほどわずかであり、それゆえ、適当な免疫学的標的を定めるためにどのタンパク質が関係するかを予測することは不可能である。
【0011】
本発明は、PV感染に対する免疫刺激の効能を改良しかつ特定の免疫学的標的を定める必要性を回避するために、融合または連結した一構築物において複数のPV初期ORFタンパク質を含んでなるポリプロテイン構築物を提供する。
【発明の概要】
【0012】
1つの面において、本発明は、単離された産物として、直接的にまたは間接的に融合された少なくとも2つのアミノ酸配列を含んでなり、前記配列の各々がパピローマウイルス(PV)の初期オープンリーディングフレーム(ORF)のタンパク質の配列またはその免疫原性変異体または断片であり、そして前記配列の少なくとも1つがE6またはE7タンパク質またはその免疫原性変異体または断片以外の配列である、ポリプロテイン構築物を提供する。
【0013】
他の面において、本発明は、また、免疫学的に有効量の前述の構築物と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる、宿主動物においてPVに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す組成物を提供する。
【0014】
他の面において、本発明は、また、宿主動物に免疫学的に有効量の前述のポリプロテイン構築物を投与することからなる、宿主動物においてPVに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す方法を提供する。本発明は、また、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すための、このようなポリプロテイン構築物の使用も含む。好ましくは、宿主動物はヒトであるが、宿主動物は非ヒトの哺乳動物であることができる。
【0015】
本発明は、また、上記において記載されたポリプロテイン構築物をコードする核酸分子に拡張される。このような核酸分子は、コードされたポリプロテイン構築物を宿主動物においてin vivoで発現させるために、薬学上許容される担体および/または希釈剤を含む核酸ワクチン組成物の形態で宿主動物に投与することができる。また、核酸分子はそれに作用可能に連結された発現制御配列を含んでなる組換えDNA分子の中に含めることができる。
【0016】
この明細書および引き続く請求の範囲を通じて、特記しない限り、「含んでなる」、または「からなる」のような変形は、記載する整数または整数のグループを含むが、他の整数または整数のグループを排除することを意味するものではないことを理解すべきである。
【発明の具体的な説明】
【0017】
用語「ポリプロテイン構築物」は、本明細書おいて使用するとき、配列内で連結された個々のタンパク質から構築され、これにより前記タンパク質がそれらの本来関係する生物学的活性を保持する、ポリプロテイン構築物を記載するために使用される。
【0018】
用語「単離された」は、本明細書おいて使用するとき、ポリプロテイン構築物が少なくとも1回の精製または単離工程に付されており、好ましくは宿主動物への投与に適当な形態であることを意味する。
【0019】
PV感染の治療の関係において本明細書で用語「免疫学的に有効量」を使用することによって、単一の投与において、または一連の投与の一部分として、個々のPV感染宿主に投与する量、すなわち、PV感染の治療に有効である量を意味する。PV感染の予防の関係において本明細書で用語「免疫学的に有効量」を使用することによって、単一の投与において、または一連の投与の一部分として、個々のPV感染宿主に投与する量、すなわち、PV感染または疾患を遅延、阻止、治療または予防するために有効である量を意味する。治療すべき個体の健康および生理的状態、治療すべき個体の分類学的グループ、抗体を合成する個体の免疫系の能力、望まれる保護の程度、免疫原の処方、医学的状況の評価、および他の関係する因子に依存して、有効量は変化する。この量は日常的試験により決定できる比較的広い範囲に入ることが期待される。
【0020】
好ましくは、ポリプロテイン構築物中のアミノ酸配列は、PVの野生型初期ORFタンパク質の配列に実質的に相当し、前記配列はそれらのアレル体または他の変異体を包含する。適当な変異体は野生型配列に対する単一または多数のアミノ酸の置換または付加を有する変異体を包含し、そして変異体が宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すことができるかぎり、野生型アミノ酸配列に対して少なくとも50〜60%、より好ましくは少なくとも70〜80%、最も好ましくは少なくとも90%の類似性を有することができる。アミノ酸配列は、また、野生型初期ORFタンパク質の免疫原性断片、すなわち、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すことができるタンパク質の断片であることができる。適当には、免疫原性断片は特定のタンパク質の少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10の隣接アミノ酸残基を含んでなるであろう。このような免疫原性断片は、また、PV特異的抗体、特にPV感染に関して保護的または治療的作用を有する抗体により認識されることができる。好ましくは、免疫原性断片は野生型アミノ酸配列の非全長断片であり、例えば、全長の野生型アミノ酸配列の少なくとも50%、より好ましくは60〜70%、さらに80〜90%に相当する初期ORFタンパク質の欠失突然変異体を含んでなることができる。
【0021】
本発明のポリプロテイン構築物中のアミノ酸配列は、PVのE1、E2、E3、E4、E5(E5a、E5b)、E6、E7およびE8タンパク質から成る群より選択され、そして構築物において任意の所望の順序で含まれることができる。1例として、構築物は、
(a) E6/E4
(b) E6/E5a/E4
(c) E6/E7/E4
(d) E6/E7/E5a/E4
(e) E6/E7/E1/E4
(f) E6/E7/E5a/E1/E4
(g) E6/E7/E5a/E1/E2/E4
(h) E6/E7/E5a/E5b/E1/E2/E4
(i) E2/E5b
(j) E2/E1/E5b
(k) E2/E5a/E5b
(l) E2/E1/E5a/E5b
(m) E2/E4/E5a/E5b/E6/E7/E1
(n) E2/E3/E4/E5/E8/E6/E7/E1
から成る群より選択されることができる。
【0022】
前述したように、初期ORFタンパク質の少なくとも1つはE6またはE7タンパク質以外の配列である。好ましくは、構築物中の初期ORFタンパク質の1つは E4タンパク質である。
【0023】
本発明のポリプロテイン構築物は、好ましくは少なくとも3、より好ましくは3、4または5つの初期ORFタンパク質配列を含んでなる。さらに、初期ORFタンパク質および/または異なるPV遺伝子型の異なる組み合わせに基づく2またはそれ以上の異なるポリプロテイン構築物を、予防または治療に使用される単一の組成物の中に含めることができる。
【0024】
本発明の構築物において、アミノ酸配列は直接的に融合または連結させることができる。また、アミノ酸配列は別のアミノ酸配列の間において1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5アミノ酸残基のリンカー配列で連結させることができる。一例として、このようなリンカー配列は制限エンドヌクレアーゼ部位を含んでなるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列であることができる。前述のリンカー配列は、また、ポリプロテイン構築物においてアミノ酸配列の前および/または後に存在させることができる。
【0025】
本発明のポリプロテイン構築物は、また、ポリプロテイン構築物の精製を促進するために、融合、またはカップリングした標識タンパク質またはペプチド部分を含んでなることができる。適当な標識部分は、例えば、(His)6 、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)およびFLAG(International Biotechnologies)を包含し、(His)6 標識部分は好ましい。構築物は、ポ リプロテインの免疫原性を増強するための成分をさらに含んでなることができる。この成分はアジュバント、例えば、ジフテリアまたはコレラのトキシンまたは大腸菌(E.coli)非耐熱性トキシン(LT)、またはそれらの非毒性誘導体、例えば、ホロトキソイドまたはコレラトキシンまたはLTのBサブユニットであることができる。さらに、本発明のポリプロテイン構築物は、ISCOMの中への組込みを促進するために、脂質結合領域を含んでなることができる。適当な脂質結合領域は、例えば、オーストラリア国仮特許出願第PN8867/96号明細書(1996年3月25日)に開示されている。好ましい脂質結合領域はインフルエンザヘマグルチニンテイルである。
【0026】
本発明は、また、上記において広く記載したポリプロテイン構築物をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子を提供する。
【0027】
核酸分子は、直鎖状または共有結合で閉じた円形の形の、RNAまたはDNA、一本鎖または二本鎖であることができる。本発明のこの面のヌクレオチド配列は天然源、合成源または半合成源から得ることができることが理解されるであろう;さらに、このヌクレオチド配列は天然に存在する配列であるか、または単一または多数の塩基の置換、欠失、挿入および逆転を包含する突然変異により、このような天然に存在する配列に対して関係づけることができ、ただしこのような配列を含んでなる核酸分子は本明細書において記載するポリプロテイン構築物として発現されることを常に条件とする。
【0028】
ヌクレオチド配列はそれに隣接して位置する発現制御配列を有することができ、このような制御配列は相同的源または異種源から誘導される。
【0029】
核酸分子は「DNAそのまま」として宿主動物に直接的に投与することができる(例えば、Wolfe et al.,1990,Science 247:1465 and Fynan et al.,1933,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:11478)ので、本発明は、また、前述の核酸分子と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる核酸ワクチン組成物を包含する。
【0030】
単離された核酸分子による免疫化により、PVタンパク質がPVによる感染の間に発現される方法に類似する方法において、宿主動物によるコードされたポリプロテイン構築物のin vivoの合成が可能となる。この面において、本発明により、また、宿主動物に免疫学的に有効量の前述の核酸分子を投与することからなる、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出す方法が提供される。また、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すための、このような核酸分子の使用も提供される。
【0031】
本発明は、また、プロモーター配列と、イニシエーター配列とを有する発現制御配列を含んでなり、ポリプロテイン構築物をコードするヌクレオチド配列がプロモーターおよびイニシエーター配列に対して3’側の単一の翻訳フレームの中に位置し、そして終止配列がこのヌクレオチド配列に対して3’側に位置する、組換えDNA分子を提供する。他の面において、本発明は、ポリプロテイン構築物を発現することができるプラスミドのような組換えDNAクローニング体、ならびに組換えDNAクローニング体および/または前述の組換えDNA分子を含有する宿主細胞を提供する。
【0032】
適当な発現制御配列および宿主細胞/クローニング体の組み合わせはこの分野においてよく知られており、そして、例えば、下記の文献に記載されている:Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor, New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press。したがって、ヌクレオチド配列を任意の適当な発現ベクターの中に結合させることができ、この発現ベクターは原核性または真核性発現ベクターであることができる。好ましくは、ベクターは原核性発現ベクター、例えば、pTricHisAまたはpGEX−STOP(GST部分のトランケーションを生ずるように操作されたpGEX発現ベクター(Amrad/Pharmacia Biotech);オーストラリア国仮特許出願第PN8272/86号明細書、1996年2月26日、に開示されている)である。宿主細胞は好ましくは原核細胞、より好ましくは細菌、例えば、大腸菌(E.coli)であるが、宿主細胞は、また、酵母または他の真核細胞、またはバキュロウイルスで感染した昆虫細胞またはその他であることができることが理解されるであろう。
【0033】
いったん本発明のポリプロテイン構築物を発現する組換えDNAクローニング体および/または宿主細胞が同定されると、宿主細胞により合成された発現されたポリペプチド、例えば、融合タンパク質を当業者によく知られている技術により単離して、汚染する宿主細胞の成分を実質的に含まないようにすることができる。
【0034】
個々のタンパク質部分の各々をコードする配列を連結または「融合」することによって、ポリプロテイン構築物をコードするDNA配列は形成される。ポリプロテインDNA構築物中の第一配列は、プロモーター因子と、リボソーム結合部位とを有する。これらの因子は、ポリプロテインDNAのmRNAへの転写が限定された部位において開始すること、そしてmRNAのタンパク質への翻訳に要求されるシグナル、リボソーム結合部位が存在することを保証する。ポリプロテインの合成は、引き続くタンパク質エンコーディング配列から開始または結合のシグナルおよび停止コドンを除去または変更することによって、1つのタンパク質成分から次のタンパク質成分に対して連続的とされる。翻訳を停止させかつポリペプチドを終わらせる停止コドン、通常リボソームのためのシグナルは、変更されないか、または最後のDNA配列から除去されない。個々のタンパク質をコードする配列を結合し、所望のアミノ酸への配列の翻訳のためのmRNAリーディングフレームから適切なフェージングが作られるいったんポリプロテイン構築物をコードするDNA配列または「ポリプロテイン遺伝子」が作られると、構築により安定なポリプロテイン構築物が生産されることを証明する必要がある。生じたタンパク質が、例えば、タンパク質の間の結合部がタンパク質分解的消化に対して攻撃されやすいために、不安定である場合、結合領域は修飾される。これは異なるアミノ酸を結合部にまたはその付近に挿入するか、または個々のタンパク質の間にアミノ酸のスペーサーを構築することによって、実施することができる。ポリプロテインの全体の活性を変更するために、リンカーまたはスペーサーを導入することもできる。個々のタンパク質の間の空間または向きを調節することによって、ポリプロテイン構築物の全体の活性を変更することが可能である。組換えDNA技術による本発明のポリプロテイン構築物の製造のそれ以上の詳述は、例えば、米国特許第4,774,180号明細書(その開示は引用することによって本明細書の一部とされる)に開示されている。
【0035】
好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、個々のPV初期 ORFタンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列を増幅する。増幅されるヌクレオチド配列はその全長であるか、または非全長の断片であることができる。制限エンドヌクレアーゼ部位はPCRに使用されるオリゴヌクレオチドのプライマーの中に組込んで、同一の翻訳フレームにおいて増幅生成物の指向的連結を行い、かつ適当な発現ベクターの中への指向的クローニングを可能とすることができる。プライマーは人工的開始コドンまたは終止コドンをコードすることができる。
【0036】
第一ヌクレオチド配列は開始コドンを有する。この開始コドンは第一配列の通常の野生型開始コドンであるか、またはこの配列の他の選択した位置に人工的に挿入することができる。ポリプロテイン構築物の合成は、開始または結合のシグナルおよび停止コドンを除去または変更することによって、1つのタンパク質成分から次のタンパク質成分に対して連続的とされる。終止コドンは最後のヌクレオチド配列の中に存在しなくてはならない。これは通常最後のヌクレオチド配列の終止コドンを変更または除去することによって実施される。しかしながら、この終止コドンは、当業者に知られている方法により、まず最後のヌクレオチド配列の通常の、野生型終止コドンを除去し、この配列の他の位置において、正しいリーディングフレームで、他の終止コドンを挿入することによって、人工的に挿入することができる。
【0037】
ポリプロテイン構築物をコードするDNA配列をフランキング末端に制限部位を組込んで、適当な発現ベクターの中へのDNA配列の挿入を促進することができる。
【0038】
PVはヒトまたは動物のPVであることができ、好ましくはHPVである。HPVは任意の遺伝子型であることができ、例えば、HPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18、HPV−33、HPV−35、HPV−31およびHPV−45から成る群から選択することができる。好ましくは、HPVはHPV−6またはHPV−11である。
【0039】
本発明は、特に、しかし非独占的に、尖形コンジロームの原因因子であるHPV−6およびHPV−11の初期ORFタンパク質を含んでなるポリプロテイン構築物に関するが、本発明は他のHPVの遺伝子型、特にHPV−16およびHPV−18の遺伝子型、およびHPV−16およびHPV−18に類似する型のオンコジーンの潜在性を有する他の遺伝子型における対応するタンパク質の変異型にも関する。
【0040】
本発明のポリプロテイン構築物は単一のHPV遺伝子型の初期ORFタンパク質を含んでなることができるか、または2以上のHPV遺伝子型からの初期ORFタンパク質を含んでなることができる。さらに、すべての初期ORFタンパク質が1つのポリプロテイン構築物において発現されない場合、または2以上のHPV遺伝子型が望まれる場合において、2以上のポリプロテイン構築物の組み合わせを使用することができる。
【0041】
本発明のポリプロテイン構築物は単離されたタンパク質として提供される、すなわち、それらは他のPVタンパク質を実質的に含有せず、そして人間においてHPVにより引き起こされる生殖器のいぼ、子宮頸癌または他の症状の治療について実用性を特に見出す。ポリプロテイン構築物は、HPVを包含する疾患ならびに前述の他の症状の治療または予防のための医薬組成物の中に含めることができる。
【0042】
本発明のポリプロテイン構築物は、PVによる感染に対する保護を望む被検者において、抗体を発生しおよび/または細胞の免疫応答を誘発するために、すなわち、予防ワクチンとして、使用することができるか、または既に存在するPV感染に対する免疫応答を増強するために、すなわち、治療用ワクチンとして、使用することができる。それらは、また、産生種に注入して抗血清を得ることができる。産生種において得られたポリクローナル抗血清の代わりに、標準的方法を使用するか、またはより最近の改良法により、抗体産生クローンを得るために動物の中に注入するための脾細胞または他の抗体産生細胞を永久分裂能化することによって、モノクローナル抗体を生産することができる。得られたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を、必要に応じて、種々の変異体について修正し、治療剤として使用することもできる。
【0043】
宿主動物、例えば、ヒトに対するポリプロテイン構築物の直接的投与は、PVに対する保護免疫性を付与するか、または被検者が既に感染されている場合、被検者自身の免疫応答を促進してPV誘発疾患の進行をいっそう効果的に防除することができる。
【0044】
本発明のポリプロテイン構築物の予防または治療の投与量は、もちろん、患者の群(年齢、性、およびその他)、治療すべき症状の重症度、および特定のポリプロテイン構築物およびその投与ルートとともに変化するであろう。一般に、使用するための毎週の投与量の範囲は哺乳動物の体重の1kg当たり約0.1〜約5μgの範囲内である。
【0045】
任意の適当な投与ルートを使用して、哺乳動物、特にヒトに、有効投与量の本発明のポリプロテイン構築物を提供することができる。例えば、経口、経直腸、経膣、局所、眼、経鼻、舌下、経頬、静脈内およびその他の投与を使用することができる。投与形態は、錠剤、トローチ剤、分散液、懸濁液、溶液、カプセル剤、クリーム、軟膏、坐剤、エアロゾルおよびその他を包含する。前記投与形態は、また、遅延放出の目的に特別にデザインされた注入または移植された遅延放出性装置またはこの方式で追加的に作用するように改変された移植の他の形態を包含する。
【0046】
ポリプロテイン構築物をワクチンとして投与する場合、ポリプロテイン構築物は保護すべき被検体への慣用のこのような投与法に従い処方される。ポリプロテイン構築物は本発明に従いISCOMSTM(免疫刺激複合体)、リポソームで供給するか、またはまたは化合物、例えば、アクリレートまたはポリ(DL−ラクチド−コ−グリコシド)の中にカプセル化して微小球を形成することができる。ポリプロテイン構築物は、また、油性乳濁液の中に混入し、経口的に投与することができる。
【0047】
他のアジュバント、ならびに慣用の薬学上許容される担体、賦形剤、緩衝剤または希釈剤を本発明のワクチン組成物の中に含めることもできる。一般に、本発明によるワクチン組成物は免疫学的に有効量のポリプロテイン構築物と、必要に応じてアジュバントと、1または2以上の慣用の薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなるであろう。アジュバントの広範であるが、非限定的リストは、下記の文献の中に見出すことができる:Coulter and Cox、″Advances in Adjuvant Technology and Application″、in Animal Parasite Control Utilizing Biotechnology、Chapter 4、edited by Young,W.K.、CRC Press、1992。 本明細書おいて使用するとき、「薬学上許容される担体および/または希釈剤」は、任意およびすべての溶媒、分散媒質、水溶液、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤およびその他を包含する。薬学上活性な物質のためのこのような媒質および物質の使用はこの分野においてよく知られており、そして、例えば、下記の文献に記載されている:Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Edition、Mace Publshing Company、Pennsylvania、U.S.A. 。
【0048】
実際の使用において、本発明のポリプロテイン構築物は、活性成分として、薬学上の担体と慣用の薬学上の配合技術に従い均質混合して組合わせることができる。担体は投与、例えば、経口または非経口(静脈内または動脈内を包含する)のために望む調製物の形態に依存して広範な種類の形態を取ることができる。経口投与の形態の組成物の調製において、任意の通常の薬学上の媒質、例えば、経口液状調製物、例えば、懸濁液、エリキシル剤および溶液の場合において、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤およびその他;または経口固体状調製物、例えば、粉剤、カプセル剤および錠剤の場合において、担体、例えば、澱粉、微結晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、滑剤、崩壊剤およびその他を使用することができる。投与が容易であるために、錠剤およびカプセル剤は最も好都合な経口投与単位形態を表し、この場合において薬学上の固体状担体が明らかなように使用される。所望ならば、錠剤を標準的技術により糖コーティングするか、または腸溶皮コーティングすることができる。
【0049】
前述の普通の投与形態に加えて、本発明のポリプロテイン構築物は、また、調節放出手段および/または送達装置、例えば、国際特許明細書第PCT/AU93/00677号明細書(公開第WO94/15636号)に開示されている調節放出調製物により投与することができる。
【0050】
経口または非経口投与に適当な本発明の医薬組成物は、離散した単位として、例えば、各々が前もって決定した量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤として、粉剤または顆粒として、または水性液体、非水性液体中の溶液または懸濁液、水中油乳濁液または油中水乳濁液として提供することができる。このような組成物は薬学的方法により調製することができるが、すべての方法は1または2以上の必要な成分を構成する担体と活性成分を組合わせる工程を包含する。一般に、組成物は活性成分を液状担体または微細な固体状担体または双方と均一かつ均質に混合し、次いで、必要に応じて、生成物を所望の形態に成形することによって調製される。
【0051】
本発明の他の特徴を下記の実施例において詳細に説明する。しかしながら、この詳細な説明は本発明を例示するためのものであり、本発明の説明を限定するものと解釈すべきでないことを理解すべきである。
【実施例】
【0052】
実施例1 HPV6bの初期オープンリーディングフレーム(ORF)の増幅およびクローニング
pBR322中のHPV6bの全体のゲノムを含有するクローン(de Villiers,1981,J.Virol.40:932)を、E6、E7、 E5a、E5b、E1、E2および E4のオープンリーディングフレーム(ORF)配列の別のPCR増幅のための鋳型として使用した。
【0053】
適当な制限酵素認識配列を増幅に使用するオリゴヌクレオチド(表1;1〜7)の中に含めて、これらの増幅された初期遺伝子配列を第1A図に描写されている「ポリプロテイン」配列に順次に構築した。
【0054】
このスキームにおいて、5’末端にSmaI部位および3’末端にHindIII、NcoIおよびXhoI部位を含有するオリゴヌクレオチドを使用して、E6を増幅した。また、5’にXbaI、SacI、KpnIおよびSpeI部位および3’にBglIIを含有するオリゴヌクレオチドを使用して、E4を増幅した。
【0055】
EcoRV/EcoRI断片を除去することによってpGEM3Zf(Promega Corporation)ポリリンカー−HindII〜EcoRIの一部分を含有するように修飾されたベクターpSP70(Promega Corporation)中で、これらの増幅された断片をSmaI/XbaI(E6)およびXbaI/BglII(E4)(第1B図)としてクローニングした。その上、SmaI/XhoIで切断することによって、SmaI部位から上流の不必要な部位を除去し、そしてSmaI/SalI/XhoIリンカーを挿入して、ベクターpSP70(MOD)をつくった。
【0056】
SmaI/BglIIで切断することによって、E6/E4カセットを除去することができ、次いでこれを発現のためにpGEX−STOPベクターの中にクローニングした。このベクターは精製の目的でC−末端の6ヒスチジン配列と非融合タンパク質を産生する。
【0057】
導入された制限酵素認識配列を使用して、pSP70(MOD)中にクローニングされたE6/E4カセットの中に他の初期ORF配列を組込ませ、次いで新しくつくられたカセットをSmaI/BglII断片としてpGEX−STOPの中にクローニングした。
【0058】
この方法において、E6/E5a/E4、E6/E7/E4、E6/E7/ E5a/E4、E6/E7/E1/E4およびE6/E7/E5a/E1/E4を含有するポリプロテイン構築物を構築した。最初の3つの構築物についての完全なDNA配列のデータは含まれており、そしてE1の結合部を横切る配列のデータは後者の2つについて含まれている。SpeI部位を明らかにしたDNA配列を単一塩基の変化により不活性化させた。これはオリゴヌクレオチドの合成、PCRまたはクローニングの間に実施した。
【0059】
さらに、まずテトラマーE6/E7/E5a/E4をSmaI/BglII断片としてベクターpRIT2T(AMRAD Pharmacia Biotech)のSmaI/BamHI部位の中にサブクローニングすることによって、E6/E7/E5a/E4の四融合構築物を発現のためにpET23b(Novagen)の中にクローニングした。次いでテトラマーをSmaIおよびSalIで消化して除去し、ベクターpET23bのHincII/XhoI部位の中にクローニングした。
【0060】
5’末端にSmaI部位および3’末端にXbaI、NcoI、KpnIおよびSacI部位を含有するオリゴヌクレオチド(表1;8)を使用してE2を増幅することによって、そして5’にXhoI部位および3’にXbaI、BglII部位を有するオリゴヌクレオチド(表1;9)を使用して増幅されたE5bを使用して、E2およびE5bを含有するが、E1およびE5aの付加を許容できる他の構築物をつくった。次いで、これらの増幅された断片を第1C図に示すようにpSP70(MOD)の中にクローニングした。
【表1】
【0061】
実施例2 異なるポリプロテイン構築物の発現
pGEX−STOP中の下記の構築物を大腸菌(E.coli)BL21株中で発現させ、そしてタンパク質の産生をPAGEおよび引き続くウェスタンブロッティングによりアッセイした:
i) E6/E4
ii) E6/E5a/E4
iii) E6/E7/E4
iv) E6/E7/E5a/E4
大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysS株およびAD494(DE3)pLysS株(Novagen)において発現されたpET23b中の構築物(iv)を、また、ウェスタンブロッティングにより、また、後者の株についてクーマッシーブルー染色により、タンパク質の産生についてアッセイした。
【0062】
200mlの培養物を、テリフィック(Terrific)ブロス(Tartoff and Hobbs,Focus,9:12,1987)中で、100μg/mlのアンピシリン(BL2 1)および34μg/mlのクロラムフェニコール[BL21(DE3)pLysS]および15μg/mlのカナマイシン[AD494(DE3)pLysS]の存在において増殖させた。OD600 約1において、IPTGを0.5mMに添加することによって、タンパク質の発現を誘発させた。誘発後、試料を1、2、3、4および5時間に採取し、一晩培養した後に採取した。
【0063】
第2図はE6/E4構築物についてのウェスタンブロットの結果を示す。これをポリクローナルウサギ抗E4抗体(MWE4 − オボアルブミンに結合したペプチドLGNEHEESNSPLATPCVWPTに対して発生させた)でプローブした。約30kDaの免疫反応性バンドは4時間の誘発の試料(レーン2および4、矢印)において存在し、これは未誘発の試料(レーン3)において存在しなかった。
【0064】
同一の約30kDaのバンドは、また、第3図、レーン3、矢印(レーン2−非誘発)における誘発された試料において見ることができるが、約40kDaのE6/E5a/E4トリマー構築物は同一抗E4抗体を使用して4時間の誘発期間後(レーン5、矢印;非誘発の試料−レーン4)に低度に発現された。
【0065】
しかしながら、対照的に、E6/E7/E4のトリマー構築物(約41kDa)は、抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体(Dianova)を使用して5時間の誘発後に容易に検出することができた[第4図、レーン4、矢印;非誘発の試料−レーン3]。
【0066】
同一トリマー構築物は、再び、抗E4抗体MWE4を使用して5時間の誘発後に容易に可視化され(第5図、レーンTRI、矢印;対照試料−レーンC)そしてE6/E7/E5b/E4のテトラマー構築物(約51kDa)も検出することができた(レーンTET、矢印)。このバンドは弱いが、かなりの量の高分子量物質も免疫反応性であり、テトラマーが合理的によく発現されるが、多分凝集する傾向があることを示すことに注目しなくてはならない。
【0067】
第6図は、抗E6抗体(後述するように調製した)が5時間の誘発後にE6/E7/E4(レーンRT、矢印)を検出できるが、E6/E7/E5a/E4(レーンTET;レーンC−非誘発)を検出できなかったことを示す。しかしながら、抗E7抗体(後述するように調製した)は5時間の誘発後にトリマー(第7図、レーンTRI、矢印;レーンC−非誘発)およびテトラマー(レーンTET、矢印;レーンC−非誘発)の双方を検出することができた。後者は再び凝集の指示を示す。E4ペプチドに対して発生させたモノクローナル抗体は、また、トリマーを認識した。
【0068】
E6/E7/E5a/E4テトラマーをBL21(DE3)pLysSにおいてpET23bプラスミド中で発現させたとき、凝集の現象は非常に明らかであった(第8図−MWE4でプローブしたウェスタンブロット)。レーン2〜5は1時間、2時間、3時間および一晩の非誘発の試料であり、そしてレーン6〜9は1時間、2時間、3時間および一晩の誘発の試料である。1時間の誘発後、E6/E7/E5a/E4のバンドが明瞭に見ることができる(矢印)が、誘発時間を増加すると、これは減少するように見え、凝集した形態が増加する。対照的に、AD494(DE3)pLysS株を使用してテトラマーを発現させたとき、2時間の誘発後に不溶性画分のウェスタンブロット(第9図、矢印)上の約50kDaにおいて、実質的なシグナルが得られ、これは3時間においても持続した。この免疫反応性バンドは対照試料において存在せず、そして可溶性画分からの試料においてタンパク質は検出されなかった。
【0069】
第10図は同一ゲルのクマジー染色したプロフィルを示し、2および3時間の誘発後に存在する免疫反応性バンド(第9図)が染色されたバンドとして明瞭に可視化されるうることを示し、これらのバンドは対照試料において存在しない。
【0070】
実施例3 ポリプロテイン構築物のDNA配列決定
オーバーラップする配列情報を発生させたプライマーを使用してジデオキシ法により、ポリプロテイン構築物を両方向において配列決定した。T7SequencingTMKit(Pharmacia)を使用して、35S標識化鎖末端の断片を発生させ、これらの断片はSequi−GenTM(Biorad)電気泳動ゲル装置で分析した。E6/E5a/E4(CSL690.SEQ)、E6/E7/E4(CSL760.SEQ)およびE6/E7/E5a/E4(CSL673.SEQ)についてのDNAおよび対応するアミノ酸配列を下記に示す。(それぞれ、配列番号19および20、21および22、および23および24)。
【0071】
それぞれ、E6/E7/E4およびE6/E7/E5a/E4からつくられた構築物E6/E7/E1/E4(CSL791)およびE6/E7/E5a/ E1/E4(CSL762)について、E1とその付近のものとの結合部を横切るDNA配列を下記に示す。(それぞれ、配列番号25および26、27および28、および29および30)。
【表2−1】
【表2−2】
【表2−3】
【表2−4】
【表2−5】
【表2−6】
【表2−7】
【表2−8】
【0072】
実施例4 HPV6b初期ORFタンパク質の産物に対する抗体の調製
関係するEタンパク質の配列の一部分に相当する下記のペプチドを合成し、ジフテリアトキソイドに結合した:
E6 ジフテリアトキソイド−C−QYRHFDYAQYATTVEEETKQDILD
E7 MHGRHVTLKDIVLDLQPPD−C−ジフテリアトキソイド
E6ペプチドについて、2匹のウサギ(前もって採血した後)の各々にフロインド完全アジュバント中のほぼ54μgのペプチド/104μgのジフテリアトキソイドを接種し、次いで3週の間隔でフロインド完全アジュバント中の同一投与量のペプチド複合体を接種した。第2投与後1週に採血し、第3投与後1週に採血した。45μgのペプチド/103μgのジフテリアトキソイドを使用して、E7ペプチドについて同一の養生法を使用した。
【0073】
ストレプアビジンでコーティングされたプレートに結合させたビオチン結合ペプチドに対して、固相E1Aにおいて、採血から誘導された血清を特異的抗体について試験した。
【0074】
実施例5 ポリプロテインE6/E7/E4の精製
OD600 約1において0.4mMのIPTGを使用して細胞の誘発により、トリマーのポリプロテインE6/E7/E4を大腸菌(E.coli)BL21中で発現させた。細胞を遠心(4,000g、20分)により収獲し、30mMのTris pH8.0の中に再懸濁させ、超音波処理(MSE、振幅18μm、4×30秒)により崩壊させ、そして封入体を遠心(12,000g、30分)により沈降させた。トリマーを含有するペレットを8Mの尿素、30mMのTris pH8.0中で16時間プロテアーゼインヒビター(Boehringer カタログNo.1697498)の存在において可溶化し、次いで12,000gにおいて30分間遠心し、上清を集めた。これに、トリス−(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)[Pierce]を1.2mMの最終濃度に添加した。上清をQ−セファローズHP(Pharmacia)に適用し、カラムを1カラム体積の8Mの尿素、1.2mMのTCEP、30mMのTris pH8.0で洗浄した。次いで、10カラム体積の洗浄緩衝液中の0〜1MのNaClを含有する勾配を使用して画分を溶離した。得られた画分を4〜20%のSDS−PAGEのウェスタンブロットにより検査し、抗E4抗体MWE4でプローブした。
【0075】
第11図はQセファローズから得られた物質のウェスタンブロットを示す。約41kDaの免疫反応性バンドは、尿素可溶化レーン3からの上清物質において、および120〜150mMのNaClに相当する画分(レーン8および9、矢印)において明らかである。
【0076】
C−末端の5ヒスチジン配列を利用するために、キレーティング・セファローズ・ファスト・フロー(Chelating Sepharose Fast Flow)(Pharmacia)を含有するカラムに、尿素可溶化からの上清を適用した。記載する条件下に、ニッケルカラムに対するトリマーの比較的低い結合が観察された。トリマーは0〜500mMのイミダゾール勾配を使用してカラムから溶離された。
【0077】
実施例6
本発明の更なる実施例において、ORFの順序がE2、E4、E5a、 E5b、E6、E7およびE1である、HPV−6初期ORFタンパク質をコードするDNA断片の融合により、単一のポリプロテインをコードするDNA配列(第12図)を形成する。
【0078】
表2に記載するプライマーを使用してHPV−6ゲノムDNAを用いるPCRにより、初期ORFタンパク質をコードするDNA配列を個々に増幅する。
【表3】
【0079】
増幅産物の5’および3’末端に人工的制限酵素部位を組込むために、プライマーを合成する。これらの制限酵素部位を使用して、所望の順序および正しい翻訳フレームにおいて、適当な初期ORFタンパク質をコードするPCR生成物の融合を促進する。また、制限酵素部位を使用して、発現ベクターpTrcHisAの中へのPCR生成物のクローニングを促進する。このベクターの中へクローニングするとき、ポリプロテイン構築物はN−末端のhxaHis融合物として発現される。この融合のヌクレオチド配列および推定されたアミノ酸配列を下記に示す(それぞれ、配列番号45および46)。
【0080】
(His)6 −ポリプロテイン融合配列
配列の長さ:4770
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジオー:直鎖状
配列の種類:Genomic DNA
ハイポセティカル:NO
アンチセンス:NO
起源
生物名:ヒトパピローマウイルス タイプ6
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【表4−5】
【表4−6】
【表4−7】
【0081】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 直接的にまたは間接的に融合された少なくとも2つのアミノ酸配列を含んでなり、前記配列の各々がパピローマウイルス(PV)の初期ORFタンパク質の配列またはその免疫原性変異体または断片であり、そして前記配列の少なくとも1つがE6またはE7タンパク質またはその免疫原性変異体または断片以外の配列である、ポリプロテイン構築物。
(2) 前記配列がヒトPVの初期ORFタンパク質の配列、またはその免疫原性変異体または断片である、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(3) 前記初期ORFタンパク質がPVのE1、E2、E3、E4、E5(E5a、E5b)、E6、E7およびE8タンパク質から成る群から選択される、(2)に記載のポリプロテイン構築物。
(4) (a) E6/E4
(b) E6/E5a/E4
(c) E6/E7/E4
(d) E6/E7/E5a/E4
(e) E6/E7/E1/E4
(f) E6/E7/E5a/E1/E4
(g) E6/E7/E5a/E1/E2/E4
(h) E6/E7/E5a/E5b/E1/E2/E4
(i) E2/E5b
(j) E2/E1/E5b
(k) E2/E5a/E5b
(l) E2/E1/E5a/E5b
(m) E2/E4/E5a/E5b/E6/E7/E1
(n) E2/E3/E4/E5/E8/E6/E7/E1
から成る群より選択される、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物。
(5) 前記アミノ酸配列の間および/または前および/または後に1または2以上のリンカー配列をさらに含んでなる、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(6) 前記一以上のリンカー配列が1〜5アミノ酸残基を含んでなる、(5)に記載のポリプロテイン構築物。
(7) 融合、またはカップリングされた標識タンパク質またはペプチドの部分をさらに含んでなる、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(8) 前記標識部分が(his)6 、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)およびFLAGから成る群より選択される、(7)に記載のポリプロテイン構築物。
(9) 融合、またはカップリングされたアジュバント部分をさらに含んでなる、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(10) 前記アジュバント部分がジフテリアトキシン、コレラトキシンおよび大腸菌(E.coli)非耐熱性トキシン(LT)およびそれらの非毒性誘導体、例えば、ホロトキソイドまたはコレラトキシンまたはLTのBサブユニットから選択される、(9)に記載のポリプロテイン構築物。
(11) 脂質結合領域をさらに含んでなる、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(12) 前記脂質結合領域がインフルエンザヘマグルチニンテイルである、(11)に記載のポリプロテイン構築物。
(13) 免疫学的に有効量の(1)〜(12)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる、宿主動物においてパピローマウイルスに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す組成物。
(14) アジュバントをさらに含んでなる、(13)に記載のワクチン組成物。
(15) 宿主動物に免疫学的に有効な量の(1)〜(12)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物を投与することからなる、宿主動物においてパピローマウイルスに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す方法。
(16) 前記ポリプロテイン構築物を薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる組成物とともに投与する、(15)に記載の方法。
(17) 前記組成物がアジュバントをさらに含んでなる、(16)に記載の方法。
(18) 前記宿主動物がヒトである、(15)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19) 宿主動物においてパピローマウイルスに対する免疫応答を引き出すための、(1)〜(12)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物の使用。
(20) (1)〜(12)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物をコードする核酸分子。
(21) (20)に記載の核酸分子に作用可能に連鎖された発現制御配列を含んでなる組換えDNA分子。
(22) 前記発現制御配列がプロモーター配列と、イニシエーター配列とを含んでなり、前記ポリプロテイン構築物をコードするヌクレオチド配列が前記プロモーターおよびイニシエーター配列に対して3’側の単一の翻訳フレームの中に位置し、そして終止配列が前記ヌクレオチド配列に対して3’側に位置する、(21)に記載の組換えDNA分子。
(23) (21)または(22)に記載の組換えDNA分子を含んでなる組換えDNAクローニング体またはベクター。
(24) 前記ベクターがプラスミドである、(23)に記載の組換えDNAクローニング体またはベクター。
(25) (21)または(22)に記載の組換えDNA分子、または(23)または(24)に記載の組換えDNAクローニング体またはベクターでトランスフェクションまたは形質転換された宿主細胞。
(26) 前記宿主細胞が大腸菌(E.coli)である、(25)に記載の宿主細胞。
(27) (25)または(26)に記載の宿主細胞における発現により製造された組換えポリプロテイン構築物。
(28) (20)に記載の核酸分子と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる組成物。
(29) 宿主動物に免疫学的に有効な量の(20)に記載の核酸分子を投与することからなる、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出す方法。
(30) 宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すための、(20)に記載の核酸分子の使用。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ポリプロテイン配列およびその断片を示した図である。
【図2】E6/E4構築物についてのウェスタンブロットの結果を示した図である。
【図3】抗E4抗体を使用したE6/E5a/E4のトリマー構築物の発現を示した図である。
【図4】抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体を使用したE6/E7/E4のトリマー構築物の検出を示した図である。
【図5】抗E4抗体MWE4を使用した構築物の検出を示した図である。
【図6】抗E6抗体を使用した構築物の検出を示した図である。
【図7】抗E7抗体を使用した構築物の検出を示した図である。
【図8】MWE4でプローブしたウェスタンブロットの結果を示した図である。
【図9】不溶性画分のウェスタンブロットの結果を示した図である。
【図10】同一ゲルのクマジー染色したプロフィルを示した図である。
【図11】Qセファローズから得られた物質のウェスタンブロットを示した図である。
【図12】単一のポリプロテインをコードするDNA配列を示した図である。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ポリプロテイン構築物、特に複数のパピローマウイルス(PV)アミノ酸配列を含んでなり、宿主動物においてPV、特にヒトパピローマウイルス(HPV)に対する免疫応答を引き出す組成物において使用することができるポリプロテイン構築物に関する。
【発明の背景】
【0002】
パピローマウイルスは、ヒトおよび多数の動物における良性の増殖過剰性病変(悪性になることがある)を誘発する。パピローマウイルス感染の生物学は、下記の文献に要約されている:J.P.Sundberg,entitled″Papillomavirus Infectionsin Animals″In ″Papillomaviruses and Human Dieseases″edited by,K.Syrijanen,L.Gissmann,and L.G.Koss、Springer Verlag(1987) 。
【0003】
パピローマウイルスは、8つの初期遺伝子(E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7およびE8)および2つの後期遺伝子(L1およびL2)までをコードする、小さいDNAウイルスのファミリーである。これらのウイルスは、DNA配列の相同性に依存して1〜70型に分化される、いくつかの独特なグループ、例えば、HPVに分類された。HPVの臨床病理学的グルーピングおよびそれらが最も頻繁に関連づけられている病変の潜在性は、下記の文献に要約されている:"Papillomaviruses and Human Cancer",H.Pfister,CRC Press,Inc.(1990)。例えば、HPV1型(HPV−1)は足底いぼの中に存在し、HPV−6またはHPV−11は尖形コンジドローム(生殖器のいぼ)に関係づけられ、そしてHPV−16またはHPV−18は頸部偏平上皮の悪性前および悪性の病変において普通である。
【0004】
HPV疾患の予防に対する免疫学的アプローチは、感染の間または後に体液性および細胞性免疫応答を開始させるウイルスタンパク質の分析を必要とする。しかしながら、最近の限られた成功(Kreider et al.,1986,J.Virol. 59,369;Sterling et al.,1990,J.Virol.64,6305;Meyers et al.,1992,Science, 257,971;Dollard et al.,1992,Genes and Development,6,1131) にかかわらず、パピローマウイルスは培養された細胞中の増殖に対して無反応性であることが知られている(Teichaman and LaPorta,1987,in″The Papovaviridae″,Vol.2,N.P.Salzman and P.M.Howley、p.109) 。結局、ウイルス試薬の欠如はPV感染に対する免疫応答の分析を遅延した。
【0005】
in vitroにおける組換え発現系の最近の出現は、比較的大量の精製された形態の初期および後期の双方の遺伝子によりコードされるウイルスタンパク質の産生を可能とした(Tindle et al.,1990,J.Gen.Virol., 71,1347;Jarrett et al.,1991,Virology, 184,33;Ghim et al.,1992,Virology, 190,548;Stacey et al.,1991,J.Gen.Virol.,73,2337)。これらの系は、最初に、これらのウイルスタンパク質に対する宿主の免疫応答の分析を可能とした。
【0006】
HPVの非構造的初期オープンリーディングフレーム(ORF)タンパク質に対する免疫応答における関心は、HPV−16 E7に集中した。なぜなら、このタンパク質に対する血清抗体と子宮頸癌との間の関連が明らかであったからである(例えば、″Immune Response to Human Papillomaviruses and the Prospects to Human Papillomavirus-Specific Immunisation″,by Tindle and Frazer, In ″Human Pathogenic Papillomaviruses″,edited by H.zur Hausen,Current Topics in Microbiology Immunology,186,Springer-Verlag,Berlin,1994)。
【0007】
また、他のHPV初期ORFタンパク質に対する免疫応答が研究されてきており、これらは下記のものを包含する:PV−16 E6(Stacey et al.,1992,J.Gen.Virol.,73,2337;Bleul et al.,1991,J.Clin.Microbiol.,29,1579;Dillner,‥1990,Int.J.Cancer,46,703;and Muller et al.,1992,Virology,187,508),HPV-16 E2(Dillner et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,3838;Dillner,1990,supra;Lehtinen et al.,1992,J.Med.Virol.37,180;Mann et al.,1990,Cancer Res.,50,7815;and Jenison et al.,1990,J.Infect.Dis.,162,60)and HPV-16 E4‥(Kuchel et al.,1991,Int.J.Cancer,48,682;Jochmus-Kudielka et al.,1989,JNCl,81,1698;and Barber et al.、1992,Cancer Immunol.Immunother.,35,33)。しかしながら、これらの研究を比較すると、血清におけるHPV初期ORFタンパク質の評価において使用された種々のアッセイの結果が相関していないことが明らかである(Tindle and Frazer,1994,supra)。
【0008】
さらに、疾患のマーカーとしてまたはHPV感染後のHPVタンパク質の免疫原性のインジケーターとして、それらの実用性を決定するために十分に大きい数の患者において十分な厳密さで、他のHPV初期ORFタンパク質に対する抗体はまだ探求されてきていない。
【0009】
個々のPVの調製物を使用する動物の免疫化に関連する問題は、これらのタンパク質の大部分が比較的小さく、したがって、多数の反応性エピトープを構成できないということである。さらに、単一のPVタンパク質内の特定のBまたはT細胞のエピトープの免疫優性は、異なる主要な組織適合性(MHC)バックグラウンドの動物の間において多分変化するであろう。この目的で、このような免疫原の効能は、PVに対する免疫応答を引き出すことに関して、多様なMHCバックグラウンドの間で異なることが期待されるであろう。
【0010】
さらに、どのPVタンパク質が分化の種々の段階において感染した細胞により発現されるかに関する知識は驚くべきほどわずかであり、それゆえ、適当な免疫学的標的を定めるためにどのタンパク質が関係するかを予測することは不可能である。
【0011】
本発明は、PV感染に対する免疫刺激の効能を改良しかつ特定の免疫学的標的を定める必要性を回避するために、融合または連結した一構築物において複数のPV初期ORFタンパク質を含んでなるポリプロテイン構築物を提供する。
【発明の概要】
【0012】
1つの面において、本発明は、単離された産物として、直接的にまたは間接的に融合された少なくとも2つのアミノ酸配列を含んでなり、前記配列の各々がパピローマウイルス(PV)の初期オープンリーディングフレーム(ORF)のタンパク質の配列またはその免疫原性変異体または断片であり、そして前記配列の少なくとも1つがE6またはE7タンパク質またはその免疫原性変異体または断片以外の配列である、ポリプロテイン構築物を提供する。
【0013】
他の面において、本発明は、また、免疫学的に有効量の前述の構築物と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる、宿主動物においてPVに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す組成物を提供する。
【0014】
他の面において、本発明は、また、宿主動物に免疫学的に有効量の前述のポリプロテイン構築物を投与することからなる、宿主動物においてPVに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す方法を提供する。本発明は、また、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すための、このようなポリプロテイン構築物の使用も含む。好ましくは、宿主動物はヒトであるが、宿主動物は非ヒトの哺乳動物であることができる。
【0015】
本発明は、また、上記において記載されたポリプロテイン構築物をコードする核酸分子に拡張される。このような核酸分子は、コードされたポリプロテイン構築物を宿主動物においてin vivoで発現させるために、薬学上許容される担体および/または希釈剤を含む核酸ワクチン組成物の形態で宿主動物に投与することができる。また、核酸分子はそれに作用可能に連結された発現制御配列を含んでなる組換えDNA分子の中に含めることができる。
【0016】
この明細書および引き続く請求の範囲を通じて、特記しない限り、「含んでなる」、または「からなる」のような変形は、記載する整数または整数のグループを含むが、他の整数または整数のグループを排除することを意味するものではないことを理解すべきである。
【発明の具体的な説明】
【0017】
用語「ポリプロテイン構築物」は、本明細書おいて使用するとき、配列内で連結された個々のタンパク質から構築され、これにより前記タンパク質がそれらの本来関係する生物学的活性を保持する、ポリプロテイン構築物を記載するために使用される。
【0018】
用語「単離された」は、本明細書おいて使用するとき、ポリプロテイン構築物が少なくとも1回の精製または単離工程に付されており、好ましくは宿主動物への投与に適当な形態であることを意味する。
【0019】
PV感染の治療の関係において本明細書で用語「免疫学的に有効量」を使用することによって、単一の投与において、または一連の投与の一部分として、個々のPV感染宿主に投与する量、すなわち、PV感染の治療に有効である量を意味する。PV感染の予防の関係において本明細書で用語「免疫学的に有効量」を使用することによって、単一の投与において、または一連の投与の一部分として、個々のPV感染宿主に投与する量、すなわち、PV感染または疾患を遅延、阻止、治療または予防するために有効である量を意味する。治療すべき個体の健康および生理的状態、治療すべき個体の分類学的グループ、抗体を合成する個体の免疫系の能力、望まれる保護の程度、免疫原の処方、医学的状況の評価、および他の関係する因子に依存して、有効量は変化する。この量は日常的試験により決定できる比較的広い範囲に入ることが期待される。
【0020】
好ましくは、ポリプロテイン構築物中のアミノ酸配列は、PVの野生型初期ORFタンパク質の配列に実質的に相当し、前記配列はそれらのアレル体または他の変異体を包含する。適当な変異体は野生型配列に対する単一または多数のアミノ酸の置換または付加を有する変異体を包含し、そして変異体が宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すことができるかぎり、野生型アミノ酸配列に対して少なくとも50〜60%、より好ましくは少なくとも70〜80%、最も好ましくは少なくとも90%の類似性を有することができる。アミノ酸配列は、また、野生型初期ORFタンパク質の免疫原性断片、すなわち、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すことができるタンパク質の断片であることができる。適当には、免疫原性断片は特定のタンパク質の少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10の隣接アミノ酸残基を含んでなるであろう。このような免疫原性断片は、また、PV特異的抗体、特にPV感染に関して保護的または治療的作用を有する抗体により認識されることができる。好ましくは、免疫原性断片は野生型アミノ酸配列の非全長断片であり、例えば、全長の野生型アミノ酸配列の少なくとも50%、より好ましくは60〜70%、さらに80〜90%に相当する初期ORFタンパク質の欠失突然変異体を含んでなることができる。
【0021】
本発明のポリプロテイン構築物中のアミノ酸配列は、PVのE1、E2、E3、E4、E5(E5a、E5b)、E6、E7およびE8タンパク質から成る群より選択され、そして構築物において任意の所望の順序で含まれることができる。1例として、構築物は、
(a) E6/E4
(b) E6/E5a/E4
(c) E6/E7/E4
(d) E6/E7/E5a/E4
(e) E6/E7/E1/E4
(f) E6/E7/E5a/E1/E4
(g) E6/E7/E5a/E1/E2/E4
(h) E6/E7/E5a/E5b/E1/E2/E4
(i) E2/E5b
(j) E2/E1/E5b
(k) E2/E5a/E5b
(l) E2/E1/E5a/E5b
(m) E2/E4/E5a/E5b/E6/E7/E1
(n) E2/E3/E4/E5/E8/E6/E7/E1
から成る群より選択されることができる。
【0022】
前述したように、初期ORFタンパク質の少なくとも1つはE6またはE7タンパク質以外の配列である。好ましくは、構築物中の初期ORFタンパク質の1つは E4タンパク質である。
【0023】
本発明のポリプロテイン構築物は、好ましくは少なくとも3、より好ましくは3、4または5つの初期ORFタンパク質配列を含んでなる。さらに、初期ORFタンパク質および/または異なるPV遺伝子型の異なる組み合わせに基づく2またはそれ以上の異なるポリプロテイン構築物を、予防または治療に使用される単一の組成物の中に含めることができる。
【0024】
本発明の構築物において、アミノ酸配列は直接的に融合または連結させることができる。また、アミノ酸配列は別のアミノ酸配列の間において1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5アミノ酸残基のリンカー配列で連結させることができる。一例として、このようなリンカー配列は制限エンドヌクレアーゼ部位を含んでなるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列であることができる。前述のリンカー配列は、また、ポリプロテイン構築物においてアミノ酸配列の前および/または後に存在させることができる。
【0025】
本発明のポリプロテイン構築物は、また、ポリプロテイン構築物の精製を促進するために、融合、またはカップリングした標識タンパク質またはペプチド部分を含んでなることができる。適当な標識部分は、例えば、(His)6 、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)およびFLAG(International Biotechnologies)を包含し、(His)6 標識部分は好ましい。構築物は、ポ リプロテインの免疫原性を増強するための成分をさらに含んでなることができる。この成分はアジュバント、例えば、ジフテリアまたはコレラのトキシンまたは大腸菌(E.coli)非耐熱性トキシン(LT)、またはそれらの非毒性誘導体、例えば、ホロトキソイドまたはコレラトキシンまたはLTのBサブユニットであることができる。さらに、本発明のポリプロテイン構築物は、ISCOMの中への組込みを促進するために、脂質結合領域を含んでなることができる。適当な脂質結合領域は、例えば、オーストラリア国仮特許出願第PN8867/96号明細書(1996年3月25日)に開示されている。好ましい脂質結合領域はインフルエンザヘマグルチニンテイルである。
【0026】
本発明は、また、上記において広く記載したポリプロテイン構築物をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子を提供する。
【0027】
核酸分子は、直鎖状または共有結合で閉じた円形の形の、RNAまたはDNA、一本鎖または二本鎖であることができる。本発明のこの面のヌクレオチド配列は天然源、合成源または半合成源から得ることができることが理解されるであろう;さらに、このヌクレオチド配列は天然に存在する配列であるか、または単一または多数の塩基の置換、欠失、挿入および逆転を包含する突然変異により、このような天然に存在する配列に対して関係づけることができ、ただしこのような配列を含んでなる核酸分子は本明細書において記載するポリプロテイン構築物として発現されることを常に条件とする。
【0028】
ヌクレオチド配列はそれに隣接して位置する発現制御配列を有することができ、このような制御配列は相同的源または異種源から誘導される。
【0029】
核酸分子は「DNAそのまま」として宿主動物に直接的に投与することができる(例えば、Wolfe et al.,1990,Science 247:1465 and Fynan et al.,1933,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:11478)ので、本発明は、また、前述の核酸分子と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる核酸ワクチン組成物を包含する。
【0030】
単離された核酸分子による免疫化により、PVタンパク質がPVによる感染の間に発現される方法に類似する方法において、宿主動物によるコードされたポリプロテイン構築物のin vivoの合成が可能となる。この面において、本発明により、また、宿主動物に免疫学的に有効量の前述の核酸分子を投与することからなる、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出す方法が提供される。また、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すための、このような核酸分子の使用も提供される。
【0031】
本発明は、また、プロモーター配列と、イニシエーター配列とを有する発現制御配列を含んでなり、ポリプロテイン構築物をコードするヌクレオチド配列がプロモーターおよびイニシエーター配列に対して3’側の単一の翻訳フレームの中に位置し、そして終止配列がこのヌクレオチド配列に対して3’側に位置する、組換えDNA分子を提供する。他の面において、本発明は、ポリプロテイン構築物を発現することができるプラスミドのような組換えDNAクローニング体、ならびに組換えDNAクローニング体および/または前述の組換えDNA分子を含有する宿主細胞を提供する。
【0032】
適当な発現制御配列および宿主細胞/クローニング体の組み合わせはこの分野においてよく知られており、そして、例えば、下記の文献に記載されている:Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor, New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press。したがって、ヌクレオチド配列を任意の適当な発現ベクターの中に結合させることができ、この発現ベクターは原核性または真核性発現ベクターであることができる。好ましくは、ベクターは原核性発現ベクター、例えば、pTricHisAまたはpGEX−STOP(GST部分のトランケーションを生ずるように操作されたpGEX発現ベクター(Amrad/Pharmacia Biotech);オーストラリア国仮特許出願第PN8272/86号明細書、1996年2月26日、に開示されている)である。宿主細胞は好ましくは原核細胞、より好ましくは細菌、例えば、大腸菌(E.coli)であるが、宿主細胞は、また、酵母または他の真核細胞、またはバキュロウイルスで感染した昆虫細胞またはその他であることができることが理解されるであろう。
【0033】
いったん本発明のポリプロテイン構築物を発現する組換えDNAクローニング体および/または宿主細胞が同定されると、宿主細胞により合成された発現されたポリペプチド、例えば、融合タンパク質を当業者によく知られている技術により単離して、汚染する宿主細胞の成分を実質的に含まないようにすることができる。
【0034】
個々のタンパク質部分の各々をコードする配列を連結または「融合」することによって、ポリプロテイン構築物をコードするDNA配列は形成される。ポリプロテインDNA構築物中の第一配列は、プロモーター因子と、リボソーム結合部位とを有する。これらの因子は、ポリプロテインDNAのmRNAへの転写が限定された部位において開始すること、そしてmRNAのタンパク質への翻訳に要求されるシグナル、リボソーム結合部位が存在することを保証する。ポリプロテインの合成は、引き続くタンパク質エンコーディング配列から開始または結合のシグナルおよび停止コドンを除去または変更することによって、1つのタンパク質成分から次のタンパク質成分に対して連続的とされる。翻訳を停止させかつポリペプチドを終わらせる停止コドン、通常リボソームのためのシグナルは、変更されないか、または最後のDNA配列から除去されない。個々のタンパク質をコードする配列を結合し、所望のアミノ酸への配列の翻訳のためのmRNAリーディングフレームから適切なフェージングが作られるいったんポリプロテイン構築物をコードするDNA配列または「ポリプロテイン遺伝子」が作られると、構築により安定なポリプロテイン構築物が生産されることを証明する必要がある。生じたタンパク質が、例えば、タンパク質の間の結合部がタンパク質分解的消化に対して攻撃されやすいために、不安定である場合、結合領域は修飾される。これは異なるアミノ酸を結合部にまたはその付近に挿入するか、または個々のタンパク質の間にアミノ酸のスペーサーを構築することによって、実施することができる。ポリプロテインの全体の活性を変更するために、リンカーまたはスペーサーを導入することもできる。個々のタンパク質の間の空間または向きを調節することによって、ポリプロテイン構築物の全体の活性を変更することが可能である。組換えDNA技術による本発明のポリプロテイン構築物の製造のそれ以上の詳述は、例えば、米国特許第4,774,180号明細書(その開示は引用することによって本明細書の一部とされる)に開示されている。
【0035】
好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、個々のPV初期 ORFタンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列を増幅する。増幅されるヌクレオチド配列はその全長であるか、または非全長の断片であることができる。制限エンドヌクレアーゼ部位はPCRに使用されるオリゴヌクレオチドのプライマーの中に組込んで、同一の翻訳フレームにおいて増幅生成物の指向的連結を行い、かつ適当な発現ベクターの中への指向的クローニングを可能とすることができる。プライマーは人工的開始コドンまたは終止コドンをコードすることができる。
【0036】
第一ヌクレオチド配列は開始コドンを有する。この開始コドンは第一配列の通常の野生型開始コドンであるか、またはこの配列の他の選択した位置に人工的に挿入することができる。ポリプロテイン構築物の合成は、開始または結合のシグナルおよび停止コドンを除去または変更することによって、1つのタンパク質成分から次のタンパク質成分に対して連続的とされる。終止コドンは最後のヌクレオチド配列の中に存在しなくてはならない。これは通常最後のヌクレオチド配列の終止コドンを変更または除去することによって実施される。しかしながら、この終止コドンは、当業者に知られている方法により、まず最後のヌクレオチド配列の通常の、野生型終止コドンを除去し、この配列の他の位置において、正しいリーディングフレームで、他の終止コドンを挿入することによって、人工的に挿入することができる。
【0037】
ポリプロテイン構築物をコードするDNA配列をフランキング末端に制限部位を組込んで、適当な発現ベクターの中へのDNA配列の挿入を促進することができる。
【0038】
PVはヒトまたは動物のPVであることができ、好ましくはHPVである。HPVは任意の遺伝子型であることができ、例えば、HPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18、HPV−33、HPV−35、HPV−31およびHPV−45から成る群から選択することができる。好ましくは、HPVはHPV−6またはHPV−11である。
【0039】
本発明は、特に、しかし非独占的に、尖形コンジロームの原因因子であるHPV−6およびHPV−11の初期ORFタンパク質を含んでなるポリプロテイン構築物に関するが、本発明は他のHPVの遺伝子型、特にHPV−16およびHPV−18の遺伝子型、およびHPV−16およびHPV−18に類似する型のオンコジーンの潜在性を有する他の遺伝子型における対応するタンパク質の変異型にも関する。
【0040】
本発明のポリプロテイン構築物は単一のHPV遺伝子型の初期ORFタンパク質を含んでなることができるか、または2以上のHPV遺伝子型からの初期ORFタンパク質を含んでなることができる。さらに、すべての初期ORFタンパク質が1つのポリプロテイン構築物において発現されない場合、または2以上のHPV遺伝子型が望まれる場合において、2以上のポリプロテイン構築物の組み合わせを使用することができる。
【0041】
本発明のポリプロテイン構築物は単離されたタンパク質として提供される、すなわち、それらは他のPVタンパク質を実質的に含有せず、そして人間においてHPVにより引き起こされる生殖器のいぼ、子宮頸癌または他の症状の治療について実用性を特に見出す。ポリプロテイン構築物は、HPVを包含する疾患ならびに前述の他の症状の治療または予防のための医薬組成物の中に含めることができる。
【0042】
本発明のポリプロテイン構築物は、PVによる感染に対する保護を望む被検者において、抗体を発生しおよび/または細胞の免疫応答を誘発するために、すなわち、予防ワクチンとして、使用することができるか、または既に存在するPV感染に対する免疫応答を増強するために、すなわち、治療用ワクチンとして、使用することができる。それらは、また、産生種に注入して抗血清を得ることができる。産生種において得られたポリクローナル抗血清の代わりに、標準的方法を使用するか、またはより最近の改良法により、抗体産生クローンを得るために動物の中に注入するための脾細胞または他の抗体産生細胞を永久分裂能化することによって、モノクローナル抗体を生産することができる。得られたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を、必要に応じて、種々の変異体について修正し、治療剤として使用することもできる。
【0043】
宿主動物、例えば、ヒトに対するポリプロテイン構築物の直接的投与は、PVに対する保護免疫性を付与するか、または被検者が既に感染されている場合、被検者自身の免疫応答を促進してPV誘発疾患の進行をいっそう効果的に防除することができる。
【0044】
本発明のポリプロテイン構築物の予防または治療の投与量は、もちろん、患者の群(年齢、性、およびその他)、治療すべき症状の重症度、および特定のポリプロテイン構築物およびその投与ルートとともに変化するであろう。一般に、使用するための毎週の投与量の範囲は哺乳動物の体重の1kg当たり約0.1〜約5μgの範囲内である。
【0045】
任意の適当な投与ルートを使用して、哺乳動物、特にヒトに、有効投与量の本発明のポリプロテイン構築物を提供することができる。例えば、経口、経直腸、経膣、局所、眼、経鼻、舌下、経頬、静脈内およびその他の投与を使用することができる。投与形態は、錠剤、トローチ剤、分散液、懸濁液、溶液、カプセル剤、クリーム、軟膏、坐剤、エアロゾルおよびその他を包含する。前記投与形態は、また、遅延放出の目的に特別にデザインされた注入または移植された遅延放出性装置またはこの方式で追加的に作用するように改変された移植の他の形態を包含する。
【0046】
ポリプロテイン構築物をワクチンとして投与する場合、ポリプロテイン構築物は保護すべき被検体への慣用のこのような投与法に従い処方される。ポリプロテイン構築物は本発明に従いISCOMSTM(免疫刺激複合体)、リポソームで供給するか、またはまたは化合物、例えば、アクリレートまたはポリ(DL−ラクチド−コ−グリコシド)の中にカプセル化して微小球を形成することができる。ポリプロテイン構築物は、また、油性乳濁液の中に混入し、経口的に投与することができる。
【0047】
他のアジュバント、ならびに慣用の薬学上許容される担体、賦形剤、緩衝剤または希釈剤を本発明のワクチン組成物の中に含めることもできる。一般に、本発明によるワクチン組成物は免疫学的に有効量のポリプロテイン構築物と、必要に応じてアジュバントと、1または2以上の慣用の薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなるであろう。アジュバントの広範であるが、非限定的リストは、下記の文献の中に見出すことができる:Coulter and Cox、″Advances in Adjuvant Technology and Application″、in Animal Parasite Control Utilizing Biotechnology、Chapter 4、edited by Young,W.K.、CRC Press、1992。 本明細書おいて使用するとき、「薬学上許容される担体および/または希釈剤」は、任意およびすべての溶媒、分散媒質、水溶液、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤およびその他を包含する。薬学上活性な物質のためのこのような媒質および物質の使用はこの分野においてよく知られており、そして、例えば、下記の文献に記載されている:Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Edition、Mace Publshing Company、Pennsylvania、U.S.A. 。
【0048】
実際の使用において、本発明のポリプロテイン構築物は、活性成分として、薬学上の担体と慣用の薬学上の配合技術に従い均質混合して組合わせることができる。担体は投与、例えば、経口または非経口(静脈内または動脈内を包含する)のために望む調製物の形態に依存して広範な種類の形態を取ることができる。経口投与の形態の組成物の調製において、任意の通常の薬学上の媒質、例えば、経口液状調製物、例えば、懸濁液、エリキシル剤および溶液の場合において、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤およびその他;または経口固体状調製物、例えば、粉剤、カプセル剤および錠剤の場合において、担体、例えば、澱粉、微結晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、滑剤、崩壊剤およびその他を使用することができる。投与が容易であるために、錠剤およびカプセル剤は最も好都合な経口投与単位形態を表し、この場合において薬学上の固体状担体が明らかなように使用される。所望ならば、錠剤を標準的技術により糖コーティングするか、または腸溶皮コーティングすることができる。
【0049】
前述の普通の投与形態に加えて、本発明のポリプロテイン構築物は、また、調節放出手段および/または送達装置、例えば、国際特許明細書第PCT/AU93/00677号明細書(公開第WO94/15636号)に開示されている調節放出調製物により投与することができる。
【0050】
経口または非経口投与に適当な本発明の医薬組成物は、離散した単位として、例えば、各々が前もって決定した量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤として、粉剤または顆粒として、または水性液体、非水性液体中の溶液または懸濁液、水中油乳濁液または油中水乳濁液として提供することができる。このような組成物は薬学的方法により調製することができるが、すべての方法は1または2以上の必要な成分を構成する担体と活性成分を組合わせる工程を包含する。一般に、組成物は活性成分を液状担体または微細な固体状担体または双方と均一かつ均質に混合し、次いで、必要に応じて、生成物を所望の形態に成形することによって調製される。
【0051】
本発明の他の特徴を下記の実施例において詳細に説明する。しかしながら、この詳細な説明は本発明を例示するためのものであり、本発明の説明を限定するものと解釈すべきでないことを理解すべきである。
【実施例】
【0052】
実施例1 HPV6bの初期オープンリーディングフレーム(ORF)の増幅およびクローニング
pBR322中のHPV6bの全体のゲノムを含有するクローン(de Villiers,1981,J.Virol.40:932)を、E6、E7、 E5a、E5b、E1、E2および E4のオープンリーディングフレーム(ORF)配列の別のPCR増幅のための鋳型として使用した。
【0053】
適当な制限酵素認識配列を増幅に使用するオリゴヌクレオチド(表1;1〜7)の中に含めて、これらの増幅された初期遺伝子配列を第1A図に描写されている「ポリプロテイン」配列に順次に構築した。
【0054】
このスキームにおいて、5’末端にSmaI部位および3’末端にHindIII、NcoIおよびXhoI部位を含有するオリゴヌクレオチドを使用して、E6を増幅した。また、5’にXbaI、SacI、KpnIおよびSpeI部位および3’にBglIIを含有するオリゴヌクレオチドを使用して、E4を増幅した。
【0055】
EcoRV/EcoRI断片を除去することによってpGEM3Zf(Promega Corporation)ポリリンカー−HindII〜EcoRIの一部分を含有するように修飾されたベクターpSP70(Promega Corporation)中で、これらの増幅された断片をSmaI/XbaI(E6)およびXbaI/BglII(E4)(第1B図)としてクローニングした。その上、SmaI/XhoIで切断することによって、SmaI部位から上流の不必要な部位を除去し、そしてSmaI/SalI/XhoIリンカーを挿入して、ベクターpSP70(MOD)をつくった。
【0056】
SmaI/BglIIで切断することによって、E6/E4カセットを除去することができ、次いでこれを発現のためにpGEX−STOPベクターの中にクローニングした。このベクターは精製の目的でC−末端の6ヒスチジン配列と非融合タンパク質を産生する。
【0057】
導入された制限酵素認識配列を使用して、pSP70(MOD)中にクローニングされたE6/E4カセットの中に他の初期ORF配列を組込ませ、次いで新しくつくられたカセットをSmaI/BglII断片としてpGEX−STOPの中にクローニングした。
【0058】
この方法において、E6/E5a/E4、E6/E7/E4、E6/E7/ E5a/E4、E6/E7/E1/E4およびE6/E7/E5a/E1/E4を含有するポリプロテイン構築物を構築した。最初の3つの構築物についての完全なDNA配列のデータは含まれており、そしてE1の結合部を横切る配列のデータは後者の2つについて含まれている。SpeI部位を明らかにしたDNA配列を単一塩基の変化により不活性化させた。これはオリゴヌクレオチドの合成、PCRまたはクローニングの間に実施した。
【0059】
さらに、まずテトラマーE6/E7/E5a/E4をSmaI/BglII断片としてベクターpRIT2T(AMRAD Pharmacia Biotech)のSmaI/BamHI部位の中にサブクローニングすることによって、E6/E7/E5a/E4の四融合構築物を発現のためにpET23b(Novagen)の中にクローニングした。次いでテトラマーをSmaIおよびSalIで消化して除去し、ベクターpET23bのHincII/XhoI部位の中にクローニングした。
【0060】
5’末端にSmaI部位および3’末端にXbaI、NcoI、KpnIおよびSacI部位を含有するオリゴヌクレオチド(表1;8)を使用してE2を増幅することによって、そして5’にXhoI部位および3’にXbaI、BglII部位を有するオリゴヌクレオチド(表1;9)を使用して増幅されたE5bを使用して、E2およびE5bを含有するが、E1およびE5aの付加を許容できる他の構築物をつくった。次いで、これらの増幅された断片を第1C図に示すようにpSP70(MOD)の中にクローニングした。
【表1】
【0061】
実施例2 異なるポリプロテイン構築物の発現
pGEX−STOP中の下記の構築物を大腸菌(E.coli)BL21株中で発現させ、そしてタンパク質の産生をPAGEおよび引き続くウェスタンブロッティングによりアッセイした:
i) E6/E4
ii) E6/E5a/E4
iii) E6/E7/E4
iv) E6/E7/E5a/E4
大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysS株およびAD494(DE3)pLysS株(Novagen)において発現されたpET23b中の構築物(iv)を、また、ウェスタンブロッティングにより、また、後者の株についてクーマッシーブルー染色により、タンパク質の産生についてアッセイした。
【0062】
200mlの培養物を、テリフィック(Terrific)ブロス(Tartoff and Hobbs,Focus,9:12,1987)中で、100μg/mlのアンピシリン(BL2 1)および34μg/mlのクロラムフェニコール[BL21(DE3)pLysS]および15μg/mlのカナマイシン[AD494(DE3)pLysS]の存在において増殖させた。OD600 約1において、IPTGを0.5mMに添加することによって、タンパク質の発現を誘発させた。誘発後、試料を1、2、3、4および5時間に採取し、一晩培養した後に採取した。
【0063】
第2図はE6/E4構築物についてのウェスタンブロットの結果を示す。これをポリクローナルウサギ抗E4抗体(MWE4 − オボアルブミンに結合したペプチドLGNEHEESNSPLATPCVWPTに対して発生させた)でプローブした。約30kDaの免疫反応性バンドは4時間の誘発の試料(レーン2および4、矢印)において存在し、これは未誘発の試料(レーン3)において存在しなかった。
【0064】
同一の約30kDaのバンドは、また、第3図、レーン3、矢印(レーン2−非誘発)における誘発された試料において見ることができるが、約40kDaのE6/E5a/E4トリマー構築物は同一抗E4抗体を使用して4時間の誘発期間後(レーン5、矢印;非誘発の試料−レーン4)に低度に発現された。
【0065】
しかしながら、対照的に、E6/E7/E4のトリマー構築物(約41kDa)は、抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体(Dianova)を使用して5時間の誘発後に容易に検出することができた[第4図、レーン4、矢印;非誘発の試料−レーン3]。
【0066】
同一トリマー構築物は、再び、抗E4抗体MWE4を使用して5時間の誘発後に容易に可視化され(第5図、レーンTRI、矢印;対照試料−レーンC)そしてE6/E7/E5b/E4のテトラマー構築物(約51kDa)も検出することができた(レーンTET、矢印)。このバンドは弱いが、かなりの量の高分子量物質も免疫反応性であり、テトラマーが合理的によく発現されるが、多分凝集する傾向があることを示すことに注目しなくてはならない。
【0067】
第6図は、抗E6抗体(後述するように調製した)が5時間の誘発後にE6/E7/E4(レーンRT、矢印)を検出できるが、E6/E7/E5a/E4(レーンTET;レーンC−非誘発)を検出できなかったことを示す。しかしながら、抗E7抗体(後述するように調製した)は5時間の誘発後にトリマー(第7図、レーンTRI、矢印;レーンC−非誘発)およびテトラマー(レーンTET、矢印;レーンC−非誘発)の双方を検出することができた。後者は再び凝集の指示を示す。E4ペプチドに対して発生させたモノクローナル抗体は、また、トリマーを認識した。
【0068】
E6/E7/E5a/E4テトラマーをBL21(DE3)pLysSにおいてpET23bプラスミド中で発現させたとき、凝集の現象は非常に明らかであった(第8図−MWE4でプローブしたウェスタンブロット)。レーン2〜5は1時間、2時間、3時間および一晩の非誘発の試料であり、そしてレーン6〜9は1時間、2時間、3時間および一晩の誘発の試料である。1時間の誘発後、E6/E7/E5a/E4のバンドが明瞭に見ることができる(矢印)が、誘発時間を増加すると、これは減少するように見え、凝集した形態が増加する。対照的に、AD494(DE3)pLysS株を使用してテトラマーを発現させたとき、2時間の誘発後に不溶性画分のウェスタンブロット(第9図、矢印)上の約50kDaにおいて、実質的なシグナルが得られ、これは3時間においても持続した。この免疫反応性バンドは対照試料において存在せず、そして可溶性画分からの試料においてタンパク質は検出されなかった。
【0069】
第10図は同一ゲルのクマジー染色したプロフィルを示し、2および3時間の誘発後に存在する免疫反応性バンド(第9図)が染色されたバンドとして明瞭に可視化されるうることを示し、これらのバンドは対照試料において存在しない。
【0070】
実施例3 ポリプロテイン構築物のDNA配列決定
オーバーラップする配列情報を発生させたプライマーを使用してジデオキシ法により、ポリプロテイン構築物を両方向において配列決定した。T7SequencingTMKit(Pharmacia)を使用して、35S標識化鎖末端の断片を発生させ、これらの断片はSequi−GenTM(Biorad)電気泳動ゲル装置で分析した。E6/E5a/E4(CSL690.SEQ)、E6/E7/E4(CSL760.SEQ)およびE6/E7/E5a/E4(CSL673.SEQ)についてのDNAおよび対応するアミノ酸配列を下記に示す。(それぞれ、配列番号19および20、21および22、および23および24)。
【0071】
それぞれ、E6/E7/E4およびE6/E7/E5a/E4からつくられた構築物E6/E7/E1/E4(CSL791)およびE6/E7/E5a/ E1/E4(CSL762)について、E1とその付近のものとの結合部を横切るDNA配列を下記に示す。(それぞれ、配列番号25および26、27および28、および29および30)。
【表2−1】
【表2−2】
【表2−3】
【表2−4】
【表2−5】
【表2−6】
【表2−7】
【表2−8】
【0072】
実施例4 HPV6b初期ORFタンパク質の産物に対する抗体の調製
関係するEタンパク質の配列の一部分に相当する下記のペプチドを合成し、ジフテリアトキソイドに結合した:
E6 ジフテリアトキソイド−C−QYRHFDYAQYATTVEEETKQDILD
E7 MHGRHVTLKDIVLDLQPPD−C−ジフテリアトキソイド
E6ペプチドについて、2匹のウサギ(前もって採血した後)の各々にフロインド完全アジュバント中のほぼ54μgのペプチド/104μgのジフテリアトキソイドを接種し、次いで3週の間隔でフロインド完全アジュバント中の同一投与量のペプチド複合体を接種した。第2投与後1週に採血し、第3投与後1週に採血した。45μgのペプチド/103μgのジフテリアトキソイドを使用して、E7ペプチドについて同一の養生法を使用した。
【0073】
ストレプアビジンでコーティングされたプレートに結合させたビオチン結合ペプチドに対して、固相E1Aにおいて、採血から誘導された血清を特異的抗体について試験した。
【0074】
実施例5 ポリプロテインE6/E7/E4の精製
OD600 約1において0.4mMのIPTGを使用して細胞の誘発により、トリマーのポリプロテインE6/E7/E4を大腸菌(E.coli)BL21中で発現させた。細胞を遠心(4,000g、20分)により収獲し、30mMのTris pH8.0の中に再懸濁させ、超音波処理(MSE、振幅18μm、4×30秒)により崩壊させ、そして封入体を遠心(12,000g、30分)により沈降させた。トリマーを含有するペレットを8Mの尿素、30mMのTris pH8.0中で16時間プロテアーゼインヒビター(Boehringer カタログNo.1697498)の存在において可溶化し、次いで12,000gにおいて30分間遠心し、上清を集めた。これに、トリス−(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)[Pierce]を1.2mMの最終濃度に添加した。上清をQ−セファローズHP(Pharmacia)に適用し、カラムを1カラム体積の8Mの尿素、1.2mMのTCEP、30mMのTris pH8.0で洗浄した。次いで、10カラム体積の洗浄緩衝液中の0〜1MのNaClを含有する勾配を使用して画分を溶離した。得られた画分を4〜20%のSDS−PAGEのウェスタンブロットにより検査し、抗E4抗体MWE4でプローブした。
【0075】
第11図はQセファローズから得られた物質のウェスタンブロットを示す。約41kDaの免疫反応性バンドは、尿素可溶化レーン3からの上清物質において、および120〜150mMのNaClに相当する画分(レーン8および9、矢印)において明らかである。
【0076】
C−末端の5ヒスチジン配列を利用するために、キレーティング・セファローズ・ファスト・フロー(Chelating Sepharose Fast Flow)(Pharmacia)を含有するカラムに、尿素可溶化からの上清を適用した。記載する条件下に、ニッケルカラムに対するトリマーの比較的低い結合が観察された。トリマーは0〜500mMのイミダゾール勾配を使用してカラムから溶離された。
【0077】
実施例6
本発明の更なる実施例において、ORFの順序がE2、E4、E5a、 E5b、E6、E7およびE1である、HPV−6初期ORFタンパク質をコードするDNA断片の融合により、単一のポリプロテインをコードするDNA配列(第12図)を形成する。
【0078】
表2に記載するプライマーを使用してHPV−6ゲノムDNAを用いるPCRにより、初期ORFタンパク質をコードするDNA配列を個々に増幅する。
【表3】
【0079】
増幅産物の5’および3’末端に人工的制限酵素部位を組込むために、プライマーを合成する。これらの制限酵素部位を使用して、所望の順序および正しい翻訳フレームにおいて、適当な初期ORFタンパク質をコードするPCR生成物の融合を促進する。また、制限酵素部位を使用して、発現ベクターpTrcHisAの中へのPCR生成物のクローニングを促進する。このベクターの中へクローニングするとき、ポリプロテイン構築物はN−末端のhxaHis融合物として発現される。この融合のヌクレオチド配列および推定されたアミノ酸配列を下記に示す(それぞれ、配列番号45および46)。
【0080】
(His)6 −ポリプロテイン融合配列
配列の長さ:4770
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジオー:直鎖状
配列の種類:Genomic DNA
ハイポセティカル:NO
アンチセンス:NO
起源
生物名:ヒトパピローマウイルス タイプ6
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【表4−5】
【表4−6】
【表4−7】
【0081】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 直接的にまたは間接的に融合された少なくとも2つのアミノ酸配列を含んでなり、前記配列の各々がパピローマウイルス(PV)の初期ORFタンパク質の配列またはその免疫原性変異体または断片であり、そして前記配列の少なくとも1つがE6またはE7タンパク質またはその免疫原性変異体または断片以外の配列である、ポリプロテイン構築物。
(2) 前記配列がヒトPVの初期ORFタンパク質の配列、またはその免疫原性変異体または断片である、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(3) 前記初期ORFタンパク質がPVのE1、E2、E3、E4、E5(E5a、E5b)、E6、E7およびE8タンパク質から成る群から選択される、(2)に記載のポリプロテイン構築物。
(4) (a) E6/E4
(b) E6/E5a/E4
(c) E6/E7/E4
(d) E6/E7/E5a/E4
(e) E6/E7/E1/E4
(f) E6/E7/E5a/E1/E4
(g) E6/E7/E5a/E1/E2/E4
(h) E6/E7/E5a/E5b/E1/E2/E4
(i) E2/E5b
(j) E2/E1/E5b
(k) E2/E5a/E5b
(l) E2/E1/E5a/E5b
(m) E2/E4/E5a/E5b/E6/E7/E1
(n) E2/E3/E4/E5/E8/E6/E7/E1
から成る群より選択される、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物。
(5) 前記アミノ酸配列の間および/または前および/または後に1または2以上のリンカー配列をさらに含んでなる、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(6) 前記一以上のリンカー配列が1〜5アミノ酸残基を含んでなる、(5)に記載のポリプロテイン構築物。
(7) 融合、またはカップリングされた標識タンパク質またはペプチドの部分をさらに含んでなる、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(8) 前記標識部分が(his)6 、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)およびFLAGから成る群より選択される、(7)に記載のポリプロテイン構築物。
(9) 融合、またはカップリングされたアジュバント部分をさらに含んでなる、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(10) 前記アジュバント部分がジフテリアトキシン、コレラトキシンおよび大腸菌(E.coli)非耐熱性トキシン(LT)およびそれらの非毒性誘導体、例えば、ホロトキソイドまたはコレラトキシンまたはLTのBサブユニットから選択される、(9)に記載のポリプロテイン構築物。
(11) 脂質結合領域をさらに含んでなる、(1)に記載のポリプロテイン構築物。
(12) 前記脂質結合領域がインフルエンザヘマグルチニンテイルである、(11)に記載のポリプロテイン構築物。
(13) 免疫学的に有効量の(1)〜(12)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる、宿主動物においてパピローマウイルスに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す組成物。
(14) アジュバントをさらに含んでなる、(13)に記載のワクチン組成物。
(15) 宿主動物に免疫学的に有効な量の(1)〜(12)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物を投与することからなる、宿主動物においてパピローマウイルスに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す方法。
(16) 前記ポリプロテイン構築物を薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる組成物とともに投与する、(15)に記載の方法。
(17) 前記組成物がアジュバントをさらに含んでなる、(16)に記載の方法。
(18) 前記宿主動物がヒトである、(15)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19) 宿主動物においてパピローマウイルスに対する免疫応答を引き出すための、(1)〜(12)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物の使用。
(20) (1)〜(12)のいずれかに記載のポリプロテイン構築物をコードする核酸分子。
(21) (20)に記載の核酸分子に作用可能に連鎖された発現制御配列を含んでなる組換えDNA分子。
(22) 前記発現制御配列がプロモーター配列と、イニシエーター配列とを含んでなり、前記ポリプロテイン構築物をコードするヌクレオチド配列が前記プロモーターおよびイニシエーター配列に対して3’側の単一の翻訳フレームの中に位置し、そして終止配列が前記ヌクレオチド配列に対して3’側に位置する、(21)に記載の組換えDNA分子。
(23) (21)または(22)に記載の組換えDNA分子を含んでなる組換えDNAクローニング体またはベクター。
(24) 前記ベクターがプラスミドである、(23)に記載の組換えDNAクローニング体またはベクター。
(25) (21)または(22)に記載の組換えDNA分子、または(23)または(24)に記載の組換えDNAクローニング体またはベクターでトランスフェクションまたは形質転換された宿主細胞。
(26) 前記宿主細胞が大腸菌(E.coli)である、(25)に記載の宿主細胞。
(27) (25)または(26)に記載の宿主細胞における発現により製造された組換えポリプロテイン構築物。
(28) (20)に記載の核酸分子と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる組成物。
(29) 宿主動物に免疫学的に有効な量の(20)に記載の核酸分子を投与することからなる、宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出す方法。
(30) 宿主動物においてPVに対する免疫応答を引き出すための、(20)に記載の核酸分子の使用。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ポリプロテイン配列およびその断片を示した図である。
【図2】E6/E4構築物についてのウェスタンブロットの結果を示した図である。
【図3】抗E4抗体を使用したE6/E5a/E4のトリマー構築物の発現を示した図である。
【図4】抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体を使用したE6/E7/E4のトリマー構築物の検出を示した図である。
【図5】抗E4抗体MWE4を使用した構築物の検出を示した図である。
【図6】抗E6抗体を使用した構築物の検出を示した図である。
【図7】抗E7抗体を使用した構築物の検出を示した図である。
【図8】MWE4でプローブしたウェスタンブロットの結果を示した図である。
【図9】不溶性画分のウェスタンブロットの結果を示した図である。
【図10】同一ゲルのクマジー染色したプロフィルを示した図である。
【図11】Qセファローズから得られた物質のウェスタンブロットを示した図である。
【図12】単一のポリプロテインをコードするDNA配列を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接的にまたは間接的に融合された少なくとも2つのアミノ酸配列を含んでなるポリプロテイン構築物であって、前記配列の各々がパピローマウイルス(PV)の初期ORFタンパク質の配列またはその免疫原性変異体または断片であり、そして前記配列の少なくとも1つがE6またはE7タンパク質またはその免疫原性変異体または断片以外の配列である、ポリプロテイン構築物。
【請求項2】
前記配列がヒトPVの初期ORFタンパク質の配列、またはその免疫原性変異体または断片である、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項3】
前記初期ORFタンパク質がPVのE1、E2、E3、E4、E5(E5a、E5b)、E6、E7およびE8タンパク質から成る群から選択される、請求項2に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項4】
(a) E6/E4
(b) E6/E5a/E4
(c) E6/E7/E4
(d) E6/E7/E5a/E4
(e) E6/E7/E1/E4
(f) E6/E7/E5a/E1/E4
(g) E6/E7/E5a/E1/E2/E4
(h) E6/E7/E5a/E5b/E1/E2/E4
(i) E2/E5b
(j) E2/E1/E5b
(k) E2/E5a/E5b
(l) E2/E1/E5a/E5b
(m) E2/E4/E5a/E5b/E6/E7/E1
(n) E2/E3/E4/E5/E8/E6/E7/E1
から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項5】
前記アミノ酸配列の間および/または前および/または後に1または2以上のリンカー配列をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項6】
前記一以上のリンカー配列が1〜5アミノ酸残基を含んでなる、請求項5に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項7】
融合、またはカップリングされた標識タンパク質またはペプチドの部分をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項8】
前記標識部分が(his)6 、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)およびFLAGから成る群より選択される、請求項7に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項9】
融合、またはカップリングされたアジュバント部分をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項10】
前記アジュバント部分がジフテリアトキシン、コレラトキシンおよび大腸菌(E.coli)非耐熱性トキシン(LT)およびそれらの非毒性誘導体、例えば、ホロトキソイドまたはコレラトキシンまたはLTのBサブユニットから選択される、請求項9に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項11】
脂質結合領域をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項12】
前記脂質結合領域がインフルエンザヘマグルチニンテイルである、請求項11に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項13】
免疫学的に有効量の請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリプロテイン構築物を含んでなる、宿主動物においてパピローマウイルスに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す組成物。
【請求項14】
薬学上許容される担体および/または希釈剤をさらに含んでなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
アジュバントをさらに含んでなる、請求項13または14に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリプロテイン構築物をコードする核酸分子。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸分子に作用可能に連鎖された発現制御配列を含んでなる組換えDNA分子。
【請求項18】
前記発現制御配列がプロモーター配列と、イニシエーター配列とを含んでなり、前記ポリプロテイン構築物をコードするヌクレオチド配列が前記プロモーターおよびイニシエーター配列に対して3’側の単一の翻訳フレームの中に位置し、そして終止配列が前記ヌクレオチド配列に対して3’側に位置する、請求項17に記載の組換えDNA分子。
【請求項19】
請求項17または18に記載の組換えDNA分子を含んでなる組換えDNAクローニング体またはベクター。
【請求項20】
前記ベクターがプラスミドである、請求項19に記載の組換えDNAクローニング体またはベクター。
【請求項21】
請求項17または18に記載の組換えDNA分子、または請求項19または20に記載の組換えDNAクローニング体またはベクターでトランスフェクションまたは形質転換された宿主細胞。
【請求項22】
前記宿主細胞が大腸菌(E.coli)である、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
請求項21または22に記載の宿主細胞における発現により製造された組換えポリプロテイン構築物。
【請求項24】
請求項16に記載の核酸分子と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる組成物。
【請求項1】
直接的にまたは間接的に融合された少なくとも2つのアミノ酸配列を含んでなるポリプロテイン構築物であって、前記配列の各々がパピローマウイルス(PV)の初期ORFタンパク質の配列またはその免疫原性変異体または断片であり、そして前記配列の少なくとも1つがE6またはE7タンパク質またはその免疫原性変異体または断片以外の配列である、ポリプロテイン構築物。
【請求項2】
前記配列がヒトPVの初期ORFタンパク質の配列、またはその免疫原性変異体または断片である、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項3】
前記初期ORFタンパク質がPVのE1、E2、E3、E4、E5(E5a、E5b)、E6、E7およびE8タンパク質から成る群から選択される、請求項2に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項4】
(a) E6/E4
(b) E6/E5a/E4
(c) E6/E7/E4
(d) E6/E7/E5a/E4
(e) E6/E7/E1/E4
(f) E6/E7/E5a/E1/E4
(g) E6/E7/E5a/E1/E2/E4
(h) E6/E7/E5a/E5b/E1/E2/E4
(i) E2/E5b
(j) E2/E1/E5b
(k) E2/E5a/E5b
(l) E2/E1/E5a/E5b
(m) E2/E4/E5a/E5b/E6/E7/E1
(n) E2/E3/E4/E5/E8/E6/E7/E1
から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項5】
前記アミノ酸配列の間および/または前および/または後に1または2以上のリンカー配列をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項6】
前記一以上のリンカー配列が1〜5アミノ酸残基を含んでなる、請求項5に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項7】
融合、またはカップリングされた標識タンパク質またはペプチドの部分をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項8】
前記標識部分が(his)6 、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)およびFLAGから成る群より選択される、請求項7に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項9】
融合、またはカップリングされたアジュバント部分をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項10】
前記アジュバント部分がジフテリアトキシン、コレラトキシンおよび大腸菌(E.coli)非耐熱性トキシン(LT)およびそれらの非毒性誘導体、例えば、ホロトキソイドまたはコレラトキシンまたはLTのBサブユニットから選択される、請求項9に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項11】
脂質結合領域をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項12】
前記脂質結合領域がインフルエンザヘマグルチニンテイルである、請求項11に記載のポリプロテイン構築物。
【請求項13】
免疫学的に有効量の請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリプロテイン構築物を含んでなる、宿主動物においてパピローマウイルスに対する体液性および/または細胞性免疫応答を引き出す組成物。
【請求項14】
薬学上許容される担体および/または希釈剤をさらに含んでなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
アジュバントをさらに含んでなる、請求項13または14に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリプロテイン構築物をコードする核酸分子。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸分子に作用可能に連鎖された発現制御配列を含んでなる組換えDNA分子。
【請求項18】
前記発現制御配列がプロモーター配列と、イニシエーター配列とを含んでなり、前記ポリプロテイン構築物をコードするヌクレオチド配列が前記プロモーターおよびイニシエーター配列に対して3’側の単一の翻訳フレームの中に位置し、そして終止配列が前記ヌクレオチド配列に対して3’側に位置する、請求項17に記載の組換えDNA分子。
【請求項19】
請求項17または18に記載の組換えDNA分子を含んでなる組換えDNAクローニング体またはベクター。
【請求項20】
前記ベクターがプラスミドである、請求項19に記載の組換えDNAクローニング体またはベクター。
【請求項21】
請求項17または18に記載の組換えDNA分子、または請求項19または20に記載の組換えDNAクローニング体またはベクターでトランスフェクションまたは形質転換された宿主細胞。
【請求項22】
前記宿主細胞が大腸菌(E.coli)である、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
請求項21または22に記載の宿主細胞における発現により製造された組換えポリプロテイン構築物。
【請求項24】
請求項16に記載の核酸分子と、薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含んでなる組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−54074(P2007−54074A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285406(P2006−285406)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【分割の表示】特願平9−507011の分割
【原出願日】平成8年7月26日(1996.7.26)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【出願人】(500020760)ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【分割の表示】特願平9−507011の分割
【原出願日】平成8年7月26日(1996.7.26)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【出願人】(500020760)ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド (20)
【Fターム(参考)】
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