説明

パラ−キノイド系結合の一部を形成するペリレン核のオキソ基を含むペリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾールのスルホ誘導体、それを含むリオトロピック液晶系および異方性フィルム、ならびにその製造方法

ペリレン核についたオキソ基を含むペリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾール(PTCA DBI)のスルホ誘導体をベースとする異方性フィルム。該オキソ基は、ペリレン核の部分とともに、キノイド系の結合を形成する。該オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、すぐれた光学特性を有する液晶系を形成する。該液晶系は、種々の基板に塗布することができ、それにより、光学的に等方性または異方性で少なくとも部分的に結晶性のフィルムを得ることができる。該フィルムは種々の分野に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
仮出願ではない本特許出願は、35U.S.C.§119(e)の下、米国仮特許出願第60/482,779号(2003年6月25日出願、名称:パラ−キノイド系結合に関与するペリレン核のオキソ基を含むペリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾールのスルホ誘導体をベースとするリオトロピック液晶系、それに関連する異方性フィルム、および製造方法)(その開示内容は、この引用によりそっくり本明細書に記載されたものとする)の利益を主張するものである。
【0003】
発明の背景
【0004】
(1)発明の分野
【0005】
本発明は、総じて、有機化学および光学異方性コーティングの分野に関する。より具体的に、本発明は、複素環式スルホ誘導体化合物の合成に関し、また、そのような化合物をベースとする光学異方性コーティングの製造に関する。
【背景技術】
【0006】
関連技術の説明
【0007】
現代技術の発達には、特定の制御可能な特性を有する新たな材料に基づく光学素子を開発することが必要である。特に、現代の映像表示装置システムに必要な要素の一つは、特定の装置のため光学特性と他の特性の最適な組み合わせを有する光学異方性フィルムである。
【0008】
種々のポリマー材料が、光学異方性フィルムの製造用として従来技術において知られている。そのようなポリマー材料をベースとするフィルムは、一軸延伸および有機色素またはヨウ素による修飾によって異方性の光学特性を獲得する。多くの用途において、ベースポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)である。そのようなフィルムは、モノグラフであるLiquid Crystals: Applications and Uses, B. Bahadur編, World Sientific, Singapore-New York (1990), Vol. 1, p. 101に、非常に詳細に記載されている。しかし、PVA系フィルムの低い熱安定性のため、その利用は限られている。新規な材料を見出し、そして、特性が改善された光学異方性フィルムの合成、特に、より高い耐熱性、より便利な合成、およびより良い膜形成特性を有する光学異方性フィルムの合成のための方法を開発することが望まれる。
【0009】
有機二色性色素は、すぐれた光学特性および動作特性を有する光学異方性フィルムの製造において、重宝されている新しい種類の材料である。その化合物をベースとするフィルムは、色素分子からなる超分子を含む液晶(LC)の色素水溶液の層を基板表面に塗布し、次いで水を蒸発させることにより得られる。得られたLCフィルムは、米国特許第2,553,961号に記載されるように、下地となる基板表面を予め機械的に配向させることにより、あるいは、米国特許第5,739,296号および第6,174,394号に記載されるように、その後、外部から機械的配向力、電気的配向力、磁気的配向力、または他の配向力を基板上の該LCコーティングにかけることにより異方性の特性を獲得する。LC色素溶液の基本的な性質は先行技術において知られている。しかし、その応用および関連する系の特性についての広範囲な研究は、ここ十年でより最近進展してきたものである。最近の研究は、液晶表示装置(LCD)およびグレージングにおける工業的利用によって大きく刺激されてきた。色素超分子は、リオトロピック液晶(LLC)相を形成する。この相において、色素分子は、柱(カラム)の形状を有する超分子複合体(中間相(メソ相)の構造単位)を生成させる。柱状構造における色素分子の高度な秩序によって、そのような中間相を、強い二色性を特徴とする配向フィルムを得るのに使用することが可能になる。
【0010】
超分子LC中間相を形成する色素分子のもう一つの特徴は、それらの色素を水溶性にしている周辺基が存在することである。有機色素の中間相は、特定の構造、状態図(相図)、光学特性、および溶解性によって特徴づけられる(J. Lydon, Chromonics, Handbook of Liquid Crystals (Wiley-VCH, Weinheim, 1998), Vol. 2B, pp. 981-1007参照)。
【0011】
LLC系を形成することができる二色性色素を用いることにより、高度な光学異方性を有するフィルムを得ることができる。そのようなフィルムは、E型偏光子の性質(これは、超分子複合体の光学吸収特性に関係している)を示し、そして、吸収がわずかであるスペクトル領域において位相差板(位相シフトデバイス)として働く。これらの異方性フィルムの位相遅延特性は、その複屈折性(複屈折)、すなわち、LLC溶液を基板に塗布した方向において測定した屈折率とそれに垂直な方向において測定した屈折率が異なることによるものである。強い(耐光性の)色素分子をベースとするLLC系から形成されるフィルムは、高い熱安定性および耐光性を特徴とする。
【0012】
LLC系の上記特性のため、それらの材料への関心は高まっている。そのような有機色素をベースとするフィルムを得るため、新しい方法が多く開発され、フィルム付与条件の最適化と新規LLC系の探索の両方が進められている。特に、光学異方性フィルムを合成するための新しいLLC組成物は、フィルムの特性を向上させるため、既知の色素に、改質剤、安定剤、界面活性剤、およびその他の添加物を導入することによって得ることができる(例えば、米国特許第5,739,296号および第6,174,394号参照)。
【0013】
近年、高い光学異方性を有し、種々の波長領域における選択性が向上していることを特徴とするフィルムの必要性が高まっている。赤外(IR)領域から紫外(UV)領域までの広いスペクトル領域において可能な複数の異なる位置で吸収極大を有するフィルムが、必要とされている。そのため、必要な特性を有するLLC相およびフィルムを形成することができる多くの種類の化合物が開発されてきた。しかし、安定なリオトロピック中間相を形成することが知られている色素の数は、依然として相対的に少ない。かくして、新規の液晶色素は、それぞれ徹底的な研究の対象となる。
【0014】
安定なLLC相を形成することができ、光学異方性フィルムの製造に利用できる水溶性の二色性色素のなかで、重要な位置を占めているものに、米国特許第5,739,296号および第6,174,394号に記載されるペリレンテトラカルボン酸(PTCA)ジベンゾイミダゾール(DBI)を含む種々の有機色素のジスルホ誘導体がある。PTCAジベンゾイミダゾール類およびジイミド類は、それらの化合物の高い化学的安定性、熱的安定性および光化学的安定性のため、種々の産業において染料および顔料として広く用いられる。また、これらの特性のため、これらの物質は、LCD用の光学異方性フィルムおよび他の光学素子を得るための可能性のある材料として、関心が高まっている。
【0015】
上記色素の利用を妨げている主な難点は、水やいくつかの有機溶媒に対してそれらの溶解性が乏しいことである。有機溶媒に対する十分な溶解性を該色素に付与するため、その分子に種々の置換基が導入されてきた。そのような置換基の例には、オキシエチル基(R. A. Cormier and B. A. Gregg, Phys. Chem. 101(51), 11004-11006 (1997)参照)およびフェノキシ基(H. Quante H. Y. Geerts, and K. Mullen, Chem. Mater. 6(2), 495-500 (1997)参照)がある。また、ペリレン色素の溶解性は、アミノ基によって高められ(I. K. Iverson, S. M. Casey, W. Seo, and S. W. Tam-Chang, Langmuir 18(9), 3510-5316 (2002)参照)またスルホン酸基(米国特許第5,739,296号および第6,174,394号参照)によって高められた。最良の結果は、スルホン酸基を用いて得られており、これは、十分な溶解性およびペリレン色素の安定なLLC相の形成をもたらした。
【0016】
ジスルホ誘導体を合成する標準的な方法は以下のとおりである。所定容量のクロロスルホン酸に、計算した量のPTCA DBIおよび発煙硫酸(オレウム)を加える。反応終了時、混合物は、着色され、水で希釈される。沈殿物をろ過し、塩酸で洗浄し、乾燥する。これにより、水溶性のジベンゾイミダゾールペリレンテトラカルボキシジスルホン酸が生成し、次にこれを水に溶解して精製する。系のテクスチャー分析が明らかにしたところによれば、所定の色素濃度で始めると、安定な六方晶系リオトロピック中間相が、所定の温度範囲において形成される。その結果、十分に狭い範囲の色素濃度および温度において、ネマチック相が認められる。等方性相が存在する境界、ならびに、二相の遷移領域も、この系において測定されている。
【0017】
PTCA DBIスルホ誘導体をベースとする偏光子フィルムを得るための種々の色素組成物(インク類)が、特許明細書に記載されている。特に、次の構造式を有する色素が知られている。
【化9】

式中、Aは、
【化10】

または
【化11】

であり、RはH、アルキル基、ハロゲンまたはアルコキシ基であり、かつArは置換または非置換のアリール基である。これらの色素は、550〜600nmの領域において選択的であり、米国特許第5,739,296号に記載されている。
【0018】
PTCA DBI系の他の色素には、以下の式(式中、R1はH、3(4)-CH3、3(4)-C2H5、3(4)-Cl、3(4)-Brであり、かつR2は4(5)-SO3Hである)を有するものがある。これらの色素も、550〜600nmの領域において選択的であり、SU特許第1,598,430号に記載されている。
【化12】

【0019】
異方性フィルムの特性を向上させるため種々の改質添加剤が導入されたPTCA DBIスルホ誘導体のLC混合物が、米国特許第5,739,296号および第6,174,394号に記載されている。種々の置換基を有するインダントロンジスルホ誘導体が、米国特許第5,739,296号および第6,174,394号に記載されている。種々の有機カチオンを有する組成物が、公開特許出願EP961138に記載されている。
【0020】
ペリレン色素を含む種々の有機色素のスルホ誘導体をベースとするLLC系を用いて得られた異方性薄膜は、その特性および構造について特徴が調べられてきた。特に、ペリレン色素をベースとするLLC系を用いて得られたフィルムの特性が、研究されてきている(I. K. Iverson, S. M. Casey, W. Seo, and S. -W. Tam-Chang, Controlling Molecular Orientation in Solid-Crystalline Phase, Langmuir 18(9), 3510-5316 (2002)参照)。すべてのフィルムが、高度の光学異方性を有すると報告された。
【0021】
有機色素のスルホ誘導体をベースとするLLC系を用いて得られる異方性薄膜の特性が報告されている(T. Fiske, L. Ignatov, P. Lazarev, V. Nazarov, M. Paukshto, Molecular Alignment in Crystal Polarizers and Retarders, Society for Information Display, Int. Symp. Digest of Technical Papers (Boston, MA, May 19-24, 2002), p. 566-569参照)。それらのフィルムは少なくとも部分的に結晶性の構造を有することが明らかにされた。光学異方性フィルムは、ガラス、プラスチック、あるいはその他の任意の材料からなる基板上で得ることができる。これらの異方性フィルムの形成に使用されたViolet色素(青紫色素)は、シス異性体とトランス異性体との混合物に相当する(V. Nazarov, L. Ignatov, K. Kienskaya, Electronic Spectra of Aqueous Solutions and Films Made of Liquid Crystal Ink for Thin Film Polarizers, Mol. Mater. 14(2), 153-163 (2001)参照)。それらのフィルムは、すぐれた光学特性を有し、25〜30に迫る二色比を有するため、偏光子として用いることができる(Y. Bobrov, L. Blinov, L. Ignatov, G. King, V. Lazarev, Y. D. Ma, V. Nazarov, E. Neburchilova, N. Ovchinnikova, S. Remizov, Environmental and Optical Testing of Optiva Thin Crystal FilmTM Polarizers, Proceedings of the 10thSID Symposium "Advanced display technologies", (Minsk, Republic of Belarus, September 18-21, 2001), p. 23-30参照)。
【0022】
そのようなフィルム(高度の結晶性を有するものを含む)を得るための方法は、PCT公報WO02/063,660に記載されている。
【0023】
上述したPTCA DBIスルホ誘導体はすべて、LLC相を形成することができる。このLLC系を用いて得られる異方性フィルムは、優れた光学特性を有し、かつ偏光子として良好な性能を示す。
【0024】
しかし、既知の水溶性PTCA DBIスルホ誘導体の主要な欠点の一つとして、再現可能な特性(バッチ間で再現可能な特性および同一バッチで異なる基板において再現可能な特性)および均一な特性(基板表面全体に均一な特性)を有する一連の異方性フィルムを得ることが困難であるということがある。現在存在するフィルム付与の技術は、製造パラメーター(濃度、温度など)を詳細に選択し、厳密に守ることを必要とする。しかし、フィルム形成条件のすべてに厳密に従うとしても、コーティング構造のランダムな局所的変動は依然として起こりうる。このことは、基板表面へのLLC系付与において溶媒を除去する際、不均一な微結晶化および巨大結晶化の過程の結果、誤った配向の領域および微小欠陥が形成される可能性があることと関係がある。さらに、既知の色素をベースとするLLC系は、塗布したコーティングの厚みが不均一になる可能性が高いという特徴があり、これもまた、フィルムパラメーターの再現性を低くする。上述した欠点のため、すぐれた光学特性を有するフィルムの形成は込み入ったものとなり、技法の再現性は不十分なものとなり、そして、塗布から乾燥に至る各段階で多くの技術パラメーターを詳細に選択し厳密に守る必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
発明の概要
【0026】
本発明は、ペリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾール(PTCA DBI)の新規な水溶性スルホ誘導体を提供し、また、それらの化合物をベースとする光学素子を提供する。所定の置換基は、PTCA DBIスルホ誘導体の所定の位置に導入されると、結晶化および乾燥工程の均質性を高め、それにより、再現可能な特性を有するフィルムの形成収率を高めることが見出された。
【0027】
具体的には、一態様において、PTCA DBIスルホ誘導体が開示され、それは、ペリレン核についたオキソ基を含むものであり、該オキソ基はキノイド系の結合に関与している。該オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、安定なLLC中間相を形成することができる。
【0028】
該オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、高い光学特性を有する異方性で少なくとも部分的に結晶性のフィルムを再現可能な方法で得るために利用することができる。従って、本発明の他の態様は、該オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体をベースとする異方性フィルムの形成であり、それは、偏光フィルムとして使用できる。本発明は、可視スペクトル領域で吸収を示しかつ安定性が高められた安定なLLC相を形成できる化合物の種類を増やすものである。
【0029】
かくして、本発明は、新規な有機化合物を提供し、そのLLC相は、広い範囲の濃度、温度およびpH値にわたって高い安定性を保持するものである。さらに、本発明により提供される新規な有機化合物は、フィルム形成の工程を簡単なものにし、層の付与のため市販の利用可能な装置の使用を可能にし、そして、再現可能なパラメーターを有するフィルムの形成を確実なものにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(1)定義
【0031】
ここで使用する以下の用語は、以下の意味を有する。
【0032】
「スルホン化」および「スルホ誘導体」の表現は、一つ以上のスルホ置換基の存在を意味する。
【0033】
用語「スルホ」は、-SO3-または-SO3Hの置換基を意味する。
【0034】
「ペリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾール」の表現(PTCA DBIと省略される)は、以下の構造(A)または(B)の一つを意味する。
【化13】

(ここで、各Rは、同じまたは異なるものであり、かつ近傍のR基と連合して架橋を形成してもよい置換基であり、かつ、xおよびyは1〜4の範囲内の整数である。)
【0035】
オキソ基の表現は=Oを意味する。
【0036】
「ペリレン核」の表現は、以下の部分(l)を意味し、それは、例えば、PTCA DBI内に見られる。
【化14】

(ここで、各Rは、同じまたは異なるものであり、かつ近傍のR基と連合して架橋を形成してもよい置換基である。)
【0037】
「パラ−キノイド」または「パラ−キノイド系の結合」の表現は、以下の部分(m)または(n)の一つを意味する。
【化15】

【0038】
(2)説明
【0039】
本発明のPTCA DBIスルホ誘導体は、ペリレン核についたオキソ基を含む。このオキソ基とペリレン核の部分は、パラ−キノイド系の結合を形成する。このオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、例えば、下記に示す一般構造式I〜VIIのいずれか一つを含む。
【0040】
オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、任意の知られた方法によって合成されるシス異性体またはトランス異性体となりうる。特に、図1に示されるように、オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、種々の条件下で、PTCA DBIのスルホン化により得ることができる。
【0041】
また、オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、PTCAヒドロキシ誘導体から、O-フェニレンジアミンまたはO-フェニレンジアミンスルホネートとの縮合とその後の酸化により、さらにある態様ではさらなるスルホン化により、得ることができる。図2は、既知の構造のPTCAヒドロキシ誘導体から、オキソ置換PTCA DBI化合物を合成するための経路を模式的に示している。
【0042】
一方、個々のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、それらの混合物の分画により得ることができる。
【0043】
オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体の混合物は、純粋な化合物の異性化により得ることができる。
【0044】
下記に示す一般構造式I〜VIIのものを含むオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、所定の前もって選択した条件に従って合成することができる。この目的化合物を得るため、反応物質の初期濃度および合成の技術的条件を決定すれば十分である。最も重要なパラメーターは、開始反応物質の濃度、温度、および反応時間である。これらのパラメーターは、合成の結果、生成物の収率、ならびに反応質量における種々のオキソ置換PTCA DBI誘導体(例えば式I〜VII)の比率およびそれら異性体の比率を決定する。
【0045】
本発明の他の態様は、その溶液が最適な親水−疎水平衡(親水−疎水バランス)を特徴とする新規な有機化合物の開発である。この平衡は、そのような系において形成される超分子複合体のサイズおよび形状に、有利に作用し、さらに、これら複合体における分子秩序の程度にも有利に作用する。これらの性質は、想定している化合物の必要な溶解性をもたらすと同時に、これらの化合物をベースとするLLC相の高い安定性を確実なものにする。その結果、フィルムのパラメーターの再現性が高まり、そして、製造技術が簡単なものになる。というのも、種々の製造段階において最適な技術条件を選択および維持するための必要条件は、それほど厳密なものでなくなるからである。さらに、その新規なフィルムの光学特性は向上する。というのも、オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体の平面状分子は、基板に対してより均一に配向し、そして、電子遷移の双極子モーメント(該分子の平面に存在する)は、外部からの配向因子によって決定される方向に、より良く配向するようになるからである。
【0046】
上記目的は、本開示の水溶性オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体を用いることにより達成される。該誘導体は、以前に文献に記載されたことがない新規な化合物である。本開示の構造式を特徴とする化合物、それらの化合物をベースとする液晶系、およびこの系を用いて製造される光学異方性フィルムを利用することにより、技術的な効果が保証される。
【0047】
本発明の目的は、ペリレン核の部分とともにパラ−キノイド系の結合を形成するオキソ基をペリレン核において含む、ペリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾールのスルホン化されたシス誘導体および/またはトランス誘導体を用いることにより、確実に達成される。例えば、実例となる化合物は、以下の一般構造式I〜VIIの一つを含む。
【化16】

(ここで、A1およびA2は、それぞれ独立して、以下の一般構造式
【化17】

を含む同じまたは異なるフラグメントであり、X1、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、それぞれ独立して-H、-OH、-SO3Hを含む群から選ばれる置換基であり、ただし、置換基X6およびX7は、互いに作用して架橋Zを形成してもよく、ここでZは、-O-、-SO2-、および-SO2-O-の群から選ばれる架橋であり、各Yは、それぞれ独立して-H、-Cl、-F、-Br、Alk、-OH、-OAlk、-NO2、および-NH2の群から選ばれる置換基であり、nは、フラグメントA1およびA2の少なくとも一つが少なくとも一つのスルホ基を含むように、0、1、および2の範囲にある整数であり、pは0、1、2、3、および4の範囲にある整数であり、各Mは対イオンであり、jは、該色素分子中の対イオンの数であり、それは、一つ以上の対イオンが複数の分子に属する場合、分数でありえ、かつn>1のとき、複数種の異なる対イオンMが含まれ得る。)
【0048】
式I〜VIIの化合物のすべてが、それぞれ単独でも、この群の他の化合物との混合物においても、LLC相を形成できる他の二色性色素との混合物においても、および/または、可視領域において非吸収性(無色)または弱い吸収性でありかつLLC相を形成できる他の物質との混合物においても、安定なLLC相を形成することができる。溶媒除去の後、このLLC相は、再現可能性の高い光学特性を有する異方性で少なくとも部分的に結晶性のフィルムを形成する。
【0049】
水溶液中において、オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、530〜600nmの波長範囲において、最大光吸収を示す。Cl、F、Br、Alk、およびOAlkのような置換基を導入しても、非置換の分子と比べて、吸収帯が顕著に移動することはない。アミノ基およびヒドロキシ基を導入すると、吸収帯が広がり、吸収スペクトルの性質が変わってくる。オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体中のスルホン酸基の数ならびに置換基の数および種類を変えることにより、LLC溶液中に形成される分子集合体の親水−疎水平衡を調節することができ、また、溶液の粘度を変えることができる。本発明の技術的効果は、構造I〜VIIに示される置換基の数および種類に関係なく達成される。
【0050】
構造I〜VIIにおいて、対イオンMは、H+、NH4+、K+、Li+、Na+、Cs+、Ca++、Sr++、Mg++、Ba++、Co++、Mn++、Zn++、Cu++、Pb++、Fe++、Ni++、Al+++、Ce+++、La+++など、およびそれらのカチオンの組み合わせの群からの種々のカチオンとすることができる。
【0051】
オキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、安定なリオトロピック液晶系を形成することができる。構造式I〜VIIの個々のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体を含む液晶溶液(系)、あるいは、そのような化合物の混合物を含む液晶溶液(系)は、任意の通常の方法により調製することができる。
【0052】
一般構造式I〜VIIの個々のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体の液晶溶液(系)、あるいは、そのような化合物の混合物の液晶溶液(系)は、任意の知られた方法、例えば、米国特許第5,739,296号、第6,174,394号および第6,563,640号(それらの開示は、この引用によりそっくり本明細書に記載されたものとする)に記載された方法により、基板表面に塗布し、配向させることができる。上記特許における開示に従って、例えば、機械的剪断応力、電場または磁場を印加することにより、望ましい配向をもたらすことができる。より良好な基板ぬれのため、また、液晶系の流動学的特性の最適化のため、可塑化用の水溶性ポリマーおよび/または陰イオン界面活性剤または非イオン性界面活性剤を加えることにより、溶液を改質することができる。さらに、系は、水溶性の低分子量添加剤を含んでもよい。すべての添加剤は、液晶系の配向特性を破壊しないように選ばれる。その後、配向フィルムから溶媒を除去することにより、0.2〜1.2ミクロンの範囲の厚みを有する光学的に異方性の多結晶性フィルムが形成される。
【0053】
本発明によるフィルムは、バッチ間でのパラメーターの再現性、同じバッチで異なるフィルム間でのパラメーターの再現性、および一フィルムの表面にわたるパラメーターの再現性が、例えばジスルホPTCA DBIから得られるフィルムに比べて高くなっていることを特徴とする。
【0054】
かくして本開示のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、リオトロピック液晶相を形成することができ、そして、再現性の高い光学特性を有する異方性フィルムを得るため用いることができる。
【0055】
本開示のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、光学的に等方性または異方性のフィルムを形成することができる。
【0056】
本開示のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、少なくとも部分的に結晶性のフィルムを形成することができる。該フィルムは、光軸の一つにそって、約3.1Å〜3.7Åの範囲にある結晶の格子面間隔を示す。この格子面間隔は、標準的な方法、例えばX線回折により容易に測定される。
【0057】
本開示のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、偏光フィルムおよび/または複屈折性(複屈折)フィルムを形成することができる。
【0058】
本開示のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体は、光学的に等方性または異方性の偏光フィルムおよび/または位相差フィルムおよび/または複屈折フィルムの組成物の一部となることができる。光学的に等方性または異方性のフィルムの材料は、式I〜VIIの少なくとも二つの化合物、および/または、少なくとも二つの異なる置換基を含む、式I〜VIIの少なくとも一つの少なくとも二つの化合物の混合物を含んでもよい。
【0059】
また、本発明の技術的効果は、構造式I〜VIIの本開示のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体から選ばれる個々の誘導体または少なくとも二つのそのような化合物の混合物を含む水性液晶系(場合によって「水系インク組成物」と呼ぶ)により得られる。本開示の液晶系は、水をベースとするか、または、水と任意の割合で混和できる有機溶媒または限られた水との混和性を特徴とする有機溶媒と水との混合物をベースとする。本開示の液晶系における個々のまたは混合物での本開示のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体の含有量は、3〜40質量%の範囲であり、最も典型的には7〜20質量%の範囲である。また、本開示の液晶系は、5質量%までの界面活性剤および/または可塑剤を含んでもよい。
【0060】
本開示の液晶系における特定のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体の含有量は、必要な特性に依存して、以下の範囲内で変えることができる。式Iおよび/またはVの化合物が0〜99質量%の範囲、最も好ましくは0〜70質量%の範囲、式IIおよび/またはVIの化合物が0〜99質量%の範囲、最も好ましくは0〜50質量%の範囲、式IVおよび/またはVIIの化合物が0〜50質量%の範囲、最も好ましくは0〜20質量%の範囲、式IIIの化合物が0〜99質量%の範囲、最も好ましくは0〜20質量%の範囲。
【0061】
本開示の液晶系は、さらに、リオトロピック液晶相の形成に関与することができる無色の有機化合物または少なくとも一つの水溶性有機色素を含んでもよい。
【0062】
本開示の液晶系は、式I〜VIIの二つ以上から選ばれた複数の化合物、および/または、式I〜VIIの一つから選ばれた少なくとも二つの異なる置換基を含む二以上の化合物を含んでもよい。
【0063】
また、本発明の技術的効果は、一般構造式I〜VIIの個々のオキソ置換PTCA DBIスルホ誘導体または複数のそのような化合物の混合物を含む光学異方性フィルムにより得られる。該光学異方性フィルムは、異なる有機色素または何らかの無色の化合物をさらに含んでもよい。本発明による光学異方性フィルムは、液晶系を基板に塗布し、次いで配向および乾燥を施すことにより得ることができる。該異方性フィルムは、少なくとも部分的に結晶性である。
【0064】
本発明によるフィルム材料は、異なる式I〜VIIから選ばれた少なくとも二つの化合物、および/または、式I〜VIIの一つにおいて少なくとも二つの異なる置換基を含む二以上の化合物を含む。
【0065】
図1および図2は、可能な製造方法を示している。本開示の化合物は、スルホン化の方法(図1)により製造することができ、また、縮合およびその後の酸化(図2)により製造することができる。以下の実験結果は、両方の製造方法のいくつかの例を示している。これらの例は、単に例示を目的とするものであり、本発明の技術的範囲を限定しようとするものではない。
実施例1
【0066】
DBI PTCAジオキソ−ジスルホ酸異性体の合成
【0067】
工程1a モノヒドロキシPTCADAのo-フェニレンジアミンとの縮合
【0068】
エチレングリコール30ml中、既知の方法(J. Org. Chem., USSR, 1972, VIII, 369参照)により調製したモノヒドロキシPTCADA 1gとo-フェニレンジアミン1.6gの懸濁液を90℃で10時間加熱した。沈殿物を、ろ過により分離し、エタノールで洗浄した。以下の構造式の化合物1.3gを得た。
【化18】

【0069】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 551.7、分子量 552.54
【0070】
工程1b DBI PTCAジオキソ−ジスルホ酸異性体の混合物の合成
【0071】
工程1aの生成物(1g)を、50%発煙硫酸(オレウム)5ml中で2時間50℃においてスルホン化し、次いで、反応物を硫酸で希釈し、次に水で希釈して、55%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物1.1gを得た。
【化19】

【0072】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 726.2、分子量 726.65
【0073】
工程1c DBI PTCAジオキソ−ジスルホ酸の個々の異性体の調製
【0074】
工程1bからの異性体の混合物(1g)を20mlの硫酸に溶解し、そして水で希釈して65%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物0.5gを得た。
【化20】

【0075】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 726.5、分子量 726.65。元素分析の測定値(%):C 59.13; 59; 48; H 1.87; 1.90; N 7.51; 7.38; S 8.66; 9.07、C36H14N4O10S3。C36H14N4O10S2に対する元素分析計算値(%):C 59.50; H 1.94; N 7.71; O 22.02; S 8.83。IRスペクトル(FSM-1201フーリエ−変換IR分光計、KRS-5窓上の薄膜)(ν, cm-1):1229.0, 1179.7(スルホン酸基), 1073.6, 1033.2(スルホン酸基), 1670.6(カルボニル)。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):325, 375, 540。
【0076】
母液を水で希釈して硫酸の濃度を45%にすると、もう一つの異性体が沈殿した。それも、ろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物0.4gを得た。
【化21】

【0077】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 726.5、分子量 726.65。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):325, 355, 375, 550。
実施例2
【0078】
DBI PTCAジオキソ−スルホン−ジスルホ酸異性体の合成
【0079】
工程2a DBI PTCAジオキソ−スルホン−ジスルホ酸異性体の混合物の合成
【0080】
工程1aの生成物(1g)を、65%発煙硫酸5ml中で12時間65℃においてスルホン化し、次いで、反応物を硫酸で希釈し、次に水で希釈して、45%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物1.4gを得た。
【化22】

【0081】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 789.2、分子量 788.7。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):325, 375, 550, 590。
【0082】
工程2b DBI PTCAジオキソ−スルホン−ジスルホ酸の個々のトランス−異性体の調製
【0083】
工程2aからの異性体の混合物(1g)を20mlの硫酸に溶解し、そして水で希釈して65%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物0.5gを得た。
【化23】

【0084】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 789.2、分子量 788.7。元素分析の測定値(%):C 54.22; 54; 45; H 1.44; 1.46; N 7.01; 7.19; S 12.32; 12.10、C36H14N4O10S3。C36H12N4O12S3に対する元素分析計算値(%):C 54.82; H 1.53; N 7.10; O 24.34; S 12.20。IRスペクトル(FSM-1201フーリエ−変換IR分光計、KRS-5窓上の薄膜)(ν, cm-1):1228.9, 1179.4(スルホン酸基), 1074.0, 1027.0(スルホン酸基), 1324.0(スルホン), 1699.6(カルボニル)。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):325, 375, 540, 600。
【0085】
工程2c DBI PTCAジオキソ−スルホン−ジスルホ酸の個々のシス−異性体の調製
【0086】
母液を水で希釈して硫酸の濃度を45%にすると、もう一つの異性体が沈殿した。それも、ろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物0.4gを得た。
【化24】

【0087】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 789.2、分子量 788.7。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):325, 355, 375, 550, 580。
実施例3
【0088】
DBI PTCAジオキソ−スルホン−ジスルホ酸異性体のDBI PTCAジスルホ酸からの合成
【0089】
工程3a モノヒドロキシPTCADAのo-フェニレンジアミンスルホネートとの縮合
【0090】
70%水性ピリジン30ml中、モノヒドロキシPTCADA(1g)とo-フェニレンジアミンスルホネート1.5gの混合物を90℃で8時間加熱した。沈殿物を、ろ過により分離し、エタノール水溶液で洗浄した。以下の同じ構造式の化合物1.2gを得た。
【化25】

【0091】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 711.4、分子量 712.67。
【0092】
工程3b PTCADBIモノヒドロキシ誘導体の発煙硫酸による酸化およびスルホン化
【0093】
モノヒドロキシPTCADBIの混合物(1g)を、65%発煙硫酸30ml中で50℃において8時間加熱した。次いで、反応物を硫酸で希釈し、そして水で希釈して、55%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の実施例2aからの生成物と同様の化合物1.4gを得た。
【化26】

実施例4
【0094】
トランス−DBI PTCAジオキソ−ジスルホ酸の合成
【0095】
トランス−DBI PTCA(1g)を、55%発煙硫酸100ml中で3時間50℃においてスルホン化し、次いで、反応物を硫酸で希釈し、そして水で希釈して、65%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。実施例1cからの生成物と同じ構造を有し、以下の構造式に相当する化合物0.9gを得た。
【化27】

実施例5
【0096】
トランス−DBI PTCAジオキソ−スルホン−ジスルホ酸の合成
【0097】
工程5a トランス−DBI PTCAジオキソ−ジスルホ酸のスルホン化
【0098】
実施例4の生成物(1g)を、65%発煙硫酸50ml中で10時間65℃においてスルホン化し、次いで、反応物を硫酸で希釈し、次に水で希釈して、45%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。実施例2bからの生成物と同じ構造を有し、以下の構造式に相当する化合物1gを得た。
【化28】

【0099】
工程5b トランス−DBI PTCAのスルホン化
【0100】
トランス−DBI PTCA(1g)を、65%発煙硫酸100ml中で12時間60〜55℃においてスルホン化し、次いで、反応物を硫酸で希釈し、そして水で希釈して、65%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。実施例5aで得られたのと同じ構造の化合物1.2gを得た。
実施例6
【0101】
シス−DBI PTCAジオキソ−ジスルホ酸の合成
【0102】
シス−DBI PTCA(1g)を、50%発煙硫酸30ml中で3時間50〜55℃においてスルホン化し、次いで、反応物を硫酸で希釈し、そして水で希釈して、55%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の実施例1cからの生成物と一致する化合物1.2gを得た。
【化29】

実施例7
【0103】
シス−DBI PTCAジオキソ−スルホン−ジスルホ酸の合成
【0104】
工程7a シス−DBI PTCAジオキソ−ジスルホ酸のスルホン化
【0105】
実施例6の生成物(1g)を、65%発煙硫酸50ml中で10時間65℃においてスルホン化し、次いで、反応物を硫酸で希釈し、次に水で希釈して、45%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の実施例2bからの生成物と一致する化合物1gを得た。
【化30】

【0106】
工程7b シス−DBI PTCAのスルホン化
【0107】
シス−DBI PTCA(1g)を、65%発煙硫酸50ml中で12時間60〜55℃においてスルホン化し、次いで、反応物を硫酸で希釈し、そして水で希釈して、65%硫酸とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。実施例7aからの生成物の一つと一致する化合物1.3gを得た。
実施例8
【0108】
PTCA DBIのオキソ−ジスルホン酸異性体のジヒドロキシPTCAからの合成
【0109】
工程8a 2,8-ジヒドロキシPTCADAのo-フェニレンジアミンとの縮合
【0110】
酢酸30ml中、ジヒドロキシPTCADA 1.5gとo-フェニレンジアミン3gの懸濁液を8時間沸騰させた。沈殿物を、ろ過により分離し、エタノールで洗浄した。以下の構造式の化合物1.8gを得た。
【化31】

【0111】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 567.4、分子量 568.5。元素分析の測定値(%):C 75.82; 75; 91; H 2.94; 2.65; N 9.61; 9.49、C36H14N4O10S3。C36H16N4O4に対する元素分析計算値(%):C 76.05; H 2.84; N 9.85; O 11.6。
【0112】
工程8b ジヒドロキシPTCADAのo-フェニレンジアミンとの縮合物のスルホン化
【0113】
工程1aの生成物(1g)を、4%発煙硫酸5ml中で12時間100℃においてスルホン化し、次いで、反応物を水20mlで希釈した。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物1gを得た。
【化32】

【0114】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 729.0、分子量 728.6。
【0115】
工程8c ジヒドロキシPTCADBIジスルホ酸の発煙硫酸による酸化
【0116】
工程8bの生成物(1g)を80%発煙硫酸20mlに添加し、12時間20℃で撹拌し、次いで反応物を希釈して50%硫酸濃度とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物0.8gを得た。
【化33】

【0117】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 758.4、分子量 758.6。元素分析の測定値(%):C 56.62; 56; 84; H 1.94; 1.72; N 7.34; 7.32; S 8.32; 8.40、C36H14N4O10S3。C36H14N4O12S2に対する元素分析計算値(%):C 56.99; H 1.86; N 7.39; O 25.31; S 8.45。IRスペクトル(FSM-1201フーリエ−変換IR分光計、KRS-5窓上の薄膜)(ν, cm-1):1230.4, 1180.5(スルホン酸基), 1074.0, 1030.5(スルホン酸基), 1700.9(カルボニル)。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):560。
【0118】
工程8d 1,12-ジヒドロキシPTCADAのo-フェニレンジアミンとの縮合
【0119】
酢酸30ml中、1,12-ジヒドロキシPTCADA 1.5gとo-フェニレンジアミン3gの懸濁液を8時間沸騰させた。沈殿物を、ろ過により分離し、エタノールで洗浄した。以下の構造式の化合物1.8gを得た。
【0120】
【化34】

【0121】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 567.4、分子量 568.5。
【0122】
工程8e ジヒドロキシPTCADBIジスルホ酸の発煙硫酸による酸化
【0123】
工程8dの生成物(1g)を、80%発煙硫酸10ml中で12時間20℃において撹拌し、次いで、反応物を希釈して50%硫酸濃度とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物0.8gを得た。
【化35】

【0124】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 758.4、分子量 758.6。元素分析の測定値(%):C 56.54; 56; 77; H 1.80; 1.74; N 7.25; 7.30; S 8.24; 8.36、C36H14N4O10S3。C36H14N4O12S2に対する元素分析計算値(%):C 56.99; H 1.86; N 7.39; O 25.31; S 8.45。IRスペクトル(FSM-1201フーリエ−変換IR分光計、KRS-5窓上の薄膜)(ν, cm-1):1230.4, 1180.5(スルホン酸基), 1074.0, 1030.5(スルホン酸基), 1700.9(カルボニル)。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):560。
【0125】
工程8j ジヒドロキシPTCADAのo-フェニレンジアミンとの縮合物のスルホン化
【0126】
80%発煙硫酸中の工程8eの反応物を、希釈して50%発煙硫酸とし、10時間50℃において加熱し、次いで水200mlで希釈した。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物1.4gを得た。
【化36】

【0127】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 819.8、分子量 818.7。元素分析の測定値(%):C 52.77; 52; 80; H 1.04; 1.26; N 6.51; 6.49; S 11.62; 11.40、C36H14N4O10S3。C36H10N4O14S3に対する元素分析計算値(%):C 52.81; H 1.23; N 6.84; O 27.36; S 11.75。IRスペクトル(FSM-1201フーリエ−変換IR分光計、KRS-5窓上の薄膜)(ν, cm-1):1230.4, 1180.5(スルホン酸基), 1074.0, 1030.5(スルホン酸基), 1330.0(スルホン), 1700.6(カルボニル)。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):560, 675。
実施例9
【0128】
PTCA DBIのスルホン化によるPTCA DBIフラン誘導体の合成
【0129】
工程9a シス−PTCA DBIフランのジスルホン酸の合成
【0130】
工程8dからの生成物(5.0g)を、10%発煙硫酸35ml中に分けて導入し、5時間60℃においてスルホン化した。次いで反応物を、最初に92%水性硫酸で一水和物に、次に水で硫酸濃度65%に、連続的に希釈した。沈殿物をろ過によって分離し、酢酸中で3倍に再懸濁し、そして、乾燥して以下の構造式の化合物6.5gを得た。
【化37】

【0131】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 709.4、分子量 710.65。元素分析の測定値:C 60.66; 60.10; H 2.09; 2.27; N 7.39; 7.32; S 9.51; 9.41、C36H14N4O9S2。C36H14N4O9S2に対する元素分析計算値(%):C 60.84; H 1.99; N 7.88; O 20.26; S 9.02。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):325, 355, 375, 600。
【0132】
工程9b シス−PTCA DBIフランのジスルホン酸の発煙硫酸によるスルホン化
【0133】
工程9aの生成物(1g)を50%発煙硫酸30mlに50℃で添加し、この温度で8時間撹拌した。次いで反応物を希釈して硫酸濃度65%とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物0.4gを得た。
【化38】

【0134】
母液を水で希釈して硫酸濃度40%とした。沈殿物をろ過により分離し、酢酸で洗浄した。以下の構造式の化合物0.4gを得た。
【化39】

【0135】
質量スペクトル(VISION 2000、ネガティブ・リフレクション・モード):m/z 772.0, 740.6、分子量 772.7。元素分析の測定値(%):C 55.56; 55.59 58.72; 58, 10; H 1.49; 1.43 1.54; 1.56; N 6.98, 6.83 7.31; 7.39; S 13.00, 13.16 8.33; 8.46、C36H14N4O10S3。C36H12N4O11S3に対する元素分析計算値(%):C 55.96 58.38; H 1.57 1.63; N 7.25 7.5; O 22.78 23.76; S 12.45 8.66。IRスペクトル(FSM-1201フーリエ−変換IR分光計、KRS-5窓上の薄膜)(ν, cm-1):1230.0, 1182.2(スルホン酸基), 1072.0, 1030.5(スルホン酸基), 1324.0(スルホン), 1700.0(カルボニル)。電子吸収スペクトル(Ocean PC2000、水溶液)(λmaX, nm):第一フラクションについて325, 375, 540、第二フラクションについて325, 355, 375, 535。
【0136】
構造I〜VIに相当する他の誘導体を、類似の方法によって合成することができる。そのような方法は、PTCA DBIの異性体または混合物のスルホン化によるもの、対応するPTCA誘導体の縮合の後スルホン化を行うことによるもの、あるいは、PTCA誘導体をo-フェニレンジアミンスルホネートと縮合させることによるものである。
実施例10
【0137】
PTCA DBIジオキソジスルホン酸の液晶組成物およびフィルムの調製ならびに該フィルムの光学特性の測定
【0138】
脱イオン水79.9ml中、PTCA DBIジオキソジスルホン酸(実施例1、工程c)10gの溶液を、20℃での撹拌により調製し、アンモニアで中和して、10%液晶溶液100gを得た。この溶液を、マイヤーロッドNo. 3を用いて25mm/秒の線速度で石英ガラス板上に塗布した。この工程は、20℃の温度および65%の相対湿度において行った。その後、フィルムを同じ条件下で乾燥した。
【0139】
Cary-500分光光度計において、190〜800nmの波長範囲で、フィルム塗布の方向(Tpar)に沿って偏光させかつ溶液塗布の方向に対して垂直な方向(Tper)に偏光させた光線を用いて測定した透過スペクトルにより、フィルムの特性を調べた。最大吸収に相当するλ=540nmの波長において、二色比Kd=log(Tper)/log(Tpar)は32に相当した。35%のフィルム透過率で、コントラスト比(CR)は170であった。
実施例11
【0140】
PTCA DBIジオキソジスルホ誘導体とPTCA DBIテトラオキソジスルホ誘導体の混合物の液晶組成物およびフィルムの調製ならびに該フィルムの光学特性の測定
【0141】
脱イオン水79.9ml中、PTCA DBIスルホ誘導体の混合物10g(ジオキソ−ジスルホ誘導体(実施例1、30質量%)、ジオキソ−スルホン−ジスルホ誘導体(実施例2b、30質量%)、テトラオキソ−ジスルホ誘導体(実施例8e、20質量%、実施例8j、20質量%)を含む)の溶液を、20℃での撹拌により調製し、アンモニアで中和した。この溶液に、水10ml中スルホノール0.1gの溶液を添加した。この混合物をよく撹拌して10%液晶溶液100gを得た。この溶液を、マイヤーロッドNo. 3を用いて25mm/秒の線速度で石英ガラス板上に塗布した。この工程は、20℃の温度および65%の相対湿度において行った。その後、フィルムを同じ条件下で乾燥した。
【0142】
Cary-500分光光度計において、190〜800nmの波長範囲で、フィルム塗布の方向(Tpar)に沿って偏光させかつ溶液塗布の方向に対して垂直な方向(Tper)に偏光させた光線を用いて測定した透過スペクトルにより、フィルムの特性を調べた。最大吸収に相当するλ=540nmの波長において、二色比Kd=log(Tper)/log(Tpar)は28に相当した。36%のフィルム透過率で、コントラスト比(CR)は150であった。
実施例12
【0143】
PTCA DBIジオキソ−ジスルホ誘導体およびジオキソ−スルホン−ジスルホ誘導体とインダントロン誘導体の混合物の液晶組成物およびフィルムの調製ならびに該フィルムの光学特性の測定
【0144】
脱イオン水79.9ml中、PTCA DBIジオキソ−ジスルホ誘導体(実施例1、20質量%)、ジオキソ−スルホン−ジスルホ誘導体(実施例2b、20質量%)およびインダントロントリスルホン酸(60質量%)の混合物10gの溶液を、20℃での撹拌により調製し、アンモニアで中和した。この溶液に、水10ml中スルホノール0.1gの溶液を添加した。この混合物をよく撹拌して10%液晶溶液100gを得た。この溶液を、マイヤーロッドNo. 3を用いて25mm/秒の線速度で石英ガラス板上に塗布した。この工程は、20℃の温度および65%の相対湿度において行った。その後、フィルムを同じ条件下で乾燥した。
【0145】
Cary-500分光光度計において、190〜800nmの波長範囲で、フィルム塗布の方向(Tpar)に沿って偏光させかつ溶液塗布の方向に対して垂直な方向(Tper)に偏光させた光線を用いて測定した透過スペクトルにより、フィルムの特性を調べた。最大吸収に相当するλ=650nmの波長において、二色比Kd=log(Tper)/log(Tpar)は35に相当した。35%のフィルム透過率で、コントラスト比(CR)は250であった。
実施例13
【0146】
PTCA DBIジオキソ−スルホン−ジスルホ誘導体とインダントロンおよびナフタレンテトラカルボン酸の誘導体との混合物の液晶組成物およびフィルムの調製ならびに該フィルムの光学特性の測定
【0147】
PTCA DBIジオキソ−スルホン−ジスルホ誘導体(実施例2b、40質量%)、インダントロントリスルホン酸(40質量%)、およびNTCA DBIジスルホン酸(20質量%)を含む混合物10gの脱イオン水79.9ml溶液を、20℃での撹拌により調製し、アンモニアで中和した。この溶液に、水10ml中スルホノール0.1gの溶液を添加した。この混合物をよく撹拌して10%液晶溶液100gを得た。この溶液を、マイヤーロッドNo. 3を用いて25mm/秒の線速度で石英ガラス板上に塗布した。この工程は、20℃の温度および65%の相対湿度において行った。その後、フィルムを同じ条件下で乾燥した。
【0148】
Cary-500分光光度計において、190〜800nmの波長範囲で、フィルム塗布の方向(Tpar)に沿って偏光させかつ溶液塗布の方向に対して垂直な方向(Tper)に偏光させた光線を用いて測定した透過スペクトルにより、フィルムの特性を調べた。最大吸収に相当するλ=650nmの波長において、二色比Kd=log(Tper)/log(Tpar)は34に相当した。35%のフィルム透過率で、コントラスト比(CR)は200であった。
【0149】
構造式I〜VIを特徴とするすべての化合物は、安定なリオトロピック液晶系をもたらし、該液晶系は、高い性能特性および高い再現性を有する光学異方性フィルムを得るため使用することができる。上記実施例は、例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものとして解釈すべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】オキソ基(パラ−キノイド系の結合の一部を形成する)をペリレン核上に含むスルホ誘導体へのPTCA DBIの酸化による変換の模式図である。
【0151】
【図2】パラ−キノイドフラグメントを形成するペリレン核上のオキソ基を含むPTCA DBIスルホ誘導体を、1-ヒドロキシPTCAから開始してPTCAヒドロキシ誘導体から合成することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリレン核についたオキソ基を含み、該オキソ基が該ペリレン核のフラグメントとともにパラ−キノイド系の結合を形成している、スルホン化ペリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾール(PTCA DBI)化合物。
【請求項2】
以下の構造I〜IVの一つを含む、請求項1に記載のスルホン化オキソ置換PTCA DBI化合物。
【化1】

(ここで、A1およびA2は、それぞれ独立して、以下の構造式
【化2】

を含む同じまたは異なるフラグメントであり、
X1、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、それぞれ独立して-H、-OH、および-SO3Hから選ばれる置換基であり、
各Yは、それぞれ独立して-H、-Cl、-F、-Br、アルキル基、-OH、オキシアルキル基、-NO2、および-NH2から選ばれる置換基であり、
nは、フラグメントA1およびA2の少なくとも一つが少なくとも一つのスルホ基を含むように、0、1、および2から選ばれる整数であり、
pは0、1、2、3、および4から選ばれる整数であり、
各Mは対イオンであり、かつn>1のとき、各Mは同じまたは異なるものであることができ、かつ
jは、該分子中の対イオンの数であり、かつ一つ以上の該対イオンが複数の分子に属する場合、分数でありうる。)
【請求項3】
以下の構造V〜VIIの一つを含む、請求項1に記載のスルホン化オキソ置換PTCA DBI化合物。
【化3】

(ここで、A1およびA2は、それぞれ独立して、以下の構造式
【化4】

を含む同じまたは異なるフラグメントであり、
X1、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、それぞれ独立して-H、-OH、および-SO3Hから選ばれる置換基であり、
Zは、-O-、-SO2-、および-O-SO2-から選ばれる二価の架橋であり、
各Yは、それぞれ独立して-H、-Cl、-F、-Br、アルキル基、-OH、オキシアルキル基、-NO2、および-NH2から選ばれる置換基であり、
nは、フラグメントA1およびA2の少なくとも一つが少なくとも一つのスルホ基を含むように、0、1、および2から選ばれる整数であり、
pは0、1、2、3、および4から選ばれる整数であり、
各Mは対イオンであり、かつn>1のとき、各Mは同じまたは異なるものであることができ、かつ
jは、該分子中の対イオンの数であり、それは、一つ以上の対イオンが複数の分子に属する場合、分数でありうる。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも一つのスルホン化ペリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾール(PTCA DBI)化合物を含む、リオトロピック液晶系。
【請求項5】
該系が水性である、請求項4に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項6】
該系が、水と混和できる有機溶媒と水の混合物を含む、請求項4に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項7】
該液晶系中のスルホン化オキソ置換PTCA DBI化合物の含有量が3〜40質量%の範囲にある、請求項4〜6のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項8】
5質量%までの界面活性剤をさらに含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項9】
5質量%までの可塑剤をさらに含む、請求項4〜8のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項10】
以下の構造I〜VII
【化5】

(ここで、A1およびA2は、それぞれ独立して、以下の構造式
【化6】

を含む同じまたは異なるフラグメントであり、
X1、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、それぞれ独立して-H、-OH、および-SO3Hから選ばれる置換基であり、
Zは、-O-、-SO2-、および-O-SO2-から選ばれる二価の架橋であり、
各Yは、それぞれ独立して-H、-Cl、-F、-Br、アルキル基、-OH、オキシアルキル基、-NO2、および-NH2から選ばれる置換基であり、
nは、フラグメントA1およびA2の少なくとも一つが少なくとも一つのスルホ基を含むように、0、1、および2から選ばれる整数であり、
pは0、1、2、3、および4から選ばれる整数であり、
各Mは対イオンであり、かつn>1のとき、各Mは同じまたは異なるものであることができ、かつ
jは、該分子中の対イオンの数であり、それは、一つ以上の対イオンが複数の分子に属する場合、分数でありうる。)
のいずれか複数のスルホン化オキソ置換PTCA DBI化合物の混合物を含み、
構造式Iおよび/またはVの化合物が約0〜99質量%の濃度範囲で存在し、
構造式IIおよび/またはVIの化合物が約0〜99質量%の濃度範囲で存在し、
構造式IVおよび/またはVIIの化合物が約0〜50質量%の濃度範囲で存在し、かつ
構造式IIIの化合物が約0〜99質量%の濃度範囲で存在する、請求項4〜9のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項11】
構造式Iおよび/またはVの化合物が約0〜70質量%の濃度範囲で存在し、
構造式IIおよび/またはVIの化合物が約0〜50質量%の濃度範囲で存在し、
構造式IVおよび/またはVIIの化合物が約0〜20質量%の濃度範囲で存在し、かつ
構造式IIIの化合物が約0〜50質量%の濃度範囲で存在する、請求項10に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項12】
以下の構造VIII〜X:
【化7】

(ここで、A1およびA2は、それぞれ独立して、以下の構造式
【化8】

を含む同じまたは異なるフラグメントであり、
X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、それぞれ独立して-H、-OH、および-SO3Hから選ばれる置換基であり、ただし、これらの置換基の少なくとも一つは、-Hとは異なり、かつ、置換基X2、X3および/またはX6、X7は、互いに作用して架橋Z1および/またはZ2を形成してもよく、
Z1および/またはZ2は、それぞれ独立して-O-、-SO2-、および-SO2-O-から選ばれる架橋であり、
各Yは、それぞれ独立して-H、-Cl、-F、-Br、アルキル基、-OH、オキシアルキル基、-NO2、および-NH2から選ばれる置換基であり、
nは、フラグメントA1およびA2の少なくとも一つが少なくとも一つのスルホ基を含むように、0、1、および2から選ばれる整数であり、
pは0、1、2、3、および4から選ばれる整数であり、
各Mは対イオンであり、かつn>1のとき、各Mは同じまたは異なるものであることができ、かつ
jは、該分子中の対イオンの数であり、それは、一つ以上の対イオンが複数の分子に属する場合、分数でありうる)
の一つを含む少なくとも一つのスルホン化オキソ置換PTCA DBI化合物をさらに含む、請求項4〜9のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項13】
該スルホン化オキソ置換PTCA DBI化合物とともに、一般のリオトロピック液晶系の形成に関与することができる有機化合物または少なくとも一つの水溶性有機色素をさらに含む、請求項4〜12のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項14】
請求項4〜13のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系を堆積させることにより形成された光学的異方性フィルム。
【請求項15】
該フィルムは少なくとも部分的に結晶性である、請求項14に記載の光学的異方性フィルム。
【請求項16】
光軸の一つに沿った結晶の格子面間隔が、約3.1Å〜3.7Åの範囲にある、請求項14に記載の光学的異方性フィルム。
【請求項17】
該フィルムが偏光フィルムである、請求項14〜16のいずれか一項に記載の光学的異方性フィルム。
【請求項18】
該フィルムが位相差板である、請求項14〜16のいずれか一項に記載の光学的異方性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−534629(P2007−534629A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533823(P2006−533823)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/020699
【国際公開番号】WO2005/003132
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】