パラジウム含有メッキ液およびその使用
【課題】パラジウム含有電気メッキ液および多孔性金属支持体上のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供するための方法が提供される。
【解決手段】パラジウム含有電気メッキ液が、約2g/Lないし約200g/Lの硫酸パラジウム中のパラジウム、約10g/Lないし約200g/Lの反応性導電性塩、約10g/Lないし約150g/Lの錯化剤、および、電気メッキ液に約9ないし約12のpHをもたらすのに十分な緩衝剤、を含むことを特徴とする。
【解決手段】パラジウム含有電気メッキ液が、約2g/Lないし約200g/Lの硫酸パラジウム中のパラジウム、約10g/Lないし約200g/Lの反応性導電性塩、約10g/Lないし約150g/Lの錯化剤、および、電気メッキ液に約9ないし約12のpHをもたらすのに十分な緩衝剤、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパラジウム含有電気メッキ液および電気メッキによって多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を調製するための方法に関する。この方法は、多孔性金属支持体に強力に付着し、それにより水素生成もしくは合成の最中の触媒性反応器として有用なパラジウム皮膜管備品を提供する、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を生成する。
【背景技術】
【0002】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は、無電界メッキ法、真空スパッタリング法もしくは冷間圧延法を用いて調製することができる。多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜をメッキするには従来は無電界メッキ法、例えば、台湾特許公開第1232888号および米国特許第6152987号に開示されるものが用いられている。しかしながら、無電界メッキ法では、皮膜への付着は化学的に還元された金属粒子の基体上での物理的吸着に依存する。結果として、温度の変動でパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜が多孔性金属支持体から剥離することがある。さらに、パラジウム皮膜の調製において、無電界メッキ法は望ましい厚みを有するパラジウム皮膜を得るのに複数の被着(6ないし7回を上回る)を必要とする。さらに、均質化して調製プロセスを完了するため、生じる皮膜にはアニーリング処理が施される。加えて、異なるカチオン(例えば、Pdイオン、CuイオンおよびAgイオン)の還元速度および被着速度を制御することは困難である。したがって、単一のイオンを還元して個々の金属層を被着するのに複数の工程が必要であり、その後、アニーリング工程を高温で長時間行って2種類以上の金属を含む合金化金属層を得る。換言すると、無電界メッキ法は時間がかかり、かつ得られる付着性に乏しい。
【0003】
上述のように、パラジウム皮膜は多孔性金属支持体上に無電界メッキすることができる。パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は、日本国特許出願公開第2002−119834号および第2002−153740号において開示されるように、多孔性セラミック支持体上にも無電界メッキされている。多孔性セラミックもしくはガラス支持体はナノサイズの細孔(10−200nm)を備える緻密な表面を有するため、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は容易にそれらの細孔を遮断することができ、したがって、より良好なメッキ皮膜を創出することができる。しかしながら、ナノサイズの細孔を備える多孔性支持体材料は高価であり、それらの製造経費はこの製品を市場において競争力の低いものにしている。
【0004】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を調製するための真空スパッタリング法においては、高価な真空装置およびそれらに含まれるスパッタリング標的も製造経費を押し上げ、したがって、市場においては望ましいものではない。
【0005】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の調製への冷間圧延法の使用に関しては、生じる皮膜を特有の方法で多孔性支持体に付着させる必要がある。したがって、それらの手順は複雑であり、皮膜の付着性は乏しく、かつ製造收率は低い。この方法もやはり魅力に欠ける。
【0006】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を電気メッキするための現時点で公知の技術は、主として平滑な平面を備える一般的な支持体に、主として処理もしくは装飾の目的で適用される。例えば、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を平滑な表面上に電気メッキする技術は、典型的には、表面上での酸化による脱色を防止するために装飾品、例えば、宝石に適用されるか、もしくは溶接性を改善するために電子部品に適用される。この技術は接触抵抗を低減し、酸化防止特性を強化する。生じる皮膜は、例えば米国特許第4486274号に開示されるもののように、約0.3mmないし約2mmの範囲の厚みを有する。しかしながら、そのような公知技術において用いられるパラジウム塩電気メッキ液の配合物が多孔性金属支持体の電気メッキに適用されるとき、欠陥のない緻密なパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を得ることは不可能である。実際には、生じるメッキ皮膜には幾らかのピンホールがあり、それを高純度のH2を供給するのに用いられる精製要素に不適切なものとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結果として、望ましい緻密性およびH2透過性を備えるパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を、多孔性金属支持体上に、より単純で、時間を節約し、かつ経済的な方法で調製するための方法を提供する一般的な要求が産業界に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的の1つは、硫酸パラジウム、反応性導電性塩、錯化剤および緩衝剤を含むパラジウム含有電気メッキ液を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、多孔性金属支持体上のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供するための方法であって、多孔性支持体を準備することと、並びにパラジウム含有電気メッキ液を用いてパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を多孔性金属支持体上に電気メッキすることと、を含む方法を提供することである。該パラジウム含有電気メッキ液はパラジウム塩、反応性導電性塩、錯化剤および緩衝剤を含む。
【0010】
本発明のさらなる目的は、多孔性金属基体、基体の表面上にコートされた中間層、および中間層上にコートされたパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を含む、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を備える複合体を提供することである。このパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は複合体の基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約3絶対気圧まで高い条件下で剥離がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、硫酸パラジウム、反応性導電性塩、錯化剤および緩衝剤を含むパラジウム含有電気メッキ液を提供する。この電気メッキ液中に、約2g/Lないし約200g/L、好ましくは約5g/Lないし約50g/Lの硫酸パラジウム中のパラジウムが存在する。約10g/Lないし約200g/L、好ましくは約70g/Lないし約150g/Lの反応性導電性塩も存在する。約10g/Lないし約150g/L、好ましくは約30ないし約70g/Lの錯化剤が存在する。この電気メッキ液が約9ないし約12、好ましくは約10ないし約11のpHを有するようにするのに十分な緩衝剤が存在する。
【0012】
本発明のパラジウム含有電気メッキ液において、被着効率およびパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の品質が改善されるように、反応性導電性塩は導電性イオンを提供して電気メッキ液の導電性を強化することができる。本発明に適する反応性導電性塩にはSO42-イオン供給性化合物が含まれ、IA族金属、アンモニウム塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択することもできる。SO42-イオン供給性化合物が反応性導電性塩として用いられるとき、電気メッキ浴の導電性を強化するだけではなく、低溶解度のパラジウム塩の溶解を促進することもできる。すると、電気メッキ浴中のパラジウム濃度が増加し、導電性がさらに強化される。例えば(それらに限定されるものではないが)、本発明において用いられる反応性導電性塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。好ましい反応性導電性塩は硫酸アンモニウムである。
【0013】
当該技術分野における熟練者に公知のように、錯化剤の主な目的は電気メッキ系の安定性を改善することである。一般には、本発明に有用な錯化剤は、ホウ酸、リン酸塩、次リン酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。典型的に用いられるEDTAの塩はEDTAのIA族金属塩および/もしくはIIA族金属塩である。例えば(それらに限定されるものではないが)、錯化剤は以下からなる群より選択することができる:ホウ酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、次リン酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA−Na2)、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(EDTA−Na4)、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩(EDTA−K2)、エチレンジアミン四酢酸三カリウム塩(EDTA−K3)、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム塩(EDTA−Mg)およびそれらの組み合わせ。錯化剤は、好ましくは、硝酸カリウム、クエン酸アンモニウム、EDTA−Na2、EDTA−Na4およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0014】
本発明のパラジウム含有電気メッキ液における緩衝剤はパラジウムの被着速度を低下させる役目を果たす。より具体的には、貴金属と同様に、パラジウムが有する標準還元電位は0.997Vまでである(すなわち、還元反応が非常に迅速に生じる)。したがって、電気メッキプロセス全体を制御するには、通常、緩衝剤を電気メッキ液に添加してパラジウム金属の還元反応の速度を低下させる。そのようにすることで、均一なパラジウムもしくはパラジウム合金被膜を支持体上に形成することができる。一般には、OH-イオンがそれ自体で望ましい緩衝効果を生じることが可能であり、あらゆる適切な水酸化物を本発明において緩衝剤として用いることができる。例えば(それらに限定されるものではないが)、以下からなる群より選択される水酸化物を本発明のパラジウム含有電気メッキ液における緩衝剤として用いることができる:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムおよびそれらの組み合わせ。本発明の好ましい電気メッキ液は水酸化アンモニウムである。
【0015】
上述の成分に加えて、硫酸を本発明のパラジウム含有電気メッキ液に任意に添加し、硫酸パラジウムの溶解を促進することができる。添加される硫酸の量は硫酸パラジウムの量に依存する。通常、硫酸の量は電気メッキ液中のSO42-の濃度をリットルあたり約0.2モルないし約4モル、好ましくは、約0.5モルないし2モルにするものである。
【0016】
本発明のパラジウム含有電気メッキ液はパラジウム合金被膜の被着にも用いることができる。このパラジウム含有電気メッキ液は対応する金属(第2金属)塩、例えば、銅塩、銀塩、金塩、ニッケル塩、白金塩、インジウム塩およびそれらの組み合わせをさらに含む。第2金属塩の含有量は第2金属の種に従って変化する。本発明の1実施形態において、パラジウム含有電気メッキ液は銅塩をさらに含んでパラジウム−銅合金被膜を形成する。この場合、銅塩、例えば、硫酸銅もしくは塩化銅を電気メッキ液のリットルあたり銅が約0.2gないし100gの範囲の量で用いることができる。第2金属を添加する場合、上記錯化剤は、電気メッキ液の安定性を高めることに加えて、より高い(もしくはより低い)還元電位を有する金属と錯体を形成してそれらの標準還元電位を低下(もしくは上昇)させることもできる。このようにして、2種類の金属の還元電位を、支持体の表面上に共に被着して均一なパラジウム合金皮膜が形成されるようにより近くに調整する。
【0017】
本発明は、さらに、多孔性金属支持体上のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供するための方法であって、
多孔性支持体を準備する工程、および
パラジウム含有電気メッキ液を用いてパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を多孔性金属支持体上に電気メッキする工程、
を含み、該パラジウム含有電気メッキ液が、
2g/Lないし200g/Lのパラジウム塩中のパラジウム、
10g/Lないし200g/Lの反応性導電性塩、
10g/Lないし150g/Lの錯化剤、および、
電気メッキ液に約9ないし12のpHをもたらすのに十分な緩衝剤
を含む方法を提供する。
【0018】
この本発明の方法によると、あらゆる多孔性金属支持体、例えば(それらに限定されるものではないが)、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金およびそれらの組み合わせを用いることができる。鉄合金が好ましい。経済的には、鉄合金として分類される多孔性ステンレス鋼が最適な電気メッキ支持体である。本発明の方法において、電気メッキ工程は約0.01A/dm2ないし約1.5A/dm2、好ましくは、約0.2A/dm2ないし約1.0A/dm2の範囲の電流密度の下で行う。電気メッキ浴温度は約40℃ないし約90℃、好ましくは、約40℃ないし約60℃の範囲をとる。さらに、金属支持体は、任意に、電気メッキ工程の最中に1000rpm以下の速度で回転させることができる。
【0019】
硫酸パラジウムに加えて、本発明の方法は、塩化テトラアミンパラジウム(Pd(NH4)4Cl2)、塩化アンモニウムパラジウム(Pd(NH4)2Cl4)、塩化パラジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるパラジウム塩を用いることもできる。電気メッキ液中のパラジウム塩の含有量は約2g/Lないし約200g/L(パラジウムとして)、好ましくは、約5g/Lないし約50g/Lの範囲をとる。反応性導電性パラジウム、錯化剤および緩衝剤の種および量の詳細は本発明のパラジウム含有電気メッキ液に関する上記説明に見出すことができ、したがって、ここでさらに説明することはしない。
【0020】
本発明の方法において、パラジウムもしくはパラジウム合金の電気メッキは、単一のパラジウム塩を含む電気メッキ液を用いる1回の電気メッキ処理により、もしくは2種類以上のパラジウム塩を含む電気メッキ液を用いる複数回の電気メッキ処理により行うことができる。さらに、複数回の電気メッキ処理については、各々の処理の電気メッキ液が同じパラジウム塩を含んでいても異なるパラジウム塩を含んでいてもよい。例えば、第1の電気メッキ処理をパラジウム塩として硫酸パラジウムを含む電気メッキ液で行ってパラジウム薄膜を支持体上に電気メッキし、次いで次の電気メッキ処理をパラジウム塩として塩化パラジウムを含む電気メッキ液で行って望ましい総厚みを有するパラジウム皮膜を提供することができる。この場合、塩化パラジウムの比較的安価な価格のため、前記2段階電気メッキ方式を用いる望ましいメッキ皮膜の調製はパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の電気メッキの経費を節約する。その代わりに、第1の電気メッキ処理をパラジウム塩として塩化パラジウムを含む電気メッキ液を用いて行い、次いで次の電気メッキ処理をパラジウム塩として硫酸パラジウムを含む電気メッキ液を用いて行うこともできる。加えて、第2のメッキ処理はあらゆる適切な方法、例えば、電気メッキ法、無電界メッキ法、真空スパッタリング法もしくは冷間圧延法で行うことができる。
【0021】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の電気メッキプロセスの最中、パラジウムイオンは陰極で電子を受け取って支持体上に金属Pdとして被着する。同時に、H2が陰極で発生する。支持体上でのH2堆積および金属Pdの両者はパラジウム含有皮膜の脆化感受性を生じる。そのようなH2によって被る脆化感受性を回避するため、パラジウムもしくはパラジウム合金電気メッキプロセスの最中に乱流を生成してH2による攪乱を緩和もしくは防止することができる。乱流を生成するのにあらゆる適切な手段、例えば(それらに限定されるものではないが)、上述のような多孔性金属支持体の回転および/もしくは水流攪拌、空気攪拌、陰極攪拌もしくは超音波攪拌による望ましい乱流の生成を用いることができる。多孔性金属支持体を回転させて乱流を生成するとき、同じ電流密度の下では支持体を速く回転させるほど生じるパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜がより良好である(すなわち、皮膜がより緻密な格子構造を示す)ことが見出されている。本発明によると、金属支持体の回転速度は、一般には、約1000rpm以下であり、好ましくは、約100rpmないし約500rpmの範囲内で制御する。
【0022】
本発明の方法において、多孔性金属支持体は、任意に、電気メッキ工程に先立って幾つかの予備処理、例えば、脱脂、溶接および平滑化で処理することができる。特に、現時点で商業的に入手可能なほとんど全ての多孔性金属支持体は表面上が脂性物質で汚されており、それは電気メッキ液を支持体から分離させ、電気メッキ効果に悪影響を及ぼす。この分離は最終的に、生じる皮膜のブリスター形成、剥離もしくは小片剥離につながる。一般には、そのような有害現象を回避するため、多孔性金属支持体の内側および外側の両者の脂性物質の洗浄に有機溶媒、例えば、トルエンもしくはアセトンを用いていた。この脱脂プロセスに続いて、例えば、600番の紙やすりを用いて多孔性金属支持体を研磨し、その金属支持体の調製に含まれる粉末冶金手順において形成される作業硬化層(work−hardening layer)および焼結手順において形成される酸化層を除去することもできる。
【0023】
さらに、本発明のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の電気メッキに先立ち、中間層を多孔性金属支持体上に任意にメッキすることができる。具体的には、中間層は多孔性金属支持体の細孔を縮小させる(すなわち、細孔を充填して平滑な支持体表面を徐々に形成する)ことができ、これは緻密なパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供する上で有効である。加えて、中間層はパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜と多孔性金属支持体との付着を改善して剥離を防止し、それによりパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の耐用年数を長期化することができる。例えば(それらに限定されるものではないが)、中間層はニッケル、銅、銀、金、白金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成され得る。中間層に好ましい材料はニッケルである。ここで、中間層は必要に応じて2回以上電気メッキすることができる。一方、電気メッキプロセスの最中に電気メッキ液に乱流を任意に導入してそこで発生するH2による攪乱を防止することができる。中間層を用いる技術は以下の著者による論文に記載されている:Renouprez,1 J.F.et al in Journal of Catalysis,170,1997,p.181、Seung−Eun Nam in Journal of Membrane Science,153,1999,p.163、Seung−Eun Nam in Journal of Membrane Science,170,2000,p.91およびJournal of Membrane Science,192,2001,p.177、それらの全ては参照のためここに組み込まれる。
【0024】
本発明において用いられる中間層電気メッキ手順の実施形態が、ニッケルを中間層として用いて、以下に説明する。この場合、予備処理の後、多孔性金属支持体をニッケルの予備メッキのためにメッキ容器に入れる。ここで、電気メッキ浴の温度は約30℃ないし約50℃の範囲をとる。支持体の回転速度は約500rpmである。電流密度は約5A/dm2ないし約10A/dm2、好ましくは、約7A/dm2ないし約10A/dm2の範囲をとる。電気メッキ持続時間は約3分ないし約6分、好ましくは、約4分ないし約5分の範囲をとる。その後、ニッケルで予備メッキされている多孔性金属支持体を洗浄し(例えば、超音波水すすぎにより)、第2のニッケルメッキ手順をニッケルメッキ容器において行う。第2のニッケルメッキ手順においては、電気メッキ浴の温度は約30℃ないし約50℃の範囲をとる。支持体の回転速度は約500rpmである。電流密度は約2A/dm2ないし約6A/dm2、好ましくは、約4A/dm2ないし約6A/dm2の範囲をとる。電気メッキ持続時間は約3分ないし約7分、好ましくは、約5分ないし約7分の範囲をとる。最後に、複数サイクルの水すすぎおよび乾燥の後、中間層がメッキされた多孔性金属支持体が得られる。
【0025】
本発明の電気メッキ法をH2精製用の管の提供に用いるとき、脱脂プロセスに続いて、多孔性金属支持体を精製機器の他の金属備品と、両端で、適切な方法、例えば、アルゴンアーク溶接を用いて任意に接合する。その後、多孔性金属支持体の表面を上述のように機械的に研磨し、金属支持体の調製の最中に粉末冶金手順において形成される作業硬化層および焼結手順において形成される酸化層を除去する。前述の溶接プロセスの残留痕跡も除去する。このようにすることで、多孔性支持体が平滑な表面を有し、次の電気メッキ手順の効果が強化されることが保証される。その後、この平滑な金属支持体を水ですすいだ後、次の電気メッキの準備が整う。
【0026】
図1は、本発明に従って多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を調製するための方法の1実施形態を示す。図1に示すように、予備処理、例えば、脱脂、管溶接および表面平滑化の次に、多孔性金属支持体を水ですすいで任意に乾燥させた後、ニッケル予備メッキ、水すすぎ、ニッケルメッキ、水すすぎおよび任意の乾燥工程が続く。最後に、金属支持体をパラジウムで電気メッキし、水で洗浄し、かつ乾燥させて多孔性金属支持体およびパラジウム被膜の両者から形成される金属管が提供する。
【0027】
したがって、本発明は、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を有する複合体であって、
多孔性金属基体、
基体の表面上にコートされた中間層、および
中間層上にコートされたパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜、
を含み、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は複合体の基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約3絶対気圧、好ましくは約5絶対気圧、より好ましくは約10絶対気圧まで高い条件下で実質的に剥離がない複合体をさらに提供する。
【0028】
本発明の複合体において、上述のように、多孔性金属支持体は鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成され得る。好ましい材料は鉄合金である。経済的には、鉄合金として分類されるステンレス鋼が最も好ましい。基体とパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜との間に挿入される中間層は、ニッケル、銅、銀、金、白金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成され得る。ステンレス鋼が基体として用いられる場合、ニッケルが中間層の材料として好ましい。
【0029】
時間のかかる無電界メッキ法を用いる従来技術との比較において、本発明によるパラジウム含有電気メッキ液および多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を調製するための電気メッキ法は、熱処理を排除し、かつ調製時間を10倍低減させることができる。さらに、無電界メッキ法によって調製されたものと比較して、本発明の電気メッキ法によって調製されたパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は緻密な結晶粒を示し、かつ、H2精製構成要素において用いられるとき、H2透過性の点で無電界メッキ法によって調製されたものに劣ることはない。さらに、従来のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は水素脆化に対して脆弱である。対照的に、本発明のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は低温および高温の両者で水素脆化がなく、したがって、より高い適用性を有することが見出されている。従来のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の水素脆化はパラジウムとH2との間の相変化に関連する。それらの詳細は以下の著者によって著された論文に見出すことができる:F.A.Lewis in Int.J.Hydrogen Energy,Vol.21,No.6,pp.461−464,1996、Tea−Hyun Yang et al in Electrochimica Acta.,Vol.41,No.6,pp.843−844,1996およびE.Nowicka et al in Progress in Surface Science,Vol.48,Nos.1−4,pp.3−14,1995、これらの全ては参照のためここに組み込まれる。
【0030】
例示的実施形態を以下のように示し、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
(硫酸パラジウム電気メッキ液系)
A.多孔性ステンレス鋼支持体の処理
多孔性ステンレス鋼管をすすいでトルエンおよびアセトンで脱脂した後、それらから15cm長の区画を切断し、自動回転溶接機に通常の金属管と一直線にして入れた。アルゴンガスを8ml/分の速度で管に注入してそれらをアルゴンアーク溶接法によって溶接し、パラジウム皮膜を電気メッキするための支持体を得た。この溶接プロセスの後、多孔性ステンレス鋼支持体および通常の管とのその溶接接合部を平滑化のため600番の紙やすりを用いて機械的に研磨し、次いで超音波水すすぎ、続いてオーブン内、150℃の温度での乾燥プロセスを行った。次に、1絶対気圧のHe流を支持体内に注入し、支持体からの気体透過速度を試験した。得られた気体透過速度は20L/分であった。
【0032】
B.中間層の電気メッキ
支持体の予備メッキ部分は50cm2の露出面積を有していた。予備処理された支持体を、2リットルの電気メッキ液を収容する(120cmの半径および200cmの高さを有する)ニッケル予備メッキ容器に入れた。その電気メッキ浴の組成および電気メッキパラメータを表1に示した。支持体を予備メッキしてニッケルコーティングを形成した後、超音波水すすぎプロセスによって洗浄した。その後、予備メッキした支持体を2リットルの電気メッキ液を収容する(120cmの半径および200cmの高さを有する)ニッケルメッキ容器に再度入れた。その電気メッキ浴および電気メッキパラメータを表2に示した。複数回の水すすぎの後、支持体を乾燥のため150℃の温度でオーブンに入れ、次いで1絶対気圧のHe流を支持体内に注入して支持体からの気体透過速度を試験した。得られた気体透過速度は4L/分であった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
C.パラジウム皮膜の電気メッキ
得られたニッケル中間層を有する支持体を、2リットルの電気メッキ浴を収容する(120cmの半径および200cmの高さを有する)パラジウム電気メッキ容器に入れた。電気メッキ浴の組成および電気メッキパラメータを表3に示した。電気メッキプロセスの後、支持体を水で多数回洗浄し、次いでオーブン内、150℃の温度で乾燥させて最終的に緻密な格子構造を有するパラジウム皮膜を多孔性ステンレス鋼支持体上に形成した。
【0036】
【表3】
【0037】
[実施例2]
(支持体の回転速度の試験)
実施例1の工程AないしCを、同じ条件下ではあるが1A/dm2の電流密度並びに10rpm、50rpm、100rpm、200rpmおよび500rpmの回転速度で反復した。パラジウム皮膜の形成後直ちに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られたパラジウム皮膜の構造を観察した。図2は、それぞれ、10rpm(A)、50rpm(B)、100rpm(C)、200rpm(D)および500rpm(E)の回転速度で得られたパラジウム皮膜のSEM写真を示す。同じ電流密度の下で、より高速の回転速度がより緻密なパラジウム皮膜を生じることを見てとることができる。
【0038】
[実施例3]
(塩化パラジウム電気メッキ液系)
実施例1の工程AないしCと同じであるが、表4に列挙される電気メッキ浴の組成および電気メッキパラメータを用いてパラジウム皮膜を電気メッキした。
【0039】
【表4】
【0040】
[実施例4]
(パラジウム−銅合金皮膜の調製)
同様に実施例1のAないしCによってではあるが、表5に示す電気メッキ浴の組成および電気メッキパラメータを用いてパラジウム合金皮膜を電気メッキした。パラジウム合金皮膜の形成後直ちに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、図3Aに示すように、得られたパラジウム合金皮膜の構造を観察した。加えて、パラジウム合金皮膜の組成を、図3Bに示すように、エネルギー分散型X線(EDX)分析装置で解析した。
【0041】
【表5】
【0042】
[実施例5]
(異なる電気メッキ浴を連続で用いる電気メッキ)
表3に示す電気メッキ浴の組成および条件を用いて実施例1の工程AないしCを反復し、パラジウム皮膜を多孔性金属支持体上に電気メッキした。唯一の相異は、ここでは電気メッキを30分間継続したことである。次に、支持体を取り出して脱イオン水で数回すすいだ後、表4に示す電気メッキ浴の組成および電気メッキ条件で電気メッキした。パラジウム皮膜の形成後直ちに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、図4に示すように、得られたパラジウム皮膜の構造を観察した。
【0043】
[実施例6]
(He透過性に関する試験)
室温で、実施例1から得られたパラジウム皮膜を有する多孔性金属支持体管(以下、「皮膜管」と呼ぶ)にHeを4絶対気圧で充填し、水浴に入れて皮膜管の緻密性を観察した。Heは皮膜管の外側まで透過できないことが見出された。これは、皮膜管が4絶対内圧のHeに耐えることができたことを意味する。
【0044】
[実施例7]
(Ar透過性に関する試験)
図5に示す装置をこの例において用いた。実施例1から得られた皮膜管(2)を殻管式反応器(shell and tube reactor)(3)に入れた。室温で、Arを反応器(3)内に気体導入口(1)を介して導入した。皮膜管の外部排出口(5)を開放することで反応器にArを充填することができた。その後、外部排出口(5)を閉鎖して反応器内部に背圧をかけた。背圧が10絶対気圧に到達したとき、皮膜管の内部排出口(4)内で観察を行い、Arが皮膜管の細孔を通過してそれらの内部に透過するかどうかを確認した。それらの試験結果は、反応器(3)から皮膜管(2)を通してそれらの内部に透過したArが存在しないことを示した。これは、皮膜管(2)が10絶対気圧のAr外圧に無事に耐えることができたことを意味する。
【0045】
[実施例8]
(H2透過性に関する試験)
同様に、図5に示す装置および実施例1から得られた皮膜管(2)をこの例において用いた。室温で、Arを反応器(3)内に気体導入口(1)を介して導入した。皮膜管の外部排出口(5)を開放することで反応器(3)にArを充填することができた。その後、導入気体を産業レベルのH2で置換しながら、反応器(3)の温度を室温から380℃まで2.5℃/分の速度で上昇させた。残留するArがH2によって反応器(3)から完全にパージされたとき、外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器内部で5絶対気圧の圧力が維持されるように調整した。そのような圧力差の下で、H2は皮膜メッキ管(2)を通して皮膜管の内部排出口(4)まで透過するように駆り立てられ、H2の透過速度は727ml/分と測定された。その後、外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器(3)内部で10絶対気圧の圧力が維持されるように調整したところ、H2の透過速度は1481ml/分と測定された。これらの結果は、本発明によって調製されたパラジウム皮膜が優れたH2透過性を示したことを実証していた。
【0046】
[実施例9]
(水素脆化試験)
溶接した多孔性ステンレス鋼管を600番の紙やすりを用いて機械的に研磨した後、10モルの塩酸に3ないし5分間浸漬し、脱イオン水ですすいだ。続いて、得られた管を塩化スズ増感液に5分間浸漬した後、脱イオン水に2分間浸漬した。次に、その管を塩化パラジウム賦活剤に5分間浸漬し、再度脱イオン水にさらに2分間浸漬した。そのようなサイクルを10回反復した後、活性化された管を(塩化アンモニウムパラジウムおよび還元剤ヒドラジンを含む)無電界メッキ液に浸漬して、無電界メッキ法によって調製されたパラジウム皮膜を有する多孔性ステンレス鋼管を得た(以下、「無電界メッキパラジウム皮膜管」と呼ぶ)。
【0047】
次に、無電界メッキパラジウム皮膜管および実施例1から得られる管に水素脆化試験を室温で施した。最初に、H2を無電界メッキパラジウム皮膜管に注入して3絶対気圧の圧力を達成した。図6に示すように、水素脆化および小片剥離現象が無電界メッキパラジウム皮膜に生じた。続いて、H2を本発明の電気メッキパラジウム皮膜管に注入し、それぞれ、3、5および10絶対気圧の圧力を達成した。水素脆化は見出されなかった。
【0048】
次に、操作温度をパラジウムの相変化温度、すなわち、約250℃ないし300℃に到達するまで上昇させた。本発明の電気メッキパラジウム皮膜管を、H2を導入してそれぞれ3、5および10絶対気圧の圧力を達成することによって再度試験した。相変化温度の下で6時間後、図7に示すように、低速のガス漏れが電気メッキパラジウム皮膜管において観察されたが、小片剥離は依然として生じなかった。
【0049】
[実施例10]
(H2精製試験)
同様に、図5に示す装置および実施例1から得られる皮膜管(2)をこの例において用いた。最初に、皮膜管の外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器(3)内部で常圧が維持されるように調整し、75%のH2および25%のCO2を含む気体混合物を供給気体として用いて皮膜管(2)によって得ることができるH2純度を試験した。気体混合物を反応器(3)に連続注入しながら、外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器(3)内部で5絶対気圧の圧力が維持されるようにさらに調製した。得られる圧力差の下で、反応器(3)内のH2は皮膜管(2)を通して皮膜管の内部排出口(4)まで透過した。この場合、326ml/分のH2流速が皮膜管(2)の外部排出口で測定され、純度は99.997%を上回っていた(CO、CO2およびCH4は10ppm未満の濃度)。皮膜管の外部排出口(5)で測定されたH2流速は465ml/分であって、H2の含有率は57.5%から75%に減少しており、これは55%の回収率を表していた。
【0050】
続いて、外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器(3)内部で10絶対気圧の圧力が維持されるようにさらに調製した。得られた圧力差の下で、反応器(3)内のH2は皮膜管(2)を通して皮膜管の内部排出口(4)まで透過した。この場合、649ml/分のH2流速が皮膜管の排出口から測定され、純度は99.997%を上回っていた(CO、CO2およびCH4は全て10ppm未満の濃度)。メッキ管の外部排出口(5)で測定されたH2流速は794ml/分であって、H2の含有率は54.6%から75%に減少し、これは60%の回収率を表していた。
【0051】
[実施例11]
図8に示すように、蒸気改質反応器(8)および(実施例1から得られる皮膜管を含む)パラジウム皮膜管反応器(9)を直列に接続した。2.5℃/分の速度で、蒸気改質反応器(8)の温度を室温から280℃まで上昇させ、それに対してパラジウム皮膜管反応器(9)の温度は室温から350℃まで上昇させた。温度が上昇したとき、Arを保護気体として反応器に注入した。ひとたび温度設定が達成されたら、メタノールおよび水の混合液をポンプ(10)によって供給することで蒸気改質反応器(8)内でメタノールを水と反応させ、H2およびCO2を生成させた。その後、生じた気体混合物に、パラジウム皮膜管反応器(9)を通過させることにより、分離のためのH2精製プロセスを施した。調節弁(12)をパラジウム皮膜管反応器(9)内部で10絶対気圧の圧力が維持されるように調整した。結果として、毎時30リットルのH2透過速度が測定され、H2純度は99.95%であった。
【0052】
上述の例は本発明の実施形態を例示し、それらの技術的特徴を説明しようとするものであり、本発明の保護の範囲を限定しようとするものではない。当該技術分野における熟練者が容易に達成可能であるあらゆる変更は本発明の範囲内にある。本発明の保護の範囲は添付書類としての以下の請求の範囲に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に従ってパラジウム皮膜を多孔性金属支持体上に電気メッキするための方法の流れ図を示す図。
【図2】支持体の異なる回転速度(A:10rpm、B:20rpm、C:50rpm、D:100rpm、E:500rpm)で本発明に従って電気メッキされたパラジウム皮膜の電子顕微鏡写真を示す図。
【図3A】本発明に従って電気メッキされたパラジウム合金皮膜の電子顕微鏡写真を示す。
【図3B】本発明に従って電気メッキされたパラジウム合金皮膜の組成解析結果を示す。
【図4】本発明による2段階電気メッキを用いて電気メッキされたパラジウム皮膜の電子顕微鏡写真を示す。
【図5】パラジウム皮膜殼管式反応器の模式図。
【図6】従来の無電界メッキパラジウム皮膜に対する水素脆化試験の結果を示す写真。
【図7】本発明の電気メッキパラジウム皮膜に対する水素脆化試験の結果を示す写真。
【図8】本発明のパラジウム皮膜を用いる反応器の模式図。
【技術分野】
【0001】
本発明はパラジウム含有電気メッキ液および電気メッキによって多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を調製するための方法に関する。この方法は、多孔性金属支持体に強力に付着し、それにより水素生成もしくは合成の最中の触媒性反応器として有用なパラジウム皮膜管備品を提供する、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を生成する。
【背景技術】
【0002】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は、無電界メッキ法、真空スパッタリング法もしくは冷間圧延法を用いて調製することができる。多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜をメッキするには従来は無電界メッキ法、例えば、台湾特許公開第1232888号および米国特許第6152987号に開示されるものが用いられている。しかしながら、無電界メッキ法では、皮膜への付着は化学的に還元された金属粒子の基体上での物理的吸着に依存する。結果として、温度の変動でパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜が多孔性金属支持体から剥離することがある。さらに、パラジウム皮膜の調製において、無電界メッキ法は望ましい厚みを有するパラジウム皮膜を得るのに複数の被着(6ないし7回を上回る)を必要とする。さらに、均質化して調製プロセスを完了するため、生じる皮膜にはアニーリング処理が施される。加えて、異なるカチオン(例えば、Pdイオン、CuイオンおよびAgイオン)の還元速度および被着速度を制御することは困難である。したがって、単一のイオンを還元して個々の金属層を被着するのに複数の工程が必要であり、その後、アニーリング工程を高温で長時間行って2種類以上の金属を含む合金化金属層を得る。換言すると、無電界メッキ法は時間がかかり、かつ得られる付着性に乏しい。
【0003】
上述のように、パラジウム皮膜は多孔性金属支持体上に無電界メッキすることができる。パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は、日本国特許出願公開第2002−119834号および第2002−153740号において開示されるように、多孔性セラミック支持体上にも無電界メッキされている。多孔性セラミックもしくはガラス支持体はナノサイズの細孔(10−200nm)を備える緻密な表面を有するため、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は容易にそれらの細孔を遮断することができ、したがって、より良好なメッキ皮膜を創出することができる。しかしながら、ナノサイズの細孔を備える多孔性支持体材料は高価であり、それらの製造経費はこの製品を市場において競争力の低いものにしている。
【0004】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を調製するための真空スパッタリング法においては、高価な真空装置およびそれらに含まれるスパッタリング標的も製造経費を押し上げ、したがって、市場においては望ましいものではない。
【0005】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の調製への冷間圧延法の使用に関しては、生じる皮膜を特有の方法で多孔性支持体に付着させる必要がある。したがって、それらの手順は複雑であり、皮膜の付着性は乏しく、かつ製造收率は低い。この方法もやはり魅力に欠ける。
【0006】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を電気メッキするための現時点で公知の技術は、主として平滑な平面を備える一般的な支持体に、主として処理もしくは装飾の目的で適用される。例えば、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を平滑な表面上に電気メッキする技術は、典型的には、表面上での酸化による脱色を防止するために装飾品、例えば、宝石に適用されるか、もしくは溶接性を改善するために電子部品に適用される。この技術は接触抵抗を低減し、酸化防止特性を強化する。生じる皮膜は、例えば米国特許第4486274号に開示されるもののように、約0.3mmないし約2mmの範囲の厚みを有する。しかしながら、そのような公知技術において用いられるパラジウム塩電気メッキ液の配合物が多孔性金属支持体の電気メッキに適用されるとき、欠陥のない緻密なパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を得ることは不可能である。実際には、生じるメッキ皮膜には幾らかのピンホールがあり、それを高純度のH2を供給するのに用いられる精製要素に不適切なものとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結果として、望ましい緻密性およびH2透過性を備えるパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を、多孔性金属支持体上に、より単純で、時間を節約し、かつ経済的な方法で調製するための方法を提供する一般的な要求が産業界に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的の1つは、硫酸パラジウム、反応性導電性塩、錯化剤および緩衝剤を含むパラジウム含有電気メッキ液を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、多孔性金属支持体上のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供するための方法であって、多孔性支持体を準備することと、並びにパラジウム含有電気メッキ液を用いてパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を多孔性金属支持体上に電気メッキすることと、を含む方法を提供することである。該パラジウム含有電気メッキ液はパラジウム塩、反応性導電性塩、錯化剤および緩衝剤を含む。
【0010】
本発明のさらなる目的は、多孔性金属基体、基体の表面上にコートされた中間層、および中間層上にコートされたパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を含む、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を備える複合体を提供することである。このパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は複合体の基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約3絶対気圧まで高い条件下で剥離がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、硫酸パラジウム、反応性導電性塩、錯化剤および緩衝剤を含むパラジウム含有電気メッキ液を提供する。この電気メッキ液中に、約2g/Lないし約200g/L、好ましくは約5g/Lないし約50g/Lの硫酸パラジウム中のパラジウムが存在する。約10g/Lないし約200g/L、好ましくは約70g/Lないし約150g/Lの反応性導電性塩も存在する。約10g/Lないし約150g/L、好ましくは約30ないし約70g/Lの錯化剤が存在する。この電気メッキ液が約9ないし約12、好ましくは約10ないし約11のpHを有するようにするのに十分な緩衝剤が存在する。
【0012】
本発明のパラジウム含有電気メッキ液において、被着効率およびパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の品質が改善されるように、反応性導電性塩は導電性イオンを提供して電気メッキ液の導電性を強化することができる。本発明に適する反応性導電性塩にはSO42-イオン供給性化合物が含まれ、IA族金属、アンモニウム塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択することもできる。SO42-イオン供給性化合物が反応性導電性塩として用いられるとき、電気メッキ浴の導電性を強化するだけではなく、低溶解度のパラジウム塩の溶解を促進することもできる。すると、電気メッキ浴中のパラジウム濃度が増加し、導電性がさらに強化される。例えば(それらに限定されるものではないが)、本発明において用いられる反応性導電性塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。好ましい反応性導電性塩は硫酸アンモニウムである。
【0013】
当該技術分野における熟練者に公知のように、錯化剤の主な目的は電気メッキ系の安定性を改善することである。一般には、本発明に有用な錯化剤は、ホウ酸、リン酸塩、次リン酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。典型的に用いられるEDTAの塩はEDTAのIA族金属塩および/もしくはIIA族金属塩である。例えば(それらに限定されるものではないが)、錯化剤は以下からなる群より選択することができる:ホウ酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、次リン酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA−Na2)、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(EDTA−Na4)、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩(EDTA−K2)、エチレンジアミン四酢酸三カリウム塩(EDTA−K3)、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム塩(EDTA−Mg)およびそれらの組み合わせ。錯化剤は、好ましくは、硝酸カリウム、クエン酸アンモニウム、EDTA−Na2、EDTA−Na4およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0014】
本発明のパラジウム含有電気メッキ液における緩衝剤はパラジウムの被着速度を低下させる役目を果たす。より具体的には、貴金属と同様に、パラジウムが有する標準還元電位は0.997Vまでである(すなわち、還元反応が非常に迅速に生じる)。したがって、電気メッキプロセス全体を制御するには、通常、緩衝剤を電気メッキ液に添加してパラジウム金属の還元反応の速度を低下させる。そのようにすることで、均一なパラジウムもしくはパラジウム合金被膜を支持体上に形成することができる。一般には、OH-イオンがそれ自体で望ましい緩衝効果を生じることが可能であり、あらゆる適切な水酸化物を本発明において緩衝剤として用いることができる。例えば(それらに限定されるものではないが)、以下からなる群より選択される水酸化物を本発明のパラジウム含有電気メッキ液における緩衝剤として用いることができる:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムおよびそれらの組み合わせ。本発明の好ましい電気メッキ液は水酸化アンモニウムである。
【0015】
上述の成分に加えて、硫酸を本発明のパラジウム含有電気メッキ液に任意に添加し、硫酸パラジウムの溶解を促進することができる。添加される硫酸の量は硫酸パラジウムの量に依存する。通常、硫酸の量は電気メッキ液中のSO42-の濃度をリットルあたり約0.2モルないし約4モル、好ましくは、約0.5モルないし2モルにするものである。
【0016】
本発明のパラジウム含有電気メッキ液はパラジウム合金被膜の被着にも用いることができる。このパラジウム含有電気メッキ液は対応する金属(第2金属)塩、例えば、銅塩、銀塩、金塩、ニッケル塩、白金塩、インジウム塩およびそれらの組み合わせをさらに含む。第2金属塩の含有量は第2金属の種に従って変化する。本発明の1実施形態において、パラジウム含有電気メッキ液は銅塩をさらに含んでパラジウム−銅合金被膜を形成する。この場合、銅塩、例えば、硫酸銅もしくは塩化銅を電気メッキ液のリットルあたり銅が約0.2gないし100gの範囲の量で用いることができる。第2金属を添加する場合、上記錯化剤は、電気メッキ液の安定性を高めることに加えて、より高い(もしくはより低い)還元電位を有する金属と錯体を形成してそれらの標準還元電位を低下(もしくは上昇)させることもできる。このようにして、2種類の金属の還元電位を、支持体の表面上に共に被着して均一なパラジウム合金皮膜が形成されるようにより近くに調整する。
【0017】
本発明は、さらに、多孔性金属支持体上のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供するための方法であって、
多孔性支持体を準備する工程、および
パラジウム含有電気メッキ液を用いてパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を多孔性金属支持体上に電気メッキする工程、
を含み、該パラジウム含有電気メッキ液が、
2g/Lないし200g/Lのパラジウム塩中のパラジウム、
10g/Lないし200g/Lの反応性導電性塩、
10g/Lないし150g/Lの錯化剤、および、
電気メッキ液に約9ないし12のpHをもたらすのに十分な緩衝剤
を含む方法を提供する。
【0018】
この本発明の方法によると、あらゆる多孔性金属支持体、例えば(それらに限定されるものではないが)、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金およびそれらの組み合わせを用いることができる。鉄合金が好ましい。経済的には、鉄合金として分類される多孔性ステンレス鋼が最適な電気メッキ支持体である。本発明の方法において、電気メッキ工程は約0.01A/dm2ないし約1.5A/dm2、好ましくは、約0.2A/dm2ないし約1.0A/dm2の範囲の電流密度の下で行う。電気メッキ浴温度は約40℃ないし約90℃、好ましくは、約40℃ないし約60℃の範囲をとる。さらに、金属支持体は、任意に、電気メッキ工程の最中に1000rpm以下の速度で回転させることができる。
【0019】
硫酸パラジウムに加えて、本発明の方法は、塩化テトラアミンパラジウム(Pd(NH4)4Cl2)、塩化アンモニウムパラジウム(Pd(NH4)2Cl4)、塩化パラジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるパラジウム塩を用いることもできる。電気メッキ液中のパラジウム塩の含有量は約2g/Lないし約200g/L(パラジウムとして)、好ましくは、約5g/Lないし約50g/Lの範囲をとる。反応性導電性パラジウム、錯化剤および緩衝剤の種および量の詳細は本発明のパラジウム含有電気メッキ液に関する上記説明に見出すことができ、したがって、ここでさらに説明することはしない。
【0020】
本発明の方法において、パラジウムもしくはパラジウム合金の電気メッキは、単一のパラジウム塩を含む電気メッキ液を用いる1回の電気メッキ処理により、もしくは2種類以上のパラジウム塩を含む電気メッキ液を用いる複数回の電気メッキ処理により行うことができる。さらに、複数回の電気メッキ処理については、各々の処理の電気メッキ液が同じパラジウム塩を含んでいても異なるパラジウム塩を含んでいてもよい。例えば、第1の電気メッキ処理をパラジウム塩として硫酸パラジウムを含む電気メッキ液で行ってパラジウム薄膜を支持体上に電気メッキし、次いで次の電気メッキ処理をパラジウム塩として塩化パラジウムを含む電気メッキ液で行って望ましい総厚みを有するパラジウム皮膜を提供することができる。この場合、塩化パラジウムの比較的安価な価格のため、前記2段階電気メッキ方式を用いる望ましいメッキ皮膜の調製はパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の電気メッキの経費を節約する。その代わりに、第1の電気メッキ処理をパラジウム塩として塩化パラジウムを含む電気メッキ液を用いて行い、次いで次の電気メッキ処理をパラジウム塩として硫酸パラジウムを含む電気メッキ液を用いて行うこともできる。加えて、第2のメッキ処理はあらゆる適切な方法、例えば、電気メッキ法、無電界メッキ法、真空スパッタリング法もしくは冷間圧延法で行うことができる。
【0021】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の電気メッキプロセスの最中、パラジウムイオンは陰極で電子を受け取って支持体上に金属Pdとして被着する。同時に、H2が陰極で発生する。支持体上でのH2堆積および金属Pdの両者はパラジウム含有皮膜の脆化感受性を生じる。そのようなH2によって被る脆化感受性を回避するため、パラジウムもしくはパラジウム合金電気メッキプロセスの最中に乱流を生成してH2による攪乱を緩和もしくは防止することができる。乱流を生成するのにあらゆる適切な手段、例えば(それらに限定されるものではないが)、上述のような多孔性金属支持体の回転および/もしくは水流攪拌、空気攪拌、陰極攪拌もしくは超音波攪拌による望ましい乱流の生成を用いることができる。多孔性金属支持体を回転させて乱流を生成するとき、同じ電流密度の下では支持体を速く回転させるほど生じるパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜がより良好である(すなわち、皮膜がより緻密な格子構造を示す)ことが見出されている。本発明によると、金属支持体の回転速度は、一般には、約1000rpm以下であり、好ましくは、約100rpmないし約500rpmの範囲内で制御する。
【0022】
本発明の方法において、多孔性金属支持体は、任意に、電気メッキ工程に先立って幾つかの予備処理、例えば、脱脂、溶接および平滑化で処理することができる。特に、現時点で商業的に入手可能なほとんど全ての多孔性金属支持体は表面上が脂性物質で汚されており、それは電気メッキ液を支持体から分離させ、電気メッキ効果に悪影響を及ぼす。この分離は最終的に、生じる皮膜のブリスター形成、剥離もしくは小片剥離につながる。一般には、そのような有害現象を回避するため、多孔性金属支持体の内側および外側の両者の脂性物質の洗浄に有機溶媒、例えば、トルエンもしくはアセトンを用いていた。この脱脂プロセスに続いて、例えば、600番の紙やすりを用いて多孔性金属支持体を研磨し、その金属支持体の調製に含まれる粉末冶金手順において形成される作業硬化層(work−hardening layer)および焼結手順において形成される酸化層を除去することもできる。
【0023】
さらに、本発明のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の電気メッキに先立ち、中間層を多孔性金属支持体上に任意にメッキすることができる。具体的には、中間層は多孔性金属支持体の細孔を縮小させる(すなわち、細孔を充填して平滑な支持体表面を徐々に形成する)ことができ、これは緻密なパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供する上で有効である。加えて、中間層はパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜と多孔性金属支持体との付着を改善して剥離を防止し、それによりパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の耐用年数を長期化することができる。例えば(それらに限定されるものではないが)、中間層はニッケル、銅、銀、金、白金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成され得る。中間層に好ましい材料はニッケルである。ここで、中間層は必要に応じて2回以上電気メッキすることができる。一方、電気メッキプロセスの最中に電気メッキ液に乱流を任意に導入してそこで発生するH2による攪乱を防止することができる。中間層を用いる技術は以下の著者による論文に記載されている:Renouprez,1 J.F.et al in Journal of Catalysis,170,1997,p.181、Seung−Eun Nam in Journal of Membrane Science,153,1999,p.163、Seung−Eun Nam in Journal of Membrane Science,170,2000,p.91およびJournal of Membrane Science,192,2001,p.177、それらの全ては参照のためここに組み込まれる。
【0024】
本発明において用いられる中間層電気メッキ手順の実施形態が、ニッケルを中間層として用いて、以下に説明する。この場合、予備処理の後、多孔性金属支持体をニッケルの予備メッキのためにメッキ容器に入れる。ここで、電気メッキ浴の温度は約30℃ないし約50℃の範囲をとる。支持体の回転速度は約500rpmである。電流密度は約5A/dm2ないし約10A/dm2、好ましくは、約7A/dm2ないし約10A/dm2の範囲をとる。電気メッキ持続時間は約3分ないし約6分、好ましくは、約4分ないし約5分の範囲をとる。その後、ニッケルで予備メッキされている多孔性金属支持体を洗浄し(例えば、超音波水すすぎにより)、第2のニッケルメッキ手順をニッケルメッキ容器において行う。第2のニッケルメッキ手順においては、電気メッキ浴の温度は約30℃ないし約50℃の範囲をとる。支持体の回転速度は約500rpmである。電流密度は約2A/dm2ないし約6A/dm2、好ましくは、約4A/dm2ないし約6A/dm2の範囲をとる。電気メッキ持続時間は約3分ないし約7分、好ましくは、約5分ないし約7分の範囲をとる。最後に、複数サイクルの水すすぎおよび乾燥の後、中間層がメッキされた多孔性金属支持体が得られる。
【0025】
本発明の電気メッキ法をH2精製用の管の提供に用いるとき、脱脂プロセスに続いて、多孔性金属支持体を精製機器の他の金属備品と、両端で、適切な方法、例えば、アルゴンアーク溶接を用いて任意に接合する。その後、多孔性金属支持体の表面を上述のように機械的に研磨し、金属支持体の調製の最中に粉末冶金手順において形成される作業硬化層および焼結手順において形成される酸化層を除去する。前述の溶接プロセスの残留痕跡も除去する。このようにすることで、多孔性支持体が平滑な表面を有し、次の電気メッキ手順の効果が強化されることが保証される。その後、この平滑な金属支持体を水ですすいだ後、次の電気メッキの準備が整う。
【0026】
図1は、本発明に従って多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を調製するための方法の1実施形態を示す。図1に示すように、予備処理、例えば、脱脂、管溶接および表面平滑化の次に、多孔性金属支持体を水ですすいで任意に乾燥させた後、ニッケル予備メッキ、水すすぎ、ニッケルメッキ、水すすぎおよび任意の乾燥工程が続く。最後に、金属支持体をパラジウムで電気メッキし、水で洗浄し、かつ乾燥させて多孔性金属支持体およびパラジウム被膜の両者から形成される金属管が提供する。
【0027】
したがって、本発明は、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を有する複合体であって、
多孔性金属基体、
基体の表面上にコートされた中間層、および
中間層上にコートされたパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜、
を含み、パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は複合体の基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約3絶対気圧、好ましくは約5絶対気圧、より好ましくは約10絶対気圧まで高い条件下で実質的に剥離がない複合体をさらに提供する。
【0028】
本発明の複合体において、上述のように、多孔性金属支持体は鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成され得る。好ましい材料は鉄合金である。経済的には、鉄合金として分類されるステンレス鋼が最も好ましい。基体とパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜との間に挿入される中間層は、ニッケル、銅、銀、金、白金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成され得る。ステンレス鋼が基体として用いられる場合、ニッケルが中間層の材料として好ましい。
【0029】
時間のかかる無電界メッキ法を用いる従来技術との比較において、本発明によるパラジウム含有電気メッキ液および多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を調製するための電気メッキ法は、熱処理を排除し、かつ調製時間を10倍低減させることができる。さらに、無電界メッキ法によって調製されたものと比較して、本発明の電気メッキ法によって調製されたパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は緻密な結晶粒を示し、かつ、H2精製構成要素において用いられるとき、H2透過性の点で無電界メッキ法によって調製されたものに劣ることはない。さらに、従来のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は水素脆化に対して脆弱である。対照的に、本発明のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は低温および高温の両者で水素脆化がなく、したがって、より高い適用性を有することが見出されている。従来のパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜の水素脆化はパラジウムとH2との間の相変化に関連する。それらの詳細は以下の著者によって著された論文に見出すことができる:F.A.Lewis in Int.J.Hydrogen Energy,Vol.21,No.6,pp.461−464,1996、Tea−Hyun Yang et al in Electrochimica Acta.,Vol.41,No.6,pp.843−844,1996およびE.Nowicka et al in Progress in Surface Science,Vol.48,Nos.1−4,pp.3−14,1995、これらの全ては参照のためここに組み込まれる。
【0030】
例示的実施形態を以下のように示し、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
(硫酸パラジウム電気メッキ液系)
A.多孔性ステンレス鋼支持体の処理
多孔性ステンレス鋼管をすすいでトルエンおよびアセトンで脱脂した後、それらから15cm長の区画を切断し、自動回転溶接機に通常の金属管と一直線にして入れた。アルゴンガスを8ml/分の速度で管に注入してそれらをアルゴンアーク溶接法によって溶接し、パラジウム皮膜を電気メッキするための支持体を得た。この溶接プロセスの後、多孔性ステンレス鋼支持体および通常の管とのその溶接接合部を平滑化のため600番の紙やすりを用いて機械的に研磨し、次いで超音波水すすぎ、続いてオーブン内、150℃の温度での乾燥プロセスを行った。次に、1絶対気圧のHe流を支持体内に注入し、支持体からの気体透過速度を試験した。得られた気体透過速度は20L/分であった。
【0032】
B.中間層の電気メッキ
支持体の予備メッキ部分は50cm2の露出面積を有していた。予備処理された支持体を、2リットルの電気メッキ液を収容する(120cmの半径および200cmの高さを有する)ニッケル予備メッキ容器に入れた。その電気メッキ浴の組成および電気メッキパラメータを表1に示した。支持体を予備メッキしてニッケルコーティングを形成した後、超音波水すすぎプロセスによって洗浄した。その後、予備メッキした支持体を2リットルの電気メッキ液を収容する(120cmの半径および200cmの高さを有する)ニッケルメッキ容器に再度入れた。その電気メッキ浴および電気メッキパラメータを表2に示した。複数回の水すすぎの後、支持体を乾燥のため150℃の温度でオーブンに入れ、次いで1絶対気圧のHe流を支持体内に注入して支持体からの気体透過速度を試験した。得られた気体透過速度は4L/分であった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
C.パラジウム皮膜の電気メッキ
得られたニッケル中間層を有する支持体を、2リットルの電気メッキ浴を収容する(120cmの半径および200cmの高さを有する)パラジウム電気メッキ容器に入れた。電気メッキ浴の組成および電気メッキパラメータを表3に示した。電気メッキプロセスの後、支持体を水で多数回洗浄し、次いでオーブン内、150℃の温度で乾燥させて最終的に緻密な格子構造を有するパラジウム皮膜を多孔性ステンレス鋼支持体上に形成した。
【0036】
【表3】
【0037】
[実施例2]
(支持体の回転速度の試験)
実施例1の工程AないしCを、同じ条件下ではあるが1A/dm2の電流密度並びに10rpm、50rpm、100rpm、200rpmおよび500rpmの回転速度で反復した。パラジウム皮膜の形成後直ちに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られたパラジウム皮膜の構造を観察した。図2は、それぞれ、10rpm(A)、50rpm(B)、100rpm(C)、200rpm(D)および500rpm(E)の回転速度で得られたパラジウム皮膜のSEM写真を示す。同じ電流密度の下で、より高速の回転速度がより緻密なパラジウム皮膜を生じることを見てとることができる。
【0038】
[実施例3]
(塩化パラジウム電気メッキ液系)
実施例1の工程AないしCと同じであるが、表4に列挙される電気メッキ浴の組成および電気メッキパラメータを用いてパラジウム皮膜を電気メッキした。
【0039】
【表4】
【0040】
[実施例4]
(パラジウム−銅合金皮膜の調製)
同様に実施例1のAないしCによってではあるが、表5に示す電気メッキ浴の組成および電気メッキパラメータを用いてパラジウム合金皮膜を電気メッキした。パラジウム合金皮膜の形成後直ちに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、図3Aに示すように、得られたパラジウム合金皮膜の構造を観察した。加えて、パラジウム合金皮膜の組成を、図3Bに示すように、エネルギー分散型X線(EDX)分析装置で解析した。
【0041】
【表5】
【0042】
[実施例5]
(異なる電気メッキ浴を連続で用いる電気メッキ)
表3に示す電気メッキ浴の組成および条件を用いて実施例1の工程AないしCを反復し、パラジウム皮膜を多孔性金属支持体上に電気メッキした。唯一の相異は、ここでは電気メッキを30分間継続したことである。次に、支持体を取り出して脱イオン水で数回すすいだ後、表4に示す電気メッキ浴の組成および電気メッキ条件で電気メッキした。パラジウム皮膜の形成後直ちに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、図4に示すように、得られたパラジウム皮膜の構造を観察した。
【0043】
[実施例6]
(He透過性に関する試験)
室温で、実施例1から得られたパラジウム皮膜を有する多孔性金属支持体管(以下、「皮膜管」と呼ぶ)にHeを4絶対気圧で充填し、水浴に入れて皮膜管の緻密性を観察した。Heは皮膜管の外側まで透過できないことが見出された。これは、皮膜管が4絶対内圧のHeに耐えることができたことを意味する。
【0044】
[実施例7]
(Ar透過性に関する試験)
図5に示す装置をこの例において用いた。実施例1から得られた皮膜管(2)を殻管式反応器(shell and tube reactor)(3)に入れた。室温で、Arを反応器(3)内に気体導入口(1)を介して導入した。皮膜管の外部排出口(5)を開放することで反応器にArを充填することができた。その後、外部排出口(5)を閉鎖して反応器内部に背圧をかけた。背圧が10絶対気圧に到達したとき、皮膜管の内部排出口(4)内で観察を行い、Arが皮膜管の細孔を通過してそれらの内部に透過するかどうかを確認した。それらの試験結果は、反応器(3)から皮膜管(2)を通してそれらの内部に透過したArが存在しないことを示した。これは、皮膜管(2)が10絶対気圧のAr外圧に無事に耐えることができたことを意味する。
【0045】
[実施例8]
(H2透過性に関する試験)
同様に、図5に示す装置および実施例1から得られた皮膜管(2)をこの例において用いた。室温で、Arを反応器(3)内に気体導入口(1)を介して導入した。皮膜管の外部排出口(5)を開放することで反応器(3)にArを充填することができた。その後、導入気体を産業レベルのH2で置換しながら、反応器(3)の温度を室温から380℃まで2.5℃/分の速度で上昇させた。残留するArがH2によって反応器(3)から完全にパージされたとき、外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器内部で5絶対気圧の圧力が維持されるように調整した。そのような圧力差の下で、H2は皮膜メッキ管(2)を通して皮膜管の内部排出口(4)まで透過するように駆り立てられ、H2の透過速度は727ml/分と測定された。その後、外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器(3)内部で10絶対気圧の圧力が維持されるように調整したところ、H2の透過速度は1481ml/分と測定された。これらの結果は、本発明によって調製されたパラジウム皮膜が優れたH2透過性を示したことを実証していた。
【0046】
[実施例9]
(水素脆化試験)
溶接した多孔性ステンレス鋼管を600番の紙やすりを用いて機械的に研磨した後、10モルの塩酸に3ないし5分間浸漬し、脱イオン水ですすいだ。続いて、得られた管を塩化スズ増感液に5分間浸漬した後、脱イオン水に2分間浸漬した。次に、その管を塩化パラジウム賦活剤に5分間浸漬し、再度脱イオン水にさらに2分間浸漬した。そのようなサイクルを10回反復した後、活性化された管を(塩化アンモニウムパラジウムおよび還元剤ヒドラジンを含む)無電界メッキ液に浸漬して、無電界メッキ法によって調製されたパラジウム皮膜を有する多孔性ステンレス鋼管を得た(以下、「無電界メッキパラジウム皮膜管」と呼ぶ)。
【0047】
次に、無電界メッキパラジウム皮膜管および実施例1から得られる管に水素脆化試験を室温で施した。最初に、H2を無電界メッキパラジウム皮膜管に注入して3絶対気圧の圧力を達成した。図6に示すように、水素脆化および小片剥離現象が無電界メッキパラジウム皮膜に生じた。続いて、H2を本発明の電気メッキパラジウム皮膜管に注入し、それぞれ、3、5および10絶対気圧の圧力を達成した。水素脆化は見出されなかった。
【0048】
次に、操作温度をパラジウムの相変化温度、すなわち、約250℃ないし300℃に到達するまで上昇させた。本発明の電気メッキパラジウム皮膜管を、H2を導入してそれぞれ3、5および10絶対気圧の圧力を達成することによって再度試験した。相変化温度の下で6時間後、図7に示すように、低速のガス漏れが電気メッキパラジウム皮膜管において観察されたが、小片剥離は依然として生じなかった。
【0049】
[実施例10]
(H2精製試験)
同様に、図5に示す装置および実施例1から得られる皮膜管(2)をこの例において用いた。最初に、皮膜管の外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器(3)内部で常圧が維持されるように調整し、75%のH2および25%のCO2を含む気体混合物を供給気体として用いて皮膜管(2)によって得ることができるH2純度を試験した。気体混合物を反応器(3)に連続注入しながら、外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器(3)内部で5絶対気圧の圧力が維持されるようにさらに調製した。得られる圧力差の下で、反応器(3)内のH2は皮膜管(2)を通して皮膜管の内部排出口(4)まで透過した。この場合、326ml/分のH2流速が皮膜管(2)の外部排出口で測定され、純度は99.997%を上回っていた(CO、CO2およびCH4は10ppm未満の濃度)。皮膜管の外部排出口(5)で測定されたH2流速は465ml/分であって、H2の含有率は57.5%から75%に減少しており、これは55%の回収率を表していた。
【0050】
続いて、外部排出口(5)の調節弁(7)を反応器(3)内部で10絶対気圧の圧力が維持されるようにさらに調製した。得られた圧力差の下で、反応器(3)内のH2は皮膜管(2)を通して皮膜管の内部排出口(4)まで透過した。この場合、649ml/分のH2流速が皮膜管の排出口から測定され、純度は99.997%を上回っていた(CO、CO2およびCH4は全て10ppm未満の濃度)。メッキ管の外部排出口(5)で測定されたH2流速は794ml/分であって、H2の含有率は54.6%から75%に減少し、これは60%の回収率を表していた。
【0051】
[実施例11]
図8に示すように、蒸気改質反応器(8)および(実施例1から得られる皮膜管を含む)パラジウム皮膜管反応器(9)を直列に接続した。2.5℃/分の速度で、蒸気改質反応器(8)の温度を室温から280℃まで上昇させ、それに対してパラジウム皮膜管反応器(9)の温度は室温から350℃まで上昇させた。温度が上昇したとき、Arを保護気体として反応器に注入した。ひとたび温度設定が達成されたら、メタノールおよび水の混合液をポンプ(10)によって供給することで蒸気改質反応器(8)内でメタノールを水と反応させ、H2およびCO2を生成させた。その後、生じた気体混合物に、パラジウム皮膜管反応器(9)を通過させることにより、分離のためのH2精製プロセスを施した。調節弁(12)をパラジウム皮膜管反応器(9)内部で10絶対気圧の圧力が維持されるように調整した。結果として、毎時30リットルのH2透過速度が測定され、H2純度は99.95%であった。
【0052】
上述の例は本発明の実施形態を例示し、それらの技術的特徴を説明しようとするものであり、本発明の保護の範囲を限定しようとするものではない。当該技術分野における熟練者が容易に達成可能であるあらゆる変更は本発明の範囲内にある。本発明の保護の範囲は添付書類としての以下の請求の範囲に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に従ってパラジウム皮膜を多孔性金属支持体上に電気メッキするための方法の流れ図を示す図。
【図2】支持体の異なる回転速度(A:10rpm、B:20rpm、C:50rpm、D:100rpm、E:500rpm)で本発明に従って電気メッキされたパラジウム皮膜の電子顕微鏡写真を示す図。
【図3A】本発明に従って電気メッキされたパラジウム合金皮膜の電子顕微鏡写真を示す。
【図3B】本発明に従って電気メッキされたパラジウム合金皮膜の組成解析結果を示す。
【図4】本発明による2段階電気メッキを用いて電気メッキされたパラジウム皮膜の電子顕微鏡写真を示す。
【図5】パラジウム皮膜殼管式反応器の模式図。
【図6】従来の無電界メッキパラジウム皮膜に対する水素脆化試験の結果を示す写真。
【図7】本発明の電気メッキパラジウム皮膜に対する水素脆化試験の結果を示す写真。
【図8】本発明のパラジウム皮膜を用いる反応器の模式図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム含有電気メッキ液であって、
約2g/Lないし約200g/Lの硫酸パラジウム中のパラジウム、
約10g/Lないし約200g/Lの反応性導電性塩、
約10g/Lないし約150g/Lの錯化剤、および、
電気メッキ液に約9ないし約12のpHをもたらすのに十分な緩衝剤、
を含むパラジウム含有電気メッキ液。
【請求項2】
約5g/Lないし約50g/Lの硫酸パラジウム中のパラジウム、約70g/Lないし約150g/Lの前記反応性導電性塩、約30g/Lないし約70g/Lの前記錯化剤および電気メッキ液に約10ないし約11のpHをもたらすのに十分な緩衝剤を含む請求項1の電気メッキ液。
【請求項3】
前記反応性導電性塩がSO42-イオン供給性化合物である請求項1の電気メッキ液。
【請求項4】
前記反応性導電性塩が、IA族金属の塩、アンモニウム塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項5】
前記反応性導電性塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項6】
前記反応性導電性塩が硫酸アンモニウムである請求項1の電気メッキ液。
【請求項7】
前記錯化剤が、ホウ酸、リン酸塩、次リン酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項8】
前記錯化剤が、ホウ酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、次リン酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA−Na2)、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(EDTA−Na4)、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩(EDTA−K2)、エチレンジアミン四酢酸三カリウム塩(EDTA−K3)、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム塩(EDTA−Mg)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項9】
前記錯化剤が、硝酸カリウム、クエン酸アンモニウム、EDTA−Na2、EDTA−Na4およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項10】
前記緩衝剤が水酸化物である請求項1の電気メッキ液。
【請求項11】
前記緩衝剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項12】
前記緩衝剤が水酸化アンモニウムである請求項1の電気メッキ液。
【請求項13】
硫酸をさらに含む請求項1の電気メッキ液。
【請求項14】
前記硫酸が電気メッキ液中のSO42-の濃度をリットルあたり約0.2モルないし約4モルとするのに十分な量である請求項13の電気メッキ液。
【請求項15】
硫酸パラジウム以外の第2の金属塩をさらに含む請求項1の電気メッキ液。
【請求項16】
前記第2の金属塩が銅塩、銀塩、金塩、ニッケル塩、白金塩、インジウム塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項15の電気メッキ液。
【請求項17】
前記第2の金属塩が、硫酸銅、塩化銅およびそれらの組み合わせからなる群より選択される銅塩である請求項15の電気メッキ液。
【請求項18】
前記銅塩が電気メッキ液にリットルあたり約0.2gないし約100gの銅を含ませるのに十分な量である請求項17の電気メッキ液。
【請求項19】
多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供するための方法であって、
多孔性金属支持体を準備することと、
パラジウム含有電気メッキ液を用いてパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を前記金属支持体上に電気メッキすることと、
を含み、
前記パラジウム含有電気メッキ液が、
約2g/Lないし約200g/Lのパラジウム塩中のパラジウム、
約10g/Lないし約200g/Lの反応性導電性塩、
約10g/Lないし約150g/Lの錯化剤、および、
前記電気メッキ液に約9ないし12のpHをもたらすのに十分な緩衝剤、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記多孔性金属支持体が、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成される請求項19の方法。
【請求項21】
前記多孔性金属支持体がステンレス鋼で構成される請求項19の方法。
【請求項22】
前記電気メッキ工程を約40℃ないし約90℃の範囲の電気メッキ浴温度で行う請求項19の方法。
【請求項23】
前記電気メッキ工程を約0.01A/dm2ないし約1.5A/dm2の範囲の電流密度の下で行う請求項19の方法。
【請求項24】
前記電気メッキ工程を約0.2A/dm2ないし約1.0A/dm2の範囲の電流密度の下で行う請求項19の方法。
【請求項25】
前記金属支持体を前記電気メッキ工程の最中に回転させる請求項19の方法。
【請求項26】
前記金属支持体を約1000rpm以下の速度で回転させる請求項25の方法。
【請求項27】
前記金属支持体を約100rpmないし約500rpmの範囲の速度で回転させる請求項25の方法。
【請求項28】
前記パラジウム塩が、硫酸パラジウム、塩化テトラアミンパラジウム(Pd(NH4)4Cl2)、塩化アンモニウムパラジウム(Pd(NH4)2Cl4)、塩化パラジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項19の方法。
【請求項29】
前記パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を電気メッキする工程に先立って前記金属支持体上に中間層をコーティングすることをさらに含む請求項19の方法。
【請求項30】
前記中間層が電気メッキ法によって前記金属支持体上にコートされ、かつニッケル、銅、銀、金、白金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成される請求項29の方法。
【請求項31】
前記中間層がニッケル層である請求項30の方法。
【請求項32】
前記電気メッキ工程が2段階電気メッキ工程である請求項19の方法。
【請求項33】
前記2段階電気メッキ工程の一方の段階が硫酸パラジウムを前記パラジウム塩として用い、かつ他方が塩化パラジウムを前記パラジウム塩として用いる請求項32の方法。
【請求項34】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を有する複合体であって、
多孔性金属基体、
前記基体の表面上にコートされた中間層、および
前記中間層上にコートされたパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜、
を含み、前記パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は前記複合体の前記基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約3絶対気圧まで高い条件下で実質的に剥離がない、複合体。
【請求項35】
前記多孔性金属基体が、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成される請求項34の複合体。
【請求項36】
前記多孔性金属基体がステンレス鋼で構成される請求項34の複合体。
【請求項37】
前記中間層が、ニッケル、銅、銀、金、白金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成される請求項34の複合体。
【請求項38】
前記中間層がニッケルで構成される請求項34の複合体。
【請求項39】
前記パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜が、前記複合体の前記基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約5絶対気圧まで高い条件下で実質的に剥離がない請求項34の複合体。
【請求項40】
前記パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜が、前記複合体の前記基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約10絶対気圧まで高い条件下で実質的に剥離がない請求項34の複合体。
【請求項1】
パラジウム含有電気メッキ液であって、
約2g/Lないし約200g/Lの硫酸パラジウム中のパラジウム、
約10g/Lないし約200g/Lの反応性導電性塩、
約10g/Lないし約150g/Lの錯化剤、および、
電気メッキ液に約9ないし約12のpHをもたらすのに十分な緩衝剤、
を含むパラジウム含有電気メッキ液。
【請求項2】
約5g/Lないし約50g/Lの硫酸パラジウム中のパラジウム、約70g/Lないし約150g/Lの前記反応性導電性塩、約30g/Lないし約70g/Lの前記錯化剤および電気メッキ液に約10ないし約11のpHをもたらすのに十分な緩衝剤を含む請求項1の電気メッキ液。
【請求項3】
前記反応性導電性塩がSO42-イオン供給性化合物である請求項1の電気メッキ液。
【請求項4】
前記反応性導電性塩が、IA族金属の塩、アンモニウム塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項5】
前記反応性導電性塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項6】
前記反応性導電性塩が硫酸アンモニウムである請求項1の電気メッキ液。
【請求項7】
前記錯化剤が、ホウ酸、リン酸塩、次リン酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項8】
前記錯化剤が、ホウ酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、次リン酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA−Na2)、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(EDTA−Na4)、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩(EDTA−K2)、エチレンジアミン四酢酸三カリウム塩(EDTA−K3)、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム塩(EDTA−Mg)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項9】
前記錯化剤が、硝酸カリウム、クエン酸アンモニウム、EDTA−Na2、EDTA−Na4およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項10】
前記緩衝剤が水酸化物である請求項1の電気メッキ液。
【請求項11】
前記緩衝剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の電気メッキ液。
【請求項12】
前記緩衝剤が水酸化アンモニウムである請求項1の電気メッキ液。
【請求項13】
硫酸をさらに含む請求項1の電気メッキ液。
【請求項14】
前記硫酸が電気メッキ液中のSO42-の濃度をリットルあたり約0.2モルないし約4モルとするのに十分な量である請求項13の電気メッキ液。
【請求項15】
硫酸パラジウム以外の第2の金属塩をさらに含む請求項1の電気メッキ液。
【請求項16】
前記第2の金属塩が銅塩、銀塩、金塩、ニッケル塩、白金塩、インジウム塩およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項15の電気メッキ液。
【請求項17】
前記第2の金属塩が、硫酸銅、塩化銅およびそれらの組み合わせからなる群より選択される銅塩である請求項15の電気メッキ液。
【請求項18】
前記銅塩が電気メッキ液にリットルあたり約0.2gないし約100gの銅を含ませるのに十分な量である請求項17の電気メッキ液。
【請求項19】
多孔性金属支持体上にパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を提供するための方法であって、
多孔性金属支持体を準備することと、
パラジウム含有電気メッキ液を用いてパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を前記金属支持体上に電気メッキすることと、
を含み、
前記パラジウム含有電気メッキ液が、
約2g/Lないし約200g/Lのパラジウム塩中のパラジウム、
約10g/Lないし約200g/Lの反応性導電性塩、
約10g/Lないし約150g/Lの錯化剤、および、
前記電気メッキ液に約9ないし12のpHをもたらすのに十分な緩衝剤、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記多孔性金属支持体が、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成される請求項19の方法。
【請求項21】
前記多孔性金属支持体がステンレス鋼で構成される請求項19の方法。
【請求項22】
前記電気メッキ工程を約40℃ないし約90℃の範囲の電気メッキ浴温度で行う請求項19の方法。
【請求項23】
前記電気メッキ工程を約0.01A/dm2ないし約1.5A/dm2の範囲の電流密度の下で行う請求項19の方法。
【請求項24】
前記電気メッキ工程を約0.2A/dm2ないし約1.0A/dm2の範囲の電流密度の下で行う請求項19の方法。
【請求項25】
前記金属支持体を前記電気メッキ工程の最中に回転させる請求項19の方法。
【請求項26】
前記金属支持体を約1000rpm以下の速度で回転させる請求項25の方法。
【請求項27】
前記金属支持体を約100rpmないし約500rpmの範囲の速度で回転させる請求項25の方法。
【請求項28】
前記パラジウム塩が、硫酸パラジウム、塩化テトラアミンパラジウム(Pd(NH4)4Cl2)、塩化アンモニウムパラジウム(Pd(NH4)2Cl4)、塩化パラジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項19の方法。
【請求項29】
前記パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を電気メッキする工程に先立って前記金属支持体上に中間層をコーティングすることをさらに含む請求項19の方法。
【請求項30】
前記中間層が電気メッキ法によって前記金属支持体上にコートされ、かつニッケル、銅、銀、金、白金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成される請求項29の方法。
【請求項31】
前記中間層がニッケル層である請求項30の方法。
【請求項32】
前記電気メッキ工程が2段階電気メッキ工程である請求項19の方法。
【請求項33】
前記2段階電気メッキ工程の一方の段階が硫酸パラジウムを前記パラジウム塩として用い、かつ他方が塩化パラジウムを前記パラジウム塩として用いる請求項32の方法。
【請求項34】
パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜を有する複合体であって、
多孔性金属基体、
前記基体の表面上にコートされた中間層、および
前記中間層上にコートされたパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜、
を含み、前記パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜は前記複合体の前記基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約3絶対気圧まで高い条件下で実質的に剥離がない、複合体。
【請求項35】
前記多孔性金属基体が、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成される請求項34の複合体。
【請求項36】
前記多孔性金属基体がステンレス鋼で構成される請求項34の複合体。
【請求項37】
前記中間層が、ニッケル、銅、銀、金、白金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で構成される請求項34の複合体。
【請求項38】
前記中間層がニッケルで構成される請求項34の複合体。
【請求項39】
前記パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜が、前記複合体の前記基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約5絶対気圧まで高い条件下で実質的に剥離がない請求項34の複合体。
【請求項40】
前記パラジウムもしくはパラジウム合金皮膜が、前記複合体の前記基体側での圧力がそのパラジウムもしくはパラジウム合金皮膜側での圧力より約10絶対気圧まで高い条件下で実質的に剥離がない請求項34の複合体。
【図1】
【図3B】
【図5】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図4】
【図6】
【図7】
【図3B】
【図5】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図4】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−261045(P2008−261045A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3930(P2008−3930)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(507321266)碧▲気▼科技開發股▲分▼有限公司 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(507321266)碧▲気▼科技開發股▲分▼有限公司 (4)
【Fターム(参考)】
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