説明

パラジウム担持セピオライト触媒およびカルボニル化合物の製造方法

【課題】アルコールを酸化してカルボニル化合物を工業的に有利に製造する方法の提供。
【解決手段】一般式(1)で表されるアルコール類を酸化して、カルボニル化合物を製造する際に、パラジウム担持セピオライト触媒を用いる。


[RおよびRは、同一または相異なって水素原子、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2から4のアルケニル基または置換されていてもよい炭素数2から4のアルキニル基を示す。RとRが結合する炭素原子と共に環を形成していても良い。ただし、RおよびRが同時に水素原子ではない。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジウム担持セピオライトから成るアルコール酸化用触媒およびこれを用いたカルボニル化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルコール類を酸化してカルボニル化合物を製造する方法として、二酸化マンガン、クロム酸および二酸化セレン等の酸化剤を用いる方法が知られている。
【0003】
一方、酸素を酸化剤とする触媒を用いる方法も知られている。例えば、ルテニウム錯体を用いる方法(特許文献1)、ルテニウム担持カーボン触媒やルテニウム担持アルミナ触媒を用いる方法(特許文献2)、ルテニウム担持ハイドロタルサイト触媒を用いる方法(特許文献3)、アルカリ処理したルテニウム担持アルミナ触媒を用いる方法(特許文献4)、ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト触媒を用いる方法(非特許文献1)、パラジウム担持ヒドロキシアパタイト触媒を用いる方法(特許文献5)が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−226417号公報
【特許文献2】米国特許第4996007号明細書
【特許文献3】特開2000−70723号公報
【特許文献4】特開2004−894号公報
【特許文献5】特開2002−275116号公報
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society,122巻,7144ページ,2000年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二酸化マンガン、クロム酸および二酸化セレン等を用いる方法では、酸化剤を量論量用いる必要があり、不経済であるばかりでなく、毒性の高い重金属を含有した廃液を多量に副生するため、環境面においても問題がある。ルテニウム錯体を触媒として用いた方法では、製造したカルボニル化合物を含む反応溶液から触媒を分離回収することが困難であり、工業的には不利である。ルテニウム担持カーボン触媒等の固体触媒では、分離回収は容易であるものの、ルテニウム原子あたりの触媒活性が低いため、工業的には不利である。
【0006】
パラジウム担持ヒドロキシアパタイト触媒は、ルテニウム触媒よりも金属原子あたりの活性が高いが、ヒドロキシアパタイトに担持できるパラジウム量が極めて少ないという欠点がある。特にバッチ反応では、担持できるパラジウム量が少ないと、触媒を多く用いて製造量を高める必要があり、触媒に対する生産量が低下するばかりか操作上煩雑になる。また、操作を簡便にするために溶媒量を増やした場合には生産性が低下し、不経済である。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的はアルコールを酸化する際に用いる高活性で高効率な生産性の良い触媒を提供することであり、またアルコールを酸化してカルボニル化合物を経済的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、パラジウム担持セピオライトを触媒として用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、パラジウム担持セピオライトから成ることを特徴とする、アルコール酸化用触媒である。
【0010】
また本発明は、一般式(1)
【0011】
【化1】

[式中、RおよびRは、同一または相異なって水素原子、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2から4のアルケニル基または置換されていてもよい炭素数2から4のアルキニル基を示す。あるいは、RとRが結合する炭素原子と共に環を形成していても良い。ただし、RおよびRが同時に水素原子ではない。]で表されるアルコール類を酸化して、一般式(2)
【0012】
【化2】

[式中、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]で表されるカルボニル化合物を製造する際に、上述のアルコール酸化用触媒を用いることを特徴とする製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明で用いられるセピオライトは、粘土鉱物の1つであり、理想的な化学式は結晶構造から、MgSi1230(OH)(HO)・nHOで表される。ここで(HO)は結合水を、nHOは沸石水を表す。セピオライトの結晶構造はMgO6配位8面体シートの頂点酸素を両側から挟むようにSiO4面体の酸素と共有して、2:1層を形成し、そのシートが周期的に頂点方向を逆転させてつながり、図1のような断面が長方形のトンネル構造を形成している。トンネル壁に面して存在するMg2+には2分子の水が配位して6配位8面体が完成している。
【0014】
本発明で用いるセピオライトはそのまま使用してもよいが、触媒活性が高い点で、あらかじめ活性化処理を行うことが望ましい。活性化処理としては酸処理、塩基処理、熱処理、真空処理、還元処理等が例示できる。
【0015】
酸処理とは、酸性を示す溶液に浸して撹拌し、一定時間後に蒸留水等で洗浄して酸性溶液を除去する処理である。酸性溶液は特に制限はなく、無機酸およびその無機酸塩、有機酸およびその有機酸塩の溶液を用いることができる。無機酸およびその無機酸塩として具体的には塩酸、硫酸、硝酸、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等が、有機酸およびその有機酸塩としてギ酸、シュウ酸、酢酸、フルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、トルエンスルホン酸アンモニウム等が例示できる。好ましくは無機酸およびその無機酸塩である。酸性溶液のpHは、セピオライト骨格の損傷を避けるため、2〜7が望ましい。酸性溶液に浸す際の温度は、特に制限はなく、通常0℃〜300℃、好ましくは20℃〜220℃である。酸処理の時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。
【0016】
塩基処理とは、塩基性を示す溶液に浸して撹拌し、一定時間後に蒸留水等で洗浄して塩基性溶液を除去する処理である。塩基性溶液は特に制限はなく、無機塩基および有機塩基の溶液を用いることができる。無機塩基として具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸第二水素ナトリウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸セシウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、アンモニア等が例示できる。有機塩基としてはメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、イミダゾール、ピロール、モルホリン等が例示できる。好ましくは無機塩基である。パラジウムの担持が容易になることから塩基性溶液のpHは、9〜14が望ましい。塩基性溶液に浸す際の温度は、特に制限はなく、通常0℃〜300℃、好ましくは20℃〜220℃である。塩基処理の時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。
【0017】
熱処理の処理温度は、通常50℃〜500℃、好ましくは100℃〜400℃である。熱処理の時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。熱処理する際の雰囲気は空気中、酸素および窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが例示できるが、空気中が好ましい。
【0018】
真空処理の処理温度には特に制限はなく、通常0℃〜500℃、好ましくは50℃〜250℃である。また、処理時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。
【0019】
還元処理とは、セピオライトを使用する前にあらかじめ水素気流中で加熱処理することである。処理温度は、通常50℃〜500℃、好ましくは100℃〜400℃である。処理時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。水素ガスは、不活性ガスで希釈して水素含有混合ガスとしても良い。不活性ガスは特に限定されないが例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム等が挙げられる。水素含有混合ガス中の水素分圧は、収率が高められる点で、最低0.1%あれば良い。
【0020】
また、還元処理は、液相中で、還元剤を用いて行うこともできる。還元剤としてはヒドラジン、ヒドロキシアミン、ヒドロキシアミン塩酸塩、ヒドロキシアミン硫酸塩、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等が例示できる。処理温度は、通常0℃〜150℃、好ましくは10℃〜110℃である。処理時間に特に制限はないが、通常5分〜100時間、好ましくは30分〜48時間である。
【0021】
触媒活性が高い点で、酸処理および塩基処理がさらに望ましい。
【0022】
次に、パラジウム担持セピオライト触媒の調製法について述べる。
【0023】
パラジウム原料としては特に限定されるものではないが、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酸化パラジウム等のパラジウム塩類、パラジウムアセチルアセトナート、ジクロロビスベンゾニトリルパラジウム、ジクロロビスアセトニトリルパラジウム、ジクロロビスアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム等のパラジウム錯体類などを用いることができる。これらのうち、担持が容易であり、目的とするカルボニル化合物の収率が高いことからパラジウム錯体類が好ましく用いられ、さらに操作性の点から好ましくはテトラアンミンパラジウム塩化物が用いられる。
【0024】
セピオライトにパラジウムを担持する方法に特に制約はなく、通常の担持の方法、例えば、含浸担持法、イオン交換法および共沈法を用いることができるが、触媒活性が高い、操作が容易である、触媒調製の再現性が高い、等の点でイオン交換法が好ましい。イオン交換法でパラジウム担持セピオライト触媒を調製する場合、例えば、上記のパラジウム原料を含む溶液にセピオライトを混合し、乾燥を行い、パラジウム担持セピオライト触媒を調製する。
【0025】
イオン交換時のパラジウム原料を含む溶液の溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の有機溶媒、水が用いられる。これらの溶媒は単独で使用するのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。また、パラジウム原料を含む溶液の濃度は、特に制限されないが、通常0.001wt%〜20wt%、好ましくは0.05wt%〜10wt%である。
【0026】
イオン交換の時間に特に制限はないが、イオン交換率が高められることから、1時間〜100時間が好ましい。
【0027】
イオン交換の温度は特に制限はないが、イオン交換率が高められることから、好ましくは0℃〜100℃、さらに好ましくは20℃〜80℃である。
【0028】
イオン交換後は常法に従って、デカンテーション、濾別、加熱または減圧加熱等の操作で溶媒を除去する。溶媒を除去後の乾燥は加熱乾燥、減圧乾燥等を用いることができる。焼成を行う場合には酸素、または窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した酸素あるいは空気の雰囲気下100℃〜1000℃で行うと良い。
【0029】
本発明においては、上記のパラジウム担持セピオライト触媒に、目的物の製造に差し支えない範囲で、パラジウム以外の元素がさらに担持されていてもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、サマリウム、ユウロピウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、テルルなどが挙げられる。これらの元素もパラジウムと同様に、各元素の塩類や錯体を用いて含浸担持法、イオン交換法および共沈法を用いて、担持することができる。
【0030】
以上のようにして得られるパラジウム担持セピオライトのパラジウム含有率は特に制限されないが、経済性と生産効率の点から0.01wt%〜50wt%、好ましくは0.5wt%〜20wt%である。
【0031】
このパラジウム担持セピオライトは、アルコール類の酸化用触媒として用いることができ、パラジウム担持セピオライト触媒とアルコール類とを接触させることによりアルコール類を酸化させ、カルボニル化合物を得ることができる。このときのアルコール類やカルボニル化合物には特に限定はないが、例えば一般式(1)で表されるアルコール類を酸化させ、一般式(2)で表されるカルボニル化合物を得ることができる。
【0032】
一般式(1)および(2)において、RおよびRで表される炭素数1〜4のアルキル基としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基またはシクロプロピルメチル基等が例示できる。
【0033】
およびRで表される炭素数2〜4のアルケニル基としては具体的には、ビニル基、1−メチルビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルビニル基、2−ブテニル基または1,3−ブタンジエニル基等が例示できる。
【0034】
およびRで表される炭素数2〜4のアルキニル基としては具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基または3−ブチニル基等が例示できる。
【0035】
これらのアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、フェニル基、o−トリル基、p−トリル基、m−トリル基、メシチル基、メトキシフェニル基等のフェニル基で置換されていてもよく、具体的には、フェニルメチル基、o−トリルメチル基、m−トリルメチル基、p−トリルメチル基、メシチルメチル基、o−メトキシフェニルメチル基、m−メトキシフェニルメチル基、p−メトキシフェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、1−フェニルビニル基、2−フェニルビニル基、1−メチル−2−フェニルビニル基、2−フェニル−1−プロペニル基、3−フェニル−1−プロペニル基、1−フェニル−2−プロペニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、3−フェニル−2−プロペニル基、1−フェニル−3−ブテニル基、2−メチル−1−フェニル−2−プロペニル基、1−エチル−2−フェニルビニル基、1−フェニル−2−ブテニル基、2−フェニル−1,3−ブタンジエニル基、4−フェニル−1,3−ブタンジエニル基、2−フェニル−エチニル基、1−フェニル−1−プロピニル基、1−フェニル−2−プロピニル基、3−フェニル−2−プロピニル基、3−フェニル−1−ブチニル基、4−フェニル−1−ブチニル基、1−フェニル−2−ブチニル基、1−フェニル−3−ブチニル基等が例示できる。
【0036】
およびRで表される置換されていても良いフェニル基としてはフェニル基、o−トリル基、p−トリル基、m−トリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、o−ジフルオロメチルフェニル基、m−ジフルオロメチルフェニル基、p−ジフルオロメチルフェニル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等が例示できる。
【0037】
とRが結合する炭素原子と共に環を形成するアルコール類(1)としては、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロへプタノール、シクロオクタノール、2−シクロペンテン−1−オール、2−シクロヘキセン−1−オール等が例示できる。
【0038】
本反応で用いることができる酸化剤は、過酸化水素やtert−ブチルハイドロパーオキシド、キュメンハイドロパーオキシド等のような有機過酸化物でも良いが、空気または酸素でも十分に反応は進行する。
【0039】
空気または酸素を用いる場合、不活性ガスで希釈して酸素含有混合ガスとしても良い。不活性ガスは特に限定されないが例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム等が挙げられる。酸素含有混合ガス中の酸素分圧は、最低0.1%あれば良い。
【0040】
本発明のアルコール類の酸化によるカルボニル化合物の製造における反応形式は特に制限されず、任意の反応形式で行うことが可能である。例えば、固定床気相流通式、固定床液相流通式、または懸濁床回分式で行うことができる。操作が容易な点で、懸濁床回分式が望ましい。
【0041】
懸濁床回分式で行う場合は、溶媒を用いても良いし、無溶媒でも行うことができる。溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、トリフルオロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、トリグライム等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリルのようなニトリル類、N−メチルピロリドン等のアミド類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。好ましくは、操作上の点からベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類である。
【0042】
反応温度は特に制限されないが、生産効率の点から好ましくは0℃〜300℃、さらに好ましくは20℃〜200℃である。反応圧力は特に制限されないが生産効率の点から通常、絶対圧で好ましくは0.01MPa〜10MPa、さらに好ましくは0.1MPa〜1MPaである。反応時間は特に制限されないが、カルボニル化合物へ十分に変換できることから、好ましくは1分〜100時間、さらに好ましくは5分〜50時間である。
【0043】
また、原料濃度はカルボニル化合物へ効率的に変換できることから好ましくは0.0001g/L以上であり、さらに好ましくは0.001g/L以上である。
【0044】
使用する触媒の量は特に制限はなく、生産効率の点から、原料であるアルコール類1モルに対してパラジウム金属が0.000001〜20.0モル%、好ましくは0.00001〜10.0モル%、より好ましくは0.0001〜5.0モル%となるようにパラジウム担持セピオライト触媒を使用するとよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明のセピオライトにパラジウムを担持したパラジウム担持セピオライト触媒を用いることによって、アルコール類を酸化してカルボニル化合物を工業的に有利に生産性良く製造することができる。
【実施例】
【0046】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
実施例1 パラジウム担持セピオライト触媒の製造
蒸留水80mLに塩化アンモニウム10gを溶解した酸性溶液に和光純薬社製のセピオライト2.0gを懸濁させ、室温で48時間撹拌した。この懸濁液を吸引濾過と洗浄を繰り返して、酸性処理したセピオライトを得た。次にパラジウムテトラアンミンパラジウム塩化物0.2gを蒸留水80mLに溶解したパラジウム水溶液に上記のように処理したセピオライト2.0gを懸濁させ、室温で48時間撹拌した。この懸濁液を吸引濾過して110℃で乾燥することによりパラジウム担持セピオライト触媒を得た。パラジウム含有量は1.3wt%であった。
【0048】
実施例2
ベンジルアルコールを1.08g(10mmol)をトルエン溶媒5mlに添加し、パラジウム担持セピオライト触媒0.1gを懸濁させ、大気圧で10mL/minで酸素流通させ、100℃で1時間反応させた。反応後、反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ベンジルアルコール転化率は96%、ベンズアルデヒド生成率は91%であった。空時収量は、9800g/kg−cat・hであった。
【0049】
実施例3
1−フェニルエタノールを1.22g(10mmol)をトルエン溶媒5mLに添加し、パラジウム担持セピオライト触媒0.1gを懸濁させ、大気圧で10mL/minで酸素流通させ、100℃で1時間反応させた。実施例2と同様な操作で分析したところ、1−フェニルエタノール転化率は77%、アセトフェノン生成率は73%であった。空時収量は、8600g/kg−cat・hであった。
【0050】
比較例1
ベンジルアルコール0.11g(1mmol)を添加したトルエン溶液に、特開2002−275116号公報に従って調製したパラジウム担持ヒドロキシアパタイト0.3gを懸濁させ、大気圧で10mL/minで酸素流通させ、100℃で2時間反応させた。実施例2と同様な操作で分析したところ、ベンジルアルコール転化率は100%、ベンズアルデヒド生成率は82%であった。空時収量は、145g/kg−cat・hであった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】セピオライトの結晶構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム担持セピオライトから成ることを特徴とする、アルコール酸化用触媒。
【請求項2】
一般式(1)
【化1】

[式中、RおよびRは、同一または相異なって水素原子、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2から4のアルケニル基または置換されていてもよい炭素数2から4のアルキニル基を示す。あるいは、RとRが結合する炭素原子と共に環を形成していても良い。ただし、RおよびRが同時に水素原子ではない。]で表されるアルコール類を酸化して、一般式(2)
【化2】

[式中、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]で表されるカルボニル化合物を製造する際に、請求項1に記載の触媒を用いることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
反応温度が0℃〜300℃である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
反応圧が0.01MPaから10MPaである請求項2または3に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−149212(P2008−149212A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336912(P2006−336912)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】