説明

パラジウム(0)含有化合物の製造方法

本発明はパラジウム化合物を一般式I、IIもしくはIIIの1個以上の化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法に関する。パラジウム(0)含有化合物は均一触媒として、均一触媒を製造するための前駆物質として、均一触媒をその場で製造するための前駆物質として、または不均一触媒を製造するための前駆物質として使用するために適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパラジウム(0)含有化合物の製造方法に関する。
【0002】
パラジウムは化合物の形で触媒として多くの工業的な方法に使用される。
【0003】
工業的に製造される化学物質の80%より多くが触媒作用による方法により製造される。触媒作用による方法は一般に相当する化学量の有機反応より経済的であり、環境に優しい。均一触媒作用による方法において高い収率および選択率を達成するために、多くの種類の配位子系を使用しなければならず、このことが逆に多くの種類の使用できる前駆物質金属化合物を必要とする。触媒系およびその製造方法を絶えず改良する必要性がこれにより明らかになる。
【0004】
これらの使用のために特にパラジウムを酸化段階0で含有するパラジウム化合物が提供される。パラジウム(0)化合物は一般に遊離電子対を配位結合により提供することができる化合物により安定化される。この遊離電子対は、例えば不飽和炭化水素によりまたは燐または窒素のようなヘテロ原子により提供することができる。安定な貯蔵可能な化合物は主に固体の形で商業的に入手できる。
【0005】
しかし触媒作用において液体の形で存在する化合物が望ましい。このことは使用可能性を著しく容易にする。このためにしばしば固体の化合物を溶剤に溶解し、その際固体のパラジウム(0)化合物の溶液が多くの場合に不安定であり、即座に使用しなければならない。
【0006】
均一触媒作用を使用する場合に、有利に前駆物質として、簡単な形式および方法で、例えば種々のホスフィンのような配位子と混合できる化合物を使用し、多くの種類の触媒作用系を製造できる。このことは、例えば不飽和炭化水素配位子で安定化されたPd(0)化合物の場合に実現される。
【0007】
配位子領域に不飽和化合物を有する多くのPd(0)錯体は知られており、例えばWilkinson、Abel “Comprehensive Organometallic Chemistry”、6巻、243頁以降“Complexs of Palladium(0)”に記載されている。
【0008】
不飽和炭化水素により安定化されたPd(0)化合物は配位子により、一座配位子により安定化された錯体および多座(キレート化する)配位子により安定化された錯体に区別することができる。一座炭化水素配位子により安定化されたPd(0)錯体の例はPd(エチレン)であり、室温および空気に接触して分解する。
【0009】
例えばジエンのような二座不飽和炭化水素配位子をキレート化することにより、より安定なPd(0)化合物が得られる。ジエンは2つのジエン官能基の間隔により1,4−ジエン配位子、1,5−ジエン配位子、1,6−ジエン配位子、1,7−ジエン配位子等に分類される。
【0010】
1,4−ジエン安定化パラジウム(0)は、例えば1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン(dba)の形で配位子として幅広く使用されている。この合成は特にM.F.Rettig等、Inorg.Synth.1990、28に記載されている。生成物は合成溶液から溶解しにくい沈殿物として単離する。固体は十分に空気に安定であるが、溶液はこれらの化合物の有機溶剤中で数時間の範囲で分解する(STREM Katalog:Chemicals for research、CatalogNo.19、2001−2003)。
【0011】
均一触媒作用する使用において、前駆物質としてのこれらの錯体タイプの使用は、例えば米国特許第6316380号に記載されている。欧州特許第508264号においてスルホアルキル基で置換されたPd(dba)をC−Cカップリングに均一触媒として使用する。
【0012】
1,5−ジエン配位子安定化Pd(0)として、例えばPd(COD)が知られている。この物質はドイツ特許第2555374号においてPd(COD)Clから例えばLi(COT)(COT=シクロオクタテトラエン)、ナトリウムナフタリドまたは有機アルミノ化合物のような有機金属化合物の存在で、非プロトン活性溶剤中で合成する。前記特許明細書においてPd(COD)からのPd(Cの合成も記載されている。Pd(COD)は大気条件下で、数時間以内で分解する不安定な固体である。この特性はこの化合物を条件付きでのみ工業的に利用可能にする。
【0013】
J.Krause、G.Cestaric、K.J.Haack、K.Seevogel、W.Storm、K.R.Poerschke(J.Am、Chem.Soc.1999、121、9807−9823およびChem.Commun.1998、12,1291)は分子により決定されたヘプタ−1,6−ジエン−、ジアリルエーテル−およびテトラメチルジビニルジシロキサン−パラジウム(0)の合成を記載し、これらは1,6−ジエン配位子により安定化されたPd(0)の例である。この合成は広い範囲でPd(COD)に記載された方法で行う。酸素不含の溶剤を合成に使用しなければならず、前記物質は室温に近い分解温度を有する。
【0014】
均一触媒作用する使用のために、1,6−ジエン−Pd(0)−ホスフィンおよび−カルベン錯体が確認された。これらの化合物は工業的に使用されるヘック反応およびスズキC−Cカップリング反応において高い活性を示し、M.G.Abdreu、A.Zapf、M.Beller、Chem.Comm.2000、245およびドイツ特許第10062577号に記載されている。
【0015】
技術水準においては1,4−ジエン安定化Pd(0)化合物を工業的に使用する。この化合物は十分な安定性を示すが、この化合物の溶液は貯蔵安定でない。1,5−および1,6−ジエン安定化Pd(0)化合物は1,4−ジエン安定化Pd(0)化合物より明らかに安定性が低い。すべてのジエン安定化Pd(0)化合物において、分子により決定されたPd(ジエン)−またはPd(ジエン)−化合物を単離するために、一般に不活性ガスおよび乾燥したプロトン不活性溶剤下で運転しなければならない。更に安全技術的に問題のある高い反応性の有機リチウム化合物を合成に使用し、これは大量生産の利用を費用のかかるものにする。この理由からこの化合物の種類は従来大規模に工業的に使用されなかった。
【0016】
従って本発明の課題は、パラジウム(0)含有化合物を製造するための新しい費用のかからない方法を提供することである。この化合物の溶液は実質的に熱安定であり、大気条件に対して安定であるべきである。このことが均一触媒作用、不均一触媒作用および錯体化学的適用のための経済的な、多様な、新しい前駆物質への接近を可能にする。
【0017】
本発明は特に、パラジウム化合物を、一般式I:
【0018】
【化1】

[式中、
Aはそれぞれ互いに独立にCR基を表し、その際基Aの1つは酸素、硫黄、NR基またはSiR1011基を表すことができるか、または基Aは5〜20員の環系の成分であってもよく、
xは2〜4の整数を表し、および
〜R11はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R)、Si(OR)、SiR(OR)、SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基、または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NH、およびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際RおよびRおよび/またはRおよびRはこれらに結合した炭素原子と一緒にヘテロ原子を含有してもよい5〜7員の環の成分であってもよい]で表される1個以上の化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法に関する。
【0019】
他の1つの実施態様において、本発明はパラジウム化合物を、一般式II:
【0020】
【化2】

[式中、
nは3〜20の整数を表し、
13〜R15はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R)、Si(OR)、SiR(OR)、SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基、または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際R13およびR14はこれらに結合した炭素原子と一緒に5〜7員のヘテロ原子を含有してもよい環の成分であってもよく、および
12はそれぞれ互いに独立に水素原子、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基(特に置換されていないまたはハロゲン化されたC〜C10−アルキル基)、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよく、特に置換されていないまたはハロゲン化された−O−C〜C10−アルキル基)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択され、その際置換基はR13およびR15の場合と同様に定義される]で表される1個以上の環状化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法に関する。
【0021】
もう1つの実施態様において、本発明はパラジウム化合物を、一般式III:
【0022】
【化3】

[式中、
vおよびwは互いに独立に0または1〜1000の整数を表し、v+wは0〜1000であり、
16はそれぞれ互いに独立に水素原子、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基(特に置換されていないまたはハロゲン化されたC〜C10−アルキル基)、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよく、特に置換されていないまたはハロゲン化された−O−C〜C10−アルキル基)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択され、その際置換基はR17およびR19の場合と同様に定義され、
17〜R19はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R)、Si(OR)、SiR(OR)、SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際R17およびR19はこれらに結合した炭素原子と一緒にヘテロ原子を含有してもよい5〜7員の環の成分であってもよく、
20はそれぞれ互いに独立に水素、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基(特に置換されていないまたはハロゲン化されたC〜C10−アルキル基)、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよく、特に置換されていないまたはハロゲン化された−O−C〜C10−アルキル基)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基、または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択され、その際置換基はR17およびR19の場合と同様に定義され、
基Termはそれぞれ互いに独立に(R16(CR1718CR19)Si−または(R16Si−を表す]で表される1個以上の化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法に関する。
【0023】
意想外にも、前記方法は、従来公知の方法と異なり、0℃より高い温度で行うことができる。更に前記反応は空気の遮断下でまたは乾燥した溶剤を使用して実施しなくてよい。
【0024】
パラジウム(0)含有化合物において、パラジウムはパラジウム(0)として存在する。化合物中のパラジウムの酸化段階の測定は、公知方法により、例えば中性配位子(例えばホスフィン)と反応させ、生じる化合物を単離し、NMRを用いて特性化することにより、または溶液を蒸発させ、XPSを用いて酸化段階を測定することにより行う。
【0025】
パラジウム化合物
出発化合物として使用されるパラジウム化合物は特に制限されない。前記化合物は固体としておよび水性もしくは塩酸溶液として使用することができる。有利に酸化段階+2または+4のパラジウムを有するパラジウム化合物を使用する。このための例はPdX、PdX、MPdX、MPdX、(NHPdXおよび[Pd(NH]Xであり、その際Mはカチオン(例えば水素原子、アルカリ金属(特にNaまたはK)またはNR(R=水素、C〜C−アルキル))を表し、Xはアニオン(例えばハロゲン(特に塩素)、NO)を表す。特に有利なパラジウム化合物は、PdCl、PdCl、Pd(NO、[Pd(NH]Cl、(NHPdCl、HPdCl,HPdCl,NaPdCl,NaPdCl、KPdClおよびKPdClである。
【0026】
一般式Iの配位子
パラジウム化合物を、一般式I:
【0027】
【化4】

の1個以上の化合物と反応させる。
Aはそれぞれ互いに独立にCR基を表し、その際基Aの1つは酸素、硫黄、NR基またはSiR1011基を表すことができ、またはその際基Aは5〜20員の環系の成分であってもよい。
xは2〜4の整数を表す。
〜R11はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R),Si(OR),SiR(OR),SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NH,およびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際RおよびRおよび/またはRおよびRはこれらに結合した炭素原子と一緒に5〜7員のヘテロ原子を含有してもよい環の成分であってもよい。
【0028】
ヘテロ原子を含有する環の例は以下の構造物から誘導される環である:チオフェン、フラン、プラン、ピロール等。他の環も同様に可能である。
【0029】
1つの有利な実施態様において、R〜Rは互いに独立に水素原子、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基であり、より有利にはR〜Rは水素原子である。
【0030】
他の1つの有利な実施態様において、RおよびRは有利に互いに独立に水素原子、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基であり、より有利にはRおよびRは水素原子である。
【0031】
もう1つの有利な実施態様において、Rは有利に互いに独立に水素原子、C〜C−アルキル基、ハロゲン化されたC〜C−アルキル基、−C(O)−C〜C−アルキル基またはハロゲン化された−C(O)−C〜C−アルキル基である。
【0032】
他の1つの実施態様において、R10およびR11は互いに独立にヒドロキシ基、C〜C−アルキル基、−O−C〜C−アルキル基、ハロゲン化されたC〜C−アルキル基、またはハロゲン化された−O−C〜C−アルキル基から選択される。特に有利にはR10およびR11は互いに独立にC〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基である。
【0033】
Rは有利に水素原子、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基である。
【0034】
ハロゲンとしてフッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、フッ素および塩素が有利である。ハロゲンで置換された基は1箇所以上置換されていてもよく、有利には過ハロゲン化されていてもよい。
【0035】
一般式Iの化合物は有利に対称である。
【0036】
1つの実施態様において、基−(A)−は有利に式−CH−X−CH−の基であり、−X−は−O−、−S−、−SiR−、−NR−および−NC(O)R−から選択され、その際Rは水素原子、C〜C−アルキル基、ハロゲン化されたC〜C−アルキル基、O−C〜C−アルキル基、ハロゲン化されたO−C〜C−アルキル基、C〜C−アルケニル基またはヘテロ原子を含有してもよいC〜C−アリール基を表す。
【0037】
一般式Iの化合物の具体的な例は1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、および1,7−オクタジエンである。説明として使用できる他の化合物はジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、N−アセチルジアリルアミン、ジアリルスルフィド、ジアリルシラン、ジアリルジメチルシラン、ジフルフリルエーテル、ジフルフリルアミン、ビス(チオフェン−2−イルメチル)アミン、ジフルフリルスルフィド、および1,3−ジビニルベンゼンである。
【0038】
一般式IIの配位子
本発明は更にパラジウム化合物を、一般式II:
【0039】
【化5】

の1個以上の化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法を提供する。
nは3〜20の整数を表し、有利に3〜6の整数を表す。
13〜R15はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R)、Si(OR)、SiR(OR)、SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基、または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際R13およびR14はこれらに結合した炭素原子と一緒に5〜7員のヘテロ原子を含有してもよい環の成分であってもよい。
【0040】
ヘテロ原子を含有する環の例は以下の構造物から誘導される環である:チオフェン、フラン、プラン、ピロール等。他の環も同様に可能である。
【0041】
1つの有利な実施態様においてR13〜R15は互いに独立に水素原子、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基であり、より有利にR13〜R15は水素原子である。
【0042】
12はそれぞれ互いに独立に水素原子、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基(特に置換されていないまたはハロゲン化されたC〜C10−アルキル基)、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよく、特に置換されていないまたはハロゲン化された−O−C〜C10−アルキル基)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択される。その際置換基はR13〜R15の場合と同様に定義される。有利にR12はそれぞれ互いに独立にヒドロキシ基、C〜C−アルキル基、−O−C〜C−アルキル基、ハロゲン化されたC〜C−アルキル基またはハロゲン化された−O−C〜C−アルキル基から選択される。特に有利にR12はそれぞれ互いに独立にC〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基である。
【0043】
Rは有利に水素原子、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基である。
【0044】
ハロゲンとしてフッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、フッ素および塩素が有利である。ハロゲンで置換された基は1箇所以上置換されていてもよく、有利に過ハロゲン化されていてもよい。
【0045】
一般式IIIの配位子
本発明は更にパラジウム化合物を、一般式III:
【0046】
【化6】

で表される1個以上の化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法を提供する。
【0047】
この式は単位[Si(R16)(CR19CR1718)O]もしくは[Si(R20O]がブロック状に存在する化合物および個々の単位[Si(R16)(CR19CR1718)O]もしくは[Si(R20O]がランダムに鎖に分配されている化合物を含む。混合形も同様に可能である。
【0048】
vおよびwは互いに独立に0または1〜1000の整数を表し、v+wは0〜1000である。有利にvおよびwは互いに独立に0または1〜100の整数を表し、v+wは0〜100であり、特に有利にvおよびwは互いに独立に0または1〜20の整数であり、v+wは0〜20である。
【0049】
16はそれぞれ互いに独立に水素原子、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基(特に置換されていないまたはハロゲン化されたC〜C10−アルキル基)、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよく、特に置換されていないまたはハロゲン化された−O−C〜C10−アルキル基)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個以上のC〜C10−アルケニル基、または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択される。その際置換基はR17およびR19の場合と同様に定義される。有利にR16はそれぞれ互いに独立にヒドロキシ基、C〜C−アルキル基、−O−C〜C−アルキル基。ハロゲン化されたC〜C−アルキル基またはハロゲン化された−O−C〜C−アルキル基である。特に有利にR16はそれぞれ互いに独立にC〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基である。
【0050】
17〜R19はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R)、Si(OR)、SiR(OR)、SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際R17およびR19はこれらに結合した炭素原子と一緒にヘテロ原子を含有してもよい5〜7員の環の成分であってもよい。
【0051】
ヘテロ原子を含有する環の例は以下の構造物から誘導される環である:チオフェン、フラン、プラン、ピロール等。他の環も同様に可能である。
【0052】
1つの有利な実施態様においてR17〜R19は互いに独立に水素原子、ハロゲン、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基であり、より有利にR17〜R19は水素原子である。
【0053】
20はそれぞれ互いに独立に水素原子、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基(特に置換されていないまたはハロゲン化されたC〜C10−アルキル基)、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよく、特に置換されていないまたはハロゲン化された−O−C〜C10−アルキル基)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択される。その際置換基はR17およびR19の場合と同様に定義される。有利にはR20はそれぞれ互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C〜C−アルキル基、−O−C〜C−アルキル基、ハロゲン化されたC〜C−アルキル基またはハロゲン化された−O−C〜C−アルキル基から選択される。特に有利にはR20はそれぞれ互いに独立に水素原子、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基である。
【0054】
基Termはそれぞれ互いに独立に(R16(CR1718CR19)Si−または(R16Si−を表す。不飽和基(R16(CR1718CR19)Si−が有利である。
【0055】
Rは有利に水素原子、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基を表す。
【0056】
ハロゲンとしてフッ素、塩素、臭素およびヨウ素が記載され、有利にフッ素および塩素である。ハロゲンで置換された基は1箇所以上で置換され、有利に過ハロゲン化されていてもよい。
【0057】
1つの有利な実施態様において、wは0である。この場合に一般式(III)の化合物は以下の形を有する。
【0058】
【化7】

【0059】
式中、R16〜R19、Termおよびvは前記のように定義される。
【0060】
一般式IIおよびIIIの化合物の具体的な例は、ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジチエン−2−イルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジビニルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジビニルジシロキサンジオール、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、および1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサンである。特に有利に1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよび1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサンである。
【0061】
パラジウム化合物を一般式I、IIもしくはIIIの化合物の混合物と反応させることができることは自明のことである。パラジウム化合物を一般式I、IIもしくはIIIの1個以上の化合物と反応させる場合は、有利に反応の間に一般式I、IIもしくはIIIの化合物のほかに更に他の配位子が存在しない。
【0062】
塩基
パラジウム化合物と一般式I、IIもしくはIIIの1個以上の化合物との反応は塩基の存在で行う。本発明の枠内で塩基は無機塩基および有機塩基(有利に無機塩基)であるが、有機金属塩基でないと理解される。塩基は水中で分解すべきでない。適当な塩基は例えばブレンステッド酸の塩である。有利に炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、ギ酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩および水酸化物を使用する。これらはアンモニウム塩(NR4+、R=HまたはC〜C−アルキル)またはアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩またはカリウム塩)およびアルカリ土類金属塩の形で使用することができる。
【0063】
溶剤
前記成分の反応は一般に溶剤中で行う。溶剤は特に制限されない。可能な溶剤の例は、水、アルコール、炭化水素(例えばベンゼンおよびトルエンのような芳香族炭化水素またはペンタン、ヘキサンおよびヘプタンのような脂肪族炭化水素)、開鎖状または環状エーテル、アミドおよびエステルである。しかし溶剤として水、C〜C−アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールのようなC〜C−アルコール)およびC〜C−エーテルが有利である。これらの溶剤の混合物を同様に使用することができる。
【0064】
還元剤
反応を促進するためにまたはできるだけ完全な反応を達成するために、場合により還元剤の存在で反応を行うことができる。還元剤として、選択される反応条件下で使用されるパラジウム化合物に比べて少ないレドックス電位を有する還元剤が適している。従って例えばギ酸およびその塩、シュウ酸およびその塩、ヒドラジン、グルコース、アスコルビン酸またはホルムアルデヒドを使用することができる。別個の還元剤を使用する代わりに還元特性を有する溶剤を使用することも同様に可能である。
【0065】
方法の実施
本発明の方法の可能な実施態様においてパラジウム化合物および一般式I、IIもしくはIIIの化合物を有利に溶剤に溶解し、塩基を溶液中で懸濁させる。反応物質を互いに反応させる。このためにエダクトを反応器に導入し、撹拌する。反応は−78℃〜+200℃、有利に−10℃〜+100℃、特に有利に0℃〜+50℃の温度で行うことができる。圧力は一般に0.1ミリバール〜100バール、有利に0.2バール〜2バールである。特に有利に周囲圧力±0.2バールである。反応時間は通常は5分〜1週間、有利に5分〜24時間、特に有利に30分〜24時間である。すでに述べたように空気の遮断下で作業することは必要でなく、このことは本発明の方法の大量生産の使用に特に有利である。
【0066】
使用される化合物の形のパラジウム1当量に対して、一般式I、IIもしくはIIIの化合物1〜100当量、有利に3〜100当量、より有利には8〜20当量を使用する。塩基はパラジウム1当量に対して1〜100当量、有利に2〜100当量、より有利に2.5〜10当量を使用する。存在する場合は還元剤をパラジウム1当量に対して1〜100当量の量で添加することができる。別個に還元剤を使用する代わりに還元特性を有する溶剤を使用することが同様に可能である。この場合に還元剤(溶剤)の量は特に制限されず、パラジウム1当量に対して任意の過剰で使用することができる。
【0067】
パラジウム(0)含有化合物は反応後にそのまま使用できる。しかし使用する前に溶液を精製および/または濃縮することが可能である。精製工程として、例えば副生成物の濾過、溶液の分離(例えばモレキュラーシーブまたはMgSOを用いる)または活性炭上の精製が該当する。溶液は例えば蒸留により濃縮することができる。
【0068】
本発明の方法を使用して製造したパラジウム(0)含有化合物は一般に30℃までの温度で、一部は60℃までの温度で溶液の形で存在し、更に貯蔵安定であり、空気に接触して取り扱うことができる。前記化合物は一般に0.01質量%〜40質量%、有利に0.01〜30質量%、特に有利に0.01質量%〜20質量%の金属含量を有し、最大5質量%、有利に最大2質量%、特に有利に最大1質量%の全ハロゲン含量を有する。
【0069】
パラジウム(0)含有化合物は単独でまたは混合物として、有機化学反応のための触媒のための前駆物質として、前記化合物を、例えばホスフィン、ホスファイト、ホスホナイト、アミン、アルケン、チオエーテル、アルキンまたはカルベンのような配位子と混合することにより使用することができ、これらの配位子はそれぞれその場で製造することができる。この混合物は直接触媒として使用することができ、または混合物から、生じる錯体化合物を通常の方法により物質の形で取得することができる。
【0070】
本発明によるパラジウム(0)含有化合物は単独でまたは混合物として、触媒前駆物質として付加的な配位子を使用せずに直接有機化学反応に使用することができる。
【0071】
以下の例により本発明を詳細に説明する。しかし本発明はこれらの具体的な実施態様に限定されず、むしろ請求項により定義される。
【0072】
実施例
パラジウム(0)含有化合物を製造するための一般的な方法
テトラクロロパラジン酸ナトリウム1当量をメタノールに溶解した。この溶液に炭酸水素ナトリウム8当量および一般式Iの化合物10当量を添加した。溶液を4時間撹拌した。メタノールを蒸留分離し、残留物を乾燥剤および活性炭上で撹拌した。固形物を濾過し、濾液を蒸留により濃縮した。蒸留条件に応じてパラジウム含量0.01〜20質量%を有する安定なパラジウム含有溶液が得られた。
【0073】
この方法により表1に示されるジエン〜テトラエンを使用して反応混合物を製造した。
【0074】
パラジウム含量および塩素含量を溶解後にICP−OESを用いてもしくはウィックボルト燃焼により決定した。
【0075】
ホスフィン−ジエン−Pd(0)錯体を合成する方法
1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンの反応から得られるパラジウム含有溶液の1パラジウム当量を5質量%エーテルトリシクロヘキシルホスフィン溶液1当量と混合した。得られた沈殿物を濾過し、乾燥した。生成物をH−31P−および13C−NMR分光分析によりトリシクロヘキシルホスフィン−(1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン)−Pd(0)錯体として確認した。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム化合物を、一般式I:
【化1】

[式中、
Aはそれぞれ互いに独立にCR基を表し、その際基Aの1つは酸素、硫黄、NR基またはSiR1011基を表すことができるか、または基Aは5〜20員の環系の成分であってもよく、
xは2〜4の整数を表し、および
〜R11はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R)、Si(OR)、SiR(OR)、SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基、または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NH、およびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際RおよびRおよび/またはRおよびRはこれらに結合した炭素原子と一緒にヘテロ原子を含有してもよい5〜7員の環の成分であってもよい]で表される1個以上の化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法。
【請求項2】
xが3を表す請求項1記載の方法。
【請求項3】
〜Rが水素原子である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
−(A)−が式−CH−X−CH−の基を表し、−X−が−O−、−S−、−SiR−、−NR−および−NC(O)Rから選択され、Rが水素、C〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基を表す請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
一般式Iの化合物が1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエンおよび1,7−オクタジエンから選択される請求項1記載の方法。
【請求項6】
一般式Iの化合物がジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、N−アセチルジアリルアミン、ジアリルスルフィド、ジアリルシラン、ジアリルジメチルシラン、ジフルフリルエーテル、ジフルフリルアミン、ビス(チオフェン−2−イルメチル)アミン、ジフルフリルスルフィド、および1,3−ジビニルベンゼンから選択される請求項1記載の方法。
【請求項7】
パラジウム化合物を、一般式II:
【化2】

[式中、
nは3〜20の整数を表し、
13〜R15はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R)、Si(OR)、SiR(OR)、SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基、または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際R13およびR14はこれらに結合した炭素原子と一緒に5〜7員のヘテロ原子を含有してもよい環の成分であってもよく、および
12はそれぞれ互いに独立に水素原子、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよい)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択され、その際置換基はR13およびR15の場合と同様に定義される]で表される1個以上の化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法。
【請求項8】
nが3〜6の整数を表し、R12はそれぞれ互いに独立にC〜C−アルキル基またはハロゲン化されたC〜C−アルキル基を表す請求項7記載の方法。
【請求項9】
パラジウム化合物を、一般式III:
【化3】

[式中、
vおよびwは互いに独立に0または1〜1000の整数を表し、v+wは0〜1000であり、
16はそれぞれ互いに独立に水素原子、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよい)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択され、その際置換基はR17およびR19の場合と同様に定義され、
17〜R19はそれぞれ互いに独立にR、OR、ハロゲン、CN、NO、NR、C(O)R、C(O)OR、OC(O)R、CONR、NHCOR、NHCOR、CH=CH−COR、Si(R)、Si(OR)、SiR(OR)、SiR(OR)、SOR、SOR、SOR、SR、PR、POR、POH、PO(OR)から選択され、式中のRは水素原子、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基を表し、アルキル基またはアルケニル基上の置換基はハロゲン、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、アリール基上の置換基はハロゲン、C〜C10−アルキル、O−C〜C10−アルキル、フェニル、O−フェニル、OH、NHおよびハロゲン化されたC〜C10−アルキルから選択され、その際R17およびR19はこれらに結合した炭素原子と一緒にヘテロ原子を含有してもよい5〜7員の環の成分であってもよく、
20はそれぞれ互いに独立に水素、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC〜C10−アルキル基、−O−C〜C10−アルキル基(その際アルキル基は置換されているかまたは置換されていなくてもよい)、置換されたまたは置換されていない、不飽和が1個または2個以上のC〜C10−アルケニル基、または置換されたまたは置換されていない、ヘテロ原子を含有してもよいC〜C10−アリール基から選択され、その際置換基はR17およびR19の場合と同様に定義され、
基Termはそれぞれ互いに独立に(R16(CR1718CR19)Si−または(R16Si−を表す]で表される1個以上の化合物と塩基の存在で反応させることからなるパラジウム(0)含有化合物の製造方法。
【請求項10】
一般式(III)の化合物が、一般式:
【化4】

を有し、その際R16〜R19、Termおよびvは請求項9に記載されたものである請求項9記載の方法。
【請求項11】
一般式IIもしくはIIIの化合物がジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジチエン−2−イルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジビニルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジビニルジシロキサンジオール、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよび1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサンから選択される請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
一般式IIもしくはIIIの化合物が1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、および1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサンから選択される請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
パラジウム化合物がPdX、PdX,MPdX、MPdX、(NHPdXおよび[Pd(NH]Xから選択され、その際Mが水素原子、アルカリ金属またはNR(R=水素、C〜C−アルキル)を表し、XがハロゲンまたはNOを表す請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
Xが塩素を表す請求項13記載の方法。
【請求項15】
反応を溶剤または溶剤混合物の存在で行う請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
溶剤が水、C〜C−アルコール、C〜C−エーテルおよびこれらの混合物から選択される請求項15記載の方法。
【請求項17】
塩基が炭酸塩、炭酸水素塩および水酸化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩(NRとしてのアンモニウム、R=HまたはC〜C−アルキル)から選択される請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
更に精製工程を含む請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
更に濃縮工程を含む請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
一般式I、IIもしくはIIIの化合物と異なる1個以上の配位子の存在で、パラジウム化合物と一般式I、IIもしくはIIIの1個以上の化合物との反応を行う請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
更にパラジウム含有化合物と、一般式I、IIもしくはIIIの化合物と異なる1個以上の配位子との反応を含む請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
一般式Iの化合物がヘキサジエンまたはオクタジエンである請求項1記載の方法により得られるパラジウム(0)含有化合物。
【請求項23】
一般式IIIの化合物が1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンである請求項9記載の方法により得られるパラジウム(0)含有化合物。

【公表番号】特表2006−504765(P2006−504765A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547623(P2004−547623)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012085
【国際公開番号】WO2004/039819
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【Fターム(参考)】