説明

パラ型全芳香族ポリアミド繊維

【課題】破断伸度に優れたパラ型全芳香族ポリアミド繊維を提供すること。
【解決手段】下記化学式(I)で表される構造反復単位(I)と下記化学式(II)で表される構造反復単位(II)とを特定比率で含むパラ型全芳香族ポリアミドから繊維を得る。




(II)が、(I)と(II)の合計に対して40〜60モル%であり、破断伸度が6.0%以上であり、引張強度が15cN/dtex以上であるパラ型全芳香族ポリアミド繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破断伸度等の機械的特性に優れたパラ型全芳香族ポリアミド繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドからなる繊維は、高強度繊維として非常に有用なものであるとともに、耐熱性および難燃性に優れていることが知られている。また、全芳香族ポリアミド繊維は、汎用繊維に比較して寸法安定性が高く、弾性率が高く耐疲労性にも優れているため、例えばタイヤコード、伝動用ベルト、搬送用ベルト等のゴム補強資材、シートベルト、漁網、安全ネット等にも好適に使用されている。
【0003】
しかしながら、上記各種製品においては、さらなる加工性や耐疲労性に対する要求が強く、それを満足させるためには、全芳香族ポリアミド繊維の機械強度を確保しつつ伸度を向上させることが必要であった。
しかしながら、全芳香族ポリアミド繊維、とりわけパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、結晶化度が高くポリマー鎖が高度に配向した繊維構造を形成するため、ポリマー構造が極めて剛直であり、伸度を向上させることが困難であった。そこで、高伸度を備えた高強力な有機系繊維としては、全芳香族ポリアミド繊維以外において開発がなされていた。
【0004】
例えば、特許文献1から4においては、寸法安定性がよく、かつ弾性率も高く、耐熱性および耐疲労性にすぐれている各種ポリヘキサメチレンアジパミド繊維および当該繊維を得る方法が提案されている。しかしながら、特許文献1から4に記載された繊維は、破断伸度は十分であるものの、パラ型全芳香族ポリアミド繊維と比較すると、十分な強度を有しているとは言い難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−208413号公報
【特許文献2】特開昭59−026517号公報
【特許文献3】特開平1−168913号公報
【特許文献4】特開平3−199421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のごとき従来技術の問題を解消するためになされたもので、その目的とするところは、高い伸度を有するパラ型全芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、下記化学式(I)で表される構造反復単位(I)と下記化学式(II)で表される構造反復単位(II)とを特定比率で含むパラ型全芳香族ポリアミドからなる繊維は、高い伸度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、化学式(I)で表される構造反復単位(I)と化学式(II)で表される構造反復単位(II)とを含むパラ型全芳香族ポリアミドからなるパラ型全芳香族ポリアミド繊維であって、
前記構造反復単位(II)が、前記構造反復単位(I)と前記構造反復単位(II)の合計に対して40〜60モル%であり、
破断伸度が6.0%以上であるパラ型全芳香族ポリアミド繊維である。
【0009】
【化1】

【化2】

【発明の効果】
【0010】
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、パラ型全芳香族ポリアミド繊維が本来有する高強度を有しつつ、飛躍的に破断伸度が向上した繊維となる。このため、本発明の繊維によれば、高強度および高伸度が要求される各種繊維製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<パラ型全芳香族ポリアミド>
[構造]
本発明の繊維を構成するパラ型全芳香族ポリアミドは、下記化学式(I)で表される構造反復単位(I)と下記化学式(II)で表される構造反復単位(II)とを含み、1種類または2種類以上の2価の芳香族基が直接アミド結合により連結されているポリマーであって、一般に公知の方法に従って、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライドと芳香族ジアミンの重縮合反応により得られる。このとき、該芳香族基は2個の芳香族環が酸素、硫黄、アルキル基で結合されたものであっても特に差し支えない。また、これらの2価の芳香環は、非置換またはメチル基やメチル基等の低級アルキル基や、メトキシ基、または塩素基等のハロゲン基で置換されたものであっても、複素環等が結合されたものであっても特に差し支えはなく、その置換基の種類や置換基の数は特に限定されるものではない。
【0012】
【化3】

【化4】

【0013】
本発明のパラ型全芳香族コポリアミド繊維中に含まれる上記構造反復単位を含むパラ型全芳香族ポリアミドは、繊維質量全体に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
【0014】
[構造反復単位の割合]
本発明に用いられるパラ型全芳香族コポリアミドは、上記化学構造式(I)と上記化学構造式(II)の構造反復単位の合計に対して、前記化学構造式(II)の構造反復単位が40〜60モル%であり、好ましくは45〜55モル%である。
化学構造式(II)の構造反復単位が40モル%未満の場合には、6.0%以上の高伸度が発現しない。一方で、60モル%を超える場合には、繊維の強度低下が著しいため好ましくない。
【0015】
<パラ型全芳香族ポリアミドの製造方法>
本発明の繊維を構成するパラ型全芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、原料となる芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分と芳香族ジアミン成分との低温溶液重合、または界面重合から得ることができる。
【0016】
[パラ型全芳香族ポリアミドの原料]
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
パラ型全芳香族ポリアミドの原料となる芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分としては、テレフタル酸ジクロライドを主成分として用いる。ここで、主成分とは、芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分全体に対して、テレフタル酸ジクロライドが50モル%以上であることを意味し、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0017】
テレフタル酸ジクロライドと共に用いられるパラ型全芳香族ポリアミドを構成する成分としては、例えば、2−クロロテレフタル酸ジクロライド、3−メチルテレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド等が挙げられる。なお、本発明においては、パラ位以外の結合を形成するイソフタル酸ジクロライド等の成分が、少量の含まれていてもよい。
【0018】
(芳香族ジアミン成分)
パラ型全芳香族ポリアミドの原料となる芳香族ジアミン成分としては、上記化学構造式(I)で示される構造反復単位と上記化学構造式(II)で示される構造反復単位をそれぞれ構成するために、少なくとも2種類以上の芳香族ジアミン用いる。その組み合わせとして、パラフェニレンジアミンと4,4’ジアミノフェニルエーテルとの組み合わせを主成分とする必要がある。ここで、主成分とは、これらの合計量が芳香族ジアミン成分全体に対して50モル%以上であることを意味し、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0019】
パラフェニレンジアミンと4,4’ジアミノフェニルエーテルと共に用いられるパラ型全芳香族ポリアミドを構成する成分としては、例えば、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラビフェニレンジアミン、5−アミノ−2−(4−アミノフェニレン)ベンズイミダゾール、1,4−ジクロロパラフェニレンジアミン等が挙げられる。なお、本発明においては、パラ位以外の結合を形成するメタフェニレンジアミン等の成分が、少量含まれていてもよい。
【0020】
なお、本発明においては、上述した通り、上記化学構造式(I)と上記化学構造式(II)の構造反復単位の合計に対して、前記化学構造式(II)の構造反復単位が40〜60モル%であることが必須であり、好ましくは45〜55モル%である。このため、4,4’ジアミノフェニルエーテルの組成比は、パラフェニレンジアミンと4,4’ジアミノフェニルエーテル合計に対して、40〜60モル%とすることが必須であり、好ましくは45〜55モル%とする。
【0021】
[原料組成比]
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との比は、芳香族ジアミン成分に対する芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比として、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05の範囲とする。芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比が0.90未満または1.10を超える場合には、芳香族ジアミン成分との反応が十分に進まず、高い重合度が得られないため好ましくない。
【0022】
[反応条件]
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との反応条件は、特に限定されるものではない。酸クロライドとジアミンとの反応は一般に急速であり、反応温度としては、例えば、−25℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、−10℃〜80℃の範囲とすることがさらに好ましい。
【0023】
[重合溶媒]
パラ型全芳香族ポリアミドを重合する際の溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム等の有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等の水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等の水溶性ニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、上記溶媒は、脱水されていることが望ましい。
【0024】
パラ型全芳香族ポリアミドの製造においては、汎用性、有害性、取り扱い性、パラ型全芳香族ポリアミドに対する溶解性等の観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることが最も好ましい。
また、溶解性を上げるために、重合前、途中、終了時に、公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩として、例えば塩化リチウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0025】
[中和反応]
反応の終了後、必要に応じて、塩基性の無機化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を添加して、中和反応を実施することが好ましい。
【0026】
[重合後処理等]
重合して得られるパラ型全芳香族ポリアミドは、アルコール、水等の貧溶媒に投入して沈澱させ、パルプ状にして取り出すことができる。取り出された芳香族ポリアミドを、再度、他の溶媒に溶解して繊維の成形に供することができるが、重合反応によって得られたポリマー溶液を、そのまま紡糸用溶液(ドープ)に調製して用いることも可能である。一度取り出してから再度溶解させる際に用いる溶媒としては、パラ型全芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定されるものではないが、上記したパラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒とすることが好ましい。
【0027】
[ポリマー重合度]
パラ型全芳香族ポリアミドの重合度は特に制限されないが、該ポリマーが溶媒に溶けるならば、成形加工性を損なわない範囲内で重合度は大きい方が好ましい。重合度を制御するためには、芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分と芳香族ジアミン成分のいずれかを、過剰に用いることもできる。また、単官能性の酸成分、アミン成分等の末端封鎖剤を使用しても良い。
【0028】
[ポリマー濃度]
得られるパラ型全芳香族ポリアミド溶液のポリマー濃度は、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。ポリマー濃度が0.5質量%未満では、ポリマーの絡み合いが少なく紡糸に必要な粘度が得られない。一方で、ポリマー濃度が30質量%を超える場合、当該ポリアミド溶液をそのまま用いて繊維を製造すると、ノズルから吐出する際に流動が不安定になりやすく、安定的に紡糸することが困難となる。
【0029】
<パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法>
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、パラ型全芳香族ポリアミド溶液(パラ型全芳香族ポリアミド製造時の生成ポリマードープであってもよい)からなる紡糸用溶液(ポリマードープ)を調製し、湿式紡糸あるいは乾式紡糸したのち、溶媒を除去することによって得られる。
【0030】
[紡糸用溶液(ポリマードープ)調製工程]
すなわち、本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得るには、まずパラ型全芳香族ポリアミドおよび溶媒を含む紡糸用溶液(ポリマードープ)を調製する。ここで、紡糸用溶液(ポリマードープ)は、パラ型全芳香族ポリアミドが溶解している限り、その調整方法は限定されるものではなく、パラ型全芳香族ポリアミドの製造によって得られたポリマー溶液から当該ポリマーを単離することなく、そのまま用いても、単離されたパラ型全芳香族ポリアミドを有機溶媒に溶解させたものでもよい。
ここで、用いられる溶媒としては、上記したパラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒を使用することができる。また、用いられる溶媒は、1種単独であっても2種以上を併用してもよい。
【0031】
なお、本発明においては、繊維に機能性等を付与する目的で、物性を損なわない範囲で、フィラーや添加剤等のその他の任意成分を配合してもよい。添加剤等を配合する場合には、紡糸用溶液(ポリマードープ)の調製において導入することができる。導入の方法は特に限定されるものではなく、例えば、ドープに対して、ルーダーやミキサ等を使用して導入する方法が挙げられる。
【0032】
[紡糸・凝固工程]
本発明の繊維の製造においては、上述の如く調製された紡糸用溶液(ドープ)を用いて、湿式紡糸法あるいは半乾半湿式紡糸法によって繊維を成形する。すなわち、先ず、上記で得られた紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出し、続いて、凝固浴中の凝固液に接触させて凝固糸を形成する。
【0033】
凝固浴としては、パラ型全芳香族ポリアミドの貧溶媒が用いられるが、紡糸用溶液(ポリマードープ)の溶媒が急速に抜け出して、得られるパラ型全芳香族ポリアミド凝固糸に欠陥ができないように、通常は良溶媒を添加して凝固速度を調節する。貧溶媒としては水、良溶媒としてはパラ型全芳香族ポリアミドドープ用の溶媒を用いることが好ましい。良溶媒/貧溶媒の質量比は、パラ型全芳香族ポリアミドの溶解性や凝固性にもよるが、15/85〜40/60の範囲とすることが好ましい。
【0034】
[その他の工程]
凝固液から凝固糸条を引き上げた後は、公知の方法によって、最終的なパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。例えば、水洗工程を実施して溶媒を除去し、必要に応じて延伸を実施し、乾燥工程等を経た後に必要に応じて延伸して配向させ、最終的な繊維を得ることができる。
【0035】
[延伸工程]
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、熱延伸を実施して、広角X線回折より求めた結晶配向度が89%以上、結晶化度が74%以上と高度に配向および結晶化させることが好ましい。結晶配向度、結晶化度のどちらか一方または両方が低い場合には、得られる繊維の機械的物性が不充分となりやすい。熱延伸の温度は、パラ型全芳香族ポリアミドのポリマー骨格にもよるが、好ましくは300〜550℃、さらに好ましくは350〜500℃とし、また、延伸倍率は好ましくは4倍以上、さらに好ましくは4〜10倍とする。
【0036】
<パラ型全芳香族ポリアミド繊維>
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の物性]
(伸度)
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の伸度は、6.0%以上である。6.0%未満の場合には、ゴム補強等の用途において必要とする耐久性を満足できない。伸度は、6.2%以上であることが好ましく、最も好ましくは6.5%以上である。
【0037】
(単糸繊度)
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の単糸繊度は、好ましくは0.5〜50dtexの範囲、さらに好ましくは1.0〜10dtexの範囲である。0.5dtex未満の場合には、製糸性が不安定となる場合がある。また、繊維の比表面積が大きくなるため、耐光劣化を受け易い。一方で、50dtexを超える場合には、繊維の比表面積が小さくなり耐光劣化を受けにくい反面、製糸工程で比表面積が小さいため凝固が不完全となりやすく、その結果、紡糸や延伸工程で工程調子が乱れやすく、物性も低下しやすくなる。
【0038】
(強度)
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度は、高い程好ましく、15cN/dtex未満では高強度繊維としての特長が不足する。好ましくは、15cN/dtex以上30cN/dtex以下の範囲である。
【0039】
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の用途]
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、パラ型全芳香族ポリアミド繊維が本来有する高強度を有しつつ、高い伸度を有する繊維となる。したがって、これらの特性が必要とされる分野は勿論のこと、織物、編物、不織布等の布帛のほか、組紐、ロープ、撚糸コード、ヤーン、綿等の各種繊維構造物を作製し、様々な分野において活用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらは本発明の理解を助けるためのものであって、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0041】
<測定・評価方法>
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法で測定・評価を実施した。
(1)固有粘度(IV)
98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dLの溶液について30℃で測定した。
(2)繊度
JIS L1015に準じ、測定した。
(3)繊維の引張強度、破断伸度、弾性率
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件で測定を実施した。
[測定条件]
温度 :室温
試験試料長 :500mm
初荷重 :0.2cN/dtex
試験速度 :250mm/分
【0042】
<実施例1>
[パラ型全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lに、パラフェニレンジアミン28.5g(25mol%)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル52.8g(25mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド106.9g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液172.2gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
得られたコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの固有粘度(IV)は、5.1であった。重合後のコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を、濃度5質量%のNMP溶液として調整し、紡糸用溶液(ポリマードープ)とした。
【0043】
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
得られた紡糸用溶液(ポリマードープ)を、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度460℃下で5.0倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0044】
<実施例2>
[パラ型全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.133Lに、パラフェニレンジアミン35.4g(30mol%)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル43.7g(20mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド110.5g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液178.0gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
得られたコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの固有粘度(IV)は、5.2であった。重合後のコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を、濃度5質量%のNMP溶液として調整し、紡糸用溶液(ポリマードープ)とした。
【0045】
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
得られた紡糸用溶液(ポリマードープ)を、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30重量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度460℃下で4.2倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0046】
<実施例3>
[パラ型全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.146Lに、パラフェニレンジアミン22.1g(20mol%)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル61.4g(30mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド103.5g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液166.8gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
得られたコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの固有粘度(IV)は、5.0であった。重合後のコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を、濃度5質量%のNMP溶液として調整し、紡糸用溶液(ポリマードープ)とした。
【0047】
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
得られた紡糸用溶液(ポリマードープ)を、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度460℃下で5.2倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0048】
<比較例1>
[パラ型全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lに、パラフェニレンジアミン28.5g(25mol%)と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル52.8g(25mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド106.9g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液172.2gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
得られたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの固有粘度(IV)は、4.9であった。重合後のコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を、濃度5質量%のNMP溶液として調整し、紡糸用溶液(ポリマードープ)とした。
【0049】
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
得られた紡糸用溶液(ポリマードープ)を、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度530℃下で10.0倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0050】
<比較例2>
[パラ型全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.125Lに、パラフェニレンジアミン42.7g(35mol%)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル33.9g(15mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド114.3g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液184.1gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
得られたコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの固有粘度(IV)は、4.9であった。重合後のコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を、濃度5質量%のNMP溶液として調整し、紡糸用溶液(ポリマードープ)とした。
【0051】
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
得られた紡糸用溶液(ポリマードープ)を、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度460℃下で3.2倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0052】
<比較例3>
[パラ型全芳香族ポリアミドの重合]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.152Lに、パラフェニレンジアミン16.1g(15mol%)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル69.5g(35mol%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド100.4g(50mol%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液161.7gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
得られたコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの固有粘度(IV)は、4.6であった。重合後のコポリパラフェニレン・4,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を、濃度5質量%のNMP溶液として調整し、紡糸用溶液(ポリマードープ)とした。
【0053】
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造]
得られた紡糸用溶液(ポリマードープ)を、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアーギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度460℃下で4.1倍に延伸した後に巻き取ることにより、全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、パラ型全芳香族ポリアミド繊維が本来有する高強度を有しつつ、高い破断伸度を有する繊維となる。このため、これらの特性を必要とする分野において特に有用であり、例えば、タイヤコード、伝動用ベルト、搬送用ベルト等のゴム補強資材、シートベルト、漁網、安全ネット等の産業用途として、非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で表される構造反復単位(I)と化学式(II)で表される構造反復単位(II)とを含む全パラ型芳香族ポリアミドからなるパラ型全芳香族ポリアミド繊維であって、
前記構造反復単位(II)が、前記構造反復単位(I)と前記構造反復単位(II)の合計に対して40〜60モル%であり、
破断伸度が6.0%以上であるパラ型全芳香族ポリアミド繊維。
【化1】

【化2】

【請求項2】
引張強度が15cN/dtex以上である請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミド繊維。

【公開番号】特開2012−207325(P2012−207325A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72101(P2011−72101)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】