説明

パラ型全芳香族ポリアミド繊維

【課題】引張強度を維持したままで耐光性が改善されたパラ型全芳香族ポリアミド繊維を提供する。
【解決手段】パラ型全芳香族ポリアミドが、コポリパラフェニレン・3,4'−オキシジフェニレンテレフタルアミドであり、重合系において使用されるアミン末端封止剤として酸無水物類、酸クロリド類を1種、もしくは2種使用し、末端封止全芳香族ポリアミドを得る。これより成る繊維は、引張強度を損なうことなく、耐光性に優れた特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラ型全芳香族ポリアミド繊維に関する。さらに詳しくは、繊維の引張強度を低下することなく、耐光性が改善されたパラ型全芳香族ポリアミド繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドは、耐熱性および難燃性に優れていることが知られている。そして、全芳香族ポリアミド繊維は、これらの特性が必要とされる分野、例えば、フィルター、電子部品などの産業用途や、防護衣などの防災安全衣料用途などに用いられている。
【0003】
しかしながら、全芳香族ポリアミド繊維は、光に対する安定性が十分でなく、光照射により著しい変色または着色が起こるとともに、分子量低下による力学的特性等の物性低下を生ずる。この光に対する劣化は、一般の有機高分子材料と比較して顕著であり、例えば、太陽光線に直接さらされた場合には短期問で著しい劣化を招くため、直接的または間接的に光にさらされる防護衣料、インテリア、車輌の内装材、魚網、ロープ等に使用する場合には、大きな制限を受けていた。
【0004】
このような観点から、従来、芳香族ポリアミドの耐光性を向上させる試みが提案されており、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および酸化防止剤を添加して耐光性を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法による耐光性向上の程度では、未だ満足できるものではなった。
【0005】
また、ピペリジン誘導体を添加して、芳香族ポリアミドの耐光性を向上させる方法も開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法による芳香族ポリアミドは、添加した紫外線吸収剤が成形時に揮散したり、熱により分解し、さらには使用時にも徐々にブリードアウトする等の問題があり、長期に亘る耐光性改善効果は得られていなかった。
【0006】
さらに、芳香族ポリアミドにカーボンブラックを含有させることで、耐光性を向上させる方法が開示されている(特許文献3〜5参照)。しかしながら、カーボンブラックの添加量の増加に伴ない、繊維の引張強度、弾性率などの機械的物性が低下し、耐光性の向上と機械的物性の持続とを両立させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭49−100322号公報
【特許文献2】特開昭50−34344号公報
【特許文献3】特開2007−23451号公報
【特許文献4】特開昭64−85316号公報
【特許文献5】特開平6−81211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のごとき従来技術を背景になされたものであり、その目的とするところは、引張強度を損なうことなく耐光性に優れたパラ全芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、重合系に対して特定のアミノ末端封止剤を添加して得られる、末端封止パラ型全芳香族ポリアミドを用いて繊維を得れば、引張強度を損なうことなく、耐光性に優れた繊維となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、パラ型全芳香族ポリアミドからなる繊維であって、引張強度が23cN/dtex以上であり、紫外線カーボンアーク灯式耐候性試験機にて180,000kJ/mで100時間照射前後の強度保持率が70%以上であるパラ型全芳香族ポリアミド繊維である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、繊維の機械的特性を損なうことなく、飛躍的に耐光性が向上した繊維となる。このため、従来使用できなかった強度および耐光性の両者が求められる分野の各種繊維製品として、好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<パラ型全芳香族コポリアミド>
本発明におけるパラ型全芳香族ポリアミドは、1種または2種以上の2価の芳香族基が、アミド結合により直接連結されたポリマーである。また、芳香族基には、2個の芳香環が酸素、硫黄、または、アルキレン基を介して結合されたもの、あるいは、2個以上の芳香環が直接結合したものも含む。さらに、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、クロル基等のハロゲン基等が含まれていてもよい。なお、2価の芳香族基を直接連結するアミド結合の位置は、パラ型である。
【0013】
このようなパラ型全芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、テレフタル酸成分と3,4’−ジアミノジフェニルエーテル成分およびパラフェニレンジアミン成分とが共重合されたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、テレフタル酸成分とフェニルベンゾイミダゾール骨格を有する芳香族ジアミン成分およびパラフェニジレンジアミン成分とが共重合されたコポリパラフェニレン・フェニルベンゾイミダゾール・テレフタルアミド等を挙げることができる。なお、本発明の繊維を構成するパラ型全芳香族ポリアミドは、1種単独であっても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、パラ型全芳香族ポリアミドを主成分とする繊維を意味する。ここで、「主成分」とは、得られるパラ型全芳香族ポリアミド繊維全体に対して、50質量%より大きく100質量%の範囲であることを意味する。なお、本発明においては、パラ型全芳香族ポリアミドが100質量%であることが特に好ましい。
さらに、本発明においては、アミド系溶剤等に可溶であるため成形加工性に優れ、熱延伸を施すことにより強度や弾性率等の特性を著しく向上できることから、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドを用いることが好ましい。
【0015】
<パラ型全芳香族ポリアミドの製造方法>
本発明におけるパラ型全芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライド(以下「酸クロライド」ともいう)成分と芳香族ジアミン成分とを低温溶液重合、または界面重合等により反応せしめることにより得ることができる。
【0016】
[パラ型芳香族ポリアミドの原料]
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
パラ型全芳香族ポリアミドの製造において使用される芳香族ジカルボン酸クロライド成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、テレフタル酸クロライド、2−クロルテレフタル酸クロライド、2,5−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド等が挙げられる。また、これらの芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。これらのなかでは、汎用性や得られる繊維の機械的物性等の観点から、テレフタル酸ジクロライドが好ましい。なお、本発明においては、イソフタル酸クロライド等、パラ位以外の結合を形成する少量の成分を用いてもよい。
【0017】
(芳香族ジアミン成分)
パラ型全芳香族ポリアミドの製造において使用される芳香族ジアミン成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、p−フェニレンジアミン、2−クロル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジクロルp−フェニレンジアミン、2,6−ジクロル−p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン等を挙げることができる。これらは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。なお、本発明においては、m−フェニレンジアミン等、パラ位以外の結合を形成する少量の成分を用いてもよい。
【0018】
本発明においては、パラ型全芳香族ポリアミドとしてコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドを用いることが好ましいため、p−フェニレンジアミンと3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの組み合わせて用いることが好ましい。その組成比は特に限定されるものではないが、全芳香族ジアミン量に対して、パラフェニレンジアミンの組成、および、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組成が、それぞれ30〜70モル%、70〜30モル%とすることが好ましく、さらに好ましくは、それぞれ40〜60モル%、60〜40モル%、最も好ましくは、それぞれ45〜55モル%、55〜45モル%である。
【0019】
(アミノ末端封止剤)
パラ型全芳香族ポリアミドの製造において使用されるアミン末端封止剤としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水カプロン酸、無水イソ酪酸、無水フタル酸、無水安息香酸等の酸無水物類、ならびに、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル、塩化カプロイル等の酸クロリド類等を挙げることができる。また、これらの芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。これらのなかでは、汎用性や得られる繊維の機械的物性等の観点から、塩化ベンゾイルが好ましい。
【0020】
[原料組成比]
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との比は、芳香族ジアミン成分に対する芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比として、0.90〜1.10の範囲とすることが好ましく、0.95〜1.05の範囲とすることがより好ましい。芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比が0.90未満または1.10を超える場合には、芳香族ジアミン成分との反応が十分に進まず、高い重合度が得られないため好ましくない。
【0021】
芳香族ジカルボン酸クロライド成分とアミノ末端封止剤との比は、芳香族ジカルボン酸クロライド成分に対するアミノ末端封止剤のモル比として、0.001〜0.01の範囲とする必要があり、0.002〜0.008の範囲とすることが好ましい。アミノ末端封止剤のモル比が0.001未満では十分な耐光性改善効果が得られず、0.01を超える場合には、芳香族ジアミン成分との重合反応が十分に進まず、高い重合度が得られないため好ましくない。
【0022】
[反応条件]
反応条件は、特に限定されるものではない。酸クロライドとジアミンとの反応は一般に急速であり、反応温度としては、例えば、−25℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、−10℃〜80℃の範囲とすることがさらに好ましい。
【0023】
[重合溶媒]
パラ型全芳香族ポリアミドを重合する際の溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム等の有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等の水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等の水溶性ニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独であっても、また、2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、用いられる溶媒は、脱水されていることが望ましい。
本発明に用いられるパラ型全芳香族コポリアミドの製造においては、汎用性、有害性、取り扱い性、パラ型全芳香族コポリアミドに対する溶解性等の観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることが最も好ましい。
【0024】
[その他重合条件等]
生成するパラ型全芳香族ポリアミドの溶解性を挙げるために、重合前、途中、終了時のいずれかに、一般に公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
また、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために、脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩等を併用することもできる。
反応の終了後は、必要に応じて、塩基性の無機化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を添加し、中和反応を実施してもよい。
【0025】
[重合後処理等]
上記のようにして得られるパラ型全芳香族ポリアミドは、アルコール、水等の非溶媒に投入して沈殿せしめ、パルプ状にして取り出すことができる。取り出されたパラ型全芳香族ポリアミドを再度他の溶媒に溶解し、その後に繊維の成形に供することもできるが、重合反応によって得たポリマー溶液をそのまま紡糸用溶液(ドープ)に調整して用いることも可能である。一度取り出してから再度溶解させる際に用いる溶媒としては、パラ型全芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定されるものではないが、上記パラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒とすることが好ましい。
【0026】
<パラ型全芳香族コポリアミド繊維の製造方法>
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得る方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、以下に記載するような湿式紡糸法または半乾半湿式紡糸法を採用することができる。
【0027】
[紡糸・凝固工程]
本発明の繊維の製造においては、先ず、紡糸・凝固工程を実施する。具体的には、末端封止されたパラ型全芳香族コポリアミドおよび溶媒を含む紡糸用溶液(ドープ)を調製し、当該紡糸用溶液(ドープ)をノズルから直接、またはエアギャップを通して凝固浴中に吐出し、凝固液に接触させて凝固糸を形成する。
凝固浴としては、パラ型全芳香族ポリアミドの貧溶媒が用いられるが、紡糸用溶液(ポリマードープ)の溶媒が急速に抜け出して、得られる全芳香族ポリアミド凝固糸に欠陥ができないように、通常は良溶媒を添加して凝固速度を調節する。貧溶媒としては水、良溶媒としてはパラ型全芳香族ポリアミドドープ用の溶媒を用いることが好ましい。良溶媒/貧溶媒の質量比は、パラ型全芳香族ポリアミドの溶解性や凝固性にもよるが、15/85〜40/60の範囲とすることが好ましい。
【0028】
[その他の工程]
凝固液から凝固糸条を引き上げた後は、公知の方法によって、最終的な芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。例えば、水洗工程を実施して形成された未延伸糸から溶媒を除去し、乾燥工程等を経た後に必要に応じて延伸することにより配向させ、最終的な繊維を得ることができる。
熱延伸を実施する場合には、その温度は、全芳香族ポリアミドのポリマー骨格にもよるが、好ましくは300〜600℃、さらに好ましくは350〜550℃とし、また、延伸倍率は好ましくは10倍以上、さらに好ましくは10〜15倍とする。
【0029】
<パラ型全芳香族ポリアミド繊維の物性>
(引張強度)
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度は、高い程好ましいが、アミノ末端封止剤の添加量を上げるにつれて強度は低下の傾向があり、23cN/dtex未満では高強度繊維としての特長が不足する。このため、本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度は、23cN/dtex以上であり、さらに好ましくは、24cN/dtex以上である。
【0030】
(伸度)
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の伸度は、3.0%以上であることが好ましい。3.0%未満の場合には、撚糸して使用する場合に撚り歪が大きくなり、撚糸時の強力利用率が低下する。このため、例えば耐久性が特に要求される用途に用いた場合に、高強力耐久性が問題となる。伸度は、好ましくは3.5〜5.0%の範囲である。
【0031】
(単糸繊度)
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の単糸繊度は、好ましくは0.5〜50dtexの範囲、さらに好ましくは1.0〜10dtexの範囲である。0.5dtex未満の場合には、製糸性が不安定となる場合がある。また、繊維の比表面積が大きくなるため、耐光劣化を受け易くなる。一方、50dtexを超える場合には、繊維の比表面積は小さくなるため耐光劣化を受けにくいが、反面、比表面積が小さいために製糸工程において凝固が不完全になりやすく、その結果、紡糸や延伸工程での工程調子が乱れやすくなるとともに、物性も低下しやすくなる。
【0032】
<パラ型全芳香族ポリアミド繊維の用途>
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、織物、編物、不織布等の布帛のほか、組紐、ロープ、撚糸コード、ヤーン、綿等の繊維構造物を構成することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例および比較例は本発明の理解を助けるためのものであって、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0034】
<測定・評価方法>
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法で測定・評価を実施した。
[固有粘度(IV)]
98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dLの溶液について30℃で測定した。
[繊度]
JIS−L−1015に準じ、測定した。
[繊維の引張強度]
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件で測定を実施した。
(測定条件)
温度 :室温
測定試料長 :500mm
チャック引張速度 :250mm/分
初荷重 :0.2cN/dtex
[強度保持率(耐光性)]
JIS L 0842−71に準拠し、紫外線カーボンアーク灯式耐候性試験機にて180,000kJ/mで100時間照射前後における引張強度の測定を実施した。光照射前後の引張強度値を用いて、以下の式により強度保持率を求めた。
強度保持率(%)=(光照射後の引張強度)/(光照射前の引張強度)×100
【0035】
<実施例1>
[パラ型全芳香族ポリアミド紡糸用溶液(ドープ)の調整]
窒素を内部にフローしている攪拌槽に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に、パラフェニレンジアミンと3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとが当モルとなる様に秤量して投入し、溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸ジクロライドと、アミノ末端封止剤である塩化ベンゾイルを添加して反応させた。このとき、テレフタル酸ジクロライドはジアミン総モル量と略当モルとなるよう、また、テレフタル酸ジクロライドに対して塩化ベンゾイルの比が0.005となるよう秤量・添加した。
反応終了後、水酸化カルシウムで中和することにより、濃度6質量%のコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液(ドープ)を得た。得られたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドの固有粘度(IV)は、3.35であった。
【0036】
[パラ型全芳香族ポリアミド繊維の作製]
得られたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を紡糸用溶液として用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度530℃下で10倍に延伸した後巻き取り、パラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
【0037】
<実施例2>
塩化ベンゾイルの添加比を、テレフタル酸ジクロライドに対して0.01とした以外は、実施例1と同様の方法でパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0038】
<実施例3>
塩化ベンゾイルの添加比を、テレフタル酸ジクロライドに対して0.001とした以外は、実施例1と同様の方法でパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0039】
<比較例1>
塩化ベンゾイルを未添加とした以外は、実施例1と同様の方法でパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0040】
<比較例2>
塩化ベンゾイルの添加比を、テレフタル酸ジクロライドに対して0.05とした以外は、実施例1と同様の方法でパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0041】
<比較例3>
塩化ベンゾイルの添加比を、テレフタル酸ジクロライドに対して0.0005とした以外は、実施例1と同様の方法でパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0042】
<比較例4>
塩化ベンゾイルを未添加とした以外は、実施例1と同様の方法で、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を得た。
得られたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液に、カーボンブラックのNMP分散液(大日精化工業株式会社製、商品名:MPS−1100 Black(T))を、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対してカーボンブラックが5質量%となるように加え、続いて、浅田鉄工株式会社製プラネタリーミキサー(製品名:PVM−5)を用いて、80℃にて2時間加熱、混練することにより、カーボンブラック含有パラ型全芳香族ポリアミド溶液を得た。
得られたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液を紡糸用溶液として用い、実施例1と同様の方法でパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラ型全芳香族ポリアミドからなる繊維であって、
引張強度が23cN/dtex以上であり、紫外線カーボンアーク灯式耐候性試験機にて180,000kJ/mで100時間照射前後の強度保持率が70%以上であるパラ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項2】
前記パラ型全芳香族ポリアミドが、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドである請求項1に記載のパラ型全芳香族ポリアミド繊維。

【公開番号】特開2013−112920(P2013−112920A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261963(P2011−261963)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】