説明

パルスチューブ冷凍機

【課題】本発明では、従来に比べて、蓄冷管とパルス管の間に良好な整流機能を有するパルスチューブ冷凍機を提供することを目的とする。
【解決手段】パルス管の低温端と蓄冷管の低温端が連通路により連通されたパルスチューブ冷凍機であって、前記連通路の前記パルス管の低温端側には、熱交換器が設置され、該熱交換器は、少なくとも第1および第2の金網を含む積層体を有し、前記第1および第2の金網は、いずれも銅または銅合金で構成され、各金網同士の界面は、拡散接合されており、前記積層体の側面は、前記連通路を構成する内壁と拡散接合されていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスチューブ冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より極低温環境が必要となる装置、例えば、核磁気共鳴診断装置(MRI)等を冷却する際には、パルスチューブ冷凍機が使用されている。
【0003】
パルスチューブ冷凍機では、圧縮機により圧縮された作動流体である冷媒ガス(例えば、ヘリウムガス)が蓄冷管およびパルス管に流入する動作と、パルス管および蓄冷管から冷媒ガスが排出され、圧縮機に回収される動作を繰り返すことで、蓄冷管およびパルス管の低温端に寒冷が形成される。
【0004】
パルスチューブ冷凍機の蓄冷管は、内部に蓄冷材を有する筒状部材(シリンダ)で構成され、パルス管は、中空の筒状部材(シリンダ)で構成される。両シリンダの低温端は、連通路で連通されており、この位置に、被冷却体が接続される冷却ステージが設置される。
【0005】
一般に、パルス管の低温端側には熱交換器が設置され、この熱交換器は、銅製の金網等で構成された積層体で構成される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−30704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のパルスチューブ冷凍機において、パルス管の低温端側には、熱交換器として、銅製の金網等で構成された積層体が充填される。金網が使用されるのは、冷媒ガスが蓄冷管からパルス管に流入する際に、冷媒ガスの速度に大きな差異が生じないようにするため、すなわち冷媒ガスの整流効果を高めるためである。
【0008】
しかしながら、パルス管の低温端側にこのような積層体を充填して熱交換器を構成した場合、積層体の側面と、この積層体を収容する溝の内壁とを、効率的に熱接触させることは難しい。このため、両者の接触状態に応じて、界面での熱抵抗が大きく変化してしまい、熱交換性にバラツキが生じたり、パルスチューブ冷凍機の熱交換性能が低下してしまうという問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来に比べて、良好な熱交換性を発揮する熱交換器を有するパルスチューブ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、パルス管の低温端と蓄冷管の低温端が連通路により連通されたパルスチューブ冷凍機であって、
前記連通路の前記パルス管の低温端側には、熱交換器が設置され、
該熱交換器は、少なくとも第1および第2の金網を含む積層体を有し、
前記第1および第2の金網は、いずれも銅または銅合金で構成され、
各金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記積層体の側面は、前記連通路を構成する内壁と拡散接合されていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機が適用される。
【0011】
また本発明では、パルス管の低温端と蓄冷管の低温端が連通路により連通されたパルスチューブ冷凍機であって、
前記連通路の前記パルス管の低温端側には、熱交換器が設置され、
該熱交換器は、少なくとも第1および第2の金網を含む積層体と、筐体とを有し、
前記第1および第2の金網、ならびに前記筐体は、いずれも銅または銅合金で構成され、
各金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記積層体は、前記筐体内に収容され、
前記積層体の側面は、前記筐体の内壁と拡散接合されていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機が提供される。
【0012】
前述の両パルスチューブ冷凍機において、前記積層体は、さらに、銅または銅合金とは別の金属で構成された第3の金網を最上部に有し、
各金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記積層体は、前記第3の金網の側が前記蓄冷管の低温端から最も遠ざかるようにして、前記連通路内に配置されても良い。
【0013】
この場合、前記積層体は、さらに、銅または銅合金とは別の金属で構成された第4の金網を有し、
各金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記積層体は、前記第3の金網、前記第1の金網、前記第4の金網、および前記第2の金網の順に積層されても良い。
【0014】
また、前記積層体は、6層以上の金網が積層されて構成され、
前記積層体は、全体を通して、銅または銅合金とは別の金属で構成された金網と、銅または銅合金製の金網との交互繰り返し構造で構成され、
各金網同士の界面は、拡散接合されていても良い。
【0015】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の網目の寸法は、0.02mm〜0.58mmの範囲であっても良い。
【0016】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記銅または銅合金とは別の金属は、ステンレス鋼もしくはニッケルであっても良い。
【0017】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、各銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の網目の寸法は、実質的に等しくても良い。
【0018】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、各銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の網目の寸法は、各銅または銅合金製の金網の網目の寸法よりも小さくても良い。
【0019】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、0.05mm〜1.14mmの範囲であっても良い。
【0020】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、各銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、実質的に等しくても良い。
【0021】
あるいは、各銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、前記蓄冷管の低温端に最も近い金網から、前記積層体の積層方向に向かって、連続的にまたは段階的に減少しても良い。
【0022】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記金網は、圧延処理されたものであっても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、従来に比べて、良好な熱交換性を発揮する熱交換器を有するパルスチューブ冷凍機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるパルスチューブ冷凍機の一例を概略的に示した図である。
【図2】熱交換器の一例の概略的な断面図である。
【図3】熱交換器に含まれる積層体の概略的な分解構成図である。
【図4】別の熱交換器の一例の概略的な断面図である。
【図5】熱交換器に含まれる別の積層体の概略的な分解構成図である。
【図6】熱交換器に含まれるさらに別の積層体の概略的な分解構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面により本発明の形態を説明する。
【0026】
図1には、本発明によるパルスチューブ冷凍機の一例を概略的に示す。
【0027】
図1に示すように、本発明によるパルスチューブ冷凍機100は、圧縮機110と、蓄冷管120と、パルス管140と、冷却ステージ180と、バッファタンク190とを有する。蓄冷管120は、高温端125aおよび低温端125bを有し、パルス管140は、高温端145aおよび低温端145bを有する。
【0028】
圧縮機110には、排気バルブ110aおよび吸気バルブ110bが接続される。また、圧縮機110は、ガス流路112を介して、蓄冷管120の高温端125aに接続されている。
【0029】
蓄冷管120は、中空状のシリンダ121で構成され、その内部には、蓄冷材122が充填されている。シリンダ121は、例えばステンレス鋼等で構成される。
【0030】
パルス管140は、例えばステンレス鋼製の中空状のシリンダ141で構成される。パルス管140の高温端145a側には、熱交換器149aが設けられ、パルス管140の低温端145b側には、熱交換器149bが設けられる。
【0031】
蓄冷管120の低温端125bおよびパルス管140の低温端145bは、銅製の冷却ステージ180に接触、固定されている。また、蓄冷管120の低温端125bおよびパルス管140の低温端145bは、冷却ステージ180内に設けられた連通路182で連通されている。冷却ステージ180は、図示しない被冷却対象に熱的に接続され、被冷却対象が冷却される。
【0032】
バッファタンク190は、ガス流路192およびオリフィス194を介して、パルス管140の高温端145aに接続されている。
【0033】
なお、蓄冷管120およびパルス管140は、それぞれの高温端125aおよび145aがフランジ115に接続されており、これにより固定されている。
【0034】
次に、このように構成されたパルスチューブ冷凍機の動作について簡単に説明する。
【0035】
まず、排気バルブ110aが開、吸気バルブ110bが閉の状態において、ガス圧縮機110から、高圧の冷媒ガスが排気バルブ110aおよびガス流路112を介して、蓄冷管120に供給される。蓄冷管120内に流入した冷媒ガスは、蓄冷材122により冷却されて温度を下げながら、蓄冷管120の低温端125bから連通路182を通る。冷媒ガスは、パルス管140の低温端145b側に設けられた熱交換器149bでさらに冷却されて、パルス管140の内部に流入する。
【0036】
この際に、パルス管140の内部に予め存在していた低圧の冷媒ガスは、流入した高圧の冷媒ガスにより圧縮される。これにより、パルス管140内の冷媒ガスの圧力は、バッファタンク190内の圧力よりも高くなり、冷媒ガスは、オリフィス194およびガス流路192を通って、バッファタンク190に流入する。
【0037】
次に、排気バルブ110aを閉じ、吸気バルブ110bを開くと、パルス管140内の冷媒ガスは、低温端145bを通り、蓄冷管120の低温端125bに流入する。さらに冷媒ガスは、蓄冷材122を冷却しながら蓄冷管120内を通過し、高温端125aからガス流路112および吸気バルブ110bを通り、圧縮機110に回収される。
【0038】
ここで、パルス管140は、オリフィス194を介して、バッファタンク190と接続されている。このため、冷媒ガスの圧力変動の位相と、冷媒ガスの体積変化の位相とは、一定の位相差で変化する。この位相差により、パルス管140の低温端145bにおいて、冷媒ガスの膨張による寒冷が発生する。パルスチューブ冷凍機100は、上記の動作が反復されることで、冷却ステージ180に接続された被冷却対象を冷却することができる。
【0039】
ところで、従来のパルスチューブ冷凍機では、パルス管の低温端側に設置される熱交換器として、銅製の金網等からなる積層体が使用される。このような金網を使用するのは、冷媒ガスが蓄冷管からパルス管に流入する際に、冷媒ガスの速度に大きな差異が生じないようにするため、すなわち冷媒ガスの整流効果を得るためである。この積層体は、各構成部材が相互にずれないように固定(接合)した後、パルス管の低温端側に充填される。
【0040】
しかしながら、熱交換器をこのように構成した場合、積層体を高精度の寸法で形成したとしても、積層体の側面と、この積層体を収容する溝(図1の例では、連通路182)の内壁との間に、ある程度の隙間が生じてしまうことは避けられない。従って、両者を常に確実に熱接触させることは難しいという問題が生じる。また、このため、両者の接触状態に応じて、界面での熱抵抗が大きく変化してしまい、熱交換性にバラツキが生じたり、パルスチューブ冷凍機の熱交換性能が低下してしまうという問題が生じ得る。
【0041】
なお、この問題に対処するため、積層体を溝内に充填した後、積層体の側部を溝の内壁にろう付けすることが考えられる。
【0042】
しかしながら、この方法では、積層体と溝の内壁の両者を複数の「点」で接触させることはできても、積層体の側部を全体的に溝の内壁と接触させることは不可能である。従って、この方法は、熱抵抗の抑制効果としては不十分であり、前述の問題の根本的な解決にはならない。
【0043】
これに対して、本発明によるパルスチューブ冷凍機では、パルス管140の低温端145b側に設置される熱交換器149bは、この熱交換器149bを収容する溝の内壁と拡散接合されているという特徴を有する。
【0044】
熱交換器149bをこのように構成した場合、熱交換器149bの側部は、常時溝の内壁と接触されるようになる。従って、従来のような、両者の間で熱抵抗が大きく変化したり、パルスチューブ冷凍機の熱交換性能が低下してしまうという問題を軽減または解消することができる。
【0045】
以下、図2および図3を参照して、本発明の特徴をより詳しく説明する。
【0046】
図2には、パルス管140の低温端145bが接続される冷却ステージ180の溝189近傍の断面を模式的に示す。この図には、本発明に使用される熱交換器149bの一例の概略的な断面が示されている。図3には、熱交換器149bを構成する積層体150の一例の概略的な分解構成図を示す。
【0047】
図2に示すように、熱交換器149bは、冷却ステージ180の溝189内に形成される。熱交換器149bは、積層体150を有し、この積層体の側面は、溝189の内壁184と拡散接合されている。
【0048】
図3に示すように、通常の場合、積層体150は、複数の銅または銅合金製(以下、両者をまとめて「銅(製)」と称する)の金網を積層することにより構成される。図3の例では、積層体150は、第1の金網152A、第2の金網152B、第3の金網152C...および第nの金網152Nを積層することにより構成される。ただし、積層体150は、単一の銅製の金網152Aで構成されても良い。これらの金網152A、152B、152C...および152Nの各接触界面は、拡散接合されている。従って、各界面での熱接触性が高まり、界面での熱抵抗が小さくなる。
【0049】
熱交換器149bは、例えば以下の方法で、冷却ステージ180の溝189内に形成される。
【0050】
まず、各銅製の金網152A、152B、152C...および152Nを積層する。次に、得られた組立体を冷却ステージ180の溝189内に設置する。その後、冷却ステージ180ごと、「拡散接合処理」することにより、熱交換器149bが形成される。
【0051】
ここで、「拡散接合処理」とは、加熱により、各部材同士の界面で原子相互拡散が生じ、これにより界面接合が行われる方法の総称である。通常、本願における拡散接合処理は、800℃〜1080℃の範囲(例えば1000℃)で行われる。
【0052】
このような拡散接合処理により、各金網間の界面が密着、接合されると同時に、溝189の内壁184に、積層体150の側面が拡散接合される。
【0053】
なお、各金網間の拡散接合処理は、積層体150と溝189の内壁184との拡散接合処理の前に実施しておいても良い(すなわち、「2段階」拡散接合処理)。
【0054】
このような熱交換器149bの構成では、積層体150を後から溝189に充填する場合に比べて、熱交換器149bと冷却ステージ180との間の熱接触性を高めることができ、両者の間の熱抵抗を有意に抑制することができる。
【0055】
ここで、図3において、各銅製の金網152A、152B、152C...および152Nのメッシュまたは網目(開き目)の寸法は、実質的に等しくても、異なっていても良い。
【0056】
なお、本願において、「メッシュ」とは、1インチ(25.4mm)の間にある目数を意味し、「網目」とは、金網の隣接する線部分同士間の距離(隙間の長さ)を意味する。
【0057】
各金網152A〜152Nの網目が異なる場合、網目は、第1の金網152Aから第nの金網152Nの順に、連続的にまたは段階的(例えばステップ状)に大きくなっても良い。この場合、網目の細かい第1の金網152Aは、網目の粗い第nの金網152Nに比べて、蓄冷管120の低温端125bから遠い側(パルス管140に近い側)に設置される。これにより、冷媒ガスが蓄冷管120からパルス管140に流れる際、冷媒ガスの流速に大きな変動が生じにくくなり、より有意な整流効果が得られる。
【0058】
金網の総数は、各金網の厚さ等によっても異なるが、2〜200の範囲(例えば100)であっても良い。
【0059】
各銅製の金網のメッシュは、通常、#16〜#300の範囲であり、これは、金網の網目に換算すると、約1.14mm〜約0.05mmの範囲である。各銅製の金網のメッシュは、#60〜#150(網目換算で、約0.303mm〜約0.104mm)の範囲であることが好ましい。
【0060】
なお、各金網は、圧延処理されたものであっても良い。圧延処理した金網は、特開2003−28526に示されている。特開2003−28526の図2(A)に示すように、金網を圧延処理することにより、金網同士の間の接触面積が増加する。金網同士の熱接触抵抗が小さくなり、熱交換効率が向上する。圧延処理後の金網の厚さは、処理前を1とすると、0.4〜0.99の範囲である。この厚さは、0.6〜0.8の範囲であることが好ましい。
【0061】
なお、図2の例では、熱交換器149bの側面は、冷却ステージ180の構189の内壁184と拡散接合されている。しかしながら、本発明の態様は、これに限られるものではない。例えば熱交換器149bの側面は、パルス管140を構成するシリンダ141の低温端145b側の内壁と、拡散接合されても良い。
【0062】
次に、図4を参照して、別の熱交換器149b−2の構成について説明する。図4には、パルス管140の低温端145bが接続される冷却ステージ180の溝189近傍の断面を模式的に示す。この図には、本発明に使用される熱交換器149b−2の一例の概略的な断面が示されている。
【0063】
図4に示すように、熱交換器149b−2は、冷却ステージ180の溝189に形成される。この熱交換器149b−2は、前述の図2に示した熱交換器149bと同様の積層体を有する。ただし、この熱交換器149b−2は、さらに、金網の積層体150を収容する筐体159を備えるという特徴を有する。この筐体159は、銅または銅合金で構成される。また、筐体159は、上面および下面が開口されており、溝189の内径とほぼ適合する側面寸法を有する。金網の積層体150は、その側面が、筐体159の側面の内壁と拡散接合される。
【0064】
熱交換器149b−2は、各金網152A〜152Nを積層して、筐体159内に充填した後、この筐体159ごと拡散接合処理することにより形成することができる。その後、この筐体159は、冷却ステージ180の溝189に設置され、筐体159が冷却ステージ180の溝189の内壁184とろう付けされる。
【0065】
ここで、筐体159と内壁184とをろう付けした場合、接触界面での両者の密着および接触の程度は、従来のような積層体と内壁とを直接ろう付けした場合よりも良好であることに留意する必要がある。これは、積層体の側面は、通常、複数の部材の端部が存在するため、高い寸法精度で十分に平滑化することが難しいのに対して、筐体159は、単一の部材で構成されるため、その側面は、高精度で比較的容易に平滑化することができるためである。
【0066】
従って、図4のような構成でも、従来の熱交換器に比べて、熱交換器149b−2と冷却ステージ180との間の熱接触性を高めることができ、両者の間の熱抵抗を有意に抑制することができる。
【0067】
なお、図4の例では、熱交換器149b−2は、冷却ステージ180の構189内に直接設置される。しかしながら、本発明の態様は、これに限られるものではない。例えば熱交換器149b−2の外側は、パルス管140を構成するシリンダ141の低温端145b側と接触していても良い。この場合、熱交換器149b−2の筐体159は、シリンダ141の内壁とろう付けされる。
【0068】
以上の例では、熱交換器149bおよび熱交換器149b−2が、銅製の金網からなる積層体150を有する場合について説明した。しかしながら、本発明は、このような態様に限られるものではない。
【0069】
図5には、熱交換器149bおよび熱交換器149b−2に使用される別の積層体の構成を示す。
【0070】
図5において、積層体150Aは、第1の金網153A、第2の金網153B、第3の金網153C、第4の金網153D...および第nの金網153Nをこの順に積層することにより構成される。なお、前述の積層体150と同様、最終的に、各金網同士の界面は、拡散接合される。
【0071】
ここで、第2の金網153B〜第nの金網153Nは、銅製であるのに対して、第1の金網153Aは、銅以外の金属または合金で構成される。例えば、第1の金網153Aは、ステンレス鋼(SUS304、316等)またはニッケル等であっても良い。ステンレス鋼およびニッケルは、銅に比べて剛性が高い。従って、第1の金網153Aをステンレス鋼またはニッケルで構成した場合、最終的に得られる積層体150Aの剛性を高めることができ、使用の際に、冷媒ガスの圧力により、積層体150が変形する可能性が少なくなる。
【0072】
また、第1の金網153Aは、その他の金網に比べて大きなメッシュ(すなわち、小さい網目)を有しても良い。この場合、積層体150Aは、第1の金網153Aの側が蓄冷管120の低温端125bから遠い側となるようにして(図2、図4の例では、上側となるようにして)、溝189内に設置される。これにより、蓄冷管120とパルス管140の間を往復する冷媒ガスに対して、高い整流効果が得られるようになる。
【0073】
また、一般に、銅製の金網では、加工技術およびコスト上の制約から、メッシュが大きく、網目の細かいものを製作することが難しいという問題がある(例えば、メッシュの最大値は、#100程度であり、網目の最小値は、0.134〜0.154mm程度である)。しかしながら、例えばステンレス鋼等の非銅製の金網の場合、メッシュが大きく、網目の細かいものを比較的容易に入手することができる。従って、2種類の材料を組み合わせることにより、熱交換器149b、149b−2の整流性に関して、幅広い設計が可能になる。
【0074】
例えば、第1の金網153Aのメッシュは、#30〜#500の範囲であり、#60〜#400の範囲であることが好ましい。これは、網目換算では、それぞれ、約0.577mm〜約0.026mm、および約0.253mm〜約0.034mmに相当する。一方、第2の金網153B〜第nの金網153Nのメッシュは、#16〜#300の範囲であり、#60〜#150の範囲であることが好ましい。これは、網目換算では、それぞれ、約1.14mm〜約0.05mm、および約0.303mm〜約0.104mmに相当する。なお、前述のように、第2の金網153B〜第nの金網153Nは、メッシュまたは網目が同一であっても異なっていても良い。
【0075】
金網の総数は、各金網の厚さ等によっても異なるが、2〜200の範囲(例えば100)であっても良い。
【0076】
前述のように、積層体150Aは、冷却ステージ180の溝189内に設置され、これを拡散接合処理することにより、熱交換器149bが形成される。あるいは、積層体150Aは、筐体159内に設置され、これを拡散接合処理した後、筐体159を冷却ステージ180の溝189内に設置し、筐体159と内壁184とをろう付けすることにより、熱交換器149b−2が形成される。拡散接合処理は、例えば、800℃〜1080℃(例えば1000℃)の範囲で行われる。
【0077】
図6には、熱交換器149bおよび熱交換器149b−2に使用されるさらに別の積層体の構成を示す。
【0078】
図6において、積層体150Bは、第1の金網154A、第2の金網154B、第3の金網154C、第4の金網154D...および第nの金網154Nをこの順に積層することにより構成される。なお、前述の積層体150および150Aと同様、最終的に、各金網同士の界面は、拡散接合される。
【0079】
第2の金網154B、第4の金網154D、および第6の金網154F〜第nの金網154Nは、銅製である。これに対して、第1の金網154A、第3の金網154C、および第5の金網154Eの3つは、銅以外の金属または合金で構成される。例えば、第1の金網154A、第3の金網154C、および第5の金網154Eは、ステンレス鋼(SUS304、316等)またはニッケル等で構成される。なお、第1の金網154A、第3の金網154C、および第5の金網154Eは、同一の材料で構成されても、異なる材料で構成されても良い。
【0080】
この図の構成では、非銅製の金網と銅製の金網とが交互に積層されたサイクルCが3回繰り返される。
【0081】
第1の金網154A、第3の金網154C、および第5の金網154Eの3つは、その他の金網に比べて大きなメッシュ(すなわち小さい網目)を有する。例えば、第1の金網154A、第3の金網154C、および第5の金網154Eのメッシュは、#30〜#500(網目換算で、約0.577mm〜約0.026mm)の範囲であり、#60〜#400(網目換算で、約0.253mm〜約0.034mm)の範囲であることが好ましい。一方、残りの銅製の金網154B、154D、154F〜154Nのメッシュは、#16〜#300(網目換算で、約1.14mm〜約0.05mm)の範囲であり、#60〜#150(網目換算で、約0.303mm〜約0.104mm)の範囲であることが好ましい。なお、銅製の金網は、網目の寸法が同一であっても異なっていても良い。銅製の金網154B〜154Nの各網目の寸法が異なる場合、網目は、第2の金網154Bから第nの金網154Nの順に、連続的にまたは段階的(例えばステップ状)に大きくなっても良い。
【0082】
金網の総数は、各金網の厚さにもよるが、2〜200の範囲(例えば100)であっても良い。
【0083】
図6に示す積層体150Bは、使用の際には、第1の金網154Aが、冷却ステージ180の連通路182から遠い側となるようにして(図2、4の例では、上側となるようにして)、冷却ステージ180内に設置される。
【0084】
なお、図6の例では、非銅製の金網を合計3つ含み、サイクル数Cが3回の積層体150Bについて説明したが、積層体150Bにおいて、非銅製の金網の数、およびサイクル数Cは、特に限られない。非銅製の金網の数は、例えば、2つ、4つ、または6つ以上であっても良い。また、繰りかえし数Cは、2回、4回、または6回以上であっても良い。例えば、第1の金網から第nの金網まで(すなわち積層体150Bの全体にわたって)、非銅製と銅製の金網の交互配置が繰り返されても良い。
【0085】
以上、図面を参照して、本発明による実施例の一例について説明した。ただし、本発明は、前述の構成に限られるものではないことは、当業者には明らかである。例えば、前述の例において、パルスチューブ冷凍機100は、単段式である。しかしながら、本発明は、2段式、または3段式等の多段パルスチューブ冷凍機にも適用することができる。
【実施例】
【0086】
実際に、冷却ステージの溝内に、前述の図2に示すような熱交換器149bを形成したパルスチューブ冷凍機を通常の条件で運転して、冷却ステージの温度を測定した。熱交換器149bの積層体には、図5に示す構成の積層体150Aを使用した。最上部の金網153Aには、メッシュが#250のSUS304製の金網を使用した。また、2段目以降の金網には、メッシュが#80の銅製の金網を使用した。
【0087】
測定の結果、冷却ステージの温度は、約36.4K(ケルビン)であった。一方、冷却ステージの溝内に、従来の熱交換器(メッシュが#80の銅製の積層体を有し、積層体の側部が溝の内壁と拡散接合されていないもの)を備えるパルスチューブ冷凍機において、同様の測定を行ったところ、冷却ステージの温度は、約40.2K(ケルビン)であった。
【0088】
この結果から、本発明によるパルスチューブ冷凍機では、従来に比べて冷却能力が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、核磁気共鳴診断装置、超伝導マグネット装置、クライオポンプ等の低温システムに適用される、単段式または多段式のパルスチューブ冷凍機に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
100 パルスチューブ冷凍機
110 圧縮機
110a 排気バルブ
110b 吸気バルブ
112 ガス流路
115 フランジ
120 蓄冷管
121 シリンダ
122 蓄冷材
125a 蓄冷管の高温端
125b 蓄冷管の低温端
140 パルス管
141 シリンダ
145a パルス管の高温端
145b パルス管の低温端
149a、149b 熱交換器
150 積層体
150A 別の積層体
150B さらに別の積層体
152A、153A、154A 第1の金網
152B、153B、154B 第2の金網
152C、153C、154C 第3の金網
159 筐体
180 冷却ステージ
182 連通路
184 内壁
189 溝
190 バッファタンク
192 ガス流路
194 オリフィス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス管の低温端と蓄冷管の低温端が連通路により連通されたパルスチューブ冷凍機であって、
前記連通路の前記パルス管の低温端側には、熱交換器が設置され、
該熱交換器は、少なくとも第1および第2の金網を含む積層体を有し、
前記第1および第2の金網は、いずれも銅または銅合金で構成され、
各金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記積層体の側面は、前記連通路を構成する内壁と拡散接合されていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項2】
パルス管の低温端と蓄冷管の低温端が連通路により連通されたパルスチューブ冷凍機であって、
前記連通路の前記パルス管の低温端側には、熱交換器が設置され、
該熱交換器は、少なくとも第1および第2の金網を含む積層体と、筐体とを有し、
前記第1および第2の金網、ならびに前記筐体は、いずれも銅または銅合金で構成され、
各金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記積層体は、前記筐体内に収容され、
前記積層体の側面は、前記筐体の内壁と拡散接合されていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項3】
前記積層体は、さらに、銅または銅合金とは別の金属で構成された第3の金網を最上部に有し、
各金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記積層体は、前記第3の金網の側が前記蓄冷管の低温端から最も遠ざかるようにして、前記連通路内に配置されることを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項4】
前記積層体は、さらに、銅または銅合金とは別の金属で構成された第4の金網を有し、
各金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記積層体は、前記第3の金網、前記第1の金網、前記第4の金網、および前記第2の金網の順に積層されることを特徴とする請求項3に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項5】
前記積層体は、6層以上の金網が積層されて構成され、
前記積層体は、全体を通して、銅または銅合金とは別の金属で構成された金網と、銅または銅合金製の金網との交互繰り返し構造で構成され、
各金網同士の界面は、拡散接合されていることを特徴とする請求項4に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項6】
前記銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の網目の寸法は、0.02mm〜0.58mmの範囲であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項7】
前記金網は、圧延処理されたものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項8】
前記圧延処理された金網の厚さは、処理前を1とすると、0.4〜0.99の範囲であることを特徴とする請求項7に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項9】
前記銅または銅合金とは別の金属は、ステンレス鋼もしくはニッケルであることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項10】
各銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の網目の寸法は、実質的に等しいことを特徴とする請求項4乃至9のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項11】
各銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の網目の寸法は、各銅または銅合金製の金網の網目の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項4乃至9のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項12】
前記銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、0.05mm〜1.14mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項13】
各銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、実質的に等しいことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項14】
各銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、前記蓄冷管の低温端に最も近い金網から、前記積層体の積層方向に向かって、連続的にまたは段階的に減少することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−149600(P2011−149600A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10447(P2010−10447)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)