説明

パルスチューブ冷凍機

【課題】本発明では、従来に比べて、蓄冷管とパルス管の間に良好な整流機能を有するパルスチューブ冷凍機を提供することを目的とする。
【解決手段】パルス管の低温端と蓄冷管の低温端が連通路により連通されたパルスチューブ冷凍機であって、前記連通路の前記パルス管の低温端側には、熱交換器が設置され、該熱交換器は、第1の金網と、第2の金網との、少なくとも2層からなる積層体を有し、前記第1の金網は、銅または銅合金とは別の金属で構成され、前記第2の金網は、銅または銅合金製であり、両金網同士の界面は、拡散接合されており、前記第1の金網の網目は、前記第2の金網の網目よりも小さく、前記熱交換器は、前記積層体の前記第1の金網の側が前記蓄冷管の低温端から最も遠ざかるようにして、前記連通路内に設置されることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスチューブ冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より極低温環境が必要となる装置、例えば、核磁気共鳴診断装置(MRI)等を冷却する際には、パルスチューブ冷凍機が使用されている。
【0003】
パルスチューブ冷凍機では、圧縮機により圧縮された作動流体である冷媒ガス(例えば、ヘリウムガス)が蓄冷管およびパルス管に流入する動作と、パルス管および蓄冷管から冷媒ガスが排出され、圧縮機に回収される動作を繰り返すことで、蓄冷管およびパルス管の低温端に寒冷が形成される。
【0004】
パルスチューブ冷凍機の蓄冷管は、内部に蓄冷材を有する筒状部材(シリンダ)で構成され、パルス管は、中空の筒状部材(シリンダ)で構成される。両シリンダの低温端は、連通路で連通されており、この位置に、被冷却体が接続される冷却ステージが設置される。
【0005】
一般に、パルス管の低温端側には熱交換器が設置され、この熱交換器の内部には、銅製の金網が充填される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−235962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のパルスチューブ冷凍機において、パルス管の低温端側の熱交換器部分には、銅製の金網が充填され、使用される。金網が使用されるのは、冷媒ガスが蓄冷管からパルス管に流入する際に、冷媒ガスの速度に大きな差異が生じないようにするため、すなわち冷媒ガスの整流効果を高めるためである。
【0008】
しかしながら、銅製の金網では、加工技術およびコスト上の制約から、メッシュの大きなもの(網目の細かいもの)を製作することが難しいという問題がある。そのため、通常の場合、銅製の金網のメッシュは、#100未満(例えば#80)になっている。
【0009】
しかしながら、このようなメッシュの金網では、冷媒ガスに十分な整流効果が得られない場合がある。また、整流効果が不十分な場合、パルス管内を流れるガスの流束(ガスピストン)に乱れが生じ、その結果、パルスチューブ冷凍機の冷凍性能が低下してしまうという問題が生じ得る。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来に比べて、蓄冷管とパルス管の間に良好な整流機能を有するパルスチューブ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、パルス管の低温端と蓄冷管の低温端が連通路により連通されたパルスチューブ冷凍機であって、
前記連通路の前記パルス管の低温端側には、熱交換器が設置され、
該熱交換器は、第1の金網と、第2の金網との、少なくとも2層からなる積層体を有し、
前記第1の金網は、銅または銅合金とは別の金属で構成され、前記第2の金網は、銅または銅合金製であり、
両金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記第1の金網の網目は、前記第2の金網の網目よりも小さく、
前記熱交換器は、前記積層体の前記第1の金網の側が前記蓄冷管の低温端から最も遠ざかるようにして、前記連通路内に設置されることを特徴とするパルスチューブ冷凍機が提供される。
【0012】
本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記積層体は、さらに、前記第2の金網の、前記第1の金網とは反対の側に、第3の金網を有し、該第3の金網の、前記第2の金網とは反対の側には、第4の金網が積層され、
前記第3の金網は、銅または銅合金とは別の金属で構成され、前記第4の金網は、銅または銅合金製であり、
各金網同士の界面は、拡散接合されていても良い。
【0013】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記積層体は、全体を通して、銅または銅合金とは別の金属で構成された金網と、銅または銅合金製の金網との交互繰り返し構造で構成され、
各金網同士の界面は、拡散接合されていても良い。
【0014】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記積層体は、前記第2の金網の前記第1の金網とは反対の側に、複数の銅または銅合金製の金網が直接積層された部分を有し、
前記部分における前記複数の銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、前記第1の金網の側から、前記積層体の積層方向に沿って、連続的にまたは段階的に増加しても良い。
【0015】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の網目の寸法は、0.02mm〜0.58mmの範囲であっても良い。
【0016】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、0.05mm〜1.14mmの範囲であっても良い。
【0017】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の少なくとも一つは、ステンレス鋼もしくはニッケルで構成されても良い。
【0018】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、各銅または銅合金とは別の金属で構成された金網は、同一の材料で構成されても良い。
【0019】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記積層体の側面は、前記連通路を構成する壁と拡散接合されていても良い。
【0020】
あるいは、前記積層体は、銅または銅合金製の筐体内に収容され、
前記積層体の側面は、前記筐体の内壁と拡散接合されていても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、従来に比べて、蓄冷管とパルス管の間に良好な整流機能を有するパルスチューブ冷凍機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるパルスチューブ冷凍機の一例を概略的に示した図である。
【図2】熱交換器用の積層体150の一例の概略的な分解構成図である。
【図3】熱交換器用の別の積層体150Aの一例の概略的な分解構成図である。
【図4】熱交換器149b−2が配置された冷却ステージ180の溝189近傍の模式的な断面図である。
【図5】別の熱交換器149b−3が配置された冷却ステージ180の溝189近傍の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面により本発明の形態を説明する。
【0024】
図1には、本発明によるパルスチューブ冷凍機の一例を概略的に示す。
【0025】
図1に示すように、本発明によるパルスチューブ冷凍機100は、圧縮機110と、蓄冷管120と、パルス管140と、冷却ステージ180と、バッファタンク190とを有する。蓄冷管120は、高温端125aおよび低温端125bを有し、パルス管140は、高温端145aおよび低温端145bを有する。
【0026】
圧縮機110には、排気バルブ110aおよび吸気バルブ110bが接続される。また、圧縮機110は、ガス流路112を介して、蓄冷管120の高温端125aに接続されている。
【0027】
蓄冷管120は、中空状のシリンダ121で構成され、その内部には、蓄冷材122が充填されている。シリンダ121は、例えばステンレス鋼等で構成される。
【0028】
パルス管140は、例えばステンレス鋼製の中空状のシリンダ141で構成される。パルス管140の高温端145a側には、熱交換器149aが設けられ、パルス管140の低温端145b側には、熱交換器149bが設けられる。
【0029】
蓄冷管120の低温端125bおよびパルス管140の低温端145bは、銅製の冷却ステージ180に接触、固定されている。また、蓄冷管120の低温端125bおよびパルス管140の低温端145bは、冷却ステージ180内に設けられた連通路182で連通されている。冷却ステージ180は、図示しない被冷却対象に熱的に接続され、被冷却対象が冷却される。
【0030】
バッファタンク190は、ガス流路192およびオリフィス194を介して、パルス管140の高温端145aに接続されている。
【0031】
なお、蓄冷管120およびパルス管140は、それぞれの高温端125aおよび145aがフランジ115に接続されており、これにより固定されている。
【0032】
次に、このように構成されたパルスチューブ冷凍機の動作について簡単に説明する。
【0033】
まず、排気バルブ110aが開、吸気バルブ110bが閉の状態において、ガス圧縮機110から、高圧の冷媒ガスが排気バルブ110aおよびガス流路112を介して、蓄冷管120に供給される。蓄冷管120内に流入した冷媒ガスは、蓄冷材122により冷却されて温度を下げながら、蓄冷管120の低温端125bから連通路182を通る。冷媒ガスは、パルス管140の低温端145bに設けられた熱交換器149bでさらに冷却されて、パルス管140の内部に流入する。
【0034】
この際に、パルス管140の内部に予め存在していた低圧の冷媒ガスは、流入した高圧の冷媒ガスにより圧縮される。これにより、パルス管140内の冷媒ガスの圧力は、バッファタンク190内の圧力よりも高くなり、冷媒ガスは、オリフィス194およびガス流路192を通って、バッファタンク190に流入する。
【0035】
次に、排気バルブ110aを閉じ、吸気バルブ110bを開くと、パルス管140内の冷媒ガスは、低温端145bを通り、蓄冷管120の低温端125bに流入する。さらに冷媒ガスは、蓄冷材122を冷却しながら蓄冷管120内を通過し、高温端125aからガス流路112および吸気バルブ110bを通り、圧縮機110に回収される。
【0036】
ここで、パルス管140は、オリフィス194を介して、バッファタンク190と接続されている。このため、冷媒ガスの圧力変動の位相と、冷媒ガスの体積変化の位相とは、一定の位相差で変化する。この位相差により、パルス管140の低温端145bにおいて、冷媒ガスの膨張による寒冷が発生する。パルスチューブ冷凍機100は、上記の動作が反復されることで、冷却ステージ180に接続された被冷却対象を冷却することができる。
【0037】
なお、前述のようなパルスチューブ冷凍機100において、ある圧力を保持しながら、パルス管140内を上下に周期的に流れる冷媒ガスの動きは、しばしば「ガスピストン」と称される。
【0038】
ところで、従来のパルスチューブ冷凍機では、パルス管の低温端側に設置される熱交換器には、銅または銅合金製(以下、両者を併せて、単に「銅(製)」と称する)の金網が充填、使用される。このような金網を使用するのは、冷媒ガスが蓄冷管からパルス管に流入する際に、冷媒ガスの速度に大きな差異が生じないようにするため、すなわち冷媒ガスの整流効果を得るためである。
【0039】
しかしながら、銅製の金網では、加工技術およびコスト上の制約から、メッシュの大きなもの(網目の細かいもの)を製作することが難しいという問題がある。そのため、通常の場合、銅製の金網のメッシュは、#100未満(例えば#80)になっている。これは、金網の網目に換算すると、約0.134mm以上(例えば、約0.138mm〜約0.218mm)に相当する。
【0040】
なお、本願において、「メッシュ」とは、1インチ(25.4mm)の間にある目数を意味し、「網目」とは、金網の隣接する線部分同士間の距離(隙間の長さ)を意味する。
【0041】
しかしながら、このようなメッシュまたは網目の金網では、冷媒ガスに十分な整流効果が得られない場合がある。また、整流効果が不十分な場合、前述のガスピストンに乱れが生じ、その結果、パルスチューブ冷凍機の冷凍性能が低下してしまうという問題が生じ得る。
【0042】
これに対して、本発明によるパルスチューブ冷凍機では、パルス管140の低温端145b側の熱交換器149bが、銅または銅合金とは別の金属で構成された金網(以下、「非銅製の金網」と称する)と、銅製の金網とを有する積層体150を備えるという特徴を有する。非銅製の金網には、銅製の金網に比べて、メッシュが大きく網目の細かいものが使用され、この積層体150は、蓄冷管120の低温端125bから最も遠ざかる位置に非銅製の金網がくるようにして、連通路182内に設置される。このため、本発明では、銅製の金網のみを積層して構成された従来の熱交換器に比べて、冷媒ガスの整流効果を高めることができる。
【0043】
以下、本発明の特徴をより詳しく説明する。
【0044】
図2には、本発明に使用される熱交換器149b用の積層体150の一例の概略的な構成図を示す。
【0045】
積層体150は、第1の金網152A、第2の金網152B、第3の金網152C、第4の金網152D...および第nの金網152Nをこの順に積層して、組立体151を形成した後、この組立体151を拡散接合処理することにより構成される。
【0046】
図2の例では、第1の金網152Aは、非銅製の金属または合金で構成される。また、第2の金網152B〜第nの金網152Nは、銅製である。例えば、第1の金網152Aは、ステンレス鋼(SUS304、316等)またはニッケル等であっても良い。ステンレス鋼およびニッケルは、銅に比べて剛性が高い。従って、第1の金網152Aをステンレス鋼またはニッケルで構成した場合、最終的に得られる積層体150の剛性を高めることができ、使用の際に、冷媒ガスの圧力により、積層体150が変形する可能性が少なくなる。
【0047】
また、第1の金網152Aは、その他の金網に比べて大きなメッシュ、すなわち小さい網目を有する。例えば、第1の金網152Aのメッシュは、#30〜#500の範囲であり、#60〜#400の範囲であることが好ましい。これは、網目換算では、それぞれ、約0.577mm〜約0.026mm、および約0.253mm〜約0.034mmに相当する。一方、第2の金網152B〜第nの金網152Nのメッシュは、#16〜#300の範囲であり、#60〜#150の範囲であることが好ましい。これは、網目換算では、それぞれ、約1.14mm〜約0.05mm、および約0.303mm〜約0.104mmに相当する。
【0048】
なお、第2の金網152B〜第nの金網152Nは、メッシュまたは網目が同一であっても異なっていても良い。各金網152B〜152Nのメッシュまたは網目が異なる場合、網目は、第2の金網152Bから第nの金網15Nの順に、連続的にまたは段階的に(例えばステップ状)に大きくなっても良い。この場合、冷媒ガスが蓄冷管120からパルス管140に流れる際、冷媒ガスの流速に大きな変動が生じにくくなり、より有意な整流効果が得られる。
【0049】
金網の総数は、各金網の厚さ等によっても異なるが、2〜200の範囲(例えば100)であっても良い。
【0050】
前述のように、積層体150は、各金網を積層して組立体151を構成した後、この組立体151を拡散接合処理することにより形成される。「拡散接合処理」とは、加熱により、各金網同士の界面で原子相互拡散が生じ、これにより界面接合が行われる方法の総称である。通常、拡散接合処理は、800℃〜1080℃の範囲(例えば1000℃)で行われる。
【0051】
拡散接合処理により、各金網間の界面が密着、接合される。従って、各界面での熱接触性が高まり、熱抵抗が小さくなる。
【0052】
積層体150は、使用の際には、第1の金網152Aの側が蓄冷管120の低温端125bから遠い側となるようにして(図1の例では、上側となるようにして)、連通路182内に設置される。これにより、蓄冷管120とパルス管140の間を往復する冷媒ガスに対して、高い整流効果が得られる。また、これにより、冷却性能が向上したパルスチューブ冷凍機100を提供することが可能となる。
【0053】
図3には、本発明の熱交換器149bに使用される別の積層体150Aの一例の概略的な構成図を示す。
【0054】
この図の例では、積層体150Aは、第1の金網153A、第2の金網153B、第3の金網153C、第4の金網153D、第5の金網153E、第6の金網153F...第n−1の金網153N−1、および第nの金網153Nを、この順に積層し、得られた組立体151Aを拡散接合処理することにより構成される。
【0055】
第2の金網153B、第4の金網153D、および第6の金網153F〜第nの金網153Nは、銅製である。これに対して、第1の金網153A、第3の金網153C、および第5の金網153Eの3つは、非銅製の金属または合金で構成される。例えば、第1の金網153A、第3の金網153C、および第5の金網153Eは、ステンレス鋼(SUS304、316等)またはニッケル等で構成される。なお、第1の金網153A、第3の金網153C、および第5の金網153Eは、同一の材料で構成されても、異なる材料で構成されても良い。
【0056】
この図の構成では、非銅製の金網と銅製の金網とが交互に積層されたサイクルCが3回繰り返される。
【0057】
第1の金網153A、第3の金網153C、および第5の金網153Eの3つは、その他の金網に比べて大きなメッシュ(すなわち小さい網目)を有する。例えば、第1の金網153A、第3の金網153C、および第5の金網153Eのメッシュは、#30〜#500(網目換算で、約0.577mm〜約0.026mm)の範囲であり、#60〜#400(網目換算で、約0.253mm〜約0.034mm)の範囲であることが好ましい。一方、残りの銅製の金網153B、153D、153F〜153Nのメッシュは、#16〜#300(網目換算で、約1.14mm〜約0.05mm)の範囲であり、#60〜#150(網目換算で、約0.303mm〜約0.104mm)の範囲であることが好ましい。なお、銅製の金網は、網目の寸法が同一であっても異なっていても良い。銅製の金網153B〜153Nの各網目の寸法が異なる場合、網目は、第2の金網153Bから第nの金網153Nの順に、連続的にまたは段階的に大きくなっても良い。
【0058】
金網の総数は、各金網の厚さにもよるが、2〜200の範囲(例えば100)であっても良い。
【0059】
図3に示す積層体150Aは、使用の際には、第1の金網153Aの側が蓄冷管120の低温端125bから遠い側となるようにして(図1の例では、上側となるようにして)、連通路182内に設置される。
【0060】
なお、図3の例では、非銅製の金網を合計3つ含み、サイクル数Cが3回の積層体150Aについて説明したが、積層体150Aにおいて、非銅製の金網の数、およびサイクル数Cは、特に限られない。非銅製の金網の数は、例えば、2つ、4つ、または6つ以上であっても良い。また、繰りかえし数Cは、2回、4回、または6回以上であっても良い。例えば、第1の金網から第nの金網まで(すなわち積層体150Aの全体にわたって)、非銅製と銅製の金網の交互配置が繰り返されても良い。
【0061】
次に、図4を参照して、別の熱交換器149b−2について説明する。図4には、パルス管140の低温端145bが接続される冷却ステージ180の溝189近傍の断面を模式的に示す。この図には、本発明に使用される熱交換器149b−2の一例の概略的な断面が示されている。
【0062】
図4に示すように、熱交換器149b−2は、溝189内に設置された積層体150Aを有し、この積層体150Aは、前述の図3に示した積層体150Aと同様の構造を有する。ただし、この熱交換器149b−2では、積層体150Aの側面は、溝189の内壁184と拡散接合されているという特徴を有する。
【0063】
このような熱交換器149b−2では、積層体150Aを後から溝189に充填する場合に比べて、積層体150Aと冷却ステージ180との間の熱接触性を高めることができ、両者の間の熱抵抗を有意に抑制することができる。
【0064】
積層体150Aは、各金網153A〜153Nの組立体151Aを冷却ステージ180の溝189に充填した後、冷却ステージ180ごと拡散接合処理することにより、容易に形成することができる。すなわち、拡散接合処理により、各金網同士が拡散接合されると同時に、溝189の内壁184に、積層体150Aの側面が拡散接合される。
【0065】
なお、図4の例では、積層体150Aは、図3に示した積層体150Aと同様の構成を有し、すなわち、153A、153C、および153Eの3つの非銅製金網を有する。しかしながら、これは一例であって、積層体の構成がこれに限られるものではないことは、明らかであろう。積層体の構成は、例えば図2の積層体150のような、別の構成であっても良い。
【0066】
また、図4の例では、積層体150Aの側面は、冷却ステージ180の構189の内壁184と拡散接合されている。しかしながら、本発明の態様は、これに限られるものではない。例えば積層体150Aの側面は、パルス管140を構成するシリンダ141の低温端145b側の内壁と、拡散接合されても良い。
【0067】
次に、図5を参照して、さらに別の熱交換器149b−3について説明する。図5には、パルス管140の低温端145bが接続される冷却ステージ180の溝189近傍の断面を模式的に示す。この図には、本発明に使用される熱交換器149b−3の一例の概略的な断面が示されている。
【0068】
図5に示すように、熱交換器149b−3は、溝189内に設置された積層体150Aを有する。この積層体150Aは、前述の図3に示した積層体150Aと同様の構造を有する。ただし、この熱交換器149b−3は、さらに、積層体150Aを収容する筐体159を備えるという特徴を有する。
【0069】
この筐体159は、銅または銅合金で構成される。また、筐体159は、上面および下面が開口されており、溝189の内径とほぼ適合する側面寸法(この場合、外径)を有する。積層体150Aは、その側面が、筐体159の側面の内壁と拡散接合される。
【0070】
このような熱交換器149b−3は、各金網153A〜153Nの組立体151Aを筐体159内に充填した後、この筐体ごと拡散接合処理することにより形成することができる。その後、この筐体159は、冷却ステージ180の溝189内に設置される。その後、筐体159を冷却ステージ180の溝189の内壁184とろう付しても良い。
【0071】
このような構成の場合も、積層体を後から単に溝189に充填する場合に比べて、積層体150A(正確には筐体159)と冷却ステージ180との間の熱接触性を高めることができ、両者の間の熱抵抗を有意に抑制することができる。
【0072】
以上、図面を参照して、本発明による実施例の一例について説明した。ただし、本発明は、前述の構成に限られるものではないことは、当業者には明らかである。例えば、前述の例において、パルスチューブ冷凍機100は、単段式である。しかしながら、本発明は、2段式、または3段式等の多段パルスチューブ冷凍機にも適用することができる。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0074】
実際に、冷却ステージの溝内に、前述の図4に示すような熱交換器149b−2を形成したパルスチューブ冷凍機を通常の条件で運転して、冷却ステージの温度を測定した。積層体には、図2に示す構成の積層体150を使用した。最上部の金網152Aには、メッシュが#250のSUS304製の金網を使用した。また、2段目以降の金網には、メッシュが#80の銅製の金網を使用した。
【0075】
測定の結果、冷却ステージの温度は、約36.4K(ケルビン)であった。一方、冷却ステージの溝内に、メッシュが#80の銅製の積層体を充填して構成した、従来の熱交換器を備えるパルスチューブ冷凍機において、同様の測定を行ったところ、冷却ステージの温度は、約40.2K(ケルビン)であった。
【0076】
この結果から、本発明によるパルスチューブ冷凍機では、従来に比べて冷却能力が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、核磁気共鳴診断装置、超伝導マグネット装置、クライオポンプ等の低温システムに適用される、単段式または多段式のパルスチューブ冷凍機に適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
100 パルスチューブ冷凍機
110 圧縮機
110a 排気バルブ
110b 吸気バルブ
112 ガス流路
115 フランジ
120 蓄冷管
121 シリンダ
122 蓄冷材
125a 蓄冷管の高温端
125b 蓄冷管の低温端
140 パルス管
141 シリンダ
145a パルス管の高温端
145b パルス管の低温端
149a 熱交換器
149b、149b−2、149b−3 本発明による熱交換器
150 積層体
150A 別の積層体
151、151A 組立体
152A、153A 第1の金網
152B、153B 第2の金網
152C、153C 第3の金網
159 筐体
180 冷却ステージ
182 連通路
184 内壁
189 溝
190 バッファタンク
192 ガス流路
194 オリフィス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス管の低温端と蓄冷管の低温端が連通路により連通されたパルスチューブ冷凍機であって、
前記連通路の前記パルス管の低温端側には、熱交換器が設置され、
該熱交換器は、第1の金網と、第2の金網との、少なくとも2層からなる積層体を有し、
前記第1の金網は、銅または銅合金とは別の金属で構成され、前記第2の金網は、銅または銅合金製であり、
両金網同士の界面は、拡散接合されており、
前記第1の金網の網目は、前記第2の金網の網目よりも小さく、
前記熱交換器は、前記積層体の前記第1の金網の側が前記蓄冷管の低温端から最も遠ざかるようにして、前記連通路内に設置されることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項2】
前記積層体は、さらに、前記第2の金網の、前記第1の金網とは反対の側に、第3の金網を有し、該第3の金網の、前記第2の金網とは反対の側には、第4の金網が積層され、
前記第3の金網は、銅または銅合金とは別の金属で構成され、前記第4の金網は、銅または銅合金製であり、
各金網同士の界面は、拡散接合されていることを特徴とする請求項1に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項3】
前記積層体は、全体を通して、銅または銅合金とは別の金属で構成された金網と、銅または銅合金製の金網との交互繰り返し構造で構成され、
各金網同士の界面は、拡散接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項4】
前記積層体は、前記第2の金網の前記第1の金網とは反対の側に、複数の銅または銅合金製の金網が直接積層された部分を有し、
前記部分における前記複数の銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、前記第1の金網の側から、前記積層体の積層方向に沿って、連続的にまたは段階的に増加することを特徴とする請求項1または2に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項5】
前記銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の網目の寸法は、0.02mm〜0.58mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項6】
前記銅または銅合金製の金網の網目の寸法は、0.05mm〜1.14mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項7】
前記銅または銅合金とは別の金属で構成された金網の少なくとも一つは、ステンレス鋼もしくはニッケルで構成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項8】
各銅または銅合金とは別の金属で構成された金網は、同一の材料で構成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項9】
前記積層体の側面は、前記連通路を構成する壁と拡散接合されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項10】
前記積層体は、銅または銅合金製の筐体内に収容され、
前記積層体の側面は、前記筐体の内壁と拡散接合されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−149601(P2011−149601A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10448(P2010−10448)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)