説明

パルスチューブ冷凍機

【課題】長期にわたって適正な冷凍能力を有するパルスチューブ冷凍機。
【解決手段】圧縮機と、高温端および低温端を有する少なくとも一つの蓄冷管と、高温端および前記蓄冷管の低温端と接続された低温端を有する少なくとも一つのパルス管と、を有するパルスチューブ冷凍機であって、前記少なくとも一つのパルス管の高温端は、第1の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、前記第1の配管には、高圧の冷媒が流れ、前記第1の配管には、第1の開閉バルブおよび第1の流路抵抗が設置され、前記第1の流路抵抗は、前記第1の開閉バルブよりも上流側に設置されることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスチューブ冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、極低温環境が必要となる装置、例えば、核磁気共鳴診断装置(MRI)等を冷却する際に、パルスチューブ冷凍機が使用されている。
【0003】
パルスチューブ冷凍機では、圧縮機により圧縮された作動流体である冷媒ガス(例えば、ヘリウムガス)が蓄冷管およびパルス管に流入する動作と、作動流体がパルス管および蓄冷管から流出され、圧縮機に回収される動作を繰り返すことで、蓄冷管およびパルス管の低温端に寒冷が形成される。また、これらの低温端に、被冷却対象を熱的に接触させることで、被冷却対象から熱を奪うことができる。
【0004】
特に、4バルブ型パルスチューブ冷凍機は、高い冷却効率を有するという特徴を有し、様々な分野での適用が期待されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
図1には、従来の単段(1段)式の4バルブ型パルスチューブ冷凍機の概略構成図を示す。従来の単段式の4バルブ型パルスチューブ冷凍機10は、圧縮機12、高温端42と低温端44を有する蓄冷管40、および高温端52と低温端54を有するパルス管50を備える。蓄冷管40の低温端44とパルス管50の低温端54は、配管56で接続されている。
【0006】
圧縮機12の高圧(供給)側および低圧(回収)側の冷媒用流路は、それぞれ二股に分岐されている。圧縮機12の高圧側の冷媒用流路の一方は、開閉バルブV1が接続された第1の高圧側配管15Aおよび共通配管20を介して、蓄冷管40の高温端42に接続されている。また、圧縮機12の高圧側の冷媒用流路の他方は、開閉バルブV2、およびオリフィスのような流路抵抗60が設置された第2の高圧側配管25A、ならびに共通配管30を介して、パルス管50の高温端52に接続されている。
【0007】
同様に、圧縮機12の低圧側の冷媒用流路の一方は、開閉バルブV3が接続された第1の低圧側配管15Bおよび共通配管20を介して、蓄冷管40の高温端42に接続されている。また、圧縮機12の低圧側の冷媒用流路の他方は、開閉バルブV4、およびオリフィスのような流路抵抗65が設置された第2の低圧側配管25B、ならびに共通配管30を介して、パルス管50の高温端52に接続されている。
【0008】
このように構成された4バルブパルスチューブ冷凍機10では、高圧の冷媒ガスの供給過程において、開閉バルブV2が開かれると、冷媒ガスは、第2の高圧側配管25Aおよび共通配管30を介して、パルス管50の方に流入する。また、開閉バルブV1が開かれると、冷媒ガスは、圧縮機12から、第1の高圧側配管15Aおよび共通配管20を通り、蓄冷管40、さらにはパルス管50に流入される。一方、低圧の冷媒ガスの回収過程では、開閉バルブV4が開かれると、パルス管50内の冷媒ガスは、パルス管50の高温端52から、共通配管30および第2の低圧側配管25Bを通り、圧縮機12に回収される。また、開閉バルブV3が開かれると、パルス管50内の冷媒ガスは、パルス管50の低温端54から、配管56および蓄冷管40を通り、共通配管20および第1の低圧側配管15Bを介して、圧縮機12に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−35253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図1のように構成された4バルブ型パルスチューブ冷凍機10では、以下のような問題が生じ得る。
【0011】
一般に、パルスチューブ冷凍機を長期間稼働すると、各開閉バルブV1〜V4は、開閉動作の繰り返しにより摩耗する。また、この摩耗によって摩耗粉が発生する。ここで、図1のような装置構成では、高圧の冷媒ガスの供給過程において、開閉バルブV2の下流側に流路抵抗60が存在することになる。従って、長時間使用後に、流路抵抗60には、開閉バルブV2から生じた摩耗粉が蓄積されるようになる。さらに、冷媒ガスは、第2の高圧側配管25Aのラインを一方向にしか流れないため、流路抵抗60に蓄積した摩耗粉は、その後も、この流路抵抗60にそのまま残留し続けることになる。このような摩耗粉の混入、蓄積が顕著になると、流路抵抗60の流路面積が変化し、これにより、流路抵抗60を流れる冷媒ガス量の精度が低下してしまう。このような冷媒ガス量の精度低下は、冷凍機の冷凍効率の低下につながり、さらには、冷凍機に適正な冷凍性能が得られなくなるおそれがある。
【0012】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、長期にわたって、適正な冷凍能力を維持することの可能なパルスチューブ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、圧縮機と、高温端および低温端を有する少なくとも一つの蓄冷管と、高温端および前記蓄冷管の低温端と接続された低温端を有する少なくとも一つのパルス管と、を有するパルスチューブ冷凍機であって、
前記少なくとも一つのパルス管の高温端は、第1の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、前記第1の配管には、高圧の冷媒が流れ、
前記第1の配管には、第1の開閉バルブおよび第1の流路抵抗が設置され、
前記第1の流路抵抗は、前記第1の開閉バルブよりも上流側に設置されることを特徴とするパルスチューブ冷凍機が提供される。
【0014】
本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記少なくとも一つの蓄冷管の高温端は、第2の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、前記第2の配管には、第2の開閉バルブが設置されても良い。
【0015】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、前記圧縮機の回収側は、第1および第2の冷媒回収路を有し、
第1の冷媒回収路は、第3の開閉バルブおよび第2の流路抵抗を備え、前記少なくとも一つのパルス管の高温端に接続された第3の配管で構成され、前記第2の流路抵抗は、前記第3の開閉バルブよりも上流側に設置され、
第2の冷媒回収路は、第4の開閉バルブを備え、前記少なくとも一つの蓄冷管の高温端に接続された第4の配管で構成されても良い。
【0016】
また、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、当該パルスチューブ冷凍機は、単一の蓄冷管と、単一のパルス管とを有する単段式のパルスチューブ冷凍機であっても良い。
【0017】
あるいは、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、当該パルスチューブ冷凍機は、第1段および第2段の蓄冷管と、第1段および第2段のパルス管とを有する2段式のパルスチューブ冷凍機であって、
前記第1の配管は、第1段のパルス管の高温端に接続されても良い。
【0018】
また、この場合、前記圧縮機の供給側は、さらに、第3の冷媒供給路を有し、
前記第3の冷媒供給路は、第5の開閉バルブおよび第3の流路抵抗を備えた第3の配管を有し、
前記第3の配管は、第2段のパルス管の高温端に接続され、
前記第3の流路抵抗は、前記第5の開閉バルブよりも上流側に設置されても良い。
【0019】
あるいは、本発明によるパルスチューブ冷凍機において、当該パルスチューブ冷凍機は、第1段および第2段の蓄冷管と、第1段および第2段のパルス管とを有する2段式のパルスチューブ冷凍機であって、
前記第1の配管は、第2段のパルス管の高温端に接続されても良い。
【0020】
また、本発明では、圧縮機と、高温端および低温端を有する少なくとも一つの蓄冷管と、高温端および前記蓄冷管の低温端と接続された低温端を有する少なくとも一つのパルス管と、を有するパルスチューブ冷凍機であって、
前記少なくとも一つのパルス管の高温端は、高圧の冷媒が流れる第1の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、
前記少なくとも一つの蓄冷管の高温端は、高圧の冷媒が流れる第2の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、
前記少なくとも一つのパルス管の高温端は、低圧の冷媒が流れる第3の配管を介して、前記圧縮機の回収側と接続されており、
前記少なくとも一つの蓄冷管の高温端は、低圧の冷媒が流れる第4の配管を介して、前記圧縮機の回収側と接続されており、
前記第1の配管には、第1の開閉バルブおよび第1の流路抵抗が設置され、前記第1の流路抵抗は、前記第1の開閉バルブよりも上流側に設置され、
前記第2の配管には、第2の開閉バルブが設置され、
前記第3の配管には、第3の開閉バルブおよび第2の流路抵抗が設置され、前記第2の流路抵抗は、前記第3の開閉バルブよりも上流側に設置され、
前記第4の配管には、第4の開閉バルブが設置され、
前記第1乃至第4のバルブは、単一のロータリーバルブで構成されることを特徴とするパルスチューブ冷凍機が提供される。
【0021】
この場合、前記第1の流路抵抗は、前記ロータリーバルブ内に設置されても良い。
【0022】
また、前記第2の流路抵抗は、前記ロータリーバルブ内に設置されても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、長期にわたって、適正な冷凍能力を維持することの可能なパルスチューブ冷凍機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の4バルブ型パルスチューブ冷凍機を概略的に示した図である。
【図2】本発明の第1の実施例によるパルスチューブ冷凍機の一例を概略的に示した図である。
【図3】図2に示したパルスチューブ冷凍機の作動の際の、4つのバルブの開閉状態を時系列的に示した図である。
【図4】本発明の第2の実施例によるパルスチューブ冷凍機の一例を概略的に示した図である。
【図5】図4に示したパルスチューブ冷凍機の作動の際の、6つのバルブの開閉状態を時系列的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明を詳しく説明する。
【0026】
(第1の実施例)
図2は、本発明の第1の実施例による4バルブ型パルスチューブ冷凍機の一例を概略的に示した図である。
【0027】
図2に示すように、本発明の第1の実施例による4バルブ型パルスチューブ冷凍機100は、単段式となっている。
【0028】
4バルブ型パルスチューブ冷凍機100は、圧縮機112、蓄冷管140、パルス管150、バッファタンク170、ならびにこれらに連結された各配管およびバルブ類を備える。
【0029】
蓄冷管140は、高温端142および低温端144を有する。パルス管150は、高温端152および低温端154を有する。パルス管150の高温端152および低温端154には、熱交換器が設置されている。蓄冷管140の低温端144とパルス管150の低温端154は、配管156で接続されている。
【0030】
圧縮機112の高圧側(供給側)の冷媒用流路は、A点で、第1の高圧側配管115Aおよび第2の高圧側配管125Aの2方向に分岐されている。従って、圧縮機112から供給される高圧の冷媒ガスは、開閉バルブV1が接続された第1の高圧側配管115Aおよび共通配管120を介して、蓄冷管140の高温端142に供給される(以下、この流路を「第1の冷媒供給路H1」という)。また、圧縮機112から供給される高圧の冷媒ガスの一部は、オリフィスのような流路抵抗160および開閉バルブV2が接続された第2の高圧側配管125A、ならびに共通配管130を介して、パルス管150の高温端152に供給される(以下、この流路を「第2の冷媒供給路H2」という)。
【0031】
一方、低圧側(回収側)の冷媒用流路は、第1の冷媒回収路L1、および第2の冷媒回収路L2の2方向に分岐されている。第1の冷媒回収路L1は、蓄冷管140〜共通配管120〜開閉バルブV3が設置された第1の低圧側配管115B〜B点〜圧縮機112の経路で構成される。第2の冷媒回収路L2は、パルス管150〜共通配管130〜オリフィスのような流路抵抗165および開閉バルブV4が設置された第2の低圧側配管125B〜B点〜圧縮機112の経路で構成される。
【0032】
バッファタンク170は、オリフィスのような流路抵抗179が設置された配管175、および共通配管130を介して、パルス管150の高温端152に接続される。
【0033】
次に、図3を用いて、図2のように構成された本発明による4バルブ型パルスチューブ冷凍機100の動作について説明する。
【0034】
パルスチューブ冷凍機100の作動時には、バルブモータ等の駆動源による駆動により、4つの開閉バルブV1〜V4の開閉状態が周期的に変化する。図3は、パルスチューブ冷凍機100の作動中の、4つの開閉バルブV1〜V4の開閉状態を時系列的に示した図である。以下、各過程について説明する。
【0035】
(第1過程:時間0〜t
まず、時間t=0において、開閉バルブV2のみが開にされる。これにより、圧縮機112から、第2の冷媒供給路H2を通り、パルス管150に高圧の冷媒ガスが供給される。
【0036】
(第2過程:時間t〜t
次に、時間t=tにおいて、開閉バルブV2が開状態のまま、開閉バルブV1が開にされる。これにより、圧縮機112から、第1の冷媒供給路H1を通り、蓄冷管140に高圧の冷媒ガスが供給される。また、蓄冷管140に流入した冷媒ガスは、蓄冷器140内に設置された蓄冷材で冷却される。冷却された冷媒ガスは、配管156を介して、パルス管150に流入し、低温端154に設置された熱交換器で熱交換される。
【0037】
(第3過程:時間t〜t
次に、時間t=tにおいて、開閉バルブV1が開状態のまま、開閉バルブV2が閉にされる。蓄冷器140を介して冷却された冷媒ガスは、依然として、配管156を介して、パルス管150の低温端154からパルス管150内に流入する。しかしながら、この場合、第2の冷媒供給路H2を介した、パルス管150の高温端152からの冷媒ガスの供給が停止されているため、蓄冷器140からの冷却された冷媒ガスは、パルス管150の低温端154〜高温端152まで、パルス管150の延伸方向に沿って進行する。従って、冷媒ガスは、パルス管150の高温端152および低温端154の、両熱交換器と熱交換される。
【0038】
さらに、予めパルス管150に収容されていた冷媒ガスの一部は、パルス管150の高温端152を通り、共通配管130および配管175を介してバッファタンク170に収容される。
【0039】
以上の動作により、パルス管150(特に、低温端154)が冷却される。
【0040】
(第4過程:時間t〜t
次に、時間t=tにおいて、開閉バルブV1が閉にされる。また、開閉バルブV4が開にされる。これにより、パルス管150内の冷媒ガスは、第2の冷媒回収路L2を介した経路を経由して、圧縮機122に戻るようになる。
【0041】
(第5過程:時間t〜t
時間t=tでは、開閉バルブV4が開状態のまま、開閉バルブV3が開にされる。これにより、パルス管150内の冷媒ガスは、第2の冷媒回収路L2を通る経路の他、パルス管150の低温端154から配管156および蓄冷管140を通る、第1の冷媒回収路L1を介して、圧縮機112に戻るようになる。また、バッファタンク170内に収容されていた冷媒ガスは、配管175および共通配管130を介して、パルス管150内に流入される。パルス管150内では、冷媒ガスの膨脹による寒冷が発生する。さらに、パルス管150から蓄冷管140への冷媒ガスの流入のため、蓄冷管140内の蓄冷材が冷却される。
【0042】
(第6過程:時間t〜t
次に、時間t=tにおいて、開閉バルブV3が開状態のまま、開閉バルブV4が閉にされる。これにより、第2の冷媒回収路L2を通る経路が遮断される。パルス管150内の冷媒ガスは、パルス管150の低温端154から、配管156および蓄冷管140を通り、第1の冷媒回収路L1を介して、圧縮機112に戻る。これにより、蓄冷管140内の蓄冷材がさらに冷却される。その後、開閉バルブV3が閉にされる。
【0043】
以上の過程を1サイクルとして、サイクルが繰り返されることにより、パルス管150の低温端154に設置された被冷却対象(図2には示されていない)が冷却される。
【0044】
なお、このような各開閉バルブV1〜V4の開閉タイミングを適正に切り替えるため、開閉バルブV1〜V4の実現手段として、単一のロータリーバルブのような機械式切り替え部材が使用されても良い。これにより、装置の小型化が可能になる。
【0045】
ロータリバルブは、円筒状の回転体であるバルブプレートと、静止状態にあるバルブ本体とを備える。バルブプレートおよびバルブ本体には、所定の位置に複数の開口が設けられている。従って、バルブプレートを回転させた状態で、バルブプレートの平坦面(摺動面)をバルブ本体の平坦面(摺動面)に押し付けた際、両摺動面(すなわち開口)の相対位置が第1の関係になると、冷媒ガスが流通する第1の流路が形成される。また、両摺動面の相対位置が第2の関係になると、冷媒ガスが流通する第2の流路が形成される。第3の流路以降も同様である。ロータリバルブは、このようにバルブプレートを回転させることにより、各流路を交互に切り替えることができる。
【0046】
ここで、前述のように、従来のパルスチューブ冷凍機10では、開閉バルブV2の摩耗によって生じた摩耗粉は、冷媒ガスとともに流路抵抗60に混入され、その後、該流路抵抗60にそのまま蓄積されてしまうという問題がある。このような摩耗粉の蓄積が顕著になると、流路抵抗60の流路面積が変化し、流路抵抗60を通る冷媒ガス量の精度が低下してしまう。
【0047】
これに対して、本発明によるパルスチューブ冷凍機100では、第1過程〜第2過程の間、流路抵抗160には、図2の下向きの方向に冷媒ガスが流れる。このため、本発明によるパルスチューブ冷凍機100では、開閉バルブV2から、摩耗によって摩耗粉が生じたとしても、そのような摩耗粉が流路抵抗160に蓄積されることが回避される。
【0048】
従って、本発明によるパルスチューブ冷凍機100では、長期にわたって、流路抵抗160を通る冷媒ガスの流量を適正に制御することができる。またこれにより、本発明によるパルスチューブ冷凍機100では、長期にわたって、適正な冷凍能力を維持することができる。
【0049】
なお、本発明によるパルスチューブ冷凍機100において、流路抵抗160の設置形態は、特に限られない。
【0050】
一般に、各ラインのバルブおよび流路抵抗は、同様の配置構成となるように設計した方が、各部材を統合し易くなり、装置全体を小型化することができるため、有意である。例えば、図1に示す従来のパルスチューブ冷凍機10では、開閉バルブV2−流路抵抗60の配置関係は、開閉バルブV4−流路抵抗65と同様のものとなっており、これにより、装置全体を小型化することができる。一方、本発明によるパルスチューブ冷凍機100においても、例えば、開閉バルブV1〜V4を、一般的なロータリーバルブで一体構成した場合、この単一のロータリーバルブ内に、流路抵抗160と流路抵抗165とをともに設置することができる。従って、本発明のような開閉バルブV2−流路抵抗160/開閉バルブV4−流路抵抗165の配置関係においても、パルスチューブ冷凍機が大型化するという問題を回避することができる。
【0051】
(第2の実施例)
図4は、本発明の第2の実施例による4バルブ型パルスチューブ冷凍機の一例を概略的に示した図である。
【0052】
第2の実施例による4バルブ型パルスチューブ冷凍機200は、2段式の構造となっている。
【0053】
図4に示すように、第2のパルスチューブ冷凍機200は、圧縮機212、第1段および第2段の蓄冷管240、280、第1段および第2段のパルス管250、290、第1および第2の配管256、286、第1および第2のバッファタンク270、303、ならびに開閉バルブV1〜V6等を備える。
【0054】
第1段の蓄冷管240は、高温端242および低温端244を有し、第2段の蓄冷管280は、高温端244(第1段の低温端244に相当)および低温端284を有する。第1段のパルス管250は、高温端252および低温端254を有し、第2段のパルス管290は、高温端292および低温端294を有する。第1段および第2のパルス管250、290の各高温端252、292および低温端254、294には、熱交換器が設置されている。第1段の蓄冷管240の低温端244は、第1の配管256を介して、第1段のパルス管250の低温端254と接続される。また、第2段の蓄冷管280の低温端284は、第2の配管286を介して、第2段のパルス管290の低温端294と接続される。
【0055】
圧縮機212の高圧側(供給側)の冷媒用流路は、A点で、3方向に分岐されており、第1〜第3の冷媒供給路H1〜H3が構成される。第1の冷媒供給路H1は、圧縮機212の高圧側〜開閉バルブV1が設置された第1の高圧側配管215A〜共通配管220〜第1段の蓄冷管240で構成される。第2の冷媒供給路H2は、圧縮機212の高圧側〜流路抵抗260および開閉バルブV2が接続された第2の高圧側配管225A〜共通配管230〜第1段のパルス管250で構成される。第3の冷媒供給路H3は、圧縮機212の高圧側〜流路抵抗360および開閉バルブV5が接続された第3の高圧側配管235A〜共通配管299〜第2段のパルス管290で構成される。
【0056】
一方、圧縮機212の低圧側(回収側)の冷媒用流路は、第1〜第3の冷媒回収路L1〜L3の、3方向に分岐されている。第1の冷媒回収路L1は、第1段の蓄冷管240〜共通配管220〜開閉バルブV3が設置された第1の低圧側配管215B〜B点〜圧縮機212の経路で構成される。第2の冷媒回収路L2は、第1段のパルス管250〜共通配管230〜オリフィスのような流路抵抗265および開閉バルブV4が設置された第2の低圧側配管225B〜C点〜B点〜圧縮機212の経路で構成される。第3の冷媒回収路L3は、第2段のパルス管290〜共通配管299〜オリフィスのような流路抵抗365および開閉バルブV6が設置された第3の低圧側配管235B〜C点〜B点〜圧縮機212の経路で構成される。
【0057】
第1のバッファタンク270は、オリフィスのような流路抵抗279が設置された配管275、および共通配管230を介して、第1段のパルス管250の高温端252に接続される。第2のバッファタンク303は、オリフィスのような流路抵抗379が設置された配管375、および共通配管299を介して、第2段のパルス管290の高温端292に接続される。
【0058】
次に、このように構成された第2の4バルブ型パルスチューブ冷凍機200の動作について説明する。
【0059】
図5は、第2のパルスチューブ冷凍機200の作動中の、6つの開閉バルブV1〜V6の開閉状態を時系列的に示した図である。パルスチューブ冷凍機200の作動時には、パルスモータ等の駆動源による駆動により、6つの開閉バルブV1〜V6の開閉状態は、以下のように周期的に変化する。
【0060】
(第1過程:時間0〜t
まず、時間t=0において、開閉バルブV5のみが開にされる。これにより、圧縮機212から、第3の冷媒供給路H3を介して、すなわち第3の高圧側配管235A〜共通配管299〜高温端292の経路で、第2段のパルス管290に冷媒ガスが供給される。その後、時間t=tにおいて、開閉バルブV5が開状態のまま、開閉バルブV2が開にされる。これにより、圧縮機212から、第2の冷媒供給路H2を介して、すなわち第2の高圧側配管225A〜共通配管230〜高温端252の経路で、第1段のパルス管250に冷媒ガスが供給される。
【0061】
(第2過程:時間t〜t
次に、時間t=tにおいて、開閉バルブV5、V2が開いた状態で、開閉バルブV1が開にされる。これにより、冷媒ガスは、圧縮機212から、第1の冷媒供給路H1を介して、すなわち第1の高圧側配管215A〜共通配管220〜高温端242の経路で、第1段の蓄冷器240に導入される。冷媒ガスの一部は、第1の配管256を介して、第1段のパルス管250に、低温端254の側から流入する。また冷媒ガスの他の一部は、第2段の蓄冷器280を通り、第2の配管286を介して、第2段のパルス管290に、低温端294の側から流入する。
【0062】
(第3過程:時間t〜t
次に、時間t=tにおいて、開閉バルブV1が開状態のまま、まず開閉バルブV5が閉にされ、その後、開閉バルブV2も閉にされる(時間t=t)。圧縮機212からの冷媒ガスは、第1の冷媒供給路H1のみを介して、第1段の蓄冷管240に流入し、その後、両パルス管250および290内に、低温端254および294の側から流入する。
【0063】
(第4過程:時間t=t
次に、時間t=tにおいて、全ての開閉バルブV1〜V6が閉にされる。第1段のパルス管250の圧力上昇のため、予め第1段のパルス管250に収容されていた冷媒ガスの一部は、第1段のパルス管250の高温端252を通り、共通配管230および配管275を介して第1のバッファタンク270に収容される。同様に、第2段のパルス管290の圧力上昇のため、予め第2段のパルス管290に収容されていた冷媒ガスの一部は、第2段のパルス管290の高温端292を通り、共通配管299および配管375を介して第2のバッファタンク303に収容される。
【0064】
(第5過程:時間t〜t
その後、時間t=tにおいて、開閉バルブV6が開かれると、第2段のパルス管290内の冷媒ガスは、第3の冷媒回収路L3を通って圧縮機212に戻り始める。その後、時間t=tにおいて、開閉バルブV4が開かれると、第1段のパルス管250内の冷媒ガスは、第2の冷媒回収路L2を通って圧縮機212に戻り始める。これにより、両パルス管250、290の圧力が徐々に低下する。
【0065】
(第6過程:時間t〜t
次に、時間t=tにおいて、開閉バルブV6およびV4が開状態のまま、開閉バルブV3が開かれる。これにより、両パルス管250、290、および第2段の蓄冷管280内の冷媒ガスの大部分は、第1段の蓄冷管240を通り、第1の冷媒回収路L1を介して、圧縮機212に戻るようになる。
【0066】
(第7過程:時間t〜t10
次に、時間t=tにおいて、開閉バルブV3が開いた状態で、まず開閉バルブV6が閉止され、その後、開閉バルブV4が閉止される(時間t=t)。
【0067】
その後、時間t=t10において、開閉バルブV3が閉止され、1サイクルが完了する。
【0068】
第2のパルスチューブ冷凍機200では、第1過程〜第3過程(時間t〜t)の間、流路抵抗360および流路抵抗260には、図4の下向き方向に冷媒ガスが流れる。このため、第2のパルスチューブ冷凍機200では、開閉バルブV2およびV5の摩耗によって生じた摩耗粉が、それぞれ、流路抵抗260および360に蓄積されることが有意に抑制される。従って、第2のパルスチューブ冷凍機200においても、長期にわたって、適正な冷凍能力を維持することができる。
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施例について説明した。これらの実施例は、本発明の構成の一例を示したものであり、本発明を限定するものと解してはならない。例えば、図4に示した2段式のパルスチューブ冷凍機200において、開閉バルブV4と流路抵抗265の上流/下流の位置関係は、逆になっていても良い。この場合も、流路抵抗360への摩耗粉の混入に対して本発明の効果を得ることができるため、従来のパルスチューブ冷凍機に比べて、より適正な運転を行うことができる。あるいは、図4において、開閉バルブV5と流路抵抗360の上流/下流の位置関係は、逆になっていても良い。
【0070】
また、本発明は、3段式以上のパルスチューブ冷凍機にも適用することができることは、当業者には明らかである。
【0071】
さらに、本発明は、4バルブ型のパルスチューブ冷凍機に限られない。本発明は、例えば、DCフローバルブ型パルスチューブ冷凍機、アクティブバッファパルスチューブ冷凍機、および5バルブ型パルスチューブ冷凍機にも適用することができる。さらに、本発明は、本願に示した構成と同様のオリフィスと切替バルブの配置を有する装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、4バルブ型パルスチューブ冷凍機、DCフローバルブ型パルスチューブ冷凍機、アクティブバッファパルスチューブ冷凍機、および5バルブ型パルスチューブ冷凍機など、各種パルスチューブ冷凍機に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 従来のパルスチューブ冷凍機
12 圧縮機
15A 第1の高圧側配管
15B 第1の低圧側配管
20 共通配管
25A 第2の高圧側配管
25B 第2の低圧側配管
30 共通配管
40 蓄冷管
50 パルス管
56 配管
60、65 流路抵抗
100 本発明の第1の実施例によるパルスチューブ冷凍機
112 圧縮機
115A 第1の高圧側配管
115B 第1の低圧側配管
120 共通配管
125A 第2の高圧側配管
125B 第2の低圧側配管
130 共通配管
140 蓄冷管
150 パルス管
156 配管
160 流路抵抗
170 バッファタンク
175 配管
179 流路抵抗
200 本発明の第2の実施例によるパルスチューブ冷凍機
212 圧縮機
215A 第1の高圧側配管
215B 第1の低圧側配管
220 共通配管
225A 第2の高圧側配管
225B 第2の低圧側配管
230 共通配管
235A 第3の高圧側配管
235B 第3の低圧側配管
240 第1段の蓄冷管
250 第1段のパルス管
256 第1の配管
260 流路抵抗
270 第1のバッファタンク
280 第2段の蓄冷管
286 第2の配管
290 第2段のパルス管
299 共通配管
303 第2のバッファタンク
360、365 流路抵抗
375 配管
379 流路抵抗
V1〜V6 開閉バルブ
H1 第1の冷媒供給路
H2 第2の冷媒供給路
H3 第3の冷媒供給路
L1 第1の冷媒回収路
L2 第2の冷媒回収路
L3 第3の冷媒回収路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、高温端および低温端を有する少なくとも一つの蓄冷管と、高温端および前記蓄冷管の低温端と接続された低温端を有する少なくとも一つのパルス管と、を有するパルスチューブ冷凍機であって、
前記少なくとも一つのパルス管の高温端は、第1の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、前記第1の配管には、高圧の冷媒が流れ、
前記第1の配管には、第1の開閉バルブおよび第1の流路抵抗が設置され、
前記第1の流路抵抗は、前記第1の開閉バルブよりも上流側に設置されることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項2】
前記少なくとも一つの蓄冷管の高温端は、第2の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、前記第2の配管には、第2の開閉バルブが設置されていることを特徴とする請求項1に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項3】
前記圧縮機の回収側は、第1および第2の冷媒回収路を有し、
第1の冷媒回収路は、第3の開閉バルブおよび第2の流路抵抗を備え、前記少なくとも一つのパルス管の高温端に接続された第3の配管で構成され、前記第2の流路抵抗は、前記第3の開閉バルブよりも上流側に設置され、
第2の冷媒回収路は、第4の開閉バルブを備え、前記少なくとも一つの蓄冷管の高温端に接続された第4の配管で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項4】
当該パルスチューブ冷凍機は、単一の蓄冷管と、単一のパルス管とを有する単段式のパルスチューブ冷凍機であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項5】
当該パルスチューブ冷凍機は、第1段および第2段の蓄冷管と、第1段および第2段のパルス管とを有する2段式のパルスチューブ冷凍機であって、
前記第1の配管は、第1段のパルス管の高温端に接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項6】
当該パルスチューブ冷凍機は、第1段および第2段の蓄冷管と、第1段および第2段のパルス管とを有する2段式のパルスチューブ冷凍機であって、
前記第1の配管は、第2段のパルス管の高温端に接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項7】
前記圧縮機の供給側は、さらに、第3の冷媒供給路を有し、
前記第3の冷媒供給路は、第5の開閉バルブおよび第3の流路抵抗を備えた第3の配管を有し、
前記第3の配管は、第2段のパルス管の高温端に接続され、
前記第3の流路抵抗は、前記第5の開閉バルブよりも上流側に設置されることを特徴とする請求項5に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項8】
圧縮機と、高温端および低温端を有する少なくとも一つの蓄冷管と、高温端および前記蓄冷管の低温端と接続された低温端を有する少なくとも一つのパルス管と、を有するパルスチューブ冷凍機であって、
前記少なくとも一つのパルス管の高温端は、高圧の冷媒が流れる第1の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、
前記少なくとも一つの蓄冷管の高温端は、高圧の冷媒が流れる第2の配管を介して、前記圧縮機の供給側と接続されており、
前記少なくとも一つのパルス管の高温端は、低圧の冷媒が流れる第3の配管を介して、前記圧縮機の回収側と接続されており、
前記少なくとも一つの蓄冷管の高温端は、低圧の冷媒が流れる第4の配管を介して、前記圧縮機の回収側と接続されており、
前記第1の配管には、第1の開閉バルブおよび第1の流路抵抗が設置され、前記第1の流路抵抗は、前記第1の開閉バルブよりも上流側に設置され、
前記第2の配管には、第2の開閉バルブが設置され、
前記第3の配管には、第3の開閉バルブおよび第2の流路抵抗が設置され、前記第2の流路抵抗は、前記第3の開閉バルブよりも上流側に設置され、
前記第4の配管には、第4の開閉バルブが設置され、
前記第1乃至第4のバルブは、単一のロータリーバルブで構成されることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項9】
前記第1の流路抵抗は、前記ロータリーバルブ内に設置されることを特徴とする請求項8に記載のパルスチューブ冷凍機。
【請求項10】
前記第2の流路抵抗は、前記ロータリーバルブ内に設置されることを特徴とする請求項9に記載のパルスチューブ冷凍機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−158230(P2011−158230A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22474(P2010−22474)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)