説明

パルスレーザ加工装置およびパルスレーザ加工方法

【課題】大型の被加工物表面の安定した微細加工とその高速化が容易にするパルスレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】クロック信号を発生する基準クロック発振回路と、クロック信号に同期した一定の周波数のパルスレーザビームを出射するレーザ発振器と、クロック信号に同期してパルスレーザビームを1次元方向のみに走査するレーザ・スキャナーと、被加工物を載置可能で1次元方向に直交する方向に移動するし、回転軸に保持されるロールと、レーザ発振器とレーザ・スキャナーとの間の光路に設けられ、クロック信号に同期してパルスレーザビームの通過と遮断を切り替えるパルスピッカーと、を備えることを特徴とするパルスレーザ加工装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを使用したレーザ加工装置に係り、詳しくはパルスレーザビームにより大型化する被加工物表面の微細加工およびその高速化を容易にするパルスレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば液晶パネルのようなフラットパネルディスプレイ(FPD)は、その大型化に伴い例えばμmオーダーあるいはそれ以下の高精度の微細加工が大面積の領域に施された部材を必要としてきている。そして、従来の機械加工では作製が難しい、シート作成用大型ロール金型、止まり溝や深いマイクロレンズ等の微細形状をもつ金型、難削材等の微細加工について種々に検討されている。
【0003】
一方、パルス幅がピコ秒(ps)オーダー以下になる超短パルスレーザを用いたアブレーション加工により、例えば金属表面に1μm以下の微細パターンを容易に形成できることがよく知られている。そして、これまで、この超短パルスレーザ加工により、樹脂を含む高分子材、半導体材、ガラス材、金属材等からなる被加工物の表面を加工する技術について種々の方法が提示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、特許文献1に示されているレーザ加工において大面積の領域を微細加工する場合には、ステージに保持した被加工物をX−Y方向の2次元方向に広い範囲に移動走査する必要がある。しかし、この場合の微細加工の速度はステージ移動の速度に律速されるためにその高速化が難しくなる。なお、この遅いステージ移動に同期させるために、レーザ発振器から出射するパルスレーザビーム(以下、パルス光ともいう)に対して高速シャッタリングが施されてパルス周波数(以下、繰り返し周波数ともいう)が低く変調される。
【0005】
また、レーザ加工においてレーザビームを例えばガルバノメータ・スキャナのようなビーム走査手段によりX−Y方向に2次元走査して所要領域を微細加工する技術がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、現状技術にあっては、この場合のパルス光の2次元走査は、その照射スポットの位置決め精度が10μm以上になり、パルスレーザビームを用いたアブレーションによる微細加工への適用が難しい状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−118821号公報
【特許文献2】特開2002−160086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、パルスレーザビームを用いた加工において、その照射スポットの位置決め精度を向上させ、大型の被加工物表面の安定した微細加工とその高速化を可能にするパルスレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のパルスレーザ加工装置は、クロック信号を発生する基準クロック発振回路と、前記クロック信号に同期した一定の周波数のパルスレーザビームを出射するレーザ発振器と、前記クロック信号に同期して前記パルスレーザビームを1次元方向のみに走査するレーザ・スキャナーと、被加工物を載置可能で前記1次元方向に直交する方向に移動し、回転軸に保持されるロールと、前記レーザ発振器と前記レーザ・スキャナーとの間の光路に設けられ、前記クロック信号に同期して前記パルスレーザビームの通過と遮断を切り替えるパルスピッカーと、を備える。
【0009】
上記態様において、前記レーザ・スキャナーからの走査位置信号に基づき、走査毎の加工原点位置を補正する補正機構を有することが望ましい。
【0010】
上記態様において、前記補正機構は、前記走査位置信号に基づき、前記パルスピッカーにおける前記パルスレーザビームの通過と遮断を制御することが望ましい。
【0011】
上記態様において、前記ロールは、前記レーザ・スキャナーの走査位置信号に基づいて、前記1次元方向に直交する方向の移動制御がされることが望ましい。
【0012】
上記態様において、前記レーザ発振器と前記レーザ・スキャナーの間の光路に、前記パルスレーザビームを整形するビーム整形手段を備えていることが望ましい。
【0013】
上記態様において、前記レーザビームスキャナによる前記パルスレーザビームの前記1次元方向の走査と、前記走査に続く前記1次元方向に直交する方向のロールの移動を交互に繰り返すことで、前記被加工物を加工することが望ましい。
【0014】
上記態様において、前記レーザ・スキャナーの走査と前記ロールの移動により前記被加工物の表面の同一箇所を複数回加工することが望ましい。
【0015】
上記態様において、前記被加工物の表面の加工は前記パルスレーザビームによるアブレーションによることが望ましい。
【0016】
上記態様において前記レーザ・スキャナーはガルバノメータ・スキャナにより構成され、前記パルスピッカーは音響光学素子(AOM)あるいは電気光学素子(EOM)により構成されていることが望ましい。
【0017】
また、本発明の一態様のパルスレーザ加工方法は、回転軸に保持されるロールに被加工物を載置し、クロック信号を発生し、前記クロック信号に同期した一定の周波数のパルスレーザビームを出射し、前記被加工物表面に、前記クロック信号に同期して通過と遮断を切り替えて前記パルスレーザビームを1次元方向に走査し、前記1次元方向に前記パルスレーザビームを走査した後に、前記1次元方向に直交する方向に前記ロールを移動して、更に前記クロック信号に同期して通過と遮断を切り替えて前記パルスレーザビームを前記1次元方向に走査することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パルスレーザビームを用いた加工において、その照射スポットの位置決め精度が向上し、大型の被加工物表面の安定した微細加工とその高速化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置に用いられるビーム遮蔽装置の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置に用いられるビーム走査装置の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置に用いられるビーム走査装置の走査の説明に供する説明図である。
【図5】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置におけるタイミング制御の説明に供する信号波形図である。
【図6】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置におけるパルスピッカー動作の説明に供する信号波形図である。
【図7】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置の照射パルス光の投射の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置の照射パルス光の投射による照射スポットの一例を示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置の照射パルス光の投射による照射スポットの他例を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態にかかるパルスレーザ加工装置によるポケット加工の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態のパルスレーザ加工装置は、クロック信号を発生する基準クロック発振回路と、クロック信号に同期したパルスレーザビームを出射するレーザ発振器と、クロック信号に同期してパルスレーザビームを1次元方向のみに走査するレーザ・スキャナーと、被加工物を載置可能で1次元方向に直交する方向に移動するステージと、レーザ発振器とレーザ・スキャナーとの間の光路に設けられ、クロック信号に同期してパルスレーザビームの通過と遮断を切り替えるパルスピッカーと、を備える。
【0022】
上記構成により、同一のクロック信号に同期して、パルスレーザビームの出射、パルスレーザビームの走査、パルスレーザビームの通過と遮断を制御することが可能となる。すなわち、パルスレーザ加工装置におけるレーザ系と走査系との同期が、容易かつ高精度にとれる。また、走査系にレーザ・スキャナーを用いることで加工の高速化が図れる。よって、パルスレーザビームを用いた加工において、その照射スポットの位置決め精度を向上させ、大型の被加工物表面の安定した微細加工とその高速化を可能にするパルスレーザ加工装置が実現される。
【0023】
図1はパルスレーザ加工装置の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、本実施形態のパルスレーザ加工装置10は、その主要な構成として、レーザ発振器であるパルスレーザ発振装置11、ビーム遮蔽装置12、ビーム整形装置13、ビーム走査装置(レーザ・スキャナー)14、X−Yステージ移動装置15および加工制御部16を備えている。ここで、X−Yステージ移動装置15上に被加工物である例えば大型金属板のワークWが載置される。
【0024】
また、パルスレーザ加工装置10には、クロック信号を発生する基準クロック発振回路(図示せず)が備えられている。この基準クロック発振回路は、例えば、加工制御部16に設けられている。
【0025】
パルスレーザ発振装置11は、超短パルスであるpsレーザビームあるいはフェムト秒(fs)レーザビームを発振するものが好適である。ここで、レーザ波長は被加工物の光吸収率、光反射率等を考慮して選択される。例えばCu、Ni、難削材であるSKD11等を含む金属材料あるいはダイヤモンドライク・カーボン(DLC)からなる被加工物の場合、Nd:YAGレーザの第2高調波(波長:532nm)が極めて好適である。
【0026】
このYAGレーザでは、いわゆるQスイッチにより所定のパルス周波数のパルス光が活性媒質であるYAGロッドから生成される。そして、その基本波の波長1064nmのパルス光は、例えばKTiOPO(KTP)やLiB(LBO)、BBO(β−BaB)等の波長変換結晶を通過して例えばP偏光の第2高調波に波長変換される。また、パルス周波数は例えば50kHz〜500kHz程度に設定される。
【0027】
上記YAGレーザ発振器において、基本波を生成するための活性媒質として、Nd:YAG結晶の他にNd:YLF結晶、Nd:YVO結晶、Yb:YAG結晶等を使用することができる。また、基本波の第3高調波(波長:355nm)のYAGレーザ発振器であってもよい。但し、この場合、レーザビームの空気中での吸収減衰を低減させるためにその光路を減圧にすることが必要になる。
【0028】
ビーム遮蔽装置12は、パルスレーザ発振装置11とビーム走査装置14との間の光路に設けられる。ビーム遮蔽装置12は、いわゆるパルスピッカーを備えている。そして、基準クロック発振回路で発生されるクロック信号に同期したパルスピッカー駆動信号によりパルスレーザ発振装置11から一定の周波数で出射するパルスレーザビームを遮断/通過させて所要のパルスレーザビームを抽出する。これにより、その詳細は後述するようにパルスレーザビームのパルス周波数変調がなされる。
【0029】
このビーム遮蔽装置12におけるパルスレーザビームの高速シャッタリングのために、図2で説明するような音響光学素子(AOM)が好適に使用される。例えば圧電素子と音響素子を備える超音波発振部17と音波吸収部18との間で超音波19が生成されるようになっている。ここで、パルスピッカー制御装置12aからパルスピッカー駆動信号32が超音波発生制御部20に与えられる。そして、この超音波発生制御部20が超音波発振のON/OFFを制御し、上記圧電素子を駆動する所定のパルス電圧を超音波発振部17に与える。
【0030】
このようなビーム遮蔽装置12により、パルスレーザ発振装置11から出射したパルスレーザビームPLは、上記パルスピッカー駆動信号32に基づく超音波発振のON状態において超音波19のフォノンエネルギーを受け、そのフォトン周波数(ω)が(ω+Ω)に増加し波長変調が生じる。そして、このON状態においてパルスレーザビームPLは回折散乱されシャッタリングされる。このようにして、パルスレーザビームPLはパルス周波数変調を受けて図1に示すようにパルスレーザビームPLになってビーム整形装置13に入射するようになる。
【0031】
このビーム遮蔽装置12には、その他に、例えば電気信号のON/OFFに従いビームを素通/回折散乱させるラマン回折型の電気光学素子(EOM)等を使用することができる。
【0032】
ビーム整形装置13は、入射したパルスレーザビームPLのビーム径を一定の倍率で拡大するビームエキスパンダを有する。このビームエキスパンダは周知の例えば2つの光学レンズがビームの光路上に配置されて構成される。ここで、このビームエキスパンダを通ったパルスレーザビームPLは平行光にコリメートされる。
【0033】
また、ビーム断面の光強度分布を均一にし、断面形状を円形にする光学素子が備えられていてもよい。このような光学素子としては、例えば2つの非球面ホモジナイザ等が使用できる。平凸シリンドリカルを互いに直交するように光路上に配置されて構成される。
【0034】
また、ビームを円偏光にする光学素子が備えられていてもよい。例えば、YAGレーザの第2高調波が直線偏光のP偏光の場合、例えば1/4波長板を介して円偏光になるようにする。
【0035】
また、ビーム断面の光強度分布を例えばガウス分布等の所要の分布にする光学素子、ビーム成形用アパーチャー等を光路上に配置してもよい。上記のようなビーム整形装置13により所要の形状に整形されたパルスレーザビームPLはビーム走査装置14に入射するようになっている。
【0036】
ビーム走査装置14は、パルスレーザビームPLを1次元方向(X軸方向)のみに一定の速度で1次元走査する構造になっている。このような1次元ビーム走査を行う好適なビーム走査装置14としては、例えば1軸スキャン・ミラーを備えたガルバノメータ・スキャナが挙げられる。
【0037】
このガルバノメータ・スキャナからなるビーム走査装置14の基本構成について図3および図4を参照して説明する。ガルバノメータ・スキャナは、1軸スキャン・ミラー21、このスキャン・ミラー21の固定の振れ角範囲の回転振動(首振り)に従い全反射するパルスレーザビームPLを、図3の矢印の角度で走査するガルバノメータ22を有している。ここで、ガルバノメータ22は、例えば走査角センサ24からのフィードバックによるサーボ制御モータのようなスキャン・ミラー回転の駆動機構を備えており、スキャナ制御部23からの駆動信号により駆動制御されるようになっている。
【0038】
このビーム走査装置14には、走査角センサ24が備えられ、ガルバノメータ・スキャナの場合には、その1軸スキャン・ミラー21の回転位置をロータリエンコーダ等によって検出する構造になっている。そして、走査角センサ24は、検出した走査角検出信号をスキャナ制御部23に送り、ガルバノメータ22の駆動制御用として使用し、更に走査角信号34として加工制御部16に送信する。
【0039】
そして、上記1軸スキャン・ミラー21で反射したパルスレーザビームPLは、fθレンズ25を通り、1次元方向に一定の走査速度Vで並行して走査される像高H=fθのパルスレーザビームPLになる。そして、後述するように、このパルスレーザビームPLがX−Yステージ移動装置15のステージ上に保持されているワークWの表面を微細加工する照射パルス光として投射される。
【0040】
このビーム走査装置14としては、その他に、例えばポリゴンミラー、その回転制御部、fθレンズ等を備えたポリゴン・スキャナ、ピエゾ素子で1軸スキャン・ミラーを回転振動させるピエゾ・スキャナ、いわゆるレゾナントスキャナ等、種々のものを適宜に使用することができる。
【0041】
上記いずれのレーザ・スキャナーにあっても、そのスキャン・ミラーの固定の振れ角範囲の始点から終点の間において一定の走査速度Vが確保できるように制御することが重要になる。すなわち、図4に示すように、パルスレーザビームPLのワークWの表面での走査フィールド位置において、上記スキャン・ミラーの走査角範囲の走査開始位置から走査終了位置に対応する位置範囲での加速期間、安定域、減速期間における安定域内で走査速度が略V値に安定するように制御する。
【0042】
X−Yステージ移動装置15は、X−Y方向に自在に移動できるX−Yステージ、その駆動機構部、X−Yステージの位置を計測する例えばレーザ干渉計を有した位置センサ等を備えている。ここで、X−Yステージは、2次元の広範囲たとえば1m程度のX方向およびY方向の距離範囲で、連続移動あるいはステップ移動できるようになっている。そして、その位置決め精度および移動誤差はサブミクロンになるように高精度に構成されている。
【0043】
加工制御部16は、パルスレーザ発振装置11、ビーム遮蔽装置12、パルスピッカー制御装置12a、ビーム走査装置14、X−Yステージ走査装置15等の装置の制御用信号を統合し制御する統合制御部等を備える。これ等の装置(装置内制御部)および統合制御部は、半導体集積回路からなるマイクロコンピュータ(MCU)、マイクロプロセッサ(MPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、半導体メモリ等で構成され、1台のパーソナルコンピュータに内蔵することができる。
【0044】
上記統合制御部は、加工制御部16の端末入力部(例えばパソコンのキーボード)から入力したデータを加工し、各装置(装置内制御部)に指令するように構成されている。この入力データとしては、例えばパルスレーザビームの繰り返し周波数、その照射エネルギー、形状、寸法、パルスピッカー動作パターン、スキャナ動作速度、X−YステージのX−Y軸方向の移動パターン等がある。また、パルスレーザ加工装置10を構成する各装置の駆動開始および停止を指示するようになっている。そして、加工制御部16はその端末出力部を通して種々のデータを出力するようになっている。
【0045】
上述したパルスピッカー動作パターン、X−YステージのX−Y軸方向の移動パターンは、3次元の加工形状の設定、上記パルスレーザビームの照射エネルギー、形状、寸法等によって被加工物材について加工される体積情報から、3次元ビットマップに展開して得られる加工レイア毎の2次元加工データにより決定される。そして、図4に示した加工原点からの絶対位置として決定される。
【0046】
上記加工制御部16は、基準クロック発振回路において、パルスレーザビームの繰り返し周波数入力データに基づきパルスレーザ発振装置11に与える発振器クロック(クロック信号)30を生成する。そして、パルスレーザ発振装置11は、その発振器クロック30によりパルスレーザビームを生成する。すなわち、クロック信号に同期したパルスレーザビームが出射される。
【0047】
加工開始指示が行われると、内蔵するシャッターを開にすることでパルスレーザビームPLを出射する。このようにして、パルスレーザビームPLが出射される際にはファーストパルスは存在せず、安定出力エネルギーが維持される。
【0048】
また、加工制御部16は、上述した2次元加工データから加工パターン信号31を生成する。そして、パルスピッカー制御装置12aは、この加工パターン信号31に従い、発振器クロック30によりパルスレーザビームPLとの同期を確保したパルスピッカー駆動信号32を、ビーム遮断装置12に供給する。このようして、クロック信号に同期して、パルスピッカーが、パルスレーザビームの通過と遮断を切り替える。
【0049】
また、加工制御部16は、ビーム走査装置14の走査開始時に発振器クロック30との同期を確保した走査指令信号33を生成する。そして、ビーム走査装置14のスキャナ制御部23が上記走査指令信号33を受けてガルバノメータ22の駆動制御を行う。このようにして、クロック信号に同期して、レーザ・スキャナーがパルスレーザビームを1次元方向のみに走査する。
【0050】
更に、加工制御部16は、ビーム走査装置14からの走査位置信号である走査角信号34に基づいてX−Yステージ移動装置15の移動タイミングを判定し、上記2次元加工データと上記移動タイミングによりステージ移動信号35を生成する。この場合の走査角信号34は、図4で説明した加工が終了する加工終端位置あるいはスキャナ走査が終了する走査終了位置を走査角センサ24で検出した走査角検出信号からのものである。そして、X−Yステージ移動装置15は上記ステージ移動信号35に指示されて動作する。
【0051】
このように、X−Yステージは、レーザ・スキャナーの走査位置信号に基づいて、例えば、レーザ・スキャナーの走査方向とは直交する方向の移動制御がされる。これによって、次の走査への時間が短縮され、レーザビーム加工の更なる高速性が実現される。
【0052】
そして、本実施の形態において、レーザ・スキャナーからの走査位置信号に基づき、走査毎の加工原点位置を補正する補正機構を有することが望ましい。この補正機構を有することにより、各走査毎のレーザ・スキャナーの加速期間(図4参照)における走査速度ばらつきが補償され、さらに高精度な加工が可能となるからである。
【0053】
なお、図1において、加工制御部16がビーム整形装置13も制御する構成になっていてもよい。この場合は、特に、ビーム整形装置13においてビーム径を自動制御したりビーム断面の光強度分布を自動調整したりする場合に有効になる。
【0054】
次に、パルスレーザ加工装置10の主要な動作について説明する。ワークWのレーザ加工動作においては、パルスレーザ発振装置11はその内蔵する制御部によりレーザ発振のほとんどが制御され自律して動作している。もっとも、上述した発振器クロック30によりパルス発振のタイミング等の制御がなされる。これについて図5を参照して説明する。
【0055】
レーザ・スキャナーの例として図3に示したガルバノメータ・スキャナの1軸スキャン・ミラー21は、走査起動信号により図4で説明したような走査開始位置(走査原点)で走査起動する。この時、ビーム走査装置14は、図5(a)に示すように発振器クロック30の例えば立ち上がり(立ち下りでもよい)に同期した走査指令信号33により指示を受け、そのスキャナ制御部23がガルバノメータ22の駆動制御を行う。ここで、走査指令信号33は、XY2−100プロトコルに対応することで、例えば100kHz(Ts=10μsec)での絶対走査角指令に従う。
【0056】
なお、図5(a)は、パルスレーザの発振周波数を500kHz(Tp=2μsec)、パルスレーザビームのビーム径を16μm、走査速度Vを4000mm/secとした場合の、走査起動時の発振器クロック30の立ち上がりに同期した走査指令信号33の例を示している。このような動作が、パルスレーザビームの走査毎に行われる。
【0057】
ここで、図4の加速期間では、スキャナ速度が早期に安定した走査速度Vになるように、走査指令信号33によりスキャナ制御部23はガルバノメータ22の駆動制御を行う。この時、最適条件での1軸スキャン・ミラー21の走査角繰り返し再現性は、安定領域では10μrad/p−p程度が経験的に得られることが確認されている。この値は、焦点距離が100mmのfθレンズとした場合、1μm/p−pの走査位置再現性になる。
【0058】
しかし、上記加速期間の繰り返し安定性は、長期走査において10倍程度まで悪化するため、加工開始位置において走査ごとに変動が生じる。そこで、補正機構によって、レーザ・スキャナーからの走査位置信号に基づき、走査毎の加工原点位置を補正する。
【0059】
例えば、加速期間終了後、充分な安定域(例えば、経験的には加速期間が1msec〜1.5msecで、焦点距離が100mmのfθレンズとした場合、その走査角範囲は約2.3度〜3.4度である)に達した後、図5(b)に示すように予め設定されている同期角(θsy)を検出信号として走査角センサ24により検出する時、走査指令信号(θo:走査開始位置からの走査角)との差分を位相差(θi)とし、この位相差により走査指令信号33に対する加工原点までの距離を補正する。
【0060】
上記加工原点までの距離補正値は、加工時の第1回目走査(i=1)を基準補正値として記憶し、以後のi=nとなる第n回目の走査開始位置からの走査の都度、位相差(θn)と位相差(θ1)の差分を第n回目走査の第1回目走査に対する走査指令信号に対する加工原点までの距離補正値として、第1回目走査時と第n回目走査時の加工原点位置を一致させる。
【0061】
図6に示した加工パターン信号31は、加工原点からの距離データを含め3次元ビットマップから与えられている。このため、走査毎に加工原点位置が一致すると、加工パターン信号31の加工開始位置も一致し、パルスピッカー駆動信号32も所望のタイミングで生成される。
【0062】
ビーム走査装置14が図3に説明したガルバノメータ・スキャナからなる場合、スキャナクロック信号がスキャナ制御部23からの駆動信号としてサーボ制御モータを駆動させる。しかし、ビーム走査装置14もその自律した動作によりその位相ズレが生じることがある。そこで、上記スキャン動作の繰り返し毎に発生する走査位置信号となる同期角検出信号により、発振パルス光の通過/遮断とビームのスキャン動作との同期化、すなわちタイミングを合わせることで、極めて安定したレーザ加工が可能になる。
【0063】
具体的には、例えば、補正機構が、走査位置信号に基づき、パルスピッカーにおけるパルスレーザビームの通過と遮断を制御する。すなわち、上記スキャン・ミラーの回転位置の同期位置(角)検出の走査位置信号から検出した位相差に基づき、ビーム遮蔽装置12におけるパルスピッカーの駆動信号のタイミングを指定する。これによって、パルスレーザビームの走査毎の加工原点位置を補正する。
【0064】
あるいは、例えば、補正機構が、走査位置信号から検出した位相差から得られる距離補正値を、走査開始位置からの走査角にθoに対するレーザ・スキャナーへの走査指令信号以降の走査指令信号に与えることで、パルスレーザビームの走査毎の加工原点位置を補正する。
【0065】
パルスピッカー動作により発振パルス光はパルス周波数変調され所要の変調パルス光が生成される。これについて図6を参照して説明する。
【0066】
図6に示すように、周波数Tpの発振器クロック30からのt1遅延の発振パルス光は、パルスピッカー駆動信号32により遮断/通過の動作がなされる。例えば、そのパルスピッカー駆動信号32は、加工パターン信号31を発振器クロック30の立ち上がりによりサンプリングし、発振器クロック30の一クロックの立ち上がりからt2時間遅延して立ち上がり、所要数クロック後の他クロックの立ち上がりからt3時間遅延して立ち下がるパターン信号になる。そして、このパルスピッカー駆動信号によりビーム遮蔽装置12のパルスピッカー動作がその遅延時間t4およびt5に従って生じ、その動作の間の発振パルス光が変調パルス光として抽出される。ここで、上記遅延時間t2、t3、t4およびt5はビーム遮蔽装置12に合わせて設定される。
【0067】
なお、ビーム遮蔽装置12が図2に説明したような音響光学素子(AOM)を使用する場合、上記パルスピッカー駆動信号32の反転パターン信号が、超音波発生制御部20における発振のON/OFFを制御するドライバ信号となる。そして、この反転パターンのドライバ信号により所要の発振パルス光が抽出されることになる。
【0068】
また、上述したようにビーム走査装置14からの走査位置信号、例えばそのスキャン・ミラーの回転位置における加工終端位置の走査位置信号が、X−Yステージ移動装置15の移動タイミングを指示する。ビーム走査装置14の1次元走査方向をX軸方向とすると、上記移動タイミングにより、Y軸方向の所定幅のステップ移動あるいは連続移動がなされる。あるいは、X−YステージのX軸方向の所定距離の連続移動あるいはステップ移動が行われる。このようにして、X−Yステージの予め決められている移動パターンの移動制御が行われる。
【0069】
例えば、図7に示すようなパルスピッカー動作パターンにより生成された変調パルス光は、各パルス光がビーム整形装置13において所要の形状に整形される。そして、上記ビーム走査装置14によるX軸方向の走査とX−Yステージ移動装置15によるワークW位置のY軸方向の移動によって、ワークWの所要位置に照射パルス光が投射され、ワークW表面の高精度の微細加工がなされる。図7のパルスピッカー動作パターンにおける各パルスピッカー動作の時間幅および各動作の時間間隔はそれぞれ異なるようになっていてもよい。
【0070】
次に、パルスレーザ加工装置10を用いた、パルスレーザ加工方法について説明する。このパルスレーザ加工方法は、例えば、ステージに被加工物を載置し、クロック信号を発生し、クロック信号に同期したパルスレーザビームを出射し、被加工物表面に、クロック信号に同期して通過と遮断を切り替えて前記パルスレーザビームを1次元方向に走査し、1次元方向にパルスレーザビームを走査した後に、1次元方向に直交する方向にステージを移動して、更にクロック信号に同期して通過と遮断を切り替えてパルスレーザビームを1次元方向に走査する。
【0071】
パルスレーザ加工方法の、具体的な例について図8と図9を参照して説明する。図8は、図7に示したパルスピッカー動作パターンの各動作の時間幅と時間間隔を一定にしてその照射パルス光をワークWに投射し、そのスポット径の1/2ずつビーム走査装置14によりX軸方向に走査した照射スポットを模式的に示している。
【0072】
ここで、6つの照射スポットが形成されX軸方向の走査距離はXpである。そして、ビーム走査装置14によるX軸方向に走査によりワークW上のX1の離間位置から同様な照射スポットが繰り返して形成される。この照射スポットは所要数になるように自在に決められる。なお、図ではスポット光が真円に示されているが、これはビーム断面形状により楕円等の別の形状に変わるものである。また、これ等のスポット径は例えば10μm〜60μm程度になる。
【0073】
そして、図示しないがビーム走査装置14の使用可能な走査範囲(走査フィールド)である始点から終点を超えると、必要に応じて上述したようにX−YステージがX軸方向に所定距離で移動する。そして、同様に、隣の走査フィールドに照射スポットが形成される。ここで、隣接する走査フィールド間が零になり連続するようになってもよい。
【0074】
次に、図9に示すように、図8に説明した上記X軸方向の照射パルス光の投射の第1走査が終了すると、図8に示したX軸方向の照射スポットの初めの位置においてX−YステージがY軸方向に例えばスポット光径の1/2の距離だけステップ移動する。そして、図8で説明したのと同じ走査を繰り返すことで第2、第3および第4走査をしてそれぞれ照射スポットを形成する。このようにして、Y軸方向の4つの照射スポットが形成されてその距離がYpとなる。この照射スポットは所要数になるように自在に決められる。
【0075】
なお、上記第1走査〜第4走査がビーム走査装置14におけるスキャン・ミラーの回転位置の始点から終点の範囲で行える場合には、その一方向あるいは双方向のラスタスキャンが有効に使用される。
【0076】
そして、パルスピッカー動作のない状態下で、ワークWを保持したX−YステージをY軸方向に移動距離Y1だけ移動させる。この移動距離Y1の移動位置から同様にして第5走査〜第8走査をして照射スポットを形成する。更に、X−YステージをY軸方向に移動距離Y2だけ移動させ、移動距離Y2の移動位置から同様にして第9走査〜第12走査をして照射スポット形成を行う。
【0077】
上述した照射パルス光の投射においては、例えば、照射スポットはその径の1/2がX方向およびY方向で重ね合わされる。ここで、レーザ・スキャナーのX軸方向の走査およびX−YステージのY軸方向のステップ移動を調節してその重ね合わせの程度を変えることができる。この場合、照射パルス光のビーム断面の光強度分布を考慮して重ね合わせの程度が設定される。
【0078】
上記照射パルス光の投射において、各照射パルス光のワークW表面での照射スポットでアブレーションによる加工がなされる。そして、図9に示した第1走査〜第12走査による照射パルス光の投射を所定回数繰り返すことにより、例えば金属板からなるワークW表面のポケット加工が行える。
【0079】
図10はその例を模式的に示したものであり、(a)がその平面図であり(b)が(a)のA−A矢視断面図である。図10に示すように図9で説明した照射パルス光の投射の領域に対応して複数の凹部26が形成される。ここで、これ等の凹部の寸法は、照射スポット数の他に、照射スポット径、ビーム断面の光強度分布等により決まる。また、上記照射パルス光の投射の繰り返す所定回数は、ワークWの材質(特のその光吸収率と光反射率)、その加工形状、パルス光の波長、パルス幅、パルス光の強度等により適宜に設定される。
【0080】
実際に、上記ポケット加工が、Cu材、Ni材、DLC材、SKD11からなるワークW表面に形成できることが確かめられた。また、上述した照射パルス光の投射は、パルスピッカー動作パターンを自在に生成することにより、あるいは照射パルス光の投射の繰り返しの所定回数を制御することにより、ワークW表面を微細な任意形状に加工することができる。
【0081】
例えば、パルスレーザ発振装置11にNd:YAGレーザの第2高調波を用い、Cu板のワークW表面に対して、深さおよび開口幅が数十μm程度の微細なV溝あるいはR溝加工が可能なことが確かめられている。また、数十μm径のマイクロレンズレンズ用金型の加工が確かめられている。なお、1μmレベルの微細加工も容易であり、パルス光の波長を短くすることにより更にサブμmレベルの加工も可能になる。そして、その他に樹脂を含む高分子材、半導体材、ガラス材を等からなる被加工物の表面が加工できる。
【0082】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。この変形例では、ワークWのレーザ加工の高速化を更に容易にするパルスレーザ加工装置について説明する。例えば、図1に示したパルスレーザ発振装置11、ビーム遮蔽装置12、ビーム整形装置13およびビーム走査装置14からなる、パルスレーザビーム発生源およびビーム光学系を複数備え、この複数から照射パルス光をX−Yステージ移動装置15に保持した1つのワークW表面に制御して投射する構造のパルスレーザ加工装置であってもよい。このようなレーザ加工装置では、加工制御部16は、パルスレーザ加工装置10で説明したように、全てのパルスレーザビーム発生源およびビーム光学系を一括して制御するようになる。
【0083】
あるいは、ビーム走査装置14からのパルスレーザビームPLを複数の光スプリッタにより複数の光路に分岐させ、1つのワークW表面の異なる領域に照射パルス光を投射する構造のパルスレーザ加工装置であってもよい。このような加工装置では、パルスレーザ発振装置11から出射する発振パルス光の光強度は上記分岐する光路の数に合わせて増加させる必要がある。
【0084】
あるいは、ビーム走査装置14とX−Yステージ移動装置15との間の光路に回折光学素子(DOE)を介挿させた構造のパルスレーザ加工装置であってもよい。この場合、上記回折光学素子(DOE)は電気信号により制御できるようになっており、ワークW表面の異なる領域にパルスレーザビームPLが投射できるようになっている。
【0085】
あるいは、上述したパルスレーザ発振装置11、ビーム遮蔽装置12、ビーム走査装置14、X−Yステージ移動装置15等で説明した各制御部が、加工制御部16内に統合された構造のパルスレーザ加工装置になってもよい。
【0086】
あるいは、ビーム遮蔽装置12のようなパルスピッカーの替わりに、X−Yステージが移動する間だけビームを遮断する機構を用いる構造のパルスレーザ加工装置にしてもよい。
【0087】
本実施形態のパルスレーザ加工装置では、ワークWへの照射パルス光の投射は、1次元走査のレーザ・スキャナーによるX軸方向の走査とX−YステージによるY軸方向の移動により被加工物の2次元面が加工される。また、パルスピッカー動作パターンにより被加工物の表面に投射される照射パルス光が自在に制御される。
【0088】
そして、パルスレーザ加工において、基準クロック発振回路で生成される同一のクロック信号に同期して、パルスレーザビームの出射、パルスレーザビームの走査、パルスレーザビームの通過と遮断を制御する。このため、被加工物の表面に投射した照射スポットの位置決め精度が大きく向上する。
【0089】
また、例えば、レーザ・スキャナーからの走査位置信号に基づき、走査毎の加工原点位置を補正する補正機構を備えることで、さらに、照射スポットの位置決め精度が向上する。
【0090】
また、例えば、ワークを載置するステージが、レーザ・スキャナーの走査位置信号に基づいて、1次元方向に直交する方向の移動制御がされることで、高速化および安定した動作が容易になる。
【0091】
そして、例えば、psレーザビームあるいはfsレーザビーム等の超短パルスレーザによるアブレーションが容易になり、被加工物の熱変形を小さく制御することが可能になる。したがって、加工時において加工物へのパルスレーザ照射による熱影響の低減が可能となる。よって、安定した微細形状の加工が容易になる。
【0092】
このようにして、パルスレーザビームを用いた加工において、その照射スポットの位置決め精度を向上させ、大型の被加工物表面の安定した微細加工とその高速化を可能にするパルスレーザ加工装置およびパルスレーザ加工方法が実現される。
【0093】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施形態において本発明に技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0094】
例えば、ビーム走査装置14からの走査位置信号に基づく制御において、その信号は上述した1軸スキャン・ミラーの回転位置と異なる回転位置の検出からのものであってもよい。あるいは、上記回転位置以外に回転駆動機構からの信号であっても構わない。
【0095】
そして、X−Yステージ移動装置15は、そのX−Yステージに換えて回転軸にロールを保持するような構造になっていても構わない。
【0096】
更に、パルスレーザ発振装置11としては、YAGレーザの他に、被加工物材により適宜に選択した単一波長帯レーザあるいは複数波長帯レーザを出射するものを使用することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 パルスレーザ加工装置
11 パルスレーザ発振装置
12 ビーム遮蔽装置
12a パルスピッカー制御装置
13 ビーム整形装置
14 ビーム走査装置
15 X−Yステージ移動装置
16 加工制御部
17 超音波発振部
18 音波吸収部
19 超音波
20 超音波発生制御部
21 1軸スキャン・ミラー
22 ガルバノメータ
23 スキャナ制御部
24 走査角センサ
25 fθレンズ
26 凹部
PL、PL、PL、PL パルスレーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を発生する基準クロック発振回路と、
前記クロック信号に同期した一定の周波数のパルスレーザビームを出射するレーザ発振器と、
前記クロック信号に同期して前記パルスレーザビームを1次元方向のみに走査するレーザ・スキャナーと、
被加工物を載置可能で前記1次元方向に直交する方向に移動し、回転軸に保持されるロールと、
前記レーザ発振器と前記レーザ・スキャナーとの間の光路に設けられ、前記クロック信号に同期して前記パルスレーザビームの通過と遮断を切り替えるパルスピッカーと、
を備えることを特徴とするパルスレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザ・スキャナーからの走査位置信号に基づき、走査毎の加工原点位置を補正する補正機構を有することを特徴とする請求項1記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項3】
前記補正機構は、前記走査位置信号に基づき、前記パルスピッカーにおける前記パルスレーザビームの通過と遮断を制御することを特徴とする請求項2記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項4】
前記ロールは、前記レーザ・スキャナーの走査位置信号に基づいて、前記1次元方向に直交する方向の移動制御がされることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザ発振器と前記レーザ・スキャナーの間の光路に、前記パルスレーザビームを整形するビーム整形手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザビームスキャナによる前記パルスレーザビームの前記1次元方向の走査と、前記走査に続く前記1次元方向に直交する方向の前記ロールの移動を交互に繰り返すことで、前記被加工物を加工することを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ・スキャナーの走査と前記ロールの移動により前記被加工物の表面の同一箇所を複数回加工することを特徴とする請求項1ないし6いずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項8】
前記被加工物の表面の加工は前記パルスレーザビームによるアブレーションによることを特徴とする請求項1ないし7いずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項9】
前記レーザ・スキャナーはガルバノメータ・スキャナにより構成され、前記パルスピッカーは音響光学素子(AOM)あるいは電気光学素子(EOM)により構成されていることを特徴とする請求項1ないし8いずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項10】
前記パルスレーザビームが、psレーザビームまたはfsレーザビームであることを特徴とする請求項1ないし9いずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項11】
前記レーザ発振器が、単一波長帯レーザまたは複数波長帯レーザを出射することを特徴とする請求項1ないし9いずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項12】
クロック信号を発生する基準クロック発振回路と、
前記クロック信号に同期した一定の周波数のpsレーザビームまたはfsレーザビームであるパルスレーザビームを出射するレーザ発振器と、
前記クロック信号に同期して前記パルスレーザビームを1次元方向のみに走査するレーザ・スキャナーと、
被加工物を載置可能で前記1次元方向に直交する方向に移動するステージと、
前記レーザ発振器と前記レーザ・スキャナーとの間の光路に設けられ、前記クロック信号に同期して前記パルスレーザビームの通過と遮断を切り替えるパルスピッカーと、
を備えることを特徴とするパルスレーザ加工装置。
【請求項13】
クロック信号を発生する基準クロック発振回路と、
前記クロック信号に同期した一定の周波数の単一波長帯レーザまたは複数波長帯レーザのパルスレーザビームを出射するレーザ発振器と、
前記クロック信号に同期して前記パルスレーザビームを1次元方向のみに走査するレーザ・スキャナーと、
被加工物を載置可能で前記1次元方向に直交する方向に移動するステージと、
前記レーザ発振器と前記レーザ・スキャナーとの間の光路に設けられ、前記クロック信号に同期して前記パルスレーザビームの通過と遮断を切り替えるパルスピッカーと、
を備えることを特徴とするパルスレーザ加工装置。
【請求項14】
回転軸に保持されるロールに被加工物を載置し、
クロック信号を発生し、
前記クロック信号に同期した一定の周波数のパルスレーザビームを出射し、
前記被加工物表面に、前記クロック信号に同期して通過と遮断を切り替えて前記パルスレーザビームを1次元方向に走査し、
前記1次元方向に前記パルスレーザビームを走査した後に、前記1次元方向に直交する方向に前記ロールを移動して、更に前記クロック信号に同期して通過と遮断を切り替えて前記パルスレーザビームを前記1次元方向に走査することを特徴とするパルスレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−56371(P2013−56371A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−244520(P2012−244520)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【分割の表示】特願2010−155524(P2010−155524)の分割
【原出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】