説明

パルスレーダ装置及びその制御方法

【課題】ノイズ信号のレプリカ信号を生成して受信信号から除去することにより、対象物の情報を高精度に検出することが可能なパルスレーダ装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】パルスレーダ装置100では、高周波送信部110、高周波受信部120等を配置する高周波用基板103と、ベースバンド部130を配置する低周波用基板104との間を、多ピンのコネクタ105を用いて電気的に接続している。ディジタル信号処理部132は、コネクタ105において制御信号がベースバンド信号に与える干渉ノイズ信号や、搬送波が反射されてダウンコンバートされたセルフミキシングノイズからなる不要波のレプリカ信号を作成する。そして、対象物Tの検出時に得られる信号からレプリカ信号を除去する。本実施形態では、2回のレーダ動作でレプリカ信号を作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、特にパルス信号を該装置から放射し、対象物で反射し、再び該装置で受信されるまでの往復時間を測定することで該対象物までの距離を計測する車載パルスレーダ装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なパルスレーダ装置は、高周波の搬送波を変調してごく短い時間だけ搬送周波数を切り出すことにより、パルス状の送信信号を生成する高周波送信部と、高周波送信部で生成された送信信号を電波として空間に放射する送信アンテナと、送信アンテナから放射された電波が対象物で反射されて戻ってきた反射波を受信する受信アンテナと、受信アンテナから受信信号を入力してベースバンド信号にダウンコンバートする高周波受信部と、高周波受信部からベースバンド信号を入力して対象物までの距離等を算出するベースバンド部と、を備えている。
【0003】
また、高周波送信部は、所定の周波数の搬送波を生成する発振器と、発振器で生成された搬送波をパルス状に切り出すスイッチ等を有している。高周波受信部は、送信信号と受信信号との相関をとる相関器と、相関器の出力信号をベースバンド信号にダウンコンバートするためのIQミキサを有している。ベースバンド部は、高周波受信部からのベースバンド信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するA/D変換部と、A/D変換部からのディジタル信号を処理して対象物までの距離や対象物の相対速度を算出するディジタル信号処理部と、パルスレーダ装置の制御を行う制御部を有している。制御部は、高周波送信部のスイッチや高周波受信部の相関器をオン/オフ制御している。
【0004】
パルスレーダ装置は、上記説明のように、高周波信号を処理する高周波送信部及び高周波受信部(以下では、両者を合わせてRF部という)と、低周波信号を処理するベースバンド部とを備えている。このうち、RF部は高周波に対応可能な高価な基板を用いる必要があることから、低コスト化を図るために、従来より、RF部のみを高周波に対応可能な基板に配置し、ベースバンド部は低価格の基板に配置するのが一般的である。また、別々の基板に配置されたRF部とベースバンド部とを接続する手段として、従来より寸法が小さく安価な多ピンのコネクタが用いられている。
【0005】
上記のように、別々の基板上に形成されるベースバンド部とRF部とを安価な集約された多ピンのコネクタで接続すると、制御信号が受信信号に干渉ノイズ信号として漏れこんできてしまうといった問題があった。このように、該多ピンのコネクタにおいて、副次的に発生する制御信号等の不要波が受信信号に漏れこんで干渉ノイズ信号となると、十分な受信強度が得られないときは、該干渉ノイズ信号に所望の受信信号が埋もれてしまうという問題がある。そこで、従来は、なるべく該多ピン間のアイソレーションを大きくして該干渉ノイズ信号の信号量を低減することで、受信強度が小さい受信信号まで検出できるようにしていた。
【0006】
さらに、このような干渉ノイズ信号は発生要因は異なるが、各種レーダ装置にも存在し、該干渉ノイズ信号を除去する技術がある。特許文献1では、FM−CWレーダにおける受信信号に重畳した定常的なノイズ成分(周波数やレベルの時間的変動が小さいノイズ成分)の干渉ノイズ信号低減処理が開示されている。定常的なノイズ成分を記憶し、受信信号のスペクトラム分布から差し引くことで、対象物を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−151852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、車載レーダでは、小型な基板に実装することが多いため、多ピンコネクタのピン間のアイソレーションを十分確保することは非常に困難であるという問題があった。また、信号間の干渉を防止するために、各信号線を完全に独立した同軸線で接続することも可能であるが、RF部とベースバンド部との間の接続に複数の同軸線を用いると、高コストとなるとともに、機構上の取り回しが複雑となるため、製造が困難になる、といった問題があった。
【0009】
また、パルスレーダ装置の場合には、特に受信側に相関器を用いると発振器から出た信号が高周波受信部のIQミキサを通り、相関器で反射され、再びIQミキサでダウンコンバートされることによりセルフミキシングノイズが発生するという問題もある。とりわけ、遠方にある対象物からの信号は振幅のレベルが小さくなるため、上記の干渉ノイズ信号やセルフミキシングノイズで隠されてしまうおそれがある。
【0010】
さらに、特許文献1で開示された技術によれば、低レベルの干渉ノイズ信号を減算する方式であるため、受信信号よりも高いレベルの干渉ノイズ信号には適用できないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ノイズ信号のレプリカ信号を生成して受信信号から除去することにより、多ピンコネクタを用いて装置の小型化を実現しつつ、受信信号強度を超過する干渉ノイズ信号を低減し、対象物の情報を高精度に検出することが可能なパルスレーダ装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のパルスレーダ装置の第1の態様は、所定周波数の搬送波を生成する発振器を有し、前記搬送波を2以上の送信用制御信号に従ってパルス状に切出し、前記2以上の送信用制御信号のすべてが出力されたときに送信信号を生成する高周波送信部と、前記高周波送信部から前記送信信号を入力して電波として空間に放射する送信アンテナと、前記電波が対象物で反射された反射波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナから受信信号を入力して受信用制御信号に従って前記送信信号との相関をとってベースバンド信号に変換する高周波受信部と、少なくとも前記ベースバンド信号を入力してディジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部から前記ディジタル信号を入力して前記対象物までの距離及び/または前記対象物の相対速度及び/または前記対象物の方位角を算出するディジタル信号処理部と、前記送信用制御信号を前記高周波送信部に出力するとともに前記受信用制御信号を前記高周波受信部に出力する制御部と、を有するベースバンド部と、を備え、前記ディジタル信号処理部は、前記制御部から前記2以上の送信用制御信号の一部または全部が出力されずそれ以外の前記送信用制御信号及び前記受信用制御信号が出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を第1のバックグランド信号として取得し、前記制御部から前記一部または全部の送信用制御信号のみが出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を第2のバックグランド信号として取得し、前記第1のバックグランド信号と前記第2のバックグランド信号とを加算することによりレプリカ信号を算出し、前記制御部から前記2以上の送信用制御信号の全部及び前記受信用制御信号が出力されかつ前記発振器からの搬送波の出力が行われているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号から前記レプリカ信号を減算して低ノイズ信号を算出し、前記低ノイズ信号に基づいて前記対象物までの距離及び/または前記対象物の相対速度及び/または前記対象物の方位角を算出することを特徴する。
【0013】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記第1バックグラウンド信号を取得するときは前記発振器からの搬送波を出力させ、前記第2バックグラウンド信号を取得するときは前記発振器からの搬送波の出力を停止させていることを特徴とする。
【0014】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記第1バックグラウンド信号を取得するとき及び前記第2バックグラウンド信号を取得するときとも、前記発振器からの搬送波を出力させていることを特徴とする。
【0015】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記ディジタル信号処理部は、前記A/D変換部から入力したディジタル信号をフーリエ変換処理するものであり、前記制御部から前記2以上の送信用制御信号の全部及び前記受信用制御信号が出力されかつ前記発振器からの搬送波の出力が行われているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分から前記レプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより前記低ノイズ信号を算出することを特徴とする。
【0016】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、少なくとも前記ベースバンド部が第1の基板上に形成されて前記高周波送信部及び前記高周波受信部が前記第1の基板とは別の基板上に形成されており、前記ベースバンド信号を伝達する信号線と前記2以上の送信用制御信号及び前記受信用制御信号を伝達するそれぞれの制御線とを一括して通電状態に結線する多ピンコネクタの結線部が前記第1の基板と前記別の基板との間に設けられ、前記制御線から前記信号線への漏れ信号のレベルが前記A/D変換部のダイナミックレンジ内に入るように前記結線部内で前記制御線の結線と前記信号線の結線とが隔離して配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記高周波送信部が、前記搬送波を第1制御信号に従ってパルス状に切出す第1ゲート部と、前記第1ゲート部で切出された信号を第2制御信号に従ってさらに切出して前記送信信号を生成する第2ゲート部と、をさらに有し、前記高周波受信部が、前記受信アンテナから前記受信信号を入力して第3制御信号に従って前記送信信号との相関をとる相関部と、前記相関部からの出力信号をベースバンドにダウンコンバートして前記ベースバンド信号を出力するダウンコンバート部と、を有し、前記制御部が、前記第1ゲート部、前記第2ゲート部、及び前記相関部にそれぞれ前記第1制御信号、前記第2制御信号、及び前記第3制御信号を出力してそれぞれの電源をオン/オフ制御し、前記ディジタル信号処理部は、前記2以上の送信用制御信号を前記第1制御信号と前記第2制御信号の2個とし、前記受信用制御信号を前記第3制御信号として前記レプリカ信号を算出することを特徴する。
【0018】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記ディジタル信号処理部は、前記制御部から前記第1制御信号と前記第2制御信号のいずれか一方が出力されず他方および前記第3制御信号が出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を前記第1のバックグランド信号とし、前記制御部から前記第1制御信号と前記第2制御信号のいずれか一方のみが出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を前記第2のバックグランド信号として前記レプリカ信号を算出することを特徴する。
【0019】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記ディジタル信号処理部は、前記制御部から前記第1制御信号と前記第2制御信号の両方が出力されず前記第3制御信号が出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を前記第1のバックグランド信号とし、前記制御部から前記第1制御信号と前記第2制御信号の両方のみが出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を前記第2のバックグランド信号として前記レプリカ信号を算出することを特徴する。
【0020】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記第1バックグラウンド信号を取得するときは前記発振器からの搬送波を出力させ、前記第2バックグラウンド信号を取得するときは前記発振器からの搬送波の出力を停止させていることを特徴とする。
【0021】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記第1バックグラウンド信号を取得するとき及び前記第2バックグラウンド信号を取得するときとも、前記発振器からの搬送波を出力させていることを特徴とする。
【0022】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記ディジタル信号処理部は、前記制御部から前記第1制御信号、前記第2制御信号及び前記第3制御信号が出力されかつ前記発振器からの搬送波の出力が行われているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分から前記レプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより前記低ノイズ信号を算出することを特徴とする。
【0023】
本発明のパルスレーダ装置の他の態様は、前記ベースバンド部は、該ベースバンド部の動作周波数帯に対応する低周波用基板上に形成され、前記高周波送信部及び前記高周波受信部は、該高周波送信部及び高周波受信部の動作周波数帯に対応する高周波用基板上に形成され、前記ベースバンド信号を伝達する信号線と前記第1制御信号、前記第2制御信号、及び前記第3制御信号を伝達するそれぞれ第1制御線、第2制御線、及び第3制御線とを一括して通電状態に結線する多ピンのコネクタの結線部が前記低周波用基板と前記高周波用基板との間に設けられ、前記制御線から前記信号線への漏れ信号のレベルが前記A/D変換部のダイナミックレンジ内に入るように前記結線部内で前記制御線の結線と前記信号線の結線とが隔離して配置されていることを特徴とする。
【0024】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の第1の態様は、所定周波数の搬送波を生成する搬送波生成ステップと、前記搬送波を2以上の送信用制御信号に従ってパルス状に切出して送信信号を生成する信号切出しステップと、前記送信信号を電波として空間に放射する送信ステップと、前記電波が対象物で反射された反射波を受信する受信ステップと、受信用制御信号に従って前記受信ステップで受信した受信信号と前記送信信号との相関をとる相関ステップと、前記相関ステップの出力信号をベースバンドにダウンコンバートしてベースバンド信号を出力するダウンコンバートステップと、少なくとも、前記ベースバンド信号を入力してディジタル信号に変換するA/D変換ステップと、前記ディジタル信号を入力して前記対象物までの距離及び/または前記対象物の相対速度及び/または前記対象物の方位角を算出するディジタル信号処理ステップと、を有し、前記ディジタル信号処理ステップでは、前記信号切出しステップで前記2以上の記送信用制御信号の一部または全部を出力せずそれ以外の前記送信用制御信号を出力しかつ前記相関ステップで前記受信用制御信号を出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を第1のバックグランド信号として取得し、前記信号切出しステップで前記一部または全部の送信用制御信号のみを出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を第2のバックグランド信号として取得し、前記第1のバックグランド信号と前記第2のバックグランド信号とを加算することによりレプリカ信号を算出し、前記信号切出しステップで前記2以上の送信用制御信号の全部を出力しかつ前記相関ステップで前記受信用制御信号を出力しかつ前記搬送波生成ステップを行ったときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号から前記レプリカ信号を減算して低ノイズ信号を算出し、該低ノイズ信号に基づいて前記対象物までの距離及び/または前記対象物の相対速度及び/または前記対象物の方位角を算出することを特徴する。
【0025】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記第1バックグラウンド信号を取得するときは前記搬送波生成ステップを行い、前記第2バックグラウンド信号を取得するときは前記搬送波生成ステップを行わないことを特徴とする。
【0026】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記第1バックグラウンド信号を取得するとき及び前記第2バックグラウンド信号を取得するときとも、前記搬送波生成ステップを行うことを特徴とする。
【0027】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記ディジタル信号処理ステップでは、前記A/D変換ステップで変換されたディジタル信号をフーリエ変換処理し、前記信号切出しステップで前記2以上の送信用制御信号の全部を出力しかつ前記相関ステップで前記受信用制御信号を出力しかつ前記搬送波生成ステップを行ったときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分から前記レプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより前記低ノイズ信号を算出することを特徴とする。本発明のパルスレーダ装置では、送信信号を生成するのにm(m≧2)個の制御信号(以下では送信用制御信号という)を用い、受信信号を処理するのに1以上の制御信号(以下では受信用制御信号という)を用いている。以下では、説明容易のために送信用制御信号を2個(m=2)とし、受信用制御信号を1個として説明するが、これに限定されず、送信用制御信号が3以上あってよく、また受信用制御信号が2以上あってもよい。
【0028】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記信号切出しステップは、前記搬送波を第1制御信号に従ってパルス状に切出す第1切出しステップと、前記第1切出しステップで切出した信号を第2制御信号に従ってさらに切出して送信信号を生成する第2切出しステップと、を有し、前記相関ステップでは、第3制御信号に従って前記受信信号と前記送信信号との相関をとり、前記ディジタル信号処理ステップでは、前記2以上の送信用制御信号を前記第1制御信号と前記第2制御信号の2個とし、前記受信用制御信号を前記第3制御信号として前記レプリカ信号を算出することを特徴する。
【0029】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記ディジタル信号処理ステップでは、前記信号切出しステップで前記第1制御信号と前記第2制御信号のいずれか一方を出力せず他方を出力しかつ前記相関ステップで前記第3制御信号を出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を前記第1のバックグランド信号とし、前記信号切出しステップで前記第1制御信号と前記第2制御信号のいずれか一方のみを出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を前記第2のバックグランド信号として前記レプリカ信号を算出することを特徴する。
【0030】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記ディジタル信号処理ステップでは、前記信号切出しステップで前記第1制御信号と前記第2制御信号の両方を出力せずかつ前記相関ステップで前記第3制御信号を出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を前記第1のバックグランド信号とし、前記信号切出しステップで前記第1制御信号と前記第2制御信号の両方のみを出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を前記第2のバックグランド信号として前記レプリカ信号を算出することを特徴する。
【0031】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記第1バックグラウンド信号を取得するときは前記搬送波生成ステップを行い、前記第2バックグラウンド信号を取得するときは前記搬送波生成ステップを行わないことを特徴とする。
【0032】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記第1バックグラウンド信号を取得するとき及び前記第2バックグラウンド信号を取得するときとも、前記搬送波生成ステップを行うことを特徴とする。
【0033】
本発明のパルスレーダ装置の制御方法の他の態様は、前記第1切出しステップ、前記第2切出しステップ及び前記相関ステップを実行したときのディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分から前記レプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより前記低ノイズ信号を算出することを特徴とする。
本発明のパルスレーダ装置では、レプリカ信号を作成するときに発振器から搬送波が出力される態様と搬送波が出力されない態様がある。また、本発明のパルスレーダ装置の制御方法でも、レプリカ信号を作成するときに搬送波生成ステップを行って搬送波を出力する態様と、送波生成ステップを行わないで搬送波を出力しない態様がある。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ノイズ信号のレプリカ信号を生成して受信信号から除去することにより、対象物の情報を高精度に検出することが可能なパルスレーダ装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパルスレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ノイズの影響が無いとしたときの信号の時間波形図である。
【図3】不要波の信号が混入した信号の時間波形図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るパルスレーダ装置の制御線及び信号線を拡大して表示した拡大図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るパルスレーダ装置の第1ゲート部への制御信号を出力させないときのノイズ信号の時間波形図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るパルスレーダ装置の第1ゲート部のみに制御信号を出力させるときのノイズ信号の時間波形図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るパルスレーダ装置により作成されるレプリカ信号の時間波形図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係るパルスレーダ装置による信号の処理方法を示す流れ図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るパルスレーダ装置の第1ゲート部及び第2ゲート部のみに制御信号を出力させるときのノイズ信号の時間波形図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るパルスレーダ装置の第1ゲート部及び第2ゲート部のみに制御信号を出力させないときのノイズ信号の時間波形図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るパルスレーダ装置による信号の処理方法を示す流れ図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るパルスレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の好ましい実施の形態におけるパルスレーダ装置及びその制御方法について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0037】
本発明のパルスレーダ装置は、所定周波数の搬送波を生成する発振器を有し、発振器で生成された搬送波を2以上の送信用制御信号に従ってパルス状に切出して送信信号を生成する高周波送信部と、高周波送信部から送信信号を入力して電波として空間に放射する送信アンテナと、空間に放射された電波が対象物で反射された反射波を受信する受信アンテナと、受信アンテナから受信信号を入力して受信用制御信号に従って送信信号との相関をとってベースバンド信号に変換する高周波受信部と、を備えている。また、ベースバンド信号を入力してディジタル信号に変換するA/D変換部と、A/D変換部からディジタル信号を入力して対象物までの距離及び/または対象物の相対速度及び/または対象物の方位角を算出するディジタル信号処理部と、送信用制御信号を高周波送信部に出力するとともに受信用制御信号を高周波受信部に出力する制御部と、を有するベースバンド部と、を備えている。
【0038】
ディジタル信号処理部は、制御部から2以上の送信用制御信号の一部または全部が出力されずそれ以外の送信用制御信号及び前記受信用制御信号が出力されかつ発振器からの搬送波の出力が行われているときにA/D変換部から出力されるディジタル信号を、第1のバックグランド信号として取得する。また、制御部から上記の一部または全部の送信用制御信号のみが出力されかつ発振器からの搬送波の出力が停止しているときにA/D変換部から出力されるディジタル信号を、第2のバックグランド信号として取得する。そして、第1のバックグランド信号と第2のバックグランド信号とを加算することによりレプリカ信号を算出する。
【0039】
レプリカ信号が算出されると、制御部から2以上の送信用制御信号の全部と受信用制御信号を出力し、かつ発振器からの搬送波の出力が行われているときにA/D変換部から出力されるディジタル信号を入力し、これから上記のレプリカ信号を減算して低ノイズ信号を算出する。そして、この低ノイズ信号に基づいて対象物までの距離及び/または対象物の相対速度及び/または対象物の方位角を算出する。
【0040】
ディジタル信号処理部は、A/D変換部から入力したディジタル信号をフーリエ変換処理するようにすることができ、制御部から送信用制御信号の全部及び受信用制御信号が出力されかつ発振器からの搬送波の出力が行われているときにA/D変換部から出力されるディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分からレプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより低ノイズ信号を算出する。
【0041】
パルスレーダ装置の構成として、少なくともベースバンド部を第1の基板上に形成し、高周波送信部及び高周波受信部を第1の基板とは別の基板上に形成することができる。この場合には、ベースバンド信号を伝達する信号線と2以上の送信用制御信号及び受信用制御信号を伝達するそれぞれの制御線とを一括して通電状態に結線する多ピンコネクタの結線部を第1の基板と別の基板との間に設けることができる。このとき、信号線と制御線をなるべく離して配置し、アイソレーションを稼ぐようにする。
【0042】
また、本発明のパルスレーダ装置の制御方法は、所定の周波数の搬送波を生成する搬送波生成ステップと、搬送波を2以上の送信用制御信号に従ってパルス状に切出して送信信号を生成する信号切出しステップと、送信信号を電波として空間に放射する送信ステップと、空間に放射された電波が対象物で反射された反射波を受信する受信ステップと、受信用制御信号に従って前記受信ステップで受信した受信信号と送信信号との相関をとる相関ステップと、相関ステップの出力信号をベースバンドにダウンコンバートしてベースバンド信号を出力するダウンコンバートステップと、ベースバンド信号を入力してディジタル信号に変換するA/D変換ステップと、ディジタル信号を入力して対象物までの距離及び/または対象物の相対速度及び/または対象物の方位角を算出するディジタル信号処理ステップと、を有している。
【0043】
ディジタル信号処理ステップでは、信号切出しステップで2以上の記送信用制御信号の一部または全部を出力せずそれ以外の送信用制御信号を出力しかつ相関ステップで受信用制御信号を出力しかつ搬送波生成ステップを行ったときにA/D変換ステップで得られるディジタル信号を第1のバックグランド信号として取得し、信号切出しステップで上記の一部または全部の送信用制御信号のみを出力しかつ搬送波生成ステップを行わないときにA/D変換ステップで得られるディジタル信号を第2のバックグランド信号として取得する。そして、第1のバックグランド信号と第2のバックグランド信号とを加算することによりレプリカ信号を算出する。
【0044】
レプリカ信号が算出されると、信号切出しステップで送信用制御信号の全部を出力しかつ相関ステップで受信用制御信号を出力しかつ搬送波生成ステップを行ったときにA/D変換ステップで得られるディジタル信号から上記のレプリカ信号を減算して低ノイズ信号を算出し、該低ノイズ信号に基づいて対象物までの距離及び/または対象物の相対速度及び/または対象物の方位角を算出する。
【0045】
上記のディジタル信号処理ステップでは、A/D変換ステップで変換されたディジタル信号をフーリエ変換処理するようにすることができ、この場合には信号切出しステップで送信用制御信号の全部を出力しかつ相関ステップで受信用制御信号を出力しかつ搬送波生成ステップを行ったときにA/D変換ステップで得られるディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分からレプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより低ノイズ信号を算出する。
【0046】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係るパルスレーダ装置を、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態のパルスレーダ装置100の構成を示すブロック図である。図1において、パルスレーダ装置100は、高周波信号を処理する高周波送信部110及び高周波受信部120と、低周波信号を処理するベースバンド部130と、電波を空間に放射するための送信アンテナ101と、対象物で反射した反射波を受信する受信アンテナ102と、を備えている。以下では、説明容易のため、パルスレーダ装置100で検出する対象物を符号Tで示す。
【0047】
高周波送信部110は、電磁波の送信信号の発生源である所定の高周波信号(搬送波)を発生させる発振器111と、発振器111で生成される高周波信号を所定の時間幅のパルス状の信号(パルス信号)に切出す第1ゲート部112及び第2ゲート部113と、を備えている。第1ゲート部112及び第2ゲート部113は、発振器111から入力する高周波信号を、例えば1[ns]幅のパルス信号に切出す回路であり、逓倍器やスイッチを用いることができる。第1ゲート部112と第2ゲート部113の2つの信号切出し回路を用いることで、シャープに成型されたパルス信号を生成することができる。第2ゲート部113から出力されるパルス状の送信信号は送信アンテナ101に伝送され、送信アンテナ101から電波として空中に放射される。
【0048】
高周波受信部120は、受信アンテナ102で受信された受信信号を入力して送信信号との相関をとる相関器121と、相関器121から出力される信号を発振器111から入力した搬送波でダウンコンバートするIQミキサ122とを備えている。IQミキサ122は、I成分のベースバンド信号にダウンコンバートするための第1ミキサ123、Q成分のベースバンド信号にダウンコンバートするための第2ミキサ124、及び発振器111から入力した搬送波を90度の位相差を付加して第1ミキサ123並びに第2ミキサ124に出力する移相器125を有している。相関器121は、受信信号から測定距離毎の信号を取り出し、これを第1ミキサ123及び第2ミキサ124に出力している。
【0049】
ベースバンド部130は、第1ミキサ123及び第2ミキサ124でダウンコンバートされたベースバンド信号のI成分及びQ成分を入力してディジタル信号に変換するA/D変換部131と、A/D変換部131からのディジタル信号を複素信号処理(複素フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform))して対象物Tの情報を算出するディジタル信号処理部132と、パルスレーダ装置100の動作を制御する制御部133と、記憶部134とを備えている。制御部133は、高周波部品である第1ゲート部112、第2ゲート部113、及び相関器121のそれぞれの電源をオン/オフ制御しており、第1ゲート部112と第2ゲート部113の両方の電源をオンにしたときに、高周波送信部110から送信信号が出力される。この制御部133で生成される制御信号は、1[ns]幅の信号である。
【0050】
上記のように構成された本実施形態のパルスレーダ装置100では、高周波送信部110及び高周波受信部120を構成する各部品が数十GHz帯の周波数で動作するのに対し、ベースバンド部130を構成する各部品は高々2GHz程度の周波数で動作する。このように、高周波送信部110及び高周波受信部120の動作周波数とベースバンド部130の動作周波数とが大きく異なることから、それぞれの周波数帯用に設計された別の基板上に形成するのが好ましい。本実施形態では、高周波送信部110及び高周波受信部120を高周波用基板103上に形成し、ベースバンド部130を低周波用基板104上に形成している。また、高周波信号を送受信する送信アンテナ101及び受信アンテナ102についても、高周波用基板103上に配置している。
【0051】
高周波用に用いる基板は低周波用の基板に比べて高価であることから、本実施形態では高価な高周波用基板103上に高周波送信部110、高周波受信部120、送信アンテナ101、及び受信アンテナ102のみを配置し、低周波信号を処理するベースバンド部130については、低価格な低周波用基板104上に配置している。これにより、パルスレーダ装置100のコスト低減を図ることができる。
【0052】
上記説明のように、パルスレーダ装置100の各部品を高周波用基板103と低周波用基板104に分けて配置するには、高周波用基板103上の部品と低周波用基板104上の部品とを電気的に接続する手段が必要となる。本実施形態のパルスレーダ装置100では、従来より用いられている低価格で小型の多ピンのコネクタ105を用いている。低周波用基板104上の制御部133から出力される制御信号は、コネクタ105を経由して高周波用基板103上の高周波送信部110及び高周波受信部120に伝送され、高周波用基板103上の高周波受信部120から出力されるベースバンド信号は、コネクタ105を経由して低周波用基板104上のベースバンド部130に伝送される。
【0053】
このように、高周波用基板103と低周波用基板104との間で、従来の多ピンのコネクタ105を用いて制御信号とベースバンド信号の受け渡しを行うと、対象物Tの情報を有する信号強度の低いベースバンド信号に制御信号からの干渉ノイズ信号が混入してしまう。また、発振器111から出力された搬送波が、IQミキサ122を通過して相関器121で反射され、再びIQミキサ122でダウンコンバートされて生じるセルフミキシングノイズもベースバンド信号に混入する。特に、対象物Tが遠方にある場合には、それからの反射信号の振幅レベルが小さくなるため、上記の干渉ノイズ信号やセルフミキシングノイズに隠れてしまうおそれがある。
【0054】
そこで、本実施形態のパルスレーダ装置100では、コネクタ105を通過するベースバンド信号に混入されるノイズ等の不要波のレプリカ信号を事前に作成しておき、対象物Tの検出時にベースバンド信号から該レプリカ信号を除去するようにしている。不要波のレプリカ信号の一例を、図2、3を用いて説明する。図2は、高周波送信部110で生成されたパルス信号を送信アンテナ101から放射し、対象物Tで反射された反射波を受信アンテナ102で受信してディジタル信号処理部132で処理した信号10の一例を示す時間波形図である(なお、横軸は時間に対応した距離を表している。以下、図3、図6〜9においても同様とする。)。同図に示す信号10の波形は、ノイズの影響を受けていないときの波形である。また、図3は、図2に示す信号10に上記の不要波の信号が混入したときの時間波形図を示す。符号11の信号は、コネクタ105でベースバンド信号に混入する干渉ノイズ信号を模式的に示したものであり、符号12の信号は、セルフミキシングノイズを模式的に示したものである。
【0055】
本実施形態では、図3に示す干渉ノイズ信号11とセルフミキシング信号12を合わせた不要波のレプリカ信号を事前に作成し、これを記憶部134に保存しておく。そして、パルスレーダ装置100を動作させて対象物Tを検出するときは、受信信号を高周波受信部120で処理してコネクタ105を経由してベースバンド部130に出力し、ディジタル信号処理部132で処理した信号から上記のレプリカ信号を差し引くことで、図2に示すような信号(低ノイズ信号)を取得する。以下では、上記のレプリカ信号を事前に作成する方法を、図面を用いて詳細に説明する。
【0056】
図1において、制御部133から第1ゲート部112に出力される制御信号(第1制御信号)及びそれを伝送する制御線(第1制御線)をそれぞれA、aとし、制御部133から第2ゲート部113に出力される制御信号(第2制御信号)及びそれを伝送する制御線(第2制御線)をそれぞれB、bとし、制御部133から相関器121に出力される制御信号(第3制御信号)及びそれを伝送する制御線(第3制御線)をそれぞれC、cとする。制御信号A、Bは、それぞれ第1ゲート部112、第2ゲート部113の電源をオン/オフ制御し、制御信号Cは相関器121の電源をオン/オフ制御している。ここでは、送信用制御信号を第1制御信号と第2制御信号の2つとし、受信用制御信号を第3制御信号の1つとしている。本発明のパルスレーダ装置及びその制御方法は、送信用制御信号及び受信用制御信号の数が上記のものに限定されるものではなく、それぞれさらに多くの制御信号があってもよい。
【0057】
また、IQミキサ122の第1ミキサ123からA/D変換部131に出力されるベースバンド信号(I成分)及びそれを伝送する信号線をそれぞれD、dとし、第2ミキサ124からA/D変換部131に出力されるベースバンド信号(Q成分)及びそれを伝送する信号線をそれぞれE、eとする。上記の制御線a、b、c、及び信号線d、eは、いずれもコネクタ105の異なるピンを経由している。
【0058】
パルスレーダ装置100では、制御部133から制御線a、bを介して適切なタイミングで制御信号A、Bが第1ゲート部112及び第2ゲート部113に出力され、それぞれの電源が略1[ns]の間投入されると、発振器111で生成された搬送波が1[ns]のパルス幅に切り出される。これにより、所定周波数の搬送波による1[ns]幅パルスの送信信号が生成され、これが送信アンテナ101に送出されて電波として空中に放射される。放射された電波は、距離Lだけ離れた位置にある対象物Tで反射され、受信アンテナ102で受信される。
【0059】
制御部133から制御線cを介して所定のタイミングで相関器121に制御信号Cが出力されると、相関器121の電源が投入されて受信アンテナ102で受信された受信信号と送信信号との相関がとられる。相関器121から出力される信号は、IQミキサ122で複素ベースバンド信号にダウンコンバートされる。第1ミキサ123及び第2ミキサ124でダウンコンバートされたそれぞれのベースバンド信号D、Eは、信号線d、eを介してベースバンド部130のA/D変換部131に入力され、ここでディジタル信号に変換される。このディジタル信号は、ディジタル信号処理部132において複素信号処理がなされ、対象物Tに係る位置情報と相対速度情報が算出される。
【0060】
図1に示す制御線a、b、c、及び信号線d、eは、高周波用基板103と低周波用基板104との間をコネクタ105で接続されている。コネクタ105の各ピン(端子)はむき出しの状態にあるため、各端子を流れる信号は微小なレベルではあるが、他の端子に回り込んで干渉してしまう。制御線a、b、cを流れる制御信号A、B、Cは、RF部品(第1ゲート部112、第2ゲート部113、相関器121)をオン/オフ駆動するための信号であり、例えば2〜3[V]程度の信号強度を有している。これに対し、信号線d、eを流れるベースバンド信号D、Eは、対象物Tから反射してきた信号強度の低い信号をダウンコンバートした信号であり、非常に強度の低い信号である。そのため、制御信号A、B、Cはベースバンド信号D、Eに比較して相対的に非常に高い強度の信号となっており、コネクタ105において制御線a、b、cから信号線d、eに制御信号A、B、Cが漏れ込んでしまう。
【0061】
パルスレーダ装置100における上記の各制御線及び信号線を拡大して図4に示す。同図では、コネクタ105において、制御線a、b、cから信号線d、eに回り込む信号を、それぞれ干渉ノイズ信号α、β、γとしている。干渉ノイズ信号α、β、γは、信号線d、eを通過するベースバンド信号D、Eとほぼ同等の強度を有する信号となる。図4では、発振器111から出力されてIQミキサ122を通過し、相関器121で反射されて再びIQミキサ122でダウンコンバートされるセルフミキシングノイズを、符号δで示している。このセルフミキシングノイズδも、ベースバンド信号D、Eに混入する。
【0062】
本実施形態のパルスレーダ装置100では、ベースバンド信号D、Eに混入する上記の各ノイズを含む不要波のレプリカ信号を事前に作成するために、パルスレーダ装置100の使用開始時に、制御線a、b、cを介して第1ゲート部112、第2ゲート部113、及び相関器121を適当なタイミングで動作させる。そして、得られた不要波のレプリカ信号を記憶部134に記憶しておき、対象物Tの検出時に、受信信号をダウンコンバートしたベースバンド信号D、Eからレプリカ信号を差し引くことで各ノイズを除去する。
【0063】
以下では、図5〜7を用いて不要波のレプリカ信号を作成する方法を説明する。図5〜7は、本実施形態のパルスレーダ装置の制御方法により取得されるノイズ信号及びレプリカ信号の一例を示す図である。本実施形態では、不要波のレプリカ信号を作成するときは、送信アンテナ101から送信電波が放射されないようにしている。
【0064】
本実施形態では、レプリカ信号を2回のレーダ動作で作成するようにしている。2回のレーダ動作では、それぞれで送信電波が放射されないように、2つの制御信号A、Bをそれぞれで1つずつ出力されるようにしている。また、2つの制御信号A、Bのいずれか一方を出力するレーダ動作では、第3制御信号Cを出力させず、かつ発振器111からの搬送波の出力も停止させる。搬送波の出力を停止させることで、セルフミキシングノイズδを発生させないようにすることができる。これにより、2つの制御信号A、Bのいずれか一方からのノイズ信号のみを取得することができる。以下では、制御信号Aだけを出力させないレーダ動作と、制御信号Aのみを出力させるレーダ動作の2回のレーダ操作からレプリカ信号を作成する場合を例に説明する。
【0065】
まず、制御部133から制御信号Aだけを出力させずに制御信号B、Cを出力させて制御線b、cに流し、かつ発振器111から搬送波を出力させている状態でレーダを動作させる。これにより、ディジタル信号処理部132には、制御信号B、Cが信号線d、eに混入したそれぞれの干渉ノイズ信号β、γと、セルフミキシングノイズδを合成したノイズ信号(β+γ+δ)が入力される。ノイズ信号(β+γ+δ)がディジタル信号処理部132で信号処理されて図5に示すようなノイズ信号が得られる。図5は、ノイズ信号(β+γ+δ)の時間波形の一例を示す図である。ディジタル信号処理部132で処理して得られたノイズ信号(β+γ+δ)は、第1バックグランド信号として記憶部134に保存される。
【0066】
次に、制御部133から制御信号Aだけを出力させて制御線aに流し、制御信号B、Cの出力を停止させる。さらに、発振器111からの搬送波の出力も停止させてレーダを動作させる。これにより、ディジタル信号処理部132には、制御信号Aが信号線d、eに混入した干渉ノイズ信号αのみのノイズ信号が入力される。ノイズ信号αがディジタル信号処理部132で信号処理されて図6に示すようなノイズ信号が得られる。図6は、ノイズ信号αの時間波形の一例を示す図である。ディジタル信号処理部132で処理して得られたノイズ信号αを第2バックグランドとし、これを記憶部134に保存されているノイズ信号(β+γ+δ)に加算して保存する。
【0067】
上記の2回のレーダ動作でノイズ信号(β+γ+δ)とノイズ信号αとを加算することで、次式のような全ての不要波を合せたノイズ信号が算出される。
(β+γ+δ)+α= α+β+γ+δ
上記のように、記憶部134には干渉ノイズ信号α、β、γ、及びセルフミキシングノイズδを合成したノイズ信号のレプリカ信号(α+β+γ+δ)が保存される。レプリカ信号(α+β+γ+δ)の時間波形は、図5の時間波形と図6の時間波形とを加算することで得られる。レプリカ信号(α+β+γ+δ)の時間波形の一例を図7に示す。
【0068】
以下では、図8に示す流れ図を用いて不要波のレプリカ信号を事前に作成し、これを用いて補正する方法を説明する。図8は、本実施形態のパルスレーダ装置の制御方法を説明するためのす流れ図である。本実施形態では、不要波のレプリカ信号を作成するときは、送信アンテナ101から送信電波が放射されないようにしている。
【0069】
まず、ステップS1において、パルスレーダ装置100の使用開始か否かを判定し、使用開始と判定されたときはステップS2に進む一方、既に使用中と判定されたときはステップS10に進む。ステップS2では、制御部133から制御信号Aが出力されないように出力停止にしておく。次に、ステップS3でレーダを動作させる。このとき、制御部133から制御信号B、Cが出力されて制御線b、cを流れる。また、発振器111からは搬送波が出力されている。このようなレーダ動作により、ディジタル信号処理部132には第1バックグランド信号のノイズ信号(β+γ+δ)が入力される。ステップS4では、ノイズ信号(β+γ+δ)がディジタル信号処理部132で信号処理され、ステップS5で記憶部134に保存される。
【0070】
次のステップS6では、制御部133から制御信号B、Cが出力されないように両制御信号を出力停止にしておく。また、発振器111からの搬送波の出力も停止させる。次に、ステップS7でレーダを動作させる。このとき、制御部133から制御信号Aのみが出力されて制御線aを流れる。また、発振器111からは搬送波が出力されない。このようなレーダ動作により、ディジタル信号処理部132には第2バックグランド信号のノイズ信号αが入力される。ステップS8では、ノイズ信号αがディジタル信号処理部132で信号処理され、ステップS9で記憶部134に保存されているノイズ信号(β+γ+δ)に加算されて保存される。
【0071】
上記の2回のレーダ動作により、ノイズ信号(β+γ+δ)にノイズ信号αが加算されて全ての不要波を合せたノイズ信号(α+β+γ+δ)が算出される。記憶部134には、干渉ノイズ信号α、β、γ、及びセルフミキシングノイズδを合成したノイズ信号のレプリカ信号(α+β+γ+δ)が保存される。
【0072】
一方、ステップS1でパルスレーダ装置100が既に使用中と判定されたときは、ステップS10でレーダを動作させる。このとき、制御部133から制御信号A、B、Cが出力されてそれぞれ制御線a、b、cを流れる。また、発振器111からは搬送波が出力されている。レーダ動作により高周波制御部110で送信信号が生成され、これが電波として送信アンテナ101から放射される。そして、対象物Tで反射された反射波が受信アンテナ102で受信される。受信アンテナ102で受信された受信信号は、高周波受信部120でベースバンド信号にダウンコンバートされ、コネクタ105を介してA/D変換部131に伝送される。
【0073】
A/D変換部131に入力されたベースバンド信号は、ここでディジタル信号に変換された後、ディジタル信号処理部132に伝送される。ディジタル信号処理部132に伝送されたディジタル信号には、コネクタ105等で混入したノイズ信号(α+β+γ+δ)が含まれている。ステップS11では、受信信号から得られたディジタル信号をディジタル信号処理部132で処理する。これにより、信号10に干渉ノイズ信号11及びセルフミキシングノイズ12が混入した図3に示すような信号が得られる。
【0074】
ステップS12で記憶部134からレプリカ信号(α+β+γ+δ)を読み出し、ステップS13においてディジタル信号処理部132で処理された信号からレプリカ信号(α+β+γ+δ)を減算する。これにより、図2に示すような信号10が得られる。この信号10を基に、ステップS14で対象物Tまでの距離L及び相対速度を算出する。
【0075】
なお、本実施形態では、ディジタル信号処理部132の処理で相対速度を算出するために、入力信号に対して複素信号処理(FFT処理)を行って対象物のドップラー成分を算出している。上記説明のパルスレーダ装置100内で生じるノイズ信号はいずれも定常的なノイズであることから、ノイズ信号α、β、γ、δにはいずれもドップラー成分が含まれておらず、相対速度0に相当する0[Hz]成分のみである。
【0076】
これより、ステップS4及びS8におけるディジタル信号処理部132の処理により得られるノイズ信号データは、相対速度0に相当する0[Hz]成分のノイズ信号のみであり、ステップS9で記憶部134に保存されるレプリカ信号(α+β+γ+δ)のフーリエ変換データも、相対速度0に相当する0[Hz]成分のみである。従って、上記のステップS13では、A/D変換部131から入力した信号を複素信号処理して得られる0[Hz]成分に対してのみレプリカ信号(α+β+γ+δ)を減算する。
【0077】
また、対象物の相対速度を測定する必要がない場合には、ディジタル信号処理部132では上記FFT処理を行う必要はなく、各距離ゲート内に対象物の信号が検出されるかどうかだけを判断させてもよい。さらに、対象物の相対速度を測定する必要がない場合であっても、SN比改善のためにディジタル信号処理部132で上記FFT処理を行い、各距離ゲート内に対象物の信号が検出されるかどうかだけを判断させてもよい。これらの場合にも、制御部133から制御信号A、B、Cが出力された場合に得られる各距離ゲートのデータから、レプリカ信号(α+β+γ+δ)の対応する距離ゲートのデータを差し引くことによって低ノイズ信号が得られるので、これに基づいて対象物の検出を確実に行うことができる。
【0078】
図8に示す流れ図では、パルスレーダ装置100の使用開始時(電源投入時)にレプリカ信号(α+β+γ+δ)を作成しているが、これに限定されず、パルスレーダ装置100の使用中に定期的にレプリカ信号(α+β+γ+δ)を作成させるようにしてもよい。パルスレーダ装置100の使用中に、例えば装置内の温度が上昇してレプリカ信号がわずかながら変化する可能性がある。そのため、パルスレーダ装置100の使用中も定期的にレプリカ信号を作成し直すことで、パルスレーダ装置100のレーダ性能をさらに向上させることができる。
【0079】
上記説明のように、本発明のパルスレーダ装置によれば、ノイズ信号のレプリカ信号を事前に作成して受信信号から除去することにより、対象物の情報を高精度に検出することが可能となる。本発明のパルスレーダ装置では、動作周波数の低いベースバンド部については、低価格の低周波用の基板を用いることができ、また低周波用の基板と高周波用の基板とを、従来から用いられている汎用のコネクタを用いて接続することができる。これにより、小型で低コストなパルスレーダ装置を提供することが可能となる。
【0080】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るパルスレーダ装置の制御方法を、図9、10を用いて以下に説明する。図9、10は、本実施形態のパルスレーダ装置の制御方法により取得されるノイズ信号の一例を示す図である。本実施形態でも、レプリカ信号を2回のレーダ動作で作成するようにしているが、それぞれで出力させる制御信号が第1実施形態と異なっている。
【0081】
本実施形態では、レプリカ信号を作成するための2回のレーダ動作のうち1回は、高周波送信部110を動作させる制御信号A、Bを同時に出力させて制御線a、bに流し、相関器121を動作させる制御信号Cを出力させず、かつ発振器111からの搬送波の出力も停止させた状態でレーダを動作させる。これにより、ディジタル信号処理部132には、制御信号A、Bが信号線d、eに混入したそれぞれの干渉ノイズ信号α、βからなるノイズ信号(α+β)が入力される。ノイズ信号(α+β)がディジタル信号処理部132で信号処理されて図9に示すようなノイズ信号が得られる。図9は、ノイズ信号(α+β)の時間波形の一例を示す図である。ディジタル信号処理部132で処理して得られたノイズ信号(α+β)は、第2バックグランド信号として記憶部134に保存される。
【0082】
また、2回のレーダ動作のうち別の1回は、制御信号A、Bを出力させず、制御信号Cを出力させて制御線cに流し、かつ発振器111から搬送波を出力させている状態でレーダを動作させる。これにより、ディジタル信号処理部132には、制御信号Cが信号線d、eに混入した干渉ノイズ信号γと、セルフミキシングノイズδを合成したノイズ信号(γ+δ)が入力される。ノイズ信号(γ+δ)がディジタル信号処理部132で信号処理されて図10に示すようなノイズ信号が得られる。図10は、ノイズ信号(γ+δ)の時間波形の一例を示す図である。ディジタル信号処理部132で処理して得られたノイズ信号(γ+δ)を第1バックグランドとし、これを記憶部134に保存されているノイズ信号(α+β)に加算して保存する。
【0083】
ところで、前記発振器が止められない場合、レプリカ信号を作成するための2回のレーダ動作のうちの1回は、高周波送信部110に出力する2つの制御信号A、Bを同時に出力させており、このときは制御信号Cを出力させないようにしている。これにより、高周波送信部110で送信信号が生成され、これが送信アンテナ101から電波として放射される。電波が放射されて、探知距離内に対象物があった場合、これが受信アンテナ102で受信されてディジタル信号処理部132に出力されるため、受信信号とノイズ信号とが加算され、ノイズ信号だけを取得することができなくなる。
【0084】
しかし、探知距離内に対象物がない場合には、受信信号の強度が低くなるため特に問題とはならない。また、対象物がある場合でも、制御信号Cが出力されず相関器121が動作しないことから、ディジタル信号処理部132に出力されるディジタル信号は大幅に減衰された強度の極めて低い信号となっている。本実施形態で作成されるレプリカ信号は、電波を放射させないで作成する場合に比べて精度がやや低下するものの、対象物情報の精度を高めるのに十分なレプリカ信号を取得することができる。これに加えて、高周波送信部110への制御信号A、Bの出力を、対象物情報の検知の場合と同様の制御方法で行うことができ、さらにレプリカ信号作成時の制御を容易にすることができる。
【0085】
上記の2回のレーダ動作で、第2バックグランドのノイズ信号(α+β)と第1バックグランドのノイズ信号(γ+δ)とを加算することで、次式のような全ての不要波を合せたノイズ信号が算出される。
(α+β)+(γ+δ)= α+β+γ+δ
上記のように、記憶部134には干渉ノイズ信号α、β、γ、及びセルフミキシングノイズδを合成したノイズ信号のレプリカ信号(α+β+γ+δ)が保存される。レプリカ信号(α+β+γ+δ)の時間波形は、図9の時間波形と図10の時間波形とを加算することで、図7に例示するようなものが得られる。
【0086】
以下では、図11に示す流れ図を用いて不要波のレプリカ信号を事前に作成し、これを用いて補正する方法を説明する。図8は、本実施形態のパルスレーダ装置の制御方法を説明するためのす流れ図である。以下では、主に第1実施形態と異なる処理について説明する。
【0087】
ステップS1でパルスレーダ装置100の使用開始と判定されたときは、ステップS22で制御部133から制御信号Cが出力されないように出力停止にしておき、発振器111からの搬送波の出力も停止させておく。これにより、ステップS24では、ノイズ信号(α+β)がディジタル信号処理部132で信号処理され、ステップS25で記憶部134に保存される。次のステップS26では、制御部133から制御信号A、Bが出力されないように出力停止にしておく。また、発振器111からは搬送波を出力させる。これにより、ステップS28では、ノイズ信号(γ+δ)がディジタル信号処理部132で信号処理され、ステップS29で記憶部134に保存される。
【0088】
上記の2回のレーダ動作により、ノイズ信号(α+β)にノイズ信号(γ+δ)が加算されて全ての不要波を合せたノイズ信号のレプリカ信号(α+β+γ+δ)が記憶部134に保存される。上記のように、本実施形態でも2回のレーダ動作でレプリカ信号を作成することができる。
【0089】
なお、上記実施形態のパルスレーダ装置100では、送受信アンテナとも1つずつとしているが、これに限定されるものではない。例えば、位相モノパルス方式で位相角を測定するパルスレーダ装置では、受信アンテナを2つ備える必要があるが、このようなパルスレーダ装置においても同様にしてノイズ信号のレプリカ信号を作成し、これを受信信号から除去することができる。
【0090】
上記実施形態のパルスレーダ装置及びその制御方法では、バックグラウンド信号を取得するときに発振器から搬送波が出力される場合と搬送波が出力されない場合がある。このうち、発振器から搬送波が出力される場合には、外部に対象物(反射物)があるとその反射信号を受信してしまうためレプリカ信号に誤差が生じるが、その誤差は小さく対象物情報の検出に特に問題となることはない。
【0091】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るパルスレーダ装置及びその制御方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるパルスレーダ装置及びその制御方法の細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
100、200 パルスレーダ装置
101 送信アンテナ
102、210 受信アンテナ
103 高周波用基板
104 低周波用基板
105 コネクタ
110 高周波送信部
111 発振器
112 第1ゲート部
113 第2ゲート部
120 高周波受信部
121 相関器
122 IQミキサ
123 第1ミキサ
124 第2ミキサ
125 移相器
130 ベースバンド部
131 A/D変換部
132 ディジタル信号処理部
133 制御部
134 記憶部
211 第1アンテナ
212 第2アンテナ
213 ハイブリッド回路
214 切替器




【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の搬送波を生成する発振器を有し、前記搬送波を2以上の送信用制御信号に従ってパルス状に切出し、前記2以上の送信用制御信号のすべてが出力されたときに送信信号を生成する高周波送信部と、
前記高周波送信部から前記送信信号を入力して電波として空間に放射する送信アンテナと、
前記電波が対象物で反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナから受信信号を入力して受信用制御信号に従って前記送信信号との相関をとってベースバンド信号に変換する高周波受信部と、
少なくとも前記ベースバンド信号を入力してディジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部から前記ディジタル信号を入力して前記対象物までの距離及び/または前記対象物の相対速度及び/または前記対象物の方位角を算出するディジタル信号処理部と、前記送信用制御信号を前記高周波送信部に出力するとともに前記受信用制御信号を前記高周波受信部に出力する制御部と、を有するベースバンド部と、を備え、
前記ディジタル信号処理部は、
前記制御部から前記2以上の送信用制御信号の一部または全部が出力されずそれ以外の前記送信用制御信号及び前記受信用制御信号が出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を第1のバックグランド信号として取得し、前記制御部から前記一部または全部の送信用制御信号のみが出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を第2のバックグランド信号として取得し、前記第1のバックグランド信号と前記第2のバックグランド信号とを加算することによりレプリカ信号を算出し、
前記制御部から前記2以上の送信用制御信号の全部及び前記受信用制御信号が出力されかつ前記発振器からの搬送波の出力が行われているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号から前記レプリカ信号を減算して低ノイズ信号を算出し、
前記低ノイズ信号に基づいて前記対象物までの距離及び/または前記対象物の相対速度及び/または前記対象物の方位角を算出する
ことを特徴するパルスレーダ装置。
【請求項2】
前記第1バックグラウンド信号を取得するときは前記発振器からの搬送波を出力させ、前記第2バックグラウンド信号を取得するときは前記発振器からの搬送波の出力を停止させている
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスレーダ装置。
【請求項3】
前記第1バックグラウンド信号を取得するとき及び前記第2バックグラウンド信号を取得するときとも、前記発振器からの搬送波を出力させている
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスレーダ装置。
【請求項4】
前記ディジタル信号処理部は、前記A/D変換部から入力したディジタル信号をフーリエ変換処理するものであり、
前記制御部から前記2以上の送信用制御信号の全部及び前記受信用制御信号が出力されかつ前記発振器からの搬送波の出力が行われているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分から前記レプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより前記低ノイズ信号を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパルスレーダ装置。
【請求項5】
少なくとも前記ベースバンド部が第1の基板上に形成されて前記高周波送信部及び前記高周波受信部が前記第1の基板とは別の基板上に形成されており、
前記ベースバンド信号を伝達する信号線と前記2以上の送信用制御信号及び前記受信用制御信号を伝達するそれぞれの制御線とを一括して通電状態に結線する多ピンコネクタの結線部が前記第1の基板と前記別の基板との間に設けられ、前記制御線から前記信号線への漏れ信号のレベルが前記A/D変換部のダイナミックレンジ内に入るように前記結線部内で前記制御線の結線と前記信号線の結線とが隔離して配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパルスレーダ装置。
【請求項6】
前記高周波送信部が、前記搬送波を第1制御信号に従ってパルス状に切出す第1ゲート部と、前記第1ゲート部で切出された信号を第2制御信号に従ってさらに切出して前記送信信号を生成する第2ゲート部と、をさらに有し、
前記高周波受信部が、前記受信アンテナから前記受信信号を入力して第3制御信号に従って前記送信信号との相関をとる相関部と、前記相関部からの出力信号をベースバンドにダウンコンバートして前記ベースバンド信号を出力するダウンコンバート部と、を有し、
前記制御部が、前記第1ゲート部、前記第2ゲート部、及び前記相関部にそれぞれ前記第1制御信号、前記第2制御信号、及び前記第3制御信号を出力してそれぞれの電源をオン/オフ制御し、
前記ディジタル信号処理部は、
前記2以上の送信用制御信号を前記第1制御信号と前記第2制御信号の2個とし、前記受信用制御信号を前記第3制御信号として前記レプリカ信号を算出する
ことを特徴する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパルスレーダ装置。
【請求項7】
前記ディジタル信号処理部は、
前記制御部から前記第1制御信号と前記第2制御信号のいずれか一方が出力されず他方および前記第3制御信号が出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を前記第1のバックグランド信号とし、前記制御部から前記第1制御信号と前記第2制御信号のいずれか一方のみが出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を前記第2のバックグランド信号として前記レプリカ信号を算出する
ことを特徴する請求項6に記載のパルスレーダ装置。
【請求項8】
前記ディジタル信号処理部は、
前記制御部から前記第1制御信号と前記第2制御信号の両方が出力されず前記第3制御信号が出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を前記第1のバックグランド信号とし、前記制御部から前記第1制御信号と前記第2制御信号の両方のみが出力されているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号を前記第2のバックグランド信号として前記レプリカ信号を算出する
ことを特徴する請求項6に記載のパルスレーダ装置。
【請求項9】
前記第1バックグラウンド信号を取得するときは前記発振器からの搬送波を出力させ、前記第2バックグラウンド信号を取得するときは前記発振器からの搬送波の出力を停止させている
ことを特徴とする請求項7または8に記載のパルスレーダ装置。
【請求項10】
前記第1バックグラウンド信号を取得するとき及び前記第2バックグラウンド信号を取得するときとも、前記発振器からの搬送波を出力させている
ことを特徴とする請求項7または8に記載のパルスレーダ装置。
【請求項11】
前記ディジタル信号処理部は、前記制御部から前記第1制御信号、前記第2制御信号及び前記第3制御信号が出力されかつ前記発振器からの搬送波の出力が行われているときに前記A/D変換部から出力されるディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分から前記レプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより前記低ノイズ信号を算出する
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のパルスレーダ装置。
【請求項12】
前記ベースバンド部は、該ベースバンド部の動作周波数帯に対応する低周波用基板上に形成され、
前記高周波送信部及び前記高周波受信部は、該高周波送信部及び高周波受信部の動作周波数帯に対応する高周波用基板上に形成され、
前記ベースバンド信号を伝達する信号線と前記第1制御信号、前記第2制御信号、及び 前記第3制御信号を伝達するそれぞれ第1制御線、第2制御線、及び第3制御線とを一括して通電状態に結線する多ピンのコネクタの結線部が前記低周波用基板と前記高周波用基板との間に設けられ、前記制御線から前記信号線への漏れ信号のレベルが前記A/D変換部のダイナミックレンジ内に入るように前記結線部内で前記制御線の結線と前記信号線の結線とが隔離して配置されている
ことを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載のパルスレーダ装置。
【請求項13】
所定周波数の搬送波を生成する搬送波生成ステップと、
前記搬送波を2以上の送信用制御信号に従ってパルス状に切出して送信信号を生成する信号切出しステップと、
前記送信信号を電波として空間に放射する送信ステップと、
前記電波が対象物で反射された反射波を受信する受信ステップと、
受信用制御信号に従って前記受信ステップで受信した受信信号と前記送信信号との相関をとる相関ステップと、
前記相関ステップの出力信号をベースバンドにダウンコンバートしてベースバンド信号を出力するダウンコンバートステップと、
少なくとも、前記ベースバンド信号を入力してディジタル信号に変換するA/D変換ステップと、
前記ディジタル信号を入力して前記対象物までの距離及び/または前記対象物の相対速度及び/または前記対象物の方位角を算出するディジタル信号処理ステップと、
を有し、
前記ディジタル信号処理ステップでは、
前記信号切出しステップで前記2以上の記送信用制御信号の一部または全部を出力せずそれ以外の前記送信用制御信号を出力しかつ前記相関ステップで前記受信用制御信号を出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を第1のバックグランド信号として取得し、前記信号切出しステップで前記一部または全部の送信用制御信号のみを出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を第2のバックグランド信号として取得し、前記第1のバックグランド信号と前記第2のバックグランド信号とを加算することによりレプリカ信号を算出し、前記信号切出しステップで前記2以上の送信用制御信号の全部を出力しかつ前記相関ステップで前記受信用制御信号を出力しかつ前記搬送波生成ステップを行ったときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号から前記レプリカ信号を減算して低ノイズ信号を算出し、該低ノイズ信号に基づいて前記対象物までの距離及び/または前記対象物の相対速度及び/または前記対象物の方位角を算出する
ことを特徴するパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項14】
前記第1バックグラウンド信号を取得するときは前記搬送波生成ステップを行い、前記第2バックグラウンド信号を取得するときは前記搬送波生成ステップを行わない
ことを特徴とする請求項13に記載のパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項15】
前記第1バックグラウンド信号を取得するとき及び前記第2バックグラウンド信号を取得するときとも、前記搬送波生成ステップを行う
ことを特徴とする請求項13に記載のパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項16】
前記ディジタル信号処理ステップでは、前記A/D変換ステップで変換されたディジタル信号をフーリエ変換処理し、
前記信号切出しステップで前記2以上の送信用制御信号の全部を出力しかつ前記相関ステップで前記受信用制御信号を出力しかつ前記搬送波生成ステップを行ったときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分から前記レプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより前記低ノイズ信号を算出する
ことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載のパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項17】
前記信号切出しステップは、前記搬送波を第1制御信号に従ってパルス状に切出す第1切出しステップと、前記第1切出しステップで切出した信号を第2制御信号に従ってさらに切出して送信信号を生成する第2切出しステップと、を有し、
前記相関ステップでは、第3制御信号に従って前記受信信号と前記送信信号との相関をとり、
前記ディジタル信号処理ステップでは、
前記2以上の送信用制御信号を前記第1制御信号と前記第2制御信号の2個とし、前記受信用制御信号を前記第3制御信号として前記レプリカ信号を算出する
ことを特徴する請求項13乃至16のいずれか1項に記載のパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項18】
前記ディジタル信号処理ステップでは、
前記信号切出しステップで前記第1制御信号と前記第2制御信号のいずれか一方を出力せず他方を出力しかつ前記相関ステップで前記第3制御信号を出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を前記第1のバックグランド信号とし、前記信号切出しステップで前記第1制御信号と前記第2制御信号のいずれか一方のみを出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を前記第2のバックグランド信号として前記レプリカ信号を算出する
ことを特徴する請求項17に記載のパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項19】
前記ディジタル信号処理ステップでは、
前記信号切出しステップで前記第1制御信号と前記第2制御信号の両方を出力せずかつ前記相関ステップで前記第3制御信号を出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を前記第1のバックグランド信号とし、前記信号切出しステップで前記第1制御信号と前記第2制御信号の両方のみを出力したときに前記A/D変換ステップで得られるディジタル信号を前記第2のバックグランド信号として前記レプリカ信号を算出する
ことを特徴する請求項11または12に記載のパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項20】
前記第1バックグラウンド信号を取得するときは前記搬送波生成ステップを行い、前記第2バックグラウンド信号を取得するときは前記搬送波生成ステップを行わない
ことを特徴とする請求項18または19に記載のパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項21】
前記第1バックグラウンド信号を取得するとき及び前記第2バックグラウンド信号を取得するときとも、前記搬送波生成ステップを行う
ことを特徴とする請求項18または19に記載のパルスレーダ装置の制御方法。
【請求項22】
前記第1切出しステップ、前記第2切出しステップ及び前記相関ステップを実行したときのディジタル信号の0Hzに相当するフーリエ成分から前記レプリカ信号の0Hzに相当するフーリエ成分を減算することにより前記低ノイズ信号を算出する
ことを特徴とする請求項17乃至121のいずれか1項に記載のパルスレーダ装置の制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−215457(P2012−215457A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80575(P2011−80575)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】