説明

パルス管型蓄熱機関

【課題】 効率が高く、構成が簡素で、且つ圧力振動発生機から被冷却体へ伝達される振動を抑制できるパルス管型蓄熱機関を提供すること。
【解決手段】 第1シリンダ12と第1ピストン13とで形成した第1作動室14と、第2シリンダ22と第2ピストン23とで形成した第2作動室24とを、第1熱交換器40、再生熱交換器51、第2熱熱交換器52、パルス管53を介しこの順に連通してパルス管型蓄熱機関1を構成する。第1作動室14と第2作動室24の変動容積の位相は180度異なると共に、パルス管型蓄熱機関1は第1作動室14と第1熱交換器40とを連通する第1チューブ60と、第2作動室24とパルス管53とを連通する第2チューブ70のうち少なくともいずれか一方のチューブを備え、備えたチューブの少なくとも一つはイナータンスチューブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス管型蓄熱機関に関するもので、詳しくは再生熱交換器(蓄冷器、蓄熱器)と、パルス管を用いたパルス管型冷凍機、パルス管型ヒートポンプあるいはパルス管型原動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のパルス管型蓄熱機関として、第1圧縮作動空間を形成する大径部と第2圧縮作動空間を形成する小径部を備える2段凸型形状のシリンダと、大径部と小径部に収納される第1段部と第2段部からなる2段ステップ形状のピストンを備えた振動発生器と、第2圧縮作動空間へ連通した常温熱交換器、蓄冷器、コールドヘッド、パルス管をこの順に連結した冷凍発生部と、イナータンスチューブとバッファ空間と第1圧縮作動空間を備えた位相調節手段と、により構成され、第1圧縮作動空間はチューブを介しバッファ空間へ連通され、バッファ空間はイナータンスチューブを介しパルス管へ連通され、そして第2圧縮作動空間は接続チューブを介し常温熱交換器へ連通されるパルス管型蓄熱機関が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。そしてシャフトを介しピストンに連結した駆動源より、パルス管型蓄熱機関を冷凍機あるいはヒートポンプとして使用する場合は、ピストンを往復動して流体に圧力振動を付与し冷凍を発生し、コールドヘッドにおいて被冷却体を冷却する。パルス管型蓄熱機関を原動機として使用する場合は、コールドヘッドを燃焼ガスで加熱して作動流体に圧力振動を発生させピストンから駆動源を介して動力を外部に取出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−40647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1によれば、シリンダは大径部と小径部を備える2段凸型形状をなし、ピストンは大径部と小径部に収納される第1段部と第2段部を備える2段凸型形状なしている。第1圧縮作動空間を形成する大径部のシリンダ及び第1段部のピストンは、小径部のシリンダ及び第2段部のピストンを備えている。従って、ストレート形状のシリンダ及びピストンに比べて、大径部のシリンダ及び第1段部のピストンの径が増大する。また、シリンダおよびピストンの接触を防止するため、加工精度の観点からシリンダ及びピストンのクリアランスを増大しなければならない。第1圧縮作動空間の作動流体のシールはシリンダ内周面とピストン外周面間との微小間隙によるクリアランスシールによって行われる。この場合は、クリアランスからの作動ガスの漏れ量は間隙幅の3乗とシール長さに比例する。従って、シリンダ及びピストンの径の増大およびシリンダ内周面とピストン外周面との間隙幅の増大により、第1圧縮作動空間内の作動ガスの漏れ量が大幅に増大する。結果、パルス管型蓄熱機関を冷凍機として使用する場合は、冷凍能力及び効率が低下する。また、原動機として使用する場合は、出力される動力及び効率が低下する。
【0005】
また、クリアランスシールに代わって、ピストンリングにより作動流体をシールできるが、シリンダ及びピストンの増大によりシール長さが増大する。シール長さの増大は、第1圧縮作動空間内の作動ガスの漏れ量の増大と、摺動摩擦抵抗の増大による消費電力の増大と、ピストンリングの摩耗粉によるガス汚染とを引起し、冷凍機の場合は、冷凍能力及び効率が低下する問題がある。原動機の場合も、第1圧縮作動空間内の作動ガスの漏れ量の増大と、摺動摩擦抵抗の増大による消費電力の増大とにより、取出される動力及び効率が低下する。
【0006】
第2圧縮作動空間は接続チューブを介し、順次、常温熱交換器と、蓄冷器と、コールドヘッドへ連通されている。接続チューブは、圧力損失を抑制するため流路径が比較的大きく長さが短く設定されている。このため、ピストンの往復動によって生じる振動は、順次接続チューブと、常温熱交換器と、蓄冷器とを経由してコールドヘッドへ伝達され、コールドヘッドに固定した被冷却体はこの振動の影響を受ける問題がある。
【0007】
また、シリンダ及びピストンは2段凸型形状であるので、構成が複雑になる問題がある。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、効率が高く、構成が簡素で、且つ圧力振動発生機から被冷却体へ伝達される振動を抑制できるパルス管型蓄熱機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1シリンダと第1シリンダに往復動可能に挿設した第1ピストンとにより形成される第1作動室と、第2シリンダと第2シリンダに往復動可能に挿設した第2ピストン、又は第1ピストンを介して第1作動室の反対側に第1シリンダと第1ピストンとにより形成される第2作動室と、を備える圧力振動発生機と、第1作動室に連通し、第1作動室から流出する作動ガスと第1熱交換対象体とを熱交換させる第1熱交換器と、第2作動室へ一端が連通するパルス管と、パルス管の他端から流出入する作動ガスと第2熱交換対象体とを熱交換させる第2熱交換器と、第1熱交換器と第2熱交換器の間を流動する作動ガスと熱交換する再生熱交換器と、を備え、第1作動室の変動容積と第2作動室の変動容積とは、位相が180度異なり、第1作動室と第1熱交換器との間と、第1熱交換器と再生熱交換器との間と、第2作動室とパルス管との間のうち少なくとも1つの間にチューブが設けられる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、チューブはイナータンスチューブであり、イナータンスチューブの両端近傍には作動ガスによる圧力波の腹部分が生じる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、イナータンスチューブは1個以上配備され、イナータンスチューブが1個配備される場合は、イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる作動ガスによる圧力波の波長数は、1波長数の自然数倍であり、イナータンスチューブが複数個配備される場合は、各イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる作動ガスによる圧力波の波長数を足し合わせた値は、1波長数の自然数倍である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、イナータンスチューブが1個配備される場合は、イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる1波長数の圧力波が生じられ、イナータンスチューブが2個配備される場合は、各イナータンスチューブの両端近傍の間には、各々作動ガスによる1/2波長の圧力波が生じる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、イナータンスチューブは1個以上配備され、イナータンスチューブが1個配備される場合は、イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる作動ガスによる圧力波の波長数は、1/2波長の奇数倍であり、イナータンスチューブが複数個配備される場合は、各イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる作動ガスによる圧力波の波長数を足し合わせた値は、1/2波長の3以上の奇数倍である。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、イナータンスチューブは1個配備され、イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる1/2波長の圧力波が生じる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、イナータンスチューブの一端、又は、途中のうち少なくとも一方にバッファが設けられる。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、第1ピストンと第2ピストン、又は第1ピストンは、リニア駆動手段の可動子に連結される。
【0017】
また、請求項9に記載の発明は、第2作動室とパルス管との間と、第1作動室と第1熱交換器との間と、第1熱交換器と再生熱交換器との間の内少なくともいずれか1つの間に位相調整要素が設けられ、位相調整要素は、シリンダと、シリンダに自在に往復動する固体ピストンと、固体ピストンに往復動方向のバネ荷重を付勢する弾性部材とを備える。
【0018】
また、請求項10に記載の発明は、パルス管の端部と、第1作動室と、第2作動室と、第1熱交換器と、再生熱交換器の端部と、第2熱交換器と、チューブとのうちいずれか一つに位相調整手段のイナータンスチューブの一端が連通され、位相調整手段は、イナータンスチューブの他端へ連通するバッファを備え、チューブは、コネクティングチューブである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明では、パルス管型蓄熱機関は、第1作動室と第1熱交換器との間と、第1熱交換器と再生熱交換器との間と、及び第2作動室とパルス管との間のうち少なくとも1つの間にチューブが設けられている。第1作動室と第2作動室と変動容積の位相差は180度であり、この状態の下で、例えば、第2作動室とパルス管との間にチューブが設けられる場合は、チューブの長さ、流路径と、第2作動室の掃気容積と、冷凍機の運転周波数とを適正に調整する。これにより、第1作動室は圧縮仕事をなし、パルス管内に形成されるガスピストンが適正な振幅と位相を持って往復動する。結果、第2熱交換器側のパルス管端部側においてなされる膨張仕事は増大すると共に、パルス管型蓄熱機関の効率が向上する。
【0020】
また、第1作動室及び第2作動室は、それぞれ第1シリンダと第1ピストンの一方の端面及び第2シリンダと第2ピストンの一方の端面とにより形成される場合と、第1シリンダと第1ピストンの両方の端面とにより形成される場合とがある。従来技術のシリンダ及びピストンは2段凸型状のであるが、いずれの場合においても、本発明の第1、2シリンダと第1、2ピストンは、それぞれストレート形状で良い。従って、従来技術に比べて、第1、2シリンダ及び第1、2ピストンの径は減少するので、シリンダとピストンとの間隙から漏れる作動ガスの漏れ量は減少する。結果、パルス管型冷凍機と、パルス管型ヒートポンプと、及びパルス管型原動機として作動する高い効率のパルス管型蓄熱機関を提供できる。
【0021】
また、第1、2シリンダと第1、2ピストンは、それぞれストレート形状であるので、第1シリンダと第1ピストンの構成、及び第2シリンダと第2ピストンの構成が簡素になる。これに伴い、圧力振動発生機、延いてはパルス管型蓄熱機関の構成が簡素になる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明では、チューブはイナータンスチューブで、その両端近傍には作動ガスの圧力波の腹部分が生じるので、各イナータンスチューブの両端近傍の間には、作動ガスの略1波長の自然数倍、または、略1/2波長の奇数倍の圧力波が生じる。従って、各イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる圧力波の波長数を足し合わせた値は、略1波長の自然数倍、または、略1/2波長の奇数倍になる。略1波長の自然数倍は圧力波の位相差が略360度の自然数倍(1、2、・・・)、即ち略同位相であり、略1/2波長の奇数倍(1、3、・・・)は圧力波の位相差が略180度の奇数倍、即ち略180度である。また、パルス管のガスピストンとパルス管とによって第2熱交換器側に形成されるガスピストン側作動室の変動容積と、ガスピストン側作動室の圧力の位相差は適正に確保されると共に、ガスピストンの往復動の移動量も適正に確保される。そして、第1熱交換器と、再生熱交換器と、第2熱交換器の流路面積と長さを適正に設定することにより、各部位の圧力損失は小さくなり、各部位の流入口と流出口の圧力の位相差は略0度になる。以上により、第1作動室と第2作動室の圧力の位相差は、略同位相または略180度になる。
【0023】
そして、第1熱交換器を放熱器、第2熱交換器を吸熱器として作用させる。これにより、位相差が略同位相の場合には、第1作動室は圧縮仕事をなし、第2作動室は、第2熱交換器側のパルス管端部側においてなされる膨張仕事が増大するように、ガスピストンを往復動させると共に、膨張仕事をなす。結果、高い効率のパルス管型蓄熱機関が提供できる。
【0024】
同様に、第1熱交換器を放熱器、第2熱交換器を吸熱器として作用させる。これにより、位相差が略180度の場合には、第1作動室は圧縮仕事をなし、第2作動室は圧縮仕事をなす。パルス管型蓄熱機関が、例えば小型冷凍機、あるいは運転周波数が低い冷凍機では、イナータンスチューブは、チューブ内のヘリウムの慣性力の影響が減少してオリフィスのように作用し、パルス管型蓄熱機関はオリフィス型パルス管冷凍機の様に作動する。一般的に、オリフィス型パルス管冷凍機は効率が低いが、本発明のパルス管型蓄熱機関では、第2作動室でなされる圧縮仕事をイナータンスチューブに与えるので、第2熱交換器側のパルス管端部側においてなされる膨張仕事は、従来技術のオリフィス型パルス管冷凍機に比べ増大する。結果、小型な冷凍機、あるいは低速型の冷凍機の場合でもパルス管型蓄熱機関は効率が高くなる。
【0025】
また、請求項3に記載の発明では、イナータンスチューブが1個配備される場合は、イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる略1波長数の自然数倍の圧力波が生じる。イナータンスチューブが複数個配備される場合は、各イナータンスチューブの両端近傍の間には各圧力波の波長数を足し合わせた値が略1波長数の自然数倍になる圧力波が生じる。いずれの場合においても、第1熱交換器と、再生熱交換器と、第2熱交換器の流路面積と長さを適正に設定することにより、各部位の圧力損失が小さくなり、各部位の流入口と流出口の圧力の位相差は略0度になる。これにより、第1作動室と第2作動室の圧力は略同位相になる。従って、パルス管型蓄熱機関の効果は、前述の請求項2に記載した発明に関する効果の位相差が略同位相(略1波長の自然数倍)の場合と同様に、高い効率のパルス管型蓄熱機関が提供できる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明では、イナータンスチューブが1個配備される場合は、イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる略1波長数の圧力波が生じる。イナータンスチューブが2個配備される場合は、各イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる各々、略1/2波長の圧力波が生じ、各々の波長数を足し合わせた値は略1波長になる。いずれの場合においても、波長数は略1波長になるので、各イナータンスチューブの容積は複数の波長数になる場合より減少する。従って、圧力の振幅が増大するので、パルス管型蓄熱機関の冷凍量(冷凍機として機能する場合)、及び取出される動力(原動機として機能する場合)は増大する。結果、パルス管型蓄熱機関の効率がさらに向上する。
【0027】
また、請求項5に記載の発明では、イナータンスチューブが1個配備される場合は、イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる略1/2波長の奇数倍になる圧力波が生じる。イナータンスチューブが2個以上配備される場合は、各イナータンスチューブの両端近傍の間には各圧力波の波長数を足し合わせた値が略1/2波長の奇数倍になる圧力波が生る。いずれの場合においても、第1熱交換器と、再生熱交換器と、第2熱交換器の流路面積と長さを適正に設定することにより、各部位の圧力損失が小さくなり、各部位の流入口と流出口の圧力の位相差は略0度になる。これにより、第1作動室と第2作動室の圧力の位相差は略同180度になる。従って、前述の請求項2に記載した発明に関する効果と同じように、小型な冷凍機、あるいは低速型の冷凍機の場合でもパルス管型蓄熱機関は効率が高くなる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明では、イナータンスチューブは1個配備され、イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる略1/2波長の圧力波が生じている。従って、イナータンスチューブの容積は略1/2波長の奇数倍の圧力波が生じる場合と比較し、減少して圧力の振幅が増大する。結果、前述の請求項2に記載した発明に関する効果と同様に、小型な冷凍機、あるいは低速型の冷凍機の場合でも、パルス管型蓄熱機関は効率がさらに向上する。
【0029】
また、請求項7に記載の発明では、イナータンスチューブの一端、又は、途中のうち少なくとも一方にバッファが設けられている。従って、イナータンスチューブ内の作動ガスの質量とバッファの容積とが相乗し合い、イナータンスチューブの作用は強化されるので、イナータンスチューブの長さを短くできる。
【0030】
また、請求項8に記載の発明では、第1ピストンと第2ピストン、又は第1ピストンは、リニア駆動手段の可動子に連結されている。従って、圧力振動発生機の構成が簡素になり、これに伴いパルス管型蓄熱機関の構成が簡素になる。さらには、リニア駆動手段によりクランク駆動機構などに比べて、摺動に起因する機械摩擦損失が低減され、パルス管型蓄熱機関の効率が向上する。
【0031】
また、請求項9に記載の発明では、位相調整要素は、シリンダと、シリンダに自在に往復動する固体ピストンと、固体ピストンに往復動方向のバネ荷重を付勢する弾性部材とを備えている。位相調整要素の固体ピストンの往復動に基づく慣性により、固体ピストンの両端面側の圧力波は略1/2波長ずれる。例えば、位相調整要素を2個直列に設けることにより、一方の位相調整要素の端面側と他方の位相調整要素の端面側との圧力波は略1波長ずれる。従って、第1作動室と第1熱交換器との間と、第1熱交換器と再生熱交換器との間と、第2作動室とパルス管との間のうち少なくとも1つの間に設けられるチューブのうちイナータンスチューブは、位相調整要素に置き換えられる。これにより、位相調整要素はイナータンスチューブに生じる作動ガスの圧力損失が解消されるので、パルス管型蓄熱機関の効率が更に向上する。
【0032】
また、請求項10に記載の発明では、位相調整手段は、イナータンスチューブの一端へ連通するバッファを備えている。そして位相調整手段は、イナータンスチューブの両端間で略1/2波長(圧力位相差、略180度)、または略1波長(圧力位相差、略360度)の圧力波が生じるようにイナータンスチューブの流路径と長さ、及びバッファの容積とが調整されると共に、パルス管内に形成されるガスピストンの往復動の振幅と位相を適正に調整する。パルス管でなされる膨張仕事の一部(例えば、略半分)は、位相調整手段のイナータンスチューブにおいて費やされ、残り(例えば、略半分)の膨張仕事は第2作動室において第2ピストンを介在して第1ピストンの圧縮仕事の一部に費やされる。結果、高い効率のパルス管型蓄熱機関を提供できる。
【0033】
また、請求項10に記載のパルス管型蓄熱機関は、請求項1に記載の圧力振動発生機と同じ構成の下で、作動される。従って、請求項1の発明の効果に記載した同じように、第1シリンダと第1ピストンとの間隙および第2シリンダと第2ピストンとの間隙とから、それぞれ漏れる作動ガスの漏れ量は減少するので、高い効率のパルス管型蓄熱機関を提供できる。
【0034】
また、チューブはコネクティングチューブで全長が比較的短く、長尺で外径も小なイナータンスチューブは圧力振動発生機の外周側あるいは端部外側に螺旋状に巻回することにより、パルス管型蓄熱機関は小型になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図2】両端が大気に開放された開放管の共鳴状態の説明図である。
【図3】図1のパルス管型蓄熱機関の各位置における圧力の最大値と最小値を示す図である。
【図4】図1のパルス管型蓄熱機関の各位置における圧力の最大値と最小値を示す図である。
【図5】図1のパルス管型蓄熱機関の各位置における圧力の最大値と最小値を示す図である。
【図6】図1のパルス管型蓄熱機関の各位置における圧力の最大値と最小値を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図8】図7のパルス管型蓄熱機関の各位置における圧力の最大値と最小値を示す図である。
【図9】本発明の実施例3に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図10】本発明の実施例4に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図11】本発明の実施例5に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図12】本発明の実施例6に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図13】本発明の実施例7に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図14】図10のパルス管型蓄熱機関のシミュレーション結果の各位置における圧力の最大値と最小値を示す図である。
【図15】図10のパルス管型蓄熱機関のシミュレーション結果の圧力波形図である。
【図16】図10のパルス管型蓄熱機関のシミュレーション結果のPV線図である。
【図17】本発明の実施例8に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図18】本発明の実施例9に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図19】本発明の実施例10に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【図20】本発明の実施例11に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。パルス管型蓄熱機関は、仕事を投入して冷凍を発生する冷凍機の機能と、熱エネルギーを投入して動力を取出す原動機の機能を備えるが、以下において冷凍機を主体に説明する。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明の実施例1に係るパルス管型蓄熱機関の説明図である。図1に示すように、パルス管型蓄熱機関1は、圧力振動発生機10と、第1熱交換器40と、熱交換作動部50と、第1チューブ60(チューブ)と、第2チューブ70(チューブ)とから構成され、作動ガスとしてヘリウムあるいは窒素などが充填される。
【0038】
圧力振動発生機10は、駆動部30と、第1ガス作動部11と、第2ガス作動部21とから構成される。駆動部30は、ケース31と、ケース31の内周面に固定したリニア駆動手段32の固定子33と、リニア駆動手段32の可動子34と、可動子34を往復動可能に支持する一対の弾性支持部材35,35とから構成される。固定子33は磁性材からなるヨーク33aと、コイル33bとを備え、可動子34は、鉄心34aと、鉄心34aに固定される永久磁石34bと、鉄心34aの中心部分に貫通固定されるロッド34cとを備える。
【0039】
ロッド34cの両端は、第1ピストン13と第2ピストン23が連結される共に、ロッド34cの端部と鉄心34aの端部との間には一対の弾性支持部材35,35の内周側が固定される。一対の弾性支持部材35、35の外周側はケース31の内周面に固定される。弾性支持部材35は、薄いバネ材の円板で、内周から外周側に向かって渦巻き状に放射するスリッド(図示せず)が複数個設けられる。これにより、一対の弾性支持部材35、35は、可動子34と、第1ピストン13と、第2ピストン23を軸方向に往復動可能に支持する。そして、固定子33と可動子34とによりリニア駆動手段32は構成され、パルス管型蓄熱機関1が冷凍機として作動する場合は、リニア駆動手段32はリニアモータとして機能し、原動機として作動する場合は、リニア発電機として機能する。
【0040】
尚、図1の第1ピストン13と第2ピストン23は、駆動手段32により直接往復動される。しかし、これに限定されることなく、第1作動室14と第2作動室24の変動容積の位相が180度異なれば良く、例えばクランク機構による駆動手段など、どのような駆動手段でも良い。しかし、構成の簡素さ、摺動に起因する機械摩擦損失の観点からリニア駆動手段が好ましい。
【0041】
第1ガス作動部11は、ケース31に開口端を気密固定した第1シリンダ12に第1ピストン13を微小間隙を持って往復動可能に挿設し、第1ピストン13と第1シリンダ12とでシリンダヘッド12a側に第1作動室14を形成する。上記の微小間隙は、ヘリウムの漏れをシールするクリアランスシールの機能を果たす。また、シリンダヘッド12aは中央部に円錐台形状の流路を有する円錐継手12bを備え、円錐継手12bは往復流動するヘリウムの拡大流の損失と縮小流の損失を抑制する。
【0042】
第2ガス作動部21は、ケース31に開口端を気密固定した第2シリンダ22に第2ピストン23を微小間隙を持って往復動可能に挿設し、第2ピストン23と第2シリンダ22とでシリンダヘッド22a側に第2作動室24を形成する。上記の微小間隙は、ヘリウムの漏れをシールするクリアランスシールの機能を果たす。また、シリンダヘッド22aは中央部に円錐台形状の流路を有する円錐継手22bを備え、円錐継手22bは円錐継手12bと同じ作用をする。
【0043】
第1熱交換器40は、例えば2枚の板部材の間に複数本の細管を溶接したシェルアンドチューブ型熱交換器(図示せず)の形態をとり、細管内側のヘリウムと細管外側を流れる例えば冷却水8a(第1熱交換対象体)と熱交換する。そして、第1熱交換器40は、図1における左端中心部分に円錐台形状の流路を有する円錐継手40aが設けられ、円錐継手40aは円錐継手12bと同じ作用をする。
【0044】
尚、図1のパルス管型蓄熱機関1の第1熱交換器40は、再生熱交換器51の図示左端に設けられているが、第1作動室14側に設けても良い。この場合、シリンダ12のシリンダヘッド12aが省略され、これに代わって第1熱交換器40の図示右端がシリンダ12に気密固定される。そして第1作動室14は、順次、第1熱交換器40と、第1チューブ60を介して再生熱交換器51へ連通される。また、第1熱交換器40は、第1チューブ60の途中に設けても良い。
【0045】
熱交換作動部50は、再生熱交換器51に順次、第2熱交換器52と、パルス管53とを連通する。再生熱交換器51は、ステンレス管の容器にステンレス金網等の蓄冷材51a(冷凍機に場合は蓄冷材、原動機の場合は蓄熱材51a)が複数枚積層される。パルス管型蓄熱機関1が冷凍機の場合あるいはヒートポンプの場合には、再生熱交換器51は蓄冷器と称し、パルス管型蓄熱機関1が原動機の場合には蓄熱器と称するが、以下の説明では、冷凍機、原動機いずれの場合も再生熱交換器と称する。
【0046】
第2熱交換器52は、冷凍機の場合には、例えば銅のブロックに複数個の孔を開口してブロックの外周面に被冷却体9a(第2熱交換対象体)を固定する。原動機の場合は、例えばシェルアンドチューブ型熱交換器(図示せず)の形態をとり、細管外側(図示せず)を例えば燃焼ガス(第2熱交換対象体、図示せず)で加熱する。
【0047】
パルス管53は、肉厚の薄いステンレスの管53cと、管53cの常温端53d(図示右端)の内周面に挿着したディストリビュータ54と、常温端53dに気密固定した円錐継手53aから構成される。パルス管53内には、ヘリウムからなる二点鎖線で示すガスピストン53bが形成され、ガスピストン53bはパルス管53内を往復動すると共に、質量が一定で作動ガス圧によって体積が変化する。そしてパルス管53と、ガスピストン53bと、第2熱交換器52とで包囲してガスピストン側作動室55が形成される。ディストリビュータ54は往復流動するヘリウムの流路断面における流れを均一にし、円錐継手53aは往復流動するヘリウムの拡大流の損失と、縮小流の損失を抑制する。そしてパルス管53は、第2チューブ70を介し第2作動室24へ連通される。
【0048】
第2チューブ70は、イナータンスチューブ70aと、コネクティングチューブ70bのいずれか一方の形態をとる。同様に、第1チューブ60は、イナータンスチューブ60aと、コネクティングチューブ60bのいずれか一方の形態をとる。
【0049】
イナータンスチューブ60a、70aは、全長が長く、且つ全長に比べて流路内径が小さく、質量による慣性と、チューブの流路抵抗による粘性の特性を有し、チューブ両端の開放口近傍に作動ガスによる圧力波の腹が生じる。即ち、イナータンスチューブ両端近傍の間に略1/2波長の自然数倍(1、2、・・)の作動ガスによる圧力波が生じる。これにより、両端近傍の圧力波の位相差は、略180度の自然数倍(1、2、・・)になる。
【0050】
コネクティングチューブ60b,70bは、チューブ全長が比較的短く、且つ流路径も比較的大きく、流路抵抗を有するが圧力損失は無視できる程度小さく、そしてチューブ両端の開放口に於ける圧力は略同位相である。
【0051】
位相調整手段71は、イナータンスチューブ70aと第2作動室24とにより形成され、イナータンスチューブ70aのヘリウムの質量と、イナータンスチューブ70aの流路抵抗と、第2作動室24の容積が作用し合い振動系を形成する。そして、位相調整手段71はイナータンスチューブ70aの長さ、流路径、第2作動室24の掃気容積、およびパルス管型蓄熱機関1の運転周波数とが適正値に設定される。これにより位相調整手段71は、パルス管53の圧力とガスピストン側作動室55の変動容積との位相が適正になるように調整すると共に、ガスピストンの往復動変位の振幅を適正に調整する。
【0052】
パルス管型蓄熱機関1は、第1チューブ60と第2チューブ70のうち少なくともいずれか一方のチューブを備えると共に、少なくとイナータンスチューブを一つ備える。即ち、パルス管型蓄熱機関1がいずれか一方のチューブを備える場合は、そのチューブはイナータンスチューブであり、両方のチューブを備える場合は、少なくとも一方はイナータンスチューブである。
【0053】
また、パルス管型蓄熱機関1がイナータンスチューブ70aのみ備える場合は、第1熱交換器40の両端にはそれぞれ第1シリンダ12と再生熱交換器51が接続される。イナータンスチューブ60aのみ備える場合は、パルス管53の常温端53dは第2シリンダ22に接続される。
【0054】
次に、本発明の実施例1に係るパルス管型蓄熱機関1が冷凍機として作動する場合、その作動と効果について説明する。この場合は、第1熱交換器40は放熱器、第2熱交換器52は吸熱器、リニア駆動手段32はリニアモータ、として作用させる。これにより、第1作動室14は圧縮室、第2作動室24は膨張室(後述する(ケース4)を除く)、ガスピストン側作動室55は膨張室、として機能する。そして第1熱交換器40は、第1作動室14で圧縮されたヘリウムの圧縮熱を冷却水8a(第1熱交換対象体)に放熱する。
【0055】
再生熱交換器51は、第1熱交換器40から流入するヘリウムを蓄冷材51aで冷却して低温端(再生熱交換器51の図示右端)からガスピストン側作動室55に近い温度のヘリウムを流出する。また再生熱交換器51は、既にガスピストン側作動室55において膨張し終え、再生熱交換器51の低温端から流入するヘリウムを蓄冷材51aで加熱して高温端(再生熱交換器51の図示左端)から流出する。流出されるヘリウムの温度は、第1作動室14のヘリウムの温度に略近い。
【0056】
第2熱交換器52は、ガスピストン側作動室55で膨張し所定の低温になったヘリウムが第2熱交換器52を通過する際、第2熱交換器52に固定した被冷却体9aを冷却する。
【0057】
図2は、両端が大気に開放された開放管内を伝播する圧力波が共鳴した状態を示す。図中、(a)は開放管100内に1/2波長の共鳴状態示し、(b)は1波長の共鳴状態を示す。図2に示すように開放管100は、開放管100内を伝播する圧力波の周波数(振動数)が共鳴する長さであると、開放管100の両端の開放口に圧力波の腹101と、102を生じる。この共鳴状態は、1/2波長の自然数倍の圧力波が開放管100内に生じる。圧力波の周波数がfの場合、共鳴状態を生じる開放管の長さLは、音速をa、圧力波の波長をλすると、例えば1波長の共鳴状態では、L=λ=a/fで示される。1/2波長の自然数倍の共鳴状態では、自然数をn(=1、2、・・)とすると、L=(λ/2)×n={(a/f)/2}×nで示される。温度300Kのヘリウムの音速aは1028m/sで、圧力波の周波数fを例えば50Hzとすると、波長λは20.56mとなる。尚、mは長さの単位でメータ、sは時間の単位で秒である。
【0058】
イナータンスチューブ60aおよびイナータンスチューブ70aは両端が開いた開放管であるので、各イナータンスチューブ60a,70aは、開放管内を伝播する圧力波の周波数(振動数)が共鳴する長さであると、各イナータンスチューブ60a,70aの両端の開放口近傍に圧力波の腹が生じる。各イナータンスチューブ60a,70aは、それぞれ両端に容積を有する部位、即ち、イナータンスチューブ60aは第1作動室14と第1熱交換器40、そして、イナータンスチューブ70aは第2作動室24とパルス管53を接続している。このため、共鳴状態を生じる各イナータンスチューブ60a,70aの長さは、両端の容積の影響を受けるので、前述のL=(λ/2)×n={(a/f)/2}×nより短くなる。
【0059】
そして、パルス管型蓄熱機関1の運転周波数と、各イナータンスチューブ60a,70aの長さ、流路径と、第1作動室14(イナータンスチューブ60aの場合)、第2作動室24(イナータンスチューブ70aの場合)を調整することにより、各イナータンスチューブ60a,70aの開放口近傍で圧力波の腹が発生して共鳴状態が得られる。この共鳴状態では、各イナータンスチューブ60a,70aの両端近傍の間には、ヘリウムによる略1波長の自然数倍の圧力波、またはヘリウムによる略1/2波長の正の奇数倍(以下、奇数倍)の圧力波が生じる。そして、各イナータンスチューブ60a,70aに生じる圧力波が略1波長の自然数倍である場合は、各イナータンスチューブ60a,70aの両端の圧力波の位相差は、略360度の自然数倍、実質略0度(以下、略0度)になる。各イナータンスチューブ60a,70aに生じる圧力波が略1/2波長の奇数倍である場合は、各イナータンスチューブ60a,70a両端の圧力波の位相差は、180度の奇数倍、実質略180度(以下、略180度)になる。
【0060】
一方、コネクティングチューブ60b,70bは、圧力波の1/2波長より十分短く流路径も比較的大きいので、チューブ両端の圧力波の位相差は無視できる程度小さく、圧力波は共鳴状態ではない。従って、コネクティングチューブ60b,70bの両端の圧力は同位相で、圧力損失も無視できる程度小さい。
【0061】
リニア駆動手段32のコイル33aに交流電流を通電すると、可動子34に連結された第1ピストン13と、第2ピストン23が往復動する。第1ピストン13と第2ピストン23は、それぞれロッド34cの両端に連結されているので、第1作動室14と第2作動室24の変動容積は180度の位相差を持って往復動する。この往復動により、第1作動室14と、第1チューブ60と、第1熱交換器40と、再生熱交換器51と、第2熱交換器52と、パルス管53と、第2チューブ70と、第2作動室24とには交流電流と同じ周波数の圧力変動が発生する。
【0062】
図3〜図6は、第1作動室14のシリンダヘッド12aから、第1チューブ60と、第1熱交換器40と、再生熱交換器51と、第2熱交換器52と、第2チューブ70を経由して、第2作動室24のシリンダヘッド22aに至る各位置におけるヘリウムの圧力の最大値Pmaxと最小値Pminを示す。各図中、横軸Xはシリンダヘッド12a(図1)の位置Aから各部位内の流れに沿う長さを示し、縦軸Pはヘリウムの圧力を示す。また各図中のA〜Dは、それぞれ図1に示されるA〜Dの位置に対応し、Aはシリンダヘッド12aの円錐継手12bと第1チューブ60との接続位置、Bは放熱器40の円錐継手40aと第1チューブ60との接続位置、Cはパルス管53の円錐継手53aと第2チューブ70との接続位置、Dはシリンダヘッド22aの円錐継手22bと第2チューブ70との接続位置を示す。また、(最大値Pmax−最小値Pmin)は、圧力変動幅の最大値dPmaxであり、(dPma/2)は変動圧力の振幅に相当する。(d:デルタ)
以下、第1チューブ60と、第2チューブ70の取る形態の組合せの3つの(ケース1)〜(ケース3)と、(ケース1)の下における小型冷凍機または低速型冷凍機の(ケース4)とについて、その作動と効果を以下に説明する。
【0063】
(ケース1)
第1チューブ60と、第2チューブ70が、それぞれコネクティングチューブ60bと、イナータンスチューブ70aの各形態を取る。そして、コネクティングチューブ60bは、往復流動するヘリウムの圧力損失が殆ど生じないように、流路長さと、流路径が設定されている。イナータンスチューブ70aは、両端近傍の間に略1波長のヘリウムの圧力波が生じるように、イナータンスチューブ70aの長さ、流路径と、冷凍機の運転周波数と、第2作動室24の掃気容積とが設定される。また、第1熱交換器40と、再生熱交換器51及び第2熱交換器52の各諸元(流路長さ、流路断面積)は往復流動するヘリウムの圧力損失が無視できる程度小さく適正に設定されている。
【0064】
図3は、上述の設定の下における圧力の最大値Pmaxと最小値Pminを示す。A位置からC位置の間では圧力損失が無視できる程度小さいので、図3に示すようにA〜C位置間の圧力の最大値Pmaxと最小値Pminは略一定となり、圧力変動の振幅も略一定になる。また、圧力の位相は、A位置からC位置の間の各位置において略同位相になる。
【0065】
イナータンスチューブ70aには略1波長の圧力波が生じている。従って、イナータンスチューブ70aは、開放口C位置(図3)近傍において圧力波の第1の腹と、途中のM1位置(図3)において圧力波の第1の節と、途中のM2位置(図3)において圧力波の第2の腹と、途中のM3位置(図3)において圧力波の第2の節と、開放口D位置(図3)近傍において圧力波の第3の腹を生じる。これにより、図3に示すように、C位置からM1位置に向かって(Pmax−Pmin)は減少し、M1位置からM2位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加し、M2位置からM3位置に向かって(Pmax−Pmin)は再び減少し、M3位置からD位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加する。そして、A位置とD位置における圧力波の位相差は略360度、実質、略同位相(以下、略同位相)になる。以上により、第2作動室24の圧力は、第1作動室14の圧力の位相と略同位相になる。そして、第1作動室14と第2作動室24の変動容積の位相差は180度であるので、第1作動室14は圧縮仕事をなし、第2作動室24は膨張仕事をなす。また、位相調整手段71は、ガスピストン側作動室55の圧力の位相がガスピストン側作動室55の変動容積の位相に対し適正に進むようにガスピストン53bを往復動させると共に、ガスピストン53bの往復動移動量を適正に確保する。結果、ガスピストン側作動室55において、ヘリウムが膨張して得られる冷凍量は増大するので、高い効率のパルス管型蓄熱機関1を提供できる。
【0066】
また、上記の説明で明らかなように、イナータンスチューブ70aの両端近傍の間に、略1波長の自然数倍の圧力波が生じる場合においても、A位置とD位置における圧力の位相差は略360度の自然数倍、実質、略同位相(以下、略同位相)になる。従って、上記の略1波長の圧力波が生じる場合と同じ作動により、同じ効果を生じる。しかし、イナータンスチューブ70aの両端近傍の間に略1波長の圧力波が生じられる場合の方が、複数個の波長の圧力波が生じられる場合と比べて、イナータンスチューブ70aの容積は減少し、圧力変動の振幅は増大するので冷凍量も増大し、これに伴いパルス管型蓄熱機関1の効率も向上する。
【0067】
また、コネクティングチューブ60bの全長は比較的短く、イナータンスチューブ70aは長尺で外径も小さい。従って、イナータンスチューブ70aを圧力振動発生機10の外周側あるいは端部外側に螺旋状に巻回することにより、パルス管型蓄熱機関1は小型になる。
【0068】
(ケース2)
第1チューブ60と第2チューブ70が、共にイナータンスチューブ60a,70aの形態を取る。イナータンスチューブ60a,70aの各両端間の近傍において1/2波長のヘリウムの圧力波が生じるように、イナータンスチューブ60a,70aの各長さ、各流路径、各作動室14,24と、冷凍機の運転周波数が設定される。また、第1熱交換器40と、再生熱交換器51及び第2熱交換器52の各諸元も往復流動するヘリウムの圧力損失が無視できる程度小さく適正に設計されている。
【0069】
図4は、上述の設定の下における圧力の最大値Pmaxと最小値Pminを示す。イナータンスチューブ60aには略1/2波長の圧力波が生じるので、イナータンスチューブ60aの開放口A位置(図4)近傍において圧力波の第1の腹と、途中のN1位置(図4)において圧力波の第1の節と、開放口B位置(図4)近傍において圧力波の第2の腹を生じる。これにより、図4に示すように、A位置からN1位置に向かって(Pmax−Pmin)は減少し、N1位置からB位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加する。そして、A位置とB位置における圧力波の位相差は、略180度になる。
【0070】
イナータンスチューブ70aにも略1/2波長の圧力波が生じる。従って、イナータンスチューブ70aは、イナータンスチューブ70aの開放口C位置(図4)近傍において圧力波の第1の腹と、途中のN2位置(図4)において圧力波の第1の節と、開放口D位置(図4)近傍において圧力波の第2の腹を生じる。これにより、図4に示すように、C位置からN2位置に向かって(Pmax−Pmin)は減少し、N2位置からD位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加する。そして、C位置とD位置におけるの圧力波の位相差は、略180度になる。
【0071】
B位置とC位置間では、圧力は略同位相であるので、A位置とD位置における圧力の位相差は、略360度、実質、略同位相になる。これにより、第2作動室24の圧力は第1作動室14の圧力と略同位相になる。従って(ケース1)と同様に、ガスピストン側作動室55において作動ガスが膨張して得られる冷凍量は増大するので、高い効率のパルス管型蓄熱機関1を提供できる。
【0072】
上記の説明で明らかなように、イナータンスチューブ60a,70aの各両端近傍の間に、略1波長の自然数倍の圧力波が生じる場合、または、略1/2波長の奇数倍の圧力波が生じる場合のいずれにおいても、A位置とD位置における圧力の位相差は略360度の自然数倍、実質、略同位相(以下、略同位相)になる。従って、上記と同じ作動により、同じ効果を生じる。しかし、イナータンスチューブ60a,70aの両端近傍に生じる圧力波の波長数を足し合わせた値が略1波長になる場合の方が、略1波長の自然数倍になる場合に比べて、イナータンスチューブ60a,70aの容積が減少し、圧力変動の振幅は増大するので冷凍量も増大し、これに伴いパルス管型蓄熱機関1の効率も向上する。
【0073】
また、イナータンスチューブ60a,70aは長尺で外径が小さいので、圧力振動発生機10の外周側あるいは両端外側に巻回でき、パルス管型蓄熱機関1は小型になる。
【0074】
また、イナータンスチューブ60a長さと、イナータンスチューブ70aの長さが圧力波の略1/2波長さで長く、被冷却体9aが設置される第2熱交換器52を圧力振動発生機10から遠隔位置に配置できる。イナータンスチューブ60a,70aを螺旋形状に巻回してパルス管型蓄熱機関1の小型化する場合は、被冷却体は圧力振動発生機10の近傍位置にあるが、イナータンスチューブ60a,70aが長尺であるので、実質、圧力振動発生機10から遠隔位置に配置されている。従って、ヘリウムの圧縮、膨張時に圧力振動発生機10からイナータンスチューブ60a,70aを介して第2熱交換器52に伝達され振動は減少されるので、被冷却体9aは圧力振動発生機10からの振動影響を回避できる。さらには、イナータンスチューブ60a,70aをフレキシブルなチューブにすることにより、上記の振動影響はさらに改善される。
【0075】
(ケース3)
第1チューブ60と、第2チューブ70が、それぞれイナータンスチューブ60aと、コネクティングチューブ70bの各形態を取る。そして、コネクティングチューブ70bは、往復流動するヘリウムの圧力損失が殆ど生じないように、流路長さと、流路径が設定されている。イナータンスチューブ60aは、両端間において略1波長のヘリウムの圧力波が生じるように、イナータンスチューブ60aの長さ、流路径と、第1作動室14の掃気容積と、冷凍機の運転周波数が設定される。また、第1熱交換器40と、再生熱交換器51及び第2熱交換器52の各諸元(流路長さ、流路断面積)も往復流動するヘリウムの圧力損失が殆ど生じない適正に設定されている。A位置〜D位置の各位置における圧力の最大値Pmaxと最小値Pminは図5に示される。即ち、A位置〜B位置間に於いては、A位置からQ1位置に向かって(Pmax−Pmin)は減少し、Q1位置からQ2位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加し、Q2位置からQ3位置に向かって(Pmax−Pmin)は再び減少し、Q3位置からB位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加し、A位置とB位置の圧力波の位相差は略360度になる。B位置〜D位置間に於いては、(Pmax−Pmin)は略一定で、圧力は略同位相である。第2作動室24の圧力は、第1作動室14の圧力の位相と略同位相になる。また、上記の説明で明らかなように、イナータンスチューブ60aの両端近傍の間に、略1波長の自然数倍の圧力波が生じる場合においても、A位置とD位置における圧力の位相差は略360度の自然数倍、実質、略同位相(以下、略同位相)になる。従って、(ケース1)場合と同様に、高い効率のパルス管型蓄熱機関1を提供できる。
【0076】
また、コネクティングチューブ70bは全長が比較的短く、イナータンスチューブ60aは長尺で外径も小さい。従って、イナータンスチューブ60aは圧力振動発生機10の外周側あるいは端部外側に螺旋状に巻回することにより、パルス管型蓄熱機関1は小型になる。
【0077】
(ケース4)
第1チューブ60と、第2チューブ70が、それぞれコネクティングチューブ60bと、イナータンスチューブ70aの各形態を取る。また、パルス管型蓄熱機関1は、例えば運転周波数が略50Hzで消費電力は略200W以下の小型な冷凍機、あるいは運転周波数が略10Hzで消費電力は数100W〜略1KW以下の低速型の冷凍機である。そして、イナータンスチューブ70aの両端近傍の間に略1/2波長の圧力波が生じるように、イナータンスチューブ70aの長さ、流路径と、第2作動室24の掃気容積と、冷凍機の運転周波数が設定される。他の設定条件は(ケース1)と同じである。
【0078】
図6は、上述の設定の下における圧力の最大値Pmaxと最小値Pminを示す。図6に示すように、A位置からC位置間の最大値Pmaxと最小値Pminは一定である。C位置からR1位置に向かって(Pmax−Pmin)は減少し、R1位置からD位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加する。そして、A位置とC位置における圧力の位相差は略0度で、C位置とD位置における圧力波の位相差は略180度になる。従って、第1作動室14と第2作動室24の圧力は略180度の位相差になり、第2作動室24は第1作動室14と同じように圧縮室として機能する。
【0079】
また上述したように、パルス管型蓄熱機関1は小型な冷凍機、あるいは低速型の冷凍機であるので、イナータンスチューブ70aは、チューブ内のヘリウムの慣性力の影響が減少してオリフィスのように作用する。オリフィス型のパルス管冷凍機は、一般的に効率が低いが、イナータンスチューブ70aに略1/2波長のヘリウムの圧力波が生じているので、第2作動室24においてヘリウムが圧縮され、この圧縮仕事がイナータンスチューブ70aに与えられる。これにより、ガスピストン側作動室55の圧力は、膨張仕事が増大するようにガスピストン側作動室55の変動容積に対し位相が進むので、小型な冷凍機、あるいは低速型の冷凍機の場合でもパルス管型蓄熱機関1は効率が高くなる。
【0080】
次に、本発明の実施例1に係るパルス管型熱蓄機関1が原動機として作動する場合、その作動と効果について、前述の(ケース1)で説明する。この場合は、第1熱交換器40は放熱器、第2熱交換器52は吸熱器、リニア駆動手段32はリニア発電機、として作用させる。これにより、第1作動室14は圧縮室、第2作動室24は膨張室(前述の(ケース4)を除く)、ガスピストン側作動室55は膨張室、として機能する。そして、第2熱交換器52は例えば略600℃の燃焼ガス(第2熱交換対象体、図示せず)で加熱され、第1熱交換器40は例えば略20℃の冷却水8a(第1熱交換対象体)で冷却される。
【0081】
また、冷凍機の場合と同様に、A位置からD位置までの圧力の最大値Pmaxと最小値Pminは図3に示すようになり、冷凍機の(ケース1)の場合と同様に、第2作動室24の圧力は、第1作動室14の圧力と略同位相になる。従って、第1作動室14と第2作動室24の変動容積の位相差は180度であるので、第1作動室14は圧縮仕事をなし、第2作動室24は膨張仕事をなす。また、位相調整手段71は、ガスピストン側作動室55の圧力の位相がガスピストン側作動室55の変動容積の位相に対し適正に進むようにガスピストン53bを往復動させると共に、ガスピストン53bの往復動移動量を適正に確保する。これにより、第2熱交換器52へ投入した熱エネルギーでガスピストン側作動室55内においてヘリウムが適正に昇圧され、昇圧した圧力により第1ピストン13が外部になす仕事量は増大する。そして、この仕事はリニア駆動手段32により交流電力として発電される。結果、冷凍機の場合と同様に原動機の場合においても、高い効率のパルス管型蓄熱機関1を提供できる。
【0082】
また、前述の(ケース2)〜(ケース4)を原動機に適応した場合の作動と効果は、(ケース2)〜(ケース4)の冷凍機の場合と同じ効果を生じる。
【0083】
また、パルス管型蓄熱機関1が冷凍機あるいは原動機として機能する(ケース1)〜(ケース4)のいずれの場合においても、第1シリンダ12及び第1ピストン13と、第2シリンダ22及び第2ピストン23はストレート形状になっている。従って、第1シリンダ12及び第1ピストン13と、第2シリンダ22及び第2ピストン23の各々の径は、従来技術の2段凸型形状のシリンダ及びピストンの径に比べて減少する。従って、各ピストン13,23と各シリンダ12,22との各クリアランスシールからのヘリウム漏れ量は、従来技術に比べて減少するので、パルス管型蓄熱機関1の冷凍量、及び発電量が増大すると共に、効率が向上する。
【0084】
第1ピストン13と、第2ピストン23の外周面側からのヘリウム漏れ量は、従来技術のピストンより減少できる。結果、各ピストン13,23と各シリンダ12,22との各クリアランスシールからのヘリウム漏れ量は減少するので、パルス管型蓄熱機関1の冷凍量、及び発電量が増大すると共に、効率が向上する。また、クリアランスシールに代えて、ピストンリングを使用する場合は、ヘリウムの漏れ量の減少と、ピストンリングの摩耗粉よるガス汚染の減少とにより、パルス管型蓄熱機関1の冷凍量、及び発電量が増大すると共に、効率が向上する。
【0085】
尚、前述のパルス管型蓄熱機関1が冷凍機、あるいは原動機として作動する(ケース1)〜(ケース4)の場合において、第1作動室14は圧縮室、第2作動室24は膨張室、ガスピストン側作動室55は膨張室、第1熱交換器40は放熱器、及び第2熱交換器52は吸熱器して機能するが、第1作動室14は膨張室、第2作動室24は圧縮室、ガスピストン側作動室55は圧縮室、第1熱交換器40は吸熱器、及び第2熱交換器52は放熱器して機能しても良い。この場合も、第1チューブ60(イナータンスチューブ60a,コネクティングチューブ60b)と、第2チューブ70(イナータンスチューブ70a,コネクティングチューブ70b)の作用は前述の作用と同じで、効果も同じである。
【0086】
また、第1,2シリンダ12,22と第1,2ピストン13,23は、それぞれストレート形状であるので、第1シリンダ12と第1ピストン13の構成、及び第2シリンダ22と第2ピストン23の構成が簡素になる。さらには、第1ピストン13と、第2ピストン23は、それぞれリニア駆動手段32の可動子34に備えたロッド34cの両端に連結されている。以上により、圧力振動発生機10の構成は簡素になり、これに伴いパルス管型蓄熱機関1の構成も簡素になる。さらには、リニア駆動手段32によりクランク駆動機構などに比べて、摺動に起因する機械摩擦損失が低減され、パルス管型蓄熱機関1の効率が向上する。
【0087】
尚、前述の説明では、第1熱交換器40と、再生熱交換器51と、第2熱交換器52の圧力損失は無視できる程度小さく設定されているが、各部位40,51,52に比較的小さいが圧力損失を生じ、各部位40,51,52の流出入位置における圧力の位相差も比較的小さいが生じる場合もあり得る。この場合は、この位相差を前述の作動に考慮することにより、前述と同じ効果が生じる。
【実施例2】
【0088】
図7は、本発明の実施例2に係るパルス管型蓄熱機関2の説明図である。図1のスパルス管型蓄熱機関1と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。パルス管型蓄熱機関2は、図1のパルス管型蓄熱機関1をヒートポンプ(例えば、エアコン)として使用する。パルス管型蓄熱機関1は、第1チューブ60と第2チューブ70のうち少なくともいずれか一方のチューブを備えると共に、少なくとイナータンスチューブを一つ備える。ここでは、第1チューブ60(チューブ)と第2チューブ70(チューブ)は、それぞれコネクティングチューブ60bとイナータンスチューブ70aの形態を取り、イナータンスチューブ70aに圧力波の略1波長が発生している場合について説明する。また、第1熱交換器40と、再生熱交換器51と、第2熱交換器52の圧力損失は無視できる程度小さくなるように設定されている。
【0089】
図7に示すように、第2熱交換器52はファン92により屋外の空気9b(第2熱交換対象体)が送風される。第1熱交換器40は、ファン91により室内90の循環空気8b(第1熱交換対象体)が送風される。
【0090】
パルス管型熱蓄機関2により室内90を冷房する場合、パルス管型蓄熱機関2において、第1作動室14は膨張室、第2作動室24は圧縮室、ガスピストン側作動室55は圧縮室、第1熱交換器40は吸熱器、第2熱交換器52は放熱器、およびリニア駆動手段32はリニアモータとして機能させる。そしてイナータンスチューブ70aは、両端近傍の間に略1波長のヘリウムの圧力波が生じるように、イナータンスチューブ70aの長さ、流路径と、冷凍機の運転周波数と、第2作動室24の掃気容積とが設定される。これにより、パルス管型蓄熱機関2のA位置からD位置(図7)まで各位置における圧力の最大値Pmaxと最小値Pminは、図8に示すようになる。即ち、図1と同様に、C位置からS1位置に向かって(Pmax−Pmin)は減少し、S1位置からS2位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加し、S2位置からS3位置に向かって(Pmax−Pmin)は再び減少し、S3位置からD位置に向かって(Pmax−Pmin)は増加する。そして、A位置とD位置における圧力波の位相差は略360度、実質、略同位相(以下、略同位相)になる。以上により、第2作動室24の圧力は、第1作動室14の圧力の位相と略同位相になる。
【0091】
また、位相調整手段71により、ガスピストン側作動室55の圧力波形の位相がガスピストン側作動室55の変動容積の位相より適正に遅れ、ガスピストン側作動室55において圧縮仕事がなされる。従って、第1作動室14における膨張仕事は増大し、発生する冷凍量も増大する。第1作動室14で発生した冷凍により、第1熱交換器40に於いて室内90の循環空気8bを冷却して、室内90を冷房する。結果、パルス管型蓄熱機関2をヒートポンプとして作動させても、高い効率のパルス管型蓄熱機関2を提供できる。
【0092】
一方、パルス管型熱蓄機関2により室内90を暖房する場合、パルス管型蓄熱機関2において、第1作動室14は圧縮室、第2作動室24は膨張室、ガスピストン側作動室55は膨張室、第1熱交換器40は放熱器、第2熱交換器52は吸熱器、およびリニア駆動手段32はリニアモータとして機能させる。即ち、パルス管型蓄熱機関2は、実施例1のパルス管型蓄熱機関1が冷凍機として作動する(ケース1)に相当する。
【0093】
また、前述した第2熱交換器52においてヘリウムの圧縮熱を放熱した空気9bを室内に導入して、室内90を暖房しても良い。この場合は、第1熱交換器40を流れる空気8bは屋外の大気、第2熱交換器52を流れる空気9bは室内90の空気とに代える切換弁(図示せず)が必要になる。
【実施例3】
【0094】
図9は、本発明の実施例3に係るパルス管型蓄熱機関3の説明図である。図1のパルス管型蓄熱機関1と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図9に示すように、パルス管型蓄熱機関3は、実施例1の第2チューブ70(チューブ)がイナータンスチューブ70a(図1)の形態をとり、イナータンスチューブ70aの第2作動室24側にバッファを設ける。即ち、第2作動室24は、配管77と、バッファ76と、イナータンスチューブ75aを介してパルス管53の円錐継手53aに接続される。そして、位相調整手段78は、イナータンスチューブ75aと、バッファ76と、配管77と、第2作動室24とから構成され、ガスピストン53bの往復動変位の位相と振幅を適正に調整する。他の構成は、図1のパルス管型蓄熱機関1と同じである。
【0095】
バッファ76を設けたことにより、イナータンスチューブ75a内のヘリウムの質量とバッファ76の容積が相乗して、イナータンスチューブ75aの作用を強化する。結果、イナータンスチューブ75aの長さはイナータンスチューブ70a(図1)に比べて短くなる。また、イナータンスチューブ75a内に発生する圧力波の作用は、図1のイナータンスチューブ70aと同じである。従って、パルス管型蓄熱機関3の他の効果は、実施例1のパルス管型蓄熱機関1と同じである。
【0096】
尚、図9のEは、第2シリンダ22のシリンダヘッド22aの位置を示す。E位置の圧力は、配管77の圧力損失が極めて小さいので、バッファ76の圧力に略等しい。
【実施例4】
【0097】
図10は、本発明の実施例4に係るパルス管型蓄熱機関4の説明図である。図9のパルス管型蓄熱機関3と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図10に示すように、パルス管型蓄熱機関4は、実施例3のイナータンスチューブ75a(図9)の途中にさらにバッファを設ける。即ち、第2作動室24は、順次配管77と、バッファ76と、イナータンスチューブ80aと、バッファ83と、イナータンスチューブ81aを介してパルス管53の円錐継手53aに接続される。そして、位相調整手段82は、イナータンスチューブ80a、81aと、バッファ76、83と、配管77と、第2作動室24とから構成され、ガスピストン53bの往復動変位の位相と振幅を適正に調整する。他の構成は、図9のパルス管型蓄熱機関3と同じである。
【0098】
バッファ76,83が設けられたことにより、イナータンスチューブ80a,81aの作用が強化され、イナータンスチューブ80a,81aを足し合せた長さは、イナータンスチューブ75a(図9)に比べて短くなる。また、イナータンスチューブ80a,81に、それぞれ略1/2波長の圧力波を生じるようにすることにより、イナータンスチューブ80a,81を連成した作用は、波長の圧力波と等価である。従って、パルス管型蓄熱機関4の他の効果は実施例1のパルス管型蓄熱機関1と同じである。
【0099】
尚、図10のEは、第2シリンダ22のシリンダヘッド22aの位置を示す。E位置の圧力は、配管77の圧力損失が極めて小さいので、バッファ76の圧力に略等しい。
【実施例5】
【0100】
図11は、本発明の実施例5に係るパルス管型蓄熱機関5の説明図である。図1のパルス管型蓄熱機関1と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図11に示すように、パルス管型蓄熱機関5が、実施例1のパルス管型蓄熱機関1(図1)と異なるところは、パルス管型蓄熱機関1の第1ピストン13のロッド134cが連結される端面側に第2作動室124を設けてダブルアクティング構造にしたことである。これに伴い、第2シリンダ22(図1)と、第2ピストン23(図1)が省略され、そしてロッド34c(図1)の一端側が短縮される。即ち、シリンダ112(第1シリンダ)の図10における右端側に隔壁115を設け、隔壁115の中心部分にはロッド134cが微小間隙を持って往復動可能に貫通される。そして、シリンダ112と、ピストン113(第1ピストン)と、隔壁115と、ピストン113を連結したロッド134cに包囲されて第2作動室124が形成される。一方、第1作動室114は、ピストン113を介在して第2作動室124の図11における左側に形成される。そして駆動部130は、ケース131と、ケース131の内周面に固定したリニア駆動手段132の固定子133と、ロッド134cを備えたリニア駆動手段132の可動子134と、可動子134を往復動可能に支持する一対の弾性支持部材35,35とから構成される。また、圧力振動発生機110は、駆動部130と、シリンダ112と、ピストン113と、隔壁115とにより構成される。他の構成は、パルス管型蓄熱機関1(図1)と同じである。
【0101】
第1作動室114と第2作動室124は、ストレート形状のピストン113の両端面側に形成され、第1作動室114と第2作動室124との変動容積の位相差は180度である。従って、パルス管型蓄熱機関5の作動と効果は、実施例1のパルス管型蓄熱機関1と同じ効果を生じる。
【0102】
さらには、第1作動室114と第2作動室124は、ストレート形状のピストン113の両端面にそれぞれ形成されると共に、ピストン113はリニア駆動手段132の可動子134に備えたロッド134cの一端に連結されている。従って、パルス管型蓄熱機関5の構成は簡素になると共に、圧力振動発生機110が小型になる。
【実施例6】
【0103】
図12は、本発明の実施例6に係るパルス管型蓄熱機関6の説明図である。図10及び図11のパルス管型蓄熱機関4及び5と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図12に示すように、パルス管型蓄熱機関6は、パルス管型蓄熱機関4及び5の変形例で、駆動部130のヘリウムが存在する空間136の容積がバッファ83の容積と同程度で小さいので、隔壁115(図11)が省略される。即ち、第2作動室224は、ピストン113のロッド134c側の端面と二点鎖線で示すピストン113の下死点の間に形成される。そして第2作動室224は、駆動部130の空間136と、イナータンスチューブ80aと、バッファ83、イナータンスチューブ81aとを介してパルス管53の円錐継手53aに接続される。圧力振動発生機210は、駆動部130と、シリンダ112と、ピストン113とにより構成される。そして、パルス管型蓄熱機関6は、パルス管型蓄熱機関4(図9)と略同じように作動し、パルス管型蓄熱機関4及び5と同じ効果を生じる。
【実施例7】
【0104】
図13は、本発明の実施例7に係るパルス管型蓄熱機関7の説明図である。図11のパルス管型蓄熱機関5と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図13に示すように、パルス管型蓄熱機関7は、図11のパルス管型蓄熱機関5の圧力振動発生機110を駆動部130が互に外側に位置するように同軸、対向に配置する。即ち、一対の第1作動室114,114とを配管162を介して連通する。そして、配管162の中央部分に第1チューブ160(チューブ)の一端160cを接続し、他端160dを第1熱交換器40の円錐継手40aに接続する。
【0105】
同様に、一対の第2作動室124,124とを配管172を介して連通する。そして、一対の第2作動室124,124のいずれか一方の第2作動室124に第2チューブ170の一端170cを接続し、他端170dをパルス管53の円錐継手53aに接続する。本実施例のパルス管型蓄熱機関7では、パルス管53に近い方の第2作動室124に第2チューブ170(チューブ)を接続している。他の構成は、図11のパルス管型蓄熱機関5と同じである。
【0106】
パルス管型蓄熱機関7は、パルス管型蓄熱機関1(図1)と同様に、第1チューブ160と第2チューブ170は、それぞれイナータンスチューブ160a,170aと、コネクティングチューブ160b,170bの形態を取る。また、第1チューブ160と第2チューブ170のうち少なくともいずれか一方のチューブを備えると共に、少なくとイナータンスチューブを一つ備える。第1チューブ160がイナータンスチューブ160aの形態を取る場合は、イナータンスチューブ160aの両方の開放端160c,160dの各近傍に圧力波の腹が生じる。同様に、第2チューブ170がイナータンスチューブ170aの形態を取る場合は、イナータンスチューブ170aの両方の開放端170c,170dの近傍に圧力波の腹が生じる。
【0107】
そして、一対のリニア駆動手段132,132は、一対のピストン113,113が同じ振幅で、互に対向する方向へ往復動するように所定周波数の交流電流が通電される。これにより、一対の第1作動室114,114を足し合わせた第1合成作動室114a(第1作動室)の変動容積と、一対の第2作動室124,124を足し合わせた第2合成作動室124a(第2作動室)の容積変動との位相差は180度になる。従って、パルス管型蓄熱機関7の作動と効果は、パルス管型蓄熱機関1(図1)と同じである。さらには、一対のピストン113,113は、同じ振幅で、互に対向する方向へ往復動するので、一対のピストン113,113により生じる振動は相殺される。
【0108】
尚、本発明の実施例1〜6の各パルス管型蓄熱機関1〜6は、第1ピストン13,113と、第2ピストン23の往復動よる振動が発生する。このため、質量とバネを備えるダイナミックダンパーを各パルス管型蓄熱機関1〜6に配備することにより、各ピストンの往復動による振動は抑制される。
【0109】
(シミュレーション結果)
次に、実施例4のパルス管型蓄熱機関4(図10)のシミュレーション結果について説明する。図14は、A位置(図10)からE位置(図10)までの各位置における圧力の最大値Pmaxと最小値Pminを示す。図15は、図10の第1作動室14と、第2作動室24と、バッファ83の圧力波形を示す。図15において、実線は第1作動室14、一点鎖線はバッファ83、そして破線は第2作動室24の各圧力波形を示す。図16は、図10の第1作動室14(図16の実線)と、第2作動室24のPV線図(図16の破線)を示す。図16中の矢印はPV線図の回る向きを示し、左回り(反時計方向)は圧縮仕事を示し、右回り(時計方向)は膨張仕事を示す。
【0110】
図14に示すように、A位置〜C位置間では、最大値Pmaxと最小値Pminは略一定値で、圧力損失が小さい。そして、C位置〜E位置間では圧力波の略1波長が生じている。図15に示すように、第1作動室14とバッファ83の圧力波の位相差は略200度で、バッファ83と第2作動室24の位相差は略230度で、いずれの位相差も180度に近い。図16に示すように、第2作動室24は膨張仕事がなされ膨張室として機能し、第1作動室14は圧縮仕事をなし圧縮室として機能していることが判る。以上により、本発明が妥当であることが証明された。
【実施例8】
【0111】
図17は、本発明の実施例8に係るパルス管型蓄熱機関200の説明図である。図10のパルス管型蓄熱機関4と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図17に示すように、パルス管型蓄熱機関200は、第2作動室24とパルス管53を順次、配管77と、位相調整要素202と、コネクティングチューブ204と、位相調整要素203と、コネクティングチューブ205とを介して連通される。位相調整要素202は、シリンダ202bと、シリンダ202bの内周面に自在に往復動する固体ピストン202aと、バネ202c(弾性部材)とを備える。バネ202cの両端は、固体ピストン202aの端面と、シリンダ202bの端面とに固定される。これにより、固体ピストン202aが往復動する際には、バネ202cのバネ荷重が固体ピストン202aに付勢される。
【0112】
同様に、位相調整要素203は、シリンダ203bと、シリンダ203bの内周面に自在に往復動する固体ピストン203aと、バネ203c(弾性部材)とを備える。バネ203cの両端は、固体ピストン203aの端面と、シリンダ203bの端面とに固定される。これにより、固体ピストン203aが往復動する際にはバネ203cのバネ荷重が固体ピストン203aに付勢される。尚、固体ピストン202a,203aの両端面にそれぞれバネ203cを設けても良い。
【0113】
位相調整要素202,203は、固体ピストン202a,203aを備えているので、図10のイナータンスチューブ80a,81a及びバッファ76,82は、それぞれ位相調整要素202,203に置き換えられる。そして、位相調整要素202と、位相調整要素203と、コネクティングチューブ204,205と、配管77と、第2作動室24とから位相調整手段201が構成され、位相調整手段201は、ガスピストン53bの往復動変位の位相と振幅を適正に調整する。尚、第1チューブ60は、イナータンスチューブ60aまたはコネクティングチューブ60bいずれでも良いが、コネクティングチューブ60bの方が圧力振幅は大きくなるので好ましい。他の構成は、図10のパルス管型蓄熱機関4と同じである。
【0114】
位相調整要素202の固体ピストン202aの往復動に基づく慣性により、固体ピストン202aの両端面側のヘリウムの圧力波は略1/2波長ずれ、固体ピストン202aの両端面側の圧力の位相差は略180度異なる。同様に位相調整要素203の固体ピストン203aの往復動に基づく慣性により、固体ピストン203aの両端面側のヘリウムの圧力波は略1/2波長ずれ、固体ピストン203aの両端面側の圧力の位相差は略180度異なる。従って、位相調整手段201により、C位置とE位置間で略1波長の圧力波が生じ、C位置とE位置との圧力の位相は略360度異なる。そして、第1圧縮室14で圧縮仕事がなされ、ガスピストン側作動室55で膨張仕事がなされ、この膨張仕事は位相調整要素202と、位相調整要素203とを介在して第2作動室24でなされる。第2作動室24でなされた膨張仕事は、第2ピストン23とロッド34cを介して第1ピストン13へ伝達され、第1圧縮室14の圧縮仕事の一部に費やされる。
【0115】
位相調整要素202,203は、それぞれイナータンスチューブ80a,81aに置き換えられ、イナータンスチューブ80a,81aで生じる圧力損失が解消されので、パルス管型蓄熱機関200はパルス管型蓄熱機関4(図10)より効率が向上する。他の効果は実施例4のパルス管型蓄熱機関4(図10)と同じである。
【0116】
尚、パルス管型蓄熱機関200は、位相調整要素202,203を設けているが、いずれか一方の位相調整要素を設けても良い。この場合は、C位置とE位置間で略1/2波長の圧力波が生じ、圧力の位相は略180度異なる。
【0117】
さらには、パルス管型蓄熱機関200は第2作動室24とパルス管53との間に位相調整要素202,203を設けているが、第1作動室14と第1熱交換器40との間、または、第1熱交換器40と再生熱交換器51との間に位相調整要素202,203を設けても良く、あるいは位相調整要素202,203のいずれか一方の位相調整要素を設けても良い。位相調整要素202,203を設けた場合は、A位置とB位置間、または、A位置と再生熱交換器51との間で略1波長の圧力波が生じ、各位置間の圧力の位相差は略360度異なる。位相調整要素202,203のいずれか一方の位相調整要素を設けた場合は、A位置とB位置間、または、A位置と再生熱交換器51との間で略1/2波長の圧力波が生じ、各位置間の圧力の位相差は略180度異なる。
【0118】
そして、上記のいずれの場合においても、位相調整要素202,203はそれぞれイナータンスチューブと置き換えることができ、前述したようにイナータンスチューブで発生する圧力損失は解消される。
【実施例9】
【0119】
図18は、本発明の実施例9に係るパルス管型蓄熱機関210の説明図である。図1のパルス管型蓄熱機関1と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図18に示すように、パルス管型蓄熱機関210は、コネクティングチューブ60bの形態の第1チューブ(チューブ)を介して第1作動室14と第1熱交換器40とを連通し、コネクティングチューブ70bの形態の第2チューブ(チューブ)を介して第2作動室24とパルス管53の常温端53d(端部)側とを連通すると共に、バッファ213はイナータンスチューブ212と、コネクティングチューブ70bの一端側とを介してパルス管53の常温端53d側へ連通される。そしてイナータンスチューブ212と、バッファ213とから位相調整手段211が構成され、位相調整手段211はガスピストン53bの往復動変位の振幅と位相を適正に調整する。
【0120】
尚、位相調整手段211はイナータンスチューブ212を直接、パルス管53の常温端53d側へ連通しても良く、また、コネクティングチューブ70bはイナータンスチューブ212を介してパルス管53の常温端53d側へ連通しても良い。更には、位相調整手段211は第2作動室24へ連通しても良い。他の構成は、図1のパルス管型蓄熱機関1と同じである。
【0121】
位相調整手段214は、C位置とバッファ223との間(イナータンスチューブ212の両端間)で略1/2波長(圧力位相差、略180度)、または略1波長(圧力位相差、略360度)の圧力波が生じるようにイナータンスチューブ212の流路径と長さ、及びバッファ213の容積とが調整される。この場合、圧力振幅増大の観点から略1/2波長の方が略1波長より好ましい。また、バッファ213を設けることによりイナータンスチューブ212を短くでき、ガスピストン側作動室55のヘリウムの圧力振幅が増大される。
【0122】
一方、A位置とB位置におけるヘリウムの位相と、C位置とD位置におけるヘリウムの位相は、それぞれ略同位相になる。
【0123】
ところで、第1作動室14では圧縮仕事がなされ、ガスピストン側作動室55では膨張仕事がなされる。ガスピストン側作動室55の膨張仕事のうち一部(略半分)はイナータンスチューブ212でなされる。第2作動室24と第1作動室14との容積変化の位相は180度異なるので、残り(略半分)の膨張仕事は第2作動室24でなされる。第2作動室24でなされた膨張仕事は、第2ピストン23とロッド34cを介して第1ピストン13へ伝達され、第1圧縮室14の圧縮仕事の一部に費やされる。
【0124】
以上により、位相調整手段211により、ガスピストン53bの往復動変位の位相と振幅は適正に調整されるので、高い効率のパルス管型蓄熱機関210が提供できる。
【0125】
また、パルス管型蓄熱機関210の圧力波発生機10は、図1のパルス管型蓄熱機関1の圧力波発生機10と同じ構成である。従って、第1シリンダ12と第1ピストン13との間隙、及び第2シリンダ22と第2ピストン23との間隙とからそれぞれ漏れる作動ガスの漏れ量の減少により、パルス管型蓄熱機関210の冷凍量、及び発電量が増大するので、パルス管型蓄熱機関210の効率が向上する。
【0126】
また、第1シリンダ12と第2ピストン23はリニア駆動手段32で駆動されるので、パルス管型蓄熱機関210の構成は簡素になる。
【0127】
また、コネクティングチューブ60b,70bは全長が比較的短く、長尺で外径も小なイナータンスチューブ212は圧力振動発生機10の外周側あるいは端部外側に螺旋状に巻回することにより、パルス管型蓄熱機関210は小型になる。
【実施例10】
【0128】
図19は、本発明の実施例9に係るパルス管型蓄熱機関220の説明図である。図1のパルス管型蓄熱機関1と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図19に示すように、パルス管型蓄熱機関220は、コネクティングチューブ70bを介して第2作動室24とパルス管53の常温端53d側とを連通し、コネクティングチューブ60bを介して第1作動室14と第1熱交換器40とを連通すると共に、バッファ223はイナータンスチューブ222と、コネクティングチューブ60bの一端側とを介して第1熱交換器40へ連通される。そしてイナータンスチューブ222と、バッファ223とから位相調整手段221が構成され、位相調整手段221はガスピストン53bの往復動変位の振幅と位相を適正に調整する。他の構成は、図1のパルス管型蓄熱機関1と同じである。
【0129】
尚、位相調整手段221は、イナータンスチューブ222を直接、第1熱交換器40しても良く、また、コネクティングチューブ60bはイナータンスチューブ222を介して第1熱交換器40へ連通しても良い。また、位相調整手段221は、再生熱交換器51の端部51b、または、端部51cへ連通しても良く、第1作動室14へ連通しても良い。冷凍機の場合には、端部51b,51cは、それぞれ高温端、低温端となり、原動機の場合には、それぞれ低温端、高温端となる。
【0130】
位相調整手段221により、B位置とバッファ223との間(イナータンスチューブ222の両端間)で略1/2波長(圧力位相差、略180度)、または、略1波長(圧力位相差、略360度)の圧力波が生じるようにイナータンスチューブ222の流路径と長さ、及びバッファ223の容積が調整される。この場合、圧力振幅増大の観点から略1/2波長の方が略1波長より好ましい。また、バッファ223を設けることによりイナータンスチューブ222を短くでき、ガスピストン側作動室55のヘリウムの圧力振幅が増大される。
【0131】
そして、第1作動室14では圧縮仕事がなされ、ガスピストン側作動室55では膨張仕事がなされる。ガスピストン側作動室55の膨張仕事のうち一部(略半分)はイナータンスチューブ222でなされる。第2作動室24と第1作動室14との容積変化の位相は180度異なるので、残り(略半分)の膨張仕事は第2作動室24でなされる。第2作動室24でなされた膨張仕事は、第2ピストン23とロッド34cを介して第1ピストン13へ伝達され、第1圧縮室14の圧縮仕事の一部に費やされる。
【0132】
以上により、パルス管型蓄熱機関220は実施例9のパルス管型蓄熱機関210(図18)と同じ理由により同じ効果を生じる。
【実施例11】
【0133】
図20は、本発明の実施例10に係るパルス管型蓄熱機関230の説明図である。図1のパルス管型蓄熱機関1と同じ部位、同じ部品は同じ符号を付す。図20に示すように、パルス管型蓄熱機関230は、コネクティングチューブ60bを介して第1作動室14と第1熱交換器40とを連通し、コネクティングチューブ70bを介して第2作動室24とパルス管53の常温端53d側とを連通すると共に、バッファ233はイナータンスチューブ232を介して第2熱交換器52のヘリウムが流動する作動ガス側へ連通される。そしてイナータンスチューブ232と、バッファ233とから位相調整手段231が構成され、位相調整手段231はガスピストン53bの往復動変位の振幅と位相を適正に調整する。他の構成は、図1のパルス管型蓄熱機関1と同じである。尚、位相調整手段231は、パルス管53の端部53eへ連通しても良い。
【0134】
位相調整手段231により、第2熱交換器52とバッファ233との間で略1/2波長(圧力位相差、略180度)、または、略1波長(圧力位相差、略360度)の圧力波が生じるようにイナータンスチューブ232の流路径と長さ、及びバッファ233の容積とが調整される。この場合、圧力振幅増大の観点から略1/2波長の方が略1波長より好ましい。また、バッファ233を設けることによりイナータンスチューブ232を短くでき、ガスピストン側作動室55のヘリウムの圧力振幅が増大される。
【0135】
そして、第1作動室14では圧縮仕事がなされ、ガスピストン側作動室55では膨張仕事がなされる。ガスピストン側作動室55の膨張仕事のうち一部(略半分)はイナータンスチューブ232でなされる。第2作動室24と第1作動室14との容積変化の位相は180度異なるので、残り(略半分)の膨張仕事は第2作動室24でなされる。第2作動室24でなされた膨張仕事は、第2ピストン23とロッド34cを介して第1ピストン13へ伝達され、第1圧縮室14の圧縮仕事の一部に費やされる。
【0136】
パルス管型蓄熱機関230を冷凍機として使用する場合は、第2熱交換器52の温度は、パルス管53の常温端53dあるいは第1熱交換器40の温度より低くなる。これにより、イナータンスチューブ232を往復流動するヘリウムの温度が、イナータンスチューブ212(図18)あるいは222(図19)より低くなり密度が増大するので、位相調整手段231はイナータンス効果が増大する。従って、ガスピストン53bの往復動変位の位相と振幅の調整が向上し、ガスピストン側作動室55の膨張仕事が増大される。結果、パルス管型蓄熱機関230を冷凍機として使用する場合は、パルス管型蓄熱機関230は、パルス管型蓄熱機関210(図18)あるいはパルス管型蓄熱機関220(図19)より効率が高くなる。他の効果は、パルス管型蓄熱機関210,220と同じである。
【符号の説明】
【0137】
1,2,3,4,5,6,7,200,210,220,230 パルス管型蓄熱機関
8a 冷却水(第1熱交換対象体)
8b 循環空気(第1熱交換対象体)
9a 被冷却体(第2熱交換対象体)
9b 空気(第2熱交換対象体)
10,110,210 圧力振動発生機
12,112 第1シリンダ
13,113 第1ピストン
14,24,114,114a 第1作動室
22 第2シリンダ
23 第2ピストン
24,124,124a,224 第2作動室
32,132 リニア駆動手段
34,134 可動子
40 第1熱交換器
51 再生熱交換器
51b,51c 端部
52 第2熱交換器
53 パルス管
53d 常温端(端部)
53e 端部
60,160 第1チューブ(チューブ)
70,170 第2チューブ(チューブ)
60a,70a,75a,80a,85a,81a,160a,170a,212,222,232 イナータンスチューブ
60b,70b,160b,170b コネクティングチューブ
76,83,213,223,233 バッファ
202,203 位相調整要素
202a,203a 固体ピストン
202b,203b シリンダ
202c,203c バネ(弾性部材)
211,221,231 位相調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダと前記第1シリンダに往復動可能に挿設した第1ピストンとにより形成される第1作動室と、第2シリンダと前記第2シリンダに往復動可能に挿設した第2ピストン、又は前記第1ピストンを介して前記第1作動室の反対側に前記第1シリンダと第1ピストンとにより形成される第2作動室と、を備える圧力振動発生機と、
前記第1作動室に連通し、前記第1作動室から流出する作動ガスと第1熱交換対象体とを熱交換させる第1熱交換器と、
前記第2作動室へ一端が連通するパルス管と、
前記パルス管の他端から流出入する作動ガスと第2熱交換対象体とを熱交換させる第2熱交換器と、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器の間を流動する作動ガスと熱交換する再生熱交換器と、を備え、
前記第1作動室の変動容積と前記第2作動室の変動容積とは、位相が180度異なり、
前記第1作動室と前記第1熱交換器との間と、前記第1熱交換器と前記再生熱交換器との間と、前記第2作動室と前記パルス管との間のうち少なくとも1つの間にチューブが設けられる、ことを特徴とするパルス管型蓄熱機関。
【請求項2】
前記チューブはイナータンスチューブであり、前記イナータンスチューブの両端近傍には作動ガスによる圧力波の腹部分が生じられる、ことを特徴とする請求項1に記載の往復動駆動機構。
【請求項3】
前記イナータンスチューブは1個以上配備され、
前記イナータンスチューブが1個配備される場合は、前記イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる作動ガスによる圧力波の波長数は、1波長数の自然数倍であり、
前記イナータンスチューブが複数個配備される場合は、前記各イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる作動ガスによる圧力波の波長数を足し合わせた値は、1波長数の自然数倍である、ことを特徴とする請求項2に記載の往復動駆動機構。
【請求項4】
前記イナータンスチューブが1個配備される場合は、前記イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる1波長数の圧力波が生じられ、
前記イナータンスチューブが2個配備される場合は、前記各イナータンスチューブの両端近傍の間には、各々作動ガスによる1/2波長の圧力波が生じる、ことを特徴とする請求項3に記載のパルス管型蓄熱機関。
【請求項5】
前記イナータンスチューブは1個以上配備され、
前記イナータンスチューブが1個配備される場合は、前記イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる作動ガスによる圧力波の波長数は、1/2波長の奇数倍であり、
前記イナータンスチューブが複数個配備される場合は、前記各イナータンスチューブの両端近傍の間に生じる作動ガスによる圧力波の波長数を足し合わせた値は、1/2波長の3以上の奇数倍である、ことを特徴とする請求項2に記載の往復動駆動機構。
【請求項6】
前記イナータンスチューブは1個配備され、前記イナータンスチューブの両端近傍の間には作動ガスによる1/2波長の圧力波が生じる、ことを特徴とする請求項5に記載のパルス管型蓄熱機関。
【請求項7】
前記イナータンスチューブの一端、又は、途中のうち少なくとも一方にバッファが設けられる、ことを特徴とする請求項2乃至6のうち少なくともいずれか一項に記載の蓄冷型冷凍機。
【請求項8】
前記第1ピストンと前記第2ピストン、又は前記第1ピストンは、リニア駆動手段の可動子に連結される、ことを特徴とする請求項1乃至7のうち少なくともいずれか一項に記載のパルス管型蓄熱機関。
【請求項9】
前記第2作動室と前記パルス管との間と、前記第1作動室と前記第1熱交換器との間と、前記第1熱交換器と前記再生熱交換器との間の内少なくともいずれか1つの間に位相調整要素が設けられ、
前記位相調整要素は、シリンダと、前記シリンダに自在に往復動する固体ピストンと、前記固体ピストンに前記往復動方向のバネ荷重を付勢する弾性部材とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のパルス管型蓄熱機関。
【請求項10】
前記パルス管の端部と、前記第1作動室と、前記第2作動室と、前記第1熱交換器と、前記再生熱交換器の端部と、前記第2熱交換器と、前記チューブとのうちいずれか一つに位相調整手段のイナータンスチューブの一端が連通され、
前記位相調整手段は、前記イナータンスチューブの他端へ連通するバッファを備え、
前記チューブは、コネクティングチューブである、ことを特徴とする請求項1に記載のパルス管型蓄熱機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−236744(P2010−236744A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84347(P2009−84347)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)