パレット及びそのパレットを用いる積載物固定方法
【課題】多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができるパレットを提供する。
【解決手段】本パレットPは、複数の挿入孔7a,8aが形成され且つ積載物Bが積載されるパレット本体1と、該パレット本体に着脱自在に立設される複数の支持部材20と、その立設された複数の該支持部材を結束する結束部材25と、を備え、前記支持部材は、前記積載物の側面を支持する支持軸部21の下端側に前記挿入孔に挿入可能な下側偏芯軸部22を偏芯して設けてなり、前記支持部材は、前記支持軸部の上端側に前記下側偏芯軸部とは反対側に偏芯して設けられ且つ前記結束部材が接触する上側偏芯軸部23を有する。
【解決手段】本パレットPは、複数の挿入孔7a,8aが形成され且つ積載物Bが積載されるパレット本体1と、該パレット本体に着脱自在に立設される複数の支持部材20と、その立設された複数の該支持部材を結束する結束部材25と、を備え、前記支持部材は、前記積載物の側面を支持する支持軸部21の下端側に前記挿入孔に挿入可能な下側偏芯軸部22を偏芯して設けてなり、前記支持部材は、前記支持軸部の上端側に前記下側偏芯軸部とは反対側に偏芯して設けられ且つ前記結束部材が接触する上側偏芯軸部23を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット及びそのパレットを用いる積載物固定方法に関し、さらに詳しくは、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができるパレット及びそのパレットを用いる積載物固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車部品として使用される薄板金属製のブランク材は、複数枚を積層した状態で搬送される。この場合、そのブランク材の平面形状・サイズに応じた専用梱包箱を製作し、この専用梱包箱を用いて搬送していた。しかし、近年、自動車のモデルチェンジは頻繁に実施されており、そのたびにブランク材の平面形状・サイズが変更され、その変更に応じて専用梱包箱も製作し直す必要があり、輸送コストが大きくなるという課題があった。
また、上記ブランク材は、通常、工場内移動のため材料台に載せて又は裸で搬送される。しかし、ブランク工業が外注化された場合には、ブランク材の加工場所と保管場所との搬送距離が長くなり、ブランク材を好適に搬送するための搬送用パレットの出現が望まれていた。
【0003】
そこで、上記課題を解決する従来技術として、多種多様な平面形状・サイズのブランク材に対応して搬送可能なパレットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、複数の丸穴8が形成され且つ積載物1が積載されるパレット本体と、このパレット本体に立設されて積載物の側面を支持する複数の支持棒3と、その立設された複数の支持棒を結束するフープ4と、を備え、各支持棒3の下端側には、上記丸穴8に挿入可能な差込ピン5が偏芯して設けてなるパレットが開示されている。これにより、パレット本体に立設された状態で、支持棒3を差込ピン5回りに回転させてフープ4で結束すれば、多種多様な平面形状・サイズのブランク材を隙間なく固定し得るようになっている。
【0004】
しかし、上記特許文献1では、図12に示すように、上記支持棒の外周面をフープで結束しているので、支持棒にかかるフープの締付け力F1’と、支持棒にかかる反力F2とのブランク材の周縁方向の位相が略一致しており、フープによる結束作業のやり方によっては複数の支持棒の結束が緩んでしまい、積載物を強固に固定できない恐れがあった。従って、上記特許文献1では、安全のために2本のフープを用いて結束を行っており、その結束作業に時間がかかり煩雑であった。また、上記特許文献1では、パレット本体上に支持軸を立設する際に、作業者が、支持軸を差込ピン回りに回転させて積載物の側面に当接させ、その当接状態を保って各支持軸にフープを巻きまわす必要があり、その作業が煩雑なものとなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−267372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができるパレット及びそのパレットを用いる積載物固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.複数の挿入孔が形成され且つ積載物が積載されるパレット本体と、該パレット本体に着脱自在に立設される複数の支持部材と、その立設された複数の該支持部材を結束する結束部材と、を備え、前記支持部材は、前記積載物の側面を支持する支持軸部の下端側に前記挿入孔に挿入可能な下側偏芯軸部を偏芯して設けてなるパレットにおいて、
前記支持部材は、前記支持軸部の上端側に前記下側偏芯軸部とは反対側に偏芯して設けられ且つ前記結束部材が接触する上側偏芯軸部を有することを特徴とするパレット。
2.前記支持部材は、前記上側偏芯軸部の上端側に設けられ且つ前記結束部材の上方への移動を防止する移動防止部を更に有する上記1.記載のパレット。
3.前記下側偏芯軸部の偏芯量(L1)と前記上側偏芯軸部の偏芯量(L2)との比(L1/L2)が1未満である上記1.又は2.に記載のパレット。
4.前記パレット本体に着脱自在に立設され且つ他のパレットを上下方向に段積み支持するための複数の段積支持部材をさらに備え、該段積支持部材の側面には、前記挿入孔に挿入可能な挿入ピンが設けられている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のパレット。
5.前記積載物を載置し得るように前記パレット本体に並設される複数の載置部材をさらに備え、複数の該載置部材のうちの少なくとも1つの載置部材は、前記挿入孔に挿入される位置決めピンによって該パレット本体に着脱自在に位置決めされている上記1.乃至4.のいずれか一項に記載のパレット。
6.前記パレット本体には、複数種の積載物に対応して予め決められた前記載置部材の取着位置を示す複数の表示部が設けられている上記5.記載のパレット。
7.前記積載物が板材積層物である上記1.乃至6.のいずれか一項に記載のパレット。
8.上記1.乃至7.のいずれか一項に記載のパレットを用いるパレットへの積載物固定方法であって、
前記パレット本体に積載物を積載する工程と、
前記パレット本体に形成された複数の前記挿入孔に、複数の前記支持部材のそれぞれの前記下側偏芯軸部を挿入して、前記積載物を囲むように複数の前記支持部材を前記パレット本体に立設する工程と、
それらの立設された複数の前記支持部材のそれぞれの前記上側偏芯軸部に結束部材を巻き回して複数の該支持部材を結束する工程と、を備えることを特徴とするパレットへの積載物固定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパレットによると、パレット本体の挿入孔に支持部材の下側偏芯軸部が挿入されて、積載物を囲むように複数の支持部材がパレット本体に立設されると共に、それらの立設された複数の支持部材の各上側偏芯軸部に結束部材が巻き回されて複数の支持部材が結束され、複数の支持部材の各支持軸部により積載物の側面が支持される。これにより、各支持部材を結束部材で結束する際に、各支持部材にかかる結束部材の締付け力と、各支持部材にかかる反力との積載物の周縁方向の位相がずれて、各支持部材には締付け方向回りの回転力が生じ、各支持部材の支持軸部により積載物の側面が強固に押圧される。その結果、必要最低限(基本的には1本)の結束部材を用いて、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができる。また、支持部材をパレット本体上に立設させる際に各支持部材を人手により回転させて積載物の押圧力を調整する必要が殆どない。
また、前記支持部材が移動防止部を有する場合は、支持部材の上端から結束部材が脱出してしまうことをより確実に防止できる。
また、前記下側偏芯軸部の偏芯量(L1)と前記上側偏芯軸部の偏芯量(L2)との比(L1/L2)が1未満である場合は、支持部材に締付け方向回りの回転力をより好適に生じさせることができる。
また、複数の段積支持部材をさらに備え、該段積支持部材の側面に、前記挿入孔に挿入可能な挿入ピンが設けられている場合は、パレット本体に立設される複数の段積支持部材によって、他のパレットを段積み支持して搬送効率や保管のスペース効率を向上させることができる。また、各段積支持部材をパレット本体から抜き取って、段積支持部材の挿入ピンをパレット本体の挿入孔に挿入して、パレット本体に段積支持部材を横置きで位置決めでき、返却パレットのコンパクト化を図ることができる。
また、複数の載置部材をさらに備え、少なくとも1つの載置部材が、前記挿入孔に挿入される位置決めピンによって該パレット本体に着脱自在に位置決めされている場合は、複数の載置部材の間の空間を利用してパレット本体に対して積載物を積載・積降できる。また、パレット本体に対する載置部材の取着位置を容易に調整でき、より多種多様な平面形状・サイズの積載物に対応できる。
また、前記パレット本体に、複数種の積載物に対応して予め決められた前記載置部材の取着位置を示す複数の表示部が設けられている場合は、積載物に応じて載置部材の取着位置をより簡易且つ迅速に調整できる。
また、前記積載物が板材積層物である場合は、多種多様な平面形状・サイズの板材積層物を確実且つ容易に固定することができる。
本発明のパレットへの積載物固定方法によると、先ず、パレット本体に積載物が積載され、次に、パレット本体の挿入孔に支持部材の下側偏芯軸部が挿入されて、積載物を囲むように複数の支持部材がパレット本体に立設され、次いで、それらの立設された複数の支持部材の各上側偏芯軸部に結束部材が巻き回されて複数の支持部材が結束され、複数の支持部材の各支持軸部により積載物の側面が支持される。これにより、各支持部材を結束部材で結束する際に、各支持部材にかかる結束部材の締付け力と、各支持部材にかかる反力との積載物の周縁方向の位相がずれて、各支持部材には締付け方向回りの回転力が生じ、各支持部材の支持軸部により積載物の側面が強固に押圧される。その結果、必要最低限(基本的には1本)の結束部材を用いて、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができる。また、支持部材をパレット本体上に立設させる際に各支持部材を人手により回転させて積載物の押圧力を調整する必要が殆どない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.パレット
本実施形態1.に係るパレットは、以下に述べるパレット本体、支持部材及び結束部材を備えている。このパレットは、例えば、後述する段積支持部材及び載置部材のうちの1種又は2種以上をさらに備えることができる。
【0010】
上記「パレット本体」は、多数の挿入孔が形成され且つ積載物が積載され得る限り、その構造、形状、材質等は特に問わない。この挿入孔の形状は、通常、円形であるが、上記支持部材の後述の下側偏芯軸部が回転し得る限り、多角形であってもよい。
ここで、上記「積載物」の種類は特に問わないが、例えば、複数の板材を積層してなる板材積層物を挙げることができる。この板材としては、例えば、プレス機、レーザ切断機又はシャー切断機により加工されたブランク材を挙げることができる。この場合、上記パレット本体には、例えば、プレス機等に付設される加工品積載用のテーブル上に設けられた位置決めピンが係合する被係合部が設けられていることができる。
【0011】
上記パレット本体は、例えば、上下に対向して配設され且つ多数の挿入孔が形成された上側板部材及び下側板部材を有することができる。この場合、上側板部材の挿入孔の直径が下側板部材の挿入孔の直径より大きな値に設定され、これら各挿入孔に、支持部材の後述する段差状の下側偏芯軸部を挿入させることが好ましい(図6参照)。挿入孔に対して下側偏芯軸部をより円滑に回転させ得るためである。
上記パレット本体は、例えば、フォークリフトのフォークが挿入可能であり且つそのフォークの挿入を案内する縦断面逆U字状の案内部材を有することができる。この案内部材は、パレット本体の前後方向に延びる前後案内部材と、パレット本体の左右方向に延びる左右案内部材とからなることが好ましい。
【0012】
上記「支持部材」は、上記パレット本体上に着脱自在に立設され、以下に述べる支持軸部、下側偏芯軸部及び上側偏芯軸部を有している。この支持部材は、通常、棒状に形成されている。
【0013】
上記「支持軸部」は、上記パレット本体上に積載された積載物の側面を支持し得る限り、その形状、大きさ、材質等は特に問わない。この支持軸部は、通常、円形をなしているが、積載物の側面を支持し得る限り、多角形をなしていてもよい。また、この支持軸部は、例えば、中空筒状であったり、中実状であったりできる。
【0014】
上記「下側偏芯軸部」は、上記支持軸部の下端側に支持軸部の軸心に対して偏芯して設けられ且つ上記挿入孔に挿入可能である限り、その形状、材質等は特に問わない。この下側偏芯軸部の支持軸部に対する偏芯量は、各軸部の直径等に応じて適宜選択することができる。また、この下側偏芯軸部は、通常、円形をなしているが、挿入孔に対して円滑に回転し得る限り、多角形をなしていてもよい。また、この下側偏芯軸部は、例えば、中空筒状であったり、中実状であったりできる。さらに、この下側偏芯軸部は、例えば、上述の上側板部材の大径挿入孔に挿入される大径軸部と、下側板部材の小径挿入孔に挿入される小径軸部とからなる段差状に形成されていることができる(図6参照)。
【0015】
上記「上側偏芯軸部」は、上記支持軸部の上端側において下側偏芯軸部とは反対側に支持軸部の軸心に対して偏芯して設けられ且つ上記結束部材が接触し得る限り、その形状、材質等は特に問わない。この上側偏芯軸部の支持軸部に対する偏芯量は、各軸部の直径等に応じて適宜選択することができる。また、この上側偏芯軸部は、通常、円形をなしているが、結束部材で結束し得る限り、多角形をなしていてもよい。また、この上側偏芯軸部は、例えば、中空筒状であったり、中実状であったりできる。
【0016】
ここで、図7〜図9に示すように、下側偏芯軸部22の偏芯量L1と上側偏芯軸部23の偏芯量L2との比L1/L2は、1未満(特に、0.3〜0.7)であることが好ましい。
また、上側偏芯軸部23の軸心は、例えば、支持軸部21の軸心と下側偏芯軸部22の軸心とを結ぶ径方向の直線上に位置することができる。これにより、支持部材に締付け方向回りの回転力をより好適に生じさせることができる。
さらに、支持軸部21の直径は、例えば、下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23の直径より大きな値に設定されており、支持軸部21の横断面の投影面内に下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23のそれぞれの横断面が配設されていることができる。この場合、上側偏芯軸部23の直径は、下側偏芯軸部22の直径より小さな値に設定されていることが好ましい。
【0017】
なお、上記「下側偏芯軸部とは反対側に偏芯して」とは、支持軸部に対する下側偏芯軸部の偏芯方向と直交し且つ支持軸部の軸心を通る径方向の直線で区画される一方の領域に下側偏芯軸部の軸心が位置するとき、他方の領域に上側偏芯軸部の軸心が位置する状態を意図する。
【0018】
上記支持部材は、例えば、上側偏芯軸部の上端側に設けられ且つ結束部材の上方への移動を防止する移動防止部を更に有することができる。この移動防止部は、例えば、上側偏芯軸部の上端縁側から遠心方向に突出する平板状に形成されていることができる(図7参照)。
【0019】
上記「結束部材」は、パレット本体に立設された複数の支持部材を結束し得る限り、その形状、材質、個数等は特に問わない。この結束部材は、通常、結束状態において輪状をなしている。また、この結束部材としては、例えば、帯状物、紐状物等を挙げることができる。
【0020】
上記「段積支持部材」は、パレット本体に立設され且つ他のパレットを上下方向に段積み支持するためのものである限り、その形状、材質、個数等は特に問わない。この段積支持部材は、通常、棒状に形成されている。
上記段積支持部材の取着形態としては、例えば、(1)パレット本体に着脱自在に装着され、この段積支持部材の側面に上記挿入孔に挿入可能な挿入ピンが設けられている形態、(2)パレット本体に折畳み自在に支持されている形態、(3)パレット本体に着脱不可に固定されている形態等を挙げることができる。
【0021】
上記「載置部材」は、積載物を載置し得るようにパレット本体に複数並設されるものである限り、その形状、材質、個数等は特に問わない。この載置部材は、通常、棒状に形成されている。
上記載置部材の配置形態としては、例えば、(1)パレット本体に適宜固定手段(溶接、ねじ止め等)を介して固定されている形態、(2)パレット本体に形成された上記挿入孔に挿入される位置決めピンによってパレット本体に着脱自在に位置決めされている形態等を挙げることができる。
上記(2)形態の場合、パレット本体には、平面形状・サイズが異なる複数種の積載物に対応して予め決められた載置部材の取着位置を示す複数の表示部が形成されていることが好ましい。この表示部の表示形態としては、例えば、色彩、目印、模様等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0022】
2.パレットへの積載物固定方法
本実施形態2.に係るパレットへの積載物固定方法は、上記実施形態1.で説明したパレットを用いるパレットへの積載物固定方法であって、以下に述べる積載工程、立設工程及び結束工程を備えている。
【0023】
上記「積載工程」は、上記パレット本体に積載物を積載する工程である限り、その積載形態、タイミング等は特に問わない。
上記「立設工程」は、上記パレット本体に形成された複数の前記挿入孔に、複数の前記支持部材のそれぞれの前記下側偏芯軸部を挿入して、前記積載物を囲むように複数の前記支持部材を前記パレット本体に立設する工程である限り、その立設形態、タイミング等は特に問わない。
上記「結束工程」は、上記立設工程で立設された複数の前記支持部材のそれぞれの前記上側偏芯軸部に結束部材を巻き回して複数の該支持部材を結束する工程である限り、その結束形態、タイミング等は特に問わない。この結束工程は、例えば、結束状態で各支持部材に締付け方向回りの回転モーメントが生じている工程であることができる。また、この結束工程は、例えば、1本の結束部材を用いて複数の支持部材を結束する工程であることができる。
【0024】
3.パレットへの積載物固定構造体
本実施形態に係るパレットへの積載物固定構造体としては、例えば、上記実施形態1.のパレットと、該パレットに積載される積載物と、を備えるパレットへの積載物固定構造体であって、前記パレット本体に形成された複数の前記挿入孔に、複数の前記支持部材のそれぞれの前記下側偏芯軸部が挿入されて、前記積載物を囲むように複数の前記支持部材が前記パレット本体に立設されていると共に、それらの立設された複数の前記支持部材のそれぞれの前記上側偏芯軸部に結束部材が巻き回されて複数の該支持部材が結束されていることを特徴とするものを挙げることができる。
【実施例】
【0025】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明の「積載物」として、プレス機で加工される板状のブランク材を多数積層してなる板材積層物B(図1参照)を例示する。
【0026】
(1)パレットの構成
本実施例に係るパレットPは、図1〜4に示すように、パレット本体1を備えている。このパレット本体1は、上下方向に延びる角パイプ状の複数(図中6つ)の脚部材2の下端部に底板部材3を溶接等により固定してなされている。これら各脚部材2には、スペーサ部材5及び支持部材6(図2及び3参照)を介して、平面矩形状の上側板部材7及び下側板部材8が上下に所定間隔をもって対向するように溶接等により固定されている。また、各上側板部材7及び下側板部材8には、対応する位置に円形の多数の挿通孔7a,8a(図6及び7参照)が所定のピッチ間隔でそれぞれ貫通形成されている。この上側板部材7に形成される挿通孔7aの直径は、下側板部材8に形成される挿通孔8aの直径より大きな値に設定されている。また、隣接する各挿通孔7a,8aの中心を結ぶ直線l(図1参照)は各板部材7,8の辺に対して所定の角度A(例えば、15度)で傾斜している。
【0027】
上記下側板部材8の下面には、フォークリフトのフォーク(図示せず)が挿入可能である縦断面逆U字状の複数(図2中2つ)の前後案内部材9、及び複数(図3中2つ)の左右案内部材10が溶接等により固定されている。また、上記支持部材6と底板部材3との間における対向する側縁部には、V字状の複数(図1中4つ)の被係合部材12が溶接等により固定されている。各被係合部材12には、プレス機(図示せず)に付設される加工品積載用のテーブル30上に設けられた位置決め用ピン13が係合されるようになっている(図10参照)。
【0028】
上記脚部材2には、図6に示すように、他のパレットPを上下に段積み支持するための上下方向に延びる角パイプ状の段積支持部材15が着脱自在に装着されている。各段積支持部材15の下端側には、脚体部2の内部空間にその上方から挿入可能な下側挿入部15aが設けられている。また、各段積支持部材15の上端側には、脚部材2の内部空間に下方から挿入可能な角すい台状の上側挿入部15bが設けられている。さらに、各段積支持部材15の1側面には、図2に示すように、上記挿入孔7aに挿入可能な複数(図中2つ)の挿入ピン16が所定の間隔で設けられている。
【0029】
上記パレット本体1には、図1に示すように、パレットPの左右方向に延びる角パイプ状の複数(図中5つ)の載置部材17a〜17eが並設されている。これら複数の載置部材17a〜17eのうちパレットPの中央寄りの載置部材17a,17b,17cは、上側板部材7の上面に溶接等により固定されている。また、パレットPの外側寄りの載置部材17d,17eの長手方向の両端側には、縦断面L字状の支持片18が溶接等により固定されている。そして、この支持片18に形成された長孔18aを介して上記挿入孔7aに段差状の位置決めピン19を挿入することによって、各載置部材17d,17eがパレット本体1に位置調整自在に位置決めされている(図6参照)。
【0030】
上記パレット本体1には、板材積層物Bを支持するための複数の支持部材20が着脱自在に立設されるようになっている。各支持部材20は、図7〜9に示すように、支持軸部21、下側偏芯軸部22、上側偏芯軸部23及び移動防止部24と、を有しており、全体として棒状をなしている。
なお、本実施例では、1本の鋼棒材を削り出してなる支持部材20を例示するが、これに限定されず、例えば、複数の部材を溶接等により固定してなる支持部材としてもよい。
【0031】
上記支持軸部21は、所定の外径(例えば、32mm)及び所定の軸長さ(例えば、400mm)を有する円筒状に形成されている。
【0032】
上記下側偏芯軸部22は、支持軸部21の下端側に所定の偏芯量L1(例えば、3mm)で偏芯して設けられている。この下側偏芯軸部22は、上側板部材7の挿入孔7aに挿入可能な大径軸部22aと、この大径軸部22aの下端側に連なり且つ下側板部材8の挿入孔8aに挿入可能な小径軸部22bとからなる段差状に形成されている。この大径軸部22aは、所定の外径(例えば、26mm)及び所定の軸長さ(例えば、63mm)を有する円柱状に形成されている。また、この小径軸部22bは、所定の外径(例えば、19mm)及び所定の軸長さ(例えば、16mm)を有する円柱状に形成されている。
【0033】
上記上側偏芯軸部23は、支持軸部21の上端側において下側偏芯軸部22とは反対側に所定の偏芯量L2(例えば、6mm)で偏芯して設けられている。この上側偏芯軸部23は、所定の外径(例えば、20mm)及び所定の軸長さ(例えば、25mm)を有する円柱状に形成されている。この上側偏芯軸部23には、軸心と交差する横方向に貫通する貫通孔23aが形成されている。この貫通孔23aに紐等を挿通して多数の支持部材20を結束し得るようになっている。
【0034】
ここで、下側偏芯軸部22の偏芯量L1と上側偏芯軸部23の偏芯量L2との比L1/L2が0.5となっている。また、上側偏芯軸部23の軸心は、支持軸部21の軸心と下側偏芯軸部22の軸心とを結ぶ径方向の直線上に位置している。また、支持軸部21の外径は、下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23の外径より大きな値に設定されており、支持軸部21の横断面の投影面内に下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23のそれぞれの横断面が配設されている。さらに、上側偏芯軸部23の直径は、下側偏芯軸部22(大径軸部22a)の直径より小さな値に設定されている。
【0035】
上記移動防止部24は、上側偏芯軸部23の上端側に設けられている。この移動防止部24は、上側偏芯軸部23の上端縁側から遠心方向に突出する円盤状に形成されている。そして、この移動防止部24によって、上側偏芯軸部23に圧接する結束部材25の上方への移動が防止されることとなる。なお、結束部材25としては、周知の樹脂製フープが使用される。
【0036】
(2)パレットへの積載物固定方法
次に、上記構成のパレットPへの板状積層物Bの固定方法について説明する。
先ず、図10に示すように、フォークリフト等でパレットPを搬送して、このパレットPの被係止部材12に、パイラーのテーブル30上の位置決めピン13を係止させて、パレットPをテーブル30上の所定位置に位置決めする。次に、パイラーに設けられた吸着ハンド31等によって型抜きされたブランク材がパレットPの載置部材17上に一枚ずつ載置されることとなる。
【0037】
次いで、図11に示すように、上側板部材7及び下側板部材8の各挿入孔7a,8aに、支持部材20の下側偏芯軸部22を挿入していき、板状積層物Bを囲むように複数の支持部材20をパレット本体1上に立設する。その後、図4に示すように、それらの立設された複数の支持部材20のそれぞれの上側偏芯軸部22に結束部材25を巻き回して、複数の支持部材20を結束する。このとき、図12に示すように、支持部材20にかかる結束部材25の締付け力F1と、支持部材20にかかる反力F2との積載物Bの周縁方向の位相がずれて、支持部材20には締付け方向回りの回転モーメントMが生じ、支持部材20の支持軸部21により積載物Bの側面が強固に押圧されることとなる。
【0038】
その後、必要に応じて、図5に示すように、段積支持部材15を介して複数のパレットPを上下に段積みして、その段積み状態で複数のパレットPが搬送されたり、複数のパレットPが保管されたりすることとなる。さらに、空パレットPを返却する場合には、パレット本体1から段積支持部材15及び支持部材20を抜き取って、図13に示すように、段積支持部材15の挿入ピン16を上側板部材7の挿入孔7aに挿入して、その横置き状態の段積支持部材15と載置部材17a,17b,17cとで囲まれる空間内に多数の支持部材20を載置して、空パレットPが返却されることとなる。
【0039】
(3)実施例の効果
本実施例のパレットPでは、支持軸部21の上端側に、下側偏芯軸部22とは反対側に偏芯する上側偏芯軸部23を設けて支持部材20を構成し、パレット本体1に立設された複数の支持部材20の各上側偏芯軸部23に無端帯状の結束部材25を巻き回して、それら複数の支持部材20を結束するようにしたので、各支持部材20を結束部材25で結束する際に、各支持部材20において、結束部材25の締付け力F1と反力F2との位相がずれて軸心の締付け方向回りの回転モーメントMが生じ、各支持部材20の支持軸部21により積載物の側面が強固に押圧される。その結果、1本の結束部材25を用いて、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができる。また、結束時に各支持部材20が積載物を押圧する方向に回転するので、各支持部材20をパレット本体1上に立設させる際に各支持部材20を人手により回転させて積載物に対する押圧力を調整する必要が殆どなくなる。また、結束部材25の使用によって、支持部材20の強度を減らすことができる(例えば、支持部材20の使用本数の低減又は軽量化)。
また、本実施例では、上側偏芯軸部23の上端側に円盤状の移動防止部24を設けたので、支持部材20から結束部材25が脱出してしまうことをより確実に防止できる。
また、本実施例では、下側偏芯軸部22の偏芯量L1と上側偏芯軸部23の偏芯量L2との比(L1/L2)を1未満の値(0.5)に設定したので、支持部材20に締付け方向回りの回転力をより好適に生じさせることができる。
また、本実施例では、他のパレットPを段積み支持するための段積支持部材15の側面に、上側板部材7の挿入孔7aに挿入可能な挿入ピン16を設けたので、段積支持部材15の挿入ピン16を挿入孔7aに挿入して、パレット本体1に段積支持部材15を横置きで位置決めでき、返却パレットPのコンパクト化を図ることができる。
また、本実施例では、パレット本体1上に棒状の複数の載置部材17a〜17eを並設するようにしたので、複数の載置部材17a〜17eの間の空間にフォークリフトのフォーク等を挿入することによって、パレット本体1に対して積載物を積載・積降することができる。また、外側寄りの載置部材17d,17eを、上側板部材7の挿入孔7aに挿入される位置決めピン19によってパレット本体1に着脱自在に位置決めするようにしたので、パレット本体1に対する載置部材17d,17eの取着位置を容易に調整でき、より多種多様な平面形状・サイズの積載物に対応できる。
【0040】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例のパレットPにおいて、図13に示すように、パレット本体1には、平面形状・サイズが異なる複数種の積載物に対応して予め決められた載置部材17d,17eの取着位置を示す複数の表示ライン部26(図中仮想線で示す。)を異なる色彩で着色形成してあってもよい。これにより、複数種の積載物に応じて載置部材17d,17eの取着位置をより簡易且つ迅速に調整することができる。
また、上記実施例では、支持軸部21の軸心、下側偏芯軸部22の軸心、及び上側偏芯軸部23の軸心が1直線上に位置するように支持部材20を構成したが、これに限定されず、例えば、図14に示すように、支持軸部21の軸心及び下側偏芯軸部22の偏芯軸心を結ぶ直線L3と、支持軸部21の軸心及び上側偏芯軸部23の偏芯軸心を結ぶ直線L4とが所定角度(例えば、30度)で交差するように支持部材20’を構成してもよい。
さらに、上記実施例では、支持軸部21の横断面の投影面内に下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23の横断面が位置するように支持部材20を構成したが、これに限定されず、例えば、図15に示すように、支持軸部21の横断面の投影面から、下側偏芯軸部22の横断面及び/又は上側偏芯軸部23の横断面の一部がはみ出すように支持部材20"を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
多種多様な平面形状・サイズの積載物を搬送する技術として広く利用される。特に、複数枚のブランク材を積層してなる積層物の搬送技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例に係るパレットの平面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】図1のIII矢視図である。
【図4】実施例に係るパレットの斜視図である。
【図5】上記パレットの段積み状態を示す斜視図である。
【図6】段積み状態のパレットの要部縦断面図である。
【図7】実施例に係る支持部材の側面図である。
【図8】図7のVIII矢視拡大図である。
【図9】図7のIX−IX線断面拡大図である。
【図10】パレットへのブランク材の積層作用を説明するための説明図である。
【図11】パレットへの支持部材の立設作用を説明するための説明図である。
【図12】結束部材による支持部材の結束作用を説明するための説明図である。
【図13】空パレットの返却の一例を説明するための説明図である。
【図14】支持部材の他の形態を説明するための説明図である。
【図15】支持部材のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1;パレット本体、7a,8a;挿通孔、15;段積支持部材、16;挿入ピン、17a〜17e;載置部材、19;位置決めピン、20,20’,20";支持部材、21;支持軸部、22;下側偏芯軸部、23;上側偏芯軸部、24;移動防止部材、25;結束部材、26;表示ライン部、P;パレット、B;板状積層物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット及びそのパレットを用いる積載物固定方法に関し、さらに詳しくは、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができるパレット及びそのパレットを用いる積載物固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車部品として使用される薄板金属製のブランク材は、複数枚を積層した状態で搬送される。この場合、そのブランク材の平面形状・サイズに応じた専用梱包箱を製作し、この専用梱包箱を用いて搬送していた。しかし、近年、自動車のモデルチェンジは頻繁に実施されており、そのたびにブランク材の平面形状・サイズが変更され、その変更に応じて専用梱包箱も製作し直す必要があり、輸送コストが大きくなるという課題があった。
また、上記ブランク材は、通常、工場内移動のため材料台に載せて又は裸で搬送される。しかし、ブランク工業が外注化された場合には、ブランク材の加工場所と保管場所との搬送距離が長くなり、ブランク材を好適に搬送するための搬送用パレットの出現が望まれていた。
【0003】
そこで、上記課題を解決する従来技術として、多種多様な平面形状・サイズのブランク材に対応して搬送可能なパレットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、複数の丸穴8が形成され且つ積載物1が積載されるパレット本体と、このパレット本体に立設されて積載物の側面を支持する複数の支持棒3と、その立設された複数の支持棒を結束するフープ4と、を備え、各支持棒3の下端側には、上記丸穴8に挿入可能な差込ピン5が偏芯して設けてなるパレットが開示されている。これにより、パレット本体に立設された状態で、支持棒3を差込ピン5回りに回転させてフープ4で結束すれば、多種多様な平面形状・サイズのブランク材を隙間なく固定し得るようになっている。
【0004】
しかし、上記特許文献1では、図12に示すように、上記支持棒の外周面をフープで結束しているので、支持棒にかかるフープの締付け力F1’と、支持棒にかかる反力F2とのブランク材の周縁方向の位相が略一致しており、フープによる結束作業のやり方によっては複数の支持棒の結束が緩んでしまい、積載物を強固に固定できない恐れがあった。従って、上記特許文献1では、安全のために2本のフープを用いて結束を行っており、その結束作業に時間がかかり煩雑であった。また、上記特許文献1では、パレット本体上に支持軸を立設する際に、作業者が、支持軸を差込ピン回りに回転させて積載物の側面に当接させ、その当接状態を保って各支持軸にフープを巻きまわす必要があり、その作業が煩雑なものとなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−267372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができるパレット及びそのパレットを用いる積載物固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.複数の挿入孔が形成され且つ積載物が積載されるパレット本体と、該パレット本体に着脱自在に立設される複数の支持部材と、その立設された複数の該支持部材を結束する結束部材と、を備え、前記支持部材は、前記積載物の側面を支持する支持軸部の下端側に前記挿入孔に挿入可能な下側偏芯軸部を偏芯して設けてなるパレットにおいて、
前記支持部材は、前記支持軸部の上端側に前記下側偏芯軸部とは反対側に偏芯して設けられ且つ前記結束部材が接触する上側偏芯軸部を有することを特徴とするパレット。
2.前記支持部材は、前記上側偏芯軸部の上端側に設けられ且つ前記結束部材の上方への移動を防止する移動防止部を更に有する上記1.記載のパレット。
3.前記下側偏芯軸部の偏芯量(L1)と前記上側偏芯軸部の偏芯量(L2)との比(L1/L2)が1未満である上記1.又は2.に記載のパレット。
4.前記パレット本体に着脱自在に立設され且つ他のパレットを上下方向に段積み支持するための複数の段積支持部材をさらに備え、該段積支持部材の側面には、前記挿入孔に挿入可能な挿入ピンが設けられている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のパレット。
5.前記積載物を載置し得るように前記パレット本体に並設される複数の載置部材をさらに備え、複数の該載置部材のうちの少なくとも1つの載置部材は、前記挿入孔に挿入される位置決めピンによって該パレット本体に着脱自在に位置決めされている上記1.乃至4.のいずれか一項に記載のパレット。
6.前記パレット本体には、複数種の積載物に対応して予め決められた前記載置部材の取着位置を示す複数の表示部が設けられている上記5.記載のパレット。
7.前記積載物が板材積層物である上記1.乃至6.のいずれか一項に記載のパレット。
8.上記1.乃至7.のいずれか一項に記載のパレットを用いるパレットへの積載物固定方法であって、
前記パレット本体に積載物を積載する工程と、
前記パレット本体に形成された複数の前記挿入孔に、複数の前記支持部材のそれぞれの前記下側偏芯軸部を挿入して、前記積載物を囲むように複数の前記支持部材を前記パレット本体に立設する工程と、
それらの立設された複数の前記支持部材のそれぞれの前記上側偏芯軸部に結束部材を巻き回して複数の該支持部材を結束する工程と、を備えることを特徴とするパレットへの積載物固定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパレットによると、パレット本体の挿入孔に支持部材の下側偏芯軸部が挿入されて、積載物を囲むように複数の支持部材がパレット本体に立設されると共に、それらの立設された複数の支持部材の各上側偏芯軸部に結束部材が巻き回されて複数の支持部材が結束され、複数の支持部材の各支持軸部により積載物の側面が支持される。これにより、各支持部材を結束部材で結束する際に、各支持部材にかかる結束部材の締付け力と、各支持部材にかかる反力との積載物の周縁方向の位相がずれて、各支持部材には締付け方向回りの回転力が生じ、各支持部材の支持軸部により積載物の側面が強固に押圧される。その結果、必要最低限(基本的には1本)の結束部材を用いて、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができる。また、支持部材をパレット本体上に立設させる際に各支持部材を人手により回転させて積載物の押圧力を調整する必要が殆どない。
また、前記支持部材が移動防止部を有する場合は、支持部材の上端から結束部材が脱出してしまうことをより確実に防止できる。
また、前記下側偏芯軸部の偏芯量(L1)と前記上側偏芯軸部の偏芯量(L2)との比(L1/L2)が1未満である場合は、支持部材に締付け方向回りの回転力をより好適に生じさせることができる。
また、複数の段積支持部材をさらに備え、該段積支持部材の側面に、前記挿入孔に挿入可能な挿入ピンが設けられている場合は、パレット本体に立設される複数の段積支持部材によって、他のパレットを段積み支持して搬送効率や保管のスペース効率を向上させることができる。また、各段積支持部材をパレット本体から抜き取って、段積支持部材の挿入ピンをパレット本体の挿入孔に挿入して、パレット本体に段積支持部材を横置きで位置決めでき、返却パレットのコンパクト化を図ることができる。
また、複数の載置部材をさらに備え、少なくとも1つの載置部材が、前記挿入孔に挿入される位置決めピンによって該パレット本体に着脱自在に位置決めされている場合は、複数の載置部材の間の空間を利用してパレット本体に対して積載物を積載・積降できる。また、パレット本体に対する載置部材の取着位置を容易に調整でき、より多種多様な平面形状・サイズの積載物に対応できる。
また、前記パレット本体に、複数種の積載物に対応して予め決められた前記載置部材の取着位置を示す複数の表示部が設けられている場合は、積載物に応じて載置部材の取着位置をより簡易且つ迅速に調整できる。
また、前記積載物が板材積層物である場合は、多種多様な平面形状・サイズの板材積層物を確実且つ容易に固定することができる。
本発明のパレットへの積載物固定方法によると、先ず、パレット本体に積載物が積載され、次に、パレット本体の挿入孔に支持部材の下側偏芯軸部が挿入されて、積載物を囲むように複数の支持部材がパレット本体に立設され、次いで、それらの立設された複数の支持部材の各上側偏芯軸部に結束部材が巻き回されて複数の支持部材が結束され、複数の支持部材の各支持軸部により積載物の側面が支持される。これにより、各支持部材を結束部材で結束する際に、各支持部材にかかる結束部材の締付け力と、各支持部材にかかる反力との積載物の周縁方向の位相がずれて、各支持部材には締付け方向回りの回転力が生じ、各支持部材の支持軸部により積載物の側面が強固に押圧される。その結果、必要最低限(基本的には1本)の結束部材を用いて、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができる。また、支持部材をパレット本体上に立設させる際に各支持部材を人手により回転させて積載物の押圧力を調整する必要が殆どない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.パレット
本実施形態1.に係るパレットは、以下に述べるパレット本体、支持部材及び結束部材を備えている。このパレットは、例えば、後述する段積支持部材及び載置部材のうちの1種又は2種以上をさらに備えることができる。
【0010】
上記「パレット本体」は、多数の挿入孔が形成され且つ積載物が積載され得る限り、その構造、形状、材質等は特に問わない。この挿入孔の形状は、通常、円形であるが、上記支持部材の後述の下側偏芯軸部が回転し得る限り、多角形であってもよい。
ここで、上記「積載物」の種類は特に問わないが、例えば、複数の板材を積層してなる板材積層物を挙げることができる。この板材としては、例えば、プレス機、レーザ切断機又はシャー切断機により加工されたブランク材を挙げることができる。この場合、上記パレット本体には、例えば、プレス機等に付設される加工品積載用のテーブル上に設けられた位置決めピンが係合する被係合部が設けられていることができる。
【0011】
上記パレット本体は、例えば、上下に対向して配設され且つ多数の挿入孔が形成された上側板部材及び下側板部材を有することができる。この場合、上側板部材の挿入孔の直径が下側板部材の挿入孔の直径より大きな値に設定され、これら各挿入孔に、支持部材の後述する段差状の下側偏芯軸部を挿入させることが好ましい(図6参照)。挿入孔に対して下側偏芯軸部をより円滑に回転させ得るためである。
上記パレット本体は、例えば、フォークリフトのフォークが挿入可能であり且つそのフォークの挿入を案内する縦断面逆U字状の案内部材を有することができる。この案内部材は、パレット本体の前後方向に延びる前後案内部材と、パレット本体の左右方向に延びる左右案内部材とからなることが好ましい。
【0012】
上記「支持部材」は、上記パレット本体上に着脱自在に立設され、以下に述べる支持軸部、下側偏芯軸部及び上側偏芯軸部を有している。この支持部材は、通常、棒状に形成されている。
【0013】
上記「支持軸部」は、上記パレット本体上に積載された積載物の側面を支持し得る限り、その形状、大きさ、材質等は特に問わない。この支持軸部は、通常、円形をなしているが、積載物の側面を支持し得る限り、多角形をなしていてもよい。また、この支持軸部は、例えば、中空筒状であったり、中実状であったりできる。
【0014】
上記「下側偏芯軸部」は、上記支持軸部の下端側に支持軸部の軸心に対して偏芯して設けられ且つ上記挿入孔に挿入可能である限り、その形状、材質等は特に問わない。この下側偏芯軸部の支持軸部に対する偏芯量は、各軸部の直径等に応じて適宜選択することができる。また、この下側偏芯軸部は、通常、円形をなしているが、挿入孔に対して円滑に回転し得る限り、多角形をなしていてもよい。また、この下側偏芯軸部は、例えば、中空筒状であったり、中実状であったりできる。さらに、この下側偏芯軸部は、例えば、上述の上側板部材の大径挿入孔に挿入される大径軸部と、下側板部材の小径挿入孔に挿入される小径軸部とからなる段差状に形成されていることができる(図6参照)。
【0015】
上記「上側偏芯軸部」は、上記支持軸部の上端側において下側偏芯軸部とは反対側に支持軸部の軸心に対して偏芯して設けられ且つ上記結束部材が接触し得る限り、その形状、材質等は特に問わない。この上側偏芯軸部の支持軸部に対する偏芯量は、各軸部の直径等に応じて適宜選択することができる。また、この上側偏芯軸部は、通常、円形をなしているが、結束部材で結束し得る限り、多角形をなしていてもよい。また、この上側偏芯軸部は、例えば、中空筒状であったり、中実状であったりできる。
【0016】
ここで、図7〜図9に示すように、下側偏芯軸部22の偏芯量L1と上側偏芯軸部23の偏芯量L2との比L1/L2は、1未満(特に、0.3〜0.7)であることが好ましい。
また、上側偏芯軸部23の軸心は、例えば、支持軸部21の軸心と下側偏芯軸部22の軸心とを結ぶ径方向の直線上に位置することができる。これにより、支持部材に締付け方向回りの回転力をより好適に生じさせることができる。
さらに、支持軸部21の直径は、例えば、下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23の直径より大きな値に設定されており、支持軸部21の横断面の投影面内に下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23のそれぞれの横断面が配設されていることができる。この場合、上側偏芯軸部23の直径は、下側偏芯軸部22の直径より小さな値に設定されていることが好ましい。
【0017】
なお、上記「下側偏芯軸部とは反対側に偏芯して」とは、支持軸部に対する下側偏芯軸部の偏芯方向と直交し且つ支持軸部の軸心を通る径方向の直線で区画される一方の領域に下側偏芯軸部の軸心が位置するとき、他方の領域に上側偏芯軸部の軸心が位置する状態を意図する。
【0018】
上記支持部材は、例えば、上側偏芯軸部の上端側に設けられ且つ結束部材の上方への移動を防止する移動防止部を更に有することができる。この移動防止部は、例えば、上側偏芯軸部の上端縁側から遠心方向に突出する平板状に形成されていることができる(図7参照)。
【0019】
上記「結束部材」は、パレット本体に立設された複数の支持部材を結束し得る限り、その形状、材質、個数等は特に問わない。この結束部材は、通常、結束状態において輪状をなしている。また、この結束部材としては、例えば、帯状物、紐状物等を挙げることができる。
【0020】
上記「段積支持部材」は、パレット本体に立設され且つ他のパレットを上下方向に段積み支持するためのものである限り、その形状、材質、個数等は特に問わない。この段積支持部材は、通常、棒状に形成されている。
上記段積支持部材の取着形態としては、例えば、(1)パレット本体に着脱自在に装着され、この段積支持部材の側面に上記挿入孔に挿入可能な挿入ピンが設けられている形態、(2)パレット本体に折畳み自在に支持されている形態、(3)パレット本体に着脱不可に固定されている形態等を挙げることができる。
【0021】
上記「載置部材」は、積載物を載置し得るようにパレット本体に複数並設されるものである限り、その形状、材質、個数等は特に問わない。この載置部材は、通常、棒状に形成されている。
上記載置部材の配置形態としては、例えば、(1)パレット本体に適宜固定手段(溶接、ねじ止め等)を介して固定されている形態、(2)パレット本体に形成された上記挿入孔に挿入される位置決めピンによってパレット本体に着脱自在に位置決めされている形態等を挙げることができる。
上記(2)形態の場合、パレット本体には、平面形状・サイズが異なる複数種の積載物に対応して予め決められた載置部材の取着位置を示す複数の表示部が形成されていることが好ましい。この表示部の表示形態としては、例えば、色彩、目印、模様等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0022】
2.パレットへの積載物固定方法
本実施形態2.に係るパレットへの積載物固定方法は、上記実施形態1.で説明したパレットを用いるパレットへの積載物固定方法であって、以下に述べる積載工程、立設工程及び結束工程を備えている。
【0023】
上記「積載工程」は、上記パレット本体に積載物を積載する工程である限り、その積載形態、タイミング等は特に問わない。
上記「立設工程」は、上記パレット本体に形成された複数の前記挿入孔に、複数の前記支持部材のそれぞれの前記下側偏芯軸部を挿入して、前記積載物を囲むように複数の前記支持部材を前記パレット本体に立設する工程である限り、その立設形態、タイミング等は特に問わない。
上記「結束工程」は、上記立設工程で立設された複数の前記支持部材のそれぞれの前記上側偏芯軸部に結束部材を巻き回して複数の該支持部材を結束する工程である限り、その結束形態、タイミング等は特に問わない。この結束工程は、例えば、結束状態で各支持部材に締付け方向回りの回転モーメントが生じている工程であることができる。また、この結束工程は、例えば、1本の結束部材を用いて複数の支持部材を結束する工程であることができる。
【0024】
3.パレットへの積載物固定構造体
本実施形態に係るパレットへの積載物固定構造体としては、例えば、上記実施形態1.のパレットと、該パレットに積載される積載物と、を備えるパレットへの積載物固定構造体であって、前記パレット本体に形成された複数の前記挿入孔に、複数の前記支持部材のそれぞれの前記下側偏芯軸部が挿入されて、前記積載物を囲むように複数の前記支持部材が前記パレット本体に立設されていると共に、それらの立設された複数の前記支持部材のそれぞれの前記上側偏芯軸部に結束部材が巻き回されて複数の該支持部材が結束されていることを特徴とするものを挙げることができる。
【実施例】
【0025】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明の「積載物」として、プレス機で加工される板状のブランク材を多数積層してなる板材積層物B(図1参照)を例示する。
【0026】
(1)パレットの構成
本実施例に係るパレットPは、図1〜4に示すように、パレット本体1を備えている。このパレット本体1は、上下方向に延びる角パイプ状の複数(図中6つ)の脚部材2の下端部に底板部材3を溶接等により固定してなされている。これら各脚部材2には、スペーサ部材5及び支持部材6(図2及び3参照)を介して、平面矩形状の上側板部材7及び下側板部材8が上下に所定間隔をもって対向するように溶接等により固定されている。また、各上側板部材7及び下側板部材8には、対応する位置に円形の多数の挿通孔7a,8a(図6及び7参照)が所定のピッチ間隔でそれぞれ貫通形成されている。この上側板部材7に形成される挿通孔7aの直径は、下側板部材8に形成される挿通孔8aの直径より大きな値に設定されている。また、隣接する各挿通孔7a,8aの中心を結ぶ直線l(図1参照)は各板部材7,8の辺に対して所定の角度A(例えば、15度)で傾斜している。
【0027】
上記下側板部材8の下面には、フォークリフトのフォーク(図示せず)が挿入可能である縦断面逆U字状の複数(図2中2つ)の前後案内部材9、及び複数(図3中2つ)の左右案内部材10が溶接等により固定されている。また、上記支持部材6と底板部材3との間における対向する側縁部には、V字状の複数(図1中4つ)の被係合部材12が溶接等により固定されている。各被係合部材12には、プレス機(図示せず)に付設される加工品積載用のテーブル30上に設けられた位置決め用ピン13が係合されるようになっている(図10参照)。
【0028】
上記脚部材2には、図6に示すように、他のパレットPを上下に段積み支持するための上下方向に延びる角パイプ状の段積支持部材15が着脱自在に装着されている。各段積支持部材15の下端側には、脚体部2の内部空間にその上方から挿入可能な下側挿入部15aが設けられている。また、各段積支持部材15の上端側には、脚部材2の内部空間に下方から挿入可能な角すい台状の上側挿入部15bが設けられている。さらに、各段積支持部材15の1側面には、図2に示すように、上記挿入孔7aに挿入可能な複数(図中2つ)の挿入ピン16が所定の間隔で設けられている。
【0029】
上記パレット本体1には、図1に示すように、パレットPの左右方向に延びる角パイプ状の複数(図中5つ)の載置部材17a〜17eが並設されている。これら複数の載置部材17a〜17eのうちパレットPの中央寄りの載置部材17a,17b,17cは、上側板部材7の上面に溶接等により固定されている。また、パレットPの外側寄りの載置部材17d,17eの長手方向の両端側には、縦断面L字状の支持片18が溶接等により固定されている。そして、この支持片18に形成された長孔18aを介して上記挿入孔7aに段差状の位置決めピン19を挿入することによって、各載置部材17d,17eがパレット本体1に位置調整自在に位置決めされている(図6参照)。
【0030】
上記パレット本体1には、板材積層物Bを支持するための複数の支持部材20が着脱自在に立設されるようになっている。各支持部材20は、図7〜9に示すように、支持軸部21、下側偏芯軸部22、上側偏芯軸部23及び移動防止部24と、を有しており、全体として棒状をなしている。
なお、本実施例では、1本の鋼棒材を削り出してなる支持部材20を例示するが、これに限定されず、例えば、複数の部材を溶接等により固定してなる支持部材としてもよい。
【0031】
上記支持軸部21は、所定の外径(例えば、32mm)及び所定の軸長さ(例えば、400mm)を有する円筒状に形成されている。
【0032】
上記下側偏芯軸部22は、支持軸部21の下端側に所定の偏芯量L1(例えば、3mm)で偏芯して設けられている。この下側偏芯軸部22は、上側板部材7の挿入孔7aに挿入可能な大径軸部22aと、この大径軸部22aの下端側に連なり且つ下側板部材8の挿入孔8aに挿入可能な小径軸部22bとからなる段差状に形成されている。この大径軸部22aは、所定の外径(例えば、26mm)及び所定の軸長さ(例えば、63mm)を有する円柱状に形成されている。また、この小径軸部22bは、所定の外径(例えば、19mm)及び所定の軸長さ(例えば、16mm)を有する円柱状に形成されている。
【0033】
上記上側偏芯軸部23は、支持軸部21の上端側において下側偏芯軸部22とは反対側に所定の偏芯量L2(例えば、6mm)で偏芯して設けられている。この上側偏芯軸部23は、所定の外径(例えば、20mm)及び所定の軸長さ(例えば、25mm)を有する円柱状に形成されている。この上側偏芯軸部23には、軸心と交差する横方向に貫通する貫通孔23aが形成されている。この貫通孔23aに紐等を挿通して多数の支持部材20を結束し得るようになっている。
【0034】
ここで、下側偏芯軸部22の偏芯量L1と上側偏芯軸部23の偏芯量L2との比L1/L2が0.5となっている。また、上側偏芯軸部23の軸心は、支持軸部21の軸心と下側偏芯軸部22の軸心とを結ぶ径方向の直線上に位置している。また、支持軸部21の外径は、下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23の外径より大きな値に設定されており、支持軸部21の横断面の投影面内に下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23のそれぞれの横断面が配設されている。さらに、上側偏芯軸部23の直径は、下側偏芯軸部22(大径軸部22a)の直径より小さな値に設定されている。
【0035】
上記移動防止部24は、上側偏芯軸部23の上端側に設けられている。この移動防止部24は、上側偏芯軸部23の上端縁側から遠心方向に突出する円盤状に形成されている。そして、この移動防止部24によって、上側偏芯軸部23に圧接する結束部材25の上方への移動が防止されることとなる。なお、結束部材25としては、周知の樹脂製フープが使用される。
【0036】
(2)パレットへの積載物固定方法
次に、上記構成のパレットPへの板状積層物Bの固定方法について説明する。
先ず、図10に示すように、フォークリフト等でパレットPを搬送して、このパレットPの被係止部材12に、パイラーのテーブル30上の位置決めピン13を係止させて、パレットPをテーブル30上の所定位置に位置決めする。次に、パイラーに設けられた吸着ハンド31等によって型抜きされたブランク材がパレットPの載置部材17上に一枚ずつ載置されることとなる。
【0037】
次いで、図11に示すように、上側板部材7及び下側板部材8の各挿入孔7a,8aに、支持部材20の下側偏芯軸部22を挿入していき、板状積層物Bを囲むように複数の支持部材20をパレット本体1上に立設する。その後、図4に示すように、それらの立設された複数の支持部材20のそれぞれの上側偏芯軸部22に結束部材25を巻き回して、複数の支持部材20を結束する。このとき、図12に示すように、支持部材20にかかる結束部材25の締付け力F1と、支持部材20にかかる反力F2との積載物Bの周縁方向の位相がずれて、支持部材20には締付け方向回りの回転モーメントMが生じ、支持部材20の支持軸部21により積載物Bの側面が強固に押圧されることとなる。
【0038】
その後、必要に応じて、図5に示すように、段積支持部材15を介して複数のパレットPを上下に段積みして、その段積み状態で複数のパレットPが搬送されたり、複数のパレットPが保管されたりすることとなる。さらに、空パレットPを返却する場合には、パレット本体1から段積支持部材15及び支持部材20を抜き取って、図13に示すように、段積支持部材15の挿入ピン16を上側板部材7の挿入孔7aに挿入して、その横置き状態の段積支持部材15と載置部材17a,17b,17cとで囲まれる空間内に多数の支持部材20を載置して、空パレットPが返却されることとなる。
【0039】
(3)実施例の効果
本実施例のパレットPでは、支持軸部21の上端側に、下側偏芯軸部22とは反対側に偏芯する上側偏芯軸部23を設けて支持部材20を構成し、パレット本体1に立設された複数の支持部材20の各上側偏芯軸部23に無端帯状の結束部材25を巻き回して、それら複数の支持部材20を結束するようにしたので、各支持部材20を結束部材25で結束する際に、各支持部材20において、結束部材25の締付け力F1と反力F2との位相がずれて軸心の締付け方向回りの回転モーメントMが生じ、各支持部材20の支持軸部21により積載物の側面が強固に押圧される。その結果、1本の結束部材25を用いて、多種多様な平面形状・サイズの積載物を確実且つ容易に固定することができる。また、結束時に各支持部材20が積載物を押圧する方向に回転するので、各支持部材20をパレット本体1上に立設させる際に各支持部材20を人手により回転させて積載物に対する押圧力を調整する必要が殆どなくなる。また、結束部材25の使用によって、支持部材20の強度を減らすことができる(例えば、支持部材20の使用本数の低減又は軽量化)。
また、本実施例では、上側偏芯軸部23の上端側に円盤状の移動防止部24を設けたので、支持部材20から結束部材25が脱出してしまうことをより確実に防止できる。
また、本実施例では、下側偏芯軸部22の偏芯量L1と上側偏芯軸部23の偏芯量L2との比(L1/L2)を1未満の値(0.5)に設定したので、支持部材20に締付け方向回りの回転力をより好適に生じさせることができる。
また、本実施例では、他のパレットPを段積み支持するための段積支持部材15の側面に、上側板部材7の挿入孔7aに挿入可能な挿入ピン16を設けたので、段積支持部材15の挿入ピン16を挿入孔7aに挿入して、パレット本体1に段積支持部材15を横置きで位置決めでき、返却パレットPのコンパクト化を図ることができる。
また、本実施例では、パレット本体1上に棒状の複数の載置部材17a〜17eを並設するようにしたので、複数の載置部材17a〜17eの間の空間にフォークリフトのフォーク等を挿入することによって、パレット本体1に対して積載物を積載・積降することができる。また、外側寄りの載置部材17d,17eを、上側板部材7の挿入孔7aに挿入される位置決めピン19によってパレット本体1に着脱自在に位置決めするようにしたので、パレット本体1に対する載置部材17d,17eの取着位置を容易に調整でき、より多種多様な平面形状・サイズの積載物に対応できる。
【0040】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例のパレットPにおいて、図13に示すように、パレット本体1には、平面形状・サイズが異なる複数種の積載物に対応して予め決められた載置部材17d,17eの取着位置を示す複数の表示ライン部26(図中仮想線で示す。)を異なる色彩で着色形成してあってもよい。これにより、複数種の積載物に応じて載置部材17d,17eの取着位置をより簡易且つ迅速に調整することができる。
また、上記実施例では、支持軸部21の軸心、下側偏芯軸部22の軸心、及び上側偏芯軸部23の軸心が1直線上に位置するように支持部材20を構成したが、これに限定されず、例えば、図14に示すように、支持軸部21の軸心及び下側偏芯軸部22の偏芯軸心を結ぶ直線L3と、支持軸部21の軸心及び上側偏芯軸部23の偏芯軸心を結ぶ直線L4とが所定角度(例えば、30度)で交差するように支持部材20’を構成してもよい。
さらに、上記実施例では、支持軸部21の横断面の投影面内に下側偏芯軸部22及び上側偏芯軸部23の横断面が位置するように支持部材20を構成したが、これに限定されず、例えば、図15に示すように、支持軸部21の横断面の投影面から、下側偏芯軸部22の横断面及び/又は上側偏芯軸部23の横断面の一部がはみ出すように支持部材20"を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
多種多様な平面形状・サイズの積載物を搬送する技術として広く利用される。特に、複数枚のブランク材を積層してなる積層物の搬送技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例に係るパレットの平面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】図1のIII矢視図である。
【図4】実施例に係るパレットの斜視図である。
【図5】上記パレットの段積み状態を示す斜視図である。
【図6】段積み状態のパレットの要部縦断面図である。
【図7】実施例に係る支持部材の側面図である。
【図8】図7のVIII矢視拡大図である。
【図9】図7のIX−IX線断面拡大図である。
【図10】パレットへのブランク材の積層作用を説明するための説明図である。
【図11】パレットへの支持部材の立設作用を説明するための説明図である。
【図12】結束部材による支持部材の結束作用を説明するための説明図である。
【図13】空パレットの返却の一例を説明するための説明図である。
【図14】支持部材の他の形態を説明するための説明図である。
【図15】支持部材のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1;パレット本体、7a,8a;挿通孔、15;段積支持部材、16;挿入ピン、17a〜17e;載置部材、19;位置決めピン、20,20’,20";支持部材、21;支持軸部、22;下側偏芯軸部、23;上側偏芯軸部、24;移動防止部材、25;結束部材、26;表示ライン部、P;パレット、B;板状積層物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の挿入孔が形成され且つ積載物が積載されるパレット本体と、該パレット本体に着脱自在に立設される複数の支持部材と、その立設された複数の該支持部材を結束する結束部材と、を備え、前記支持部材は、前記積載物の側面を支持する支持軸部の下端側に前記挿入孔に挿入可能な下側偏芯軸部を偏芯して設けてなるパレットにおいて、
前記支持部材は、前記支持軸部の上端側に前記下側偏芯軸部とは反対側に偏芯して設けられ且つ前記結束部材が接触する上側偏芯軸部を有することを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記支持部材は、前記上側偏芯軸部の上端側に設けられ且つ前記結束部材の上方への移動を防止する移動防止部を更に有する請求項1記載のパレット。
【請求項3】
前記下側偏芯軸部の偏芯量(L1)と前記上側偏芯軸部の偏芯量(L2)との比(L1/L2)が1未満である請求項1又は2に記載のパレット。
【請求項4】
前記パレット本体に着脱自在に立設され且つ他のパレットを上下方向に段積み支持するための複数の段積支持部材をさらに備え、該段積支持部材の側面には、前記挿入孔に挿入可能な挿入ピンが設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパレット。
【請求項5】
前記積載物を載置し得るように前記パレット本体に並設される複数の載置部材をさらに備え、複数の該載置部材のうちの少なくとも1つの載置部材は、前記挿入孔に挿入される位置決めピンによって該パレット本体に着脱自在に位置決めされている請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパレット。
【請求項6】
前記パレット本体には、複数種の積載物に対応して予め決められた前記載置部材の取着位置を示す複数の表示部が設けられている請求項5記載のパレット。
【請求項7】
前記積載物が板材積層物である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパレット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のパレットを用いるパレットへの積載物固定方法であって、
前記パレット本体に積載物を積載する工程と、
前記パレット本体に形成された複数の前記挿入孔に、複数の前記支持部材のそれぞれの前記下側偏芯軸部を挿入して、前記積載物を囲むように複数の前記支持部材を前記パレット本体に立設する工程と、
それらの立設された複数の前記支持部材のそれぞれの前記上側偏芯軸部に結束部材を巻き回して複数の該支持部材を結束する工程と、を備えることを特徴とするパレットへの積載物固定方法。
【請求項1】
複数の挿入孔が形成され且つ積載物が積載されるパレット本体と、該パレット本体に着脱自在に立設される複数の支持部材と、その立設された複数の該支持部材を結束する結束部材と、を備え、前記支持部材は、前記積載物の側面を支持する支持軸部の下端側に前記挿入孔に挿入可能な下側偏芯軸部を偏芯して設けてなるパレットにおいて、
前記支持部材は、前記支持軸部の上端側に前記下側偏芯軸部とは反対側に偏芯して設けられ且つ前記結束部材が接触する上側偏芯軸部を有することを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記支持部材は、前記上側偏芯軸部の上端側に設けられ且つ前記結束部材の上方への移動を防止する移動防止部を更に有する請求項1記載のパレット。
【請求項3】
前記下側偏芯軸部の偏芯量(L1)と前記上側偏芯軸部の偏芯量(L2)との比(L1/L2)が1未満である請求項1又は2に記載のパレット。
【請求項4】
前記パレット本体に着脱自在に立設され且つ他のパレットを上下方向に段積み支持するための複数の段積支持部材をさらに備え、該段積支持部材の側面には、前記挿入孔に挿入可能な挿入ピンが設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパレット。
【請求項5】
前記積載物を載置し得るように前記パレット本体に並設される複数の載置部材をさらに備え、複数の該載置部材のうちの少なくとも1つの載置部材は、前記挿入孔に挿入される位置決めピンによって該パレット本体に着脱自在に位置決めされている請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパレット。
【請求項6】
前記パレット本体には、複数種の積載物に対応して予め決められた前記載置部材の取着位置を示す複数の表示部が設けられている請求項5記載のパレット。
【請求項7】
前記積載物が板材積層物である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパレット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のパレットを用いるパレットへの積載物固定方法であって、
前記パレット本体に積載物を積載する工程と、
前記パレット本体に形成された複数の前記挿入孔に、複数の前記支持部材のそれぞれの前記下側偏芯軸部を挿入して、前記積載物を囲むように複数の前記支持部材を前記パレット本体に立設する工程と、
それらの立設された複数の前記支持部材のそれぞれの前記上側偏芯軸部に結束部材を巻き回して複数の該支持部材を結束する工程と、を備えることを特徴とするパレットへの積載物固定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−246153(P2007−246153A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75309(P2006−75309)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(594052674)豊田スチールセンター株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(594052674)豊田スチールセンター株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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