説明

パレット形成部材

【課題】ボードの端面から延びる桁壁の剛性が低くなることを抑えることの可能なパレット形成部材を提供する。
【解決手段】上部長辺中間桁21Aは、デッキボード20の端面20Eから延びる端面壁1ANを有し、複数の桁内リブは、前記端面壁1ANと平行な方向に延びる複数の平行リブ1ARxと、前記端面壁1ANと直交する方向に延びる直交リブ1ARyとから構成され、ガス圧入部1APは、前記端面壁1ANに最も近い前記平行リブ1ARxよりも前記端面壁1ANから離れ、前記ガス圧入部1APと前記端面壁1ANとは、複数の前記桁内リブからなる経路によって連結され、前記経路のうちで最短経路SCAは、互いに交わる前記平行リブ1ARxと前記直交リブ1ARyとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスアシスト成型法によって成型されるパレット形成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載のように、種々の物品の運搬や保管を行うための合成樹脂製パレットが知られている。特許文献1に記載の合成樹脂製パレットを構成する表裏一対のパレット形成部材の各々には、デッキボードの内側面から突出する複数の桁と、桁の内側でデッキボードを補強する格子状のリブとが形成されている。さらに、リブの内部には、合成樹脂製パレットの軽量化を図るために、中空部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3443319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のパレット形成部材では、デッキボードの中央からガスが圧入されるため、デッキボードの中央付近に中空リブが偏りやすくなる。そこで、近年では、デッキボードの外周部からもガスが圧入され、中空リブの偏りを軽減することにより、パレット形成部材における耐クリープ性の向上が図られている。
【0005】
一方、隅桁や中間桁など、パレット形成部材の外周面を構成する各桁には、通常、フォークリフトのフォークによる衝突等、外部からの衝突に対する耐久性が特に必要とされる。この点、デッキボードの外周部からもガスが圧入されるとなれば、上述した各桁に大きな中空部が形成されやすくなる。そのため、中空リブの偏りを軽減することができる一方、剛性の低下を抑える点では、改善の余地が残るものとなっている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、ボードの端面から延びる桁壁の剛性が低くなることを抑えることの可能なパレット形成部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
こうした目的を達成するため、この発明は、矩形板状のボードと、前記ボードの外周部に突設されて中空部を有する筒状の桁と、前記桁内にある前記ボードに突設されて中空部を有する複数のリブと、前記複数のリブの一本に形成されて各中空部と連通する孔を有するガス圧入部とを備えるパレット形成部材において、前記桁は、前記ボードの端面から延びる端面壁を有し、前記複数のリブは、前記端面壁と平行な方向に延びる複数の平行リブと、前記端面壁と直交する方向に延びる直交リブとから構成され、前記ガス圧入部は、前記端面壁に最も近い前記平行リブよりも前記端面壁から離れ、前記ガス圧入部と前記端面壁とは、複数の前記リブからなる経路によって連結され、前記経路のうちで最短の経路は、互いに交わる前記平行リブと前記直交リブとからなる。
【0008】
桁を構成する端面壁には、フォークリフトのフォークによる衝突等、外部からの衝突に対する耐久性が、特に他の部分よりも高く求められる。この発明によれば、端面壁に最も近い第一の平行リブよりも端面壁から離れた位置に、ガス圧入部が形成される。そして、ガス圧入部と端面壁とを連結するリブの最短経路が、互いに交わる平行リブと直交リブとから構成される。そのため、圧入されたガスが端面壁に作用する場合には、ガス圧入部と
端面壁とを連結するガスの経路が、最短距離において屈曲するようになる。その結果、こうした屈曲による圧力損失によって、端面壁に作用するガスの圧力が低くなる。それゆえに、ガスの経路が直線状に形成される場合と比較して、端面壁の剛性が低くなることを抑えられる。
【0009】
この発明では、前記桁は、前記端面壁に連結される連結壁を有し、前記最短の経路は、前記連結壁に連結される前記リブを含むことが好ましい。
この発明によれば、ガス圧入部と端面壁とを連結する最短の経路が屈曲し、かつ、屈曲した部位と連結壁とがさらにリブによって連結される。そのため、端面壁に作用するガスの圧力が低くなることに加え、最短の経路に流れるガスが端面壁と連結壁とに分散することになる。その結果、桁の全体にわたりガスが到達しやすくなるため、パレット形成部材における軽量化を図りつつも、剛性を確保することが望まれる端面壁で相対的に中空部が大きくなることが抑えられる。
【0010】
この発明では、前記ガス圧入部と前記連結壁とが、一本の前記リブで連結されていることが好ましい。
この発明によれば、一本の直線状のリブを介してガス圧入部と連結壁とが直結されている。そのため、上述した最短の経路が屈曲した構成であっても、桁の全体にわたりガスが到達しやすくなる。それゆえに、大きな中空部が端面壁で形成されることを抑えつつも、桁の全体にわたり中空部を形成することができる。
【0011】
この発明では、前記ガス圧入部と前記連結壁とは、複数の前記リブからなる経路によって連結され、当該経路のうちで最短の経路は、互いに交わる前記平行リブと前記直交リブとからなることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、連結壁とガス圧入部とを連結する経路に、上述した直線状の経路と屈曲した経路とが含まれる。そして直線状の経路の長さが屈曲した経路の長さよりも大きくなる。そのため、屈曲した経路による圧力の集中を経路の屈曲で低下させつつ、かつ、直線状の経路による圧力の集中を経路の長さによって抑えられる。それゆえに、特に剛性が低くなる部位が桁内に形成されることが抑えられる。
【0013】
この発明では、前記リブは、第一のリブと、該第一のリブよりも低い第二のリブとを有し、前記ガス圧入部は、前記第二のリブに形成されていることが好ましい。
ガス圧入部を有するリブの高さが小さくなるほど、ガス圧入部から圧入されるガスが各部へ到達しやすくなる。この発明によれば、相対的に低いリブにガス圧入部が形成されるため、相対的に高いリブにガス圧入部が形成される構成よりも、圧入するガスの圧力を小さくできる。その結果、ガスの圧力を小さくできる分、ガスの圧力が急激に桁に作用すること、ひいては局所的に大きな中空部が形成されることが抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボードの端面から延びる桁壁の剛性が低くなることを抑えることの可能なパレット形成部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係るパレット形成部材の一実施の形態について、パレット形成部材により形成された合成樹脂製パレットを載荷面側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図2】パレット形成部材により形成された合成樹脂製パレットを接地面側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図3】上部パレット形成部材を載荷面側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図4】上部パレット形成部材を内側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図5】下部パレット形成部材を接地面側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図6】下部パレット形成部材を内側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図7】上部長辺中間桁を内側から見た平面構造を示す部分平面図。
【図8】(a)は、図7のA−A断面構造を示す拡大断面図、(b)は、図7のB−B断面構造を示す拡大断面図。
【図9】上部短辺中間桁を内側から見た平面構造を示す部分平面図。
【図10】図9のC−C断面構造を示す拡大断面図、(b)は、図9のD−D断面構造を示す拡大断面図。
【図11】上部隅桁を内側から見た平面構造を示す拡大平面図。
【図12】図11のE−E断面構造を示す拡大断面図、(b)は、図11のF−F断面構造を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明にかかるパレット形成部材を具体化した一実施の形態について図を参照して説明する。
まず、合成樹脂製パレット1の全体構造について図1及び図2を参照して説明する。図1及び図2に示されるように、合成樹脂製パレット1は、互いに対向する上部パレット形成部材2と下部パレット形成部材3とが溶着された直方体形状に形成されている。上部パレット形成部材2は、矩形板状のデッキボード20と、デッキボード20から下部パレット形成部材3に向けて延びる筒状の上部桁21とを有している。一方、下部パレット形成部材3は、矩形板状の接地ボード30と、接地ボード30から上部パレット形成部材2に向けて延びる筒状の下部桁31とを有している。そして互いに対向する上部桁21の突端と下部桁31の突端とが溶着されることによって、合成樹脂製パレット1が形成されている。これら上部パレット形成部材2と下部パレット形成部材3とは、ポリプロピレンや高密度ポリエチレンを用いたガスアシスト成型法によって成型されている。
【0017】
なお、上部パレット形成部材2のデッキボード20には、デッキボード20の外表面である載荷面20Tからデッキボード20の載荷側内表面20Sまでを貫通する複数の嵌合孔20Hが形成されている。複数の嵌合孔20Hの各々には、フォークリフトのフォーク等に対して合成樹脂製パレット1が滑ることを防止するべく、ゴム製のグロメットが嵌入されている。またデッキボード20の載荷面20Tには、載荷面20Tに載置される物品が載荷面20Tに対して滑ることを防止するべく、複数の滑り止めテープ20Lが敷設されている。
【0018】
次に、合成樹脂製パレット1が有する上部桁21及び下部桁31の構成について図3〜図6を参照して詳細に説明する。なお、図3及び図4は、下部パレット形成部材3に融着される前の上部パレット形成部材2を外側及び内側から見た上部パレット形成部材2の斜視構造を示す。また図5及び図6は、上部パレット形成部材2に融着される前の下部パレット形成部材3を外側及び内側から見た下部パレット形成部材3の斜視構造を示す。
【0019】
図3及び図4に示されるように、デッキボード20の内表面である載荷側内表面20Sには、三本の上部桁21がデッキボード20の長辺方向に沿って一列に配列され、これら三本の上部桁21によって1つの桁列21BLが構成されている。そして、デッキボード20の載荷側内表面20Sには、3列の桁列21BLがデッキボード20の短辺方向に並んでいる。つまり、デッキボード20の載荷側内表面20Sには、合計9つの上部桁21が該載荷側内表面20Sから垂直に突設されている。これらデッキボード20の載荷側内表面20Sから垂直に突設された上部桁21の各々は、載荷側内表面20Sに対する法線の方向において互いに同じ大きさの幅(高さ)を有している。
【0020】
上述した9つの上部桁21のうち、デッキボード20における一対の長辺の中央に形成
された上部桁21を、上部長辺中間桁21Aとする。またデッキボード20における一対の短辺の中央に形成された桁を、上部短辺中間桁21Bとする。またデッキボード20の中央に形成された桁を、上部中央桁21Cとする。またデッキボード20の四隅に形成された桁を、上部隅桁21Eとする。そして、デッキボード20の端面20Eと、該端面20Eから延びる各上部桁21の外表面21Sとによって、上部パレット形成部材2の外周面2Sが形成される。
【0021】
図4に示されるように、上部長辺中間桁21Aの内部には、デッキボード20の長辺方向及び短辺方向に延びる格子状の上部長辺中間リブ1RAがデッキボード20の載荷側内表面20Sから垂直に突設されている。また上部短辺中間桁21Bの内部には、これもまたデッキボード20の長辺方向及び短辺方向に延びる格子状の上部短辺中間リブ1RBが、デッキボード20の載荷側内表面20Sから垂直に突設されている。
【0022】
また上部中央桁21Cの内部には、デッキボード20の長辺方向及び短辺方向に延びる格子状の上部中央リブ1RCがデッキボード20の載荷側内表面20Sから垂直に突設されている。さらに上部隅桁21Eの内部には、これもまたデッキボード20の長辺方向及び短辺方向に延びる格子状の上部隅リブ1REがデッキボード20の載荷側内表面20Sから垂直に突設されている。このようなリブが上部桁21内に設けられることによって、各上部桁21における周壁の剛性が高められている。
【0023】
上部中央桁21Cと上部長辺中間桁21Aとの間、及び上部短辺中間桁21Bと上部隅桁21Eとの間には、デッキボード20の短辺方向に延びる直線状の複数の上部短辺リブ1RYが架設されている。また上部中央桁21Cと上部短辺中間桁21Bとの間、及び上部長辺中間桁21Aと上部隅桁21Eとの間には、デッキボード20の長辺方向に延びる直線状の複数の上部長辺リブ1RXが架設されている。このようなリブが桁間に設けられることによって、デッキボード20における載荷面20Tの剛性が高められ、ひいては合成樹脂製パレット1の剛性が高められている。
【0024】
図5及び図6に示されるように、接地ボード30の内表面である接地側内表面30Sには、接地側内表面30Sと平行な平面に対し、上部桁21と面対称な合計9つの下部桁31が突設されている。これら9つの下部桁31のうち、接地ボード30における一対の長辺の中央に形成された下部桁31を、下部長辺中間桁31Aとする。また接地ボード30における一対の短辺の中央に形成された下部桁31を、下部短辺中間桁31Bとする。また接地ボード30の中央に形成された下部桁31を、下部中央桁31Cとし、接地ボード30の四隅に形成された下部桁31を、下部隅桁31Eとする。そして、接地ボード30の端面30Eと、該端面30Eから連続する各下部桁31の外表面31Sとによって、下部パレット形成部材3の外周面3Sが形成される。
【0025】
図5に示されるように、下部中央桁31Cと下部長辺中間桁31Aとの間、及び下部短辺中間桁31Bと一対の下部隅桁31Eとの間には、接地ボード30の短辺方向に延びる直線状の複数の下部短辺リブ2RYが、接地ボード30の接地面30Bと直交するように形成されている。また下部中央桁31Cと一対の下部短辺中間桁31Bとの間、及び下部長辺中間桁31Aと一対の下部隅桁31Eとの間には、接地ボード30の長辺方向に延びる直線状の複数の下部長辺リブ2RXが、接地ボード30の接地面30Bと直交するように形成されている。
【0026】
図6に示されるように、下部長辺中間桁31Aの内部には、接地ボード30の長辺方向及び短辺方向に延びる格子状の下部長辺中間リブ2RAが、接地ボード30の接地側内表面30Sから垂直に突設されている。下部短辺中間桁31Bの内部には、これもまた接地ボード30の長辺方向及び短辺方向に延びる格子状の下部短辺中間リブ2RBが、接地ボ
ード30の接地側内表面30Sから垂直に突設されている。
【0027】
また下部中央桁31Cの内部には、接地ボード30の長辺方向及び短辺方向に延びる格子状の下部中央リブ2RCが、接地ボード30の接地側内表面30Sから垂直に突設されている。さらに下部隅桁31Eの内部には、これもまた接地ボード30の長辺方向及び短辺方向に延びる格子状の下部隅リブ2REが、接地ボード30の接地側内表面30Sから垂直に突設されている。このようなリブが下部桁31内に設けられることによって、各下部桁31における周壁の剛性が高められている。
【0028】
次に、合成樹脂製パレット1を構成するパレット形成部材のガスアシスト成型時にガスが圧入されるガス圧入部の部位について詳細に説明する。本実施の形態におけるガス圧入部は、各桁内に形成された複数の桁内リブの一本に形成されている。そして、上部パレット形成部材2における桁内のリブと下部パレット形成部材3における桁内のリブとが面対称であるため、以下では上部パレット形成部材2におけるガス圧入部の部位についてのみ説明する。特に、デッキボード20の外周部に形成され、かつ、上部パレット形成部材2の外周面2Sを構成する各桁、すなわち上部長辺中間桁21A、上部短辺中間桁21B、及び上部隅桁21Eにおけるガス圧入部について説明する。
【0029】
ちなみに、上部パレット形成部材2における各桁の突端面と下部パレット形成部材3における各桁の突端面との熱融着によって、合成樹脂製パレット1が形成される。そのため、桁内に形成された各ガス圧入部は、それが形成された上下一対の桁の内部に密閉されて、外気から遮断される。それゆえに、ガス圧入部をわざわざ密閉する工程を別途導入する必要がなく、これにより工程の簡略化が図られている。また載荷面20T及び接地面30Bと平行な平面においてガス圧入部が均等に配置されるため、ガスアシスト成型による中空部が載荷面20Tの面内及び接地面30Bの面内において均一に形成され、これにより合成樹脂製パレット1の耐クリープ性の向上が図られている。
【0030】
図7は、載荷側内表面20Sと対向する平面視にて上部長辺中間桁21Aの平面構造を示す部分平面図である。図8(a)は、図7のA−A線における上部長辺中間桁21Aの断面構造を示す部分断面図であり、図8(b)は、図7のB−B線における上部長辺中間桁21Aの断面構造を示す部分断面図である。
【0031】
図7及び図8(a)(b)に示されるように、上部長辺中間桁21Aは、デッキボード20の長辺方向に扁平して載荷側内表面20Sの法線方向に延びる矩形筒状に形成されている。この上部長辺中間桁21Aには、デッキボード20の端面20Eから延びる端面壁1ANが、デッキボード20の長辺方向に沿って形成されている。端面壁1ANの外表面ANSは、上部長辺中間桁21Aの外表面のうちでデッキボード20の端面20Eと共に上部パレット形成部材2の外周面2Sを構成する部分である。
【0032】
端面壁1ANと対向する部位には、デッキボード20の長辺方向における幅が端面壁1ANよりも大きい長辺中間対向壁1AFが、同じくデッキボード20の長辺方向に沿って形成されている。これら端面壁1AN及び長辺中間対向壁1AFは、デッキボード20の長辺方向における中点が互いにデッキボード20の短辺方向に並ぶように配置されている。またこれら端面壁1ANと長辺中間対向壁1AFとの間には、これら端面壁1ANと長辺中間対向壁1AFとを連結するとともに、デッキボード20の短辺方向に延びる互いに対向した一対の長辺中間連結壁1AJが形成されている。なお、上述した長辺中間対向壁1AF及び一対の長辺中間連結壁1AJによって、上部長辺中間桁21Aにおける連結壁が構成されている。
【0033】
上部長辺中間桁21Aの内部には、載荷側内表面20Sから垂直に突設され、載荷側内
表面20Sと対向する平面視にて、上部長辺中間桁21Aの内部の全体を格子状に区画する複数の桁内リブが形成されている。より具体的には、デッキボード20の長辺方向に沿って上部長辺中間桁21Aの全幅にわたる互いに平行な二本の平行リブ1ARxが形成されている。またデッキボード20の短辺方向に沿って上部長辺中間桁21Aの全幅にわたる互いに平行な3本の直交リブ1ARyが、上記二本の平行リブ1ARxと交差するように形成されている。
【0034】
つまり、上部長辺中間桁21Aの内部には、端面壁1ANと平行な方向に延びる2本の平行リブ1ARxと、端面壁1ANと直交する方向に延びる3本の直交リブ1ARyとが形成されている。そして、ガス圧入部1APと上部長辺中間桁21Aとは、複数の桁内リブからなる経路によって連結される。これに伴い、平行リブ1ARx及び直交リブ1ARyによって、上部長辺中間桁21Aの全体が機械的に補強されるようになっている。
【0035】
また上部長辺中間桁21Aの内部には、円筒状のガス圧入部1APが形成されている。ガス圧入部1APは、ガスアシスト成型時にガスが圧入される圧入孔を有している。そして、ガス圧入部1APは、平行リブ1ARx、直交リブ1ARy、及び上部長辺中間桁21Aの各々とデッキボード20との境界にガスを圧入し、上部長辺中間桁21A及びそれの内部に含まれる桁内リブの各々に中空部を形成する。このガス圧入部1APは、下記(経路条件1)〜(経路条件4)が満たされるように、平行リブ1ARxに形成されている。
【0036】
(経路条件1)
ガス圧入部1APは、端面壁1ANに最も近い平行リブ1ARxよりも端面壁1ANから離れるように、他の平行リブ1ARx上に形成されている。しかも、このガス圧入部1APは、三本の直交リブ1ARyうちで長辺方向の中央にある直交リブ1ARy寄りに形成されている。そして、上部パレット形成部材2のガスアシスト成型時には、端面壁1ANに最も近い平行リブ1ARxよりも端面壁1ANから離れた部位から、ガスが圧入される。
【0037】
(経路条件2)
ガス圧入部1APは、複数の桁内リブからなる経路を介して、端面壁1ANに連結されている。しかも、これらガス圧入部1APと端面壁1ANとを連結する経路のうちで最も短い経路は、互いに交わる平行リブ1ARxと直交リブ1ARyとからなる。そして、上部パレット形成部材2のガスアシスト成型時には、ガス圧入部1APと端面壁1ANとを連結する経路が、最短距離において屈曲するようになる。
【0038】
(経路条件3)
上述した最短の経路(最短経路SCA)を構成する平行リブ1ARxは、一対の長辺中間連結壁1AJに連結されている。また最短経路SCAを構成する直交リブ1ARyは、長辺中間対向壁1AFに連結されている。そして、最短経路SCA上の屈曲した部位は、平行リブ1ARxを介して一対の長辺中間連結壁1AJに連結されている。また最短経路SCA上の屈曲した部位は、直交リブ1ARyを介して端面壁1AN及びに連結されている。
【0039】
(経路条件4)
ガス圧入部1APと連結壁とを連結する直線状の経路のうちで、最も短い経路の長さを、直線最短距離Lscとする。またガス圧入部1APと連結壁とを連結する屈曲した経路のうちで、最も短い経路の長さを、屈曲最短距離Lsr(Lsr=Lsx+Lsy)とする。ここで、最短経路SCA上の屈曲した部位とガス圧入部1APとを連結する経路のうちで最も短い経路の長さを、短辺側最短距離Lsyとする。また、最短経路SCA上の屈
曲した部位と長辺中間対向壁1AFとを連結する経路のうちで最も短い経路の長さを、長辺側最短距離Lsxとする。
【0040】
このような規定のもと、平行リブ1ARx、直交リブ1ARy、及びガス圧入部1APは、下記(1)式を満たすように形成されている。
Lsc>Lsr …(1)
つまり、長辺中間連結壁1AJと長辺中間対向壁1AFとから構成される連結壁とガス圧入部1APとは、複数の桁内リブからなる経路によって連結される。そして、その経路のうちで最短の経路は、互いに交わる平行リブ1ARxと直交リブ1ARyとからなる。
【0041】
ここで、上部パレット形成部材2のガスアシスト成型時には、ガス圧入部1APからガスが供給され、未硬化状態にある各桁内リブと載荷側内表面20Sとの間、さらには上部長辺中間桁21Aと載荷側内表面20Sとの間にガスが入り込む。この際、上記(経路条件1)に基づき、端面壁1ANに最も近い平行リブ1ARxよりも端面壁1ANから離れた部位から、ガスが圧入される。
【0042】
そのため、端面壁1ANからより離れた平行リブ1ARxに、まずリブ中空部1Ahxが形成され、次いで最短経路SCAを構成する直交リブ1ARyにリブ中空部1Ahyが形成される。続いて、これらリブ中空部1Ahx,1Ahyを介して、長辺中間連結壁1AJに連結壁中空部1AJhが形成され、長辺中間対向壁1AFに対向壁中空部1AFhが形成され、端面壁1ANに端面壁中空部1ANhが形成される。
【0043】
この際、上部長辺中間桁21Aの一つの部位に作用するガスの圧力は、該部位と連結する経路での圧損が大きくなるほど、つまり該経路上上の屈曲した部位が多くなるほど小さくなる。この点、最短経路SCAは、上記(経路条件2)に基づき、屈曲している。そのため、最短経路SCAが屈曲している分、端面壁1ANに作用するガスの圧力は低くなる。それゆえに、最短経路SCAが直線状に形成される場合と比較して、端面壁中空部1ANhのサイズを小さくできる。
【0044】
また、上部長辺中間桁21Aの一つの部位に作用するガスの圧力は、該部位と連結する経路において分岐が多くなるほど小さくなる。この点、最短経路SCA上の屈曲した部位は、上記(経路条件3)に基づき、平行リブ1ARxを介して長辺中間連結壁1AJにも連結され、直交リブ1ARyを介して長辺中間対向壁1AFにも連結されている。そのため、最短経路SCA上の屈曲した部位から端面壁1ANとは異なる部位に向けて、ガスが分散するようになる。それゆえに、端面壁中空部1ANhのサイズをさらに小さくできるとともに、上部長辺中間桁21Aの全体にわたりガスを到達させやすくもなる。
【0045】
さらに、上部長辺中間桁21Aの一つの部位に作用するガスの圧力は、該部位と連結する経路の長さが大きくなるほど小さくなる。そのため、図8(a)に示されるように、リブ中空部1Ahxよりも対向壁中空部1AFhや端面壁中空部1ANhの方が小さくなる。また図8(b)に示されるように、3つのリブ中空部1Ahyよりも連結壁中空部1AJhの方が小さくなる。
【0046】
また、長辺中間連結壁1AJと連結する経路のうちで最も短い経路が直線状であって、長辺中間対向壁1AFと連結する経路のうちで最も短い経路が屈曲している。そして、上記(経路条件4)に基づき、長辺中間連結壁1AJと連結する直線状の最短経路が、長辺中間対向壁1AFと連結する屈曲した最短経路よりも長く形成されている。
【0047】
そのため、長辺中間対向壁1AFでのガスの圧力が最短経路の屈曲によって抑えられる、かつ、長辺中間連結壁1AJでのガスの圧力集中が最短経路の経路長によって抑えられ
る。それゆえに、端面壁中空部1ANhのサイズを小さくして端面壁1ANの剛性を相対的に高めつつ、特に剛性が低くなる部位の形成を上部長辺中間桁21Aの全体で抑えられる。これにより、ガス圧入部1APに直結される長辺中間連結壁1AJの肉厚のみが他の部分の肉厚に比べて極端に薄くなること、ひいては長辺中間連結壁1AJの剛性のみが他の部分の剛性に比べて極端に低くなることを抑えられる。
【0048】
ちなみに、合成樹脂製パレット1で物品が運搬される場合、上部パレット形成部材2の外周面2Sには、フォークリフトのフォーク等が当たりやすい。一方、上部パレット形成部材2の内部となる各部位では、通常、上述したような外側からの衝撃を受けることが少ない。それゆえに、上部パレット形成部材2の外周面2Sには、他の部位と比較して、高い剛性が求められる。この点、上述した構成によれば、相対的に大きな中空部が端面壁1ANに形成され難いため、特に剛性を確保することが望まれる部位で相対的に中空部が大きくなることが抑えられる。その結果、端面壁1ANにおける肉厚を確保することができ、上部長辺中間桁21Aの剛性を確保することできる。
【0049】
なお、図8(a)(b)に示されるように、ガス圧入部1APが形成されていない平行リブ1ARxの高さは、上部長辺中間桁21Aと同じ高さであって、高さHPSである。一方、ガス圧入部1APが形成された平行リブ1ARxの高さは、上記高さHPSの半分よりも小さく、高さHPAである。
【0050】
ここで、ガス圧入部1APの高さが小さくなれば、ガス圧入部1APとデッキボード20との境界にガスが到達しやすくなる。そして、ガス圧入部1APの高さが小さくなる分、ガス圧入部1APに圧入するガスの圧力を小さくすることができる。その結果、ガス圧入部1APから圧入されたガスが上部長辺中間桁21Aに急激に作用すること、ひいては上部長辺中間桁21Aの剛性が局所的に極端に低くなることを確実に抑えられる。
【0051】
さらに、図8に(a)(b)に示されるように、ガス圧入部1APの径は、桁内リブの幅よりも大きい。そのため、ガス圧入部1APが高さHPSで形成されるとなれば、載荷側内表面20Sの単位面積あたりに必要とされる樹脂の量は、ガス圧入部1APにおいて桁内リブよりも多くなる。この点、ガス圧入部1APが形成された平行リブ1ARxの高さHPAは、他の桁内リブの高さHPSよりも低い。そのため、上述した構成によれば、上部パレット形成部材2に必要とされる樹脂の量を抑えることもできる。
【0052】
次に、上部短辺中間桁21Bにおけるガス圧入部の部位について説明する。なお、図9は、上部短辺中間桁21Bを対象とした上記図7に対応する図であって、載荷側内表面20Sと対向する平面視における上部短辺中間桁21Bの平面構造を示す部分平面図である。図10(a)は、図9のA−A線における上部短辺中間桁21Bの断面構造を示す部分断面図であり、図10(b)は、図9のB−B線における上部短辺中間桁21Bの断面構造を示す部分断面図である。
【0053】
図9及び図10(a)(b)に示されるように、上部短辺中間桁21Bは、デッキボード20の短辺方向に扁平して載荷側内表面20Sの法線方向に延びる矩形筒状に形成されている。この上部短辺中間桁21Bには、上部長辺中間桁21Aと同じく、上部短辺中間桁21Bのうちでデッキボード20の端面20Eから延びる端面壁1BNが、デッキボード20の短辺方向に沿って形成されている。端面壁1BNの外表面BNSは、デッキボード20の端面20Eと共に上部パレット形成部材2の外周面2Sを構成する部分である。
【0054】
端面壁1BNと対向する部位には、デッキボード20の短辺方向における幅が端面壁1BNよりも大きい短辺中間対向壁1BFが、同じくデッキボード20の短辺方向に沿って形成されている。これら端面壁1BN及び短辺中間対向壁1BFは、デッキボード20の
短辺方向における中点が互いにデッキボード20の長辺方向に並ぶように配置されている。またこれら端面壁1BNと短辺中間対向壁1BFとの間には、上述した上部長辺中間桁21Aと同じく、これら端面壁1BNと短辺中間対向壁1BFとを連結するとともに、デッキボード20の長辺方向に延びる互いに対向した一対の短辺中間連結壁1BJが形成されている。なお、上述した短辺中間対向壁1BF及び一対の短辺中間連結壁1BJによって、上部短辺中間桁21Bにおける連結壁が構成されている。
【0055】
上部短辺中間桁21Bの内部には、上述した上部長辺中間桁21Aと同じく、載荷側内表面20Sから垂直に突設され、載荷側内表面20Sと対向する平面視にて、上部短辺中間桁21Bの内部の全体を格子状に区画する複数の桁内リブが形成されている。より具体的には、上部短辺中間桁21Bの内部には、デッキボード20の長辺方向に沿って上部短辺中間桁21Bの全幅にわたる1本の直交リブ1BRxが形成されている。また上部短辺中間桁21Bの内部には、デッキボード20の短辺方向に沿って上部短辺中間桁21Bの全幅にわたる互いに平行な3本の平行リブ1BRyが、上記1本の直交リブ1BRxと交差するように形成されている。
【0056】
つまり、上部短辺中間桁21Bの内部には、端面壁1BNと平行な方向に延びる3本の平行リブ1BRyと、端面壁1BNと直交する方向に延びる1本の直交リブ1BRxとが形成されている。そして、ガス圧入部1BPと上部短辺中間桁21Bとは、複数の桁内リブからなる経路によって連結される。これに伴い、平行リブ1BRy及び直交リブ1BRxによって、上部短辺中間桁21Bの全体が機械的に補強されるようになっている。
【0057】
上部短辺中間桁21Bの内部には、上述した上部長辺中間桁21Aと同じく、ガス圧入部1BPが形成されている。ガス圧入部1BPは、直交リブ1BRx、平行リブ1BRy、及び上部短辺中間桁21Bの各々とデッキボード20との境界にガスを圧入し、上部短辺中間桁21B及びそれの内部に含まれる桁内リブの各々に中空部を形成する。このガス圧入部1BPは、上記(経路条件1)〜(経路条件4)に準じた条件が満たされるように、直交リブ1BRxに形成されている。
【0058】
すなわち、ガス圧入部1BPは、上記(経路条件1)に準じ、端面壁1BNに最も近い平行リブ1BRyよりも端面壁1BNから離れるように、他の平行リブ1BRy上に形成されている。しかも、このガス圧入部1BPは、直交リブ1BRx寄りに形成されている。
【0059】
また、ガス圧入部1BPは、上記(経路条件2)に準じ、複数の桁内リブから構成されるガスの経路を介して、端面壁1BNに連結されている。しかも、これらガス圧入部1BPと端面壁1BNとを連結する経路のうちで最も短い経路は、互いに交わる平行リブ1BRyと直交リブ1BRxとからなる。
【0060】
また、上述した最短の経路(最短経路SCB)を構成する平行リブ1BRyは、上記(経路条件3)に準じ、一対の短辺中間連結壁1BJに連結されている。また最短経路SCBを構成する直交リブ1BRxは、短辺中間対向壁1BFに連結されている。そして、最短経路SCB上の屈曲した部位は、平行リブ1BRyを介して一対の短辺中間連結壁1BJに連結されている。また最短経路SCB上の屈曲した部位は、直交リブ1BRxを介して端面壁1BN及び短辺中間対向壁1BFに連結されている。
【0061】
また、ガス圧入部1BPと連結壁とを連結する直線状の経路のうちで、最も短い経路の長さを、直線最短距離Lscとする。またガス圧入部1BPと連結壁とを連結する屈曲した経路のうちで、最も短い経路の長さを、屈曲最短距離Lsrとする。なお、本実施の形態における屈曲最短距離Lsrは、長辺側最短距離Lsxと短辺側最短距離Lsyとの積
算によって得られる。この際、最短経路SCB上の屈曲した部位とガス圧入部1BPとを連結する経路のうちで、最も短い経路の長さを、短辺側最短距離Lsyとする。また最短経路SCB上の屈曲した部位と連結壁とを連結する経路のうちで、最も短い経路の長さを、長辺側最短距離Lsxとする。
【0062】
このような規定のもと、直交リブ1BRx、平行リブ1BRy、及びガス圧入部1BPは、上記(1)式を満たすように形成されている。つまり、短辺中間連結壁1BJと短辺中間対向壁1BFとから構成される連結壁とガス圧入部1BPとは、複数の桁内リブからなる経路によって連結される。そして、その経路のうちで最短の経路は、互いに交わる平行リブ1BRyと直交リブ1BRxとからなる。
【0063】
上述した構成によれば、上記(経路条件1)に基づき、端面壁1BNに最も近い平行リブ1BRyよりも端面壁1BNから離れた部位から、ガスが圧入される。そのため、端面壁1BNからより離れた平行リブ1BRyに、まずリブ中空部1Bhyが形成され、次いで最短経路SCBを構成する直交リブ1BRxにリブ中空部1Bhxが形成される。続いて、これらリブ中空部1Bhx,1Bhyを介して、短辺中間連結壁1BJには連結壁中空部1BJhが形成され、短辺中間対向壁1BFには対向壁中空部1BFhが形成され、端面壁1BNには端面壁中空部1BNhが形成される。
【0064】
また、最短経路SCBが屈曲している分、端面壁1BNに作用するガスの圧力は低くなる。それゆえに、最短経路SCBが直線状に形成される場合と比較して、端面壁中空部1BNhのサイズを小さくできる。また、最短経路SCB上の屈曲した部位が平行リブ1BRyを介して短辺中間連結壁1BJにも連結され、直交リブ1BRxを介して短辺中間対向壁1BFにも連結されている。そのため、最短経路SCB上の屈曲した部位から端面壁1BNとは異なる部位に向けて、ガスが分散するようになる。それゆえに、端面壁中空部1BNhのサイズをさらに小さくできるとともに、上部短辺中間桁21Bの全体にわたりガスを到達させやすくもなる。
【0065】
なお、図10(a)(b)に示されるように、ガス圧入部1BPが形成されていない平行リブ1BRyの高さは、上部短辺中間桁21Bと同じ高さであって、高さHPSである。一方、ガス圧入部1BPが形成された平行リブ1BRyの高さは、上記高さHPSの半分よりも小さく、高さHPBである。そのため、上部長辺中間桁21Aと同じく、ガス圧入部1BPから圧入されたガスが上部短辺中間桁21Bに急激に作用すること、ひいては上部短辺中間桁21Bの剛性が局所的に極端に低くなることを確実に抑えられる。
【0066】
次に、上部隅桁21Eにおけるガス圧入部の部位について説明する。なお、図11は、上部隅桁21Eを対象とした上記図7に対応する図であって、載荷側内表面20Sと対向する平面視における上部隅桁21Eの平面構造を示す部分平面図である。図12(a)は、図11のE−E線における上部隅桁21Eの断面構造を示す部分断面図であり、図12(b)は、図11のF−F線における上部隅桁21Eの断面構造を示す部分断面図である。
【0067】
図11及び図12(a)(b)に示されるように、上部隅桁21Eは、デッキボード20の長辺方向に扁平して載荷側内表面20Sの法線方向に延びる矩形筒状に形成されている。この上部隅桁21Eには、デッキボード20における長辺側の端面20Eから延びる長辺側端面壁1ENXと、デッキボード20における短辺側の端面20Eから延びる短辺側端面壁1ENYとが形成されている。これら長辺側端面壁1ENXと短辺側端面壁1ENYとは、デッキボード20の角部において互いに連結されている。
【0068】
長辺側端面壁1ENXにおける長辺方向の端部には、略短辺方向に延びる短辺側連結壁
1EJYが連結されている。また短辺側端面壁1ENYにおける短辺方向の端部には、略長辺方向に延びる長辺側連結壁1EJXが連結されている。そして、長辺側連結壁1EJXと短辺側連結壁1EJYとが互いに連結されることによって、上部隅桁21Eが構成されている。なお、これら長辺側連結壁1EJXと短辺側連結壁1EJYとによって、上部隅桁21Eにおける連結壁が構成されている。
【0069】
上部隅桁21Eの内部には、上述した上部長辺中間桁21Aと同じく、載荷側内表面20Sから垂直に突設され、載荷側内表面20Sと対向する平面視にて、上部隅桁21Eの内部の全体を格子状に区画する複数の桁内リブが形成されている。より具体的には、上部隅桁21Eの内部には、デッキボード20の長辺方向に沿って延びる複数の長辺桁内リブ1ERxが形成されている。また上部隅桁21Eの内部には、デッキボード20の短辺方向に沿って延びる複数の短辺桁内リブ1ERyが形成されている。そして、ガス圧入部1EPと上部隅桁21Eとは、複数の桁内リブからなる経路によって連結される。これに伴い、長辺桁内リブ1ERx及び短辺桁内リブ1ERyによって、上部隅桁21Eの全体が機械的に補強されるようになっている。
【0070】
上部隅桁21Eの内部には、上述した上部長辺中間桁21Aと同じく、ガス圧入部1EPが形成されている。ガス圧入部1EPは、長辺桁内リブ1ERx、短辺桁内リブ1ERy、及び上部隅桁21Eの各々とデッキボード20との境界にガスを圧入し、上部隅桁21E及びそれの内部に含まれる桁内リブの各々に中空部を形成する。このガス圧入部1EPは、上記(経路条件1)〜(経路条件4)に準じた条件が満たされるように、長辺桁内リブ1ERxに形成されている。
【0071】
すなわち、ガス圧入部1EPは、上記(経路条件1)に準じ、長辺側端面壁1ENXに最も近い長辺桁内リブ1ERxよりも長辺側端面壁1ENXから離れるように、他の長辺桁内リブ1ERx上に形成されている。しかも、ガス圧入部1EPは、上記(経路条件1)に準じ、短辺側端面壁1ENYに最も近い短辺桁内リブ1ERyよりも短辺側端面壁1ENYから離れるように、長辺桁内リブ1ERx上に形成されている。
【0072】
また、ガス圧入部1EPは、上記(経路条件2)に準じ、複数の桁内リブから構成されるガスの経路を介して、長辺側端面壁1ENX及び短辺側端面壁1ENYに連結されている。しかも、ガス圧入部1EPと長辺側端面壁1ENXとを連結する経路のうちで最も短い経路は、互いに交わる長辺桁内リブ1ERxと短辺桁内リブ1ERyとからなる。さらに、ガス圧入部1EPと短辺側端面壁1ENYとを連結する経路のうちで最も短い経路も、互いに交わる長辺桁内リブ1ERxと短辺桁内リブ1ERyとからなる。
【0073】
また、長辺側端面壁1ENXに対する最短の経路(最短経路SCX)では、上記(経路条件3)に準じ、それを構成する桁内リブが、長辺側連結壁1EJX及び短辺側連結壁1EJYに連結されている。また、短辺側端面壁1ENYに対する最短の経路(最短経路SCY)でも、上記(経路条件3)に準じ、それを構成する桁内リブが、長辺側連結壁1EJX及び短辺側連結壁1EJYに連結されている。そして、各最短経路SCB上の屈曲した部位は、長辺桁内リブ1ERx又は短辺桁内リブ1ERyを介して長辺側連結壁1EJX及び短辺側連結壁1EJYに連結されている。
【0074】
また、ガス圧入部1EPと連結壁とを連結する直線状の経路のうちで、最も短い経路の長さを、直線最短距離Lscとする。またガス圧入部1EPと連結壁とを連結する屈曲した経路のうちで、最も短い経路の長さを、屈曲最短距離Lsrとする。なお、上部隅桁21Eにおける屈曲最短距離Lsrも、長辺側最短距離Lsxと短辺側最短距離Lsyとの積算によって得られる。この際、最短経路SCX,SCY上の共通する屈曲した部位とガス圧入部1EPとを連結する経路のうちで、最も短い経路の長さを、長辺側最短距離Ls
xとする。また最短経路SCX,SCY上の共通する屈曲した部位と連結壁とを連結する経路のうちで、最も短い経路の長さを、短辺側最短距離Lsyとする。
【0075】
このような規定のもと、長辺桁内リブ1ERx、短辺桁内リブ1ERy、及びガス圧入部1EPは、上記(1)式を満たすように形成されている。つまり、長辺側連結壁1EJXと短辺側連結壁1EJYとから構成される連結壁とガス圧入部1EPとは、複数の桁内リブからなる経路によって連結される。そして、その経路のうちで最短の経路は、互いに交わる長辺桁内リブ1ERxと短辺桁内リブ1ERyとからなる。
【0076】
上述した構成によれば、上記(経路条件1)に基づき、長辺側端面壁1ENXに最も近い長辺桁内リブ1ERxよりも長辺側端面壁1ENXから離れた部位から、ガスが圧入される。また短辺側端面壁1ENYに最も近い短辺桁内リブ1ERyよりも短辺側端面壁1ENYから離れた部位から、ガスが圧入される。そのため、長辺側端面壁1ENX及び短辺側端面壁1ENYからより離れた長辺桁内リブ1ERxに、まずリブ中空部1Ehxが形成される。次いで、最短経路SCX,SCYを構成する長辺桁内リブ1ERx及び短辺桁内リブ1ERyに、リブ中空部1Ehx,1Ehyが形成される。続いて、これらリブ中空部1Ehx,1Ehyを介して、長辺側連結壁1EJX及び短辺側連結壁1EJYには、それぞれ連結壁中空部1EJhが形成される。そして、長辺側端面壁1ENX及び短辺側端面壁1ENYには、それぞれ端面壁中空部1ENhが形成される。
【0077】
また、最短経路SCX,SCYが屈曲している分、長辺側端面壁1ENX及び短辺側端面壁1ENYに作用するガスの圧力は低くなる。それゆえに、最短経路SCX,SCYが直線状に形成される場合と比較して、端面壁中空部1ENhのサイズを小さくできる。また、最短経路SCX,SCY上の共通する屈曲した部位が、桁内リブを介して、長辺側連結壁1EJX及び短辺側連結壁1EJYにも連結されている。そのため、最短経路SCX,SCY上の共通する屈曲した部位から連結壁に向けて、ガスが分散するようになる。それゆえに、端面壁中空部1ENhのサイズをさらに小さくできるとともに、上部隅桁21Eの全体にわたりガスを到達させやすくもなる。
【0078】
なお、図12(a)(b)に示されるように、ガス圧入部1EPが形成されていない桁内リブの高さは、上部隅桁21Eと同じ高さであって、高さHPSである。一方、ガス圧入部1EPが形成された長辺桁内リブ1ERxの高さは、上記高さHPSの半分よりも小さく、高さHPEである。そのため、上部長辺中間桁21Aと同じく、ガス圧入部1EPから圧入されたガスが上部隅桁21Eに急激に作用すること、ひいては上部隅桁21Eの剛性が局所的に極端に低くなることを確実に抑えられる。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態に係るパレット形成部材によれば、以下列記するような効果が得られるようになる。
(1)上部長辺中間桁21Aでは、端面壁1ANに最も近い平行リブ1ARxよりも端面壁1ANから離れた位置に、ガス圧入部1APが形成される。そして、ガス圧入部1APと端面壁1ANとを連結するリブの最短経路SCAが、互いに交わると平行リブ1ARxと直交リブ1ARyとから構成される。また上部短辺中間桁21Bでは、端面壁1BNに最も近い平行リブ1BRyよりも端面壁1BNから離れた位置に、ガス圧入部1BPが形成される。そして、ガス圧入部1BPと端面壁1BNとを連結するリブの最短経路SCBが、互いに交わると平行リブ1BRyと直交リブ1BRxとから構成される。
【0080】
また上部隅桁21Eでは、長辺側端面壁1ENXに最も近い長辺桁内リブ1ERxよりも長辺側端面壁1ENXから離れた位置に、ガス圧入部1EPが形成される。短辺側端面壁1ENYに最も近い短辺桁内リブ1ERyよりも短辺側端面壁1ENYから離れた位置に、ガス圧入部1EPが形成される。そして、ガス圧入部1EPと長辺側端面壁1ENX
とを連結するリブの最短経路SCXが、互いに交わる長辺桁内リブ1ERxと短辺桁内リブ1ERyとから構成される。またガス圧入部1EPと短辺側端面壁1ENYとを連結するリブの最短経路SCYが、互いに交わる長辺桁内リブ1ERxと短辺桁内リブ1ERyとから構成される。
【0081】
そのため、ガス圧入部1AP,1BP,1EPと各端面壁とを連結するガスの経路が、最短距離において屈曲するようになる。その結果、こうした屈曲による圧力損失によって、各端面壁に作用するガスの圧力が低くなる。それゆえに、ガスの経路が直線状に形成される場合と比較して、各端面壁の剛性が低くなることを抑えられる。ひいては、パレット形成部材の剛性の低下が抑えられる。
【0082】
(2)ガス圧入部1AP,1BP,1EPと各端面壁とを連結する最短経路SCA,SCB,SCX,SCYが屈曲し、かつ、屈曲した部位と各連結壁とがさらにリブによって連結される。そのため、各端面壁に作用するガスの圧力が低くなることに加え、最短経路SCA,SCB,SCX,SCYに流れるガスが、各端面壁と各連結壁とに分散することになる。その結果、各桁の全体にわたりガスが到達しやすくなるため、パレット形成部材における軽量化を図りつつも、剛性を確保することが望まれる各端面壁で相対的に中空部が大きくなることが抑えられる。
【0083】
(3)上部長辺中間桁21Aでは、直線状に形成された一本の平行リブ1ARxを介してガス圧入部1APと連結壁とが直結されている。上部短辺中間桁21Bでも、直線状に形成された一本の平行リブ1BRyを介してガス圧入部1BPと連結壁とが直結されている。さらに上部隅桁21Eでも、直線状に形成された一本の長辺桁内リブ1ERxを介してガス圧入部1EPと連結壁とが直結されている。
【0084】
そのため、最短経路SCA,SCB,SCX,SCYが屈曲した構成であっても、各桁の全体にわたりガスが到達しやすくなる。それゆえに、大きな中空部が各端面壁で形成されることを抑えつつも、各桁の全体における中空部を均一に形成することができる。
【0085】
(4)各連結壁とガス圧入部1AP,1BP,1EPとを連結する経路に、直線状の経路と屈曲した経路とが含まれる。そして直線最短距離Lscが屈曲最短距離Lsrよりも大きくなる。そのため、屈曲した最短経路による圧力の集中を該経路の屈曲で低下させつつ、かつ、直線状の最短経路による圧力の集中を該経路の長さによって抑えられる。それゆえに、特に剛性が低くなる部位が桁内に形成されることが抑えられる。
【0086】
(5)ガス圧入部1AP,1BP,1EPを有する桁内リブの高さが、他の桁内リブよりも小さく形成されるため、他の桁内リブにガス圧入部1AP,1BP,1EPが形成される構成よりも、圧入するガスの圧力を小さくできる。その結果、ガスの圧力を小さくできる分、ガスの圧力が急激に桁に作用すること、ひいては局所的に大きな中空部が形成されることが抑えられる。
【0087】
なお、上記実施の形態は、以下のような態様をもって実施することもできる。
・ガス圧入部1AP,1BP,1EPを有する桁内リブの高さは、桁の高さと同じ高さであってもよい。このような構成であっても、上記(1)〜(4)に準じた効果を得ることはできる。
【0088】
・各連結壁とガス圧入部1AP,1BP,1EPとを連結する経路において、直線最短距離Lscが屈曲最短距離Lsrよりも小さくなる構成であってもよい。このような構成であっても、上記(1)〜(3)に準じた効果を得ることはできる。
【0089】
・各連結壁とガス圧入部1AP,1BP,1EPとを連結する経路は、直線状の経路のみであってもよく、あるいは屈曲した経路のみであってもよい。このような構成であっても、上記(1)〜(3)に準じた効果を得ることはできる。
【0090】
・各連結壁とガス圧入部1AP,1BP,1EPとが直結されない構成であってもよい。このような構成であっても、上記(1),(2)に準じた効果を得ることはできる。
・最短経路SCA,SCB,SCX,SCY上の屈曲した部位が、各連結壁とは連結されない構成であってもよい。このような構成であっても、他の経路を介して各連結壁に中空部が形成される以上、少なからず上記(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0091】
・上部パレット形成部材2と下部パレット形成部材3とをそれぞれ熱溶着した合成樹脂製パレット1としたが、これに限られず、上部パレット形成部材2のみを所謂スキッドパレットとして使用してもよい。この場合、ガス圧入部を介して中空部に雨水等が浸入することを阻止すべく、ガス圧入部を例えば溶着等の方法により閉塞することが望ましい。
【0092】
・上部長辺中間桁21A、上部短辺中間桁21B、及び上部隅桁21Eの内部にのみガス圧入部が形成されるが、これに限らず、上部中央桁21Cの内部にもガス圧入部が形成されてもよい。また、ガス圧入部1APが割愛される構成、ガス圧入部1BPが割愛される構成、あるいはガス圧入部1EPが割愛される構成であってもよい。
【0093】
・デッキボード20は、矩形板状のボードであればよく、例えば載荷面20Tが正方形であってもよい。
・パレット形成部材を構成する樹脂材料には、ポリプロピレンや高密度ポリエチレンの他、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィンが用いられる。なお、高密度ポリエチレンを用いて形成されるパレット形成部材の場合には、上述した他の樹脂材料と比較して、桁の肉厚が薄くなることによって桁の剛性が著しく低下する。それゆえに、上述した構成からなるガス圧入部が形成されることによって、上記(1)〜(5)に記載の効果がより顕著になる。
【0094】
・四方差しのパレット形成部材における中間桁や隅桁に限られず、二方差しのパレット形成部材における端桁にも、上述した構成を適用することは可能である。このような構成であっても、上記(1)〜(5)に準じた効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
HPA,HPB,HPE,HPS…高さ、Lsc…直線最短距離、Lsr…屈曲最短距離、SCA,SCB,SCX,SCY…最短経路、1…合成樹脂製パレット、1AN,1BN…端面壁、1ENX…長辺側端面壁、1ENY…短辺側端面壁、1AP,1BP,1EP…ガス圧入部、1AF…長辺中間対向壁、1AJ…長辺中間連結壁、1BF…短辺中間対向壁、1BJ…短辺中間連結壁、1ARx,1BRy…平行リブ、1ARy,1BRx…直交リブ、1ERx…長辺桁内リブ、1ERy…短辺桁内リブ、2…上部パレット形成部材、20…デッキボード、20E…端面、21…上部桁、21A…上部長辺中間桁、21B…上部短辺中間桁、21C…上部中央桁、21E…上部隅桁、20S…載荷側内表面、20T…載荷面、3…下部パレット形成部材、30…接地ボード、31A…下部長辺中間桁、31B…下部短辺中間桁、31C…下部中央桁、31E…下部隅桁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状のボードと、
前記ボードの外周部に突設されて中空部を有する筒状の桁と、
前記桁内にある前記ボードに突設されて中空部を有する複数のリブと、
前記複数のリブの一本に形成されて各中空部と連通する孔を有するガス圧入部と
を備えるパレット形成部材において、
前記桁は、前記ボードの端面から延びる端面壁を有し、
前記複数のリブは、前記端面壁と平行な方向に延びる複数の平行リブと、前記端面壁と直交する方向に延びる直交リブとから構成され、
前記ガス圧入部は、前記端面壁に最も近い前記平行リブよりも前記端面壁から離れ、
前記ガス圧入部と前記端面壁とは、複数の前記リブからなる経路によって連結され、
前記経路のうちで最短の経路は、互いに交わる前記平行リブと前記直交リブとからなる
ことを特徴とするパレット形成部材。
【請求項2】
前記桁は、前記端面壁に連結される連結壁を有し、
前記最短の経路は、前記連結壁に連結される前記リブを含む
請求項1に記載のパレット形成部材。
【請求項3】
前記ガス圧入部と前記連結壁とが、一本の前記リブで連結されている
請求項2に記載のパレット形成部材。
【請求項4】
前記ガス圧入部と前記連結壁とは、複数の前記リブからなる経路によって連結され、
当該経路のうちで最短の経路は、互いに交わる前記平行リブと前記直交リブとからなる
請求項3に記載のパレット形成部材。
【請求項5】
前記リブは、第一のリブと、該第一のリブよりも低い第二のリブとを有し、
前記ガス圧入部は、前記第二のリブに形成されている
請求項1〜4のいずれか一項に記載のパレット形成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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