説明

パレット用吊り機

【課題】 作業者がフォークリフト車輛の運転席から降りることなく、ボックスパレットを吊り上げることができるようにしたパレット用吊り機を提供する。
【解決手段】 ボックスパレット(40)の底部両側に起立して取付けられ、上端に吊りフック(22)の引っ掛け部が形成された取っ手(11)と、ハウジング(21)にはフォーク受け(26)又はフック・チェーン受け(29)が形成され、ハウジング両側には吊りフックが取付け軸(22A)回りに揺動自在に取付けられ、左右の吊りフックには吊りフックを揺動させるリンク機構(23,24) と回転によってリンク機構を作動させるカム軸(25)とが設けられ、吊りフックがその揺動によって取っ手の引っ掛け部に引っ掛かり可能となる一方、揺動復帰によってその引っ掛かりが外れ得るようになる吊り機本体(20)と、吊り機本体のカム軸に連結され、カム軸を回転操作するための操作具(30)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパレット用吊り機に関し、特に作業者がフォークリフト車輛の運転席から降りることなく、パレット又はボックスパレットを吊り上げることができるようにしたパレット用吊り機に関する。
【背景技術】
【0002】
梅の実は収穫された大部分が梅干や梅酒に加工されるが、最近、梅の実に寄生する「アカマダラケシキスイ」「ウスモンヒメシラタケシキスイ」などの害虫が大きな問題となっている。
【0003】
この「ケシキスイ」は熟した梅の実の表皮の傷んだ部分から侵入し、実を食い荒らすという被害を引き起こすが、「ケシキスイ」の侵入した梅の実をそのまま梅干や梅酒に加工するのは商品として問題である。
【0004】
そこで、「ケシキスイ」の対策として、収穫した梅の実を30分程度水に漬け、「ケシキスイ」を駆除することが食品の安全上、義務化されている。
【0005】
従来、収穫した梅の実の汚れを洗浄する装置が提案されている(特許文献1)。この洗浄装置は、ローラコンベアによって梅の実を金網製の載置プレート上に移送し、載置プレートをタンクの水中で上下に揺らして汚れを洗浄するというものであり、「ケシキスイ」の対策として大量の梅の実を30分も浸漬しようとすると、非常に大きな容積のタンクを必要とし、大型かつコスト高になってしまい、梅農家に設置するのは実際には不可能である。
【0006】
これに対し、矩形フレーム状をなし、梅の実の収穫を用いた複数の籠を底面に積み重ね、上面の角パイプにフォークリフト車輛のフォークを差し込み、梅林や梅農家に設置したタンク内の水に浸漬して「ケシキスイ」を駆除した後、吊り上げて加工場まで運搬できるようにしたパレットが提案されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、収穫籠を積み込みあるいは取り出す時にフレームが邪魔になって収穫籠をパレットに積み込みあるいは取り出すのが非常に煩雑であった。
【0008】
最近、梅農家においても作業の省力化がすすめられ、金網で製作されたボックスパレットを用い、収穫した大量の梅の実をボックスパレットに入れたままで洗浄し、フォークリフト車輛で運搬することが行われるようになってきた(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−153号公報。
【特許文献2】実用新案登録第3139181号公報
【特許文献3】実開平06−71425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献3記載のボックスパレットでは底部にフォークリフト車輛のフォークを差し込むことのできる差込み穴が形成されているものの、フォークリフト車輛で吊り上げて水中に浸漬しようとすると、ワイヤーロープなどを手作業でボックスパレットに引っ掛けあるいは挿通し、フォークリフト車輛のフォークにワイヤーロープを掛けてボックスパレットを吊り上げなければならず、作業者がその都度フォークリフト車輛の運転席から降りる必要があって負担が大きい。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑み、作業者がフォークリフト車輛の運転席から降りることなく、ボックスパレットを吊り上げることができるようにしたパレット用吊り機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明に係るパレット用吊り機は、フォークリフト車輛のフォークによってパレット又はボックスパレットを吊り上げるのに用いるパレット用吊り機において、上記パレット又はボックスパレットの底部両側に起立して固定され、上端に吊りフックの引っ掛け部が形成された取っ手と、ハウジングにはフォークリフト車輛のフォークを差し込み可能なフォーク受けが形成されるか又は巻上げ機のフック又はチェーンが引っ掛けられるフック・チェーン受けが形成され、上記ハウジング両側には吊りフックが取付け軸の回りに揺動自在に取付けられ、該左右の吊りフックには該吊りフックを揺動させるリンク機構と回転によってリンク機構を作動させるカム軸とが設けられ、上記吊りフックがその揺動によって上記取っ手の引っ掛け部に引っ掛かり可能となる一方、揺動復帰によってその引っ掛かりが外れ得るようになる吊り機本体と、該吊り機本体のカム軸に連結され、上記カム軸を回転操作するための操作具と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の特徴の1つは吊り機本体の両側に吊りフックを設け、吊り機本体をフォークリフト車輛のフォークに取付け又は巻上げ機のフック又はチェーンを引っ掛け、パレット又はボックスパレットの上方に移動させ、操作具を操作すると、吊りフックが揺動して取っ手の引っ掛け部に引っ掛かり又は自然と引っ掛かる状態となり、逆の操作をすると、その引っ掛かりが外れるか又ははずれ得る状態となるようにした点にある。
【0014】
これにより、吊りフックを揺動させると、取っ手の引っ掛け部に引っ掛かり、あるいは自然と引っ掛かる状態となるので、吊り機本体を降下させると、吊りフックが取っ手の引っ掛け部を一旦逃げた後、取っ手の引っ掛け部に引っ掛かる。また、吊りフックを少し降下させた後、吊りフックを揺動復帰させると、吊りフックが取っ手の引っ掛け部から外れる。
【0015】
その結果、作業者が例えばフォークリフト車輛の運転席から降りることなく、パレット又はボックスパレットを吊り上げる状態にでき、パレット又はボックスパレットをフォークから取り外すことができるので、作業者の負担を大幅に少なくできる。
【0016】
また、簡単な構造の取っ手、吊り機本体及び操作具によってパレット用吊り機を構成できるので、コスト高を招来することはなく、梅農家も負担になることなく購入でき、「ケシキスイ」の対策を確実に行うことができる。
【0017】
上記の例では梅林や梅農家でフォークリフト車輛を用いて「ケシキスイ」の対策を行う場合に用いる吊り機であったが、加工工場で「ケシキスイ」の対策を行う場合、フォークリフト車輛よりも巻上げ機、例えばホイストを用いて「ケシキスイ」の対策を行うことが多いので、ハウジングに巻上げ機のフック又はチェーンが引っ掛けられるフック・チェーン受けを形成するようにしている。
【0018】
市販のボックスパレットは金網で製作されているが、パンチングメタル、その他格子状のフレームで製作されることもできる。また、梅の実を水に浸漬して害虫を駆除するのに用いる関係上、本発明は金網やパンチングメタルその他格子状のフレームで製作されたパレットにも同様に適用できる。
【0019】
また、ボックスパレットの側面に取っ手を取付けて吊り上げるようにすると、ボックスパレットが荷物の重さに耐えきれずに壊れるおそれがある。そこで、ボックスパレットの底面両側部にアングルを(ボルト・ナット等によって取付け取外し可能に)取付け、このアングルに取っ手の下端を(溶接等によって)固定することによってボックスパレットを底部から吊り上げるようにするのがよい。この構造はパレットにも適用できる。
【0020】
取っ手の形状は特に限定されないが、パレット又はボックスパレットを安定に吊れるように、三角形の両斜辺状、矩形状、A字状に形成するのがよい。この場合、取っ手本体の両下端をアングルに取付けるのがよい。
【0021】
操作具はカム軸を回転操作できればよく、例えば先端が吊り機本体のカム軸に連結されるフレキシブルシャフトと、フレキシブルシャフトの他端に連結され、捩じり操作によってカム軸を回転させるグリップとから構成されることができる。
【0022】
また、カム軸にレバーを取付け、ロープの先端をレバーに連結し、ロープの後端を引っ張ることによってレバーを揺動させ、カム軸を回転操作することもできる。さらに、カム軸にレバーやグリップを連結し、レバーやグリップを手で操作してカム軸を回転させることもできる。これは巻上げ機によってパレットやボックスパレットを吊り上げるときに効果が大きい。
【0023】
吊りフックを揺動させて取っ手の引っ掛け部に引っ掛けるようにするためには吊りフックの形状が大切である。例えば、吊りフックのフック部分が大きく湾曲され、吊りフックの基部(回転軸の取付け部分)とフック先端との間の間隔が狭いと、吊りフックが取っ手の引っ掛け部に引っ掛け難い。そこで、吊りフックはその本体部分を略J字状となすのがよい。また、左右の吊りフックの間隔は左右の取っ手の間隔に等しい間隔とする必要がある。
【0024】
また、上述の取っ手、取っ手を備えたパレット及びボックスパレットも斬新である。
すなわち、本発明に係るパレット用吊り機に用いる取っ手は、フォークリフト車輛のフォーク又は巻上げ機によってパレット又はボックスパレットを吊り上げるためのパレット用吊り機に用いられる取っ手であって、パレット又はボックスパレットの底面両側部に取付けられるアングルと、下端が上記アングルに固定され、三角形の両斜辺状、矩形状又はA字状をなし、上端部にパレット用吊り機の吊りフックが引っ掛かる引っ掛け部が形成された取っ手本体と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明に係るボックスパレットは、フォークリフト車輛のフォーク又は巻上げ機とパレット用吊り機とによって吊り上げられるボックスパレットであって、金網によって上面が開放されたボックス状に製作され、底面両側部にアングルが取付けられ、該アングルに取っ手本体が起立して固定され、該取っ手本体が三角形の両斜辺状、矩形状又はA字状をなしており、上記取っ手本体とアングルとによって構成される取っ手によって底部から吊り上げられるようになっていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係るパレットは、フォークリフト車輛のフォーク又は巻上げ機とパレット用吊り機とによって吊り上げられるパレットであって、金網によって平板状に製作され、底面両側部にアングルが取付けられ、該アングルに取っ手本体が起立して固定され、該取っ手本体が三角形の両斜辺状、矩形状又はA字状をなしており、上記取っ手本体とアングルとによって構成される取っ手によって底部から吊り上げられるようになっていることを特徴とする。
【0027】
さらに、上述の吊り機本体(吊り機)も新規かつ斬新である。すなわち、本発明に係る吊り機は、ハウジングにはフォークリフト車輛のフォークを差し込み可能なフォーク受けが形成されるか又は巻上げ機のフック又はチェーンが引っ掛けられるフック・チェーン受けが形成され、上記ハウジング両側には吊りフックが取付け軸の回りに揺動自在に取付けられ、該左右の吊りフックには該吊りフックを揺動させるリンク機構と回転によってリンク機構を作動させるカム軸とが設けられ、上記吊りフックがその揺動によって上記取っ手の引っ掛け部に引っ掛かり可能となる一方、揺動復帰によってその引っ掛かりが外れ得るようになっていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る吊り機は、ハウジングにはフォークリフト車輛のフォークを差し込み可能なフォーク受けが形成されるか又は巻上げ機のフック又はチェーンが引っ掛けられるフック・チェーン受けが形成され、上記ハウジング両側には吊りフックが取付け軸の回りに揺動自在に取付けられ、該左右の吊りフックの取付け軸にはその付勢力によって吊りフックの揺動を制動するばね部材が設けられており、上記吊りフックはばね部材の付勢力によって上記取っ手の引っ掛け部に引っ掛けられた姿勢及び引っ掛かりが外された姿勢に制動保持されるようになっていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るパレット吊り機の好ましい実施形態における取っ手の1例を示す斜視図である。
【図2】上記取っ手の取付け方法を説明するための図である。
【図3】ボックスパレットに対する上記取っ手を取付けた状態を示す図である。
【図4】図3の拡大図である。
【図5】パレットに対する上記取っ手を取付けた状態を示す図である。
【図6】上記実施形態における吊り機本体の平面及び側面を示す図である。
【図7】上記実施形態における吊り機本体の要部及び操作具を示す図である。
【図8】上記吊り機本体における吊りフックを示す図である。
【図9】ボックスパレットの吊り作業における吊りフックの引っ掛け前の状態を示す図である。
【図10】吊りフックを引っ掛けた状態を示す図である。
【図11】第2の実施形態における吊り機本体の平面及び側面を示す図である。
【図12】第3の実施形態における吊り機本体を示す正面図である。
【図13】上記実施形態における吊り機本体のホルダー機構を示す概略斜視図である。
【図14】上記実施形態においてホルダー機構によって吊り機本体をフォークにセットした状態を示す正面図である。
【図15】上記実施形態における上記実施形態においてホルダー機構によって吊り機本体をフォークにセットした状態を示す側面図である。
【図16】上記実施形態の変形例を示す図である。
【図17】第4の実施形態における吊り機本体を示す斜視図である。
【図18】上記実施形態の正面(a)及び側面(b)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図10は本発明に係るパレット用吊り機の好ましい実施形態を示す。図において、パレット用吊り機は取っ手10、吊り機本体20及び操作具30から構成され、取っ手10は三角形の2つの斜辺状の取っ手本体11を有し、取っ手本体11の上端中央は吊りフック22が引っ掛かる引っ掛け部となっている。
【0031】
この取っ手本体11の両下端部は直角に折り曲げられ、パイプ状のスペーサ(補強部材を兼用)16が外装されるとともにL形アングル12の貫通穴に挿通されて溶接によって固定されている。このL形アングル12はボックスパレット40の底面両側部に沿って配置され、ボックスパレット40の内面底部両側には帯状プレート13が配置され、ボルト15とナット14とによってL形アングル12に取付けられており、これにより取っ手本体11はボックスパレット40の底部両側に起立して取付けられている。なお、十分な強度があれば、補強部材を兼用するスペーサ16は必ずしも設ける必要はない。
【0032】
ボックスパレット40は図3及び図4に示されるように、金網を用いて四角形ボックス状に製作され、上面は開放され、前面の上半部は図示していないが、前方に傾倒可能に構成され、又底部四隅には脚41が形成されている。他方、パレット60は図5に示されるように、ボックスパレット40の底面部分からなる構造となっている。
【0033】
吊り機本体20は2本の断面コ字状のフレーム21Aを背中合わせにかつ相互に間隔をあけて配置してなるハウジング21を有し、ハウジング21の両側部には吊りフック22が取付けボルト(取付け軸)22Aの回りに揺動自在に取付けられている。この吊りフック22は本体部分が側面ほぼJ字状をなし、基部22Dには取付け穴部が形成され、取付け穴部にはフレーム21Aを挿通した取付けボルト22Aが回転自在に挿通され、さらにフレーム21Aを挿通してナットによって抜止めされている。
【0034】
吊りフック22の基部22D近傍には操作杆22Cが形成され、操作杆22Cにはリンク23の外端が連結され、リンク23はハウジング21の内方に延び、その内端は第2のリンク24によって相互に連結され、第2のリンク24の中央にはカム軸25が取付けられ、カム軸25はハウジング21に回転可能に支持されている。なお、リンク23はターンバックルなどを介在させて長さを調整できるように構成してもよい。また、吊りフック22にはばね部材を設けて開方向又は閉方向に回動付勢するようにしてもよい。
【0035】
また、ハウジング21の上面にはコ字状のフォーク受け26が固定され、フォーク受け26にはフォークリフト車輛50のフォーク51が差し込まれ、止めねじによって固定できるようになっている。さらに、ハウジング21にはチェーン28が取付けられ、チェーン28はフォークリフト車輛50に引っ掛けてボックスパレット40又はパレット60がフォーク51から外れるのを防止するようになっている。
【0036】
操作具30はフレキシブルシャフト31を有し、フレキシブルシャフト31の先端には吊り機本体20のカム軸25に着脱可能に連結されるカム軸受32が固定され、フレキシブルシャフト31の後端にはグリップ33が連結され、グリップ33を捩じり操作することによってカム軸25を回転できるようになっている。
【0037】
梅の実の害虫「ケシキスイ」を駆除する場合、収穫してきた梅の実をボックスパレット40に入れる一方、梅林又は梅農家に設置したタンク内に注水して水を溜める。
【0038】
他方で、フォークリフト車輛50のフォーク51を吊り機本体20のフォーク受け26に差し込み、止めねじによって固定するとともに、チェーン28をフォークリフト車輛50の構造部分に引っ掛けて吊り機本体20の不意の外れを防止する。
【0039】
ボックスパレット40内に所定量の梅の実が入ると、吊り機本体20をフォーク51によってボックスパレット40の高さまで上昇させるとともに、フォークリフト車輛50を走行させ、吊り機本体20を下降させてボックスパレット40の直上方まで移動させる。
【0040】
こうして準備が済むと、図9に示されるように、運転席の作業者が操作具30のグリップ33を握って捩じる。すると、吊り機本体20のリンク23が操作杆22Cを引っ張って吊りフック22を揺動させ、図10に示されるように、吊りフック22は取っ手10の引っ掛け部に自然と引っ掛かり、ボックスパレット40を吊り上げることができる。
【0041】
また、グリップ33を握って捩じると、吊り機本体20の吊りフック22が取っ手10の引っ掛け部に引っ掛かる状態となる。そこで、吊り機本体20をボックスパレット40の上方で下降させ、吊りフック22が取っ手11に当たると、吊りフック22が外方に逃げ、そのまま降下すると、吊りフック22が元に戻って取っ手11の引っ掛け部に引っ掛かる状態となるので、フォーク51を上昇させると吊りフック22が取っ手11にしっかりと引っ掛かる。
【0042】
そこで、ボックスパレット40をタンク内の水に30分ほど浸漬すると、梅の実の害虫「ケシキスイ」を駆除することができるので、フォーク51を上昇させ、加工工場まで運搬した後、吊り機本体20を少し降下させ、操作具30のグリップ33を逆に捩じると、吊りフック22が揺動復帰して取っ手10から外れる状態となるので、後は吊り機本体20を上昇させてボックスパレット40から外すことができる。
【0043】
また、取っ手10をボックスパレット40の両側に起立して設けているので、ボックスパレット40の前面上半部の傾倒動作を阻害しないので、その箇所から梅の実を積み込み取り出すことができる。
【0044】
パレット60を用いる場合、パレット60上に梅の実を収穫した籠を積み重ねるが、パレット60の側面に取っ手11があるだけであるので、パレット60の前後から籠を容易に積み込み取り出すことができるので、作業者の負担は少ない。
【0045】
さらに、ボックスパレット40やパレット60では脚41があるので、底面下側にフォークリフト車輛50のフォーク51を差し込み、ボックスパレット40やパレット60を持ち上げて運搬することができる。その結果、ボックスパレット40を多段に積み重ねてフォークリフト車輛50で運搬することができる。
【0046】
図11は第2の実施形態を示し、図において図1ないし図10と同一符号は同一又は相当分を示す。本例ではフォーク受け26に代え、吊り機本体20のフレーム21上面に巻上げ機、例えばホイストに取付けられたチェーンのフックを引っ掛け又はチェーンを挿通し得るフック受け29を固定している。
【0047】
本例のパレット吊り機は加工工場においてホイストなどを用いて梅の実の害虫「ケシキスイ」を駆除する際に有効に利用できる。
【0048】
図12ないし図15は第3の実施形態を示し、図において図1ないし図11と同一符号は同一又は相当分を示す。本例では吊り機本体20のハウジング21の一側部にカム軸25が回転可能に支持され、カム軸25には第2のリンク24の中央が取付けられ、第2のリンク24の両端部にはリンク23の内端が連結され、リンク23の外端は吊りフック22の操作杆22Cに連結されている。
【0049】
また、ハウジング21の上面のコ字状のフォーク受け26にはフォーク51の止めねじ80が螺進退可能に取付けられ、またフォーク受け26の両側部には取付け板72が溶接などによって固定され、取付け板72の挿通穴にはロッド71の先端部が挿通されてナットによって抜止めされている。このとき、ロッド71の先端部に筒状のスペーサ76を介在させると、スペーサ76を置き換えることによって吊り機本体20の位置を調整することができる。
【0050】
ロッド71の後端部には係止ロッド72が溶接又はナットの締付けなどによって固定され、係止ロッド72にはスペーサ75を介して係止ロッド74がナットによって固定され、一対の係止ロッド73、74の間にフォーク51の折曲部直上部分を挟み込んでロッド71がフォーク51に固定されるようになっており、こうして吊り機本体20のホルダー機構70が構成されている。
【0051】
以上のように、第1の実施形態におけるチェーン28に代え、ホルダー機構70によって吊り機本体20をフォーク51に係止し保持するようにすることもでき、この場合にはフォーク51の傾き、フォーク車輛50の急発進、急ブレーキ、荷揺れなどがあっても吊り機本体20が滑り動くことがなく、安全性を確保できる。
【0052】
図16は第3の実施形態の変形例を示し、図において図12ないし図15と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では第2のリンク24の近傍に規制ねじ81を設け、回動する第2のリンク24と当接させて吊りフック22の開放及び/又は閉鎖の範囲を規制するようにしている。
【0053】
図17及び図18は第4の実施形態を示し、図において図1ないし図16と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではハウジング21の両側部には吊りフック22の基部22Dが取付けボルト(取付け軸)22Aの回りに揺動可能に取付けられている。この吊りフック22の基部22Dには取付け穴部が形成され、基部22Dの取付け穴部、スペーサ22K、コイルばね(ばね部材)22J、スペーサ22Hにはフレーム21Aを挿通した取付けボルト22Aが回転自在に挿通され、さらにフレーム21Aを挿通してナット22Gによって抜止めされており、吊りフック22はコイルばね22Jによってスペーサ22Kに押圧付勢されて揺動角度を保持されるようになっている。
【0054】
また、フレーム21の外端部にはC形チャネル79が溶接等によって固定され、吊りフック22の大きすぎる揺動を規制するようになっている。
【0055】
本例では作業者が手で吊りフック22を揺動させると、コイルばね22Jの付勢力によって揺動角度を保持されるので、吊りフック22を揺動させて取っ手10に引っ掛けると、その姿勢を保持でき、又吊りフック22を揺動復帰させて取っ手10から外すと、その姿勢を保持できる。
【0056】
本例の吊り機本体(吊り機)はボックスパレット40やパレット60の吊り上げに限定されず、他の用途、例えば通常の吊り上げ作業に適用することもできる。
【0057】
本例では上記の例におけるリンク機構は設けられていないが、リンク機構を設け、一方の吊りフック22を揺動又は揺動復帰させると、他方の吊りフック22が同期して揺動又は揺動復帰させる構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るパレット用吊り機は梅の実をボックスパレットに入れ、梅の実を収穫した籠をパレットに搭載して水中に浸漬する害虫駆除に適用できるが、ボックスパレットやパレットを用いた一般の輸送や運搬に適用することもでき、実用性は大きい。
【符号の説明】
【0059】
10 取っ手
11 斜辺部分
11A 引っ掛け部
20 吊り機本体
21 ハウジング
22 吊りフック
22A 取付けボルト(取付け軸)
22C 操作杆
22J コイルばね(ばね部材)
23 リンク
24 第2のリンク
25 カム軸
26 フォーク受け
29 フック受け
30 操作具
31 フレキシブルシャフト
32 カム軸受
33 グリップ
40 ボックスパレット
50 フォークリフト車輛
51 フォーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフト車輛のフォークによってパレット又はボックスパレットを吊り上げるのに用いるパレット用吊り機において、
上記パレット又はボックスパレット(40)の底部両側に起立して固定され、上端に吊りフック(23)の引っ掛け部が形成された取っ手(10)と、
ハウジング(21)にはフォークリフト車輛(50)のフォーク(51)を差し込み可能なフォーク受け(26)が形成されるか又は巻上げ機のフック又はチェーンが引っ掛けられるフック・チェーン受け(29)が形成され、上記ハウジング(21)両側には吊りフック(22)が取付け軸(22A)の回りに揺動自在に取付けられ、該左右の吊りフック(22)には該吊りフック(22)を揺動させるリンク機構(23,24) と回転によってリンク機構(23,24)を作動させるカム軸(25)とが設けられ、上記吊りフック(22)がその揺動によって上記取っ手(10)の引っ掛け部に引っ掛かり可能となる一方、揺動復帰によってその引っ掛かりが外れ得るようになる吊り機本体(20)と、
該吊り機本体(20)のカム軸(25)に連結され、上記カム軸(25)を回転操作するための操作具(30)と、
を備えたことを特徴とするパレット用吊り機。
【請求項2】
上記操作具(30)は、先端が上記吊り機本体(20)のカム軸(25)に連結されるフレキシブルシャフト(31)と、該フレキシブルシャフト(31)の他端に連結され、捩じり操作によって上記カム軸(25)を回転させるグリップ(33)とから構成されている請求項1記載のパレット用吊り機。
【請求項3】
上記パレット又はボックスパレット(40)の底面両側部にはアングル(12)が取付けられ、該アングル(12)には上記取っ手本体の下端が固定されることにより、上記パレット又はボックスパレット(40)が底部から吊り上げられるようになっている請求項1記載のパレット用吊り機。
【請求項4】
上記取っ手(10)は三角形の両斜辺状、矩形状又はA字状をなす取っ手本体を有し、上記パレット又はボックスパレット(40)の底面両側部にはアングル(12)が取付けられ、該アングル(12)には上記取っ手本体の両下端が固定されることにより、上記パレット又はボックスパレット(40)が底部から吊り上げられるようになっている請求項1記載のパレット用吊り機。
【請求項5】
上記吊りフック(22)の本体部分が略J字状をなし、該本体部分の基部近傍には上記リンク機構のリンク(23)外端が連結される操作杆(22C)が形成されている請求項1記載のパレット用吊り機。
【請求項6】
フォークリフト車輛(50)のフォーク(51)又は巻上げ機によってパレット又はボックスパレット(40)を吊り上げるためのパレット用吊り機に用いられる取っ手(10)であって、
パレット又はボックスパレット(10)の底面両側部に取付けられるアングル(12)と、下端が上記アングル(12)に固定され、三角形の両斜辺状、矩形状又はA字状をなし、上端部にパレット用吊り機の吊りフック(20)が引っ掛かる引っ掛け部が形成された取っ手本体と、を備えたことを特徴とするパレット用吊り機に用いる取っ手。
【請求項7】
フォークリフト車輛(50)のフォーク(51)又は巻上げ機とパレット用吊り機とによって吊り上げられるボックスパレット(40)であって、
上面が開放されたボックス状に製作され、底面両側部にアングル(12)が取付けられ、該アングル(12)に取っ手本体が起立して固定され、該取っ手本体が三角形の両斜辺状、矩形状又はA字状をなしており、
上記取っ手本体とアングル(12)とによって構成される取っ手(10)によって底部から吊り上げられるようになっていることを特徴とするボックスパレット。
【請求項8】
フォークリフト車輛のフォーク又は巻上げ機とパレット用吊り機とによって吊り上げられるパレットであって、
平板状に製作され、底面両側部にアングルが取付けられ、該アングルに取っ手本体が起立して固定され、該取っ手本体が三角形の両斜辺状、矩形状又はA字状をなしており、
上記取っ手本体とアングルとによって構成される取っ手によって底部から吊り上げられるようになっていることを特徴とするパレット。
【請求項9】
ハウジング(21)にはフォークリフト車輛(50)のフォーク(51)を差し込み可能なフォーク受け(26)が形成されるか又は巻上げ機のフック又はチェーンが引っ掛けられるフック・チェーン受け(29)が形成され、上記ハウジング(21)両側には吊りフック(22)が取付け軸(22A)の回りに揺動自在に取付けられ、該左右の吊りフック(22)には該吊りフック(22)を揺動させるリンク機構(23,24) と回転によってリンク機構(23,24)を作動させるカム軸(25)とが設けられ、上記吊りフック(22)がその揺動によって上記取っ手(10)の引っ掛け部に引っ掛かり可能となる一方、揺動復帰によってその引っ掛かりが外れ得るようになっていることを特徴とする吊り機。
【請求項10】
ハウジング(21)にはフォークリフト車輛(50)のフォーク(51)を差し込み可能なフォーク受け(26)が形成されるか又は巻上げ機のフック又はチェーンが引っ掛けられるフック・チェーン受け(29)が形成れ、上記ハウジング(21)両側には吊りフック(22)が取付け軸(22A)の回りに揺動自在に取付けられ、該左右の吊りフック(22)の取付け軸(22A)にはその付勢力によって吊りフック(22)の揺動を制動するばね部材(22J)が設けられており、上記吊りフック(22)はばね部材(22J)の付勢力によって上記取っ手(10)の引っ掛け部に引っ掛けられた姿勢及び引っ掛かりが外された姿勢に制動保持されるようになっていることを特徴とする吊り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−149925(P2010−149925A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79721(P2009−79721)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(500185014)
【出願人】(591182189)
【Fターム(参考)】