説明

パレット駆動装置

【課題】駆動機構の省スペース化を図ることで、パレット移送設備を小型化する。
【解決手段】パレット移送設備1は、ワークとしての車体2を載置した状態のパレット3を搬送する2本の搬送ライン4と、搬送ライン4の終端から始端へと空のパレット3を返送する返送ライン5とを備えている。並走して配設される各々の搬送ライン4上には左右に分割されたパレット9,10が配置される。一対の分割パレット9,10のうち駆動側パレット9が搬送される搬送ライン4と返送ライン5との間には、駆動源と連結された複数の駆動ローラ24が配設される。また、駆動ローラ24の一側面が搬送用レール7上の駆動側パレット9と当接し、駆動ローラ24の他側面が返送用レール8上の駆動側パレット9と当接するよう、複数の駆動ローラ24が水平方向に移動できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク搬送用パレットの駆動装置に関しては従来種々のものが提案、実施されている。また、車体もしくは車体部品等の搬送用パレットの駆動装置に関しても、種々の駆動装置が提案、実施されている。
【0003】
例えば、特開2000−281209号公報には、閉ループを構成する搬送経路に沿ってパレットを循環させながら、該パレット上でワークに部品を組付けるための搬送装置であって、搬送経路が、相互に平行に配置されて複数のパレットを当接した状態で搬送する第1コンベアと第2コンベアとで少なくとも構成され、かつ、双方のコンベア共に、固定側に設けられた駆動源により回転する摩擦ローラをパレットに当接させることによりパレットを搬送することを特徴とする搬送装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−281209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワーク搬送用パレットの駆動装置は、搬送体(パレット)の形状や大きさを考慮して、コンベアの如き搬送駆動機構により構成されることが多い。しかし、この種の搬送駆動機構は多大な設置スペースを必要とし、そのため、搬送ライン全体の大型化を招く。
【0005】
コンベア以外の搬送機構でパレットを搬送する場合、特許文献1に記載の駆動機構(回転摩擦ローラ)を適用することが考えられるが、上記構成では、返送路においても搬送路と同数の駆動機構(回転摩擦ローラ)が必要となる。そのため、駆動装置に関して十分な簡素化(省スペース化)がなされているとは言い難かった。
【0006】
以上の事情に鑑み、本発明では、駆動機構の省スペース化を図ることで、パレット移送設備を小型化することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ワークを載置した状態のパレットを搬送する搬送ラインと、搬送ラインの終端から始端へと空のパレットを返送する返送ラインとを有するパレット搬送ラインに組み込まれて使用されるパレット駆動装置であって、互いに並走する搬送ラインと返送ラインとの間に配設され、駆動源と連結される複数のローラを備え、ローラの一側部が搬送ライン上のパレットの側面と当接し、ローラの他側部が返送ライン上のパレットの側面と当接するよう構成されているパレット駆動装置を提供する。
【0008】
このように、本発明は、パレットの側面を、搬送時と返送時とで互いに異なるローラの側面と当接させてパレットに回転駆動力を付与することで、パレットを搬送しかつ返送することのできる構成とした。並走する搬送ラインと返送ラインとはパレットの移送方向が逆になるため、ローラの一側面に搬送ライン上にあるパレットの側面を当接させ、ローラを回転させることで、当該パレットに搬送方向への移動力が付与される。また、ローラの他側面に返送ライン上にあるパレットの側面を当接させ、ローラを搬送時と同方向に回転させることで、当該パレットに返送方向への移動力が付与される。よって、返送用の駆動装置を搬送用の駆動装置と兼用させて、その分の駆動装置の設置スペースおよびコストを低減することができる。
【0009】
また、ローラの回転方向も常に一方向とできるので、パレットに付与する駆動力の向きを変換するための機構を返送ライン上にあるパレットとローラとの間に介在させる必要がない。そのため、搬送用の駆動装置(ローラ)のみをもって、返送時においてもパレットに返送方向の駆動力を付与できる。
【0010】
ここで、上記ローラとパレットとの当接状態を達成するための具体的構成として、例えば搬送ライン上のパレットと当接可能な位置と、返送ライン上のパレットと当接可能な位置との間でローラを移動させるローラ移動手段を更に備えた構成が考えられる。この構成によれば、比較的小型のローラを採用することができ、搬送ラインと返送ラインとの間に十分な作業スペースを確保することができる。
【0011】
また、上記以外の構成として、例えば搬送ライン上のパレットとの当接状態、および、返送ライン上のパレットとの当接状態が得られる大きさのローラを配設する構成が考えられる。すなわち、搬送ラインと返送ラインとの間隔を考慮して上記大きさのローラを配設することで、ローラ移動手段等を設けることなく、パレットの搬送・返送に要する駆動力をパレットに付与することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係るパレット駆動装置によれば、駆動機構の省スペース化を図ることで、パレット移送設備を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るパレット駆動装置の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るパレット駆動装置、およびこの駆動装置を組み込んでなるパレット移送設備の一部を平面視した図である。同図に示すように、この移送設備1は、ワークとしての車体2を搬送するラインに組み込まれて使用されるものであり、車体2を載置した状態のパレット3を搬送する搬送ライン4と、搬送ライン4の終端から空のパレット3を返送する返送ライン5とを有する。
【0015】
ここで、搬送ライン4は互いに平行に2列に配置されている。各搬送ライン4は、この実施形態では、図2に示すように、基礎となるフレーム6上に配設された搬送用レール7によりそれぞれ構成されている。また、返送ライン5は、並走する2本の搬送ライン4の間に配設されており、搬送ライン4と同様、基礎となるフレーム6上に配設された返送用レール8により構成されている。
【0016】
パレット3は、並列配置された2本の搬送ライン4上に分割して配置されている。これにより、双方の分割パレット9,10は、ワークとなる車体2を、その両側部にて部分的に載置および支持する(図1を参照)。この実施形態では、分割されたパレットの一方が駆動側のパレット9であり、他方が従動側のパレット10である。
【0017】
駆動側パレット9は主に、パレット本体11と、パレット本体11に固定され、搬送方向もしくは返送方向への移動力を受けるための動力伝達部12と、パレット本体11にワークとなる車体2の一側部を取り付けるための取り付け部13とを有する。ここでパレット本体11はいわゆる断面L字状をなし、車体2が載置される板状の基部14と、基部14の側縁から下方に伸びる側壁部15とからなる。また、この実施形態では、搬送用レール7と返送用レール8との間に側壁部15が位置するよう、駆動側パレット9が搬送用レール7もしくは返送用レール8上に載置されている。
【0018】
また、基部14の上端面には突設ピン16を有する取り付け部13が複数箇所に設けられると共に、側壁部15の外側面(搬送用レール7と対峙する側の面)には板状の動力伝達部12が固定されている。この動力伝達部12は、後述する駆動ローラ24との接触態様を考慮して、パレット本体11よりも移送方向(搬送および返送方向)に長い形状となっている(図1あるいは図2を参照)。
【0019】
従動側パレット10は主に、パレット本体17と、パレット本体17に車体2の他側部を取り付けるための取り付け部18とを有する。ここでパレット本体17は駆動側パレット9のパレット本体11と同様に断面L字状をなし、車体2が載置される板状の基部19と、基部19の側縁から下方に伸びる側壁部20とからなる。また、この実施形態では、搬送用レール7と返送用レール8との間に側壁部20が位置するよう、従動側パレット10が搬送用レール7もしくは返送用レール8上に載置されている。
【0020】
また、基部19の上端面には突設ピン21を有する取り付け部18が複数箇所に設けられている。従い、突設ピン16を車体2の一側部下方に係合させ車体2を駆動側パレット9の取り付け部13に取り付けると共に、突設ピン21を車体2の他側部下方に係合させ車体2を従動側パレット10の取り付け部18に取り付けることで、車体2の搬送時、車体2を介して従動側パレット10が駆動側パレット9と一体的に同期して移送される(図1あるいは図6を参照)。
【0021】
また、この実施形態では、駆動側パレット9の側壁部15と従動側パレット10の側壁部20のうち互いに車幅方向に対峙する面に、側壁部15,20同士を密着嵌合させるための一対の嵌合部22,22がそれぞれ設けられている。図2には、駆動側パレット9の側壁部15の対峙面に設けられた一方の凸状の嵌合部22が示されている。また、同図には、従動側パレット10の側壁部20の対峙面に設けられた対応する凹状の嵌合部22(同図中破線で示す部位)が示されている。
【0022】
パレット駆動装置は、駆動源23に連結された複数の駆動ローラ24と、駆動ローラ24と車幅方向(水平方向)に対峙するガイドローラ25,26とを備える。ここでは、複数の駆動ローラ24全てが駆動側パレット9が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5との間に配設されている。この駆動ローラ24は、図3に示すように、鉛直方向に回転軸を有すると共に、搬送用レール7上に載置される駆動側パレット9の動力伝達部12の内側面と当接する位置に配設されている。そして、駆動源23からの駆動力を受けて駆動ローラ24が回転を開始すると、この駆動ローラ24の一側面と当接する動力伝達部12は駆動ローラ24との摩擦抵抗を搬送方向への移動力に変換し、固定されるパレット本体11へとその移動力を伝達する。これにより、駆動側パレット9は動力を受ける駆動ローラ24を順次変えながら、搬送方向に向けて搬送用レール7上を摺動する。また、車体2を介して駆動側パレット9と一体化された状態の従動側パレット10もその搬送方向に向けて搬送用レール7上を摺動する。
【0023】
また、駆動ローラ24は、返送ライン5の返送用レール8上に載置される駆動側パレット9の動力伝達部12の外側面と当接する位置に配設されている。そして、搬送時と同じ方向に駆動ローラ24が回転を開始すると、この駆動ローラ24の他側面と当接する動力伝達部12は駆動ローラ24との摩擦抵抗を搬送方向への移動力に変換し、固定されるパレット本体11へとその移動力を伝達する。これにより、駆動側パレット9は動力を受ける駆動ローラ24を順次変えながら、返送方向に向けて返送用レール8を摺動する。また、この実施形態では、従動側パレット10は駆動側パレット9と一体化された状態で返送方向に向けて返送用レール8上を摺動する。
【0024】
また、駆動ローラ24と車幅方向外側に対峙する位置には、例えば図3に示すように、1又は複数のガイドローラ25が配設される。このガイドローラ25は、駆動ローラ24とで挟持する形で搬送用レール7上に載置される駆動側パレット9の動力伝達部12と当接し、駆動ローラ24の回転に伴い動力伝達部12に搬送方向への移動力が伝達されると、動力伝達部12の移動方向、ひいては駆動側パレット9の搬送方向を案内する役割を果たす。
【0025】
同様に、駆動ローラ24と車幅方向内側(中央側)に対峙する位置には、例えば図4に示すように、1又は複数のガイドローラ26が配設される。このガイドローラ26は、駆動ローラ24とで挟持する形で返送用レール8上に載置される駆動側パレット9の動力伝達部12と当接し、駆動ローラ24の回転に伴い動力伝達部12に搬送方向への移動力が伝達されると、動力伝達部12の移動方向、ひいては駆動側パレット9の返送方向を案内する役割を果たす。なお、ガイドローラ25,26は、必ずしも駆動ローラ24と車幅方向に対峙している必要はなく、駆動側パレット9の動力伝達部12と当接可能な限りにおいてその配設位置は任意である。また、駆動側パレット9の移送案内が可能な限りにおいてその配置間隔や数も任意である。
【0026】
なお、この実施形態では、上記駆動形態を採っていることから、搬送ライン4および返送ライン5に沿って配設される複数の駆動ローラ24の配置間隔は、駆動側パレット9に設けた動力伝達部12の長辺寸法に基づき定められる。すなわち、動力伝達部12が常に駆動ローラ24と当接するよう駆動ローラ24の最大配置間隔が定められる。
【0027】
上記構造をなす複数の駆動側パレット9は一方の搬送用レール7(図1や図2の上側)上に載置される。また、これら駆動側パレット9と同数の従動側パレット10が他方の搬送用レール7(図1や図2でいえば、各図中下側)上に載置される。これら複数の駆動側パレット9および従動側パレット10は各搬送用レール7上を搬送方向に向けて摺動できるように構成されている。
【0028】
また、駆動側パレット9と従動側パレット10は共に返送ライン5を構成する返送用レール8上に移載され、この返送用レール8に沿ってかつ返送方向(搬送方向とは逆の方向)に向けて摺動できるように構成されている。
【0029】
具体的には、図1に示すように、返送ライン5の返送方向始端部において、返送用レール8が部分的に欠けた状態となっている。また、各搬送ライン4,4の搬送方向終端部には、搬送用レール7,7の一部がそれぞれ適当な移載機構によりパレット移送設備1の中央側に向けてスライドし、返送用レール8とつながるようになっている。よって、駆動側パレット9の搬送用レール7のスライド部27をパレット移送設備1の中央側に向けてスライドさせスライド部27を返送用レール8と連結することで、このスライド部27上に載置された駆動側パレット9が返送用レール8上に移載される。また、従動側パレット10の搬送用レール7のスライド部28をパレット移送設備1の中央側に向けてスライドさせスライド部28を返送用レール8と連結することで、このスライド部28上に載置された従動側パレット10が返送用レール8上に移載される。なお、この実施形態では、搬送ライン4上と返送ライン5上とに関らず、駆動側パレット9および従動側パレット10は常に同一平面上に存在する。
【0030】
また、この実施形態では、各分割パレット9,10の側壁部15,20に互いに密着嵌合する一対の嵌合部22,22を設けているので、例えば一方のスライド部27上に載置された駆動側パレット9を返送用レール8上に移載すると共に、従動側パレット10が載置された他方のスライド部28をパレット移送設備1の中央側に向けてスライドさせることで、嵌合部22,22を介して駆動側パレット9と従動側パレット10とが一体化される。従い、この状態で駆動側パレット9に適当な駆動手段(駆動ローラ24でも構わない)により移動力を付与することで、駆動側パレット9と従動側パレット10とが互いに一体化した状態で返送用レール8上を返送される。
【0031】
ここで、従動側パレット10の基部19における搬送用レール7との当接面は全域にわたって平滑であり、搬送方向はもちろん、車幅方向(搬送方向と直交する向き)にも摺動可能となっているため、従動側パレット10がスライド部28から摺動離脱して、駆動側パレット9とスムーズに一体化できる。この図示例では、駆動側パレット9の基部14の下端面、およびこの下端面と全面にわたって当接する搬送用レール7の上端面は共に平面である。また、従動側パレット10の基部19の下端面、およびこの下端面と全面にわたって当接する搬送用レール7の上端面は共に平面である。もちろん、これら分割パレット9,10と当接する返送用レール8の上端面はその全面にわたって平面状をなしている。
【0032】
次に、上記構成のパレット移送設備1における一対の分割パレット9,10の移送形態について図5を例にとり説明する。
【0033】
図5は、車体溶接ラインに組み込まれたパレット移送設備1におけるワーク搬送用パレットの移送形態を説明するための概念図を示している。同図において、まず、ワーク仮置ステーションS1上にてワーク搬送用パレット(分割パレット9,10)上にワークとしての車体2が仮置される。具体的には、予め溶接により一体化されたフロアパネルが一対の分割パレット9,10上に載置され、このフロアパネル上に左右のサイドメンバが仮止めされた状態で組まれ、かつ、これらサイドメンバの上方に跨る形でルーフパネルが載置される。
【0034】
次に、仮置された車体2を載置した状態で一対の分割パレット9,10が搬送方向に移送され、仮打ち溶接ステーションS2にて仮打ち溶接がなされると共に、さらに搬送方向前方に位置する増打ち溶接ステーションS3にて増打ちがなされ、車体2のアセンブリが完了する。なお、ここでは、仮置ステーションS1にてサイドメンバおよびルーフパネルの仮置きを実施した後、続く仮打ち溶接ステーションS2にてフロアパネルとサイドメンバ、および、サイドメンバとルーフパネルとを共に仮打ちする場合を例示したが、サイドメンバを一旦フロアパネルに仮打ちして固定した後、ルーフパネルを仮置して仮打ちする工程順を採る等、他の溶接手順を採用できることはもちろんである。
【0035】
このようにしてアセンブリがなされた車体2を一対の分割パレット9,10上から離脱させ、空になった一対の分割パレット9,10が搬送ライン4,4の終端(スライド部27,28)にまで移送されると、例えば上記移載機構により一対の分割パレット9,10がパレット移送設備1の中央側に配置される返送ライン5上で一体化される。そして、一体化した状態の分割パレット9,10が返送ライン5上を返送される。
【0036】
そして、一体化した分割パレット9,10が返送ライン5の終端にまで移送されると、詳細な説明は省略するが、返送ライン5上の分割パレット9,10をそれぞれ左右の搬送ライン4,4に移載するための移載機構により各分割パレット9,10が各搬送ライン4,4上に移載される。そして、各搬送ライン4,4上に移載された分割パレット9,10は搬送方向前方にある仮置ステーションS1に向けて移送される。このようにして、各分割パレット9,10の移送サイクルがそれぞれ形成される。
【0037】
このように、上記構成に係るパレット移送設備1であれば、一対の分割パレット9,10が共に搬送時よりもパレット移送設備1の中央側を通って返送されるので、返送ライン5の設置スペースを並設される搬送ライン4,4間のスペース内に収めることができる。これにより、返送ライン5の設置スペースの増加分を実質的に零として、パレット3の移送設備1ひいてはこれが組み込まれるワーク搬送ラインを大幅に縮小することができる。また、各搬送ライン4,4の外側に十分なスペースが確保されるので、ワークの搬送ラインに沿って、スペース上の制限を受けることなく、適当なワーク作業設備、ここでいえば溶接ロボットなどを配置することができる。
【0038】
また、分割パレット9,10のうち一方を駆動側パレット9とし、他方はワークとなる車体2を介して駆動側パレット9と一体化される従動側パレット10とすると共に、返送時、一対の分割パレット9,10が互いに一体化した状態で返送ライン5上を返送されるようにした。これによれば、搬送時、車体2を載置した状態では従動側パレット10が駆動側パレット9と一体的に搬送されると共に、返送時、駆動ローラ24で駆動側パレット9のみに移動力を付与することで従動側パレット10も共に返送される。これにより、パレット移送設備1のさらなる省スペース化を図ることができると共に、パレットを分割した場合でもパレット移送に必要な動力を最小限に抑え、駆動機構(駆動ローラ24やその駆動源23)の設置スペースを小さくすることができる。
【0039】
また、この実施形態では、駆動側パレット9に、このパレット9と別体に設けた駆動ローラ24から搬送方向への動力を受けるための動力伝達部12を設けると共に、ワークとなる車体2を載置した状態では車体2を介して駆動側パレット9と従動側パレット10とが一体的に搬送されるようにした。そのため、駆動ローラ24を駆動側パレット9の搬送用レール7の側にのみ配設するだけでよく、駆動ローラ24およびこの駆動ローラ24を駆動するための駆動源23の設置スペースを大幅に縮小することができる。また、分割パレット9,10まわりのスペースが空くことから、分割パレット9,10上に載置された車体2へのアクセスも良好となり、作業性が向上する。
【0040】
特に、この実施形態では、駆動側と従動側双方の分割パレット9,10にワークとなる車体2を取り付けるための取り付け部13,18を設けるようにしたので、各作業ステーションS1〜S3にて車体2を搬送する一対の分割パレット9,10が停止した場合でも、分割パレット9,10に対する車体2の相対位置が維持される。従い、各作業ステーションS1〜S3内におけるワークの位置決めを容易かつ高精度に行うことが可能となる。
【0041】
また、この実施形態では、一対の分割パレット9,10を、共に車体2が載置される基部14,19と、基部14,19の側縁から下方に延びる側壁部15,20とを有する構成とし、かつ、双方の側壁部15,20が互い対峙する面に、側壁部15,20同士を密着嵌合させるための嵌合部22,22をそれぞれ設けるようにした。このような構成とすることで、分割パレット9,10が相互に当接することで一体化され、この状態で返送ライン5上を返送される。そのため、分割パレット9,10上に車体2を載置していない状態であっても、従動側パレット10と一体化した駆動側パレット9を駆動させることで、搬送時と同様、駆動側に設けた駆動源23および駆動ローラ24のみで双方の分割パレット9,10を返送することができる。また、スライド部27,28の水平移動のみで一体化できるため、一体化に際して必要となる分割パレット9,10の移送機構も簡単なもので済む。
【0042】
このように、同一平面上で駆動側パレット9と従動側パレット10とを一体化して返送する場合、ワーク載置面よりも上方に突出した取り付け部13,18(この実施形態であれば突設ピン16,21)とワークとの干渉が問題となる。ここで、その返送ライン5の車幅位置を、図6に示すように、ワークとなる車体2のフロアパネル中央部に設けられるトンネル部29の車幅方向位置と一致させるようにすれば、取り付け部13,18や突設ピン16,21と車体2との干渉を確実に回避することができる。
【0043】
また、駆動側パレット9と従動側パレット10共に、各々のパレット本体11,17を構成する基部14,19を搬送用レール7と車体2で挟持し、かつ、側壁部15,20をそれぞれ駆動ローラ24とガイドローラ25,26とで挟持して搬送しているので、車体製造ラインのように、移送・停止を繰り返しながら搬送される形態であっても、安定した姿勢を保った状態で搬送することができる。
【0044】
また、この実施形態では、駆動側パレット9の駆動装置を、駆動源23と、駆動源23に連結される駆動ローラ24とで構成し、かつ、駆動ローラ24の一側面が搬送用レール7上の駆動側パレット9と当接し、駆動ローラ24の他側面が返送用レール8上の駆動側パレット9と当接する位置に、複数の駆動ローラ24を配置するようにした。このように、搬送時と返送時とで動力伝達部12の異なる側面に駆動ローラ24の回転駆動力を付与して駆動側パレット9を搬送し、かつ返送する構成とすることで、搬送用の駆動装置のみをもって、返送時においても駆動側パレット9に反対向きの駆動力(返送方向の動力)を付与できる。よって、返送用の駆動装置を新たに設けずに済み、設備コストの低減および省スペース化が可能となる。また、駆動ローラ24を同一方向に回転させることで上述の作用が得られるので、搬送用レール7上の駆動側パレット9と、返送用レール8上の駆動側パレット9とに対して同時に移動力を付与することができる。よって、搬送と返送とのタイミングによらず多数の駆動側パレット9を同時に搬送および返送することができる。
【0045】
ここで、駆動ローラ24は、その一側面が搬送用レール7上の駆動側パレット9と当接し、駆動ローラ24の他側面が返送用レール8上の駆動側パレット9と当接する位置に配設されていればよい。そのため、駆動ローラ24の側方を搬送用レール7上の駆動側パレット9が通過するタイミングが、同一の駆動ローラ24の側方を返送用レール8上の駆動側パレット9が通過するタイミングと異なる場合、例えば図7に示すように、搬送用レール7上の駆動側パレット9と当接する位置と、返送用レール8上の駆動側パレット9と当接する位置との間で駆動ローラ24を車幅方向に移動させるローラ移動手段(図示は省略)を設けた構成を採ることも可能である。駆動ローラ24を車幅方向に移動させることができれば、駆動ローラ24のローラ径を小さくできる。ここで、搬送ライン4,4の間隔はワークが車体2であることから不変であるため、各パレット9,10まわりの作業スペースを拡げることができ、作業時、ワークとなる車体2へのアクセスを良好にすることができる。
【0046】
また、以上の説明では、駆動側パレット9と従動側パレット10とを互いに一体化した状態で返送する形態を説明したが、もちろん本発明に係るパレット移送設備1はこの形態に限られない。例えば、図8に示すように、並走する搬送ライン4,4上をそれぞれ搬送された駆動側パレット9と従動側パレット10とが共に1本の返送ライン5上に交互に移載され、返送される形態を採ることもできる。この際、搬送ライン4終端から返送ライン5始端への各分割パレット9,10の移載は、図8中の丸囲み数字1で示す矢印から丸囲み数字2で示す矢印の順序で行われる。これに伴い、返送ライン5終端から各搬送ライン4,4への各分割パレット9,10の移載は、図8中の丸囲み数字1で示す矢印から丸囲み数字2で示す矢印の順序で行われる。
【0047】
あるいは、図示は省略するが、並走する2本の搬送ライン4,4間に、同じく2本の返送ライン5,5を平行に設け、これら一対の搬送ライン4,4上および対応する一対の返送ライン5,5上を、各分割パレット9,10がそれぞれ移送される形態を採ることもできる。
【0048】
もちろん、返送ライン5が、その本数に関らず、並走配置された搬送ライン4,4間に配設されている限りにおいて、その配置態様もしくは返送態様は任意である。例えば、図9(a)に示すように、並列に配置された搬送用レール7,7間に、互いに近接する2本の返送用レール8,8が配設されている構成を採ることもできる。この場合、各搬送ライン4,4の搬送方向終端部における搬送用レール7,7の一部を、それぞれスライド部30,31としてパレット移送設備1の中央側に向けてスライド可能に構成することで、各分割パレット9,10を搬送用レール7,7に対して直交する向きにスライドさせることなく分割パレット9,10を一体化して返送することができる。
【0049】
具体的には、搬送方向に直交する向きに沿って2本の移載レール32,32が設けられ、これら移載レール32,32上に基台33が移載レール32,32に対して摺動可能に配置されている。基台33には、図10(a)に示すように、駆動側パレット9の側の搬送用レール7のスライド部30が、動力伝達部12と当接する駆動ローラ24および駆動源23と共に固定されている。よって、適当な駆動手段により基台33を搬送方向に直交する向きにスライドさせることで、図9(b)に示すように、基台33上に固定されたスライド部30、および、スライド部30上に載置された駆動側パレット9が移送設備1の中央側にスライドする。従動側パレット10に関しても、同様に、図示は省略するが、移載レール上に基台を配置し、この基台上にスライド部31を固定すると共に、適当な駆動手段により基台を搬送直交方向にスライドさせることで、基台上に固定されたスライド部31、およびスライド部31上に載置された従動側パレットが移送設備1の中央側にスライドする。
【0050】
このようにしてスライド部30,31を移動させることで、図10(b)に示すように、双方の分割パレット9,10が互いに当接し、一体化される。また、スライド部30,31がそれぞれ対応する返送用レール8,8と実質的に連結され、双方の分割パレット9,10が対応する返送用レール8,8上にそれぞれ移載される。よって、この状態で駆動ローラ24を所定の向き(搬送時とは逆の向き)に回転駆動させることで、動力伝達部12を介して駆動側パレット9が返送方向への動力を受けた駆動側パレット9が従動側パレット10と一体に返送される。よって、基台33に固定された駆動ローラ24は、他の駆動ローラ24と異なり、搬送時と返送時とでその回転方向を異ならせている。
【0051】
なお、上述のように、各分割パレット9,10を搬送用レール7,7に対して搬送直交方向にスライドさせることなく返送用レール8,8上に移載させる場合、例えば図11に示す構成を採ることもできる。すなわち、図11(a),(b)に示すように、分割パレット(ここでは従動側パレット10)の下部でかつ搬送用レール7の両側に、2個のガイドローラ34,34を取り付けることも可能である。この場合、搬送用レール7を2個のガイドローラ34,34で挟持する形態で従動側パレット10が搬送用レール7上を搬送される。そのため、従動側パレット10の姿勢を適正に保った状態で車体2を搬送することができる。
【0052】
また、図11(a)ないし(c)に示すように、従動側パレット10の基部19の内部で搬送用レール7の上面と当接する位置に摺動ローラ35を設けることもできる。もちろん、摺動ローラ35は、搬送用レール7の移動に伴い搬送用レール7の長手方向に沿って回転する。このような構成とすることで、従動側パレット10と搬送用レール7との摺動抵抗を低減して、円滑な搬送形態を実現することが可能となる。もちろん、以上の構成および作用効果は、駆動側パレット9に対しても同様に適用し得る。また、返送用レール8上においても同様に成立する。
【0053】
また、以上の説明では、駆動側パレット9を構成するパレット本体11の側壁部15に動力伝達部12を取付けた場合を例示したが、駆動ローラ24との当接状態が搬送ライン4の全長にわたって確保できるのであれば、側壁部15を動力伝達部12を一体にした構成も可能である。すなわち、駆動側パレット9の側壁部15の鉛直方向寸法を駆動ローラ24やガイドローラ25と同一平面位置まで伸ばすことで、側壁部15が動力伝達部12としての機能を兼ねることができる。この際、従動側パレット10の側壁部20の大きさは図6に例示のままとしておけば一体化に際しても支障はない。
【0054】
また、以上の説明では、1つの駆動ローラ24で分割パレット9,10の一方(駆動側パレット9)に搬送用動力と返送用動力を付与するようにしていたが、特にこの構成に限る必要はない。例えば、パレット3が分割されていない状態で1本の搬送ライン4上を搬送され、かつこの搬送ライン4と並走する1本の返送ライン5上をパレット3が返送される移送ラインを有するパレット移送設備においても、本発明に係るパレット駆動装置を適用することは可能である。
【0055】
また、搬送ライン4から返送ライン5への移載手段に関し、搬送用レール7の一部をスライドさせるのではなく、搬送ライン4終端に位置する各分割パレット9,10のみを適当な手段でスライドさせ、あるいはピックアップして隣合う返送ライン5上に移載する手段を採るようにして構わない。
【0056】
もちろん、本発明に係るパレット駆動装置は、以上例示の説明に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係るパレット移送設備の部分平面図である。
【図2】パレット駆動装置を備えたパレット移送設備の要部斜視図である。
【図3】駆動用パレットを搬送する際の動力伝達態様を示す要部断面図である。
【図4】駆動用パレットを返送する際の動力伝達態様を示す要部断面図である。
【図5】各分割パレットの移送形態の一例を概念的に説明する平面図である。
【図6】各分割パレットとワークとの鉛直位置関係を示す要部断面図である。
【図7】パレット駆動装置の他の形態を示す要部断面図である。
【図8】各分割パレットの他の移送形態を概念的に説明する平面図である。
【図9】他の形態に係るパレット移送設備の要部平面図であって、図9(a)は返送用レール上への移載前における当該設備の要部平面図、図9(b)は返送用レール上への移載後における当該設備の要部平面図である。
【図10】図10(a)は図9(a)におけるA−A断面図であり、図10(b)は図9(b)におけるB−B断面図である。
【図11】他の形態に係る従動側パレットの要部拡大図であり、図11(a)はその要部平面図、図11(b)はその正面図、図11(c)はその断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 パレット移送設備
2 車体
3 パレット
4 搬送ライン
5 返送ライン
6 フレーム
7 搬送用レール
8 返送用レール
9 駆動側パレット(分割パレット)
10 従動側パレット(分割パレット)
11,17 パレット本体
12 動力伝達部
13,18 取り付け部
14,19 基部
15,20 側壁部
16,21 突設ピン
22,22 嵌合部
23 駆動源
24 駆動ローラ
25,26,34 ガイドローラ
27,28,30,31 スライド部
29 トンネル部
S1 ワーク仮置ステーション
S2 仮打ち溶接ステーション
S3 増打ち溶接ステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置した状態のパレットを搬送する搬送ラインと、該搬送ラインの終端から始端へと空の前記パレットを返送する返送ラインとを有するパレット搬送ラインに組み込まれて使用されるパレット駆動装置であって、
互いに並走する前記搬送ラインと前記返送ラインとの間に配設され、駆動源と連結される複数のローラを備え、
前記ローラの一側部が前記搬送ライン上の前記パレットの側面と当接し、前記ローラの他側部が前記返送ライン上の前記パレットの側面と当接するよう構成されているパレット駆動装置。
【請求項2】
前記搬送ライン上の前記パレットと当接可能な位置と、前記返送ライン上の前記パレットと当接可能な位置との間で前記ローラを移動させるローラ移動手段を更に備えた請求項1に記載のパレット駆動装置。
【請求項3】
前記搬送ライン上の前記パレットとの当接状態、および、前記返送ライン上の前記パレットとの当接状態が得られる大きさの前記ローラが配設されている請求項1に記載のパレット駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−107813(P2009−107813A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283958(P2007−283958)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)