説明

パワーアシストスーツ

【課題】電力を消費せずに姿勢を維持することができるパワーアシストスーツを提供する。
【解決手段】パワーアシストスーツは、上腕装着部(支持部材)41Aと、モータ62と、前腕装着部(回動部材)42Aと、ラチェット63と、係止爪64と、爪アクチュエータ65と、制御部とを備えている。上腕装着部41Aは人体に装着され、この上腕装着部41Aにはモータ62が固定されている。前腕装着部42Aは、モータ62の駆動軸62aに接続されており、人体に装着される。また、モータ62の駆動軸62aには、ラチェット63が設けられている。係止爪64は、上腕装着部41Aに移動可能に取り付けられ、ラチェット63のラチェット歯63aに噛み合うようになっており、爪アクチュエータ65によって移動される。制御部は、音声検出部の検出結果に基づいて、爪アクチュエータ65を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着した人の動作に応じて筋力を補助するパワーアシストスーツに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装着した人の動作に応じて筋力を補助するパワーアシストスーツ(パワーアシスト装置)が開発されており、医療、介護、農業などの分野で実用化が強く要望されている。このパワーアシストスーツは、通常、装着した人の筋力を補助するモータと、モータを制御する制御部とを備えている(特許文献1)。
【0003】
例えば、パワーアシストスーツを農作業に用いる場合は、農作物の収穫や間引き、枝の剪定を行うときに、腕が任意の位置(高さ)に固定されていることが好ましい。そのため、一般的なパワーアシストスーツは、姿勢を維持する機能を有しており、同じ姿勢で長時間の作業を行う場合に人体の疲労を軽減するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−097636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来のパワーアシストスーツでは、モータにトルクを発生させて姿勢を維持するため、姿勢を維持するために電力を消費するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、電力を消費せずに姿勢を維持することができるパワーアシストスーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明のパワーアシストスーツは、支持部材と、モータと、回動部材と、ラチェットと、係止爪と、爪アクチュエータと、制御部とを備えている。支持部材は人体に装着され、この支持部材にはモータが固定されている。回動部材は、モータの回転軸に接続されており、人体に装着される。また、モータの回転軸には、ラチェットが設けられている。係止爪は、支持部材に移動可能に取り付けられ、ラチェットの歯に噛み合うようになっており、爪アクチュエータによって移動される。制御部は、音声検出部の検出結果に基づいて、爪アクチュエータを駆動させる。
【0008】
本発明のパワーアシストスーツでは、制御部が音声検出部の検出結果に基づいて、爪アクチュエータを駆動させ、係止爪をラチェットの歯に噛み合わせる。これにより、モータの回転軸が一方の方向にのみ回転可能となり、モータの回転軸に接続された回動部材の支持部材に対する回動が係止される。その結果、電力を消費せずに姿勢を維持することができる。また、制御部が音声検出部の検出結果に基づいて、爪アクチュエータを駆動させ、係止爪をラチェットの歯から離す。これにより、モータの回転軸が両方の方向に回転可能となり、姿勢の維持が解除される。
【0009】
本発明のパワーアシストスーツでは、音声検出部の検出結果に応じて、姿勢の維持及び解除を行う。そのため、両腕を上げた状態であっても、姿勢の維持及び解除を簡単に行うことができ、操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパワーアシストスーツによれば、電力を消費せずに姿勢を維持することができ、且つ、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態を装着した状態の斜視図である。
【図2】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態を装着して荷物を支えた状態の側面図である。
【図3】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態に係る腕パーツを内(人体)側から見た平面図である。
【図4】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態に係る腕パーツを外側から見た斜視図である。
【図5】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態に係る駆動機構の斜視図である。
【図6】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態に係る駆動機構のラチェットに係止爪が係合した状態の説明図である。
【図7】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態に係る駆動機構のラチェットから係止爪が外れた状態の説明図である。
【図8】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態に係る駆動機構に設けられたモータの駆動軸にクラッチが係合した状態の説明図である。
【図9】本発明のパワーアシストスーツの一実施形態に係る制御部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の磁気歯車装置を実施するための形態について、図1〜図9を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0013】
<パワーアシストスーツの構成>
まず、本発明のパワーアシストスーツの一実施形態の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明のパワーアシストスーツの一実施形態を装着した状態の斜視図である。図2は、パワーアシストスーツの一実施形態を装着して荷物を支えた状態の側面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、パワーアシストスーツ1は、使用者の腰に装着される腰パーツ2と、肩に装着される肩パーツ3と、腕に装着される腕パーツ4と、脚に装着される脚パーツ5を備えている。
【0015】
腰パーツ2は、腰装着部21と、腕制御部22と、バッテリ23と、大腿駆動機構24A,24Bから構成されている。腰装着部21は、ベルト状に形成されており、使用者の腰に装着される。腕制御部22及びバッテリ23は、腰装着部21に取り付けられており、使用者の背中側に配置される。
【0016】
腕制御部22は、後述する上腕駆動機構32A,32B及び前腕駆動機構43A,43Bの駆動制御を行う。この腕制御部22については、後で詳しく説明する。また、バッテリ23は、腕制御部22、各駆動機構32A,32B,43A,43B等に電力を供給する。
【0017】
大腿駆動機構24A,24Bは、腰装着部21に取り付けられており、それぞれ使用者の左右の側方に配置される。大腿駆動機構24Aは、脚パーツ5の後述する大腿装着部51Aを腰装着部21に対して回動させることで、左脚の大腿の動作に応じて筋力を補助する。一方、大腿駆動機構24Bは、脚パーツ5の後述する大腿装着部51Bを腰装着部21に対して回動させることで、右脚の大腿の動作に応じて筋力を補助する。
【0018】
肩パーツ3は、略C字状に形成されており、使用者の左肩に配置される左肩装着部31Aと、右肩に配置される右肩装着部31Bと、左右の肩装着部31A,31Bを接続する接続部31Cを備えている。この肩パーツ3は、使用者の背中側に配置される連結部材10によって腰パーツ2の腰装着部21に連結されている。
【0019】
肩パーツ3の左肩装着部31Aには、音声検出部(マイクロホン)34と、上腕駆動機構32Aが取り付けられている。この上腕駆動機構32Aは、後述する上腕装着部41Aを左肩装着部31Aに対して回動させることで、左腕の上腕の動作に応じて筋力を補助する。
また、右肩装着部31Bには、上腕駆動機構32Bが取り付けられている(図2参照)。この上腕駆動機構32Bは、上腕装着部41Bを肩パーツ3の右肩装着部31Bに対して回動させることで、右腕の上腕の動作に応じて筋力を補助する。
【0020】
腕パーツ4は、左腕パーツ4Aと、右腕パーツ4Bからなっている。左腕パーツ4Aは、上腕装着部41Aと、前腕装着部42Aと、前腕駆動機構43Aから構成されている。
上腕装着部41Aは、装着ベルト46によって使用者の左腕の上腕に装着される。この上腕装着部41Aの一端部は、肩パーツ3の左肩装着部31Aに回動可能に連結されている。また、前腕装着部42Aは、装着ベルト47によって使用者の左腕の前腕に装着される。この前腕装着部42Aの一端部は、上腕装着部41Aの他端部に回動可能に連結されている。
【0021】
上腕装着部41A及び前腕装着部42Aには、それぞれクラッチ45が設けられている。上腕装着部41Aに設けられたクラッチ45は、上腕駆動機構32Aの後述する駆動軸62a(図3参照)に上腕装着部41Aを接続する。また、前腕装着部42Aに設けられたクラッチ45は、前腕駆動機構43Aの駆動軸62a(図3参照)に前腕装着部42Aを接続する。
【0022】
前腕駆動機構43Aは、上腕装着部41Aの他端部に取り付けられている。この前腕駆動機構43Aは、前腕装着部42Aを上腕装着部41Aに対して回動させることで、左腕の前腕の動作に応じて筋力を補助する。
【0023】
右腕パーツ4Bは、左腕パーツ4Aと同様に、上腕装着部41Bと、前腕装着部42Bと、上腕駆動機構32Bと、前腕駆動機構43Bから構成されている(図2参照)。上腕装着部41Bは、装着ベルト46によって使用者の右腕の上腕に装着され、前腕装着部42Bは、装着ベルト47によって使用者の右腕の前腕に装着される。これら上腕装着部41B及び前腕装着部42Bには、それぞれクラッチ45が設けられている。
【0024】
前腕駆動機構43Bは、上腕装着部41Bの他端部に取り付けられている。この前腕駆動機構43Bは、前腕装着部42Bを上腕装着部41Bに対して回動させることで、右腕の前腕の動作に応じて筋力を補助する。
【0025】
脚パーツ5は、左脚パーツ5Aと、右脚パーツ5Bからなっている。左脚パーツ5Aは、大腿装着部51Aと、下腿装着部52Aと、足装着部53Aと、下腿駆動機構55Aと、脚制御部56Aから構成されている。
【0026】
大腿装着部51Aは、装着ベルト58によって使用者の左脚の大腿に装着され、下腿装着部52Aは、装着ベルト59によって使用者の左脚の下腿に装着される。大腿装着部51Aの一端部は、腰パーツ2の腰装着部21に回動可能に連結されている。下腿装着部52Aの一端部は、大腿装着部51Aの他端部に回動可能に連結されており、下腿装着部52Aの他端部は、回動軸57Aにより足装着部53Aに回動可能に連結されている。また、足装着部53Aは、使用者の左足部(足首から下の部分)に装着される靴部として形成されている。
【0027】
大腿装着部51A及び下腿装着部52Aには、それぞれクラッチ(不図示)が設けられている。大腿装着部51Aに設けられたクラッチは、大腿駆動機構24Aの駆動軸に大腿装着部51Aを接続する。また、下腿装着部52Aに設けられたクラッチは、下腿駆動機構55Aの駆動軸に下腿装着部52Aを接続する。
【0028】
下腿駆動機構55Aは、大腿装着部51Aの他端部に取り付けられている。この下腿駆動機構55Aは、下腿駆動機構55Aを大腿装着部51Aに対して回動させることで、腕の前腕の動作に応じて筋力を補助する。
【0029】
脚制御部56Aは、大腿装着部51Aに取り付けられており、大腿駆動機構24A及び下腿駆動機構55Aの駆動制御を行う。これら脚制御部56A、大腿駆動機構24A及び下腿駆動機構55Aには、バッテリ23から電力が供給される。なお、左脚パーツ5A用にバッテリを用意して、大腿装着部51Aに取り付けてもよい。
【0030】
右脚パーツ5Bは、左脚パーツ5Aと同様に、大腿装着部51Bと、下腿装着部52Bと、足装着部53Bと、下腿駆動機構55Bと、脚制御部56Bから構成されている。
【0031】
大腿装着部51Bは、装着ベルト58によって使用者の右脚の大腿に装着され、下腿装着部52Bは、装着ベルト59によって使用者の右脚の下腿に装着される。大腿装着部51Bの一端部は、腰パーツ2の腰装着部21に回動可能に連結されている。下腿装着部52Bの一端部は、大腿装着部51Bの他端部に回動可能に連結されており、下腿装着部52Bの他端部は、回動軸57Bにより足装着部53Bに回動可能に連結されている。
【0032】
大腿装着部51B及び下腿装着部52Bには、それぞれクラッチ(不図示)が設けられている。また、足装着部53Bは、使用者の右足部(足首から下の部分)に装着される靴部として形成されている。
【0033】
下腿駆動機構55Bは、大腿装着部51Bの他端部に取り付けられている。この下腿駆動機構55Bは、下腿装着部52Bを大腿装着部51Bに対して回動させることで、右脚の下腿の動作に応じて筋力を補助する。
【0034】
脚制御部56Bは、大腿装着部51Bに取り付けられており、大腿駆動機構24B及び下腿駆動機構55Bの駆動制御を行う。この脚制御部56B、大腿駆動機構24B及び下腿駆動機構55Bには、バッテリ23から電力が供給される。なお、右脚パーツ5B用にバッテリを用意して、大腿装着部51Bに取り付けてもよい。
【0035】
<腕パーツ>
次に、腕パーツ4の連結について、図3を参照して説明する。
図3は、左腕パーツ4Aを内(人体)側から見た平面図である。
【0036】
図3に示すように、上腕装着部41Aの一端には、円形の嵌合突部41aが設けられている。この嵌合突部41aは、左肩装着部31Aに設けられた肩連結板31aの嵌合孔31bに回転可能に嵌合されている。これにより、上腕装着部41Aは、肩装着部31Aに回動可能に連結されており、肩装着部31Aに対する回動部材になっている。また、上腕装着部41Aの他端は、肘連結部41bになっており、中心に嵌合孔41cを有している。
【0037】
一方、前腕装着部42Aの一端には、円形の嵌合突部42aが設けられている。この嵌合突部42aは、上腕装着部41Aの嵌合孔41cに回転可能に嵌合されている。これにより、前腕装着部42Aは、上腕装着部41Aに回動可能に連結されており、上腕装着部41Aに対する回動部材になっている。
【0038】
<駆動機構>
次に、各駆動機構24A,24B,32A,32B,43A,43B,55A,55Bについて、図4〜図7を参照して説明する。
図4は、左腕パーツ4Aを外側から見た斜視図である。図5は、前腕駆動機構43Aの斜視図である。図6は、前腕駆動機構43Aのラチェットに係止爪が係合した状態の説明図である。図7は、前腕駆動機構43Aのラチェットから係止爪が外れた状態の説明図である。
【0039】
各駆動機構24A,24B,32A,32B,43A,43B,55A,55Bは、同様の構成を有しているため、ここでは、前腕駆動機構43Aを例に挙げて説明する。
図4及び図5に示すように、前腕駆動機構43Aは、固定部材61と、モータ62と、ラチェット63と、係止爪64と、爪アクチュエータ65とを備えている。
【0040】
固定部材61は、リング状に形成されており、取付部68(図4の上腕駆動機構32Aを参照)によって上腕装着部41Aの肘連結部41bに固定されている。また、固定部材61には、モータ62が嵌合された状態で固定されている。つまり、モータ62は、固定部材61を介して上腕装着部41Aに固定されている。このモータ62としては、例えば、直流モータを採用することができるが、超音波モータ、交流モータ、ステッピングモータなどの他のモータを採用してもよい。
【0041】
モータ62における駆動軸62aの回転は、例えば、遊星歯車機構などの減速機構(不図示)により減速されている。この駆動軸62aは、モータ62の両側から突出している。駆動軸62aの一端には、ラチェット63が設けられており、他端には、クラッチプレート69が設けられている。
【0042】
ラチェット63は、略円盤状に形成されており、その中心が駆動軸62aの他端に固定されている。このラチェット63の外周部には、複数のラチェット歯63aが設けられている。ラチェット63の複数のラチェット歯63aには、係止爪64が噛み合う。
【0043】
クラッチプレート69は、上腕装着部41Aの肘連結部41bと固定部材61との間に介在される。このクラッチプレート69は、略円盤状に形成されており、その中心が駆動軸62aの他端に固定されている。クラッチプレート69の外周部には、クラッチ45の後述するロッド45bが係合する4つの係合部69aが設けられている(図5参照)。これら4つの係合部69aは、クラッチプレート69の外周部を切り欠くことによって形成されている。
【0044】
係止爪64及び爪アクチュエータ65は、支持台71に支持されている。この支持台71は、固定部材61に取り付けられており、略四角形の支持板72と、この支持板72の四隅の設けられた4つの支持脚73(図5では3つ示されている)からなっている。したがって、係止爪64及び爪アクチュエータ65は、支持台71及び固定部材61を介して上腕装着部41Aに取り付けられている。
【0045】
図5に示すように、支持板72は、係止爪64及び爪アクチュエータ65が配置される表面72aと、モータ62に対向する裏面72bとを有している。この支持板72の中央部には、ラチェット63を露出させるための貫通孔72cが形成されている。4つの支持脚73の一端は、支持板72の裏面72bに接続されており、他端は、固定部材61に接続されている。
【0046】
係止爪64は、軸部75によって支持板72の表面72aに回動可能に取り付けられている。この係止爪64は、ばね部材(不図示によって)ラチェット63の複数のラチェット歯63aに噛み合う方向に付勢されている。また、係止爪64には、操作アーム76が固定されている。
【0047】
爪アクチュエータ65は、直動モータであり、固定部65aと、可動部65bを備えている。爪アクチュエータ65の固定部65aは、ブラケット78により支持板72の表面72aに固定されている。可動部65bの移動は、ガイド部材79によって案内されている。
【0048】
可動部65bは、固定部65a内に繰り込まれると、操作アーム76から離れる。これにより、係止爪64がばね部材(不図示)のばね力によって回動し、ラチェット63の複数のラチェット歯63aに噛み合う。その結果、駆動軸62aの一方向(肘を伸ばす方向)への回転動作が係止される(図6参照)。
また、可動部65bは、固定部65aから繰り出されると、操作アーム76を押圧する。これにより、係止爪64がばね部材(不図示)のばね力に抗して回動し、ラチェット63の複数のラチェット歯63aから外れる(図7参照)。
【0049】
<クラッチ>
次に、各装着部41A,41B,42A,42B,51A,51B,52A,52Bに設けられたクラッチについて、図8を参照して説明する。
図8は、前腕駆動機構43Aに設けられたモータの駆動軸にクラッチ部が係合した状態の説明図である。
【0050】
図8に示すように、クラッチ45は、シリンダ45aと、このシリンダ45aから突出するロッド45bとを備えている。シリンダ45aは、ねじなどの固定方法(不図示)により前腕装着部42Aに固定されている(図4参照)。
【0051】
ロッド45bは、シリンダ45aから繰り出されると、クラッチプレート69における4つの係合部69aのうちのいずれかに挿入されて係合する。これにより、前腕装着部42Aは、モータ62の駆動軸62aに接続され、駆動軸62aの回転量に応じて回動する。また、ロッド45bは、シリンダ45a内に繰り込まれると、クラッチプレート69の係合部69aから外れる。これにより、前腕装着部42Aは、モータ62の駆動軸62aから離脱し、モータ62や減速機構(不図示)の負荷が加わらない状態になる。
【0052】
<制御部>
次に、腕制御部22について、図9を参照して説明する。
図9は、腕制御部22の構成例を示すブロック図である。
【0053】
図9に示すように、パワーアシストスーツ1は、角度センサ35と、圧力センサ36と、トルクセンサ37等の各種センサを備えている。角度センサ35は、使用者の肩、肘、股、膝などの関節の動作を検出する。圧力センサ36は、各関節を動作させる際の筋肉の圧力を検出する。トルクセンサ37は、各駆動機構24A,24B,32A,32B,43A,43B,55A,55Bのモータ62から各関節に伝達される駆動力(トルク)を検出する。
【0054】
ここでは、制御部として腕制御部22を例に挙げて説明する。そして、脚制御部56A,56Bは、腕制御部22と同様の構成を有しているため、脚制御部56A,56Bについての詳しい説明は省略する。
なお、本発明に係る制御部は、腕制御部22と脚制御部56A,56Bを分けることに限定されるものでは無く、腕パーツ4と脚パーツ5を共通の制御部によって駆動制御してもよい。
【0055】
腕制御部22は、音声認識部81と、指令決定部82と、演算処理部83と、クラッチ駆動出力部84と、爪駆動出力部85と、モータ駆動出力部86を備えている。
【0056】
音声認識部81は、音声検出部34と、指令決定部82に接続されている。この音声認識部81は、記憶部を有しており、この記憶部に予め記憶された音声パターンから、音声検出部34によって検出した音声を検索する。そして、音声検出部34によって検出した音声に一致する音声パターンがある場合は、その音声パターンに応じた音声識別信号を指令決定部へ出力する。
【0057】
指令決定部82は、演算処理部83と、クラッチ駆動出力部84と、爪駆動出力部85に接続されている。この指令決定部82は、音声認識部81から出力された音声識別信号に基づいて、指令を決定し、その指令に応じた制御信号をクラッチ駆動出力部84または爪駆動出力部85へ出力する。また、指令決定部は、決定した指令を表す指令識別信号を演算処理部83へ出力する。
【0058】
指令決定部82によって決定される指令としては、例えば、「前腕ロック」、「前腕ロック解除」、「前腕クラッチオン」、「前腕クラッチオフ」等を挙げることができる。
「駆動軸ロック」の内容は、ラチェット63の複数のラチェット歯63aに係止爪64を噛み合わせて、駆動軸62aの一方向(肘を伸ばす方向)への回転動作を係止する。「前腕クラッチオン」の内容は、クラッチ45のロッド45bをクラッチプレート69の係合部69aに係合させて、前腕装着部42Aをモータ62の駆動軸62aに接続する。
【0059】
演算処理部83は、角度センサ35と、圧力センサ36と、トルクセンサ37と、モータ駆動出力部86に接続されている。この演算処理部83は、各種センサ35,36,37の検出結果に応じてモータ62の駆動量を演算し、その演算結果に応じた制御信号をモータ駆動出力部86へ出力する。
【0060】
また、演算処理部83は、指令決定部82から送られた指令識別信号に基づいて、モータ62のオン・オフを決定し、その結果に応じた制御信号をモータ駆動出力部86へ出力する。例えば、指令決定部82から送られた指令識別信号が「前腕ロック」を表す信号であれば、演算処理部83は、前腕駆動機構43A,43Bにおけるモータ62のオフを決定する。
【0061】
クラッチ駆動出力部84は、指令決定部82から送られた制御信号に基づいた駆動信号をクラッチ45へ出力する。爪駆動出力部85は、指令決定部82から送られた制御信号に基づいた駆動信号を爪アクチュエータ65へ出力する。モータ駆動出力部86は、演算処理部83から送られた制御信号に基づいた駆動信号をモータ62へ出力する。
【0062】
<パワーアシストスーツの使用例>
次に、パワーアシストスーツ1の使用例について説明する。
パワーアシストスーツ1を使用する場合は、図1に示すように、各パーツ2,3,4,5を装着し、音声検出部34にクラッチ45をオンさせる音声を入力する。クラッチ45をオンさせる音声としては。例えば、「クラッチオン」を挙げることができる。
【0063】
クラッチ45をオンさせる音声を入力すると、クラッチ45のロッド45bが、クラッチプレート69の係合部69aに係合される(図8参照)。これにより、各駆動機構24A,24B,32A,32B,43A,43B,55A,55Bにおけるモータ62の駆動軸62aに、各装着部41A,41B,42A,42B,51A,51B,52A,52Bがそれぞれ接続される。
【0064】
次に、使用者が関節を曲げると、演算処理部83(図9参照)が各種センサ35,36,37の検出結果に応じてモータ62の駆動量を演算し、その演算結果に応じた制御信号をモータ駆動出力部86へ出力する。これにより、各駆動機構24A,24B,32A,32B,43A,43B,55A,55Bのモータ62によって使用者の筋力を補助することができる。
【0065】
例えば、図2に示すように、荷物100を持った状態で前腕を任意の位置(高さ)に固定する場合は、音声検出部34(図1参照)に前腕駆動機構43A,43Bをロックさせる音声を入力する。この音声としては、例えば「前腕ロック」を挙げることができる。
【0066】
音声検出部34に前腕駆動機構43A,43Bをロックさせる音声を入力すると、爪駆動出力部85が指令決定部82から送られた制御信号に基づいた駆動信号を爪アクチュエータ65へ出力し、可動部65bが固定部65a内に繰り込まれる(図6参照)。これにより、可動部65bが操作アーム76から離れ、係止爪64がばね部材(不図示)のばね力によって回動する。
【0067】
係止爪64がばね部材のばね力によって回動すると、ラチェット63の複数のラチェット歯63aに噛み合って、駆動軸62aの一方向(肘を伸ばす方向)への回転動作を係止する。その結果、前腕を任意の位置(高さ)に固定することができる。このとき、ラチェット63の複数のラチェット歯63aと係止爪64との噛み合いは、駆動軸62aの他方向(肘を曲げる方向)への回転動作を許可している。しかし、使用者が前腕駆動機構43A,43Bの補助を受けずに肘を曲げない限り、前腕の姿勢は維持される。
【0068】
一方、演算処理部83は、指令決定部82から送られた指令識別信号が「前腕ロック」を表す信号であるため、前腕駆動機構43A,43Bにおけるモータ62をオフする制御信号をモータ駆動出力部86へ出力する。これにより、前腕駆動機構43A,43Bにおけるモータ62を駆動させるための電力を消費せずに前腕の位置を固定することができる。
【0069】
その後、前腕の固定を解除するには、音声検出部34に前腕駆動機構43A,43Bのロックを解除させる音声を入力する。この音声としては、例えば「前腕ロック解除」を挙げることができる。このとき、演算処理部83には、指令決定部82から「前腕ロック解除」を表す指令識別信号が送られる。これにより、演算処理部83は、前腕駆動機構43A,43Bにおけるモータ62をオンする制御信号をモータ駆動出力部86へ出力する。
【0070】
一方、前腕駆動機構43A,43Bのロックを解除させる音声を入力すると、爪駆動出力部85が指令決定部82から送られた制御信号に基づいた駆動信号を爪アクチュエータ65へ出力し、可動部65bが固定部65aから繰り出される。これにより、可動部65bが操作アーム76を押圧して、係止爪64がばね部材のばね力に抗して回動する(図7参照)。
【0071】
係止爪64がばね部材のばね力に抗して回動すると、ラチェット63の複数のラチェット歯63aから外れ、駆動軸62aの一方向(肘を伸ばす方向)への回転動作が許可される。その結果、肘を伸ばす方向へ前腕を動かすことができる。このとき、前腕駆動機構43A,43Bにおけるモータ62がオンされているため、使用者の筋力を補助して前腕(肘)へ加わる負荷を軽減することができる。
【0072】
その後、パワーアシストスーツ1を人体から取り外す場合は、音声検出部34にクラッチ45をオフさせる音声を入力する。クラッチ45をオフさせる音声としては。例えば、「クラッチオフ」を挙げることができる。これにより、各駆動機構24A,24B,32A,32B,43A,43B,55A,55Bにおけるモータ62の駆動軸62aと、各装着部41A,41B,42A,42B,51A,51B,52A,52Bとのクラッチ45による接続が外れる。
【0073】
その結果、パワーアシストスーツ1の各装着部41A,41B,42A,42B,51A,51B,52A,52Bにモータ62や減速機構(不図示)の負荷が加わらない状態になり、パワーアシストスーツ1を人体から簡単に取り外すことができる。また、次にパワーアシストスーツ1を使用する場合も、人体への装着作業を容易に行うことができる。
【0074】
本実施の形態では、前腕装着部42A,42B(回動部材)の上腕装着部41A,41B(支持部材)に対する回動を係止する前腕駆動機構43A,43Bについて説明した。しかしながら、本発明に係る回動部材は、前腕装着部42A,42Bに限定されるものではない。つまり、本実施の形態における上腕装着部41A,41B、大腿装着部51A,51B及び下腿装着部52A,52Bも回動部材となる。例えば、大腿装着部51A,51Bは、腰装着部21(支持部材)に対して回動可能に連結された回動部材である。
【0075】
また、本実施の形態では、爪アクチュエータ65を直動モータで構成したが、本発明に係る爪アクチュエータとしては、電動モータや超音波モータを用いることもできる。なお、爪アクチュエータとして電動モータや超音波モータを用いる場合は、係止爪に直接または間接的に回転力を加えてもよく、また、電動モータや超音波モータの回転力を直線力に変換する機構を用いて操作アームを押圧してもよい。
【0076】
以上、本発明のパワーアシストスーツの実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明のパワーアシストスーツは、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…パワーアシストスーツ、 2…腰パーツ、 3…肩パーツ、 4…腕パーツ、 4A…左腕パーツ、 4B…右腕パーツ、 5…脚パーツ、 5A…左脚パーツ、 5B…右脚パーツ、 10…連結部材、 21…腰装着部、 22…腕制御部、 23…バッテリ、 24A,24B…大腿駆動機構、 31A…左肩装着部、 31B…右肩装着部、 31C…接続部、 32A,32B…上腕駆動機構、 34…音声検出部、 41A,41B…上腕装着部、 42A,42B…前腕装着部、 43A,43B…前腕駆動機構、 45…クラッチ、 51A,51B…大腿装着部、 52A,52B…下腿装着部、 53A,53B…足装着部、 55A,55B…下腿駆動機構、 56A,56B…脚制御部、 61…固定部材、 62…モータ、 62a…駆動軸、 63…ラチェット、 63a…ラチェット歯、 64…係止爪、 65…爪アクチュエータ、 69…クラッチプレート、 69a…係合部、 76…操作アーム、 81…音声認識部、 82…指令決定部、 83…演算処理部、 84…クラッチ駆動出力部、 85…爪駆動出力部、 86…モータ駆動出力部、 100…荷物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着される支持部材と、
前記支持部材に固定されるモータと、
前記モータの駆動軸に接続されると共に人体に装着される回動部材と、
前記モータの駆動軸に設けられたラチェットと、
前記支持部材に移動可能に取り付けられ、前記ラチェットの歯に噛み合う係止爪と、
前記係止爪を移動させる爪アクチュエータと、
音声検出部と、
前記音声検出部の検出結果に基づいて、前記爪アクチュエータを駆動させる制御部と、
を備えるパワーアシストスーツ。
【請求項2】
前記回動部材は、前記モータの駆動軸に対して接続及び切り離しを行うクラッチを有する
請求項1に記載のパワーアシストスーツ。
【請求項3】
前記制御部は、前記音声検出部の検出結果に基づいて、前記クラッチを駆動させる
請求項2に記載のパワーアシストスーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−251057(P2011−251057A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128267(P2010−128267)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)