説明

パワーコントロールユニットの保護構造

【課題】低コスト化及び軽量化を図った上で、パワーコントロールユニットを保護できるパワーコントロールユニットの保護構造を提供する。
【解決手段】ガードブラケット91とフロント支持フレーム34との取付箇所94は、PCU5の車幅方向中央部に対して左側にオフセットして設けられ、さらに取付箇所94は、左側車体フレーム16bと脚部41との固定点である車体側固定箇所95と、フロント支持フレーム34とPCU5の固定点である取付片84と、の間に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーコントロールユニットの保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車等において、車体前部に配置されたモータルーム内には、例えばモータと、モータの上方に配設されてモータの駆動を制御するパワーコントロールユニット(以下、PCUという)と、モータ及びPCUの前方に配設されたラジエータと、が収納されている。
【0003】
このような車両においては、例えば前面衝突(以下、前突という)等した場合に、車体前部から入力される衝撃荷重によりラジエータ等の周辺部材がPCUに向けて押し込まれることになる。
これに対して、例えば、特許文献1では、電気部品ユニットの下部に冷却手段を設け、この冷却手段の前端部を電気ユニットの前端部よりも前方に配置する構成が記載されている。この構成によれば、前突時に後方に向けて押し込まれた周辺部材が、電気部品ユニットよりも先に冷却手段に干渉することで、電気部品ユニットを保護できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−99239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したラジエータには、ラジエータの内外を連通させるラジエータジョイントが後方に向けて突出して形成されていることがあり、このラジエータジョイントに接続される冷媒配管を通してPCUの冷却手段との間で冷媒が流通している。
この場合、ラジエータのラジエータジョイントは、PCUの周辺部材のうちでも高強度部分であり、衝突時においてラジエータジョイントがPCUの筐体に接触した場合には、この接触部分を起点にして筐体が損傷する虞がある。
これに対して、筐体自体の剛性や強度を高めることが考えられるが、製造コストが高くなるとともに、重量が増加するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、低コスト化及び軽量化を図った上で、パワーコントロールユニットを保護できるパワーコントロールユニットの保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、電気自動車(例えば、実施形態における電気自動車1)のモータルーム(例えば、実施形態におけるモータルーム3)内であって、ラジエータ(例えば、実施形態におけるラジエータ6)と車両前後方向に対向する位置に設けられるパワーコントロールユニット(例えば、実施形態におけるPCU5)の保護構造において、前記モータルームの車幅方向両側には、それぞれ右側車体フレーム(例えば、実施形態における右側車体フレーム16a)及び左側車体フレーム(例えば、実施形態における左側車体フレーム16b)が車両前後方向に延出して設けられ、前記右側車体フレームと前記左側車体フレームとの間には、両車体フレームを架け渡すサブフレーム(例えば、実施形態におけるユニット支持フレーム31)が設けられ、前記パワーコントロールユニットは、高電圧デバイス(例えば、実施形態におけるDCDCコンバータ46)を収納するケース(例えば、実施形態におけるロアケース52)と、前記ケースに対して上下方向に並んで取り付けられるとともに、前記高電圧デバイスとの間で熱交換を行うヒートシンク筐体(例えば、実施形態におけるヒートシンク筐体53)と、を備え、前記サブフレームは、前記ケースを間に挟んで上下方向に沿う前記ヒートシンク筐体と反対側において、車幅方向に沿って延在して、前記パワーコントロールユニットの前端部を車幅方向に亘って保持し、前記ラジエータと前記パワーコントロールユニットとの間には、前記ラジエータから前記パワーコントロールユニットに向けて突出する凸部(例えば、実施形態における入口ラジエータジョイント21)に車両前後方向で対向するガードブラケット(例えば、実施形態におけるガードブラケット91)が設けられ、前記ガードブラケットは平板状であって、前記ケースを上下方向に跨ぐように設けられ、前記ガードブラケットのうち、上下方向一端が前記サブフレームに取り付けられる一方、他端がヒートシンク筐体に取り付けられ、前記ガードブラケットと前記サブフレームとの取付箇所(例えば、実施形態における取付箇所94)は、前記パワーコントロールユニットの車幅方向中央部に対して車幅方向に沿う一方側にオフセットして設けられ、さらに前記取付箇所は、左右の前記車体フレームのうち前記一方側の前記車体フレームと前記サブフレームとの固定点である車体側固定箇所(例えば、実施形態における車体側固定箇所95)と、前記サブフレームと前記パワーコントロールユニットとの固定点であるパワーコントロールユニット側固定箇所(例えば、実施形態における取付片84)と、の間に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明では、前記ケースは、前記ヒートシンク筐体の下部に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明では、前記ヒートシンク筐体には、前記ヒートシンク筐体の内外に連通して、前記ヒートシンク筐体の内部に冷媒を流通させる冷媒ポート(例えば、実施形態における冷媒入口ポート72)が形成され、前記ガードブラケットは、車両前後方向から見て前記冷媒ポートの車幅方向両側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明では、前記パワーコントロールユニット側固定箇所は、車両前後方向から見て前記ガードブラケットと重なる位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明では、前記ガードブラケットと前記サブフレームとの前記取付箇所は、車幅方向に沿って少なくとも2箇所設けられ、前記パワーコントロールユニット側固定箇所は、前記少なくとも2箇所の前記取付箇所の間に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、例えば前突等の衝突時においてラジエータがパワーコントロールユニットに向けて移動した場合に、凸部がパワーコントロールユニットに突入するのをガードブラケットにより防止できる。これにより、パワーコントロールユニット自体の剛性や強度を高くすることないので、低コスト化及び軽量化を図った上で、パワーコントロールユニットを保護できる。
しかも、凸部がガードブラケットに接触した場合に、ガードブラケットに入力された衝撃荷重は、ガードブラケットの取付箇所を介してサブフレームに伝達され、その後サブフレーム上を取付箇所よりも外側(車体側固定箇所側)に向けて伝達される。これにより、ガードブラケットに入力された衝撃荷重が、パワーコントロールユニット側固定箇所を避けるように伝達されるため、パワーコントロールユニット側固定箇所に入力される衝撃荷重を低減できる。これにより、パワーコントロールユニット側固定箇所付近のサブフレームの変形を防止し、それに起因したケースの破断等を抑制し、パワーコントロールユニットを保護できる。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、ヒートシンク筐体の下部にケースを配置することで、ガードブラケットがケースを跨ぐように配置し易くなり、ケースを確実に保護できる。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、ガードブラケットの間に冷媒ポートを配置することで、ラジエータとパワーコントロールユニットとの間にラジエータと冷媒ポートを接続する冷媒配管が配索されることになる。そのため、パワーコントロールユニットに向けて入力される衝撃荷重をパワーコントロールユニットに到達する前に、冷媒配管により吸収できる。
【0015】
請求項4に記載した発明によれば、ガードブラケットと重なる位置にパワーコントロールユニット側固定箇所を設けることで、パワーコントロールユニット側固定箇所を確実に保護できる。
【0016】
請求項5に記載した発明によれば、パワーコントロールユニット側固定箇所付近のサブフレームの変形をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における電気自動車の前部側面を示す概略構成図である。
【図2】モータルーム内を示す平面図である。
【図3】モータルーム内を示す側面図である。
【図4】モータルーム内を示す正面図である。
【図5】PCU及びユニット支持フレームの斜視図である。
【図6】ヒートシンク筐体を下方から見た斜視図である。
【図7】ロアケースを上方から見た斜視図である。
【図8】図5のD部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(電気自動車)
図1は本実施形態における電気自動車の前部を側方から見た概略構成図である。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。
図1に示すように、本実施形態の電気自動車1において、車体2の前部にはモータルーム3が画成されている。モータルーム3内には、駆動源としてのモータ4と、モータ4の上方に配置されてモータ4の駆動を制御するPCU5と、モータ4及びPCU5の前方に配置されたラジエータ6と、PCU5の周囲に配置された低電圧バッテリ7と、が主に収納されている。なお、モータルーム3の後部には、車室26内とモータルーム3内とを前後方向(車両前後方向)で区画するダッシュボード8が設けられている。このダッシュボード8は、PCU5の後方において上下方向に沿って延在するダッシュボードロア9と、ダッシュボードロア9の上端部から前方に向かって連設されたダッシュボードアッパ10と、を備えている。
【0019】
図2はモータルーム内を示す平面図である。
図1,2に示すように、モータルーム3の左右方向両側には、一対の車体フレーム16(右側車体フレーム16a及び左側車体フレーム16b)が前後方向に沿って延在している。これら車体フレーム16は、車室26の前部下方から上方に湾曲した後、前方に向けて延在しており、これら車体フレーム16間にモータ4が配置されている。両車体フレーム16の後端部は、図示しないフロアフレームやサイドシル等の車体2の前後方向中央に設けられたフレーム部材に結合されている。
図1に示すように、両車体フレーム16のうち、車室26に近接する付根部側には、リア側モータ支持フレーム17が左右方向に沿って架設され、リア側モータ支持フレーム17の前方には、フロント側モータ支持フレーム18が左右方向に沿って架設されている。この場合、フロント側モータ支持フレーム18は、リア側モータ支持フレーム17よりも前方、かつ上方に配置されている。なお、図2以降では各モータ支持フレーム17,18の記載を省略する。
【0020】
リア側モータ支持フレーム17は、左右両端部が対応する車体フレーム16の下縁部に結合されている。また、フロント側モータ支持フレーム18は、矩形断面の中空フレームによって構成され、両端部が対応する車体フレーム16の下縁部にそれぞれ結合されている。
【0021】
上述したモータ4は、円筒状に形成され、その回転軸を左右方向に向けた状態で、前後方向に沿う各モータ支持フレーム17,18間に配置されている。モータ4の前端部は防振ゴムを内蔵するマウント部材19を介してフロント側モータ支持フレーム18の下面に連結されるとともに、後端部は同様のマウント部材20を介してリア側モータ支持フレーム17の上面に連結されている。
低電圧バッテリ7は、電気自動車1の弱電系電気部品である各種補機類を駆動するための電源であって、モータルーム3内の左側に配設されている。
【0022】
図2はモータルーム内を示す平面図、図3は側面図、図4は正面図である。なお、各図においては、上述したモータ4及び後述する電力線88を省略している。
図1〜4に示すように、ラジエータ6は、厚さ方向を前後方向とする矩形板状に形成され、ラジエータ6、モータ4及びPCU5の間を循環する冷媒と、走行風である外気と、の間で熱交換することにより、冷媒を冷却する。具体的に、ラジエータ6は、ラジエータコア11と、ラジエータコア11の上部及び下部にそれぞれ一体に取り付けられる上部タンク12、及び下部タンク13と、を備えている。なお、ラジエータ6の後方には、冷却ファン14、及びラジエータ6の後方と冷却ファン14との間を覆うファンシュラウド15が設けられている。
【0023】
図4に示すように、ラジエータ6の上部タンク12における左側、具体的には前後方向から見てPCU5の後述するロアケース52と重なる位置には、後方に向けて突出する入口ラジエータジョイント(凸部)21が形成されている。この入口ラジエータジョイント21は、上部タンク12の内外に連通して後方に向けて開口している。一方、ラジエータ6の下部タンク13における右側には、後方に向けて突出する出口ラジエータジョイント22が形成されている。この出口ラジエータジョイント22は、下部タンク13の内外に連通して後方に向けて開口している。
【0024】
図2〜4に示すように、各ラジエータジョイント21,22には、弾性材料からなる冷媒配管23が接続されている。この冷媒配管23は、一端側が出口ラジエータジョイント22に接続された後、ウォータポンプ(不図示)、PCU5、及びモータ4に直列に接続され、他端側が入口ラジエータジョイント21に接続されている。ラジエータ6を流通する冷媒は、ウォータポンプの駆動によって出口ラジエータジョイント22から冷媒配管23に供給される。なお、冷媒配管23を流通する冷媒は、PCU5の後述するウォータジャケット47、モータ4の図示しないウォータジャケットに順に供給され、それぞれ熱交換が行われた後、入口ラジエータジョイント21からラジエータ6内に戻される。
【0025】
図5は、PCU及びユニット支持フレームの斜視図である。
図3〜5に示すように、PCU5は、例えば車室26内の下方に配設された高電圧バッテリ(不図示)から供給される直流電力を三相(U相、V相、W相)の交流電力に変換し、変換した交流電力をモータ4に供給することでモータ4を駆動制御している。具体的に、PCU5は、左右方向(車幅方向)を長手方向とした直方体形状に形成された筐体25を備え、この筐体25がユニット支持フレーム(サブフレーム)31を介して車体2に支持されている。
【0026】
(ユニット支持フレーム)
図2〜5に示すように、ユニット支持フレーム31は、パイプ状の部材であり、上下方向から見てモータルーム3内の左右方向中央部において、PCU5の全周を取り囲むように配設されている。具体的に、ユニット支持フレーム31は、PCU5に対して右側に配設された右サイド支持フレーム32と、左側に配設された左サイド支持フレーム33と、各サイド支持フレーム32,33の前端部同士を接合するフロント支持フレーム34と、各サイド支持フレーム32,33の後端部同士を接合するリア支持フレーム35と、を有している。
【0027】
まず、フロント支持フレーム34は、筐体25の前方において、筐体25の下部を左右方向に沿って延在しているとともに、その延在方向に沿う両端部には後方に向けて屈曲された屈曲部36が形成されている。
【0028】
リア支持フレーム35は、PCU5における筐体25の後方において、筐体25の上部を左右方向に沿って延在しているとともに、その延在方向に沿う両端部が下方に向けて屈曲された脚部37を構成している。各脚部37の下端部は、それぞれ対応する車体フレーム16に固定されている。すなわち、各脚部37のうち、右側の脚部37は右側車体フレーム16aの根元部側に固定され、左側の脚部37は左側車体フレーム16bの根元部側に固定されている。この場合、各脚部37と車体フレーム16との固定点は、前後方向においてリア側モータ支持フレーム17と重なる位置に配置されている。なお、図中では脚部37のうち、リア支持フレーム35の左側の脚部37のみ示している。
【0029】
右サイド支持フレーム32は、筐体25の右側において、筐体25の上下方向中間部分を前後方向に沿って延在している。また、右サイド支持フレーム32のうち、前端部はフロント支持フレーム34の右端部に接合される一方、後端部はリア支持フレーム35の右端部に接合されている。
右サイド支持フレーム32とフロント支持フレーム34との接合部分からは、下方に向けて脚部38が延在している。脚部38は上端部から下端部に向かうに従い漸次PCU5に対して外側(右側)に向けて延在している。脚部38の端部は、右側車体フレーム16aの前側領域、図示(図1)の例では右側車体フレーム16aの前後方向においてフロント側モータ支持フレーム18と重なる位置に結合されている。
【0030】
左サイド支持フレーム33は、PCU5の左側において、前後方向に沿って延在する前後フレーム39と、前後フレーム39の前端部から下方に向けて連設された鉛直フレーム40と、を備えている。
【0031】
前後フレーム39は、筐体25の左側において、筐体25の上部を前後方向に沿って延在している。前後フレーム39の後端部は、上述したリア支持フレーム35の左端部のうち、上下方向に沿う中間部に接合されている。一方、前後フレーム39の前端部は、前後方向において、PCU5の後述するPCU側端子ボックス56よりも前方に位置している。
【0032】
鉛直フレーム40は、前後フレーム39の前端部から下方に向けて屈曲形成されて構成されている。また、鉛直フレーム40の下部には、フロント支持フレーム34の屈曲部36が接合されている。また、鉛直フレーム40の下端部は、PCU5に対して左右方向の外側(左側)に向けて屈曲された脚部41を構成している。脚部41の端部は、左側車体フレーム16bの前側領域、図示(図1)の例では左側車体フレーム16bの前後方向においてフロント側モータ支持フレーム18と重なる位置に結合されている。このように、ユニット支持フレーム31は、脚部37,38,41を介して対応する車体フレーム16に固定され、各車体フレーム16間を架け渡すように配置されている。
【0033】
(PCU)
図1,2に示すように、PCU5は、上述した筐体25がユニット支持フレーム31の内側で支持されている。具体的に、PCU5は、左右方向において上述した低電圧バッテリ7よりも右側(モータルーム3の内側)で、低電圧バッテリ7を左右方向に回避した位置に配置されるとともに、前後方向において低電圧バッテリ7よりも後方に配置されている。筐体25内には、後述するパワーモジュール(以下、PMという)45や、高電圧バッテリからの電力を降圧させるDCDCコンバータ46(図3参照)、外部電源からの電力をバッテリに蓄電可能とする充電用デバイス等の各種高電圧デバイスが収納されている。
【0034】
図3〜5に示すように、筐体25は、アッパケース51と、アッパケース51の下方に配置されたロアケース(ケース)52と、アッパケース51及びロアケース52の間を仕切るヒートシンク筐体53と、を備え、上下方向に沿って三段に分割構成されている。
アッパケース51は、アルミ材料等により構成され、上下方向に沿って開口する矩形枠型のものであり、その上端開口部がアッパカバー54により覆われている。アッパケース51内には、PM45が収納されている。このPM45は、高電圧バッテリからの電力を直流から交流に変換するインバータ、及びそれを制御する制御装置等を含んでいる。
【0035】
また、アッパケース51の周壁部55のうち、左右方向の一方側(左側)に位置する側壁部55aには、左右方向の外側(左側)に向けて突出するPCU側端子ボックス56が形成されている。このPCU側端子ボックス56には、モータ4とPCU5とを各相ごとに接続する複数のモータハーネス57が装着されている。
【0036】
各モータハーネス57は、側壁部55aに沿って前後方向に並んで配列されている。モータハーネス57は、一端側がPCU側端子ボックス56内に下方から装着され、PCU側端子ボックス56内において、図示しない複数のバスバーを介してPCU5内に電気的に接続されている。一方、各モータハーネス57の他端側は、モータ4における図示しないモータ側端子ボックスに装着され、モータ側端子ボックス内において図示しない複数のバスバーを介してモータ4に電気的に接続されている。
【0037】
また、各モータハーネス57の延在方向に沿う中間部分は、第1ブラケット61を介して左サイド支持フレーム33に保持されている。この第1ブラケット61は、前後フレーム39の下方、かつ鉛直フレーム40の後方に位置する部分において、モータハーネス57の配列方向、すなわち前後方向に沿って延在する板状に形成され、モータハーネス57をそれぞれ保持している。また、第1ブラケット61は、一端側が鉛直フレーム40に固定される一方、他端側が前後フレーム39に固定されている。
【0038】
また、PCU側端子ボックス56の上端部には、左側に向けて複数の取付片62が突出している。これら取付片62は、PCU側端子ボックス56における前後方向に沿って2箇所形成されており、これら取付片62が前後フレーム39に上方から固定されている。
【0039】
図6は、ヒートシンク筐体を下方から見た斜視図である。
図5,6に示すように、ヒートシンク筐体53は、アルミ材料からなり、アッパケース51及びロアケース52よりも剛性が高くなっている。ヒートシンク筐体53は、平面視外形がアッパケース51と同等の形状をなす矩形板状の仕切部65(図6参照)を備え、アッパケース51の下端開口部を閉塞するように設けられている。そして、仕切部65の上面側には、上述したPM45が固定されている(図3参照)。
【0040】
また、仕切部65の外周縁には、仕切部65の全周を取り囲む周壁部66が下方に向けて垂下されている。周壁部66は、その下端縁がロアケース52の後述する天壁部67(図7参照)に突き合わされた状態で固定されている。そして、ロアケース52の天壁部67と、ヒートシンク筐体53の仕切部65及び周壁部66と、で囲まれた空間は、ラジエータ6から供給される冷媒が流通するウォータジャケット47を構成している。すなわち、本実施形態では、各ケース51,52間にウォータジャケット47が配置されており、アッパケース51に収納される高電圧デバイス(例えば、PM45等)や、ロアケース52に収納される高電圧デバイス(例えば、DCDCコンバータ46等)で発生した熱は、ウォータジャケット47に放熱されることで各高電圧デバイスが冷却される。
【0041】
周壁部66における右側縁部には、左右方向外側(右側)に向けて複数の取付片71が突出している。これら取付片71は、前後方向に沿って2箇所形成されており、これら取付片71が右サイド支持フレーム32に上方から固定されている。
【0042】
周壁部66の前縁部には、ウォータジャケット47の内外を連通させる冷媒入口ポート(冷媒ポート)72、及び冷媒出口ポート73が左右方向に間隔をあけて設けられている。冷媒入口ポート72は、周壁部66の前縁部のうち、左側に設けられている。具体的には、基端側が周壁部66の内面からウォータジャケット47内に向けて開口する一方、先端側は周壁部66から下方に向けて延在した後、前方に向けて屈曲され、前方に向けて開口している。冷媒出口ポート73は、上述した冷媒入口ポート72と同様の構成からなり、ヒートシンク筐体53の前縁部のうち、右側に設けられている。
【0043】
冷媒入口ポート72の先端側には、上述した冷媒配管23が接続され、ウォータジャケット47内と出口ラジエータジョイント22との間が、上述したウォータポンプを介して連通している。また、冷媒出口ポート73の先端側には、冷媒配管23が接続され、ウォータジャケット47内とモータ4のウォータジャケット内との間が連通している。
【0044】
図7は、ロアケースを上方から見た斜視図である。
図5,7に示すように、ロアケース52は、下方に向けて開放された有頂筒状とされ、アッパケース51と同様の材料により、平面視外形がアッパケース51と同等に形成されている。ロアケース52の天壁部67における外周部分には、上述したヒートシンク筐体53の周壁部66が固定されている。
【0045】
ロアケース52内には、上述した高電圧デバイスのうち、例えばDCDCコンバータ46が収納されている。DCDCコンバータ46は、天壁部67の下面における左側、すなわち低電圧バッテリ7側に固定されている。なお、ロアケース52の下端開口部は、ロアカバー81により覆われている。
【0046】
また、ロアケース52の周壁部82における前壁部82aには、上述した冷媒入口ポート72、及び冷媒出口ポート73を収容する収容凹部83がそれぞれ形成されている。具体的に、各収容凹部83は、左右方向において冷媒入口ポート72、及び冷媒出口ポート73とそれぞれ重なる位置において、後方に向けて窪み形成されている。そして、冷媒入口ポート72及び冷媒出口ポート73は、収容凹部83内で後方及び側方が囲まれた状態で前方に向けて開口している。
【0047】
また、ロアケース52の前壁部82aには、複数の取付片(パワーコントロールユニット側固定箇所)84が前方に向けて突出している。これら取付片84は、左右方向に沿って2箇所形成されており、これら取付片84がフロント支持フレーム34に上方から固定されている。
【0048】
ここで、図3に示すように、ロアケース52の周壁部82のうち、左側(低電圧バッテリ7側)に位置する側壁部82bには、側壁部82bを左右方向に貫通する複数の貫通孔86,87(第1貫通孔86及び第2貫通孔87)が形成されている。これら貫通孔86,87は、側壁部82bの前側において、前後方向に隣接して形成されている。この場合、上述した鉛直フレーム40は、第1貫通孔86と第2貫通孔87との間、具体的には第1貫通孔86の後端部と第2貫通孔87の前端部と重なる位置に延在している。そして、鉛直フレーム40のうち、各貫通孔86,87よりも下方に位置する部分において、フロント支持フレーム34の屈曲部36が接合されている。すなわち、鉛直フレーム40は、各貫通孔86,87よりも下方に位置する部分において、屈曲部36に分岐しており、これら鉛直フレーム40及び屈曲部36によって、第1貫通孔86と第2貫通孔87をPCU5の外側から囲んでいる。
【0049】
図8は図5のD部拡大図である。
図5,7,8に示すように、貫通孔86,87には、ロアケース52内のDCDCコンバータ46と、上述した低電圧バッテリ7やその他の電気部品と、をそれぞれ接続する電力線88(第1電力線88a、及び第2電力線88b)がグロメット89(図5参照)を介して挿入されている。
【0050】
そして、上述した電力線88は、一端側が貫通孔86,87を通してロアケース52内に案内され、ロアケース52内で上述したDCDCコンバータ46に接続されている。一方、各電力線88の他端側は、貫通孔86,87からそれぞれ下方に向けて引き出された後、上述した鉛直フレーム40に設けられた第2ブラケット90によりまとめて保持されている。その後、各電力線88は、鉛直フレーム40よりも後方において、上述した第1ブラケット61を下方から回り込んだ後、上方に向けて引き回されている。そして、電力線88のうち、第1電力線88aの他端側は前方に向けて引き回された後、上述した低電圧バッテリ7に接続されている。また、第2電力線88bの他端側は、低電圧バッテリ7以外の他の電気部品(不図示)に接続されている。
【0051】
図2〜5,8に示すように、ロアケース52の前壁部82aのうち左側(前後方向から見て上述したラジエータ6の入口ラジエータジョイント21と重なる位置)には、ロアケース52を前方から覆うガードブラケット91が設けられている。このガードブラケット91は、例えば鉄等からなる板材であり、左右方向に沿って延在する下端連結部92と、下端連結部92の延在方向両端部からそれぞれ上方に向けて連設された一対の延在部93と、を備え、前後方向から見てU字状に形成されている。
【0052】
下端連結部92は、その左右方向両端部における取付箇所94がフロント支持フレーム34に前方から取り付けられている。この場合、各取付箇所94は、PCU5の左右方向中央部に対して左側にオフセットして設けられている。
各延在部93は、下端部が上方に向かうに従い前方に向けて膨出した後、上端部が上方に向かうに従い後方に向けて傾斜しており、ロアケース52を跨ぐように形成されている。そして、延在部93の上端は、ヒートシンク筐体53の周壁部66に固定されている。
【0053】
ここで、各延在部93は、上述した冷媒入口ポート72の左右方向両側に配置され、前後方向から見て冷媒入口ポート72を左右方向に挟むように配置されている。したがって、冷媒入口ポート72は、前後方向から見て各延在部93間から露出するように配置されている。
【0054】
また、左右方向において、下端連結部92とフロント支持フレーム34との各取付箇所94の間には、上述したPCU5の取付片84のうち、左側の取付片84が配置されている。具体的に、取付片84は、各延在部93のうち、左側の延在部93の後方に配置されており、左側の延在部93が取付片84を前方から覆うように配置されている。
さらに、上述した各取付箇所94のうち、左側の取付箇所94は、左側車体フレーム16bとユニット支持フレーム31の脚部41との固定点である車体側固定箇所95と、フロント支持フレーム34とPCU5との固定点である各取付片84のうち、左側の取付片84と、の間に設けられている。
【0055】
このように、本実施形態では、ラジエータ6の入口ラジエータジョイント21に前後方向で対向するガードブラケット91が設けられる構成とした。
この構成によれば、前突等の衝突時においてラジエータ6がPCU5に向けて移動した場合に、入口ラジエータジョイント21等の高強度部品がPCU5に突入するのを防止できる。これにより、PCU5自体の剛性や強度を高くすることなく、PCU5を保護できるため、低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0056】
しかも、本実施形態では、左側車体フレーム16bと脚部41との固定点である車体側固定箇所95と、左側の取付片84と、の間に左側の取付箇所94を設ける構成とした。
この構成によれば、仮に入口ラジエータジョイント21がガードブラケット91に接触した場合に、ガードブラケット91に入力された衝撃荷重は、ガードブラケット91の取付箇所94を介してフロント支持フレーム34に伝達され、フロント支持フレーム34上を取付箇所94よりも外側(車体側固定箇所95側)に向けて伝達される。すなわち、ガードブラケット91に入力された衝撃荷重が、PCU5とフロント支持フレーム34との固定箇所(取付片84)を避けるように伝達されるため、PCU5とフロント支持フレーム34との固定箇所に入力される衝撃荷重を低減できる。これにより、PCU5とフロント支持フレーム34との固定箇所付近のフロント支持フレーム34の変形を防止し、それに起因した筐体25の破断等を抑制し、PCU5を保護できる。
この場合、ガードブラケット91と重なる位置にPCU5とフロント支持フレーム34との固定箇所を設けることで、固定箇所を確実に保護できる。
【0057】
また、ガードブラケット91の上端部が、筐体25の中でも比較的剛性の高いヒートシンク筐体53に取り付けられているため、ガードブラケット91に入力された衝撃荷重が仮にヒートシンク筐体53に伝達されたとしても、筐体25が破損するのを抑制できる。
【0058】
さらに、ヒートシンク筐体53の下部にロアケース52を配置することで、ガードブラケット91がロアケース52を跨ぐように配置し易くなり、ロアケース52を確実に保護できる。
また、ガードブラケット91の間に冷媒入口ポート72を配置することで、ラジエータ6とPCU5との間に冷媒配管23が配索されることになる。そのため、PCU5に向けて入力される衝撃荷重をPCU5に到達する前に、冷媒配管23により吸収できる。
また、ガードブラケット91の下端部とフロント支持フレーム34との取付箇所94の間に、PCU5とフロント支持フレーム34との固定箇所(取付片84)を設けているため、PCU5とフロント支持フレーム34との固定箇所付近のフロント支持フレーム34の変形をより確実に防止できる。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、バッテリを電力源として駆動する電気自動車1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず電力源を燃料電池とする燃料電池車両にも本発明を適用することが可能である。
また、モータルーム3内でのレイアウトや、PCU5の構成等については適宜変更可能である。
また、上述した実施形態では、ヒートシンク筐体53の上部にアッパケース51、下部にロアケース52を設ける構成としたが、これに限らず、ヒートシンク筐体53の上下方向に並んでPCUケースを設ければ構わない。
また、上述した実施形態では、入口ラジエータジョイント21を凸部として説明したが、これに限られない。
さらに、ガードブラケット91とフロント支持フレーム34との取付箇所94は2箇所以上の複数であっても構わない。
【0060】
また、上述した実施形態では、PCU5の左右方向中央部に対して左側にオフセットした位置にガードブラケット91を設けた場合について説明したが、これに限らず右側にオフセットしても構わない。
さらに、上述した実施形態では、車体側固定箇所95と左側の取付片84との間に、取付箇所94のうち、左側の取付箇所94を配置する構成について説明したが、これに限らず、車体側固定箇所95と左側の取付片84との間に、両取付箇所94を配置しても構わない。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…電気自動車 3…モータルーム 5…PCU(パワーコントロールユニット) 6…ラジエータ 16…車体フレーム 16a…右側車体フレーム 16b…左側車体フレーム 21…入口ラジエータジョイント(凸部) 34…フロント支持フレーム(フレーム) 45…PM(高電圧デバイス) 46…DCDCコンバータ(高電圧デバイス) 52…ロアケース(ケース) 53…ヒートシンク筐体 72…冷媒入口ポート(冷媒ポート) 84…取付片(パワーコントロールユニット側固定箇所) 91…ガードブラケット 94…取付箇所 95…車体側固定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車のモータルーム内であって、ラジエータと車両前後方向に対向する位置に設けられるパワーコントロールユニットの保護構造において、
前記モータルームの車幅方向両側には、それぞれ右側車体フレーム及び左側車体フレームが車両前後方向に延出して設けられ、
前記右側車体フレームと前記左側車体フレームとの間には、両車体フレームを架け渡すサブフレームが設けられ、
前記パワーコントロールユニットは、高電圧デバイスを収納するケースと、前記ケースに対して上下方向に並んで取り付けられるとともに、前記高電圧デバイスとの間で熱交換を行うヒートシンク筐体と、を備え、
前記サブフレームは、前記ケースを間に挟んで上下方向に沿う前記ヒートシンク筐体と反対側において、車幅方向に沿って延在して、前記パワーコントロールユニットの前端部を車幅方向に亘って保持し、
前記ラジエータと前記パワーコントロールユニットとの間には、前記ラジエータから前記パワーコントロールユニットに向けて突出する凸部に車両前後方向で対向するガードブラケットが設けられ、
前記ガードブラケットは平板状であって、前記ケースを上下方向に跨ぐように設けられ、前記ガードブラケットのうち、上下方向一端が前記サブフレームに取り付けられる一方、他端がヒートシンク筐体に取り付けられ、
前記ガードブラケットと前記サブフレームとの取付箇所は、前記パワーコントロールユニットの車幅方向中央部に対して車幅方向に沿う一方側にオフセットして設けられ、
さらに前記取付箇所は、左右の前記車体フレームのうち前記一方側の前記車体フレームと前記サブフレームとの固定点である車体側固定箇所と、前記サブフレームと前記パワーコントロールユニットとの固定点であるパワーコントロールユニット側固定箇所と、の間に設けられていることを特徴とするパワーコントロールユニットの保護構造。
【請求項2】
前記ケースは、前記ヒートシンク筐体の下部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のパワーコントロールユニットの保護構造。
【請求項3】
前記ヒートシンク筐体には、前記ヒートシンク筐体の内外に連通して、前記ヒートシンク筐体の内部に冷媒を流通させる冷媒ポートが形成され、
前記ガードブラケットは、車両前後方向から見て前記冷媒ポートの車幅方向両側に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパワーコントロールユニットの保護構造。
【請求項4】
前記パワーコントロールユニット側固定箇所は、車両前後方向から見て前記ガードブラケットと重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のパワーコントロールユニットの保護構造。
【請求項5】
前記ガードブラケットと前記サブフレームとの前記取付箇所は、車幅方向に沿って少なくとも2箇所設けられ、
前記パワーコントロールユニット側固定箇所は、前記少なくとも2箇所の前記取付箇所の間に位置することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のパワーコントロールユニットの保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103585(P2013−103585A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248164(P2011−248164)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】