説明

パワーシリンダの配管取付構造およびこれを備えた車両用操舵装置

【課題】簡単な構造で配管を接続する向きを任意に選ぶことができる、パワーシリンダの配管取付構造を提供する。
【解決手段】配管17をパワーシリンダ9のシリンダチューブ9aに接続するエルボ継手30が、シリンダチューブ9aを所定の軸線31に沿って貫通する接続孔32に、ねじ込み固定された第1の部分37と、第1の部分36と交差する方向X1に延び、その方向X1に沿って配管17を接続する第2の部分37とを含む。接続孔32の内周のねじ部35およびエルボ継手30の第1の部分36の外周のねじ部44の少なくとも一方を不等ピッチにする。第2の部分37を所定の軸線31の回りの任意の向きに向けて固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーシリンダの配管取付構造およびこれを備えた車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧式パワーステアリング装置では、パワーシリンダの一対の油室の一方を、油圧ポンプに接続し、他方を油タンクに接続するように、油圧制御弁が設けられている。その油圧制御弁とパワーシリンダの油室とを連通するための配管の一端が、エルボ継手を介してパワーシリンダのシリンダチューブに接続される場合がある。
シリンダチューブおよびエルボ継手がともに鉄製である場合は、そのエルボ継手は、一般に、溶接によりシリンダチューブに固定される(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また、エルボ継手をシリンダチューブの孔に自由回動可能に嵌合し、Oリングの弾性反発力をエルボ継手に与えて、エルボ継手の自由回動を抑制する構造が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平3−246164号公報
【特許文献2】特開平5−240378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、シリンダチューブの材質としてアルミニウムを用いることが要望されており、その場合、溶接による固定は困難である。また、溶接の場合、コストが高い。
また、特許文献2では、各種の振動(路面振動、エンジン振動等)の影響で、エルボ継手が回動してその向きが変わるおそれがあり、その場合、配管と他の部品とが干渉を起こすおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で配管を接続する向きを任意に選ぶことができる、パワーシリンダの配管取付構造およびこれを備えた車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、配管(17)をパワーシリンダ(9)のシリンダチューブ(9a)に接続するためのエルボ継手(30)を備え、このエルボ継手は、シリンダチューブの周壁(9b)を所定の軸線(31)に沿って貫通する接続孔(32)に、ねじ込み固定される第1の部分(36)と、この第1の部分と交差する方向(X1)に延び、当該方向に沿って配管を接続するための第2の部分(37)とを含み、上記接続孔の内周のねじ部(35)およびこれに噛み合うエルボ継手の第1の部分の外周のねじ部(44)の少なくとも一方が不等ピッチに形成されることにより、エルボ継手の第2の部分を上記所定の軸線の回りの任意の向きに向けた状態で、エルボ継手がシリンダチューブに固定されるようにしてあることを特徴とするものである。
【0007】
本発明では、エルボ継手の第1の部分をシリンダチューブの接続孔にねじ込んでいくと、両者のねじ部間に累積的なピッチのずれが発生し、少なくとも一方のねじ部が塑性変形を生じる(かしめ状態となる)ので、エルボ継手の第2の部分が任意の向きに向くような状態で、エルボ継手をシリンダチューブに強固に固定することができる。したがって、溶接やロックナットを用いることなく、非常に簡単な構造で、エルボ継手をその第2の部分が任意の向きに向くようにして取り付けることができる。
【0008】
上記エルボ継手の第1の部分の外周とシリンダチューブの上記接続孔の内周との間を封止する環状の弾性部材(46)を備える場合がある。その場合、エルボ継手の第1の部分とシリンダチューブの接続孔との間を確実に封止することができる。
上記シリンダチューブはアルミニウムを含む材料により形成され、上記エルボ継手は鉄を含む材料により形成されている場合がある。その場合、エルボ継手とシリンダチューブとの固定に溶接を用いることが困難であるので、特に、本発明の適用が好ましい。
【0009】
操舵補助力を発生するパワーシリンダのシリンダチューブに、上記パワーシリンダの配管取付構造を用いて配管が取り付けられていれば好ましい。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態のパワーシリンダの配管取付構造が適用された、車両用操舵装置としての油圧式パワーステアリング装置の要部の一部破断側面図である。図1を参照して、パワーステアリング装置1は、ラック歯2aを有するラック軸2とピニオン(図示せず)を含む油圧式パワーアシスト付きのラックアンドピニオン機構を備えている。
【0011】
ラック軸2は、車体の左右方向に延設される筒状のラックハウジング3およびこのラックハウジング3の一端に連なるギヤハウジング4の内部に、軸長方向に摺動自在に支持されている。ラック軸2の両端部は、図示しない前輪にそれぞれ連なるタイロッド5にボールジョイント6を介して連結されている。
ラック軸2の一部にはロッド7が形成され、このロッド7と、ロッド7の周囲を取り囲むラックハウジング3との間を、左右一対のロッドシール8,8で封止することにより、操舵補助力発生用のパワーシリンダ9が構成されている。したがって、ラックハウジング3の一部によってパワーシリンダ9のシリンダチューブ9aが構成されることになる。
【0012】
ギヤハウジング4側のロッドシール8は、シリンダチューブ9a内において支持筒部10の端部に当接する位置に圧入されている。他方のロッドシール8は、シリンダチューブ9aの端部に固定されるラックブッシュ21に当接して位置決めされている。
ギヤハウジング4は、ラックハウジング3の一端に圧入連結される支持筒部10と、この支持筒部10に対して斜交する態様で斜め上方へ延びる主ハウジング11とを備えている。
【0013】
パワーステアリング1の入力軸12の一端が主ハウジング11から突出し、ステアリングホイールからなる操舵部材13に一体回転可能に連結されている。主ハウジング11内には、図示していないが、ピニオンを形成する出力軸と、入力軸12および出力軸を互いに相対角変位可能に連結するトーションバーとが収容されている。
また、主ハウジング11の上部の内部には、入、出力軸間の相対角変位に基づいて油圧ポンプPからの圧油を、ピストン14によって互いに仕切られるパワーシリンダ9の左右の油室15,16の一方に択一的に供給するとともに、他方の油室からの油を油タンクTに戻すコントロールバルブCが内蔵されている。パワーシリンダ9への油圧の給排を司る油圧制御装置Aは、主ハウジング11の上部からなるハウジングHと、このハウジングHに内蔵されるコントロールバルブCとを含んで構成される。
【0014】
パワーシリンダ9の各油室15,16は、それぞれ対応する配管17,18を介してコントロールバルブCに接続されている。具体的には、一方の配管17が、油制御装置AのハウジングHの周面に形成されてコントロールバルブCに連通する第1ポート19と、パワーシリンダ9のシリンダチューブ9aに形成されて油室15に連通する第2ポート20とを連通している。配管17の端部17aは、エルボ継手30を介してパワーシリンダ9のシリンダチューブ9aに接続されており、この配管17の取付構造Sにより、本実施の形態のパワーシリンダの配管取付構造が構成されている。
【0015】
また、他方の配管18が、油制御装置AのハウジングHの周面に形成されてコントロールバルブCに連通する第1ポート22と、パワーシリンダ9のシリンダチューブ9aに形成されて油室16に連通する第2ポート23とを連通している。
図2を参照して、パワーシリンダ9のシリンダチューブ9aは、アルミニウムを含む材料により形成されている。シリンダチューブ9aの周壁9bには、所定の軸線31に沿って貫通する接続孔32が形成されている。接続孔32は、エルボ継手30を接続するための大径部33と、絞りを形成するための小径部34とを備えている。大径部33の内周面には、エルボ継手30をねじ嵌合するためのねじ部35が形成されているが、接続孔32の入口の内周面は円筒面とされている。
【0016】
エルボ継手30は、シリンダチューブ9の接続孔32の大径部33のねじ部35に、ねじ込み固定される円筒状の第1の部分36と、この第1の部分36と交差する方向(例えば、第1の部分36と直交する方向)に延び、上記の交差する方向X1に沿って配管17を接続するための円筒状の第2の部分37とを含んでいる。
その第2の部分37に連結される配管17の端部17aには、膨出により形成された中間フランジ38が設けられている。この中間フランジ38よりも末端の部分は、先にいくほど拡げられたフレア部39となっている。フレア部39には、中間フランジ38に接する状態でOリング40が嵌められている。また、配管17には中間フランジ38によって抜け止めされた状態で配管17の周面に空回り自在に金属製の締め具41が嵌められている。その締め具41の外周には、ねじ部42と多角形断面の工具係合部43が設けられている。
【0017】
エルボ継手30の第1の部分36の外周には、接続孔32のねじ部35と嵌合するねじ部44が形成されている。また、第1の部分36の基端部の外周には、周溝からなる収容溝45が形成され、この収容溝45に、環状の弾性部材としてのOリング46が収容されている。Oリング46によって、エルボ継手30の第1の部分36の外周とシリンダチューブ9の接続孔32の内周との間が封止されている。
【0018】
接続孔32の内周のねじ部35およびエルボ継手30の第1の部分36の外周のねじ部44の少なくとも一方が、不等ピッチに形成されている。例えば、図3に示すように、エルボ継手30の第1の部分36の外周のねじ部44が不等ピッチに形成されている。すなわち、ねじ部44は、相対的に小さいねじピッチP1の部分と、相対的に大きいねじピッチP2の部分とを含んでいる(P2>P1)。これにより、図4に示すように、エルボ継手30を上記所定の軸線31を中心とする回動方向Rに回動変位させて、エルボ継手30の第2の部分37を上記所定の軸線31回りの任意の向きに向けた状態で、エルボ継手30をシリンダチューブ9aに固定できるようになっている。
【0019】
エルボ継手30内の油路47は、第1の部分36の中心を貫き上記所定の軸線31に沿って延びる第1の油路48と、第1の油路48の端部から第2の部分37の中心を貫き上記交差する方向X1に延びる第2の油路49とを備える。第2の部分には、配管17の端部17aを接続するための収容する収容部50が、上記第2の油路49に連なるようにして設けられている。
【0020】
その収容部50は、上記締め具41のねじ部42にねじ結合するねじ部51を内周に有する第1収容孔52と、この第1収容孔52よりも小径であって、第1収容孔52の奥部に連続し、配管17のフレア部39を収容するための第2収容孔53とを含んでいる。
第1収容孔52と第2収容孔53との間に形成される環状段部54の内周には、面取り部55が形成され、この面取り部55とフレア部39の根元部分との間で、上記のOリング40が弾力的に挟持され、そのOリング40によって、面取り部55とフレア部39の間が密封されている。
【0021】
本実施の形態によれば、エルボ継手30の第1の部分36をシリンダチューブ9aの接続孔32にねじ込んでいくと、第1の部分36および接続孔のねじ部44,35間に累積的なピッチのずれが発生し、少なくとも一方のねじ部44または35が塑性変形を生じる(かしめ状態となる)。したがって、エルボ継手30の第2の部分37の延びる方向である上記交差する方向X1が、図4に示すように、任意に向きに向くような状態で、エルボ継手30をシリンダチューブ9aに強固に固定することができる。したがって、溶接やロックナットを用いることなく、非常に簡単な構造で、エルボ継手30をその第2の部分37が任意の向きに向くようにして取り付けることができる。その結果、配管17と他の車両部品との干渉を容易に避けることができる。
【0022】
また、上記エルボ継手30の第1の部分36の外周とシリンダチューブ9aの接続孔32の内周との間が、Oリング46によって封止されているので、エルボ継手30の第1の部分36の、接続孔32に対するねじ込み位置に拘らず、すなわち、両ねじ部44および35の締結位置に拘らず、エルボ継手30の第1の部分36とシリンダチューブ9aの接続孔32との間を確実に封止することができる。
【0023】
エルボ継手の固定に溶接を用いる必要がないので、本実施の形態のようにシリンダチューブ9aがアルミニウムを含む材料により形成され、エルボ継手30が鉄を含む材料により形成されている場合との組み合わせにおいて、特に、顕著な効果を奏することができる。
なお、本実施の形態では、油圧式パワーステアリング装置のパワーシリンダの配管の取付に適用したが、操舵部材と舵取り機構との機械的な連結が解かれた、いわゆるステアバイワイヤシステムの車両用操舵装置において、操舵用アクチュエータとしてのパワーシリンダの配管を取り付ける構造に適用することもできる。その他、本発明の特許請求の範囲で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態のパワーシリンダの配管取付構造が適用された車両用操舵装置としての油圧式パワーステアリングの一部破断正面図である。
【図2】パワーシリンダの配管取付構造の断面図である。
【図3】エルボ継手の要部の概略拡大断面図である。
【図4】配管取付構造の要部の模式的平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…パワーステアリング装置(車両用操舵装置)、9…パワーシリンダ、9a…シリンダチューブ、9b…周壁、17…配管、17a…端部、S…パワーシリンダの配管取付構造、30…エルボ継手、31…所定の軸線、32…接続孔、35…ねじ部、36…第1の部分、37…第2の部分、X1…(第1の部分と)交差する方向、44…ねじ部、46…Oリング(環状の弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管をパワーシリンダのシリンダチューブに接続するためのエルボ継手を備え、
このエルボ継手は、シリンダチューブの周壁を所定の軸線に沿って貫通する接続孔に、ねじ込み固定される第1の部分と、この第1の部分と交差する方向に延び、当該方向に沿って配管を接続するための第2の部分とを含み、
上記接続孔の内周のねじ部およびこれに噛み合うエルボ継手の第1の部分の外周のねじ部の少なくとも一方が不等ピッチに形成されることにより、エルボ継手の第2の部分を上記所定の軸線の回りの任意の向きに向けた状態で、エルボ継手がシリンダチューブに固定されるようにしてあることを特徴とするパワーシリンダの配管取付構造。
【請求項2】
請求項1において、上記エルボ継手の第1の部分の外周とシリンダチューブの上記接続孔の内周との間を封止する環状の弾性部材を備えることを特徴とするパワーシリンダの配管取付構造。
【請求項3】
請求項1または2において、上記シリンダチューブはアルミニウムを含む材料により形成され、上記エルボ継手は鉄を含む材料により形成されていることを特徴とするパワーシリンダの配管取付構造。
【請求項4】
操舵補助力を発生するパワーシリンダのシリンダチューブに、請求項1から3の何れか1項に記載のパワーシリンダの配管取付構造を用いて配管が取り付けられたことを特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−254590(P2008−254590A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99227(P2007−99227)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】