説明

パワーモジュールおよびその製造方法、並びに樹脂フレーム

【課題】接着剤が金属ベース基板の放熱面にはみ出すことを防止しつつ、シール性および接着強度を向上させる。
【解決手段】一実施形態に係るパワーモジュールは、金属ベース基板10と、金属ベース基板10の実装面に実装された発熱電子部品11と、第1の面21と、第1の面21の反対面となる第2の面22と、第1の面21から第2の面22へと貫通する開口23とを有する樹脂フレーム20と、樹脂フレーム20の基板収納部24に塗布され金属ベース基板10と樹脂フレーム20とを接着させ、金属ベース基板10の辺端と基板収納部24の側面26との間の空間を満たす接着剤40とを備える。樹脂フレーム20は、開口23に沿って第1の面21から凹設された基板収納部24と、基板収納部24の側面26から凸設され、金属ベース基板10の辺端と当接する複数のリブ27と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール、特に、パワーMOSFETなどの発熱電子部品が実装された金属ベース基板を備えるパワーモジュール、およびその製造方法、並びに該パワーモジュールに用いる樹脂フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーモジュール(インバータ等)の一種は、以下のようにして作製されている。まず、金属ベース基板の実装面にパワーMOSFET等の発熱電子部品を実装する。この金属ベース基板は、一方の面が放熱面となる金属板と、この金属板の他方の面を被覆する絶縁層と、この絶縁層の上に形成された配線パターンとを有する基板である。次いで、発熱電子部品が実装された金属ベース基板を、接着剤を用いて樹脂フレームに固定する。次いで、放熱面からの熱を効率良く外部に放熱させるために、金属ベース基板の放熱面にヒートシンクを取り付ける。
【0003】
なお、特許文献1には、基板20と基板20を支持する金属板100とを接着させる接着剤が外にはみ出さないようにするために、金属板100に支持部102,103、接着部104および溝部105を設けた金属基板構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−123455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記のようにしてパワーモジュールを作製する際、金属ベース基板を樹脂フレームに固定する接着剤が、金属ベース基板の放熱面にはみ出してしまうことがある。この場合、金属ベース基板とヒートシンクとの間の熱抵抗が増加し、放熱性を阻害するという問題がある。放熱面にはみ出した接着剤を拭き取れば放熱性を維持できるが、接着剤の拭き取り工程が追加されるため、パワーモジュールの製造工数および製造コストが増加する。
【0006】
また、使用する接着剤の量を減らすことで接着剤のはみ出し量を低減させることができるものの、金属ベース基板と樹脂フレームとの接着強度が低下するという問題がある。さらに、接着剤によるシール性が低下するため、外部(放熱面側)の湿気が金属ベース基板の実装面側まで浸入し、不具合の原因となるおそれがある。
【0007】
なお、特許文献1に記載された金属基板構造の場合、基板の片面がすべて接着剤で覆われることになるため、上記のパワーモジュールに適用することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、金属ベース基板と樹脂フレームとを接着させる接着剤が金属ベース基板の放熱面にはみ出すことを防止しつつ、シール性および接着強度を向上させることが可能なパワーモジュールおよびその製造方法、並びに該パワーモジュールに用いる樹脂フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るパワーモジュールは、
一方の面が放熱面となる金属板、前記金属板の他方の面を被覆する絶縁層、および前記絶縁層の上に形成された配線パターンを有する、金属ベース基板と、
前記金属ベース基板の実装面に実装された、発熱電子部品と、
第1の面と、前記第1の面の反対面となる第2の面と、前記第1の面から前記第2の面へと貫通する開口とを有する樹脂フレームであって、前記開口に沿って前記第1の面から凹設され、かつ、前記金属ベース基板の実装面と対向する底面および前記底面と前記第1の面を接続する側面を有する基板収納部と、前記基板収納部の側面から前記開口の縁部に向かい且つ該縁部を越えないように凸設され、かつ前記金属ベース基板の辺端と当接する複数のリブと、を有する、樹脂フレームと、
前記基板収納部に塗布され前記金属ベース基板と前記樹脂フレームとを接着させるとともに、前記金属ベース基板の辺端と前記基板収納部の側面との間の空間を満たす、接着剤と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記パワーモジュールにおいて、
前記基板収納部の底面には、前記開口の縁部から前記縁部と前記リブとの間の距離よりも小さい距離を隔てて前記開口を囲うように溝部が設けられており、前記溝部は前記接着剤で充填されていてもよい。
【0011】
また、前記パワーモジュールにおいて、
前記溝部と前記側面との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第1の高さは、前記溝部と前記開口との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第2の高さよりも低くしてもよい。
【0012】
また、前記パワーモジュールにおいて、
前記基板収納部の底面に対する前記リブの高さは前記側面よりも低く、前記接着剤は前記リブを埋設していてもよい。
【0013】
また、前記パワーモジュールにおいて、
前記樹脂フレームに接着された前記金属ベース基板の実装面および前記実装面に実装された発熱電子部品を封止するように、エポキシ樹脂またはシリコン樹脂が前記樹脂フレームと前記金属ベース基板により構成される凹部内に充填されていてもよい。
【0014】
また、前記パワーモジュールにおいて、
平板状の基部と、前記基部の一方の面に前記基部と一体的に形成された複数の放熱フィンとを有するヒートシンクをさらに備え、
前記金属ベース基板を収納した前記樹脂フレームは、前記基部の他方の面が前記金属板の放熱面と密着するように前記ヒートシンクの基部に固定されていてもよい。
【0015】
また、前記パワーモジュールにおいて、
前記リブは前記金属ベース基板の角部に2個ずつ設けられ、一方のリブは前記角部を挟む2辺のうち一方の辺と当接し、他方のリブは前記2辺のうち他方の辺と当接していてもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る樹脂フレームは、
金属ベース基板を収納する樹脂フレームであって、
第1の面と、前記第1の面の反対面となる第2の面と、前記第1の面から前記第2の面へと貫通する開口とを有し、
前記開口に沿って前記第1の面から凹設され、かつ、金属ベース基板が収納された状態において前記金属ベース基板の実装面と対向する底面と、前記底面と前記第1の面を接続する側面とを有する、基板収納部と、
前記基板収納部の側面から前記開口の縁部に向かい、かつ該縁部を越えないように凸設された、複数のリブと、
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、前記樹脂フレームにおいて、
前記基板収納部の底面には、前記開口の縁部から前記縁部と前記リブとの間の距離よりも小さい距離を隔てて前記開口を囲うように溝部が設けられていてもよい。
【0018】
また、前記樹脂フレームにおいて、
前記溝部と前記側面との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第1の高さは、前記溝部と前記開口との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第2の高さよりも低くてもよい。
【0019】
また、前記樹脂フレームにおいて、
前記基板収納部の底面に対する前記リブの高さは、前記側面よりも低くてもよい。
【0020】
本発明の一態様に係るパワーモジュールの製造方法は、
一方の面が放熱面となる金属板、前記金属板の他方の面を被覆する絶縁層、および前記絶縁層の上に形成された配線パターンを有する金属ベース基板と、
前記金属ベース基板の実装面に実装された発熱電子部品と、
第1の面と、前記第1の面の反対面となる第2の面と、前記第1の面から前記第2の面へと貫通する開口とを有する樹脂フレームであって、前記開口に沿って前記第1の面から凹設され、かつ前記金属ベース基板の実装面と対向する底面および前記底面と前記第1の面を接続する側面を有する基板収納部と、前記基板収納部の側面から前記開口の縁部に向かい且つ該縁部を越えないように凸設された複数のリブと、を有する樹脂フレームと、
を備えるパワーモジュールの製造方法であって、
前記樹脂フレームの基板収納部の底面に接着剤を塗布する、塗布工程と、
前記金属ベース基板の実装面が前記基板収納部の底面と対向し且つ前記金属ベース基板の辺端が前記複数のリブと当接するように、前記金属ベース基板に圧力を加えて前記金属ベース基板を前記樹脂フレームの基板収納部に収納するとともに、前記圧力により前記基板収納部に塗布された接着剤を流動させて前記金属ベース基板の辺端と前記基板収納部の側面との間の空間に充填する、収納工程と、
前記接着剤を硬化させ、前記金属ベース基板と前記樹脂フレームとを接着させる、接着工程と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
また、前記パワーモジュールの製造方法において、
前記樹脂フレームとして、前記基板収納部の底面に、前記開口の縁部から前記縁部と前記リブとの間の距離よりも小さい距離を隔てて前記開口を囲うように溝部が設けられたものを用い、
前記塗布工程において、前記接着剤を、所定量が前記溝部からはみ出るように前記溝部に沿って塗布してもよい。
【0022】
また、前記パワーモジュールの製造方法において、
前記樹脂フレームとして、前記溝部と前記側面との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第1の高さが、前記溝部と前記開口との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第2の高さよりも低く形成されたものを用いてもよい。
【0023】
また、前記パワーモジュールの製造方法において、
前記樹脂フレームとして、前記底面に対する前記リブの高さが前記側面よりも低いものを用い、
前記収納工程において、前記底面と前記金属ベース基板の実装面との間からあふれ出た接着剤で前記リブを埋設してもよい。
【0024】
また、前記パワーモジュールの製造方法において、
前記接着工程の後に、前記樹脂フレームに接着された前記金属ベース基板の実装面と、前記実装面に実装された前記発熱電子部品とを封止するように、前記樹脂フレームと前記金属ベース基板により構成される凹部内に封止樹脂を充填する封止工程をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様に係るパワーモジュールにおいては、基板収納部の側面から開口の縁部に向かい、金属ベース基板の辺端と当接する複数のリブが設けられる。これらのリブが金属ベース基板の辺端と基板収納部の側面との間にクリアランスを確保することにより、基板収納部の底面に塗布された接着剤は、該底面と金属ベース基板間の空間からはみ出し、リブによって確保された空間(金属ベース基板の辺端と基板収納部の側面との間の空間)に溜まる。このため、接着剤が金属ベース基板の放熱面にはみ出すことを防止できる。
【0026】
また、金属ベース基板の辺端と基板収納部の側面との間の空間を満たす接着剤により、金属ベース基板と樹脂フレームとの接着強度が向上するとともに、金属ベース基板の実装面側と放熱面側との間のシール性が向上する。
【0027】
よって、本発明によれば、金属ベース基板と樹脂フレームとを接着させる接着剤が金属ベース基板の放熱面にはみ出すことを防止しつつ、シール性および接着強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は、一実施形態に係るヒートシンク付きパワーモジュールの平面図であり、(b)は、該ヒートシンク付きパワーモジュールの側面図である。
【図2】一実施形態に係るパワーモジュールの実装面側から見た斜視図である。
【図3】一実施形態に係るパワーモジュールの放熱面側から見た斜視図である
【図4】本発明の一実施形態に係るパワーモジュールに用いられる樹脂フレームの斜視図である。
【図5】(a)は、金属ベース基板と樹脂フレームとの接着部分の断面図であり、(b)は、(a)における領域Aの拡大図である。
【図6】一実施形態に係るパワーモジュールの製造方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0030】
図1(a)および(b)はそれぞれ、本実施形態に係るヒートシンク付きパワーモジュール1の平面図および側面図である。このヒートシンク付きパワーモジュール1は、例えば電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)に適用することが可能である。
【0031】
ヒートシンク付きパワーモジュール1は、パワーモジュール2と、このパワーモジュール2の発する熱を放熱するためのヒートシンク3と、を備えている。
【0032】
パワーモジュール2において、詳細は後述するが、金属ベース基板10が略四角形の枠状の樹脂フレーム20内に固定されている。図1(b)に示すように、樹脂フレーム20は、第1の面21と、この第1の面21の反対面となる第2の面22とを有する。
【0033】
ヒートシンク3は、平板状の基部4と、基部4の一方の面に基部4と一体的に形成された複数の放熱フィン5とを有する。
【0034】
図1(a)および(b)に示すように、金属ベース基板10の実装面には、パワー端子(バスバー)12および信号端子13が設けられている。パワー端子12および信号端子13はそれぞれ、モータ、およびパワーモジュール制御用プリント基板(いずれも図示せず)と接続される。
【0035】
パワーモジュール2は、基部4の他方の面(放熱フィン5が形成されていない面)が金属ベース基板10の金属板の放熱面と密着するように、ネジ6によりヒートシンク3に固定されている。より詳しくは、パワーモジュール2は、樹脂フレーム20の第2の面22から金属カラー30(後述)に挿通されたネジ6が基部4に設けられたネジ穴(図示せず)に螺合することにより、ヒートシンク3の基部4に固定されている。
【0036】
次に、パワーモジュール2の構成について、図2および図3を用いて説明する。図2は、パワーモジュール2の実装面側から見た斜視図であり、図3は、パワーモジュール2の放熱面側から見た斜視図である。
【0037】
図2及び図3に示すように、パワーモジュール2は、金属ベース基板10と、樹脂フレーム20と、金属カラー30と、接着剤40と、封止樹脂50と、を備える。
【0038】
金属ベース基板10は、一方の面が放熱面となる金属板と、この金属板の他方の面を被覆する絶縁層と、この絶縁層の上に形成された配線パターンとを有する。金属ベース基板10の実装面には、発熱電子部品11、および前述のパワー端子12と信号端子13などが実装されている。発熱電子部品11は、例えば、パワーMOSFET、サイリスタ、ダイオードである。また、図3に示すように、金属ベース基板10は、貫通孔10aが設けられている。この貫通孔10aは、金属ベース基板10が樹脂フレーム20に固定された状態において金属カラー30と連通するように形成されている。
【0039】
樹脂フレーム20の構成については後ほど詳しく説明するが、図3に示すように、樹脂フレーム20は同じ大きさの複数のリブ27を有し、これらのリブ27は金属ベース基板10の辺端と当接している。金属ベース基板10は、リブ27により位置決めされて、樹脂フレーム20内に収容されている。
【0040】
また、図3に示すように、本実施形態では、金属ベース基板10の角部に2個ずつリブ27が設けられ、また、金属ベース基板10の長辺の略中心に当接するリブ27が設けられている。金属ベース基板10の角部に設けられた2個のリブのうち、一方のリブは角部を挟む2辺のうち一方の辺と当接し、他方のリブは2辺のうち他方の辺と当接する。
【0041】
金属カラー30は、ネジ6を挿通するために設けられており、図2に示すように、樹脂フレーム20の第1の面21から第2の面22に貫通する貫通孔に嵌装されている。
【0042】
接着剤40は、金属ベース基板10と樹脂フレーム20とを接着させ、図3に示すように、リブ27により確保された空間(金属ベース基板10の辺端と基板収納部24の側面26との間の空間)を満たす。これにより、金属ベース基板と樹脂フレームとの接着強度が向上するとともに、金属ベース基板の実装面側と放熱面側との間のシール性が向上する。シール性が向上することで、ヒートシンク3側から湿気等が金属ベース基板10の実装面まで浸入することを防止できる。なお、接着剤40は、例えば、熱硬化性のシリコーン系接着剤である。
【0043】
封止樹脂50は、樹脂フレーム20に接着された金属ベース基板10の実装面、および実装面に実装された発熱電子部品11を封止するように、樹脂フレーム20と金属ベース基板10により構成される凹部内に充填されている。封止樹脂50は、例えば、エポキシ樹脂またはシリコン樹脂(シリコーンゲル)である。
【0044】
次に、樹脂フレーム20の構成について、図4および図5を用いて詳しく説明する。図4は、樹脂フレーム20の斜視図である。図5(a)は、金属ベース基板10と樹脂フレーム20との接着部分の断面図であり、図5(b)は、図5(a)の領域Aを拡大した拡大図である。
【0045】
樹脂フレーム20は、第1の面21と、第1の面21の反対面となる第2の面22と、第1の面21から第2の面22へと貫通する開口23と、基板収納部24と、複数のリブ27とを有する。
【0046】
基板収納部24は、図4に示すように、開口23に沿って第1の面21から凹設されている。また、基板収納部24は、底面25と、底面25と第1の面21を接続する側面26とを有する。底面25は、金属ベース基板10が樹脂フレーム20に固定された状態において、金属ベース基板10の実装面と対向する。
【0047】
リブ27は、基板収納部24の側面26から開口23の縁部に向かい且つ該縁部を越えないように凸設されている。このようなリブ27を設けることで、基板収納部24の側面26と金属ベース基板10の辺端との間にリブの長さ分だけクリアランスが保たれ、接着強度およびシール性を満足するのに必要な接着剤40の厚みを確保することができる。なお、本実施形態では樹脂フレーム20に設けられた複数のリブ27の大きさは同じであるが、これに限るものではなく、リブの大きさは異なっていても構わない。
【0048】
また、図4に示すように、基板収納部24の底面25には、開口23の縁部から所定の距離を隔てて、即ち、開口23の縁部とリブ27との間の距離よりも小さい距離を隔てて開口23を囲うように溝部28が設けられている。底面25bの幅は、開口23の縁部と溝部28間の距離に相当する。この溝部28は、図5(a)に示すように、樹脂フレーム20と金属ベース基板10が接着剤40で接着された状態において、接着剤40により満たされている。このような溝部28を設けることで、接着剤40の厚みを溝部28の深さ分だけ増やすことができ、シール性および接着強度をさらに向上させることができる。また、樹脂成形により樹脂フレーム20を作製する場合、溝部28を設けることで樹脂フレーム20の反りを小さくすることができる。
【0049】
なお、図5(b)は、図5(a)の領域Aの拡大図である。ここで、底面25aは、底面25のうち、溝部28と側面26との間における底面である。底面25bは、底面25のうち、溝部28と開口23との間における底面である。図5(b)に示すように、第2の面22から第1の面21方向における底面25aの高さ(第1の高さ)が、第2の面22から第1の面21方向における底面25bの高さ(第2の高さ)よりも低いことが好ましい。これにより、底面25aと金属ベース基板10との間の接着剤40の厚さが、図5(b)に示す段差“a”の分だけ増えるため、シール性および接着強度が向上する。
【0050】
また、図5(a)に示すように、リブ27は底面25に対する高さが側面26よりも低くなるように形成されており、接着剤40はリブ27を埋設していることが好ましい。これにより、リブ27と接着剤40との境界から湿気が浸入することが防止でき、シール性をさらに向上させることができる。
【0051】
次に、上記のヒートシンク付きパワーモジュール1の製造方法について説明する。
(1)樹脂フレーム20の基板収納部24の底面25に、ディスペンサを用いて、接着剤40を塗布する(塗布工程)。接着剤として、例えば、熱硬化性シリコーン接着剤を塗布する。
(2)次に、図6に示すように、金属ベース基板10の実装面が基板収納部24の底面25と対向し且つ金属ベース基板10の辺端がリブ27と当接するように、金属ベース基板10に圧力を加えて金属ベース基板10を樹脂フレーム20の基板収納部24に収納する。また、このように金属ベース基板10を基板収納部24に収納するとともに、金属ベース基板10への圧力により、基板収納部24の底面25に塗布された接着剤40を流動させて金属ベース基板10の辺端と基板収納部24の側面26との間の空間に充填する(収納工程)。
(3)次に、接着剤40を加熱して硬化させ、金属ベース基板10と樹脂フレーム20とを接着させる(接着工程)。
(4)次に、樹脂フレーム20に接着された金属ベース基板10の実装面と、この実装面に実装された発熱電子部品11とを封止するように、樹脂フレーム20と金属ベース基板10により構成される凹部内に封止樹脂50を充填する(封止工程)。ここまでの工程を経て、図2および図3に示すパワーモジュール2が作製される。
(5)次に、ヒートシンク3の基部4の面(放熱フィン5が設けられていない方の面)が金属ベース基板10の放熱面と密着し、かつ基部4のネジ穴(図示せず)と金属カラー30が連通するように、パワーモジュール1にヒートシンク3を組み合わせる。そして、ネジ6を第2の面22側から金属カラー30および貫通孔10aに挿通し、パワーモジュール1とヒートシンク3をネジ固定する(取付工程)。なお、接着剤の放熱面へのはみ出しがないので、本工程の前に、接着剤を拭き取る工程を行う必要がない。
【0052】
上記の工程を経て、図1(a)および(b)に示すヒートシンク付きパワーモジュール1が作製される。
【0053】
上記収納工程において、基板収納部24の底面25に塗布された接着剤40は、金属ベース基板10に印加された圧力により周囲に向かって流動する。そして、底面25と金属ベース基板10の実装面との間の空間からはみ出た接着剤は、リブ27により確保された空間、即ち、金属ベース基板10の辺端と基板収納部24の側面26との間の空間に溜まる。これにより、接着剤が金属ベース基板10の放熱面にはみ出すことを防止できる。
【0054】
なお、前述の溝部28が設けられた樹脂フレーム20を用い、上記塗布工程において、接着剤を、所定量が溝部28からはみ出るように溝部28に沿って充填することが好ましい。上記接着剤の所定量(はみ出し量)としては、例えば、金属ベース基板10を基板収納部24に収納した状態において、接着剤が金属ベース基板10の辺端と基板収納部24の側面26との間の空間を満たし、かつ金属ベース基板10の放熱面にはみ出さない量が選択される。これにより、金属ベース基板10を基板収納部24に収納する際に、接着剤40が基板収納部24内に均一に広がり、接着剤のムラが生じることを防止できる。また、接着剤40の厚みを溝部28の深さ分だけ増やすことができ、シール性および接着強度をさらに向上させることができる。
【0055】
また、図5(b)に示すように、第2の面22から第1の面21方向における底面25aの高さ(第1の高さ)が、第2の面22から第1の面21方向における底面25bの高さ(第2の高さ)よりも低くなるように形成された樹脂フレーム20を用いることが好ましい。このように溝部の外側の底面を一段低くした樹脂フレームを用いることにより、上記収納工程において、接着剤40は開口23への方向よりも側面26への方向に流動し易くなるため、接着剤40が金属ベース基板10の実装面にはみ出す量を減らすことができる。よって、発熱電子部品11等に接着剤が付着することを防止するために実装面の周縁に設けられるのりしろ部の幅を狭くし、従い、金属ベース基板10を小さくすることができる。
【0056】
また、樹脂フレーム20として、底面25に対するリブ27の高さが側面26よりも低いものを用い、上記収納工程において、底面26と金属ベース基板10の実装面との間からあふれ出た接着剤でリブ27を埋設することが好ましい。これにより、外部(ヒートシンク3側)の湿気がリブ27と接着剤40との境界から浸入することを防止できる。
【0057】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 ヒートシンク付きパワーモジュール
2 パワーモジュール
3 ヒートシンク
4 基部
5 放熱フィン
6 ネジ
10 金属ベース基板
10a 貫通孔
11 発熱電子部品
12 パワー端子(バスバー)
13 信号端子
20 樹脂フレーム
21 第1の面
22 第2の面
23 開口
24 基板収納部
25,25a,25b 底面
26 側面
27 リブ
28 溝部
30 金属カラー
40 接着剤
50 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が放熱面となる金属板、前記金属板の他方の面を被覆する絶縁層、および前記絶縁層の上に形成された配線パターンを有する、金属ベース基板と、
前記金属ベース基板の実装面に実装された、発熱電子部品と、
第1の面と、前記第1の面の反対面となる第2の面と、前記第1の面から前記第2の面へと貫通する開口とを有する樹脂フレームであって、前記開口に沿って前記第1の面から凹設され、かつ、前記金属ベース基板の実装面と対向する底面および前記底面と前記第1の面を接続する側面を有する基板収納部と、前記基板収納部の側面から前記開口の縁部に向かい且つ該縁部を越えないように凸設され、かつ前記金属ベース基板の辺端と当接する複数のリブと、を有する、樹脂フレームと、
前記基板収納部に塗布され前記金属ベース基板と前記樹脂フレームとを接着させるとともに、前記金属ベース基板の辺端と前記基板収納部の側面との間の空間を満たす、接着剤と、
を備えることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記基板収納部の底面には、前記開口の縁部から前記縁部と前記リブとの間の距離よりも小さい距離を隔てて前記開口を囲うように溝部が設けられており、前記溝部は前記接着剤で充填されていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記溝部と前記側面との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第1の高さは、前記溝部と前記開口との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第2の高さよりも低いことを特徴とする請求項2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記基板収納部の底面に対する前記リブの高さは前記側面よりも低く、前記接着剤は前記リブを埋設していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記樹脂フレームに接着された前記金属ベース基板の実装面および前記実装面に実装された発熱電子部品を封止するように、エポキシ樹脂またはシリコン樹脂が前記樹脂フレームと前記金属ベース基板により構成される凹部内に充填されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項6】
平板状の基部と、前記基部の一方の面に前記基部と一体的に形成された複数の放熱フィンとを有するヒートシンクをさらに備え、
前記金属ベース基板を収納した前記樹脂フレームは、前記基部の他方の面が前記金属板の放熱面と密着するように前記ヒートシンクの基部に固定されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記リブは前記金属ベース基板の角部に2個ずつ設けられ、一方のリブは前記角部を挟む2辺のうち一方の辺と当接し、他方のリブは前記2辺のうち他方の辺と当接することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項8】
金属ベース基板を収納する樹脂フレームであって、
第1の面と、前記第1の面の反対面となる第2の面と、前記第1の面から前記第2の面へと貫通する開口とを有し、
前記開口に沿って前記第1の面から凹設され、かつ、金属ベース基板が収納された状態において前記金属ベース基板の実装面と対向する底面と、前記底面と前記第1の面を接続する側面とを有する、基板収納部と、
前記基板収納部の側面から前記開口の縁部に向かい、かつ該縁部を越えないように凸設された、複数のリブと、
を備えることを特徴とする樹脂フレーム。
【請求項9】
前記基板収納部の底面には、前記開口の縁部から前記縁部と前記リブとの間の距離よりも小さい距離を隔てて前記開口を囲うように溝部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の樹脂フレーム。
【請求項10】
前記溝部と前記側面との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第1の高さは、前記溝部と前記開口との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第2の高さよりも低いことを特徴とする請求項9に記載の樹脂フレーム。
【請求項11】
前記基板収納部の底面に対する前記リブの高さは、前記側面よりも低いことを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の樹脂フレーム。
【請求項12】
一方の面が放熱面となる金属板、前記金属板の他方の面を被覆する絶縁層、および前記絶縁層の上に形成された配線パターンを有する金属ベース基板と、
前記金属ベース基板の実装面に実装された発熱電子部品と、
第1の面と、前記第1の面の反対面となる第2の面と、前記第1の面から前記第2の面へと貫通する開口とを有する樹脂フレームであって、前記開口に沿って前記第1の面から凹設され、かつ前記金属ベース基板の実装面と対向する底面および前記底面と前記第1の面を接続する側面を有する基板収納部と、前記基板収納部の側面から前記開口の縁部に向かい且つ該縁部を越えないように凸設された複数のリブと、を有する樹脂フレームと、
を備えるパワーモジュールの製造方法であって、
前記樹脂フレームの基板収納部の底面に接着剤を塗布する、塗布工程と、
前記金属ベース基板の実装面が前記基板収納部の底面と対向し且つ前記金属ベース基板の辺端が前記複数のリブと当接するように、前記金属ベース基板に圧力を加えて前記金属ベース基板を前記樹脂フレームの基板収納部に収納するとともに、前記圧力により前記基板収納部に塗布された接着剤を流動させて前記金属ベース基板の辺端と前記基板収納部の側面との間の空間に充填する、収納工程と、
前記接着剤を硬化させ、前記金属ベース基板と前記樹脂フレームとを接着させる、接着工程と、
を備えることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項13】
前記樹脂フレームとして、前記基板収納部の底面に、前記開口の縁部から前記縁部と前記リブとの間の距離よりも小さい距離を隔てて前記開口を囲うように溝部が設けられたものを用い、
前記塗布工程において、前記接着剤を、所定量が前記溝部からはみ出るように前記溝部に沿って充填することを特徴とする請求項12に記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項14】
前記樹脂フレームとして、前記溝部と前記側面との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第1の高さが、前記溝部と前記開口との間における前記底面の、前記第2の面から前記第1の面方向における第2の高さよりも低く形成されたものを用いることを特徴とする請求項13に記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項15】
前記樹脂フレームとして、前記底面に対する前記リブの高さが前記側面よりも低いものを用い、
前記収納工程において、前記底面と前記金属ベース基板の実装面との間からあふれ出た接着剤で前記リブを埋設することを特徴とする請求項12ないし14のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項16】
前記接着工程の後に、前記樹脂フレームに接着された前記金属ベース基板の実装面と、前記実装面に実装された前記発熱電子部品とを封止するように、前記樹脂フレームと前記金属ベース基板により構成される凹部内に封止樹脂を充填する封止工程をさらに備えていることを特徴とする請求項12ないし15のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110296(P2013−110296A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254876(P2011−254876)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】